(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】採水方法、採水装置、及び採水システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20230711BHJP
G01N 1/10 20060101ALI20230711BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01N1/00 A
G01N1/10 B
G01N33/18 F
(21)【出願番号】P 2021054183
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-02-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
(72)【発明者】
【氏名】片山 浩之
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】▲高▼見 重雄
【審判官】石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-26257(JP,A)
【文献】特開2007-263892(JP,A)
【文献】特開2007-263893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00-1/34
G01N33/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記指標値の参照値と微生物学的負荷との相関を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにおいて算出された前記相関が高い前記指標値を閾値として選択する選択ステップと、
前記検出ステップにおいて検出された前記指標値が
前記選択ステップにおいて選択された前記閾値に達したか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップにおいて前記指標値が前記閾値に達したと判定すると、前記流路を流れる前記液体を前記微生物の測定に用いられる液体試料として採水流路を介して採水する採水ステップと、
を含む、
採水方法。
【請求項2】
前記採水ステップにおいて採水された前記液体を貯水槽に溜める貯水ステップを含む、
請求項1に記載の採水方法。
【請求項3】
前記採水ステップにおいて採水された前記液体に含まれる前記微生物をフィルタにより回収する回収ステップを含む、
請求項1又は2に記載の採水方法。
【請求項4】
前記回収ステップにおいて前記フィルタにより回収された前記微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップを含む、
請求項3に記載の採水方法。
【請求項5】
流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出するセンサ部と、
前記センサ部により検出された前記指標値が閾値に達したか否かを判定する演算部と、
前記指標値が前記閾値に達したと前記演算部が判定すると、前記流路を流れる前記液体を前記微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路を制御する制御部と、
を備え
、
前記演算部は、前記センサ部により検出された前記指標値の参照値と微生物学的負荷との相関を算出し、前記相関が高い前記指標値を前記閾値として選択する、
採水装置。
【請求項6】
請求項5に記載の採水装置と、
前記液体試料として採水される前記液体が流れる前記採水流路と、
を備える、
採水システム。
【請求項7】
前記制御部による前記採水流路の制御に基づいて採水された前記液体を溜める貯水槽を備える、
請求項6に記載の採水システム。
【請求項8】
前記制御部による前記採水流路の制御に基づいて採水された前記液体に含まれる前記微生物を回収するフィルタを備える、
請求項6又は7に記載の採水システム。
【請求項9】
前記フィルタにより回収された前記微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮装置を備える、
請求項8に記載の採水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、採水方法、採水装置、及び採水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば水処理インフラにおける処理水の水質を管理したり、海洋などの水域の水質を検査したりすることを目的とした液体の採水に関連する技術が知られている。例えば、非特許文献1には、バンドン採水器及びニスキン採水器などを含む典型的な採水器では一度に採水できない量の液体を必要とするときに、採水チューブを目的の場所又は水深まで到達させて、吸引ポンプの駆動により連続的に採水する方法が記載されている。例えば、非特許文献2には、陰電荷膜を用いて液体中から微生物を回収する陰電荷膜法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Inoue et al, “Spatial and temporal profiles of enteric viruses in the coastal waters of Tokyo Bay during and after a series of rainfall events”, Science of The Total Environment, 2020年7月, Vol. 727, 138502
【文献】Katayama et al, “Development of a Virus Concentration Method and Its Application to Detection of Enterovirus and Norwalk Virus from Coastal Seawater”, Applied and Environmental Microbiology, 2002年3月, Vol. 68, No. 3, p.1033-1039
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水処理システムでは、所定の微生物学的負荷に対してどれだけの制御性能が発揮可能であるかに関する情報が必要となる。しかしながら、例えば非特許文献1に記載の従来技術では、いかに素早く短時間に液体を採水するかに主眼が置かれている。すなわち、非特許文献1及び2に記載の従来技術では、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体を採水することについては十分に考慮されていなかった。
【0005】
本開示は、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる採水方法、採水装置、及び採水システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る採水方法は、流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する検出ステップと、前記検出ステップにおいて検出された前記指標値が閾値に達したか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップにおいて前記指標値が前記閾値に達したと判定すると、前記流路を流れる前記液体を前記微生物の測定に用いられる液体試料として採水流路を介して採水する採水ステップと、を含む。
【0007】
これにより、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる。すなわち、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体を採水することが可能である。したがって、指標値が閾値に達するような液体の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、指標値が閾値に達したときに微生物の測定に用いられる液体試料として液体を採水することで、指標値が閾値に達したタイミングで適切に採水処理が実行可能である。
【0008】
一実施形態に係る採水方法は、前記採水ステップにおいて採水された前記液体を貯水槽に溜める貯水ステップを含んでもよい。これにより、採水流路を介して採水された液体を所定時間にわたり溜めることが可能となる。
【0009】
一実施形態に係る採水方法は、前記採水ステップにおいて採水された前記液体に含まれる前記微生物をフィルタにより回収する回収ステップを含んでもよい。これにより、後段の微生物の測定において、より簡便に微生物学的負荷を評価することが可能となる。
【0010】
一実施形態に係る採水方法は、前記回収ステップにおいて前記フィルタにより回収された前記微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮ステップを含んでもよい。これにより、微生物学的負荷の指標をフィルタにより直接的に回収して微生物を濃縮することが可能となる。したがって、後段の微生物の測定において濃縮前では検出下限以下となるような液体試料であっても評価可能な液体試料とすることができる。
【0011】
幾つかの実施形態に係る採水装置は、流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出するセンサ部と、前記センサ部により検出された前記指標値が閾値に達したか否かを判定する演算部と、前記指標値が前記閾値に達したと前記演算部が判定すると、前記流路を流れる前記液体を前記微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路を制御する制御部と、を備える。
【0012】
これにより、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる。すなわち、採水装置は、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体を採水可能である。したがって、採水装置は、指標値が閾値に達するような液体の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、採水装置は、指標値が閾値に達したと演算部が判定すると、微生物の測定に用いられる液体試料として液体を採水することで、指標値が閾値に達したタイミングで適切に採水処理を実行することができる。
【0013】
幾つかの実施形態に係る採水システムは、上記の採水装置と、前記液体試料として採水される前記液体が流れる前記採水流路と、を備える。
【0014】
これにより、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる。すなわち、採水システムは、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体を採水可能である。したがって、採水システムは、指標値が閾値に達するような液体の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、採水システムは、指標値が閾値に達したと演算部が判定すると、微生物の測定に用いられる液体試料として液体を採水することで、指標値が閾値に達したタイミングで適切に採水処理を実行することができる。
【0015】
一実施形態に係る採水システムは、前記制御部による前記採水流路の制御に基づいて採水された前記液体を溜める貯水槽を備えてもよい。これにより、採水システムは、採水装置の制御部による採水流路の制御に基づいて採水された液体を所定時間にわたり溜めることが可能となる。
【0016】
一実施形態に係る採水システムは、前記制御部による前記採水流路の制御に基づいて採水された前記液体に含まれる前記微生物を回収するフィルタを備えてもよい。これにより、後段の微生物の測定において、より簡便に微生物学的負荷を評価することが可能となる。
【0017】
一実施形態に係る採水システムは、前記フィルタにより回収された前記微生物を濃縮して濃縮液を精製する濃縮装置を備えてもよい。これにより、採水システムは、微生物学的負荷の指標をフィルタにより直接的に回収して微生物を濃縮することができる。したがって、採水システムは、後段の微生物の測定において濃縮前では検出下限以下となるような液体試料であっても評価可能な液体試料とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる採水方法、採水装置、及び採水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る採水システムの概略構成図である。
【
図2】
図1の採水装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図1の採水システムにより実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1の採水システムの第1変形例を示す概略構成図である。
【
図5】
図4の採水システムにより実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の採水システムの第2変形例を示す概略構成図である。
【
図7】
図6の採水システムにより実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本開示の第2実施形態に係る採水システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
背景技術及び課題についてより詳細に説明する。
【0021】
例えば、非特許文献1では、採水された大量の液体を採水容器に保管することができない場合、目的のウイルス又は粒子などを陰電荷膜に吸着させて回収し、透過した液体を現場に排水することも記載されている。
【0022】
以上のような非特許文献1に記載の従来技術に加えて、液体の採水に関連する技術として例えば以下のものも知られている。
【0023】
例えば、液体を採水する典型的な採水器として、バンドン採水器及びニスキン採水器が知られている。このような典型的な採水器は、ロープの先端に取り付けられた状態で、プール、海洋、及び河川などの水域において目的の水深へ沈められる。典型的な採水器は、ロープに沿ってメッセンジャーが採水器まで落下することで蓋を閉じる。典型的な採水器は、液体試料を回収したい地点又は水深における特定のタイミングの試料を回収する。
【0024】
例えば、採水のためのオートサンプラの例として、プログラムされたタイミングで数mLから10Lの液体を採水可能な自動採水装置も知られている。このようなオートサンプラは、瞬間水質を把握するためにタイマー制御などで管理された自動採水器で実施されている。例えば、オートサンプラは、採水対象地点とつながった配管又はホースを介して、水質分析室に液体を流し、時間ごと、日ごと、週ごと、及び月ごとなどにおいて定期的に数mLから数Lを採水する。
【0025】
水処理システムでは、例えば最悪又は最大の微生物学的負荷に対してどれだけの制御性能が発揮可能であるかに関する情報が必要となる。しかしながら、上記の従来技術のいずれにおいても、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体の採水を行うことについては十分に考慮されていなかった。
【0026】
例えば、非特許文献1に記載の従来技術では、採水は、特定のタイミングで数秒から数十分以内の時間に限定される。したがって、処理水又は水域の水質の解析可能範囲は、採水時点のものに限定される。すなわち、採水した液体は、水処理システムで最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体の水質を把握する目的に適合した代表的なサンプルであるとはいえない。とりわけ、河川水及び下水などでは、工場排水及び家庭排水を含む流域からの流出負荷並びに天候の影響を受けやすい。したがって、採水時点に限定した瞬間的な採水では、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体の水質を実態的に反映していない可能性が高い。
【0027】
このような問題は、上述した典型的な採水器及びオートサンプラにも同様に当てはまる。典型的な採水器を用いた採水方法では、特定のタイミングで採水が行われ、当該採水時点での瞬間的なスナップショットとして液体試料を解析することができるに留まる。同様に、オートサンプラを用いた採水方法では、タイマーで設定された特定のタイミングで採水が行われ、当該採水時点での瞬間的なスナップショットとして液体試料を解析することができるに留まる。以上のような断続的な採水においても、微生物学的負荷の増減が適切にモニタリングできておらず、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体の水質を実態的に反映していない可能性が高い。
【0028】
したがって、従来技術を用いて採水した液体は、水処理システムにおける処理水の水質を管理したり、その制御性能を把握したりする目的に適合した代表的なサンプルであるとはいえない。最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体試料を回収できなければ、最大負荷の定量的な情報を取得することができず、例えば水処理システムの制御性能の上限に対する最大負荷の重要な情報が漏れてしまう。一方で、長時間の連続した採水又は高頻度の断続的な採水を実施すると、採水者への負担が重くなる。
【0029】
以下では、これらの問題を解決可能な採水装置10、採水システム100、及び採水方法について説明する。
【0030】
以下で説明する採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、多様な分野及び用途に応用可能である。例えば、これらは、浄水場、下水処理場、水再生施設、及び海水淡水化施設などを含む水処理インフラにおいて水質管理及び処理性能を把握するための採水に用いることができる。このとき、採水した液体中で負電荷に帯電して浮遊する微粒子、コロイド分散系、及び微生物などがフィルタによって効率良く回収されてもよい。
【0031】
例えば、採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、水処理インフラを構成する、凝集槽、沈殿槽、砂ろ過、精密ろ過膜、限外ろ過膜、逆浸透膜、オゾン接触槽、活性炭ろ過槽、UV照射槽、及び塩素剤を用いた消毒槽などを含む水処理システムの処理性能を把握するための採水に用いることができる。
【0032】
例えば、採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、河川、海洋、及び親水域などの環境調査における動態を把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる液体の採水に応用可能である。
【0033】
例えば、採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、水域及び環境インフラを網羅する都市の微生物感染リスクを把握するために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる液体の採水に応用可能である。
【0034】
例えば、採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、飲料用又は加工食品の製造に使用される液体の質的リスク、安全把握、及び品質管理などを目的として、リスクを定量化したり、安全と判定できる閾値との比較検証を行ったりするために、微粒子、コロイド分散系、及び微生物などの水質の検査に用いる液体の採水に応用可能である。
【0035】
例えば、採水装置10、採水システム100、及び採水方法は、医薬品の製造などの品質管理検査に用いる液体の採水に応用可能である。
【0036】
本明細書において、微生物学的負荷の対象とする「微生物」は、例えば原虫、細菌、及びウイルスなどを含む。「原虫」は、例えばクリプトスポリジウム及びジアルジアなどを含む。「細菌」は、例えば大腸菌、ブドウ球菌、コレラ菌、結核菌、及びピロリ菌などを含む。「ウイルス」は、例えばノロウイルス、アデノウイルス、腸管系ウイルス、及びトウガラシ微斑ウイルス(Pepper Mild Mottle Virus:PMMoV)などを含む。
【0037】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る採水システム100の概略構成図である。
図1を参照しながら、第1実施形態に係る採水システム100の構成及び機能について主に説明する。
図1において、各構成要素を結合する実線矢印は、液体の流れを示す。採水装置10を起点とする破線矢印は、信号の流れを示す。
【0039】
採水システム100は、例えば水処理インフラにおける処理水などの液体を液体試料として採水及び保管するために用いられるシステムである。採水システム100により液体試料として採水される液体は、例えば水処理インフラの一部を構成する配管を一方向に流れる。例えば、このような液体の水質は、時間によって変化するとする。配管は、水処理インフラにおいて主要な流路を構成してもよいし、主要な流路から分岐したバイパス流路を構成してもよい。
【0040】
採水システム100は、採水口101を有する。採水口101は、例えば水処理インフラの一部を構成する上記の配管の側面に取り付けられる着脱式のバルブを含む。このような配管を一方向に流れる液体の一部は、配管におけるバルブの設置個所を採水点として採水システム100により採水される。
【0041】
採水システム100は、採水システム100における採水プロセスを制御する採水装置10を有する。採水装置10は、採水口101の下流側に配置される。採水システム100は、採水装置10よりも下流側に配置される貯水槽20を有する。採水システム100は、採水装置10と貯水槽20との間で液体の流れが2つに分岐する採水流路102a及び排水流路102bを有する。採水システム100は、採水流路102a及び排水流路102bへの分岐点と採水口101との間に位置する流路102cを有する。採水装置10は、流路102c上に配置される。採水システム100は、採水流路102aにおいて採水装置10と貯水槽20との間に配置される第1電磁弁103aと、排水流路102bにおいて配置される第2電磁弁103bと、を有する。
【0042】
第1電磁弁103aが開状態でかつ第2電磁弁103bが閉状態であるとき、採水口101から採水システム100に流入した液体は、流路102cを通過した後、採水流路102aを流れて貯水槽20へと流入する。貯水槽20は、採水流路102aにおいて採水口101と反対側に位置する端部に配置され、採水流路102aを流れてきた液体を溜める。第1電磁弁103aが閉状態でかつ第2電磁弁103bが開状態であるとき、採水口101から採水システム100に流入した液体は、流路102cを通過した後、排水流路102bを流れて排水管へと導かれる。
【0043】
図1のように採水口101から各流路を経由して液体が流れる場合、液体に含まれる濁質及び沈殿物などにより、各流路を構成する配管が閉塞される可能性がある。このような配管の閉塞を抑制するために、各流路を流れる液体の流速が1m/sec以上となるように各流路を構成する配管が設計されてもよい。例えば、各流路を構成する配管の内径が15mmの場合、流速1m/secに対応する流量は、約170mL/sec(約10L/min)である。
【0044】
図2は、
図1の採水装置10の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2を参照しながら、
図1の採水装置10の構成及び機能について主に説明する。採水装置10は、センサ部11、演算部12、及び制御部13を有する。
【0045】
センサ部11は、流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する任意のセンサ素子、センサモジュール、又はセンサ装置を含む。例えば、センサ部11は、
図1の流路102c上に配置され、採水口101から採水システム100に流入した液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する。センサ部11は、検出した指標値を検出信号として演算部12に出力する。
【0046】
本明細書において、「指標値」は、例えばフローサイト粒子、濁度、色度、化学的酸素要求量(COD)、生物化学的酸素要求量(BOD)、全有機炭素(TOC)、溶存酸素量(DO)、浮遊物質(SS)、クロロフィル濃度、全窒素(T-N)、全リン(T-P)、有機性汚濁物質濃度(紫外吸収分析)、アデノシン三リン酸(ATP)、及び酵素活性などを含む。
【0047】
例えば、指標値がフローサイト粒子を含むとき、センサ部11はフローイメージング装置を含む。例えば、指標値が濁度を含むとき、センサ部11は比濁センサ及び吸光センサなどを含む。例えば、指標値が色度を含むとき、センサ部11は透過光方式の色度計を含む。例えば、指標値がCODを含むとき、センサ部11はCOD分析計を含む。例えば、指標値がBODを含むとき、センサ部11はBOD測定器及びバイオセンサ式迅速BOD測定器などを含む。
【0048】
例えば、指標値がTOCを含むとき、センサ部11はTOC計を含む。例えば、指標値がDOを含むとき、センサ部11は光学式のDO計を含む。例えば、指標値がSSを含むとき、センサ部11は後方散乱光方式又は透過光方式のSSセンサを含む。例えば、指標値がクロロフィル濃度を含むとき、センサ部11は蛍光クロロフィルセンサを含む。例えば、指標値がT-Nを含むとき、センサ部11は、UV法、硫酸ヒドラジン還元法、及び銅・カドミウム還元法などに基づく装置、並びに自動定量装置などを含む。
【0049】
例えば、指標値がT-Pを含むとき、センサ部11は、加熱濃縮法及び溶媒抽出法などに基づく装置、並びに自動定量装置などを含む。例えば、指標値が有機性汚濁物質濃度(紫外吸収分析)を含むとき、センサ部11はUV計を含む。例えば、指標値がATPを含むとき、センサ部11はATP測定器を含む。例えば、指標値が酵素活性を含むとき、センサ部11は酵素基質蛍光センサ、比色センサ、及び光センサなどを含む。
【0050】
演算部12は、センサ部11により検出された指標値が閾値に達したか否かを判定する。演算部12は、このような判定処理を実行することが可能な任意の演算素子又は演算モジュールを含む。演算部12は、センサ部11により検出された指標値と比較するための閾値を、例えば水処理インフラの処理施設ごとに異なるように設定してもよい。
【0051】
例えば、既設の処理施設である場合、システムの稼働中に取得した指標値の参照値と微生物学的負荷との相関を算出し、相関が高い指標値が閾値として選択されてもよい。例えば、既設の処理施設である場合、システムの稼働中に取得した指標値から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値をあらかじめ算出し、平均値からの変動値から閾値が設定されてもよい。
【0052】
変動値は、システムの稼働中に取得した指標値から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値と標準偏差σとをあらかじめ算出し、標準偏差から平均値の信頼区間を設定し信頼区間を超える値を有意差有りとして閾値とすることができる。変動値は、システムの稼働中に取得した指標値の対数から日内変動、日間変動、週間変動、月間変動、及び季節性変動などの平均値と標準偏差σとをあらかじめ算出し、標準偏差から平均値の信頼区間を設定し信頼区間を超える値を有意差有りとして閾値とすることができる。
【0053】
信頼区間は、任意に設定可能であるが、平均値の95%から外れる値を異常値とする場合、平均値に1.96σを足した値に基づいて設定される。信頼区間は、平均値の99%から外れる値を異常値とする場合、平均値に2.33σを足した値に基づいて設定される。
【0054】
閾値は、信頼区間として設定せずに降雨状況などの環境要因で高値を示した経験値から設定されてもよい。上記の変動値は、システムの稼働中に取得した指標値を常に閾値算出にフィードバックするように機械学習などに組み込まれてもよい。閾値は、1つの指標値の閾値とはせずに、複数の指標値の主成分回帰分析及びクラシフィケーションなどの多変量解析、ニューラルネットワーク、並びに機械学習などによって得られた結果に基づいてもよい。この場合も閾値算出に常にデータがフィードバックされてもよい。
【0055】
ウイルスなどの微生物学的汚染は必ずしも指標値と線形的な相関を示さないことが想定される。濁度などの指標値が高い場合に微生物学的汚染が相対的に高い場合を除き、光学的な観点からも非常に小さいウイルスなどが濁度及びTOCなどの指標値と線形的な相関を示さないことが想定される。このような場合であっても、複数の指標値に対する機械学習結果に基づいて、土地及び水処理システムなどの採水地点固有の非線形性を含めた傾向を把握することが可能となる。すなわち、非線形性を含めた傾向が採水地点固有のものであるため、採水装置10は、機械学習を実行しながら採水方法をその採水地点に経験的に適合させてもよい。
【0056】
その他にも、閾値は、外れ値を検定するスミルノフ・グラブス検定及び四分位範囲の利用などを含む外れ値検出の統計的手法を用いて設定されてもよい。
【0057】
制御部13は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部13は、採水装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、採水装置10全体の動作を制御する。制御部13は、指標値が閾値に達したと演算部12が判定すると、微生物の測定に用いられる液体を採水する。より具体的には、制御部13は、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路102aを制御する。
【0058】
より具体的には、制御部13は、指標値が閾値に達したと演算部12が判定すると、その判定結果に関する出力信号を演算部12から取得する。制御部13は、このような出力信号を演算部12から取得すると、微生物の測定に用いられる液体が採水流路102aを流れて貯水槽20に流入するように採水流路102aを制御する。
【0059】
例えば、
図1を参照すると、2つの第1電磁弁103a及び第2電磁弁103bはあらかじめ閉状態である。制御部13は、指標値が閾値に達していないと演算部12が判定した判定結果に関する出力信号を演算部12から取得すると、第2電磁弁103bを開状態にする制御信号を第2電磁弁103bに出力する。これにより、第1電磁弁103aが閉状態のまま、第2電磁弁103bが開状態となる。制御部13は、この状態で、指標値が閾値に達したと演算部12が判定した判定結果に関する出力信号を演算部12から取得すると、第1電磁弁103aを開状態にし、かつ第2電磁弁103bを閉状態にする制御信号を第1電磁弁103a及び第2電磁弁103bに出力する。これにより、第2電磁弁103bが開状態から閉状態に移行し、第1電磁弁103aは閉状態から開状態に移行する。このとき、貯水槽20は、制御部13による採水流路102aの制御に基づいて採水流路102aを介して採水された液体を溜める。
【0060】
採水装置10は、リアルタイムによる常時モニタリング又は数分から数時間の測定時間による連続的な監視をセンサ部11により実行してもよい。採水装置10の演算部12は、このような連続的な監視により、液体の貯水槽20への採水の要否を指標値と閾値との比較に基づいて判断してもよい。採水装置10は、液体の貯水槽20への採水が必要と判定したときに、数mLから1000Lまでの範囲の採水量が達成されるように採水流路102aを制御してもよい。
【0061】
採水された液体は、液体に含まれる微生物を測定可能な任意の測定装置によって液体試料として測定される。より具体的には、採水された液体は、液体に含まれる微生物の検出及びその他の定性的又は定量的な測定に用いることができる。微生物の検出及びその他の定性的又は定量的な測定に用いられる方法は、培養法、ATP測定、カタラーゼ測定、CO2測定、MALDI-TOF-MS同定法、qPCR、LAMP法、DNA塩基配列解析法、DNAマイクロアレイ法、イムノクロマト法、キャピラリー電気泳動、染色法、蛍光法、酵素法、電気インピーダンス法、及びマイクロコロニー検出法などを含む。
【0062】
上記の測定装置は、標識抗体法などの方法を実行してもよい。測定装置は、例えば、組織又は細胞内の特定の染色体又は遺伝子の発現を、蛍光物質を用いて蛍光測定する蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を実行してもよい。この他にも、測定装置は、ユーロピウムなどの蛍光発光物質を標識として抗原抗体反応を測定する蛍光免疫測定(FIA)法、抗原となる病原体などに蛍光物質をラベルした血清(抗体)反応を測定する間接蛍光抗体(IFA)法、酵素免疫測定(ELISA)法、ラテックス凝集法、及び抗体価測定法などの方法を実行してもよい。
【0063】
図3は、
図1の採水システム100により実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、
図1の採水システム100により実行される採水方法について主に説明する。
【0064】
ステップS100では、採水システム100は、流路102cを流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する。
【0065】
ステップS101では、採水システム100は、ステップ100の検出ステップにおいて検出された指標値が閾値に達したか否かを判定する。採水システム100は、指標値が閾値に達したと判定すると、ステップS102の処理を実行する。採水システム100は、指標値が閾値に達していないと判定すると、ステップS100の処理を再度実行する。
【0066】
ステップS102では、採水システム100は、ステップS101の判定ステップにおいて指標値が閾値に達したと判定すると、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水流路102aを介して採水する。より具体的には、採水システム100の採水装置10は、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路102aを制御する。
【0067】
ステップS103では、採水システム100は、ステップS102の採水ステップにおいて採水された液体を貯水槽20に溜める。
【0068】
以上のような第1実施形態によれば、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を適切なタイミングで得ることができる。すなわち、採水装置10及び採水システム100は、所定の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に得ることができるタイミングで液体を採水可能である。これにより、採水装置10及び採水システム100は、指標値が閾値に達するような液体の水質変動の適切な把握に寄与することができる。例えば、採水装置10及び採水システム100は、指標値が閾値に達したと演算部12が判定すると、微生物の測定に用いられる液体試料として液体を採水することで、指標値が閾値に達したタイミングで適切に採水処理を実行することができる。
【0069】
したがって、採水装置10及び採水システム100は、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体試料を漏れなく適切に回収することができる。採水装置10及び採水システム100による上記のような採水方法によって、液体の水質に関する突発的な変動を検出したり、ワーストケースを検出したりすることも可能となる。採水時に発生した水質の最悪条件が液体試料に反映され、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを逃さないことが可能となる。採水装置10及び採水システム100は、流水箇所における、最悪の事態によってもたらされる質的リスクを評価するための採水を可能とする。採水装置10及び採水システム100は、目的とする液体の汚染状況を反映した代表的サンプルとして液体を回収することができる。
【0070】
結果として、採水装置10及び採水システム100は、水処理システムにおける処理水の水質を管理したり、その制御性能を把握したりする目的に適合した代表的なサンプルを回収可能である。採水装置10及び採水システム100は、最悪又は最大の微生物学的負荷を含む液体試料を回収でき、最大負荷の定量的な情報を取得可能である。例えば、採水装置10及び採水システム100は、水処理システムの制御性能の上限に対する最大負荷の重要な情報を漏れなく取得可能である。以上のように、液体の水質変動及び水処理システムの制御性能を適切に把握することが容易となる。
【0071】
加えて、採水装置10及び採水システム100によれば、採水者は、長時間の連続した採水又は高頻度の断続的な採水を実施する必要がない。採水装置10及び採水システム100による採水の自動化により採水者の時間的拘束に関する負荷が軽減される。
【0072】
採水システム100が貯水槽20を有することで、採水システム100は、採水装置10の制御部13による採水流路102aの制御に基づいて採水流路102aを介して採水された液体を所定時間にわたり溜めることが可能となる。
【0073】
図4は、
図1の採水システム100の第1変形例を示す概略構成図である。
図1では、採水システム100は、採水された液体を貯水槽20に溜めると説明したが、これに限定されない。採水システム100は、採水された液体から微生物学的負荷の指標を直接サンプリングしてもよい。このような目的で、採水システム100は、貯水槽20に代えて、又は加えて、採水装置10の制御部13による採水流路102aの制御に基づいて採水流路102aを介して採水された液体に含まれる微生物を回収するフィルタ30を有してもよい。
【0074】
フィルタ30は例えば陰電荷膜を含んでもよい。採水システム100は、液体中の微生物と液体中に添加された陽イオンとによって形成された複合体を、フィルタ30に含まれる陰電荷膜で捕捉することで微生物のサンプリングを実行してもよい。
【0075】
図5は、
図4の採水システム100により実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
図5を参照しながら、
図4の採水システム100により実行される採水方法について主に説明する。
【0076】
ステップS200では、採水システム100は、流路102cを流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する。
【0077】
ステップS201では、採水システム100は、ステップ200の検出ステップにおいて検出された指標値が閾値に達したか否かを判定する。採水システム100は、指標値が閾値に達したと判定すると、ステップS202の処理を実行する。採水システム100は、指標値が閾値に達していないと判定すると、ステップS200の処理を再度実行する。
【0078】
ステップS202では、採水システム100は、ステップS201の判定ステップにおいて指標値が閾値に達したと判定すると、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水流路102aを介して採水する。より具体的には、採水システム100の採水装置10は、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路102aを制御する。
【0079】
ステップS203では、採水システム100は、ステップS202の採水ステップにおいて採水された液体に含まれる微生物をフィルタ30により回収する。
【0080】
微生物学的負荷の指標をフィルタ30により直接的に回収する以上のような方法により、後段の微生物の測定において、より簡便に微生物学的負荷を評価することが可能となる。
【0081】
図6は、
図1の採水システム100の第2変形例を示す概略構成図である。採水システム100は、
図4のフィルタ30により回収された微生物学的負荷の指標となる微生物を濃縮した状態で回収してもよい。すなわち、採水システム100は、フィルタ30を含む濃縮装置40を有してもよい。
【0082】
濃縮装置40は、フィルタ30を含む任意の設備に基づいて構成されてもよい。濃縮装置40は、例えば採水流路102aを流れてきた液体中の微生物を濃縮して濃縮液を精製する。例えば、濃縮装置40は、フィルタ30により回収された微生物を濃縮して濃縮液を精製する。
【0083】
図7は、
図6の採水システム100により実行される採水方法を説明するためのフローチャートである。
図7を参照しながら、
図6の採水システム100により実行される採水方法について主に説明する。
【0084】
ステップS300では、採水システム100は、流路102cを流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出する。
【0085】
ステップS301では、採水システム100は、ステップ300の検出ステップにおいて検出された指標値が閾値に達したか否かを判定する。採水システム100は、指標値が閾値に達したと判定すると、ステップS302の処理を実行する。採水システム100は、指標値が閾値に達していないと判定すると、ステップS300の処理を再度実行する。
【0086】
ステップS302では、採水システム100は、ステップS301の判定ステップにおいて指標値が閾値に達したと判定すると、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水流路102aを介して採水する。より具体的には、採水システム100の採水装置10は、流路102cを流れる液体を微生物の測定に用いられる液体試料として採水するように採水流路102aを制御する。
【0087】
ステップS303では、採水システム100は、ステップS302の採水ステップにおいて採水された液体に含まれる微生物をフィルタ30により回収する。
【0088】
ステップS304では、採水システム100は、ステップS303の回収ステップにおいてフィルタ30により回収された微生物を濃縮して濃縮液を精製する。
【0089】
以上のように、採水システム100は、微生物学的負荷の指標をフィルタ30により直接的に回収して微生物を濃縮することができる。したがって、採水システム100は、後段の微生物の測定において濃縮前では検出下限以下となるような液体試料であっても評価可能な液体試料とすることができる。
【0090】
上記第1実施形態では、指標値が閾値に達していないとき、採水口101から採水システム100に流入した液体は、排水流路102bを流れて排水管へと導かれると説明したが、これに限定されない。採水システム100は、第2電磁弁103bが配置されている流路側にも貯水槽及びフィルタの少なくとも一方を有してもよい。
【0091】
(第2実施形態)
図8は、本開示の第2実施形態に係る採水システム100の概略構成図である。
図8を参照しながら、第2実施形態に係る採水システム100の構成及び機能について主に説明する。
図8において、各構成要素を結合する実線矢印は、液体の流れを示す。採水装置10を起点とする破線矢印は、信号の流れを示す。
【0092】
第2実施形態に係る採水システム100は、センサ部11が採水口101よりも下流側に配置されるのではなく、採水口101よりも水処理インフラにおける水処理プロセスの上流に位置する点で第1実施形態と異なる。その他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が第2実施形態に係る採水システム100においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0093】
センサ部11は、採水口101よりも水処理インフラにおける水処理プロセスの上流で流路を流れる液体中の微生物の量に関連する指標値を検出してもよい。すなわち、センサ部11は、水処理インフラの流水箇所などに直接設けられてもよい。例えば、採水システム100による検出ステップにおいて用いられる検出点は、水処理インフラにおける水処理プロセスの最上流に位置してもよい。一方で、水処理インフラにおける下流の水処理プロセスの各工程に、微生物の測定に用いられる液体試料として液体を採水するための採水口101が位置してもよい。
【0094】
例えば、
図8を参照すると、電磁弁103cはあらかじめ閉状態である。制御部13は、指標値が閾値に達していないと演算部12が判定した判定結果に関する出力信号を演算部12から取得すると、電磁弁103cの閉状態を維持する。制御部13は、この状態で、指標値が閾値に達したと演算部12が判定した判定結果に関する出力信号を演算部12から取得すると、電磁弁103cを開状態にする制御信号を電磁弁103cに出力する。これにより、電磁弁103cは閉状態から開状態に移行する。このとき、貯水槽20は、制御部13による採水流路102dの制御に基づいて採水流路102dを介して採水された液体を溜める。
【0095】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0096】
例えば、本開示は、上述した採水システム100の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0097】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0098】
例えば、採水システム100は、上記第1実施形態及び第2実施形態において説明した採水方法のうちいずれか一方のみを実行してもよいし、互いに組み合わせて実行してもよい。
【0099】
本開示の一実施形態に係る採水方法では、水処理インフラなどのアプリケーションに応じて、センサ部11による検出点が複数個所に設置されてもよい。本開示の一実施形態に係る採水方法は、水処理インフラにおける水処理プロセスの各工程の前後を採水点として実行可能である。
【0100】
例えば、上述した一実施形態に係る採水システム100に基づいて、微生物の生死に関わらず、その存在個体数に基づいて汚染状況及び除去実態が把握されてもよい。
【0101】
例えば、上述した一実施形態に係る採水システム100は、貯水槽20又はフィルタ30の上流側に配置されるプレフィルタを有してもよい。このようなプレフィルタは、対象とする微生物より孔径が大きく、微生物の吸着などが生じない任意のフィルタを含んでもよい。
【0102】
採水システム100では、水道、食品、及び飲料水などを含む上記の様々な分野への応用を可能とするために、液体の採水時間は可変であってもよい。採水システム100では、微生物学的負荷に応じて採水量が設定されてもよい。採水のための採水口101として用いられる採水ポートの形状は可変であってよく、着脱式の採水ポートが採用されてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 採水装置
11 センサ部
12 演算部
13 制御部
20 貯水槽
30 フィルタ
40 濃縮装置
100 採水システム
101 採水口
102a 採水流路
102b 排水流路
102c 流路
102d 採水流路
103a 第1電磁弁
103b 第2電磁弁
103c 電磁弁