IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルネクス ベルギー エス エーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】放射線硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20230711BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20230711BHJP
   C08G 18/68 20060101ALI20230711BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20230711BHJP
   C09D 175/16 20060101ALI20230711BHJP
   H01B 3/30 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
C08G18/67 005
B33Y70/00
C08G18/68
C09D11/102
C09D175/16
H01B3/30 B
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021500147
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019067724
(87)【国際公開番号】W WO2020011600
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】18182358.4
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505365965
【氏名又は名称】オルネクス ベルギー エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カペル、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ポツマン、ロベルト
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-024591(JP,A)
【文献】特開2013-053249(JP,A)
【文献】特開2019-116591(JP,A)
【文献】米国特許第06332291(US,B1)
【文献】特開昭55-040733(JP,A)
【文献】米国特許第04295947(US,A)
【文献】特開平02-004815(JP,A)
【文献】米国特許第04855184(US,A)
【文献】特表2002-544314(JP,A)
【文献】米国特許第06949591(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C09D 11/102
C09D 175/16
H01B 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む放射線及び熱硬化性組成物:
(I)10~70mgKOH/gの水酸基価を有し、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物(A1)とジイソシアネ-ト官能性化合物(A3)との反応生成物である、少なくとも1つのドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)であって、
化合物(A1)が、下記反応a又はbにより得られる、化合物(A):
a. 少なくとも1つのジエポキシ官能性化合物(A11a)と、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び1つのカルボン酸官能基を含む(メタ)アクリレート化合物(A11b)との反応、又は
b. 2つのカルボン酸基を含むカルボン酸官能性化合物(A12a)と、1つのグリシジル基及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A12b)との反応;
(II)少なくとも1つのイソシアネート基及び任意選択的な少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む、なくとも1つのイソシアネート官能性化合物(B)と、
(III)化合物(B)との重付加に適する少なくとも2つの水酸基及び任意選択的に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、化合物(A)とは異なる、任意選択的な少なくとも1つの化合物(C)と、
(IV)化合物(A)及び(C)の水酸基への反応性並びに化合物(B)のイソシアネート基への反応性を有する化学基を実質的に有しない、任意選択的な少なくとも1つの(メタ)アクリレート化合物(D)。
【請求項2】
化合物(A)が1500~20000数平均分子量び固形分1グラム当たり0.5~3.5ミリ当量のエチレン性不飽和基を有している、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
化合物(A)が2000~20000の数平均分子量を有している、請求項2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
化合物(A1)が少なくとも1つの脂肪族環又は芳香族環を含む、請求項1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項5】
化合物(A1)がジエポキシ化合物(A11a)と化合物(A11b)との反応生成物である、請求項1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項6】
化合物(A11a)が環状脂肪族エポキシ化合物である、請求項5に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
化合物(A11a)が水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(HBADGE)である、請求項6に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
化合物(A11b)が(メタ)アクリル酸である、請求項5~7のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項9】
化合物(A)の数平均分子量がなくとも2500ある、請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項10】
化合物(A)の水酸基価が固形分中15~70mgKOH/gである、請求項1~のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項11】
化合物(A)の水酸基価が固形分中20~70mgKOH/gである、請求項1~10のいずれかに記載の硬化性組成物。
【請求項12】
二重硬化用途のための、絶縁保護膜のための、複合材料のための、三次元(3D)用途のための、濃色着色系のための、熱形成のための、熱形成性インクのための、又は成形用途のための、請求項1~11のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
【請求項13】
基材、薄膜、及び箔を成形又は熱形成することによって造形物を製造するための熱形成又は成形プロセスにおける、請求項1~11のいずれかに記載の放射線硬化性組成物の使用。
【請求項14】
基材、薄膜、及び箔が、請求項1~11のいずれかに記載の硬化性組成物で被覆され、熱形成され、熱形成された物品は続いて化学線に暴露される請求項13に記載の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれかに記載の硬化性組成物により印刷された、又は被覆された基材、薄膜、又は箔。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃色着色系、熱形成用途、及び3D造形物の硬化などの二重硬化被覆組成物の特別な用途に利用可能な放射線硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
「二重硬化(dual cure)」とは、放射線及び熱による架橋などの、2つの硬化機構により硬化する組成物を表す。このような組成物は所望の性能特性を得るのに必要な架橋度に到達するため、放射線(UV放射線、又はその他の化学線など)及び熱の両方に対する暴露が必要である。そのため、一態様において、本発明の被覆組成物は放射線に対する暴露において少なくとも部分的に硬化可能とすることができる。本発明のもう一つの態様では、本発明の被覆組成物は、独自に、又は上記最初の態様に補完的に、熱エネルギーに対する暴露において少なくとも部分的に熱硬化可能とすることができる。
【0003】
前記二重硬化被覆組成物は、例えば熱形成、又は型内加飾用途に有用である。
【0004】
濃色着色系の放射線硬化は、顔料の光遮蔽効果のため、光が十分な深度(深部硬化)に入り込めないため、多くの場合困難がある。したがって、もう一つの態様において、本発明の組成物は濃色着色系に有利に使用できる。
【0005】
3D造形基材の放射線硬化もまた、UV光が当たらない、いわゆる影の領域において困難がある。本発明は放射線及び熱硬化架橋機構を組み合わせることにより3D基材の硬化に対する解決策を提供できる。
【0006】
実施例で明示するが、本組成物はまた、例えば家庭内の汚れなどの汚れに対する優れた耐性を求められる放射線硬化被覆又は二重硬化被覆に有用である。
【0007】
放射線硬化性組成物は一般的に、少なくとも1つのエチレン性不飽和化合物、すなわち、ラジカル重合を受けるエチレン性不飽和基(官能基、又は官能性基とも呼ばれる)を含む化合物を含む組成物である。重合可能なエチレン性不飽和基は一般的に、「(メタ)アクリレート」基と総称されるアクリレート基、又はメタクリレート基より選択される。一般的にアクリレート基はメタアクリレート基より好ましい。ラジカル重合は一般的に光放射(代表的にUV光)を加えることにより、多くの場合光開始剤の助力によって得ることができる。それにより「放射線硬化性組成物」と総称される。しかしながら、選択的に、そのような「放射線硬化性組成物」はまた、UV放射無しで、例えば過酸化物の作用、又は電子ビームにより重合される。
【0008】
一般的に、良好な表面特性は被覆の高架橋密度を必要とする。しかしながら、架橋密度が高いことにより、最大限可能な延伸度が数パーセントだけである熱硬化性質となり、特に熱形成用途で問題となり得る、形成作業中に亀裂が入る傾向を有する。この、求められる高架橋密度及び求められる高延伸度の対立は様々な方法、例えば、形成の前後の二工程において硬化を行う方法で解決できる。放射線誘導架橋反応は後硬化に特に適している。
【0009】
水酸基を含む(メタ)アクリル化化合物、例えばオリゴマー化合物は二重硬化系において興味深い。一般的に、熱及び化学線の両方により硬化するこの種の化合物は複雑な形状の物体を被覆する用途に有用である。光重合に加えて、これらの化合物は、照射とは関係の無い硬化機構、例えばポリイソシアネートとポリオールとの架橋反応に依存することができる。このような二重硬化被覆機構を利用するその他の用途は、UV光が被覆中に十分深く透過できない高度に着色された被覆の硬化である。
【0010】
米国特許US6,500,876号では、a)(メタ)アクリレート基及び遊離イソシアネート基を含むウレタン(メタ)アクリレート、b)(メタ)アクリレート基及び遊離水酸基を含むウレタン(メタ)アクリレート、c)ラジカル重合を開始する紫外線開始剤、及びd)任意選択的なイソシアネートと反応する複数の化合物を含む被覆組成物が記載されている。このような組成物は特に未露光部において実質的に硬化が改善されると記載されている。
【0011】
米国特許US6,332,291号では、
A)300~1000の数平均分子量と、1つ又は複数のフリーラジカル重合可能な二重結合と、付加反応及び縮合反応からなる群より選択される反応において反応性の追加官能基を少なくとも1種とを有するオリゴマー、又は高分子化合物、
B)300~1000の数平均分子量と、1つ又は複数のラジカル重合可能な二重結合と、付加反応及び縮合反応からなる群より選択される反応において反応性を有する追加官能基を少なくとも1つとを有し、付加反応性官能基は成分A)の更に反応性の高い官能基に補完的又は反応性である、オリゴマー、又は高分子化合物、
C)成分A)、又は成分B)の官能基との付加反応及び縮合反応からなる群より選択される反応を目的とした反応性の官能基を少なくとも1つ含む、単量体、オリゴマー、及び高分子化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
D)1つまたは複数の光開始剤、に加えて
E)任意選択的な、溶媒、水、顔料、増量剤、及び従来のラッカー添加剤のうち一つを少なくとも含み、
成分A)及び成分B)は互いに異なり、成分C)はフリーラジカル重合可能な二重結合を含まない、高エネルギー放射線により硬化する、被覆組成物が記載されている。
この被覆組成物は多層ラッカー被覆、特に自動車修理ラッカー被覆の製品に有用である。
【0012】
米国出願特許番号6,949,591号では、化学線による架橋に役立つ官能基(a11)を少なくとも2つ、及び所望であれば構成要素(a2)の補完的な官能基(a22)との熱架橋反応を受ける官能基(a12)を少なくとも1つ含む少なくとも1つの構成要素(a1)と、化学線による架橋に役立つ官能基(a21)を少なくとも2つと構成要素(a1)の補完的な官能基(a12)の熱架橋反応を受ける官能基を少なくとも1つとを含む少なくとも1つの構成要素(a2)と、任意選択的な少なくとも1つの光開始剤(a3)と、少なくとも1つの熱架橋開始剤(a4)と、少なくとも1つの、熱及び/又は化学線硬化性反応性希釈剤(a5)と、少なくとも1つの被覆添加剤(a6)と、及び/又は、構成要素(a1)が官能基(a12)を含まない場合少なくとも1つの熱硬化構成要素(a7)とを被覆材料が含むという条件で、少なくとも1つの熱硬化構成要素(a7)からなる群より選択される1種又は複数種の構成要素とを含む、熱及び化学線により硬化する被覆材料が記載されている。この被覆材料はシート成形化合物及びバルク成形化合物を密閉するのに利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以下の要件の一つを少なくとも満たす硬化被覆を形成できる組成物を提供することが依然として望まれている;1)薄膜及び薄膜複合物への従来の方法による単なる塗布、2)適切な道具を使用することによりポストフォーム形成が可能な耐ブロッキング性被覆済薄膜が得られる重付加機構経由の熱硬化、3)形成被覆済薄膜上の表面被覆の、放射線による最終硬化。前記被覆は、すでに形成された物体の従来の表面被覆によって得られる特性と同等の特性が達成している。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第一の態様で、本発明は下記を提供する:
10~80mgKOH/gの水酸基価を有し、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物(A1)とジイソシアネ-ト官能性化合物(A3)及び2つの水酸基を含み化合物(A1)とは異なる任意選択的な化合物(A2)との反応生成物であるヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクレート化合物(A)、を含む放射線硬化性組成物であって、
化合物(A1)が、下記反応a又はbにより得られる、前記硬化性組成物:
a. 少なくとも1つのジエポキシ官能性化合物(A11a)と、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び1つのカルボン酸官能基を含む(メタ)アクリレート化合物(A11b)との反応、又は
b. 2つのカルボン酸基を含むカルボン酸官能性化合物(A12a)と、1つのグリシジル基及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A12b)との反応。
このような放射線硬化性組成物は優れた耐汚染性被覆を得るのに有用である。
【0015】
本発明は更に下記を提供する;
以下を含む放射線及び熱硬化性組成物:
(I)少なくとも1つの、上記のヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
(II)少なくとも1つのイソシアネート基及び任意選択的な少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む、なくとも1つのイソシアネート官能性化合物(B)と、
(III)化合物(B)との重付加に適する少なくとも2つの水酸基及び任意選択的に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、化合物(A)とは異なる、任意選択的な少なくとも1つの化合物(C)と、
(IV)化合物(A)及び(C)の水酸基への反応性並びに化合物(B)のイソシアネート基への反応性を有する化学基を実質的に有しない、任意選択的な少なくとも1つの(メタ)アクリレート化合物(D)。
【0016】
上記で定義した、特定のヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクリレートは有利な特徴を有し、本明細書における以下で示す望ましい特性を提供できる。
この様な放射線及び熱硬化性組成物は以下の有利な特徴を組み合わせて示す組成物を提供できる:
-熱硬化工程及びその後の照射硬化の後、良好な耐ブロッキング性、及び亀裂を生じずに延伸度が少なくとも100%に達することを特徴とする高度な伸長を示す硬化した組成物、例えば被覆の形成、及び/又は
-硬化した組成物の、重合体基材に対する高い接着性、並びに化学的、加水分解、及び摩耗に対する優れた耐性。
これらの特徴は、二重硬化性インク製品、又は熱形成用途、及びこれらを組み合わせた特性が有用である用途向けの被覆に有用であり、必要である。
【0017】
本発明の放射線及び熱硬化性組成物は以下の要件を同時に満たす、ポストフォーム形成可能な薄膜の被覆向けの表面被覆系を提供できる:
1)従来の方法による、薄膜、又は薄膜複合物への簡単な塗布、
2)適切な道具を使用することによりポストフォーム形成が可能な耐ブロッキング性被覆済薄膜を得る、重付加機構経由の熱硬化、及び
3)形成被覆済薄膜上の表面被覆の、放射線による最終硬化で、もうすでに形成された物体の従来の表面被覆によって得られる堅牢度特性と同等の堅牢度特性を得られる。
【0018】
本発明はまた、二重硬化用途のための、絶縁保護膜のための、複合材料のための、三次元(3D)用途のための、濃色着色系のための、熱形成のための、二重硬化性インクのための、熱形成可能インクのための及び/又は成形用途のための、本明細書で定義した硬化性組成物の利用まで及ぶ。
【0019】
本発明の放射線硬化性組成物は、基材、薄膜、及び箔を成形及び熱形成することによって造形物を製造するための熱形成、又は成形工程において使用することができる。例えば、基材、薄膜、及び箔は、本明細書で定義した硬化性組成物で被覆及び熱形成を施され、熱形成された物品は続いて化学線に暴露される。
【0020】
本発明はまた、本明細書で定義した硬化性組成物で印刷及び被覆された基材、薄膜、及び箔まで及ぶ。
【0021】
本発明はまた、基材薄膜及び本明細書で定義した表面被覆組成物から形成される少なくとも1つの被覆から成る被覆済みポストフォーム形成可能な薄膜を提供する。本発明は更に、表面被覆組成物の硬化及びポストフォーム形成のための組み合わせ方法を提供する。本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A)はヒドロキシ官能性ジエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A1)、及び任意選択的なジヒドロキシ官能性化合物(A2)とジイソシアネート官能性化合物(A3)との反応により形成される。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)を調製するための、化合物(A1)及び任意選択的な化合物(A2)の水酸基に対する化合物(A3)のイソシアネート基の当量比は、1:1.1~1:2が好ましく、1:1.15~1:1.5がより好ましく、1:1.2~1:1.4がさらに好ましい。一般的に水酸基に対するイソシアネート基の当量比は、イソシアネート基を1として標準化した当量のイソシアネート基の物質量と当量の水酸基の物質量との比を表している。ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は実質的にイソシアネート基を含まない、つまりウレタン(メタ)アクリレート(A)中のイソシアネート基の量は多くて0.0015meq/gであることが好ましい。
【0023】
本発明の遊離水酸基を含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は少なくとも1つの遊離水酸基を有することが好ましいい。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリルレート(A)の水酸基は放射線硬化性組成物の硬化中、例えばポリイソシアネート(B1)、又はイソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクリレート(B2)などのイソシアネート基含有化合物(B)とさらに反応してもよい。特にウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)が2成分(2K)組成物に使用される場合である。
【0025】
通常2成分(2K)組成物は、1つの容器に(メタ)アクリレート二重結合などの放射線硬化性基、及び水酸基などの化学架橋性基の両方を有する第一成分を含有する。第二成分はイソシアネート基などの架橋基を有する、対応架橋剤を含み、第二の容器に保管する。使用する直前に第一成分と第二成分を混合しポット混合物を形成する。本発明の文脈では2成分組成物に使用されるウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)を、少なくとも1種のポリイソシアネート化合物(B)である第二成分に混合する。
【0026】
好ましい態様によれば、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の水酸基価は、固形分中10~80mgKOH/gであってもよく、好ましくは15~80mgKOH/g、より好ましくは20~70mgKOH/gである。水酸基価(IOHとも命名される)は1グラム当たりのmgKOHで表される。一般的に反応体による水酸官能基の誘導体化によって測定する。特にそれは試料と同じ数の水酸基を有する水酸化カリウムmKOHの質量とその試料の質量の比に対応する。表示の水酸基価は全て乾燥した物質(固形分とも呼ばれる)を基にしている。
【0027】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は好ましくは少なくとも1500g/mol、好ましくは少なくとも2000g/mol、より好ましくは少なくとも2500g/molの数平均分子量を有する。化合物(A)の数平均分子量は1500~20000g/molであることが好ましく、2000~10000g/molであることがより好ましく、2500~5000g/molであることがさらに好ましい。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は固形分1グラム当たり0.5~3.5ミリ当量、好ましくは1~3.2ミリ当量、より好ましくは1.5~3ミリ当量のエチレン性不飽和基を有してもよい。
【0029】
化合物(A)は1500~20000g/molの数平均分子量、10~80mgKOH/gの水酸基価、及び固形分の1グラム当たり0.5~3.5ミリ当量のエチレン性不飽和基を有することが好ましい。
【0030】
一部の態様によると、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)を調製するために使用するエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A1)は、対応するジエポキシ化合物(A11a)と、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含有する少なくとも1つの化合物(A11b)とを、好ましくは1:0.9~1:1.1のほぼ等しい当量比で反応させ、従来の方法で調製できる。このような方法は米国特許US4,284,574号に記載されている。
【0031】
ジエポキシ化合物(A11a)は、例えば従来の脂肪族、環状脂肪族、又は芳香族のジエポキシ化合物である。好ましくは、化合物(A1)は少なくとも1つの脂肪族、又は芳香族環を含む。
【0032】
その様なジエポキシ化合物(A11a)の具体例としては、2つのアルコール性水酸基を有する化合物と、エピクロロヒドリン、又はβ-メチルエピクロロヒドリンとをアルカリ条件下、又は引き続きアルカリ処理を伴う酸性触媒存在下で反応させて得ることが可能なジグリシジルエーテル、又はジ-(β-メチルジグリシジル)エーテルなどが挙げられる。この型のジグリシジルエーテルは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、又はより高級ポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオール、又はポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールなどの脂肪族アルコールより得られる。その他のこの型のグリシジルエーテルは、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、又はトリシクロデカンジメタノールなどの環状脂肪族アルコールより得られる。その他のグリシジルエーテルはまたビスフェノールA又はF、レゾルシノール、4-メチルカテコール、及びそのアルコキシ誘導体、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アニリン、並びに4,4’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンなどの芳香族アルコールより得られる。ジエポキシ化合物(A11a)はまたビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,3-エポキシシクロペンチルグリシジルエーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタンなどの環状エポキシ誘導体を含む。ジエポキシ化合物(A11a)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、又はトリシクロデカンジメタノールより得られるグリシジルエーテルなどの環状脂肪族エポキシド化合物であることが好ましい。化合物(A11a)は好ましくは環状脂肪族アルコールより得られる。最も好ましくは、化合物(A11a)は水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(HBADGE)である。
【0033】
少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び少なくとも1つのカルボン酸官能基を含む化合物(A11b)の具体例は、(メタ)アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、ヒドロキシ官能性アクリレート、又はメタアクリレートとジカルボン酸化合物、又はその無水物との反応生成物などが挙げられる。ヒドロキシ官能性アクリレート又はメタアクリレートの具体例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレートなどの化合物、例えばTone(商標登録)M100(ダウ社、米国)、ポリラクチドモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、3-メタアクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタアクリレート、3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタアクリレートなどのポリ(「イプシロン」-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化、又はアルコキシ化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールのヒドロキシ官能性モノ-、ジ-、又はテトラ-(メタ)アクリレート、若しくはこれらの市販の混合物などが挙げられる。ジカルボン酸化合物、又はその無水物は、フタル酸(無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(無水物)、テトラヒドロフタル酸(無水物)、テトラクロロフタル酸(無水物)、ヘキサクロロフタル酸(無水物)、テトラブロモフタル酸(無水物)、コハク酸(無水物)、マレイン酸(無水物)、フマル酸、イタコン酸(無水物)、アジピン酸、セバシン酸、及びシュウ酸が挙げられる。化合物(A11b)は(メタ)アクリル酸、又はポリ(イプシロン-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレートとジカルボン酸無水物との反応生成物であることが好ましい。
【0034】
別の態様によると、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を調製するのに用いるエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A1)は、二官能性カルボン酸官能性化合物(A12a)と、1つのグリシジル基及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A12b)、例えばグリシジル(メタ)アクリレートとの反応により得られる。適切な二官能性カルボン酸化合物は、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、又はアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸化合物、若しくは、テレフタル酸、又はフタル酸などの芳香族二酸化合物が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸化合物を用いることが好ましい。
【0035】
ウレタン(メタ)アクレート(A)を調製する際、エポキシ(メタ)アクリレート化合物(A1)は2つの水酸基を含有するが、エチレン性不飽和二重結合を含有しない化合物(A2)に一部置き換えることができる。適切な化合物(A2)は低分子量で短鎖、すなわち2~20の炭素原子を含有する脂肪族、芳香脂肪族、又は環状脂肪族のジオールが挙げられる。ジオールの具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチルプロパンジオール、トリメチルペンタンジオール、ジエチルオクタンジオール位置異性体、1,3-ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-又は1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピオン酸(2,2-ジメチル-3-ヒドロキシプロピルエステル)が挙げられる。脂肪族ジオールが好ましく、環状脂肪族ジオールが非常に特に好ましい。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、又は対応する混成物などの高分子量脂肪族及び環状脂肪族ポリオールも適切である。(環状)脂肪族ポリエステルポリオール及び/又は(環状)脂肪族ポリカーボネートポリオールが好ましく、直鎖脂肪族ジオールを含有する、これらのポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、及び/又はポリカーボネートポリオールが非常に特に好ましい。
【0036】
(A1)+(A2)の全体量に対する(A2)の量は50%以下が好ましく、30w%(重量パーセント)以下がより好ましい。好ましくは、化合物(A1)は化合物(A1)及び(A2)の全体量に対して、少なくとも50w%存在する。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を調製する際、適切なジイソシアネート化合物(A3)は、(環状)脂肪族、アリール脂肪族、及び芳香族ジイソシアネートが挙げられる。使用してもよい芳香族ジイソシアネートの具体例は1,4-ジイソシアナトベンゼン(BDI),2,4-ジイソシアナトトルエン(トルエンジイソシアネート(TDI))、1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトベンゼン](MDI),キシリレンジイソシアネート(XDI),1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI),トリジンジイソシアネート(TODI),テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI),及びp-フェニレンジイソシアネート(PPDI)が挙げられる。本発明の文脈において使用してもよいポリイソシアネートの他の具体例はトリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4-ジイソシアナトジフェニルメタン及び上記のジイソシアネートの高級同族体の工業用混合物、2,4-ジイソシアナトトルエン、並びに2,6-ジイソシアナトトルエンとそれらの工業用混合物、並びに3-イソプロピル-a,a’-ジメチルベンジルイソシアネート(TMI)の共重合生成物が挙げられる。脂肪族及び環状脂肪族ジイソシアネートの具体例は、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI),1,1’-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン](H12MDI)、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)が挙げられる。
【0038】
本発明の文脈において脂肪族及び/又は環状脂肪族ジイソシアネートが好ましい。脂肪族又は環状脂肪族ジイソシアネートが特に好ましく、環状脂肪族ジイソシアネートがより特に好ましい。1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)及び/又はイソホロンジイソシアネート(IPDI)が特に好ましい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)は溶媒の有無にかかわらず使用できる。粘度が高いため、ウレタン(メタ)アクレート化合物(A)は溶媒で希釈することが好ましい。使用可能な有機溶媒の具体例はジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、メタオキシプロピルアセテートなどのグリコールエーテルエステル、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、アミルアセテートなどのエステル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン、キシレン、Solvesso(商標登録)100(155~185℃の沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物)、Solvesso(商標登録)150(182~202℃の沸点範囲を有する芳香族炭化水素の混合物)などの芳香族炭化水素及び(環状)脂肪族炭化水素が挙げられる。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)はまた少なくとも1つのラジカル阻害剤も含んでもよい。ウレタン化工程の間に使用される適切なラジカル阻害剤としては、限定されるものではないが、フェノール安定化剤が挙げられ、具体例には、ハイドロキノン(HQ)、メチルハイドロキノン(THQ)、t-ブチルハイドロキノン(TBHQ)、ジ-t-ブチルハイドロキノン(DTBHQ)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、2,6-ジ-t-ブチル-メチルフェノール(BHT)などが挙げられる。適切な阻害剤のその他の具体例はトリフェニルホスフィン(TPP)及びトリス-ノニルフェニルホスファイト(TNPP)などのホスフィン、フェノチアジン(PTZ)、トリフェニルアンチモン(TPS)、及びそれらの任意の混合物が挙げられる。使用される阻害剤の全量は一般的にウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の0~1重量%であり、化合物(A)の0.005~0.5重量%であることが好ましく、0.01~0.1重量%であることが最も好ましい。
【0041】
ウレタン(メタ)アクレート化合物(A)はまた、イソシアネート基と水酸基との間のウレタン化反応を促進するため、少なくとも1つの触媒も含でもよい。例えば、ヒドロキシ官能性化合物(A1)、及び任意選択的な化合物(A2)とジイソシアネート化合物(A3)との反応時に触媒を使用してもよい。触媒は、スズ、ビスマス、ジルコニウム、亜鉛、又はそれらの混合物由来の金属塩であってもよい。好ましい触媒はジブチルスズジラウレート、スズのカルボン酸塩、ビスマスのカルボン酸塩、及びビスマス/亜鉛のカルボン酸塩である。アミン触媒もまた、単独、又は上記の金属触媒と組み合わせて使用できる。適切なアミン触媒は、例えば1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)が挙げられる。触媒は、例えばウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)の総重量に基づいて0.005%(50ppm)~0.5%(5000ppm)の量で使用してもよい。
【0042】
イソシアネート官能性化合物(B)は少なくとも1つの遊離イソシアネート基を含有するイソシアネート化合物を含むことが好ましい。
イソシアネート官能性化合物(B)として芳香族、芳香脂肪族、脂肪族、及び環状脂肪族ポリイソシアネートを使用してもよい。イソシアネート化合物(B)はエチレン性不飽和化合物を含んでも、含まなくてもよい。化合物(B)は少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むことが好ましい。
少なくとも1つのイソシアネート化合物(B)は遊離イソシアネート基を有する化合物に関係する。遊離イソシアネート基を含有するイソシアネート化合物は、例えば脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族、及び/又は芳香族結合遊離イソシアネート基を有する任意の有機イソシアネートである。この種類のイソシアネートは当業者に公知であり、文献に記載されている。
【0043】
使用される(ポリ)イソシアネートは好ましくは0.5~5、より好ましくは1~4、最も好ましくは1.5~3の平均イソシアネート官能性を有する。
【0044】
これらの(ポリ)イソシアネート化合物(B)はエチレン性不飽和二重結合を含んでも、含まなくてもよい。エチレン性不飽和二重結合を含まない、適切な(ポリ)イソシアネート化合物(B1)は、いわゆる「塗料(被覆)ポリイソシアネート」、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル―シクロヘキサン(IPDI)、及び/又はビス(イソシアナトシクロヘキシル)-メタンを基にしたもの、若しくはビウレット、アロファネート、ウレタン及び/又はイソシアヌレート基を含み、好ましくは蒸留により調製後過剰な開始ジイソシアネートが、残留成分の0.5重量%未満まで除去されている誘導体が挙げられる。
【0045】
立体障害ポリイソシアネートもまた適切である。これらの具体例は1,1,6,6-テトラメチル-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジブチル-ペンタメチルジイソシアネート、p-、又はm-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、及び対応する水素化同族体が挙げられる。
【0046】
原則として、ジイソシアネートは公知の方法で、例えば三量化、又は水、又はトリメチロールプロパン、若しくはグリセロールなどのポリオールとを反応させ、より高級な官能性化合物としてもよい。
【0047】
イソシアネート変性樹脂、例えばNCO-官能性(メタ)アクリレート、ポリウエレタン、ポリエステル、及び/又はエポキシ樹脂は、上記のポリイソシアネートに加えて、又は代わりに、ポリイソシアネート化合物として使用してもよい。
【0048】
少なくとも1つのポリイソシアネート化合物(B1)は1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートのウレトジオンなどの二量体、1,6-ヘキサンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)N3300Covestro社から購入可能)のビウレット、及びイソシアヌレイト、及びイソフォロンジイソシアネートのイソシアヌレイトなどの三量体、又は高分子オリゴマーなどのオリゴマーポリイソシアネートが挙げられるが、それに限定されない。カルボジイミド、ウレトジオン、及びそれらの混合物などの変性イソシアネートもまた使用してもよいが、それらに限定されるものではない。好ましいポリイソシアネートの具体例は、ビウレット、イソシアヌレイト、及び/又はイミノオキサジアジンジオン構造を含むポリイソシアネートが挙げられる。特に、ポリイソシアネート化合物(B1)は、1,6-ジイソシアナトヘキサン及び/又はイソホロンジイソシアネートを基にした脂肪族、脂肪族/環状脂肪族、及び/又は環状脂肪族の、単独型、又は混合型の三量体が挙げられる。
ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物などのイソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物と部分的に反応した上記のポリイソシアネート化合物(B1)を使用し、イソシアネート基含有ウレタン(メタ)アクレート化合物(B2)を形成することも可能である。
【0049】
イソシアネート反応する少なくとも1つの基を有するアクリレート、メタアクリレート、マレアート、フマレート、マレイミド、アクリルアミド、加えてビニルエステル、プロペニルエステル、アリルエステル、及びジシクロペンタジエニル単位を含有する化合物などのα,β-不飽和カルボン酸誘導体がこの目的に好ましく使用される。少なくとも1つのイソシアネート反応性基を有するアクリレート及びメタアクリレートが特に好ましい。ヒドロキシ官能性アクリレート又はメタアクリレートとして、考慮されるものは、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシドモノ(メタ)アクリレート、例えばTone(登録商標)M100(ダウ社 米国)などのポリ(「イプシロン」-カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレートなどの化合物、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、エトキシル化、プロポキシル化、又はアルコキシル化トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、若しくはこれらの市販の混合物などの多価アルコールのヒドロキシ官能性モノ-、ジ-、又はテトラ-(メタ)アクリレートが挙げられる。更に単独の又は上記のモノマー化合物と組み合わせのイソシアネート反応性オリゴマー、又は重合体不飽和アクリレート及び/又はメタアクリレート基を含有する化合物は適切である。イソシアネート反応性エチレン性不飽和化合物と部分的に反応するポリイソシアネート化合物の具体例は、例えばEbecryl(商標登録)4150、Ebecryl(商標登録)4250、Ebecryl(商標登録)4396、Ebecryl(商標登録)4397、Ebecryl(商標登録)4510、Ebecryl(商標登録)4765、及びEbecryl(商標登録)4141が挙げられる。全てオルネクス社から購入可能である。適切な化合物(B2)はまた欧州特許3,184,565号に記載されている。
【0050】
被覆技術分野の同業者に公知のブロッキング剤と部分的に反応する上記のイソシアネート化合物(B)を使用することはまた任意選択的に可能である。記載されてもよいブロッキング剤は、例えばアルコール、ラクタム、オキシム、マロン酸エステル、アルキルアセトアセテート、トリアゾール、フェノール、イミダゾール、ピラゾール、及びアミンが挙げられ、具体的には、ブタノンオキシム、ジイソプロピルアミン、1,2,4-トリアゾール、ジメチル-1,2,4-トリアゾール、イミダゾール、マロン酸ジエチルエステル、酢酸エステル、アセトンオキシム、3,5-ジメチルピラゾール、イプシロン-カプロラクタム、N-tert-ブチル-ベンジルアミン、シクロペンタノンカルボキシエチルエステル又はこれらのブロッキング剤の所望の混合物などが挙げられる。
【0051】
化合物(B)はそれ自体のまま、又は上記の有機溶媒の一つで希釈して使用できる。
上記の全てのイソシアネート化合物(B1)及び化合物(B2)は単独で、又は所望のいかなる混合物でも使用できる。
【0052】
任意選択的な成分(C)として500~10000g/mol、好ましくは700~4000g/molの数平均分子量を有する高分子量ポリオールが使用できる。
存在する場合、成分(C)は成分(A)+(C)の重量に対して50重量%以下であることが好ましく、50重量%未満であることが好ましく、40重量%未満であることがより好ましく、30%重量未満であることがより好ましい。
【0053】
成分(C)は、例えばラクトン系ポリエステルアルコールに加えてジオールを伴う脂肪族、環状脂肪族、及び/又は芳香族ジカルボン酸に基づくポリエステルアルコールが挙げられる。また、環状エーテルの重合、又はアルキレンオキシドと開始分子の反応により得ることができるポリエーテルオールも適切である。また、ジオール又はラクトン変性ジオール、又は、例えばビスフェノールAなどのビスフェノールとホスゲン若しくはジフェニルカルボネート、又はジメチルカルボネートなどのカルボン酸ジエステルとの反応によって得ることができるヒドロキシ末端ポリカーボネートも適切である。ヒドロキシ末端ポリアミドアルコール及びヒドロキシ末端ポリアクリレートジオールもまた使用できる。
【0054】
任意選択的な成分(D)は少なくとも1つの官能基を有する、1つ又は複数のモノマー、又は重合体化合物であってよい。このような基は化学線の作用下で、重合(硬化)中にエチレン性不飽和化合物と反応する。室温で液体である化合物が好ましい。適切な化合物の具体例を以下に記す。
【0055】
放射線硬化性組成物はまた(メタ)アクリル酸、ベーターカルボキシエチルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル/デシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレートモノ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3(4),8(9)-ビス-(ヒドロキシメチル)-トリシクロ-[5.2.1.02’6]デカンジ(メタ)アクリレート、ジ又はトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化及び/又はプロポキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソソルビドジ(メタ)アクリレート、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、ジ-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETIA)、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体,ジペンタエリスリトールペンタ又はヘキサアクリレート、並びにそのエトキシル化及び/又はプロポキシル化誘導体などの低分子(メタ)アクリル化モノマーを含むことができる。
【0056】
本発明に使用できる(メタ)アクリル化オリゴマーの具体例はアミノ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、及びエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。更にアクリル化した形態が好ましい。オリゴマーは500~5000ダルトンの分子量を有することが好ましい。オリゴマーは一般的に1分子当たり少なくとも2つの官能基を含む。
【0057】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーは公知である。これらの(メタ)アクリル化ポリエステルは水酸基を含有するポリエステル骨格と(メタ)アクリル酸との反応、又はカルボキシ基を有するポリエステル骨格と、例えば2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-、又は3-ヒドロキシプロピルアクリレートなどのヒドロキシ官能性アルキル(メタ)アクリレートとの、又はグリシジル(メタ)アクリレートとの反応により得られる。ポリエステル骨格は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ビスフェノールA、ペンタエリスリトール、又は/及びそれらのエトキシレート及び/又はプロポキシレートなどの、少なくとも1種のポリヒドロキシアルコールとアジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの、少なくとも1種のポリカルボン酸、又はその無水物との、従来の方法での重縮合により得られる。例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和化合物をポリエステル合成に使用することにより、重合鎖に(メタ)アクリル性及びエチレン性不飽和の両方を有するポリエステルが得られる。更にポリラクトン及び/又はポリラクチドをポリエステル骨格として使用できる。例えば、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリラクチド、及び/又はポリ(ラクチド、カプロラクトン)は任意選択的な1種又は複数種のポリヒドロキシアルコール存在下で、ε-カプロラクトン及び/又はラクチドの開環重合により得られる。EBECRYL(登録商標)450、EBECRYL(登録商標)452、EBECRYL(登録商標)657、EBECRYL(登録商標)837、EBECRYL(登録商標)895、EBECRYL(登録商標)810、EBECRYL(登録商標)830、EBECRYL(登録商標)854、及びEBECRYL(登録商標)870としてオルネクス社より市販されているポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
【0058】
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーはヒドロキシ官能性ポリエステルを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより調製できる。ヒドロキシ官能性ポリエステルはテトラヒドロフラン、エチレンオキシド、及び/又はプロピレンオキシドなどの環状エステルの開環単独、又は共重合により得られる、又はポリヒドロキシアルコールとエチレン及び/又はプロピレンオキシドとの反応により調製される。
【0059】
ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーは公知である。これらはヒドロキシ官能性ポリカーボネートを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより調製できる。
【0060】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーはヘキサメチレン-ジイソシアネート、イソホロン-ジイソシアネート、トルエン-ジイソシアネートなどのジ-及び/又はポリイソシアネートとヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとの反応により調製できる。上記のようなヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートが独占的に使用できるが、水酸基を含むポリエステル、ポリエーテル、又はポリカーボネートの合成用に上記で記載されたようなモノ-、又はポリヒドロキシアルコールもまた、鎖を延長するために添加できる。EBECRYL(登録商標)220、EBECRYL(登録商標)2220、EBECRYL(登録商標)1290、EBECRYL(登録商標)1290N、EBECRYL(登録商標)1291、EBECRYL(登録商標)220、EBECRYL(登録商標)270、EBECRYL(登録商標)264、EBECRYL(登録商標)294/25HD、EBECRYL(登録商標)8254、EBECRYL(登録商標)4680、EBECRYL(登録商標)4513、EBECRYL(登録商標)8465、EBECRYL(登録商標)4654、EBECRYL(登録商標)4666、EBECRYL(登録商標)4738、EBECRYL(登録商標)4740、EBECRYL(登録商標)4883、EBECRYL(登録商標)5129、EBECRYL(登録商標)8210、EBECRYL(登録商標)8602、EBECRYL(登録商標)8415、及びEBECRYL(登録商標)225としてオルネクス社より市販されているウレタンアクリレートが最も好ましい。
【0061】
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとはエポキシド、好ましくはポリエポキシドの(メタ)アクリル酸エステル、すなわち少なくとも1つの、好ましくは少なくとも2つのエポキシド官能基を含む化合物を指す。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは一般的に(メタ)アクリル酸とエポキシドの反応により得られる。エポキシドは一般的にエポキシ化オレフィン、飽和、又は不飽和カルボン酸のグリシジルエステル、芳香族、又は脂肪族のアルコール、又はポリオールのグリシジルエーテル、及び環状脂肪族ポリエポキシドより選択される。好ましいエポキシドはビスフェノール-Aのジグリシジルエーテル、ビスフェノール-Fのジグリシジルエーテル、ポリ(エチレンオキシド-共存-プロピレンオキシド)のジグリシジルエーテル、ポリプロピレンオキシドのジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテルなどの芳香族、又は脂肪族ジオールのジグリシジルエーテル、並びに環状脂肪族のジエポキシドが挙げられる。ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルが特に好ましい。また、エポキシ化天然油、及びエポキシ化フェノール-ホルムアルデヒド共重合体も使用できる。天然油の具体例はアクリレートオリゴマーの油、魚油、脱水ひまし油、桐油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、ひまわり油、サフラワー油、及びひまし油が挙げられる。適切なエポキシアクリレートの実用例は、EBECRYL(登録商標)600、EBECRYL(登録商標)860、EBECRYL(登録商標)3420、EBECRYL(登録商標)608、EBECRYL(登録商標)3608、EBECRYL(登録商標)3702、EBECRYL(登録商標)3701、及びEBECRYL(登録商標)3700が挙げられ、全てオルネクス社より入手できる。
【0062】
任意選択的にアミノ(メタ)アクリレートはそれ自体のまま本発明の組成物に添加できる。適切なアミノ(メタ)アクリレートの実用例はEBECRYL(登録商標)7100、EBECRYL(登録商標)80、EBECRYL(登録商標)81、EBECRYL(登録商標)83、EBECRYL(登録商標)85、EBECRYL(登録商標)LEO10551、EBECRYL(登録商標)LEO10552、及びEBECRYL(登録商標)LEO10553が挙げられ、全てオルネクス社より入手できる。
【0063】
本発明の被覆組成物はまたUV光下で放射線硬化性高分子組成物の重合を開始できる光化学開始剤を少なくとも1つ含んでもよい。光化学開始剤(光開始剤とも呼ばれる)は光、一般的にUV光を吸収することによりラジカルを生成できる。
【0064】
放射線硬化性組成物中の光開始剤の量は、本発明の放射線硬化性組成物の全重量に対して0.1~10重量%であることが好ましく、1~5重量%であることがより好ましい。本発明の放射線硬化性組成物はまた、当業者に公知の光増感剤を1種又は複数種、0~5重量%含んでもよい。その代わり組成物は開始剤無しで、特に電子線により硬化できる。適切な光開始剤の例は、α-ヒドロキシケトン、α-アミノケトン、ベンジルジメチル-ケタール、アクリルホスフィン、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン、及びそれらの混合物が挙げられ、α-ヒドロキシケトン、ベンゾフェノン、アクリルホスフィン、及びそれらの混合物からなる群より選択されることがより好ましく、ヒドロキシケトン、アクリルホスフィン、及びそれらの混合物からなる群より選択されることが最も好ましい。
【0065】
本発明の被覆組成物はまた、不活性、又は官能性の樹脂、顔料、カーボンブラック、着色剤、充填剤、ナノ粒子、及び/又は湿潤剤、抗酸化物質、流動性改良剤、スリップ剤、難燃剤、UV保護剤、接着促進剤、レオロジー改質剤、レベリング剤、湿潤剤、スリップ添加剤、安定化剤、金属製充填剤、消泡剤、アルコキシシラン、水、及びそれらの混合物などの、配合組成物の基材への塗布を改善するのに適切な添加剤を任意選択的に含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。本発明の放射線硬化性組成物中の顔料、カーボンブラック、着色剤、不活性樹脂、充填剤、及び/又は添加剤の総量は一般的に60重量%を超えるものではなく、好ましくは40重量%を超えるものではない。
【0066】
本発明の被覆組成物は任意選択的に少なくとも1種の顔料及び/又は少なくとも1種のつや消し剤を含んでもよい。
【0067】
少なくとも1種の顔料は無機顔料であってよく、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、ヒュームドシリカ、酸化アルミニウム、及びそれらの任意の混合物からなる群より選択してもよい。一部の態様によれば、少なくとも1種の顔料は有機顔料であってよく、酸性又は塩基性色素顔料、ジアゾ顔料、モノアゾ顔料、フタロシアニン顔料、カーボンブラック、キナクリドン顔料、メタリック効果顔料、及びそれらの任意の混合物からなる群より選択してもよい。
【0068】
少なくとも1種のつや消し剤は無機つや消し剤であることが好ましく、特に無機酸化物つや消し剤であることが好ましい。好ましいつや消し剤はSiO、Al、AlPO、MgO、TiO、ZrO、Fe及びそれらの混合物からなる群より選択される。酸化物はゲル状、沈降、ヒュームド、コロイド状など様々な形状であってよい。無機酸化物はまた、天然鉱物、加工された/活性化された鉱物、モンモリロナイト、アタパルジャイト、ベントナイト、珪藻土、石英砂、石灰岩、カオリン、ボールクレイ、タルク、葉ろう石、真珠岩、ケイ酸ナトリウム、ナトリウムケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、マグネシウムケイ酸アルミニウム、シリカヒドロゲル、シリカゲル、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、透析シリカ、アルミナゼオライト、分子ふるい、珪藻土、逆相シリカ、漂白土、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0069】
本発明の被覆組成物はまた、ヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)とイソシアネート官能性成分(B)との反応を促進する触媒を含んでもよい。触媒はスズ、ビスマス、亜鉛、又はそれらの混合物の金属塩であってもよい。好ましい触媒はジブチルスズジラウレート、カルボン酸スズ、カルボン酸ビスマス、又はカルボン酸ビスマス/亜鉛である。アミン触媒もまた、単独で、又は上記の金属触媒と組み合わせて使用できる。適切なアミン触媒は、例えば1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)が挙げられる。触媒は、化合物(A)、(B)、及び任意選択的な化合物(C)及び(D)の総重量を基にして例えば0.005%(50ppm)~1%(10000ppm)の量で使用してもよい。
【0070】
二重硬化性被覆組成物において使用できる適切な溶媒はエステル、ケトン、エーテル、エーテルエステル、アルカン、又は芳香族溶媒などの、イソシアネート基及び二重結合(エチレン性不飽和)に対して不活性の溶媒である。放射線硬化性組成物中の溶媒の量は化合物(A)、(B)、及び任意選択的な化合物(C)及び(D)の総重量を基にして0重量%~80重量%、より好ましくは5重量%~70重量%、最も好ましくは10重量%~60重量%である。
【0071】
本発明の被覆組成物を調製する際、被覆組成物の全構成要素を1成分として配合できるが、この場合この系はポットライフが限られる。配合の好ましい型は構成要素(A)、及び任意選択的な化合物(C)、(D)を含む成分I,並びに化合物(B)を含む成分IIよりなる二成分系である。したがって各成分は構成要素自体と同程度の貯蔵安定性がある。両成分は適用の前に特定の割合で混合される、又はいわゆる二成分系の方法で適用される。2包が混合されるとすぐにイソシアネート基は水酸基と反応を開始し、遅く、連続的で、不可逆の反応となる。放射線硬化性組成物が使用できる時間を「ポットライフ」と定義する。特定の放射線硬化性組成物のポットライフは一般的に経験に基づいて決められる。ポットライフは通常、使用準備が整った製剤の使用開始時の粘度が二倍となると終わりに達する。エンドユーザーはまた、必要であれば操作を容易にするため双頭スプレーガンを使用できる。その条件で製剤ポットライフは長くなり、2成分はスプレー適用の後に混合される。
【0072】
本発明の放射線硬化性組成物中、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(A)及び任意選択的なヒドロキシ官能性化合物(C)はポリイソシアネート化合物(B)と結合する。化合物(B)のイソシアネート基の、化合物(A)及び任意選択的な化合物(C)の水酸基に対する当量比は0.2:1~1.3:1、より好ましくは0.5:1~1.2:1、更により好ましくは0.7:1~1.15:1、最も好ましくは0.8:1~1.1:1である。
【0073】
本発明の被覆系は二重硬化被覆組成物であることが好ましい。「二重硬化」とは熱及び放射線架橋などの2種の硬化機構によって硬化できる組成物を指す。硬化は同時に、又は交互になされることが出来る。例えば熱硬化で始まり、化学線照射硬化で終わりにすることができる。別の場合では化学線照射硬化で始まり、熱硬化で終わることが有利である可能性がある。使用順序は当業者の一般常識により決定される。
【0074】
放射線硬化は好ましくは高エネルギー放射線、すなわちUV放射線、又は日光、例えば172~750nmの波長を有する光への暴露、若しくは高エネルギー電子の砲撃(電子ビーム、70~300keV)により達成される。紫外線(UV)放射線、ガンマ放射線、及び電子ビームなどの様々なタイプの化学線放射線が使用される。好ましい放射線硬化の手段は紫外線放射である。一部の態様によれば、UV放射線はUV-A、UV-B、UV-C及びUV-V放射線である。
【0075】
光又はUV光の適切な放射源の具体例は、高圧水銀灯が挙げられ、ガリウム、又は鉄などの他の元素を添加することにより水銀蒸気を加減することが可能である。レーザー、パルスランプ(UVフラッシュランプの名称で知られる)、ハロゲンランプ、若しくはエキシマランプ、高、又は低圧ガリウムランプ、水銀ランプ、冷陰極管、キセノンランプ、ブラックライト、UV低エネルギー紫外線光源(LED),UVレーザー、及びフラッシュライトもまた使用してもよい。
【0076】
ランプは定置し、その結果照射される材料は機械的な装置によって放射線源を通過させてもよいし、あるいはランプを可動とし、照射される材料は硬化中場所を変えないとしてもよい。UV硬化の場合標準的に架橋に十分な放射線量は0.1~2000mJ/cmの範囲内である。
【0077】
照射はまた、必要な場合酸素が存在しない状態、例えば不活性ガス雰囲気、又は酸素が減少した雰囲気下で実施できる。適切な不活性ガスは窒素、二酸化炭素、希ガス、又は燃焼ガスが好ましい。照射はまた、放射線を透過させる媒介物で覆われた被覆になされてもよい。それらの具体例は例えば重合体薄膜、ガラス、又は液体である。
【0078】
本発明の放射線硬化性組成物は様々な種類の基材上に満足のいく特性を有する被覆を得ることが出来る。本発明の放射線硬化性組成物は非常に幅広い種類の基材のいずれに対しても、例えばスプレー、ローラー、ナイフコート、注入、スプレー、ブラシ、含浸、浸漬、印刷、又は別の移転方法などの通例の技法によって適用できる。本発明の放射線硬化性組成物はスプレー、又はローラーにより適用することが好ましい。適切な基材は、例えば木材、セラミック、複合材、特にワイヤー、コイル、缶、又はコンテナの被覆として知られる適用に使用される金属などの金属、及びまたプラスチック、特にABS、ABS/PC、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PC、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR-RIM、SMC、BMC、PP-EPDM及びUP(DIN7728T1に従う略語)、紙、革、織物、フェルト、ガラス、コンクリート、ガラス強化複合材、木質セメント板、及びアスベストセメント板などの無機的接着基材、電子部品組立品、又は鉱物基材である。上記の基材の異なる材料からなる基材、又はもうすでに被覆された基材を塗装することも可能である。例えば、シート、薄膜、又は箔、特にプラスチック箔を生成するために、放射線硬化性組成物を一時的にのみ基材に適用し、その後部分的、又は完全に硬化し、再び引き離すことも更に可能である。放射線硬化性組成物は乗り物、特に自動車の車体、又は追加部品の被覆に使用してもよく、クリアコートの形態での使用が好ましい。
【0079】
本発明の放射線硬化性組成物の硬化方法は以下の工程に従って実施できる;
-工程1:任意選択的に添加した溶媒を、好ましくは室温、又は好ましくは80℃までの高温で、また任意選択的に、加熱した気体(例えば空気)流によって急速に蒸発させる。温度は赤外線、又は近赤外線放熱器などの公知の方法、又は別の方法で加熱したオーブンによって上昇させる。
-工程2:NCO含有構成要素とイソシアネート反応性化合物とを架橋させることにより熱硬化させる。
-工程3:紫外線(UV)放射線、ガンマ線放射線、又は電子ビームとして、例えば放射線源を用いて放射線硬化させる。
【0080】
熱硬化は高温で行うことできるが、150℃未満が好都合である。温度は赤外線、又は近赤外線放熱器などの公知の方法、又は別の方法で加熱したオーブンによって上昇させてもよい。ポストキュア完了時、その後、被覆済み物品の更なる処理を行う前に冷却段階を設けてもよい。
【0081】
一般的な二重硬化は、放射線硬化及び熱硬化が連続して、又は同時に行ってもよい。放射線硬化、又は熱硬化のどちらが最初に行ってもよい。一部の態様によれば、本発明の放射線硬化性組成物は最初に放射線(UV放射線など)に供され、第二段階の硬化が続き、そこで先に放射線(UV放射線など)硬化の対象となった放射線硬化性組成物は熱硬化に供される(通常3D部品に対して)。
【0082】
本発明の別の好ましい態様によれば、二段階硬化過程は、本被覆組成物において強制乾燥(循環空気、又は赤外線)によるイソシアネート及び水酸基の第一反応、及び放射線源(UV光など)による熱硬化済み被覆組成物のさらに後段階の重合によって達成される。このような硬化順序により、被覆済み薄膜、型内加飾(IMD)、型内薄膜(IMF)、型内標識(IML)、及び型内被覆の熱形成、及び高圧形成において用いられる被覆済み物品の中間加工が可能となる。
【0083】
熱形成性被覆用途に使用される本発明の被覆組成物のための基材薄膜は上記の必要な熱形成性をすべて有しなくてはならない。したがって原則として熱可塑性ポリマー、特にポリアクリレート、ポリメタクリレート、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリオレフィン、ポリアミド、異なるポリマーの共重合体、及び異なるポリマーの混合物が適切である。
熱可塑性ポリウレタン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、及びPMMAの変性変異体、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリカーボネート、アクリルスチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、及びそれらの重合体の混合物が特に適切である。
【0084】
基材薄膜は50~5000μmの厚さを有する、好ましくは200~2000μmの厚さを有する薄膜の形態で使用されるのが好ましい。基材層の重合体は任意選択的に、例えば、安定化剤、繊維などの充填剤、及び着色剤などの添加剤を含むことが出来る。
【0085】
基材薄膜の背面側、すなわち被覆組成物が塗布されていない表面に、熱形成性接着剤層を任意選択的に配置できる。手順にもよるが、溶融接着剤又は放射線硬化接着剤が適切である。さらに、同じく熱形成性の保護薄膜を接着剤層の表面に配置できる。
【0086】
薄膜を任意選択的に、例えば接着剤プライマー、色彩-、及び/又は効果-付与ベースラッカーなどの熱可塑性表面被覆層でさらに覆うことができる。その場合本発明の被覆組成物は直接薄膜に塗布されるのではなく、すでに従来の方法で塗布され乾燥した熱可塑性表面被覆層に塗布される。
【0087】
本発明はまた、表面被覆組成物の硬化、及び本発明の被覆組成物のポストフォーム形成を組み合わせた方法に関連する。
【0088】
本発明の被覆組成物は最初にナイフ塗布、ローラー塗布、スプレー、又は印刷などの従来の方法で基材薄膜(薄膜)に塗布される。塗布された層の厚さ(硬化前)は一般的に0.5~5000μm、好ましくは5~1000μm、特に好ましくは10~200μmである。溶媒を使用する場合、溶媒は塗布後従来の方法で取り除かれる。その後熱重付加反応が開始する第一硬化工程に進む。それによって被覆組成物の化合物(A)及び(B)並びに任意選択的な化合物(C)又は(D)の定義される官能性により耐ブロッキング性被覆が形成される。
【0089】
熱形成性保護薄膜を第一硬化工程の前又は後に、特に使用する基材薄膜が被覆済み表面に対向する表面の上に接着剤層を有している場合、任意選択的に配置できる。
【0090】
第一硬化工程後、被覆済み薄膜は、被覆が基材薄膜の裏面に接着せずに任意選択的に巻き上げることが出来る。しかしながら、また被覆済み薄膜を大きさに切り分け、そして、個々に又は積み重ねて更なる処理をするための切断部門に送ることも可能である。
【0091】
第一硬化工程、又は任意選択的に巻き上げ後、被覆済み薄膜は熱形成により所望の最終形態となる。これは深絞り、真空形成、押圧、ブロー成形などの従来の処理により実施される。更に被覆済み薄膜は任意選択的に、物体を被覆するために加熱状態で使用できる。接着剤層は接着促進剤として薄膜と被覆を施す物体の間に任意選択的に挿入できる。
【0092】
形成工程後、被覆済み薄膜の被覆は最終的に化学線の照射により硬化する。放射線硬化は上記の放射線源による高エネルギー放射線の作用により実施されることが好ましい。
【0093】
最終硬化の前後に形成被覆済み薄膜は熱可塑性プラスチックなどの充填剤入り重合体、又は二成分ポリウレタン系などの反応性重合体を任意選択的に用いて、その後ろにフォームをスプレー、又は塗布して変性できる。接着剤層は任意選択的に接着促進剤として使用できる。
【0094】
それから生産された形成被覆済み薄膜、又は成形された物体は原則的に被覆されていない薄膜、又は形成後被覆された薄膜と同様に使用できる。特に透明、又は部分的に透明な形成被覆済み薄膜は電子機器のスクリーン、インジケーター、及びディスプレーの生産に使用できる。更に、例えば自動車のナンバープレートなどの部分的に凸凹領域を有するラベル、又は標識に使用でき、また三次元構造がセキュリティ特徴として使用されるクレジットカード、又はその他のカードの生産にも使用できる。さらにエンボス加工済み金属、例えば高品質包装の代替品として使用できる。
【0095】
背面にスプレーを施された、又は背面にフォームを塗布された成形体は原則的に、同様に適切に形成された、被覆済み又は被覆していないプラスチック部品として同様に使用できる。したがって本発明の成形体は、特にプラスチック部品がその機能のため高品質表面被覆の有益な特性(外観、耐性、擦傷、及び擦り切れに対する堅牢度)を要するが、その後の表面被覆がコストの理由で省かれる場合に有利に使用できる。そのような用途は特に携帯電話、又は電話、電気髭剃り、及びコンピューターなどの小型の電子機器、特に特別な負荷にさらされる携帯用機器の筐体である。成形体は自動車又は飛行機の製造において、特に自動車の追加部品又は車体部品として有利に使用される。
【実施例
【0096】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0097】
実験データ
材料一覧:
・ABS:アクリロニトリルブタジエンスチレン、Magnum3616、ダウ社
・PC:ポリカーボネート、Lexan9030、サビック社
・ABS/PC:Bayblend T85、バイエル社
・AA:アクリル酸、モノマー、BASF社
・Veralite(登録商標)200:PETG(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート)に基づく熱形成性プラスチックシート、IPB社
・Eponex(登録商標)1510、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ヘキシオン社
・BAC:酢酸ブチル、溶媒、セラニーズ社
・IPDI:イソホロンジイソシアネート、エボニック社
・HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート、コベストロ社
・Desmodur(登録商標)N3300:脂肪族ポリイソシアネート(HDI三量体)、コベストロ社
・PETIA:ペンタエリスリトールトリアクリレート、オルネクス社
・Eternacoll(登録商標)PH100:共重合ポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社
・Eternacoll(登録商標)PH200D:共重合ポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社
・Eternacoll(登録商標)PH300D:共重合ポリカーボネートジオール、宇部興産株式会社
・EBECRYL(登録商標)1200:アクリレート官能性アクリル樹脂、オルネクス社
・EBECRYL(登録商標)4510:イソシアネート官能性ウレタンアクリレート、オルネクス社
・BHT:ブチル化ヒドロキシトルエン、安定化剤、Innochem社
・MeHQ:ヒドロキノンモノメチルエーテル、安定化剤、Innochem社
・Hycat OA:触媒、Dimension Technology Chemical Systems社
・PTZ:フェノチアジン、Allessa社
・ValikatZB8:PU触媒、ユミコア社
・Additol(登録商標)CPK:1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニル-ケトン、光開始剤、オルネクス社
・DBTL:ジラウリン酸ジブチルスズ、触媒、ヴェスタイントラコン社
・Modaflow(登録商標)9200:アクリル性流動改良剤、シリコーン無添加、オルネクス社
・Tegowet(登録商標)270、ポリエーテルシロキサン共重合体、エボニック社
・Syloid MX 309:シリカつや消し剤、Grace社
・Acematt OK 520:ワックス処理シリカつや消し剤、エボニック社
・Lanco(商標)PP1362D:改良ポリプロピレンワックス、ルーブリゾール社
【0098】
計測は以下の標準に従って行った:
水酸基価(mgKOH/gのIOH)は以下の方法で測定した。この「OH数」法は電位差滴定法による水酸基の自動定量手法を含む。水酸基数は樹脂1gから調製される完全にアセチル化された誘導体の加水分解生成物を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される。工程1-アセチル化工程:全水酸基を75℃で塩化アセチルによりアセチル化する。工程2-加水分解工程:過剰の塩化アセチルはN-メチル-2-ピロリドン(NMP)水溶液により加水分解する。工程3-滴定工程:形成された酸性基を0.5Nの水酸化カリウムで滴定する。
【0099】
樹脂の粘度は欧州統一規格ISO3219に従って、固定した剪断速度25 1/s、23℃で、コーンプレート型流動計MCR100(Paar-Physica)により測定した。
【0100】
数平均分子量(Mn)は従来のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)でポリマー・ラボラトリー社のポリスチレン標準EasyCal(分子量範囲:200~400,000g/mol)を用いて決定した。試料は流量マーカーとして0.5%のトルエンを含むテトラヒドロフランに溶解した(1.0% wt/wt)。分析は3PLGel Mixed-D LSポリスチレンジビニルベンゼンGPCカラム(300×7.5mm×5μm)を備えた液体クロマトグラフィー(メルク-日立 L7100)で行った。試料の成分は溶液中の分子量に基づきGPCカラムで分離し、屈折率検出器で検出した。データを集めポリマー・ラボラトリー社のCirrus GPCソフトウェアで処理した。
【0101】
本発明のウレタンアクリレート(A)の調製
工程1:エポキシアクリレート(A1)の調製:363.5gのEponex(登録商標)1510、0.48gのBHT、及び0.36gのHycat OAを撹拌機、液体添加ロート、及び温度計を備えた反応フラスコに入れた。混合物を95℃で加熱した。添加ロートを120.4gのAA、0.48gのMeHQ、及び0.36gのHycat OAの混合物で満たし、反応フラスコ内の温度が105℃を超えないように混合物を2時間かけて反応フラスコに滴下した。全てのAAを添加後、反応混合物を酸価が1mgKOH/gより低く、エポキシ価が0.27%より低くなるまで110℃でさらに攪拌した。
工程2:ウレタンアクリレート(A)の調製:工程1で調製したエポキシアクリレート(A1)を60℃に冷却し、396gのBAC、0.2gのValikat ZB8及び0.15gのPTZを添加し、15分間攪拌した。その後107.5gのHDIを3回に分けて添加し、続けて更に反応混合物を特定のイソシアネートの含有量が0.1%より少なくなるまで反応させた。生成物は固形分について50mgKOH/gの水酸基価、1450mPa.sの25℃で測定した粘度、及び2940g/molの数平均分子量を有していた。
【0102】
例2:HDIの代わりにIPDIを用いた以外は例1と同様である。
【0103】
例3~5:HDIとエポキシアクリレート(A1)の割合が異なり、そのためウレタンアクリレートの数平均分子量が異なること以外は例1と同様である。
【0104】
例6及び7はそれぞれ20重量%及び50重量%のポリカーボネートジオール(Eternacoll PH100)をそれぞれ80重量%及び50重量%のエポキシアクリレートと共に用いたこと以外は例1と同様である。
【0105】
合成例1~7を調製するのに用いた試薬の種類と量を表1に記載する。
【表1】
【0106】
比較例1及び2において、本発明のウレタン(メタ)アクリレートはそれぞれポリカーボネートジオール化合物Eternacoll PH200D及びEternacoll PH300Dに交換した。Eternacoll PH200D及びEternacoll PH300Dはアクリレート官能性基を含まず、それぞれ2000g/mol及び3000g/molの数平均分子量を有し、それぞれ58mgKOH/g及び39mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0107】
比較例3は45重量%のBAC中に含まれるアクリレート官能性アクリル樹脂であるBECRYL(登録商標)1200で、6420g/molの数平均分子量、200mgKOH/gの固形分に基づく水酸基価を有する。EBECRYL(登録商標)1200は物理的に乾燥している。
【0108】
比較例4はジイソシアネートとの更なる反応を行わない、BACで希釈した工程1由来のエポキシアクリレート(A1)であり、815g/molの数平均分子量を有していた。
【0109】
比較例5においてエポキシアクリレート(A1)はHDIと反応し、1815g/molの数平均分子量を有していた。
【0110】
合成比較例4、5を調製するため用いた試薬の種類と量を表2に記載する。
【表2】
【0111】
イソシアネート官能性ウレタンアクリレート(B)の調製
合成例8:371gのPETIA、429gのDesmodur N3300、及び100ppmのPTZを含む200gのBACを撹拌機、コンデンサー、並びに気体入口及び出口を備える反応フラスコに入れた。反応物は空気雰囲気中、室温で攪拌し、その後60℃に加熱し、18時間保持した。生成物は1600mPa.sの25℃での粘度及び6.2%のイソシアネート含有量を有した。
第2のイソシアネート官能性ウレタンアクリレートとしてEBECRYL(登録商標)4510を用いた。EBECRYL(登録商標)4510は20000mPa.sの23℃での粘度及び7%のイソシアネート含有量を有していた。
【0112】
樹脂評価
放射線硬化性組成物の調製-2K組成物
本発明の放射線硬化性組成物F1~F10及び比較放射線硬化性組成物F1~F6を表3、4、及び5に記載の化合物の量と型を用いて調製した。
【表3】

【表4】

ex9及びex10の配合において、二官能性ポリカーボネートジオール(Eternacoll PH200D)である、追加のポリオール化合物Cを添加した。
【表5】
【0113】
放射線硬化性組成物の特性の評価
放射線硬化性組成物で薄膜を調製した。被覆層は基材にバーコーターを用いて配置した。溶媒を急速に蒸発させ、通風式オーブン内で80℃、30分間熱処理を行った。溶媒急速蒸発後の目標被覆厚は15μmである。熱処理工程直後に被覆を指触乾燥性及び耐ブロッキング性について評価した。
熱形成はVeralite200基材上、室温で1週間保管後評価した。
その他の特性(薄膜外観、接着性、耐摩耗性、耐擦傷性、耐加水分解性、ハンドクリーム及び日焼け止めローションに対する耐性)は通風式オーブン内80℃で熱処理し、その後120Watt/cm水銀ランプを用い、硬化速度2×5m/min、UV光下で硬化させた基材について検査した。検査前基材は1週間室温で保管した。使用した基材はPC、ABS、及びABS/Pである。得られた薄膜は全てオーブンに入れる前後及びUV硬化後申し分なく、素晴らしくきれいな外観を示した。
【0114】
放射線硬化性組成物の特性を以下の方法で評価した。
溶媒蒸発後、硬化前の粘着性、及び薄膜貼着性:乾燥被覆厚15μmの薄膜をPC薄膜上に配置し、オーブン内で80℃、30分熱処理する。粘着性は薄膜の表面に指を押圧して評価する。結果は1~5の尺度:0=湿っている/1=非常にべとべとしている/2=べとべとしている/3=わずかにべとべとしている/4=指触乾燥―指紋/5=べとつきが無い、で記録する。表面に可視的な跡がない時、5点はべとつきが無い薄膜に対応する。更に薄膜貼着性は2枚の薄膜を接触させて、互いに引き離した後評価する。結果は0~3の尺度:0=非常に強い貼着性/1=強い貼着性/2=わずかな貼着性/3=貼着性は無い、で記録する。
【0115】
耐ブロッキング性:乾燥被覆厚15μmの薄膜をPC薄膜上に配置し、オーブン内で80℃、30分熱処理する。硬化した試料の冷却及び保管後、表面を被覆した面を突き合わせ、直径6cmの表面に1kgの圧力をかけ、45℃のオーブン内に2時間置く。耐ブロッキング性の格付けは0~5の尺度:5=ブロッキング無し、欠損無し/4=少しブロッキングが有るが欠損無し/3=小さい欠損/2=大きい欠損/1=引き離すことが出来ない、で記録する。
【0116】
熱形成性:乾燥被覆厚15μmの薄膜をVeralite200基材上に配置し、オーブン内で80℃、30分熱処理する。基材を室温で冷却、保管後、基材を熱形成性について、型(直径4.5cm、長さがそれぞれ3、5及び8cm(それぞれ150%、250%、及び300%のほぼ最大延長に対応)である大きい円筒)を用い、熱形成装置(真空成形機725FLB)内で検査する。薄膜を熱形成した後被覆を外観について評価し、1~5:5-欠損無し、4-わずかな小さい亀裂、3-多くの小さい亀裂、2-大きい亀裂及び最大延長域での被覆の剥離、1-大きい亀裂及び成形域全体にわたる剥離、で格付けする。
【0117】
薄膜外観(透明性):異なる態様について被覆の透明性を評価する。結果は視覚によって格付けし、1~5の尺度:5=完全に透明、4-=非常にわずかに曇りがある、3=わずかに曇りがある、2=曇りがある、1=不透明、で記録する。高値(5)は被覆済み物体の最上の外観及び機能性を提供すると期待される。
【0118】
接着性(クロスハッチテープ):ABS、PC、及びABS/PC上の接着性についてISO2409に従ったクロスカット試験を用いて評価した。ナイフを用いて1mm以下の間隔をあけて長さ1cm以下の切れ目を5つ被覆に設け、その後横方向に5つの同様の切れ目を設ける。接着性は接着テープ(Scotch(登録商標))を用いてクロスカットした被覆上に押し付け、急速に取り除くことにより評価する。接着性の減少による被覆のクロスカット表面領域の損傷を0~5の尺度(5=最上)で表現する。高い接着性は被覆と基材との間の強く、永続する結合を保証するのに必要である。
【0119】
ハンドクリーム及び日焼け止めローションに対する耐性:ハンドクリーム及び日焼け止めローションに対する被覆の耐性はVW PV 3964に従って評価する。日焼け止めクリーム及びハンドローションを包帯に塗布し、被覆上に置く。試料は80℃の通風式オーブン内に24時間置き、包帯を取り除き、クリーム/ローションの残りをティッシュペーパーで拭い去る。試料は評価の前少なくとも4時間室温に置いておく。被覆は目に見える損傷及び検査後のクロスハッチ接着性で評価する。被覆に損傷がなく、検査の前後で同じ水準の接着性に達する場合、検査に合格する。
【0120】
耐加水分解性:加水分解に対する被覆の耐性はVW TL 226に従って評価する。プラスチック基材に配置した被覆を90℃、相対湿度95%で72時間湿度室に置く。被覆は目に見える損傷及び湿度試験後のクロスハッチ接着性で評価する。被覆に損傷がなく、検査の前後で同じ水準の接着性に達する場合検査に合格である。
【0121】
耐汚染性:物質(Z)を一定の時間(Y)被覆上に置き、空気乾燥を防ぐためガラスキャッピングで覆う。一定時間(Y)後、物質(Z)を溶媒(S)、又は水/石鹸溶液に浸したティッシュペーパーで拭い去る。その後1~5の尺度を用いて以下のように耐汚染性を定め、採点する(5:目に見える汚れは無い、4:非常にわずかな汚れ、3:中程度の汚れ、2強い汚れ、1:非常に強い汚れ)。以下の製品(日常で汚れをつける物質とも呼ばれる)を検査した。
【表6】
【0122】
摩耗(テーバーヘイズ):摩耗に対する被覆の耐性はASTM規格D1044に従ってテーバーヘイズで評価する。PC上の開始時の被覆のヘイズを測定する。その後検査試料を摩耗試験器に置く。研磨器ホイールCS-10Fの上に500gの荷重を配置し、一定回転数回転させる。最終ヘイズ測定を行い、開始時の値と比較する。摩耗損傷は目視で判断し、試験方法D1003に従い摩耗を行った試料と行っていない試料間のヘイズ割合の違いで数量化する。ヘイズ割合の違いが低いほど被覆は摩耗損傷に対してより耐性がある。
【0123】
擦傷耐性(PC上のスチールウール):検査は被覆をスチールウールで5往復こすって傷をつけて行う。結果は目視で格付けし、1~5の尺度:5=擦傷なし、4=非常に軽い擦傷、3=中程度の擦傷、2=強い擦傷、1=非常に強い擦傷、で記録する。高値(5)は被覆済み物体の任意の劣化に対する最高の保護を提供することが期待される。
熱硬化被覆の特性を表7及び8に記載する。
【表7】

【表8】
【0124】
本発明の被覆は良好な耐ブロッキング性及び良好から優れた熱形成性を有すると結論付けることが出来る。200mgKOH/g(固形分に基づく)の高い水酸基価を有するEBECRYL1200に基づく比較例F3及びF4は非常に乏しい熱形成性を有する。比較例F5及びF6もまた熱形成性が不良である。これらの被覆は、それぞれ186及び98mgKOH/g(固形分に基づく)の高い水酸基価を有し、またそれぞれ815g/mol及び1815g/molの比較的低い数平均分子量を有している比較合成例4及び5に基づいている。
UV硬化被覆の特性を表9及び10に記載する。
【表9】

【表10】
【0125】
従って本発明の例1~10は様々なプラスチック基材に対して傑出した接着性、中程度から良好な擦傷及び摩耗に対する耐性を示し、自動車の室内装飾で一般的に用いられる困難な化学的な耐性検査、すなわち加水分解、ハンドクリーム、及び日焼けローション耐性検査、全てに合格した。例F9及びF10において成分(C)が組成物に含まれる場合に熱形成特性は保持されるが、大量の(C)を用いると減少する特性がある(例F10)ことが示される。
【0126】
ポリカーボネートジオールEternacollPH200D及びEternacollPH300Dに基づく比較製剤例F1及びF2は日焼け止めローション耐性検査に不合格であった。EBECRYL1200に基づく比較例F3及びF4は加水分解検査で接着性を失っていた。
【0127】
典型的な日常の汚染に対する耐性は熱及びUVで硬化した製剤例F3とUVのみで硬化したF11及びF12との両方で評価した。
10μに乾燥させた被覆を、バーコーターを用いて白いレネタ紙の上に配置する。F11及びF12については80℃、5分間溶媒を急速に蒸発させた後、又はF3については通風式オーブン内で80℃、30分間溶媒を急速蒸発及び熱処理を行った後、被覆をUV光下、2×5m/minの硬化速度で、120Watt/cm水銀ランプを用いて硬化した。検査前に基材は1週間室温で保管した。
【表11】
【0128】
表11のデータは、二重硬化製剤F3及びUVのみで硬化させる製剤F11より調製した被覆が優れた耐汚染性及び化学的耐性を有することを示す。またF12につや消し剤を添加した場合良好な耐汚染性が保たれた。
本発明の一態様を以下に示すが、本発明はそれに限定されない。
[発明1]
10~80mgKOH/gの水酸基価を有し、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート化合物(A1)とジイソシアネ-ト官能性化合物(A3)及び2つの水酸基を含み化合物(A1)とは異なる任意選択的な化合物(A2)との反応生成物であるヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクレート化合物(A)、を含む放射線硬化性組成物であって、
化合物(A1)が、下記反応a又はbにより得られる、前記硬化性組成物:
a. 少なくとも1つのジエポキシ官能性化合物(A11a)と、少なくとも1つの(メタ)アクリレート基及び1つのカルボン酸官能基を含む(メタ)アクリレート化合物(A11b)との反応、又は
b. 2つのカルボン酸基を含むカルボン酸官能性化合物(A12a)と、1つのグリシジル基及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含むエポキシ(メタ)アクリレート化合物(A12b)との反応。
[発明2]
以下を含む放射線及び熱硬化性組成物:
(I)少なくとも1つの、発明1に記載のヒドロキシ官能性ウレタン(メタ)アクリレート(A)と、
(II)少なくとも1つのイソシアネート基及び少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含む、任意選択的な少なくとも1つのイソシアネート官能性化合物(B)と、
(III)化合物(B)との重付加に適する少なくとも2つの水酸基及び任意選択的に少なくとも1つの(メタ)アクリレート基を含み、化合物(A)とは異なる、任意選択的な少なくとも1つの化合物(C)と、
(IV)化合物(A)及び(C)の水酸基への反応性並びに化合物(B)のイソシアネート基への反応性を有する化学基を実質的に有しない、任意選択的な少なくとも1つの(メタ)アクリレート化合物(D)。
[発明3]
化合物(A)が1500~20000g/molの数平均分子量、好ましくは2000~20000g/molの数平均分子量、及び固形分1グラム当たり0.5~3.5ミリ当量のエチレン性不飽和基を有している、発明1又は2に記載の硬化性組成物。
[発明4]
化合物(A1)が少なくとも1つの脂肪族環又は芳香族環を含む、発明1~3のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明5]
化合物(A1)がジエポキシ化合物(A11a)と化合物(A11b)との反応生成物である、発明1~4のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明6]
化合物(A11a)が環状脂肪族エポキシ化合物である、発明5に記載の硬化性組成物。
[発明7]
化合物(A11a)が水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(HBADGE)である、発明6に記載の硬化性組成物。
[発明8]
化合物(A11b)が(メタ)アクリル酸である、発明5~7のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明9]
化合物(A1)が化合物(A1)及び(A2)の全体量に対して少なくとも50重量%存在する、発明1~8のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明10]
化合物(A)の数平均分子量が少なくとも1500g/mol、好ましくは少なくとも2000g/mol、より好ましくは少なくとも2500g/molである、発明1~9のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明11]
化合物(A)の水酸基価が固形分中10~80mgKOH/g、好ましくは15~80mgKOH/g、より好ましくは20~70mgKOH/gである、発明1~10のいずれかに記載の硬化性組成物。
[発明12]
二重硬化用途のための、絶縁保護膜のための、複合材料のための、三次元(3D)用途のための、濃色着色系のための、熱形成のための、熱形成性インクのための、又は成形用途のための、発明1~11のいずれかに記載の硬化性組成物の使用。
[発明13]
基材、薄膜、及び箔を成形又は熱形成することによって造形物を製造するための熱形成又は成形プロセスにおける、発明1~11のいずれかに記載の放射線硬化性組成物の使用。
[発明14]
基材、薄膜、及び箔が、発明1~11のいずれかに記載の硬化性組成物で被覆され、熱形成され、熱形成された物品は続いて化学線に暴露される発明13に記載の使用。
[発明15]
発明1~11のいずれかに記載の硬化性組成物により印刷された、又は被覆された基材、薄膜、又は箔。