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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】スルフェントラゾンの合成のための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 249/12 20060101AFI20230711BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230711BHJP
【FI】
C07D249/12 505
C07B61/00 300
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020539788
(86)(22)【出願日】2019-01-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 CN2019072307
(87)【国際公開番号】W WO2019141230
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-11
(31)【優先権主張番号】62/618,692
(32)【優先日】2018-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391022452
【氏名又は名称】エフ エム シー コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】FMC CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ウーチィァン・トゥー
(72)【発明者】
【氏名】ボーリン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】グアンフイ・リー
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-503993(JP,A)
【文献】特表2008-545690(JP,A)
【文献】国際公開第2001/094320(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第101863847(CN,A)
【文献】米国特許第05990315(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 249/12
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルフェントラゾンの合成のための方法であって、式(i)のスルフェントラゾンアミンを、塩化メタンスルホニルと、
【化1】
イミダゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、式-Aの化合物、式-Bの化合物、またはそれらの塩
【化2】
(式中、
式-AおよびBの両方におけるRは、各々独立に、水素、アミノ、場合により置換されている、C1~10アルキル、C1~10ハロアルキル、C1~10アルコキシ、またはアリールを表す)
から選択される触媒の存在下で反応させることを含む、前記方法。
【請求項2】
式-Aの化合物が、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、または5-フェニルイミダゾールである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式-Bの化合物が、ホルムアミジン、アセトアミジン、またはそれらの塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
式-Bの化合物が、ホルムアミジン塩酸塩、アセトアミジン塩酸塩、ホルムアミジン硫酸塩、アセトアミジン硫酸塩、ホルムアミジンリン酸塩、またはアセトアミジンリン酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶媒中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
溶媒が、芳香族、アルカン、およびアルケン溶媒、ならびにそれらの任意の混合物から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
溶媒が、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、およびそれらの任意の混合物から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
溶媒がトルエンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
高温で行われ、好ましい温度が110℃~160℃の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
温度が、120℃~130℃の範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
大気圧またはそれより高い圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
.15MPa~1MPaの範囲の圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
触媒が、スルフェントラゾンアミンの0.01~0.2モル当量の範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
触媒がイミダゾールである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
触媒が、スルフェントラゾンアミンの0.05~0.15モル当量の範囲の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
触媒がイミダゾールである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
触媒が、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ホルムアミジン塩酸塩、またはアセトアミジン塩酸塩であり、触媒が、スルフェントラゾンアミンに対して0.01~0.035モル当量の範囲の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
塩化メタンスルホニルが、スルフェントラゾンアミンに対して過剰に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
塩化メタンスルホニルが、該方法全体を通してスルフェントラゾンアミンに対して過剰に維持される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
塩化メタンスルホニルおよびスルフェントラゾンアミンが、1~2の範囲のモル比で存在する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
塩化メタンスルホニルおよびスルフェントラゾンアミンが、1.5~2の範囲のモル比で存在する、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野に関し、より詳細には、除草剤スルフェントラゾンの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スルフェントラゾンは、本出願人によって開発され、初めて商業化された、有用な除草剤である。スルフェントラゾンは、安全かつ有効な除草剤として広く使用され、雑草防除および収穫量増加に重要な役割を果たしている。
【0003】
スルフェントラゾンの合成は、次の工程:(a)以下に定義される通りの式(「式(i)」)を有するスルフェントラゾンアミンを、公知の方法を使用して合成する工程と、(b)得られたスルフェントラゾンアミンを塩化メタンスルホニルと反応させて所望のスルフェントラゾンを得る工程とを含む方法である。
【0004】
【化1】
【0005】
後者の工程は、スルホニル化反応であり、通常、触媒の存在下で行われる。これに関して、その収率および効率を向上させるために、該方法において多くの触媒が試され、開発され、使用されてきた。例えば、スルホニル化の方法を触媒するための可溶性ハロゲン化物(例えば、塩化物)源およびジメチルホルムアミド(DMF)の使用が、特許文献1および特許文献2にそれぞれ教示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,169,952号
【文献】米国特許第5,990,315号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
当業界では、幾つかの触媒が提供され、使用されてきたが、収率および効率を向上させる、異なるより良い触媒を提供することが依然として強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、新たな触媒の使用を特徴とする、スルフェントラゾンの合成のための方法を提供する。
【0009】
本発明は、スルフェントラゾン(「式(ii)」)の合成のための方法であって、スルフェントラゾンアミン(「式(i)」)を、塩化メタンスルホニルと、
【化2】
イミダゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、式-Aの化合物、式-Bの化合物、またはそれらの塩
【化3】
(式中、
式-AおよびBの両方におけるRは、各々独立に、水素、アミノ、場合により置換されている、C1~10アルキル、C1~10ハロアルキル、C1~10アルコキシ、またはアリールを表す)
から選択される触媒の存在下で反応させることを含む、方法を提供する。
【0010】
一態様では、本発明は、式(ii)のスルフェントラゾンの合成のための方法であって、式(i)のスルフェントラゾンアミンを塩化メタンスルホニルとイミダゾールの存在下で、高温で反応させることを含む、方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様では、本発明は、スルフェントラゾンの合成のための方法であって、スルフェントラゾンアミンを、塩化メタンスルホニルと、イミダゾール、1H-1,2,4-トリアゾール、ベンゾイミダゾール、以下の式-Aを有する化合物、もしくは以下の式-Bを有する化合物、またはそれらの塩
【化4】
(式中、
式-Aおよび-Bの両方におけるRは、各々独立に、水素、アミノ、場合により置換されている、C1~10アルキル、C1~10ハロアルキル、C1~10アルコキシ、またはアリールを表す)
の存在下で、高温で反応させることを含む、方法を提供する。
【0012】
1~10アルキルは、直鎖または分枝のアルキル、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、または、様々な関連する異性体、例えば、ブチル、ペンチル、もしくはヘキシル異性体であり得る。一実施形態では、式-AにおけるRは、メチルまたはエチルである。別の実施形態では、式-BにおけるRは、メチルまたはエチルである。
【0013】
1~10ハロアルキルは、1つまたはそれ以上のハロ基、例えば、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードで置換されているアルキルであって、アルキルに関して上の通りであるとして定義することができる。
【0014】
1~10アルコキシは、直鎖または分枝の、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ならびに様々なブトキシ、ペントキシ、およびヘキシルオキシ異性体であり得る。
【0015】
アリールは、芳香環、特に、フェニルおよびナフチルのような5~10個の炭素原子を有する芳香環構造から誘導される任意の官能基または置換基であり得る。一実施形態では、式-AにおけるRは、フェニルである。別の実施形態では、式-BにおけるRは、フェニルである。
【0016】
塩として、無機または有機酸、例えば、臭化水素酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、酢酸、酪酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、プロピオン酸、サリチル酸、酒石酸、4-トルエンスルホン酸、または吉草酸との酸付加塩を挙げることができる。
【0017】
別の態様では、式-Aの化合物は、2-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、および5-フェニルイミダゾールである。
【0018】
別の態様では、式-Bの化合物は、ホルムアミジン、アセトアミジン、またはそれらの塩である。塩として、塩酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩を挙げることができる。別の態様では、式-Bの化合物は、ホルムアミジン塩酸塩またはアセトアミジン塩酸塩である。別の態様では、式-Bの化合物は、ホルムアミジン硫酸塩またはアセトアミジン硫酸塩、ホルムアミジンリン酸塩またはアセトアミジンリン酸塩である。
【0019】
この方法を行うために、スルフェントラゾンアミンは、最初に、すべて当業者に公知である複数の工程を通して製造される(米国特許第4,818,275号を参照されたい)。
【0020】
本発明の別の態様では、該方法は、溶媒を用いてまたは用いずに行われる。一実施形態では、該方法は、溶媒中で行われる。溶媒は、芳香族、アルカン、およびアルケン溶媒ならびにそれらの任意の混合物から選択してもよい。一実施形態では、溶媒は、トルエン、キシレン、ジエチルベンゼン、およびそれらの任意の混合物から選択される。別の実施形態では、溶媒はトルエンである。
【0021】
反応は、広い温度範囲にわたって行うことができる。当業者であれば理解すると思われるが、温度が低いと該方法を行うのに効果的であり得るが、反応時間が長くなることがあり;温度を高くすると反応時間が短くなることがあるが、温度が高過ぎると望ましくない結果をもたらすことがある。本発明の一態様では、該方法は、約110℃~約160℃の範囲の高温で行われる。一実施形態では、温度は、約120℃~約130℃の範囲である。
【0022】
本発明の一態様では、該方法は、約3~約12時間の範囲の期間で行われる。一実施形態では、該方法は、約4~約8時間の範囲の期間で行われる。別の実施形態では、反応は、時間効率を目的として8時間未満で完了する。
【0023】
本発明の別の態様では、該方法は、大気圧または大気圧より高い圧力で行われる。一実施形態では、該方法は、大気圧より高い圧力で行われる。一実施形態では、該方法は、約0.15MPa~約1MPaの範囲の圧力で行われる。さらなる実施形態では、該方法は、0.15MPa~0.5MPaの範囲の圧力で行われる。
【0024】
別の態様では、塩化メタンスルホニルおよびスルフェントラゾンアミンは、約1~約2の範囲の塩化メタンスルホニルのスルフェントラゾンアミンに対するモル比で存在する。別の実施形態では、塩化メタンスルホニルは、スルフェントラゾンアミンに対してモル過剰で存在する。さらに好ましい実施形態では、塩化メタンスルホニルのスルフェントラゾンアミンに対するモル比は、約1.5~約2の範囲である。別の実施形態では、塩化メタンスルホニルは、該方法全体を通してスルフェントラゾンアミンに対して過剰に存在する。過剰な塩化メタンスルホニルは、反応混合物中に追加的な塩化メタンスルホニルを必要に応じて添加することによって、該方法全体を通して維持することができる。
【0025】
別の態様では、イミダゾールのような触媒は、少なくとも触媒量で存在する。「触媒量」とは、この用語が本明細書で使用される場合、塩化メタンスルホニルとスルフェントラゾンアミンとの反応を促進するのに効果的な量を意味する。一実施形態では、触媒は、スルフェントラゾンアミンに対して約0.01~約0.2モル当量の範囲の量で存在する。別の実施形態では、触媒は、スルフェントラゾンアミンに対して約0.05~約0.15モル当量の範囲の量で存在する。一実施形態では、イミダゾールが触媒として使用される場合、それは、スルフェントラゾンアミンに対して約0.01~約0.2モル当量の範囲の量で存在する。別の実施形態では、イミダゾールは、スルフェントラゾンアミンに対して約0.05~約0.15モル当量の範囲で存在する。別の実施形態では、触媒がベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ホルムアミジン塩酸塩、またはアセトアミジン塩酸塩である場合、触媒は、スルフェントラゾンアミンに対して約0.01~約0.035モル当量の範囲の量で存在する。
【0026】
本方法は、従来の方法より費用効率が高くなり得る。イミダゾールのような触媒は、容易に入手可能であり、イミダゾールのような新たな触媒の使用を特徴とする本方法は、スルフェントラゾンアミンの高い転化率をもたらし、所望のスルフェントラゾンの収率を高くすることができる。いずれの理論にも拘束されるものではないが、収率が高くなるのは、主に、DMFプロセスにおいて生じる主な不純物である、望ましくない副生物、N-[2,4-ジクロロ-5-[4-(ジフルオロメチル)-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]フェニル]-ホルムアミドの形成が回避されることに起因し得る。
【0027】
【化5】
【0028】
一般に、本方法は、イミダゾールで99%以上のような、スルフェントラゾンアミンの高い転化率を合理的な反応時間内でもたらすと共に、最大90%、94%、95%、96%、またはそれ以上に達することさえ可能な、スルフェントラゾンの高い収率をもたらすことができる。
【0029】
本発明の別の態様では、式II:
【化6】
のスルホンアミドの製造のための方法であって、高温で式I:
【化7】
のアニリンを、式R-SO-Zの適切なスルホン化剤Aと、触媒量の触媒、例えばイミダゾールの存在下で、反応させる
(式中:
式IおよびIIの両方におけるXおよびY、ならびにZは、各々独立に、水素、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アミノ、ニトロ、アルコキシ、ヒドロキシ、アンヒドリジル(anhydridyl)、アルキルチオ、アリールチオール、アリールオキシ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、および置換または非置換のアリールからなる群から選択され、該置換基は、ハロ、C1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、アミノ、アミド、アルキルチオ、アリール、アリールチオ、アリールオキシ、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルからなる群から選択される1つまたはそれ以上の構成員を含み;
式IおよびIIの両方におけるRは、水素、アルキル、ハロアルキル、アリールオキシ、置換または非置換のアリール、および置換または非置換のヘテロシクリルからなる群から選択され、該置換基は、ハロ、C1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、アミノ、アミド、アルキルチオ、アリール、アリールチオ、アリールオキシ、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルからなる群から選択される1つまたはそれ以上の構成員を含み;
は、水素、アルキル、ハロアルキル、およびアリールからなる群から選択される)
ことを含む、方法が提供される。
【0030】
本発明によって製造される好ましいスルホンアミドは、XおよびYがハロであり;Rが置換または非置換のヘテロシクリルであり、該置換基が、ハロ、C1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、アミノ、アミド、アルキルチオ、アリールオキシ、アリール、アリールチオール、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルからなる群から選択される1つまたはそれ以上の構成員を含み;Rがアリールまたはアルキルであるものである。
【0031】
本発明によって製造される特に好ましいスルホンアミドは、XおよびYがクロロまたはフルオロであり;Rが、4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル、1-メチル-6-トリフルオロメチル-2,4-(1H,3H)-ピリミジンジオン-3-イル、または1-アミノ-6-トリフルオロメチル-2,4-(1H,3H)-ピリミジンジオン-3-イルであり;Rがメチルであるものである。本発明によって製造されるさらにより好ましいスルホンアミドは、Xが2-クロロまたは2-フルオロであり、Yが4-クロロであり、Rが4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルであり、Rがメチルであるものである。
【0032】
本発明で使用することができる好ましいアニリンは、XおよびYがハロであり、Rが置換または非置換のヘテロシクリルであり、該置換基が、ハロ、C1~20アルキル、C1~20アルコキシ、ニトロ、アミノ、アミド、アルキルチオ、アリールオキシ、アリール、アリールチオール、アルキルスルホニル、およびアリールスルホニルからなる群から選択される1つまたはそれ以上の構成員を含むものである。
【0033】
本発明で使用することができる特に好ましいアニリンは、XおよびYがクロロまたはフルオロであり、Rが、4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル、1-メチル-6-トリフルオロメチル-2,4-(1H,3H-ピリミジンジオン-3-イル、または1-アミノ-6-トリフルオロメチル-2,4-(1H,3H)-ピリミジンジオン-3-イルであるものである。本発明で使用することができるさらにより好ましいアニリンは、Xが2-クロロまたは2-フルオロであり、Yが4-クロロであり、Rが4-ジフルオロメチル-4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イルであるものである。本発明で使用してもよい適切なスルホン化剤Aは、スルホニル部分をアミノ基に結合させることができる物質である。本発明で使用してもよいスルホン化剤Aの例として、式R-SO-Z(式中、RおよびZは上で定義される通りである)を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用することができる好ましいスルホン化剤Aとして、Rがアリールまたはアルキルであり、Zがハロまたはアンヒドリジルである、式R-SO-Zの薬剤が挙げられる。特に好ましいスルホン化剤Aとして、Rがアルキルであり、Zがハロである、式R-SO-Zの薬剤が挙げられる。さらにより好ましいスルホン化剤Aは、Rがメチルであり、Zがクロロである、式R-SO-Zの薬剤である。「触媒量」とは、本明細書で利用される場合、アニリンとスルホン化剤との反応を促進するのに効果的な量を意味するものとする。
【0034】
反応は、好ましくは高温で、例えば、約110℃~約160℃、より好ましくは約120℃~約150℃で、好ましくは約3~約12時間、より好ましくは約3~約7時間行われる。反応は、より低い温度で実行することができるが、一般に、完了するまでに必要とされる時間が明らかに長くなる。加えて、反応は、大気圧で実行しても圧力を上げて実行してもよい。
【0035】
反応は、アニリンIを、1モル当量のアニリンIに対して約1~約5、好ましくは約1.3~約4モル当量のスルホン化剤A、および触媒量の、例えば、1モル当量のアニリンIに対して約0.05~約0.15モル当量の触媒、例えばイミダゾールと合わせることによって行ってもよい。
【0036】
加えて、反応は、溶媒なしで行っても溶媒中で行ってもよい。本発明で使用することができる適切な溶媒は、高温で式Iのアニリンと混和性の混合物を形成することができるものである。本発明で使用することができる溶媒の例として、芳香族、アルカン、またはアルケン溶媒が挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用することができる好ましい溶媒は、トルエン、キシレン、およびジエチルベンゼンである。本発明で使用することができる特に好ましい溶媒は、トルエンである。
【0037】
本明細書で使用される場合、特に示さない限り、「アルキル」、「アルコキシ」、「アリールオキシ」、および「アルコキシアリールアミノ」という置換基の用語は、単独で使用されるかまたはより大きな部分の一部として使用され、置換基に適切な、少なくとも1個または2個の炭素原子、好ましくは20個までの炭素原子、より好ましくは10個までの炭素原子、最も好ましくは7個までの炭素原子の直鎖または分枝鎖を含む。「ハロゲン」または「ハロ」は、フッ素、臭素、ヨウ素、または塩素を指す。「アリール」は、5~10個の炭素原子を有する芳香環構造を指す。「ヘテロアリール」は、ヘテロ環構成成分として、炭素原子以外に、1~4個の窒素、硫黄、もしくは酸素原子、またはそれらの組み合わせを有する芳香環構造を指す。「高沸点」は、周囲圧力で140℃を上回る沸点を有する化合物を指す。「周囲温度」という用語は、本明細書で利用される場合、30℃を超えない温度を意味するものとする。「高温」という用語は、本明細書で利用される場合、周囲温度を上回る温度、例えば、約110℃~約160℃の範囲内の温度を意味するものとする。
【0038】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(contains)」、「含む(containing)」、「によって特徴付けられる」という用語、またはそれらの他のあらゆる変化形は、明示的に示された任意の制限を条件として、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、要素の列挙を含む組成物、混合物、プロセス、または方法は、これらの要素のみに必ずしも限定されず、明示的に列挙されていないか、またはそのような組成物、混合物、プロセス、もしくは方法に固有な他の要素を含むことがある。
【0039】
「からなる」という移行句は、明記されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。請求項にあるならば、そのような句は、挙げられた材料に通常関連する不純物を除き、挙げられたもの以外の材料を含むことを該請求項から閉め出すものとする。「からなる」という語句が、プリアンブルの直後ではなく請求項のボディの節に出現する場合、それは、その節に記述される要素のみを限定するものであり;他の要素が該請求項全体から除外されるわけではない。
【0040】
「から本質的になる」という移行句は、文字通り開示されるものに加えて、材料、工程、機能、構成成分、または要素を含む、組成物、プロセス、または方法を定義するために使用されるが、これらの追加的な材料、工程、機能、構成成分、または要素が、特許請求される発明の基本的なおよび新規な特性(複数可)に実質的に影響を与えないことを条件とする。「から本質的になる」という用語は、「含む」と「からなる」の中間を占める。
【0041】
出願人が、本発明またはその一部分を「含む」のようなオープンエンドな用語を用いて定義した場合、(特に明記しない限り)その記載は、「から本質的になる」または「からなる」という用語を使用してそのような発明を記載しているとも解釈されるべきであることが容易に理解されるであろう。
【0042】
さらに、そうでないと明記されない限り、「または」は、包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは、次のうち任意の1つによって満たされる:Aが真であり(または存在する)かつBが偽である(または存在しない)、Aが偽であり(または存在しない)かつBが真である(または存在する)、ならびにAおよびBが真である(または存在する)。
【0043】
また、本発明の要素または構成成分に先立つ不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、要素または構成成分の実例(すなわち、出現)の数に関して非制限的であることが意図される。したがって、「1つの(a)」または「1つの(an)」は、1つまたは少なくとも1つを含むと読むべきであり、単数形の要素または構成成分は、その数が明らかに単数を意味するのでない限り、複数形も含む。
【0044】
置換基内の炭素原子の総数は、「C~C」という接頭語によって示され、ここで、iおよびjは、1~10の数である。例えば、C~Cアルキルは、メチルからブチルを示す。
【0045】
化合物が下付き文字を有する置換基で置換されている場合、その下付き文字は、前記置換基の数が1を超える場合があることを示しており、前記置換基は(これらが1を超える場合)、独立に、定義された置換基の群から選択される。さらに、下付き文字が範囲、例えば(R)i~jを示す場合、置換基の数は、iとjとを含むその間の整数から選択することができる。ある基の1つまたはそれ以上の位置が「置換されていない」または「非置換の」と述べられる場合、水素原子が結合してあらゆる遊離原子価を埋める。
【0046】
「場合により置換されている」という用語は、「置換または非置換の」という語句または「(非)置換の」という用語と互換的に使用される。特に示さない限り、場合により置換されている基は、その基の各々の置換可能な位置に置換基を有してもよく、各々の置換は他から独立している。
【0047】
化合物の塩として、無機または有機酸、例えば、臭化水素酸、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、酢酸、酪酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、マロン酸、シュウ酸、プロピオン酸、サリチル酸、酒石酸、4-トルエンスルホン酸、または吉草酸との酸付加塩を挙げることができる。化合物がカルボン酸またはフェノールのような酸性部分を含む場合、塩として、有機または無機塩基、例えば、ピリジン、トリエチルアミンもしくはアンモニア、もしくはアミド、水素化物、水酸化物、またはナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、もしくはバリウムの炭酸塩と形成されるものも挙げられる。
【0048】
以下の実施例を参照することによって本発明をこれからさらに詳細に説明するが、本発明がそれらに限定されると解釈されないことが理解されるべきである。
【実施例
【0049】
実施例1:出発物質としてスルフェントラゾンアミンを使用するスルフェントラゾンの合成
固体スルフェントラゾンアミン(以降、「SFT5-NH」)80.3g、およびトルエン36.0gを、底部取出し用ストップコックを備えた1リットルの丸底反応フラスコ内に入れた。反応フラスコに、機械撹拌器、還流冷却器、熱電対、および加熱マントルを取り付けた。排出ガスは、10%NaOHを含む苛性アルカリスクラバーに誘導した。特に示さない限り、実施例のすべての反応は、標準大気圧で行った。
【0050】
得られたトルエン反応媒体中のSFT5-NHを約120~130℃に維持し、塩化メタンスルホニル40.1gを反応フラスコにゆっくり入れた。続いて、イミダゾール1.09g(SFT5-NHの7%モル当量に等しい)を媒体に添加した。反応全体を通して、反応温度を約120~130℃に維持した。
【0051】
SFT5-NHの転化率がGC分析によって99%より高くなる(すなわち、反応媒体中に残留する未転化のSFT5-NHが1%未満になる)まで、還流条件下で撹拌しながら約120~130℃の温度で反応を保持した。
【0052】
反応が完了したら、混合物をゆっくり80℃に冷却し、トルエン(400g)を使用して希釈して15wt%のスルフェントラゾン溶液を得た。この希釈混合物を水でクエンチし、続いて相分離して有機相を収集した。有機相をさらに結晶化させ、ろ過し、次いで収集した結晶を乾燥させて固体最終生成物86.5gを得た。分析すると、重量(百分率)アッセイは92%、単離された固体の収率は89.8%、母液(ML)中の収率は5.9%であった。最終的なスルフェントラゾンの全収率は、95.7%と算出された。
【0053】
実施例2:イミダゾールを使用するスルフェントラゾンの合成
以下の表1に記述するように、イミダゾールの量および反応「時間」を変化させ、残りの条件はそのままにして、スルフェントラゾンを合成する実施例1の手順を繰り返した。その結果を以下のように要約した。スルフェントラゾン(「SFT」)の総収率は、「収率/固体」と「収率/ML」との合計として算出した。乾燥固体生成物中に残留するイミダゾール残留物は、「イミダゾール(ppm)」として示し、記号「/」は測定不能を表す。
【0054】
【表1】
【0055】
比較実施例3:ジメチルホルムアミド(「DMF」)を触媒として使用するスルフェントラゾンの合成
以下の表2に記述するように、イミダゾールをDMFに置き換え、反応「時間」を変化させたことを除いて、実施例1の同じ手順を繰り返した。その結果を以下のように要約した。SFT-NHの3.5%モル当量に等しいDMF0.585gを、すべての比較例で使用した。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例1および2の結果に示されるように、イミダゾールを触媒として使用する本方法によって、スルフェントラゾンアミンの高い転化率(99%またはさらにそれ以上)がもたらされると共に、スルフェントラゾンの収率が高くなる(例えば、94%、95%、96%またはさらにそれ以上)。実施例3で実証されるように、DMFプロセスと比較して、転化率およびスルフェントラゾン収率が両方とも向上する。
【0058】
これらの向上は、工業規模の製造の観点から意義深く、またかなりのコスト削減をもたらす。さらに、DMFがスルフェントラゾンアミンと部分的に反応し、それによって望ましくない副生物の形成を招き、結果的にスルフェントラゾンの収率が低下することがあるDMFプロセスとは異なり、イミダゾールは、スルフェントラゾンアミンとは反応せず、したがって望まれない副生物が回避される。
【0059】
本方法の別の利点は、イミダゾールが水に対して高い溶解度を有しており、よってイミダゾールのほとんどが排水中に溶解し、最終的なスルフェントラゾン生成物から取り除かれることである。表1に示すように、スルフェントラゾンの固体中に残留するイミダゾールは25ppm未満である。これによって、精製処理が単純化されるだけでなく、DMFプロセスに見られる副生物が低減することによって、最終的なスルフェントラゾン生成物の純度も向上する。
【0060】
実施例4:触媒を変化させることによるスルフェントラゾンの合成
イミダゾールに置き換えて様々な触媒を使用することによって実施例1の手順を繰り返した。以下の表3は、本実施例に使用される試薬および触媒、ならびに反応時間と共に、SFT5-NHから所望のスルフェントラゾンへの転化率の概要を示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、本発明の触媒はすべて、SFT5-NHから最終的なスルフェントラゾン生成物への高い転化率をもたらす。