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特許7311585人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/02 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
A61M39/02 110
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021508066
(86)(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2019060116
(87)【国際公開番号】W WO2019211101
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】18169997.6
(32)【優先日】2018-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513092051
【氏名又は名称】ペーエフエム メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アルシャール ド ラ ヴァント、スタニスラス マリー ベルトラン
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-509061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0203484(US,A1)
【文献】特表平08-501008(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0274223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス(1)であって、
人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部(11)を有するポート本体(2)と、
針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部(9)を有する針入口(3)であって、ポート本体(2)に接続され、第1の非作動動作状態と、第2の作動動作状態との間でポート本体(2)に対して移動可能である針入口と、
第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態において針入口(3)をロックするためのロック手段(8)であって、針を針入口(3)に挿入し、挿入された針を介して所定の動きを針入口(3)に適用することによって、および/または、挿入された針を介して針入口(3)に所定の動きを適用して針入口(3)から針を取り外すことによって作動される、ロック手段(8)と、を含んでおり、
針入口(3)の所定の動きが、針を針入口(3)に挿入するための針の動きとは少なくとも部分的に異なる、埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項2】
針入口(3)の所定の動きが、針入口(3)の回動移動および/または並進移動を含む、請求項1に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項3】
針が針入口(3)に挿入される針入口(3)の挿入角度が、15°~40°である、請求項1または2に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項4】
針入口(3)が、針を針入口(3)に導くための漏斗(13)を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項5】
ロック手段(8)が、針入口(3)のカム(14)と、カム(14)を案内するためのポート本体(2)の対応する凹部(15)、および/または、ポート本体(2)のカム(14)と、カム(14)を案内するための針入口(3)の対応する凹部(15)を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項6】
カム(14)が、長方形または三角形の形状である、請求項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項7】
凹部(15)が、第1の非作動動作状態または第2の作動動作状態のいずれかでカム(14)を受け入れるための少なくとも1つのピット(20)を含む、請求項またはに記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項8】
カム(14)を案内するための凹部(15)が、ハート形である、請求項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項9】
ロック手段(8)が、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態において、針入口(3)をロックするための、スナップ嵌め(16)接続を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項10】
ロック手段(8)が、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態において、ロック手段(8)をロックするためのバネを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項11】
バネが、埋込型アクセスデバイス(1)の弁機構(12)に接続されているか、または弁機構(12)と一体的に形成されている、請求項1に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【請求項12】
ロック手段(8)が、第1の非作動動作状態および/または第2の作動動作状態においてロックされると、音および/または振動のような、音声および/または触覚フィードバックを生成する、請求項1~11のいずれか1項に記載の埋込型アクセスデバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートに関する。
【背景技術】
【0002】
治療中、例えば、治療薬、薬物などの注入、体液の除去、体液の処置、造影剤の注入、および/またはカメラ、超音波プローブ、ブラシ、カテーテル、捕捉装置、または同様の装置などの医療機器の挿入のために、人または動物の体の血管系に繰り返しアクセスしなければならない場合がある。例えば、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿交換、限外濾過、水濾過、n脂質フェレーシス、血液灌流、腹膜透析などのような流体交換療法の場合、大量の流体の流れを可能にする、人または動物の体の血管系にアクセスするための装置が好ましい。
【0003】
従来技術から、例えば、直接血管カニューレ挿入、短期および長期のカテーテル法、および皮下ポートシステムの移植など、人または動物の体の血管系にアクセスするための様々な手段が知られている。
【0004】
人または動物の体の血管系への一時的なアクセスは、人または動物の体の皮膚を通して人または動物の体の血管系の血管に針を直接経皮的に導入することによって容易に行うことができる。そのような手法は、人または動物の体の血管系にアクセスする最も安価で最も単純な形態であり、例えば、静脈内薬物送達、脱血などのような短期間の用途に特に適している。しかしながら、人または動物の体の皮膚を通して人または動物の体の血管系の血管に針を繰り返し導入することは、血管血栓症、狭窄および仮性動脈瘤の形成、ならびに感染症を生じさせることがある。
【0005】
例えば、短期カテーテルや長期カテーテルのような経皮デバイスは、人または動物の体の皮膚を通して人または動物の体の血管系の血管に針を繰り返し直接経皮的に導入するという問題に対処するために使用される。そのような経皮デバイスは、柔軟なカニューレであってもよく、人または動物の体の血管または体腔などの関心のある領域に経皮的に挿入される。しかしながら、経皮デバイスは、人または動物の体の皮膚を通して人または動物の体の血管系の血管に針を繰り返し直接経皮的に導入するという問題に対処するが、しばしば感染による合併症を引き起こす。感染症は通常、機器が人や動物の体の皮膚、さらには人や動物の体そのものの血管系を通過する部位に感染する。よって、そのような経皮デバイスは、局所的または全身的な感染を引き起こす可能性がある。
【0006】
したがって、人または動物の体の皮膚を通して人または動物の体の血管系の血管に針を直接経皮的に導入すること、または、経皮カテーテルを使用することは、例えば、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿交換、限外濾過、水濾過、n脂質フェレーシス、血液灌流、腹膜透析などのように、定期的に繰り返さなければならない長期の用途や体外処置にはあまり適していない。
【0007】
上記の問題に対処するために、皮下に埋め込まれた様々なポートが、人または動物の体の血管系への長期および/または定期的に繰り返されるアクセスのために長年にわたって提案されてきた。典型的な皮下に埋め込まれたポートは、針またはアクセスカテーテルを受け入れるためのアクセス領域、ポートを通る流体流路、および人または動物の体の血管系の血管に取り付けられた皮下カテーテルを有する。したがって、流体流路が、アクセスカテーテルから皮下に埋め込まれたポートおよび皮下カテーテルを通って人または動物の体の血管系まで形成される。
【0008】
例えば、(特許文献1)に開示されているような最も一般的なタイプの皮下に埋め込まれたポートは、導入された針を受け入れるためのポートチャンバを有するハウジングを備えている。人または動物の体の皮膚に隣接するポートチャンバの表面は、通常はシリコーンゴムでできている高密度の自己封止隔壁(high-density self-sealing septum)で囲まれている。皮下に埋め込まれたカテーテルは、人または動物の体内の静脈または他の部位と連通しており、ポートチャンバに対して接続されて流体接続されている。そのような装置の埋め込みは、一般に、局所麻酔下で人または動物の体の適切な領域に小さな皮下ポケットを作ることによって行われる。皮下に埋め込まれたカテーテルは、所望の注入部位にトンネル状に留置される。
【0009】
隔壁は人または動物の体の皮膚に面しており、皮下に埋め込まれたカテーテルは人または動物の体の皮膚と実質的に平行に延びているため、導入された針からの流路には90°の屈曲部があり、この屈曲部は、人または動物の皮膚に対して垂直、皮下に埋め込まれたカテーテルに対して垂直である。特に高流量の場合、これは血液への損傷、いわゆる溶血を引き起こす可能性がある。
【0010】
隔壁の損傷またはコアリング(coring)を回避するために、いわゆるポートまたはフーバー針(Huber needle)のような特別な針が、人または動物の体の皮膚および隔壁を通してポートチャンバに導入される。隔壁の損傷やコアリングは、針を特別に切断することで回避できる。治療が終了した後、針はポートチャンバから引き抜かれる。
【0011】
大口径の針は、ポートチャンバを密閉するために使用されるゴム製の隔壁を損傷することがあるため、これらの周知の皮下に埋め込まれるポートデバイスの流体流量が制限される。さらに、視覚的理由および人または動物の体の皮膚に課せられる局所的な圧迫(stress)のために、皮下に埋め込まれるポートの高さを制限することが望ましい。ただし、これにより、ポートチャンバの高さが制限され、ポート隔壁が薄くなる。したがって、導入された針のわずかな変位は、より薄い隔壁による摩擦の減少のために、ポートチャンバから針をより容易に引き抜くことができるようになる。化学療法中のように有毒物質が注入されている場合、ポートチャンバから針を引き抜くと局所的な組織損傷を引き起こす可能性があり、矯正手術や組織の除去などのさらなる外科的治療につながることがある。
【0012】
さらに、流体流路の少なくとも1つの90°の屈曲部のために、例えば血栓症が発生すると、皮下に埋め込まれたポートを清潔にする(clear)ことが困難であるか、または不可能でさえある。血栓は、例えば肺塞栓症または肺閉塞症といった、深刻な傷害を患者に引き起こすことがある。皮下に埋め込まれたポートを清潔にするには、皮下注射針を介してポートチャンバに、さらに皮下に埋め込まれたカテーテルを介して洗浄ワイヤを送る必要がある。しかしながら、少なくとも1つの90°の屈曲部のために、ポートチャンバから皮下に埋め込まれたポートに洗浄ワイヤを送ることは非常に困難である。皮下に埋め込まれたポートを洗浄できない場合は、患者への深刻な傷害というリスクを回避するためにポートを交換する必要がある。
【0013】
ポートチャンバへの針の垂直導入に関連する課題を克服するために、例えば、(特許文献2)、(特許文献3)、(特許文献4)、(特許文献5)、(特許文献6)または(特許文献7)において、管状の皮下に埋め込まれたポートを使用することが提案されており、針が人または動物の体の皮膚に実質的に平行に導入されるように隔壁を配置する。これは、皮下に埋め込まれたポートを通る実質的に真っ直ぐな流体の流路をもたらす。実質的に真っ直ぐな流体流路のために、洗浄ワイヤまたは別のデバイスを、ポートチャンバを通して皮下に埋め込まれたカテーテルに容易に導入することができる。さらに、カテーテルハウジングの長さは、埋込み部位の領域の皮膚により多くの圧迫を引き起こすことなく延長することができる。したがって、ポートチャンバの長さを延ばすことができ、針をポートチャンバにさらに導入することができ、それにより、ポートチャンバから針が偶発的に引っ込められるリスクを大幅に低減することができる。
【0014】
さらに、(特許文献8)、(特許文献9)、(特許文献10)および(特許文献11)の例のように、隔壁を弁アセンブリで置き換えることが先行技術から知られている。弁アセンブリにより、瘻孔針は、隔壁を損傷することなく、皮下に埋め込まれたポートに導入することができる。通常、弁は、導入された針によって弁の一部を動かすことによって、または、導入された針を例えばリーフレット弁アセンブリのような弁を介して前進させることによって作動させられる。これにより、より大きな直径の針を使用することもでき、達成可能な最大流体流量が増加する。(特許文献12)はさらに、第1および第2のアクセスポートを含む二重ポート血管アクセスアセンブリを開示している。この血管アクセスアセンブリは、第1のアクセスポートにアクセスチューブがない場合に、第2のアクセスポートを閉じるように設計されている。したがって、第1のアクセスポートに戻りアクセスチューブがないために戻された血液が停止すると、採血は自動的に終了する。しかしながら、前述の先行技術文献によれば、針は人または動物の体の皮膚に対して垂直に導入され、したがって、依然として、ポートチャンバへの針の垂直導入に関連する上記の課題を抱えている。
【0015】
(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)および(特許文献17)はそれぞれ、減少した直径の案内通路につながる漏斗形状の入口オリフィスを有するハウジングを備えた皮下埋込型アクセスポートを開示している。リーフレットタイプの弁または自己収縮型管状弁を含む様々な形態をとることができる関節式弁が、アクセスポートハウジングに沿って配置される。針、ガイドワイヤ、光ファイバ、または外部カテーテルなどの外部フィラメントをアクセスデバイスに導入し、ハウジングを通して送って関節式弁を貫通させることができる。
【0016】
(特許文献18)および(特許文献19)はそれぞれ、人または動物の体内の血管に繰り返しアクセスするための埋込型の単一または二重ルーメンデバイスを開示している。そのようなデバイスは、弾力性材料を使用してシールを形成し、流れの不連続性のない滑らかで流線形の流路を備えている。このデバイスは、皮下に埋め込まれたカテーテルに結合されているため、アクセスする血管から流体を抽出したり、アクセスする血管に注入したりすることができる。このデバイスは、流体交換療法に関連する、毎分150ミリリットル以上の高流量用に設計されている。血液への損傷を最小限に抑えるには、滑らかな流れのストリーミングが重要である。対応する直針装置は、アクセスデバイスと嵌合およびロックするように設計されており、位置合わせと開放流路が保証される。弁シールには、シール自体と密接に接触して保持される、対向する非常に硬い表面の案内要素が組み込まれている。針アセンブリは、針先がシール材料に到達する前にシールを開くガイド要素を押し開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第6056717号明細書
【文献】独国特許発明第19624320号明細書
【文献】欧州特許第033294381号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1629862号明細書
【文献】欧州特許第176545681号明細書
【文献】米国特許第5848989号明細書
【文献】米国特許第4861341号明細書
【文献】米国特許第6007516号明細書
【文献】米国特許第6120492号明細書
【文献】米国特許第6193684号明細書
【文献】米国特許第7056316号明細書
【文献】米国特許第6565525号明細書
【文献】米国特許第5350360号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1016431号明細書
【文献】米国特許第5741228号明細書
【文献】米国特許第5356381号明細書
【文献】米国特許第5352204号明細書
【文献】米国特許第5911706号明細書
【文献】米国特許第6506182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特に、例えば、大量の流体を必要とする、血液透析、血液濾過、血液透析濾過、血漿交換、限外濾過、水濾過、n脂質フェレーシス、血液灌流、腹膜透析などのような流体交換療法の場合、最大流量が達成されることを保証する、人または動物の体の血管系にアクセスするための装置が必要とされている。さらに、流体交換療法は通常1時間以上の時間を要するため、挿入された針と一緒に血管系にアクセスするためのデバイスは、患者にとって可能な限り快適、つまり、薄型で、患者の皮膚にできるだけ近くになければならない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これらの目的は、本発明による、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートによって達成され、このデバイスは、人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部を有するポート本体と、針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部を有する針入口であって、ポート本体に接続され、第1の非作動動作状態(first,unactuated operating condition)と、第2の作動動作状態(second,actuated operating condition)との間でポート本体に対して移動可能である針入口と、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態において針入口をロックするためのロック手段であって、針を針入口に挿入し、挿入された針を介して所定の動きを針入口に適用することによって、および/または、挿入された針を介して針入口に所定の動きを適用して針入口から針を取り外す、ロック手段と、を含む。
【0020】
本発明によれば、埋込型アクセスデバイスを通る、すなわち挿入された針から、ポート本体およびポート本体の出口開口部に取り付けられたカテーテルを通る通路は、第1の非作動動作状態において完全に閉じられ、第2の作動動作状態において完全に開かれる。したがって、例えば、ポート本体は、ポート本体に対する針入口の相対的な動きによって作動される、すなわち開閉される弁機構を備える。
【0021】
本発明の埋込型アクセスデバイスのロック手段は、針を針入口に挿入することによって作動するので、挿入された針は、ポート本体に対して挿入された針を有する針入口を相対的に動かすことによって、患者の皮膚に近づけることができる。したがって、第2の作動動作状態では、針入口に挿入された針が患者の皮膚に近づき、それによって治療中の快適さを高める。
【0022】
ロック手段は、第1の非作動動作状態、第2の作動動作状態でそれぞれロックされるので、本発明の埋込型アクセスデバイスを通る通路が完全に閉じているかまたは完全に開いていることが保証される。したがって、ロック手段には、いわゆる双安定機構という2つの安定した動作状態がある。
【0023】
本発明の変形例によれば、埋込型アクセスデバイスは、針が針入口に挿入されていない場合に、ポート本体に対する針入口の相対的な動きを遮断する遮断手段をさらに備える。したがって、埋込型アクセスデバイスの偶発的な作動、すなわち、第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態への針入口の移動を防止する。
【0024】
本発明の好ましい変形例では、針入口の所定の動きは、針を針入口に挿入するための針の動きと少なくとも部分的に異なる。したがって、針を針入口へ挿入する動きだけでは、埋込型アクセスデバイスを作動させる、すなわち、針入口を第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態へ移動させることはできない。そのような作動のためには、埋込型アクセスデバイスの針入口に針を挿入した人は、少なくとも部分的に動きを変えなければならない。このようにして、針を針入口に挿入する際の偶発的な作動を防止する。
【0025】
本発明の有利な変形例では、針入口の所定の動きは、針入口の回動(pivoting)および/または並進運動を含む。針入口の所定の動きは、回動および並進運動を含むことが好ましい。例えば、最初に針の入口をわずかに並進運動させて回動運動を可能にし、回動運動の後、針の入口を別の並進運動によって他の動作状態にロックする必要がある。したがって、最初に動作状態が並進運動によってロック解除され、次に針入口およびその中の針が患者の皮膚に向かって回動して閉じられ、その後、針入口が別の並進運動によって他の動作状態にロックされる。
【0026】
本発明の変形例では、針が針入口に挿入される針入口の挿入角度は、15°~40°、好ましくは25°~30°である。この範囲において、針を針入口に挿入し、埋込型アクセスデバイスを介して流線形の流路を提供し、挿入された針を第2の作動動作状態で患者の皮膚の近くに適合させることが容易である。
【0027】
さらに好ましい変形例において、針入口は、針を針入口に導くための漏斗を含む。
本発明の変形例によれば、ロック手段は、針入口のカムと、カムを案内するためのポート本体の対応する凹部、および/または、ポート本体のカムと、カムを案内するための針入口の対応する凹部を備える。このようなカムおよび凹部手段を使用して、針の入口とポート本体の相対的な動きを定めて案内することができる。
【0028】
本発明の好ましい変形例によれば、カムは、好ましくは丸い角を有する、長方形または三角形の形状である。長方形または三角形のカムは、例えば、射出成形などで容易に製造され、安定性に優れている。丸い角は、カムを案内するための凹部でカムがふさがったり詰まったりするのを防止する。
【0029】
本発明の変形例によれば、凹部は、第1の非作動動作状態または第2の作動動作状態のいずれかでカムを受け入れるための少なくとも1つ、好ましくは2つのピットを有する。したがって、カムを凹部のピット内で動かすことにより、カムを第1および/または第2の動作状態にロックすることができる。2つの凹部を備えたカムを案内するための凹部は、本発明の好ましい変形例においてはハート形である。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、ロック手段は、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態で針入口をロックするためのボールペン機構またはSDスロット機構を備える。これに代えて、ロック手段は、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態で針入口をロックするための、スナップ嵌め接続、好ましくは、針入口のスナップと、スナップを受容または係合するためのポート本体の少なくとも1つの凹部または突起とを含む。そのような機構は、一般に、プッシュプッシュロック機構と称され、例えば、独国特許発明第809514号明細書、独国特許発明第812404号明細書、独国特許発明第1267570号明細書および米国特許第6454170号明細書のように、長年にわたって多くの異なる設計で知られている。
【0031】
本発明の好ましい変形例では、ロック手段は、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態でロック手段をロックするためのバネを備える。したがって、双安定システムが達成され、埋込型アクセスポートを通る通路の部分的な開放のみを回避する。これは、高流量を必要とする流体交換療法に特に有利である。
【0032】
特に好ましい変形例では、バネは、埋込型アクセスデバイスの弁機構に接続されているか、または弁機構と一体的に形成されている。したがって、針入口の第1の非作動動作状態は、弁機構の第1の非作動動作状態に直接結合され、針入口の第2の作動動作状態は、弁機構の第2の作動動作状態に直接結合される。
【0033】
本発明の特に有利な変形例では、ロック手段は、第1の非作動動作状態および/または第2の作動動作状態にロックされると、音および/または振動のような、音声および/または触覚フィードバックを生成する。
【0034】
上述したように、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートを有することが有利であり、このデバイスは、人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部を有するポート本体と、針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部を有する針入口であって、ポート本体に接続され、第1の非作動動作状態と、第2の作動動作状態との間でポート本体に対して移動可能である針入口と、を含む。
【0035】
第1の非作動動作状態と第2の作動動作状態との間でポート本体に対して移動可能な針入口に関連する1つの問題は、針入口とポート本体との間の相対運動中に埋込型アクセスデバイスを取り巻く組織が挟まれ得ることであり、これは患者にとって不快なものとなり得る。さらに、埋込型アクセスデバイスを取り巻く組織は、針入口とポート本体との間の相対的な動きを遮断する可能性がある。
【0036】
したがって、本発明の目的は、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートを提供することであり、このデバイスは、人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部を有するポート本体と、針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部を有する針入口であって、ポート本体に接続され、第1の非作動動作状態と、第2の作動動作状態との間でポート本体に対して移動可能である針入口と、を含み、針入口は前述した問題を回避する。
【0037】
本発明によれば、その目的は、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートが、ポート本体と針入口との間に配置されて、少なくとも針の入口がポート本体に対して移動する領域または容積を覆って、この領域での組織の成長を防止する、可撓性ソケットをさらに備えることで達成される。針入口とポート本体との間の相対的な動きが起こる領域または容積は、可撓性ソケットによって覆われているため、組織の挟み込みが回避される。さらに、この領域はすでに可撓性ソケットで覆われているため、組織は成長できない。
【0038】
可撓性ソケットは、針入口とポート本体との間の相対的な動きによって変形するように設計されている。可撓性ソケットのこの変形によって、周囲の組織が移動経路から押し出され、それによって組織の挟み込みを回避する。本発明によれば、可撓性ソケットは、可撓性ソケットが針入口とポート本体との間の相対運動、すなわち針入口とポート本体との間の完全に望ましい相対運動に悪影響を及ぼさないように、少なくとも変形することができる。
【0039】
本発明の変形例によれば、可撓性ソケットは、可撓性ソケットをポート本体に接続するための第1の開口部と、可撓性ソケットを針入口に接続するための第2の開口部とを有する。可撓性ソケットの2つの開口部は、ポート本体と針入口とを備え、針入口が、ポート本体に接続され、第1の非作動動作状態と、第2の作動動作状態との間でポート本体に対して移動可能である、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス、特に皮下埋込型アクセスポートの組み立てを容易にする。
【0040】
本発明のさらなる変形例では、可撓性ソケットは中空である。可撓性で中空のソケットは、ポート本体に対する針入口の相対移動中に容易に変形でき、同時に、針入口とポート本体との間、特に、これら2つの部分の間の相対的な動きの領域または容積での組織の挟み込みおよび/または組織の成長を防止するという利点がある。さらに、このようなソケットにより製造時の材料費が節約される。
【0041】
本発明の好ましい変形例では、可撓性ソケットの第1の開口部は、ポート本体の対応する部分よりも小さく、そこで、可撓性ソケットの第1の開口部がポート本体に接続される。ソケットが可撓性であり、第1の開口部がポート本体の接続部分よりも小さいため、可撓性ソケットの第1の開口部は、ポート本体の接続部分への接続時に引き伸ばされる。可撓性ソケットの第1の開口部のこの引き伸ばしにより、可撓性ソケット、特に可撓性ソケットの第1の開口部と、ポート本体の接続部分との間に摩擦力ベースの接続を形成する。例えば、可撓性ソケットの第1の開口部は、ポート本体の接続部分よりも約10%~約20%小さい。これは、伸びすぎて可撓性ソケットの第1の開口部を損傷することなく、可撓性ソケットの第1の開口部とポート本体の接続部分との接続を十分なものにする。さらに、そのような可撓性ソケットの第1の開口部は、ポート本体と可撓性ソケットとの間の良好な封止を提供する。
【0042】
本発明の好ましい変形例では、可撓性ソケットの第1の開口部およびポート本体の接続部分は対応する表面を有する。可撓性ソケットの第1の開口部およびポート本体の接続部分の対応する表面は、可撓性ソケットの第1の開口部とポート本体の接続部分との間の接触面を強化し、それによって可撓性ソケットの第1の開口部とポート本体の接続部分との間の摩擦力を高めるという利点を有する。
【0043】
本発明の特に好ましい変形例では、対応する表面は、バーブ取り付け(barbed fit)のような突起およびくぼみを含む。そのようなバーブ取り付けは、可撓性ソケットの第1の開口部のポート本体の接続部分への組み立て方向への容易な移動を可能にし、可撓性ソケットのポート本体の接続部分に対する反対方向の移動を防止する。
【0044】
本発明の代替の変形例では、可撓性ソケット、特に可撓性ソケットの第1の開口部は、ポート本体の対応する2つの部分の間に可撓性ソケットの少なくとも一部をクランプすることによってポート本体に接続される。ポート本体が少なくとも2つの部分から構成される場合、可撓性ソケットは、ポート本体のその少なくとも2つの部分の間に可撓性ソケットの一部でクランプすることによって製造する間に、ポート本体に安全に接続することができる。これはまた、ポート本体と可撓性ソケットとの間の良好な封止を提供する。
【0045】
本発明の変形例によれば、埋込型アクセスデバイスは、ポート本体に移動可能に接続されるレセプタクルをさらに備えており、針入口はそのレセプタクルに接続可能であり、よって、レセプタクルおよび針入口はポート本体に対して移動可能である。この変形例では、可撓性ソケットは、針入口およびレセプタクルがポート本体に対して移動する領域または容積を少なくとも覆って、この領域での組織の成長を防止する。
【0046】
本発明の変形例では、可撓性ソケットの少なくとも一部、好ましくは第2の開口部が、レセプタクルおよび針入口の対応する表面間にクランプされる。このようにして、可撓性ソケット、特に可撓性ソケットの第2の開口部は埋込型アクセスデバイスにしっかりと接続されて、ポート本体に対する針入口とレセプタクルとの間の相対移動の領域と容積において組織の成長を防止する。さらに、レセプタクルと針入口との間における可撓性ソケット、特に可撓性ソケットの第2の開口部のこのクランプは、埋込型アクセスデバイスの組み立て中に容易に達成することができる。
【0047】
本発明のさらなる変形例では、可撓性ソケットは少なくとも部分的にシリコーンから構成される。可撓性のシリコーンソケットは、上記の利点を全て提供し、同時に製造が容易かつ安価である。
【0048】
本発明はさらに、本発明による埋込型アクセスデバイスと共に使用されるように構成および/または設計された可撓性ソケットに関する。
以下では、本発明は、図面に示される実施形態に関してさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1a】第1の非作動動作状態における埋込型アクセスデバイスの斜視図を示す。
図1b】第2の作動動作状態における図1aの埋込型アクセスデバイスを示す。
図2】可動針入口およびロック手段の第1の実施形態を備えた埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。
図3a】可動針入口およびロック手段の第2の実施形態を備えた埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。
図3b】可動針入口およびロック手段の第2の実施形態を備えた埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。
図4a】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第3の実施形態を示す。
図4b】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第3の実施形態を示す。
図4c】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第3の実施形態を示す。
図4d】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第3の実施形態を示す。
図5a】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第4の実施形態を示す。
図5b】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第4の実施形態を示す。
図6a】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第5の実施形態を示す。
図6b】埋込型アクセスデバイスのロック手段の第5の実施形態を示す。
図7】組織が成長している図1aの埋込型アクセスデバイスを示す。
図8a】第1の非作動動作状態における可撓性ソケットを有する埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。
図8b】第2の作動動作状態における、図8aの埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。
図9】可撓性ソケットとポート本体との間のバーブ接続の詳細図を示す。
図10a】針入口およびレセプタクルの詳細図を示す。
図10b】針入口とレセプタクルとの間でクランプされた可撓性ソケットの詳細断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1aは、第1の非作動動作状態における、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス1、特に皮下埋込型アクセスポートの斜視図を示す。埋込型アクセスデバイス1は、人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部を有するポート本体2を備える。埋込型アクセスデバイス1は、針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部を有する針入口3をさらに備える。針入口3は、レセプタクル4を介してポート本体2に接続される。針入口3およびレセプタクル4は、図1aに示される第1の非作動動作状態と図1bに示される第2の作動動作状態との間で、ポート本体2に対して移動可能である。
【0051】
第1の非作動動作状態では、埋込型アクセスポート1を通る通路が閉じられている。針が針入口3に導入されると、針入口3およびレセプタクル4は、第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態へと、ポート本体2に対して移動する。第2の作動動作状態では、埋込型アクセスポート1を通る通路が開いており、針および埋込型アクセスポート1を通る、原則として両方向の流体の流れが可能になる。さらに、第2の作動動作状態では、針入口3に挿入された針は、例えば摩擦力によって針入口2に固定される。
【0052】
処置が終わると、針入口3およびレセプタクル4は、第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態へと、ポート本体2に対して移動し、それによって、埋込型アクセスポート1を通る通路を閉じ、同時に針を針入口3から解放する。
【0053】
好ましくは、針入口3および/またはレセプタクル4は、第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態へと、ポート本体2に対して回動可能である。さらに、本発明の変形例では、針入口3および/またはレセプタクル4は、ポート本体2に対する針入口3および/またはレセプタクル4の並進運動によって、第2の作動動作状態に固定することが可能である。
【0054】
図2は、人または動物の体の血管系にアクセスするための埋込型アクセスデバイス1、特に皮下埋込型アクセスポートの断面図を示す。図2の埋込型アクセスデバイス1は、人または動物の体の血管系にアクセスするためのカテーテルに接続または接続可能な少なくとも1つの出口開口部を有するポート本体2を備える。埋込型アクセスデバイスはさらに、針を受け入れるための少なくとも1つの入口開口部を有する針入口3を備えており、針入口3はポート本体に接続され、第1の非作動動作状態と、第2の作動動作状態との間でポート本体2に対して移動可能である。
【0055】
第1の非作動運転状態では、針入口3の入口開口部9からポート本体2の出口開口部11までの通路10が弁12によって閉じられ、第2の作動運転状態では、針入口3の入口開口部9からポート本体2の出口開口部11までの通路10が、弁12によって開かれる。
【0056】
図2の埋込型アクセスデバイス1は、第1の非作動動作状態および第2の作動動作状態で針入口3をロックするためのロック手段8をさらに備える。ロック手段8は、針を針入口3に挿入し、挿入された針を介して針入口3に所定の動きを加えることによって、および/または、挿入された針を介して針入口3に所定の動きを加えて、針入口3から針を取り外すことによって作動される。
【0057】
図2に示すロック手段8は、まず、針入口3をポート本体2に対して並進移動させ、その後、針入口3を第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態に移行させるために、針入口3をポート本体2に対して回動移動させる。針入口3を第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態に戻すためには、まず、針入口3をポート本体2に対して回動移動させ、次に針入口3をポート本体2に対して並進移動させなければならない。針入口3の針開口部9への針の挿入は針の斜め移動を必要とするので、針入口3の所定の移動は、針を針入口3に挿入するための針の移動とは少なくとも部分的に異なる。
【0058】
針入口3は、針を針入口の入口開口部9に導くための漏斗13を含む。
図2に示すロック手段8は、第1の非作動動作状態において針入口3の一部が係合するポート本体2の凹部によって実施される。さらに、針入口3の一部がポート本体2の凹部に係合しない限り、針入口3は、ポート本体2内で回動可能である。よって、針入口3を第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態へ移動させるために、まず、針入口3の一部を並進運動によってポート本体2の凹部から後退させ、その後、針入口3をポート本体2に対して回動させる。針入口3を第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態へ移動させるために、まず、針入口3をポート本体2に対して回動させ、その後、針入口3の一部を並進運動によってポート本体21の凹部へ移動させる。
【0059】
ポート本体2の凹部に針入口3の一部を配置することにより、第1の非作動動作状態でのロックが達成される。第2の作動動作状態では、針入口3の一部とポート本体2の内面との間の摩擦力によってロックが達成される。
【0060】
第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態への移動は、ポート本体2と針入口3との間のバネによって支援することが可能である。好ましくは、バネは、埋込型アクセスデバイス1の弁機構12に接続されているか、または弁機構と一体的に形成されている。
【0061】
図3aおよび3bは、可動針入口3および第2の実施形態のロック手段8を備えた埋込型アクセスデバイス1の断面図を示す。図3aおよび3bに示す第2の実施形態によるロック手段8は主に、針入口3を第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態に移行させるために針入口3の回動移動を必要としない点で第1の実施形態とは異なっている。しかしながら、第1の非作動動作状態においても、図3aの左側の埋込型アクセスデバイスの前部に示されるように、針入口の一部がポート本体2の凹部に係合している。
【0062】
図3bは、ポート本体の中央の外側、特にポート本体2の側壁に近い、図3aの埋込型アクセスデバイス1の断面図である。
図3bから分かるように、第2の実施形態によるロック手段は、針入口3のカム14と、カム14を受け入れるためのポート本体2の対応する凹部15とをさらに備える。第2の作動動作状態では、針入口3のカム14がポート本体2の凹部15内に受け入れられ、針入口3が第2の作動動作状態でロックされる。
【0063】
第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態への移動は、ポート本体2と針入口3との間のバネによって支援することが可能である。好ましくは、バネは、埋込型アクセスデバイス1の弁機構12に接続されているか、または弁機構12と一体的に形成されている。
【0064】
図3aおよび3bに示される実施形態は、全体的な設計がより平坦で流線型であるという点で、図2に示される実施形態とはさらに異なる。特に、針が針入口3に挿入される挿入角度は小さい。好ましくは、針が針入口に挿入される針入口の挿入角度は、15°~40°、好ましくは25°~30°である。
【0065】
図4aは、埋込型アクセスデバイス1の針入口3を示す。針入口の各側壁には、スナップフィット16が配置されている。図4bはこのスナップフィット16の詳細図である。スナップフィット16は、可撓性部分18およびフック部分19を有する。フック部19は、針入口3の側壁から突出している。
【0066】
図4cは、図4aの針入口3を受け入れるポート本体2を示す。ポート本体2は、各側壁に突起17を備えている。スナップフィット16、特にスナップフィット16のフック19は、第2の作動動作状態で突起17と係合する。
【0067】
図4dは、図4aの針入口3と、図4cのポート本体2とを備える埋込型アクセスデバイス1を示す。埋込型アクセスデバイス1の他の部分、例えば、ポート本体2と針入口3との間の弁12は、単純化のために省略されている。図4bは、第1の非作動動作状態における埋込型アクセスデバイスを示す。針入口3を第2の作動動作状態へ移動させるために、針入口をポート本体の出口11に向かって並進運動させる。それによって、ポート本体2と針入口3との間に位置する弁12が作動し、埋込型アクセスデバイス1を通る通路が開く。針入口3を出口19に向かって移動させ、フック19をポート本体2の突起17に係合させる。これは、スナップフィット16の可撓性部分18により可能である。
【0068】
図4cまたは図4dから分かるように、突起は、ポート本体2の全体の高さにわたるのではなく、ポート本体2の基部の上方で終わっている。針入口3を回動させることによって、スナップフィット16のフック19とポート本体2の突起17との係合を解除することが可能になり、ニードル入口3を第2の作動動作状態から第1の非作動動作状態に戻すことができる。この移動は、ポート本体2と針入口3との間のバネによって支援することが可能である。好ましくは、バネは、埋込型アクセスデバイス1の弁機構12に接続されているか、または弁機構12と一体的に形成されている。
【0069】
図5aは、ポート本体2および可動針入口3を有する埋込型アクセスデバイス1のロック手段3の第4の実施形態の部分断面図を示す。図4の第3の実施形態との主な違いは、スナップフィット16が針入口3の上側および下側に配置され、ポート本体2の突起がポート本体2の上壁の凹部15に置き換えられていることである。
【0070】
図5bは、第2の作動動作状態における、図5aのスナップフィット16の詳細図を示す。この第2の作動動作状態では、スナップフィット16のフック19は、ポート本体2の凹部15と係合する。針入口3を回動させることにより、フック19を凹部15から後退させることができ、針入口を第1の非作動動作状態に移行させることができる。
【0071】
ポート本体2の下壁は、第1の非作動動作状態において、下部スナップフィット16のためのさらなる凹部15を備えることができるが、これは必須ではない。下部スナップフィット16は、第2の作動動作状態において、上部スナップフィット16のフックを凹部15に押し込むことを主な機能としている。
【0072】
図6aは、埋込型アクセスデバイス1のロック手段の第5の実施形態のための針入口3を示す。針入口3は、各側壁にカム14を備えている。カム14は三角形であり、例えば図6bに示されるように、針入口2とポート本体2との間の滑らかな相対移動のために角が丸い。
【0073】
図6bに示されるポート本体2は、各側壁に、針入口3のカム14を案内するための凹部15を備える。第1の非作動動作状態では、三角形のカム14の先端は、凹部15のピット20に配置されている。それによって、針入口3が第1の非作動動作状態においてロックされる。
【0074】
針入口3を第2の作動動作状態へ移動させるために、まず針入口3を、三角形のカム14の先端がピット20の外に出るまで並進移動させる。その後、針入口を回動させて第2の作動動作状態へ移動させる。この第2の作動動作状態では、針入口3はカム14と凹部15の側壁との間の摩擦力によってロックされる。
【0075】
これに代えて、凹部15は、さらなる並進移動によってカムを第2の作動動作状態にロックするためのさらなるピット20を含むことができ、その結果、三角カム14の先端が第2のピット20内に配置される。この実施形態では、凹部15はハート形に形成されている。
【0076】
前述のロック手段8は単なる例示であり、当業者は、説明された異なるロック手段8の特徴を互いに組み合わせることができるか、または本発明の範囲内で他のロック手段を埋込型アクセスデバイスに組み込むことができる。一般に、すべての双安定型ロック手段8は、ボールペン機構またはSDスロット機構を含む、埋込型アクセスデバイス1と共に使用することができる。好ましくは、プッシュプッシュロック手段8が使用され、作動のための並進および/または回動運動を伴う。
【0077】
図7は、レセプタクル4を有する針入口3とポート本体2との間の移動の領域または容積における、図1aの埋込型アクセスデバイス1の詳細図を示す。符号5で示すように、組織が、レセプタクル4を有する針入口3とポート本体2との間の移動が行われる領域または容積内へ成長し始めている。この組織5は、図1bに示されるように、ポート本体2に対してレセプタクル4を備えた針入口3を第2の作動動作状態へと回動させることによって、挟まれ、そのために、最終的に患者に苦痛を与え、および/または、レセプタクル4を備えた針入口3とポート本体2との間の相対移動を阻止する。
【0078】
図8aは、第1の非作動動作状態における、可撓性ソケットを有す埋込型アクセスデバイスの断面図を示す。可撓性ソケット6は、レセプタクル4を有する針入口3とポート本体2との間に配置される。可撓性ソケット6は、針入口およびレセプタクル4がポート本体2に対して移動する領域または容積を少なくとも覆って、この領域または容積での、可撓性ソケット6の外側の図8aにおいて符号5で示すように、組織の成長を防止する。図8aの断面図から分かるように、可撓性ソケット6は中空である。
【0079】
好ましくは、可撓性ソケット6は、可撓性ソケット6をポート本体2に接続するための第1の開口部と、可撓性ソケット6を針入口3および/またはレセプタクル4に接続するための第2の開口部とを有する。
【0080】
可撓性ソケット6をポート本体2に対してしっかりと固定するために、可撓性ソケット6の第1の開口部は、ポート本体2の対応する部分よりも小さく、例えば10%~20%小さい。
【0081】
可撓性ソケット6の第2の開口部は、図10aおよび10bに関して後述するように、例えば、針入口3とレセプタクル4との間でクランプされる。
好ましくは、可撓性ソケット6はシリコーンでできている。
【0082】
図8bは、第2の作動動作状態における図8aの埋込型アクセスデバイスを示す。示された第2の作動動作状態では、レセプタクル4を有する針入口3がポート本体2に対して回動し、それによって可撓性ソケット6を変形させる。変形した可撓性ソケット6は、特にレセプタクル4を有する針入口3とポート本体2との間の相対移動の領域または容積において、周囲の組織を埋込型アクセスデバイス1から押しのける。
【0083】
図9は、可撓性ソケットとポート本体との間のバーブ接続の詳細図を示す。可撓性ソケット6、特に可撓性ソケット6の第1の開口部およびポート本体2の接続部分は、対応する表面を有しており、よって、接触面積が大きくなり、固着性を高める。特に好ましくは、対応する表面は、図9に示すバーブ接続のような突起およびくぼみを含む。示されているバーブ接続7は、組み立て方向のポート本体2への可撓性ソケット6の移動のみが可能であり、反対方向への移動がバーブ接続7によって防止されるという追加の利点を有する。
【0084】
図10aは、針入口3およびレセプタクル4の詳細図を示す。針入口3およびレセプタクル4は、針入口3をレセプタクル4の内部に導入して固定できるように設計されている。レセプタクル4は、埋込型アクセスデバイス1のポート本体2に移動可能に接続されて、第1の非作動動作状態から第2の作動動作状態への、レセプタクル4を有するニードル入口3とポート本体2との間の相対移動を規定する。
【0085】
図10bは、図10aのレセプタクル4へ導入された針入口の詳細図を示す。針入口3とレセプタクル4との間で、可撓性ソケット6が少なくとも部分的に、好ましくは可撓性ソケット6の第2の開口部がクランプされて、可撓性ソケット6を針入口3とレセプタクル4とに固定する。
【符号の説明】
【0086】
1…埋込型アクセスデバイス、2…ポート本体、3…針入口、4…レセプタクル、5…組織、6…可撓性ソケット、7…バーブ接続、8…ロック手段、9…入口開口部、10…通路、11…出口開口部、12…弁、13…漏斗、14…カム、15…凹部、16…スナップフィット、17…突起、18…可撓性部分、19…フック、20…ピット。
図1a
図1b
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図6a
図6b
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b