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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】水蒸気観測計及び水蒸気観測方法
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/00 20060101AFI20230711BHJP
   G01N 22/04 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01W1/00 C
G01N22/04 A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020572117
(86)(22)【出願日】2020-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2020000132
(87)【国際公開番号】W WO2020166232
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019022287
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】箕輪 昌裕
【審査官】萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04873481(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102636500(CN,A)
【文献】特開昭61-076943(JP,A)
【文献】特開昭50-062083(JP,A)
【文献】石元裕史,地上多波長マイクロ波放射計による雲域での温度・水蒸気 1D-Var リトリーバル,2009年度秋季大会講演予稿集,日本,日本気象学会,2009年11月,96,第348頁
【文献】小司禎教,水蒸気観測技術の発達とこれから,天気,日本,日本気象学会,2007年10月,Vol.54 No.10,第15-18頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01W 1/00 - 1/18
G01N 22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波透過面と、
前記電磁波透過面を通過した電磁波を受信可能に構成されている鉛直上向きのホーンと、
前記ホーンが受信した電磁波の所定の周波数の電波強度に基づいて、水蒸気に関する水蒸気データを生成する水蒸気データ生成部と、
前記ホーンが受信した電磁波の、前記所定の周波数を除く少なくとも2つの周波数の電磁波強度に基づいて、水蒸気量の算出の基準となり且つ周波数と電波強度のスペクトル図における雲水のスペクトルに関する雲水データを生成する雲水データ生成部と、
前記水蒸気データと前記雲水データとを用いて水蒸気量を算出する水蒸気量算出部と、
を備える、水蒸気観測計。
【請求項2】
前記雲水データ生成部は、前記少なくとも2つの周波数の電波強度に基づき、周波数と電波強度のスペクトル図における前記雲水のスペクトルを示す仮想線を前記雲水データとして特定し、
前記水蒸気量算出部は、前記水蒸気データとしての前記所定の周波数における電波強度と、前記仮想線とに基づき水蒸気量を算出する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項3】
前記ホーンが設置されている位置の降雨又は降雪を検出する降雨検出部と、
前記降雨検出部が降雨又は降雪を検出した場合に、前記雲水データに基づき前記水蒸気量を補正する補正部と、を有する、請求項1又は2に記載の水蒸気観測計。
【請求項4】
前記降雨検出部は、降雨センサである、請求項3に記載の水蒸気観測計。
【請求項5】
前記降雨検出部は、前記雲水データに基づき降雨又は降雪しているかを判定する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項6】
前記降雨検出部は、前記雲水データが示す雲水量が所定閾値以上になる場合に降雨又は降雪と判定し、
前記補正部は、前記雲水データに応じた補正値を算出し、前記補正値を前記水蒸気量に
加算する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項7】
前記降雨検出部は、前記雲水データが示す雲水量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを判定する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項8】
前記降雨検出部は、前記雲水量が所定の傾き以上で上昇したこと又は減少したことに基づき降雨又は降雪しているか否かを判定し、
前記補正部は、前記降雨又は降雪していると判定された期間の水蒸気量を、前記降雨又は降雪していると判定された期間の雲水データに基づいて補正する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項9】
前記水蒸気量算出部は、所定の時間毎に水蒸気量を算出し、
前記降雨検出部は、前記水蒸気量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを判定する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項10】
前記降雨検出部は、前記水蒸気量が所定の傾き以上で減少したこと又は上昇したことに基づき降雨又は降雪しているか否かを判定し、
前記補正部は、前記降雨又は降雪していると判定された期間の水蒸気量を、前記降雨又は降雪していると判定された期間の雲水データに基づいて補正する、請求項に記載の水蒸気観測計。
【請求項11】
前記ホーン又は前記電磁波透過面に付着した水又は雪を除去する除去部を備える、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の水蒸気観測計。
【請求項12】
前記除去部は、風力を用いて前記水又は雪を除去する、請求項11に記載の水蒸気観測計。
【請求項13】
前記除去部は、振動により前記水又は雪を除去する、請求項11に記載の水蒸気観測計。
【請求項14】
前記ホーンが設置されている位置の降雨又は降雪を検出する降雨検出部を備え、
前記除去部は、前記降雨検出部が降雨又は降雪を検出した場合に、前記水又は雪を除去する、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の水蒸気観測計。
【請求項15】
電磁波透過面を通過した電磁波を鉛直上向きのホーンで受信すること、
前記ホーンが受信した電磁波の所定の周波数の電波強度に基づいて、水蒸気に関する水蒸気データを生成すること、
前記ホーンが受信した電磁波の、前記所定の周波数を除く少なくとも2つの周波数の電磁波強度に基づいて、水蒸気量の算出の基準となり且つ周波数と電波強度のスペクトル図における雲水のスペクトルに関する雲水データを生成すること、
前記水蒸気データと前記雲水データとを用いて水蒸気量を算出すること、
を含む、水蒸気観測方法。
【請求項16】
電磁波透過面を通過して鉛直上向きのホーンで受信された電磁波の所定の周波数の電波強度に基づいて、水蒸気に関する水蒸気データを生成すること、
前記ホーンが受信した電磁波の、前記所定の周波数を除く少なくとも2つの周波数の電磁波強度に基づいて、水蒸気量の算出の基準となり且つ周波数と電波強度のスペクトル図における雲水のスペクトルに関する雲水データを生成すること、
前記水蒸気データと前記雲水データとを用いて水蒸気量を算出すること、
を、1又は複数のプロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水蒸気観測計及び水蒸気観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気観測には、衛星、GNSS受信機、マイクロ波放射計、水蒸気ライダーなどが知られている。
【0003】
大気中の水蒸気から電磁波が発せられることを利用して、マイクロ波放射計により水蒸気を観測する場合、第1の課題として、処理を容易にするための電磁波の受信方法を考慮する必要があると考えられる。
【0004】
第2の課題として、受信する電磁波には、水蒸気から照射される電磁波と、雲水から照射される電磁波の双方が含まれており、水蒸気から照射される電磁波が雲水の影響を受けてしまうおそれが考えられる。
【0005】
なお、水蒸気計測に直接関係がないが、特許文献1には降水予測システムが開示されている。また、マイクロ波放射計について、特許文献2及び3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-60444号公報
【文献】米国特許出願公開第2005/0184740号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0164063号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、大気における雲水の影響を考慮して、水蒸気量を精度よく且つ容易に観測可能な水蒸気観測計及び水蒸気観測方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の水蒸気観測計は、
電磁波透過面と、
前記電磁波透過面を通過した電磁波を受信可能に構成されている鉛直上向きのホーンと、
前記ホーンが受信した電磁波に基づき水蒸気に関する水蒸気データを生成する水蒸気データ生成部と、
前記ホーンが受信した電磁波に基づき雲水に関する雲水データを生成する雲水データ生成部と、
前記水蒸気データと前記雲水データとを用いて水蒸気量を算出する水蒸気量算出部と、
を備える。
【0009】
このように、鉛直上向きのホーンで電磁波を受信可能に構成しているので、ホーンの上方に存在する水蒸気量の総量を計測することができ、例えばホーンを横向きにして鉛直下向き以外の電磁波を受信する場合に比べて水蒸気量を容易に計測可能となる。
さらに、水蒸気量に影響を与える雲水データを用いて水蒸気量を算出するので、水蒸気量の算出精度を向上させることが可能となる。
したがって、大気における雲水の影響を考慮して、水蒸気量を精度よく且つ容易に観測可能な水蒸気観測計及び水蒸気観測方法を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る水蒸気観測計の構成を示す図
図2】水蒸気のスペクトル及び雲水のスペクトルを示す図
図3】11時00分、11時05分、11時11分、11時13分時点で受信した電磁波の周波数と電波強度のスペクトルを示す図
図4】水蒸気量と雲水量の時間変化を示した図
図5】雲水データに基づく補正値と、補正値に係数をかけた値を水蒸気量に加算した後(補正後)の水蒸気量と、を示す図
図6】他の実施形態に係る水蒸気観測計の構成を示す図
図7】上記以外の実施形態に係る水蒸気観測計の構成を示す図
図8】上記以外の実施形態に係る水蒸気観測計の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の水蒸気観測計の構成を示す図である。
【0013】
図1に示すように、水蒸気観測計は、鉛直上向きのホーン1と、ホーン1を包囲する電磁波透過面2と、を有する。ホーン1は、鉛直方向VDに沿って上方VD1を向いている。同図に示すように、大気中に存在する水蒸気から発せられた電磁波EW1は、電磁波透過面2を通過してホーン1に受信される。ホーン1に到達した電磁波EW1は、LNA(ローノイズアンプ)及びアナログ系などを介して受信処理部3に入力される。
【0014】
受信処理部3は、水蒸気データ生成部30と、雲水データ生成部31と、水蒸気量算出部32と、を有する。水蒸気データ生成部30は、ホーン1が受信した電磁波に基づき水蒸気に関する水蒸気データD1を特定する。雲水データ生成部31は、ホーン1が受信した電磁波に基づき雲水に関する雲水データD2を特定する。水蒸気量算出部32は、水蒸気データD1と雲水データD2とを用いて水蒸気量を算出する。以下、具体的に説明する。
【0015】
図2は、水蒸気のスペクトル及び雲水のスペクトルを示す。同2に示すように水蒸気のスペクトルは、22GHzにピークを持っており、水蒸気量に応じて22GHzの電波強度が変化する。水蒸気データ生成部30は、22GHz又は22GHz周辺の周波数の電波強度を用いて水蒸気に関する水蒸気データを生成する。
【0016】
雲水のスペクトルは、図2に示すように、低周波数側から高周波数側へ向けて電波強度が大きくなるように傾斜した形状を示しり、雲水量に応じて傾斜角度及び電波強度が変化する。雲水データ生成部31は、22GHz以外の少なくとも1つの周波数に基づき雲水データを生成する。
【0017】
図3は、受信した電磁波の周波数と電波強度のスペクトルを示し、11時00分、11時05分、11時11分、11時13分時点のスペクトルを示す。11時00分では曇で雨が降っておらず、11時05分では小雨であり、11時11分、11時13分にかけて雨量が増加した。図3に示すように、雲水量が多くなれば電波強度が全体として大きくなるので、22GHzの水蒸気データD1のみに着目しても水蒸気量の算出が難しい。そこで、水蒸気量の算出の基準となる雲水データD2の特定が必要となる。
【0018】
図3に示すように、雲水量は、例えば、22GHz以外の17、18又は26GHzの電波強度又はこれらの組み合わせで表現することができる。図3において、26GHzの電波強度を雲水量S2としているが、これに限定されない。例えば17又は18GHzの電波強度を雲水量としてもよい。図3で示すように、雲水量S2は、雨が強くなるにしたがって増大していることがわかる。雨天時には雨滴からの電磁波の放射が多くなるためと考えられる。また、水蒸気量S1は、降雨量(雲水量)に伴って量が減少していることがわかる。水蒸気量S1が減少するのは、水蒸気から発生した電磁波が雨滴により遮られ、ホーン1まで届かないためと考えられる。
【0019】
雲水データ生成部31は、22GHz以外の1つの周波数の電波強度に基づき雲水データD2を生成可能であるが、22GHz以外の少なくとも2つの周波数の電波強度に基づき雲水データD2を生成することが好ましい。例えば、図3に示すように、22GHzよりも低周波数側の1点(17GHz又は18GHzの近傍の1点)の電波強度と、22GHzよりも高周波数側の1点(26GHzの近傍の1点)の電波強度とに基づき周波数-電波強度のスペクトルにおける雲水の傾斜を示す仮想線Lを特定することが挙げられる。仮想線Lが水蒸気量を算出するための基準となる。本実施形態において仮想線Lは直線であるが、これに限定されず、3つ以上の周波数の電波強度に基づく近似直線又は曲線でもよい。
【0020】
水蒸気量算出部32は、水蒸気データD1と雲水データD2を用いて水蒸気量S1を算出する。本実施形態では、水蒸気量算出部32は、少なくとも2つの周波数以外の所定周波数(22GHz又はその近傍周波数)と、仮想線Lとに基づき水蒸気量を算出している。具体的には、22GHzの電波強度から、仮想線Lにおける22GHzの電波強度を引いた値を水蒸気量S1としているが、これに限定されない。水蒸気量算出部32は、水蒸気量を常時算出してもよいし、水蒸気量を所定の時間毎に算出してもよいし、水蒸気量を所定の時刻で算出してもよい。
【0021】
図4は、水蒸気量S1と雲水量S2の時間変化を示した図である。同図において矢印で示す期間T1において雨が降っており、それ以外の期間では降雨が観測されていない。同図の水蒸気量を見ると、降雨期間T1において水蒸気量が急激に減衰している。
【0022】
そこで、本実施形態では、図1に示すように、降雨検出部33と、補正部34と、を設けている。降雨検出部33は、ホーン1が設置されている位置の降雨又は降雪を検出する。本実施形態では、降雨検出部33は、雲水データD2に基づき降雨又は降雪しているかを判定するように構成されている。具体的には、降雨検出部33は、図4に示すように、雲水データD2に基づき降雨又は降雪しているかを判定する。図4の例では、雲水量が所定閾値Th1以上であれば降雨又は降雪していると判定し、雲水量が所定閾値Th1未満であれば降雨又は降雪していないと判定する。なお、降雨検出部33は、降雨又は降雪しているか否かを示す信号を外部から受信することで、ホーン1が設置されている位置の降雨又は降雪を検出するように構成してもよい。
【0023】
補正部34は、降雨検出部33によって降雨又は降雪が検出された場合に、雲水データD2に応じた補正値を算出し、水蒸気量算出部32が算出した水蒸気量に補正値を加算し、水蒸気量を補正する。補正部34は、降雨検出部33によって降雨又は降雪が検出されていない場合には、水蒸気量算出部32が算出した水蒸気量の補正を実行しない。図5は、雲水データD2に基づく補正値と、補正値に係数をかけた値を水蒸気量に加算した後(補正後)の水蒸気量と、を示す。図5の水蒸気量のグラフにおいて期間T1の点線部分が補正前の水蒸気量であり、期間T1の実線が補正後の水蒸気量を示している。
【0024】
図1に示すように、水蒸気観測計は、ホーン1又は電磁波透過面2に付着した水又は雪を除去する除去部4を有する。図1示す除去部4は、風力を発生させるファン又はブロア等の風力発生部4aと、風力発生部4aを制御する除去制御部4bと、を有し、風力により水又は雪を除去する。除去部4は、降雨検出部33が降雨又は降雪を検出した場合に、水又は雪を除去するように構成されている。勿論、降雨又は降雪の検出にかかわらず、除去部4を常時、周期的又はランダムで継続して動作するように構成してもよい。なお、除去部4は必要に応じて省略可能である。
【0025】
<除去部の変形例>
図6に示すように、除去部104を変更可能である。除去部104は、振動を発生させる振動発生部104aと、振動発生部104aを制御する除去制御部104bと、を有し、振動により水又は雪を除去するように構成されている。除去部104は、降雨検出部33が降雨又は降雪を検出した場合に、水又は雪を除去するように構成されている。また、電磁波透過面2の上面を水平方向ではなく、鉛直方向VDに対して傾斜するようにすることが好ましい。このようにすれば、除去部4、104により水又は雪が落下しやすくなるからである。
【0026】
<降雨検出部の変形例>
図7に示すように、降雨検出部133は、ホーン1の近傍に設置した降雨センサ133aとすることが可能である。降雨センサ133aとして、静電容量式感雨計、光学式の感雨センサ、櫛型濡れセンサ、静電容量式の水位センサを有する雨量計、着雪検知センサ、重量式雨量計など、種々採用可能である。
【0027】
降雨又は降雪の検出方法として、図8に示す別の変形例が挙げられる。図8に示すように、降雨検出部233は、水蒸気量算出部32が算出する水蒸気量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを検出する。具体的には、水蒸気量が所定の傾き以上で減少したこと又は上昇したことに基づき降雨又は降雪しているか否かを判定する。図4に示すように、水蒸気量が所定の傾き以上で減少した時点から、水蒸気量が所定の傾き以上で上昇した時点までを降雨又は降雪している期間と判定することが挙げられる。補正部34は、降雨又は降雪していると判定された期間T1の水蒸気量を、降雨又は降雪していると判定された期間T1の雲水データに基づいて補正する。
【0028】
降雨又は降雪の検出方法として、図1に示す降雨検出部33を、雲水データD2が示す雲水量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを判断するように構成してもよい。一例としては、降雨検出部33は、雲水量が所定の傾き以上で上昇したこと又は減少したことに基づき降雨又は降雪しているか否かを判定する。補正部34は、降雨又は降雪していると判定された期間T1の水蒸気量を、降雨又は降雪していると判定された期間T1の雲水データD2に基づいて補正することが挙げられる。図4に示すように、雲水量が所定の傾き以上で上昇した時点から、雲水量が所定の傾き以上で減少した時点までを降雨又は降雪している期間と判定することが挙げられる。
【0029】
以上のように、本実施形態の水蒸気観測計は、
電磁波透過面2と、
電磁波透過面2を通過した電磁波を受信可能に構成されている鉛直上向きのホーン1と、
ホーン1が受信した電磁波に基づき水蒸気に関する水蒸気データD1を生成する水蒸気データ生成部30と、
ホーン1が受信した電磁波に基づき雲水に関する雲水データD2を生成する雲水データ生成部31と、
水蒸気データD1と雲水データD2とを用いて水蒸気量S1を算出する水蒸気量算出部32と、
を備える。
【0030】
本実施形態の水蒸気観測方法は、
電磁波透過面2を通過した電磁波を鉛直上向きのホーン1で受信すること、
ホーン1が受信した電磁波に基づき水蒸気に関する水蒸気データD1を生成すること、
ホーン1が受信した電磁波に基づき雲水に関する雲水データD2を生成すること、
水蒸気データD1と雲水データD2とを用いて水蒸気量S1を算出すること、
を含む。
【0031】
このように、鉛直上向きのホーン1で電磁波を受信可能に構成しているので、ホーン1の上方に存在する水蒸気量の総量を計測することができ、例えばホーンを横向きにして鉛直下向き以外の電磁波を受信する場合に比べて水蒸気量を容易に計測可能となる。
さらに、水蒸気量に影響を与える雲水データD2を用いて水蒸気量を算出するので、水蒸気量の算出精度を向上させることが可能となる。
したがって、大気における雲水、計測器に付着した水又は雪の影響を考慮して、水蒸気量を精度よく且つ容易に観測可能な水蒸気観測計及び水蒸気観測方法を提供可能となる。
【0032】
本実施形態のように、雲水データ生成部31は、少なくとも2つの周波数(18GHz、26GHz)の電波強度に基づき雲水データD2を生成することが好ましい。
【0033】
雲水量に応じて雲水スペクトルの大きさ及び傾斜が変わる。よって、少なくとも2つの周波数(18GHz、26GHz)の電波強度を用いることで、スペクトルの傾斜を考慮した雲水データD2を特定可能となる。
【0034】
本実施形態のように、雲水データ生成部31は、少なくとも2つの周波数(18GHz、26GHz)の電波強度に基づき、周波数と電波強度のスペクトル図における仮想線Lを特定する。水蒸気量算出部32は、少なくとも2つの周波数(18GHz、26GHz)以外の所定周波数(22GHz)における電波強度と、仮想線Lとに基づき水蒸気量を算出することが好ましい。
【0035】
このように仮想線Lに基づき水蒸気量を算出するので、水蒸気量の精度を向上させることが可能となる。
【0036】
本実施形態のように、ホーン1が設置されている位置の降雨又は降雪を検出する降雨検出部33、133、233と、
降雨検出部33、133、233が降雨又は降雪を検出した場合に、雲水データD2に基づき水蒸気量を補正する補正部34と、を有することが好ましい。
【0037】
降雨又は降雪により雲水量が増え、逆に水蒸気量が減る。よって、降雨又は降雪を検出した場合には、雲水データに基づき水蒸気量を補正することで、適切な水蒸気量を得ることが可能となる。
【0038】
図7に示す例のように、降雨検出部133は、降雨センサ133aであることが好ましい。
この構成によれば、ホーン1が設置されている位置の降雨を直接的に検出可能となる。
【0039】
図1に示す例のように、降雨検出部33は、雲水データD2に基づき降雨又は降雪しているかを判定することが好ましい。
この構成によれば、降雨センサや他の機器を用いずに降雨又は降雪を検出可能となる。
【0040】
図1又は図6の例のように、降雨検出部33は、雲水データD2が示す雲水量が所定閾値Th1以上になる場合に降雨又は降雪と判定し、補正部34は、雲水データD2に応じた補正値を算出し、補正値を水蒸気量に加算することが好ましい。
【0041】
この構成によれば、雲水量に基づく簡素な判定で水蒸気量を補正可能となる。
【0042】
図1の例のように、降雨検出部33は、雲水データD2が示す雲水量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを判定することが好ましい。
【0043】
この構成によれば、降雨又は降雪により雲水量が著しく増大することを利用して、雲水量の時間変化に基づき降雨又は降雪が判定でき、他の機器を省略可能となる。
【0044】
図1の例のように、降雨検出部33は、雲水量が所定の傾き以上で上昇したこと又は減少したことに基づき降雨又は降雪しているか否かを判定し、補正部34は、降雨又は降雪していると判定された期間T1の水蒸気量を、降雨又は降雪していると判定された期間T1の雲水データに基づいて補正することが好ましい。
【0045】
この構成により、降雨判定を雲水量の時間変化に基づき実現でき、水蒸気量の補正が可能となる。
【0046】
図8の例のように、水蒸気量算出部32は、所定の時間毎に水蒸気量を算出し、降雨検出部233は、水蒸気量の時間変化に基づき降雨又は降雪しているかを判定することが好ましい。
【0047】
この構成によれば、降雨又は降雪により水蒸気量が著しく減衰することを利用して、水蒸気量の時間変化に基づき降雨又は降雪が判定でき、他の機器を省略可能となる。
【0048】
図8の例のように、降雨検出部233は、水蒸気量が所定の傾き以上で減衰した又は復帰した場合に降雨又は降雪していると判定し、補正部34は、降雨又は降雪していると判定された期間T1の水蒸気量を、降雨又は降雪していると判定された期間T1の雲水データに基づいて補正することが好ましい。
【0049】
この構成により、降雨判定を水蒸気量に基づき実現でき、水蒸気量の補正が可能となる。
【0050】
本実施形態のように、ホーン1又は電磁波透過面2に付着した水又は雪を除去する除去部4、104を有することが好ましい。
【0051】
この構成によれば、ホーン1又は電磁波透過面2に付着した水又は雪は、受信電磁波に影響を与えるので、除去部4、104によりホーン1又は電磁波透過面2に付着した水又は雪を除去することで、水蒸気観測の精度を向上させることが可能となる。
【0052】
図1図7又は図8の例のように、除去部4は、風力を用いて前記水又は雪を除去することが好ましい。除去部4の好ましい実施例である。
【0053】
図6の例では、除去部104は、振動により前記水又は雪を除去することが好ましい。除去部104の好ましい実施例である。
【0054】
本実施形態のように、除去部4、104は、降雨検出部33、133、233が降雨又は降雪を検出した場合に、水又は雪を除去することが好ましい。
【0055】
この構成によれば、電磁波の受信を妨げる水又は雪を適切に除去し、水蒸気量の算出精度を向上させることが可能となる。
【0056】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0057】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。
【0058】
各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 ホーン
2 電磁波透過面
D1 水蒸気データ
D2 雲水データ
30 水蒸気データ生成部
31 雲水データ生成部
32 水蒸気量算出部
33、133、233 降雨検出部
34 補正部
4、104 除去部
【用語】
【0060】
必ずしも全ての目的または効果・利点が、本明細書中に記載される任意の特定の実施形態に則って達成され得るわけではない。従って、例えば当業者であれば、特定の実施形態は、本明細書中で教示または示唆されるような他の目的または効果・利点を必ずしも達成することなく、本明細書中で教示されるような1つまたは複数の効果・利点を達成または最適化するように動作するように構成され得ることを想到するであろう。
【0061】
本明細書中に記載される全ての処理は、1つまたは複数のコンピュータまたはプロセッサを含むコンピューティングシステムによって実行されるソフトウェアコードモジュールにより具現化され、完全に自動化され得る。コードモジュールは、任意のタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体または他のコンピュータ記憶装置に記憶することができる。一部または全ての方法は、専用のコンピュータハードウェアで具現化され得る。
【0062】
本明細書中に記載されるもの以外でも、多くの他の変形例があることは、本開示から明らかである。例えば、実施形態に応じて、本明細書中に記載されるアルゴリズムのいずれかの特定の動作、イベント、または機能は、異なるシーケンスで実行することができ、追加、併合、または完全に除外することができる (例えば、記述された全ての行為または事象がアルゴリズムの実行に必要というわけではない)。さらに、特定の実施形態では、動作またはイベントは、例えば、マルチスレッド処理、割り込み処理、または複数のプロセッサまたはプロセッサコアを介して、または他の並列アーキテクチャ上で、逐次ではなく、並列に実行することができる。さらに、異なるタスクまたはプロセスは、一緒に機能し得る異なるマシンおよび/またはコンピューティングシステムによっても実行され得る。
【0063】
本明細書中に開示された実施形態に関連して説明された様々な例示的論理ブロックおよびモジュールは、プロセッサなどのマシンによって実施または実行することができる。プロセッサは、マイクロプロセッサであってもよいが、代替的に、プロセッサは、コントローラ、マイクロコントローラ、またはステートマシン、またはそれらの組み合わせなどであってもよい。プロセッサは、コンピュータ実行可能命令を処理するように構成された電気回路を含むことができる。別の実施形態では、プロセッサは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはコンピュータ実行可能命令を処理することなく論理演算を実行する他のプログラマブルデバイスを含む。プロセッサはまた、コンピューティングデバイスの組み合わせ、例えば、デジタル信号プロセッサ(デジタル信号処理装置)とマイクロプロセッサの組み合わせ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと組み合わせた1つ以上のマイクロプロセッサ、または任意の他のそのような構成として実装することができる。本明細書中では、主にデジタル技術に関して説明するが、プロセッサは、主にアナログ素子を含むこともできる。例えば、本明細書中に記載される信号処理アルゴリズムの一部または全部は、アナログ回路またはアナログとデジタルの混合回路により実装することができる。コンピューティング環境は、マイクロプロセッサ、メインフレームコンピュータ、デジタル信号プロセッサ、ポータブルコンピューティングデバイス、デバイスコントローラ、または装置内の計算エンジンに基づくコンピュータシステムを含むが、これらに限定されない任意のタイプのコンピュータシステムを含むことができる。
【0064】
特に明記しない限り、「できる」「できた」「だろう」または「可能性がある」などの条件付き言語は、特定の実施形態が特定の特徴、要素および/またはステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝達するために一般に使用される文脈内での意味で理解される。従って、このような条件付き言語は、一般に、特徴、要素および/またはステップが1つ以上の実施形態に必要とされる任意の方法であること、または1つ以上の実施形態が、これらの特徴、要素および/またはステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、または実行されるかどうかを決定するための論理を必然的に含むことを意味するという訳ではない。
【0065】
語句「X、Y、Zの少なくとも1つ」のような選言的言語は、特に別段の記載がない限り、項目、用語等が X, Y, Z、のいずれか、又はそれらの任意の組み合わせであり得ることを示すために一般的に使用されている文脈で理解される(例: X、Y、Z)。従って、このような選言的言語は、一般的には、特定の実施形態がそれぞれ存在するXの少なくとも1つ、Yの少なくとも1つ、またはZの少なくとも1つ、の各々を必要とすることを意味するものではない。
【0066】
本明細書中に記載されかつ/または添付の図面に示されたフロー図における任意のプロセス記述、要素またはブロックは、プロセスにおける特定の論理機能または要素を実装するための1つ以上の実行可能命令を含む、潜在的にモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すものとして理解されるべきである。代替の実施形態は、本明細書中に記載された実施形態の範囲内に含まれ、ここでは、要素または機能は、当業者に理解されるように、関連する機能性に応じて、実質的に同時にまたは逆の順序で、図示または説明されたものから削除、順不同で実行され得る。
【0067】
特に明示されていない限り、「一つ」のような数詞は、一般的に、1つ以上の記述された項目を含むと解釈されるべきである。従って、「~するように設定された一つのデバイス」などの語句は、1つ以上の列挙されたデバイスを含むことを意図している。このような1つまたは複数の列挙されたデバイスは、記載された引用を実行するように集合的に構成することもできる。例えば、「以下のA、BおよびCを実行するように構成されたプロセッサ」は、Aを実行するように構成された第1のプロセッサと、BおよびCを実行するように構成された第2のプロセッサとを含むことができる。加えて、導入された実施例の具体的な数の列挙が明示的に列挙されたとしても、当業者は、このような列挙が典型的には少なくとも列挙された数(例えば、他の修飾語を用いない「2つの列挙と」の単なる列挙は、通常、少なくとも2つの列挙、または2つ以上の列挙を意味する)を意味すると解釈されるべきである。
【0068】
一般に、本明細書中で使用される用語は、一般に、「非限定」用語(例えば、「~を含む」という用語は「それだけでなく、少なくとも~を含む」と解釈すべきであり、「~を持つ」という用語は「少なくとも~を持っている」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「以下を含むが、これらに限定されない。」などと解釈すべきである。) を意図していると、当業者には判断される。
【0069】
説明の目的のために、本明細書中で使用される「水平」という用語は、その方向に関係なく、説明されるシステムが使用される領域の床の平面または表面に平行な平面、または説明される方法が実施される平面として定義される。「床」という用語は、「地面」または「水面」という用語と置き換えることができる。「垂直/鉛直」という用語は、定義された水平線に垂直/鉛直な方向を指します。「上側」「下側」「下」「上」「側面」「より高く」「より低く」「上の方に」「~を越えて」「下の」などの用語は水平面に対して定義されている。
【0070】
本明細書中で使用される用語の「付着する」、「接続する」、「対になる」及び他の関連用語は、別段の注記がない限り、取り外し可能、移動可能、固定、調節可能、及び/または、取り外し可能な接続または連結を含むと解釈されるべきである。接続/連結は、直接接続及び/または説明した2つの構成要素間の中間構造を有する接続を含む。
【0071】
特に明示されていない限り、本明細書中で使用される、「およそ」、「約」、および「実質的に」のような用語が先行する数は、列挙された数を含み、また、さらに所望の機能を実行するか、または所望の結果を達成する、記載された量に近い量を表す。例えば、「およそ」、「約」及び「実質的に」とは、特に明示されていない限り、記載された数値の10%未満の値をいう。本明細書中で使用されているように、「およそ」、「約」、および「実質的に」などの用語が先行して開示されている実施形態の特徴は、さらに所望の機能を実行するか、またはその特徴について所望の結果を達成するいくつかの可変性を有する特徴を表す。
【0072】
上述した実施形態には、多くの変形例および修正例を加えることができ、それらの要素は、他の許容可能な例の中にあるものとして理解されるべきである。そのような全ての修正および変形は、本開示の範囲内に含まれることを意図し、以下の特許請求の範囲によって保護される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8