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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ガス分離デバイス
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20230711BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D71/02 500
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021524118
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-18
(86)【国際出願番号】 EP2019068893
(87)【国際公開番号】W WO2020012018
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】1811436.3
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521013770
【氏名又は名称】ハイドロゲン・メム-テック・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クヌート・ハラルド・グランルンド
(72)【発明者】
【氏名】フロデ・ロネス
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・アンドレアス・エッゲン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ライナーセン
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-248416(JP,A)
【文献】米国特許第02958391(US,A)
【文献】特表2005-503314(JP,A)
【文献】特開2002-128506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離デバイスにおいて、第1のガスを1つまたは複数の他のガスから分離するためのガス分離セクションであって、
略平坦である第1の膜と、
略平坦である第2の膜と、
第1の表面および第2の表面を有する第1の基板であって、前記第1の基板の前記第2の表面は、前記第1の基板の前記第1の表面とは前記第1の基板の反対側にある、第1の基板と、
第1の表面および第2の表面を有する第2の基板であって、前記第2の基板の前記第2の表面は、前記第2の基板の前記第1の表面とは前記第2の基板の反対側にある、第2の基板と、
前記第1の基板の前記第2の表面と前記第2の基板の前記第2の表面との間に配置されるメッシュと
を備え、
前記第1の基板および前記第2の基板は、鋼焼結板であり、
前記第1の膜は、前記第1の基板の前記第1の表面上にあり、
前記第2の膜は、前記第2の基板の前記第1の表面上にあり、
前記第1の膜および前記第2の膜は共に、少なくとも第1のガスによって透過可能であるが、1つまたは複数の他のガスによって透過可能ではなく、
前記第1の膜の平面に対して直交する方向の前記第1の膜の厚さは、10マイクロメートル未満であり、
前記第2の膜の平面に対して直交する方向の前記第2の膜の厚さは、10マイクロメートル未満である、ガス分離セクション。
【請求項2】
前記第1のガスは水素であり、前記1つまたは複数の他のガスは、一酸化炭素および/または二酸化炭素を含む、請求項1に記載のガス分離セクション。
【請求項3】
前記第1の膜および前記第2の膜はパラジウムを含み、
任意選択で、前記第1の膜および前記第2の膜は、パラジウム以外の1つまたは複数の他の金属をさらに含む、請求項1または2に記載のガス分離セクション。
【請求項4】
前記第1の膜および/または前記第2の膜は銀を含み、
好ましくは、前記膜は、15重量%と40重量%の間の銀であり、前記膜の残りはパラジウムであり、
より好ましくは、前記膜は、77重量%のパラジウムであり、かつ23重量%の銀である、請求項3に記載のガス分離セクション。
【請求項5】
前記第1の膜および/または前記第2の膜の前記厚さは、0.2マイクロメートルと4マイクロメートルの間であり、好ましくは、1マイクロメートルと3マイクロメートルの間である、請求項1から4のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項6】
前記第1の膜および前記第2の膜は、略正方形の形状をしている、請求項1から5のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項7】
前記メッシュは、鋼メッシュである、請求項1から6のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項8】
前記メッシュは、前記第1の基板の前記第2の表面の対向する縁部の間の複数の位置において、前記第1の基板の前記第2の表面に取り付けられ、
前記メッシュは、前記第2の基板の前記第2の表面の対向する縁部の間の複数の位置において、前記第2の基板の前記第2の表面に取り付けられる、請求項1から7のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項9】
前記メッシュは、前記メッシュの取付けが、前記第1の基板の前記第2の表面、および前記第2の基板の前記第2の表面を、互いに略平行に保持するように、前記第1の基板と前記第2の基板の両方に取り付けられる、請求項1から8のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項10】
前記第1の基板の前記第2の表面は、2mmから30mmの範囲の距離だけ前記第2の基板の前記第2の表面から離間される、請求項9に記載のガス分離セクション。
【請求項11】
前記第1の基板の厚さは3mm未満であり、かつ/または
前記第2の基板の厚さは3mm未満である、請求項1から10のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項12】
前記ガス分離セクションは、
前記第1の膜の縁部においてガス封止を提供するように配置された第1のガスケットと、
前記第2の膜の縁部においてガス封止を提供するように配置された第2のガスケットと
をさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項13】
前記メッシュは、前記第1のガスが、使用時に、通って流れるように配置されたチャネルに配置される、請求項1から12のいずれか一項に記載のガス分離セクション。
【請求項14】
前記ガス分離セクションは、前記第1のガスの流路を提供するように配置された少なくとも1つのフレームをさらに備え、
前記少なくとも1つのフレームは、使用時に、前記第1のガスが、前記チャネルから前記フレームにより提供される前記流路の中に流入するように、前記チャネルと流体連通するように配置される、請求項13に記載のガス分離セクション。
【請求項15】
前記フレームは、前記第1の膜および前記第2の膜を囲む略環状のセクションを備える、請求項14に記載のガス分離セクション。
【請求項16】
前記第1のガスケットは、略環状のセクション内に略正方形のセクションを備える単一の部品構造であり、かつ/または
前記第2のガスケットは、略環状のセクション内に略正方形のセクションを備える単一の部品構造である、請求項12に記載のガス分離セクション。
【請求項17】
第1のガスを1つまたは複数の他のガスから分離するための分離デバイスであって、
第1のガスおよび1つまたは複数の他のガスを含むガス混合物を受け入れるための入口と、
請求項1から16のいずれか一項に記載の複数のガス分離セクションであって、積み重ねて配置される、複数のガス分離セクションと、
前記1つまたは複数のガス分離セクションにおける前記膜のうちの1つまたは複数を通過した前記第1のガスを出力するように配置された第1の出口と、
前記1つまたは複数のガス分離セクションにおける前記膜のうちの1つまたは複数を通過しなかった少なくとも前記1つまたは複数の他のガスを出力するように配置された第2の出口と
を備える、分離デバイス。
【請求項18】
前記分離デバイスは、外側ハウジングをさらに備え、
前記複数のガス分離セクションは、前記外側ハウジング内に配置される、請求項17に記載の分離デバイス。
【請求項19】
前記外側ハウジングは、略円筒形である、請求項18に記載の分離デバイス。
【請求項20】
第1の入口は、使用時に、前記外側ハウジングの中への前記ガス混合物の流入方向が、前記ガス分離セクションにおける前記膜の前記平面に対して略直交するように、前記外側ハウジングの端部セクションに設けられる、請求項18または19に記載の分離デバイス。
【請求項21】
前記外側ハウジングは、前記ガス分離セクションを加熱するための蒸気を受け入れるように配置された入口をさらに備える、請求項18から20のいずれか一項に記載の分離デバイス。
【請求項22】
前記外側ハウジングは、前記第1のガスが膜を通過した後に、使用時に、前記第1のガスが通って流れるように配置された1つまたは複数のチャネルに供給されるパージガスのための入口をさらに備える、請求項18から20のいずれか一項に記載の分離デバイス。
【請求項23】
第1のガスを、前記第1のガスおよび1つまたは複数の他のガスを含むガス混合物から分離する方法であって、
前記ガス混合物を、請求項17から22のいずれか一項に記載の分離デバイスの中に供給するステップと、
前記第1のガスだけを略含む第1のガス流を前記分離デバイスから受け入れるステップと、
少なくとも前記第1のガス以外の1つまたは複数の他のガスを含む第2のガス流を前記分離デバイスから受け入れるステップと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜によるガスの分離に関する。実施形態は、水素を合成ガスから分離するのに特に適した分離デバイスを提供する。実施形態による分離デバイスの利点は、知られた分離デバイスよりも向上した性能、容易な実装、モジュール式設計、およびスケーラブルな設計を含む。
【背景技術】
【0002】
水素は、エネルギー源としてますます多く使用されている。水素の利点は、燃焼して水を生成するので、それはクリーンな燃料であることである。燃焼される燃料として水素が使用され得る用途は、船の動力となること、および家庭用のガス供給として使用されることを含む。水素はまた、従来の電池に対する環境的に優しい代替形態である燃料電池においても使用され得る。
【0003】
水素を作る効率的な形態は、合成ガスからのものである。合成ガスは、天然ガスを改質することにより作ることができる。合成ガスは、大部分が一酸化炭素と水素を含むガス混合物である。合成ガスはまた、一定量の二酸化炭素、およびメタンなどの他のガスを含むことができる。水性ガスシフト反応がまた、ガス混合物における水素の濃度を高めるために、合成ガスに対して実施され得る。実質的に純粋な水素を作るために、ガス混合物における水素を他のガスから分離することが必要である。
【0004】
他のガスから水素を分離する知られた技法は、パラジウム合金膜を使用することである。ガス混合物は、パイプ壁として膜を備えるパイプを通過する。水素は、膜を通って拡散し、それにより、膜を通過できない、ガス混合物における他のガスから分離される。
【0005】
知られた水素分離器においては、膜の厚さは、通常、100マイクロメートル程度である。水素が膜を通過できる速度は、膜の厚さに反比例し、膜の表面積に比例する。このような膜による水素の分離は、膜厚が大きいために遅い。加えて、パラジウムが高価であるため、実施するコストは高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第8,163,064号
【文献】米国特許第6,086,729号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、知られたガス清浄化および/または分離デバイスを改良することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、分離デバイスにおいて、第1のガスを1つまたは複数の他のガスから分離するためのガス分離セクションが提供され、ガス分離セクションは、実質的に平坦である第1の膜と、実質的に平坦である第2の膜と、第1の表面および第2の表面を有する第1の基板であって、第1の基板の第2の表面は、第1の基板の第1の表面とは第1の基板の反対側にある、第1の基板と、第1の表面および第2の表面を有する第2の基板であって、第2の基板の第2の表面は、第2の基板の第1の表面とは第2の基板の反対側にある、第2の基板と、第1の基板の第2の表面と第2の基板の第2の表面との間に配置されるメッシュとを備え、第1の膜は、第1の基板の第1の表面上にあり、第2の膜は、第2の基板の第1の表面上にあり、第1の膜および第2の膜は共に、少なくとも第1のガスによって透過可能であるが、1つまたは複数の他のガスによって透過可能ではなく、第1の膜の平面に対して直交する方向の第1の膜の厚さは、10マイクロメートル未満であり、第2の膜の平面に対して直交する方向の第2の膜の厚さは、10マイクロメートル未満である。
【0009】
好ましくは、第1のガスは水素であり、1つまたは複数の他のガスは、一酸化炭素および/または二酸化炭素を含む。
【0010】
好ましくは、第1の膜および第2の膜はパラジウムを含み、任意選択で、第1の膜および第2の膜は、パラジウム以外の1つまたは複数の他の金属をさらに含む。
【0011】
好ましくは、第1の膜および/または第2の膜は銀を含み、また好ましくは、膜は、15重量%と40重量%の間の銀であり、膜の残りはパラジウムであり、より好ましくは、膜は、77重量%のパラジウムであり、かつ23重量%の銀である。
【0012】
好ましくは、第1の膜および/または第2の膜の前記厚さは、0.2マイクロメートルと4マイクロメートルの間であり、好ましくは、1マイクロメートルと3マイクロメートルの間である。
【0013】
好ましくは、第1の膜および第2の膜は、実質的に正方形の形状をしている。
【0014】
好ましくは、メッシュは、鋼メッシュである。
【0015】
好ましくは、メッシュは、第1の基板の第2の表面の対向する縁部の間の複数の位置において、第1の基板の第2の表面に取り付けられ、またメッシュは、第2の基板の第2の表面の対向する縁部の間の複数の位置において、第2の基板の第2の表面に取り付けられる。
【0016】
好ましくは、メッシュは、第1の基板の第2の表面を、第2の基板の第2の表面に対して実質的に平行に維持するように配置される。
【0017】
好ましくは、メッシュは、第1の基板の第2の表面を第2の基板の第2の表面から、2mmから30mmの範囲の距離だけ離間させて維持するように配置される。
【0018】
好ましくは、第1の基板および/または第2の基板は、焼結板、金属、セラミックス、ポリマー、またはそれらの組合せのいずれかを含む。
【0019】
好ましくは、第1の基板および/または第2の基板の前記厚さは、3mm未満である。
【0020】
好ましくは、ガス分離デバイスは、第1の膜の縁部においてガス封止を提供するように配置された第1のガスケットと、第2の膜の縁部においてガス封止を提供するように配置された第2のガスケットとをさらに備える。
【0021】
好ましくは、メッシュは、第1のガスが、使用時に、通って流れるように配置されたチャネルに配置される。
【0022】
好ましくは、ガス分離デバイスは、第1のガスの流路を含むように配置されたフレームをさらに備え、フレームは、使用時に、第1のガスが、チャネルからフレームの中に流入するようにチャネルと流体連通するように配置される。
【0023】
好ましくは、フレームは、第1の膜および第2の膜を囲む実質的に環状のセクションを備える。
【0024】
好ましくは、第1のガスケットは、実質的に環状のセクション内に実質的に正方形のセクションを備える単一の部品構造であり、かつ/または第2のガスケットは、実質的に環状のセクション内に実質的に正方形のセクションを備える単一の部品構造である。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、第1のガスを1つまたは複数の他のガスから分離するための分離デバイスが提供され、分離デバイスは、第1のガスおよび1つまたは複数の他のガスを含むガス混合物を受け入れるための入口と、本発明の第1の態様による複数のガス分離セクションであって、積み重ねて配置される、複数のガス分離セクションと、1つまたは複数のガス分離セクションにおける膜のうちの1つまたは複数を通過した第1のガスを出力するように配置された第1の出口と、1つまたは複数のガス分離セクションにおける膜のうちの1つまたは複数を通過しなかった少なくとも1つまたは複数の他のガスを出力するように配置された第2の出口とを備える。
【0026】
好ましくは、複数のガス分離セクションは、垂直のスタックに配置される。
【0027】
好ましくは、分離デバイスは、外側ハウジングをさらに備え、複数のガス分離セクションは、外側ハウジング内に配置される。
【0028】
好ましくは、外側ハウジングは、実質的に円筒形である。
【0029】
好ましくは、使用時に、ハウジングの中へのガス混合物の流入方向が、ガス分離セクションにおける膜の平面に対して実質的に直交するように、第1の入口は、ハウジングの上側セクションまたは下側セクションに設けられる。
【0030】
好ましくは、ハウジングは、ガス分離セクションを加熱するための蒸気を受け入れるように配置された入口をさらに備える。
【0031】
好ましくは、ハウジングは、膜を通過した第1のガスが通って流れるように配置された1つまたは複数のチャネルに供給されるパージガスのための入口をさらに備える。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、第1のガスを、第1のガスおよび1つまたは複数の他のガスを含むガス混合物から分離する方法が提供され、方法は、本発明の第2の態様による分離デバイスの中にガス混合物を供給するステップと、実質的に第1のガスだけを含む第1のガス流を分離デバイスから受け入れるステップと、少なくとも第1のガス以外の1つまたは複数の他のガスを含む第2のガス流を分離デバイスから受け入れるステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】水素を他のガスから分離するための装置の知られた実装形態を示す図である。
図2】実施形態による分離デバイスの一部の構成要素の断面図である。
図3A】実施形態による単一のガス分離セクションの実装形態の一部を示す図である。
図3B】実施形態による単一のガス分離セクションの実装形態の一部を示す図である。
図3C】実施形態による、一方が他方の上に積み重ねられた状態の2つのガス分離セクションを示す図である。
図4A】実施形態によるガス分離デバイスの構成要素とベースを示す図である。
図4B】実施形態によるベース上に設けられたガス分離デバイスの構成要素を示す図である。
図5】実施形態による分離デバイスを通る断面を示す図である。
図6A】実施形態による分離デバイスを示す図である。
図6B】実施形態による分離デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施形態は、知られた技法よりも向上したガス分離デバイスを提供する。実施形態による分離デバイスの利点は、向上した性能、容易な実装、モジュール式設計、およびスケーラブルな設計を含む。
【0035】
図1は、水素を他のガスから分離するための装置の知られた実装形態を示す。図1で示された装置は、特許文献1の図6で開示されている。他の知られた水素分離技法に対して、図1で示された装置の重要な利点は、パラジウム膜の厚さが、10マイクロメートル未満に低減されたことである。膜の低減された厚さは、膜を通る水素の流れを増加すると共に、コストを低減する。
【0036】
実施形態は、図1で示された装置を向上させる水素分離デバイスを提供する。
【0037】
図6Aおよび図6Bは、実施形態による分離デバイス500を示す。
【0038】
図2は、実施形態による分離デバイス500の一部の構成要素の断面である。合成ガスからの水素分離の例示的な適用における分離デバイス500が述べられている。水性ガスシフト反応が合成ガスに対して実施されており、したがって、合成ガスへの参照は、水素と、一酸化炭素、二酸化炭素、蒸気、およびメタンなどの他のガスのうちの1つまたは複数とを含む任意のガス混合物であると理解されたい。図2で大きな矢印内の文字で示されるように、実施形態は、実質的に、二酸化炭素および水素だけの混合物である入力ガス混合物を含む。第1の出力は、実質的に二酸化炭素だけのストリームであり得る。第1の出力から分離される第2の出力は、実質的に水素だけのストリームであり得る。
【0039】
分離デバイス500は、複数の第1のチャネル202、および複数の第2のチャネル204を備える。第1のチャネル202のそれぞれは、第1のチャネル202の壁である平坦な膜201の間に形成される。各平坦な膜201は、膜201を支持する基板203上に形成される。各基板203は、膜201とは基板203の反対側の鋼メッシュ上に形成される。メッシュは、複数の第2のチャネル204のそれぞれの内部に設けられる。水素は、膜201を通過し、基板203を通過することができ、またメッシュ構造は水素に対するガス流路を備えるので、各第2のチャネル204に沿って流れることができる。
【0040】
第1のチャネル202のそれぞれに入力されるガスは合成ガスである。第1のチャネル202のそれぞれから出力されるガスは、本明細書で残留ガスと呼ばれる。残留ガスは、入力合成ガス中の水素のいくらか、またはすべてが膜201を通過した後の、第1のチャネル202の中への入力合成ガスの残留内容物である。第2のチャネル204からの出力ガスは、膜201を通過した水素を含む。
【0041】
各第1のチャネル202は、チャネルの一方の端部に合成ガス用の入口205と、第1のチャネル202の他方の端部に、残留物用の出口206とを有する。
【0042】
各第2のチャネル204の少なくとも1つの端部は、水素用の出口207である。実施形態はまた、水素用の出口である、第2のチャネル204の複数の端部を含む。
【0043】
使用時に、合成ガスは、第1のチャネル202のうちの1つまたは複数の入口に提供され、第1のチャネル202の各出口の方向に、これらの第1のチャネル202のそれぞれを通過する。合成ガスが各第1のチャネル202を通過するとき、合成ガスにおける水素は、チャネルの平坦な膜201の壁を通過する。各第1のチャネル202の出口を通過する残留ガスは、水素が膜201を通過するため、第1のチャネル202の入口における合成ガスよりも低い水素濃度を有する。各第1のチャネル202の出口を通過するガスに、実質的に水素が存在しないことが好ましい。膜201を通過する水素は、基板203を通過して、第2のチャネル204の1つの中に入り、第2のチャネル204の出口207から外に出る。
【0044】
図3Aおよび図3Bは、実施形態による分離デバイス500の単一のガス分離セクション300の実装形態の一部を示す。図3Cは、一方を他方の上に積み重ねた状態の2つのガス分離セクション300を示す。図4Aは、実施形態に従って、ガス分離セクション300の構成要素を、ガス分離セクション300が上に設けられたベース402と共に示す。図4Bは、ベース402上に形成され、かつ設けられたときの図4Aにおけるガス分離セクション300を示す。分離デバイス500が、膜201のそれぞれが水平になるように方向付けられたとき、ベース402は、ガス分離デバイス500の上側セクション、または下側セクションになり得る。
【0045】
実施形態による分離デバイス500は、少なくとも図3Cおよび図5で示されるように、複数のガス分離セクション300を備えることが好ましい。
【0046】
図3A図3B図4A、および図4Bで示されるように、ガス分離セクション300は、図2を参照して前に述べたような構造の部分を提供する。各ガス分離セクション300は、2つの平坦な膜201を備え、各平坦な膜201は、基板203の側面に設けられる。各基板203の他方の側面は、鋼メッシュに接続される。メッシュは、水素を収集するために、膜201の間に第2のチャネル204を画定する。
【0047】
少なくとも図3C図4B、および図5で示されるように、各ガス分離セクション300は、実質的に環状の部分、ならびに実質的に正方形の部分を備える実質的に平坦な構造である。膜201は、各ガス分離セクション300の実質的に正方形の部分に設けられる。各ガス分離セクション300は、実質的に正方形の部分と実質的に環状の部分との間に1つまたは複数の接続セクションを有する。例えば、接続セクションは、少なくとも図3Cおよび図4Bで示されるように、正方形の部分の4つのコーナのそれぞれに設けることができる。
【0048】
少なくとも図3C図4B、および図5で示されるように、各ガス分離セクション300の実質的に正方形の部分の各外側縁部と、各ガス分離セクション300の実質的に環状の部分の内側縁部との間に、扇形の孔が存在する。各ガス分離セクション300は、4つの分離した扇形の孔を備え、扇形の孔のそれぞれは、実質的に、円のセグメントの形状を有する。
【0049】
各ガス分離セクション300は、水素フレーム301を備える。水素フレーム301は、メッシュに対する構造的支持を提供する。メッシュは、基板203を支持し、また基板203は、膜201を支持する。
【0050】
各水素フレーム301は、実質的に環状の部分、ならびに実質的に正方形の部分を備える実質的に平坦な構造である。各水素フレーム301の実質的に正方形の部分の各外側縁部と、水素フレーム301の実質的に環状の部分の内側縁部との間に、扇形の孔があり、水素フレーム301は、4つのこのような扇形の孔を備える。各水素フレーム301が、水素フレーム301の実質的に正方形の部分内に形成された第2のチャネル204の外への水素の流路を提供するように、各水素フレーム301の実質的に正方形の部分の対向する側壁を通る円形の孔が存在する。水素フレーム301の実質的に正方形の部分の側壁の円形の孔を通る水素の流路の方向は、水素フレーム301の平面に平行である。使用時に、第2のチャネル204内の水素は、したがって、第2のチャネル204から流れ出て、水素フレーム301の扇形の孔のうちの少なくとも1つの中に流入することができる。
【0051】
少なくとも図4Aで示されるように、各ガス分離セクション300はまた、合成ガスフレーム404を備える。各合成ガスフレーム404は、実質的に環状の部分、ならびに実質的に正方形の部分を備える実質的に平坦な構造である。各合成ガスフレーム404の実質的に正方形の部分の各外側縁部と、合成ガスフレーム404の実質的に環状の部分の内側縁部との間に、扇形の孔があり、合成ガスフレーム404は、4つのこのような扇形の孔を備える。各合成ガスフレーム404は、第1のチャネル202の中への合成ガスの流路を、また第1のチャネル202の外へ出る残留ガスの、すなわち、膜201を通って流れた水素を含まない合成ガスの流路を提供するように、各合成ガスフレーム404の実質的に正方形の部分の対向する側壁を通る円形の孔が存在する。合成ガスフレーム404の実質的に正方形の部分の側壁の円形の孔を通る合成ガスおよび残留ガスの流路の方向は、合成ガスフレーム404の平面に平行である。第1のチャネル202は、少なくとも図3Cで示されるように、積み重ねられた配置にある2つの隣接するガス分離セクション300の間に形成される。3つ以上のガス分離セクション300が積み重ねられた配置にあるとき、図2で示され、かつそれを参照して述べられたように、2つ以上の第1のチャネル202が形成される。各第1のチャネル202は、2つの合成ガスフレーム404の実質的に正方形の部分の間に形成される。使用時に、各第1のチャネル202内の残留ガスは、したがって、第1のチャネル202から流れ出て、合成ガスフレーム404の扇形の孔の少なくとも1つの中に流入することができる。
【0052】
合成ガスフレーム404および水素フレーム301は、互いに同様の形状を有する。各合成ガスフレーム404の各扇形の孔は、水素フレーム301の扇形の孔と実質的に同じ形状を有し、かつそれと位置合わせされる。各ガス分離セクション300の各扇形の孔は、したがって、少なくとも1つの水素フレーム301の扇形の孔と、少なくとも1つの合成ガスフレーム404の扇形の孔とを備える。水素フレーム301と合成ガスフレーム404は共に、ガス流路を提供するために、それらの実質的に正方形の部分の側壁の対向する対において、円形の孔を備える。ガス分離セクション300内における水素フレーム301および合成ガスフレーム404は、円形の孔を備える水素フレーム301の1対の対向する壁が、円形の孔を備える合成ガスフレーム404の1対の対向する壁と位置合わせされないように位置決めされる。水素フレーム301の円形の孔によって提供されるガス流路の方向は、したがって、合成ガスフレーム404の円形の孔によって提供されるガス流路の方向に対して直交する。複数のガス分離セクションが互いの上に積み重ねられたとき、ガス分離セクションの水素フレーム301と合成ガスフレーム404のすべては、水素フレーム301のすべての円形の孔により提供されるガス流路の方向が同じであり、かつ合成ガスフレーム404のすべての円形の孔により提供されるガス流路の方向が同じであるように、互いに位置合わせされる。
【0053】
各ガス分離セクション300における扇形の孔は、互いに直接、流体連通していない。扇形の孔の1つにおけるガスは、第1のチャネル202または第2のチャネル204を通って流れることにより、扇形の孔の異なるものの中に流入することができるだけである。
【0054】
図3A図3B図4A、および図4Bで示されるように、ガスケット303が提供される。ガスケット303はガス封止である。第1のチャネル202におけるガスが、逆も同様であるが、膜201の端部付近で第2のチャネル204の中に流入するのを阻止するように、各膜201の縁部のすべてを覆うガスケット303が提供される。第1のチャネル202と第2のチャネル204の間の唯一のガス流は、したがって、膜201を通過したガスであり、膜201の縁部付近を通るものではない。各ガスケット303は、膜201の縁部のすべての周りでガス封止を提供する単一構造であることが好ましい。各ガスケット303は、水素フレーム301の上側、または下側セクションと一体であることが好ましい。
【0055】
隣接するガス分離セクション300の間で、何らかの望ましくないガス流路を阻止するために、例えば、ポリマー/ゴム封止など、ガス気密封止を設けることができる。
【0056】
少なくとも図4Aで示されるように、各ガス分離セクション300は、ガス分離セクション300の様々な構成要素を互いの上に位置決めすることによって形成され得る。ガス分離セクション300は、フランジを備えるベース402上に形成することができる。各水素フレーム301および合成ガスフレーム404と実質的に同じ形状を有することのできる第1のガスケット303を、ベース402上に直接位置決めすることができる。合成ガスフレーム404を、第1のガスケットの上に位置決めすることができる。水素フレーム301を、合成ガスフレーム404の上に位置決めすることができる。水素フレーム301は鋼メッシュを支持する。メッシュは、2つの基板203を支持し、また各基板は、膜201を支持する。図4Aでは、上側の基板203および膜201が示されている。下側の基板203および膜201もまた存在するが、図4Aでは見ることができない。図4Aでは示されていないが、第1のガスケットと同様の形状を備えた別のガスケットを、合成ガスフレーム404と水素フレーム301との間に設けることができる。ガス分離セクション300のすべての構成要素のそれぞれの位置合わせを支援するために、1つまたは複数のガイドピン403を設けることができる。
【0057】
実施形態によるガス分離セクション300の第1の実装形態が、図3A図3B、および図3Cで示される。実施形態によるガス分離セクション300の第2の実装形態が、図4Aおよび図4Bで示されている。
【0058】
少なくとも図3Cで示されるように、第1の実装形態では、ガスケットは、少なくとも1つの、また好ましくは2つの直方体バー形状の部材により、水素フレーム301に取り付けられる。各直方体形状のバー部材は、実質的に、水素フレーム301の実質的に正方形形状の部分の縁部の全長に沿って延びる。少なくとも図4Aおよび図4Bで示されるように、第2の実装形態は、ガスケットが、少なくとも1つの短いガスケット保持具により水素フレーム301に取り付けられることにより、第1の実装形態とは異なっている。少なくとも図4Bで示されるように、4つのガスケット保持具が存在することが好ましい。各ガスケット保持具は、水素フレーム301にねじ止めすることができる。
【0059】
少なくとも図5で示されるように、複数のガス分離セクション300が積み重ねて配置される場合、各ガス分離セクション300の扇形の孔は、各ガス分離セクション300の扇形の孔におけるガスが、少なくとも1つの他の隣接するガス分離セクション300の対応する扇形の孔の中に直接流入できるように互いに位置合わせされる。ガス分離セクション300の位置合わせにより、ガスは、ガス分離セクション300の扇形の孔から、隣接するガス分離セクション300の複数の扇形の孔の中に直接流入することが阻止される。
【0060】
複数のガス分離セクション300の扇形の孔は位置合わせされて、ガス分離セクション300のスタックを介して、4つの入口/出口チャネル501、502、503、504を形成する。各入口/出口チャネル501、502、503、504は、分離デバイス500の少なくとも1つの入力または出力ポートと流体連通することができる。入口/出口チャネルは、したがって、入力される合成ガス、出力される水素、および出力される残留ガスのための流路を提供することができる。図5では示されていないが、図5におけるガス分離セクション300のそれぞれは、その水素フレーム301およびその合成ガスフレーム404における前述の円形の孔を有する。ガス分離セクションのすべては、各チャネル501、502、503、504が、実質的に同一のガス分離セクションの同じガス入口/出口に関して平行に配置されるように位置合わせされる。
【0061】
例えば、チャネル502は、合成ガスに対する入力ポートからの合成ガスの流路を提供する入口チャネルとすることができる。合成ガスは、各ガス分離セクション300の平面に対して直交する方向に、チャネル502の中に流入し、それに沿って流れ、ガス分離セクション300のいずれかの中に流入することができる。複数のガス分離セクション300の第1のチャネル202の中への合成ガスの入口のすべては、互いに平行である。
【0062】
チャネル503は、残留ガスに対する出力ポートへの残留ガスの流路を提供する出口チャネルとすることができる。残留ガスは、各第1のチャネル202から流れ出て、チャネル503の中に流入し、次いで、各ガス分離セクション300の平面に対して直交する方向に、チャネル503に沿って出力ポートへと流れる。複数のガス分離セクション300の第1のチャネル202からの残留ガスの出口のすべては、互いに平行である。
【0063】
チャネル501および504の一方、または両方は、水素に対する1つまたは複数の出力に水素の流路を提供する水素の出口チャネルとすることができる。水素は、各第2のチャネル204から流れ出て、チャネル501および504の少なくとも一方、または両方の中に流入し、次いで、各ガス分離セクション300の平面と直交する方向に、チャネル501および504の一方、または両方に沿って、水素に対する少なくとも1つの出力ポートへと流れることができる。複数のガス分離セクション300の第2のチャネル204からの水素の出口のすべては、互いに平行である。
【0064】
代替の実施形態では、チャネル501は、水素の出口チャネルを提供し、またチャネル504は、パージガスの入口チャネルを提供する。パージガスは、各第2のチャネル204の中に流入する。パージガスは、膜201を通過した水素が、第2のチャネル204から流れ出て、水素フレーム301の中に流入する速度を高める。これは、第2のチャネル204における水素の分圧を低下させて、したがって、水素が、膜201を介して、第1のチャネル202から第2のチャネル204の中に移動する速度を高める。
【0065】
図5図6A、および図6Bは、実施形態による分離デバイス500を示す。図5は、実施形態による分離デバイス500を通る断面である。
【0066】
図6Aおよび図6Bで示されるように、分離デバイス500は、環状の外側チャンバ、円形の上側セクション、および円形の下側セクションを備える。上側セクションおよび/または下側セクションは、ガス分離セクション300に対するベース402であり得る。図5で示されるように、分離デバイス500は、積み重ねた構成で複数のガス分離セクション300を備える。複数のガス分離セクション300は、膜201の各平面が水平になるように、垂直に積み重ねることができる。図6Bで示されるように、上側セクションおよび下側セクションは、上側セクションおよび下側セクションの両方のフランジを通るボルトによって共に留めることができる。
【0067】
分離デバイス500の上側または下側セクションであり得る分離デバイス500の一方、または両方の端部には、合成ガス用の少なくとも1つの入力ポート、および残留物用の少なくとも1つの出力ポートが設けられる。
【0068】
分離デバイス500の上側または下側セクションであり得る分離デバイス500の一方、または両方の端部には、水素ならびに/または水素およびパージガスの混合物に対する1つまたは複数の出力ポートが設けられる。分離デバイス500の上側および/または下側セクションに、パージガス用の、分離デバイス500における少なくとも1つの入力ポートがあり得る。
【0069】
分離デバイス500には、他のガス、特に蒸気に対する1つまたは複数の入力および/または出力ポートも存在し得る。蒸気に対する1つまたは複数の入力および/または出力ポートは、分離デバイス500の上側および/または下側セクションにあり得る。蒸気は、膜201を加熱するために、分離デバイス500の中に供給されることが好ましい。代替的に、または加えて、分離デバイス500は、電気的になど、他の方法で加熱することができる。
【0070】
分離デバイス500の外側ハウジングは、水素および合成ガスの分離を、加熱および加圧された環境において実施できるようにするので有利である。円筒形の外側ハウジングが存在することはまた、システムの安全性を高める。
【0071】
実施形態による膜201は、厚さが10マイクロメートル未満である。すなわち、膜201の平面に対して直交する距離において、膜201の平坦な表面は、互いに10マイクロメートル未満だけ離れている。
【0072】
膜201は、好ましくは1マイクロメートルと4マイクロメートルの間の厚さ、より好ましくは2マイクロメートルと3マイクロメートルの間の厚さである。
【0073】
実施形態による膜201は、特許文献1、および/または特許文献2で開示された膜と同じであり、かつ同様な方法で製作され得る。
【0074】
膜201の組成は、実質的にパラジウムだけとすることができる。代替的に、膜201は、パラジウムと、パラジウム以外の1つまたは複数の他の金属とを含むことができる。
【0075】
膜201の組成は、その重量の15%と40%の間が銀であり、残りの重量がパラジウムであるようにすることが好ましい。膜201の組成は、その重量の5分の1と3分の1の間が銀であり、残りの重量がパラジウムであるようにすることが好ましい。膜201の組成は、その重量の77%がパラジウムであり、その重量の23%が銀であるようにすることがより好ましい。
【0076】
膜201は、パラジウム、銀、および金属X、ならびに/または金属Yを含むことができ、ここで、金属Xは金属Yとは異なり、また金属Xおよび金属Yは共に、パラジウムおよび銀以外の他の金属である。
【0077】
膜201は、好ましくは正方形であり、正方形の各辺の長さは、約500mmである。
【0078】
実施形態による基板203は、水素がそれを通過できる特性を有する。基板203は、多孔質材料、もしくは固相拡散に起因して水素により透過可能な材料(例えば、IVBおよびVB族の、電子および酸素イオン導電および/またはプロトン導電セラミックスもしくは金属の混合された導体)、またはそれらの層化された組合せとすることができる。基板203は、金属、セラミックス、ポリマー、またはそれらの組合せから作ることができる。
【0079】
特に好ましい実施形態では、基板203は焼結板である。焼結板は、鋼から、好ましくはAISI316Lから製作することができる。焼結板は、特許文献1および/または特許文献2で開示された膜など、薄い膜201に対して特に好ましい基板である。
【0080】
膜201は、基板203上に直接設けられることが好ましい。すなわち、膜201と基板203との間にさらなる材料の層が設けられない。こうすることは、第1のチャネル202と第2のチャネル204との間における水素の移動距離、および移動抵抗を最小化する。
【0081】
基板203は、0.5mmと5mmの間の厚さ、好ましくは、1mmと3mmの間の厚さとすることができる。
【0082】
基板203の平坦な表面は、それが支持する平坦な膜201と少なくとも同じ寸法とすべきであり、膜201と実質的に同じ寸法であることが好ましい。基板203は、したがって、正方形の各辺の長さが500mmである正方形の平坦な表面を有することが好ましい。
【0083】
分離デバイス500におけるガス分離セクション300の数は変えることができ、2から500、好ましくは25から200の範囲とすることができる。
【0084】
分離デバイス500は、少なくとも50bargの圧力で動作するように設計されることが好ましい。
【0085】
分離デバイス500は、少なくとも450℃の温度で動作するように設計されることが好ましい。
【0086】
分離デバイス500は、300℃から400℃の範囲の典型的な動作温度を有することが好ましい。
【0087】
各ガス分離セクション300の外径は、710mmから1000mmの範囲とすることができる。
【0088】
ハウジングの外径は、750mmから1200mmの範囲とすることができる。
【0089】
ハウジングの高さは、350mmから5000mmの範囲とすることができる。
【0090】
ハウジングの上側および/または下側セクションの高さは、50mmから200mmの範囲とすることができる。
【0091】
メッシュは、基板203が互いに平行に取り付けられ、かつ1mmから100mmの範囲、好ましくは2mmから30mmの範囲の距離だけ離間されるように維持されるような形状とすることができる。
【0092】
分離デバイス500の中への合成ガスの流量は、10000Nm/hとすることができる。
【0093】
分離デバイス500の構成要素の上記で与えられた寸法は、近似的なものであり、実施形態はまた、これらの寸法に対しての変動も含む。例えば、構成要素の形状は、分離デバイス500の中に機器を収容するために変えることができる。分離デバイス500はまた、小規模と大規模の両方の用途に適するような寸法範囲で作ることができる。
【0094】
実施形態による分離デバイス500は、実施するのが容易であり、かつ大規模な合成ガスからの水素分離に適しているので有利である。
【0095】
水素が、実施形態による分離デバイス500によって合成ガスから分離され得る速度は、外側ハウジング内のガス分離セクション300の数を増加する、または低減することにより、容易に変えることができる。
【0096】
分離デバイス500はまた、容易に拡大縮小可能である。水素を合成ガスから分離できる速度は、多数のガス分離セクション300を備えることができるように、外側ハウジングの高さを増加することによって高めることができる。
【0097】
分離デバイス500はまた、モジュール式設計を有する。分離デバイス500内のガス分離セクション300のいずれにも容易にアクセスすることができ、故障が生じた場合、または検査/点検のために置き換えることができる。
【0098】
入力および出力ポートはまた、分離デバイス500を通り、第1および第2のチャネル204のそれぞれを通る主流路に対して直角に方向付けられることが好ましい。各第1のチャネル202の入力および出力は、したがって、互いに平行である。各第1のチャネル202の中に流入する合成ガスの量の変動は、したがってわずかである。有利には、第1のチャネル202のそれぞれの中への合成ガスの流量が適切であることを確実にするために、複雑な、電子制御されたマニホールドシステムは必要ではない。第1のチャネル202のそれぞれの中への合成ガスの流量はまた、ガス分離セクション300の数が変化したとき、適切なままであり得る。
【0099】
各第1のチャネル202に対する合成ガスの並列な入力は、第1のチャネルのすべてが互いに直列になるように流路を提供することよりも有利である。第1のチャネル202の入力が並列である場合、合成ガスにおける水素の濃度は、各第1のチャネル202に対して同じである。第1のチャネルが互いに直列であるとき、合成ガスにおける水素の濃度は、各第1のチャネルに対して異なる。
【0100】
実施形態によるガス分離セクション300の別の利点は、メッシュを使用することである。各ガス分離セクション300におけるメッシュは、基板203および膜201に対する主な構造的支持を提供する。したがって、メッシュは、各基板203が、膜201を支持し、かつメッシュに取り付けることができる十分な厚さを必要とするに過ぎないので、薄い基板203の使用を可能にする。基板203は、ガス分離セクション300を通る第2のチャネル204の構造的支持を提供するような十分な厚さを必ずしも必要としない。基板203の厚さを低減することは、膜201の間に必要な間隔を低減し、かつ製作コストも共に低減する。
【0101】
分離デバイス500の外側ハウジングは、加圧された動作のすべてに蒸気の使用を可能にし、安全性を高めるので有利である。
【0102】
図1で示された装置は、実施形態による分離デバイス500とはいくつかの基本的な設計差を有する。これらの差の結果は、図1で示された膜モジュールは、実施するのが容易ではなく、かつ大規模な合成ガスからの水素分離には適していないことである。
【0103】
図1では、基板を接続するメッシュがない。各基板は、したがって、膜モジュールを通るチャネルを構造的に支持するのに十分な強度を有する必要がある。その結果、基板は、厚くする必要があり、これは、膜モジュールの寸法およびコストを増加させる。
【0104】
加えて、膜の間の分離を維持するために、スペーサが膜の間に必要である。図1で示されるように、膜上にスペーサを設けることは、膜が損傷される可能性を高める。スペーサはまた、膜の間の合成ガスの流れを妨害する。
【0105】
図1で示された膜モジュールは、膜の縁部にガスケット303を備えていない。したがって、膜の端部においてガス漏れの危険が生ずることになる。
【0106】
図1で示される膜モジュールは、外側ハウジングを備えていない。したがって、膜を加圧し、加熱することはできない。
【0107】
図1で示される膜モジュールは、スケーラブルではない。合成ガスの入力および出力ポートは、膜と同じ平面内に、かつ構造の垂直な中間点に設けられる。膜の数を、2を超えて増加させたとき、合成ガスの流れは、膜の間で等しく配分されないことになる。
【0108】
加えて、図1では、合成ガスの入力流れは、膜構造に直接当たるものである。合成ガスの流量が増加した場合、増加した流れは、合成ガスが流れて当たる膜構造を損傷するおそれがある。
【0109】
図1で示された膜モジュールは、モジュール式の設計を有していない。膜の数を変えることはできず、また膜を容易に置き換えることができない。
【0110】
実施形態による分離デバイス500はまた、図1で示されたものからの知られた分離デバイスの他のタイプに対して、いくつかの利点を有する。特に、実施形態による膜201は薄い。膜201は、好ましくは、10マイクロメートル未満の厚さであり、より好ましくは、1マイクロメートルと5マイクロメートルの間の厚さである。図1で示されたものからの知られた分離デバイスの他のタイプは、より厚い膜を有する。したがって、各膜を通る水素の流量は少なく、コストは増加する。
【0111】
前述の実施形態による分離デバイス500はまた、平坦な膜に代えて管状の膜を備える分離デバイスに対して、いくつかの利点を有する。合成ガス内の水素の移動距離は、隣接する膜の間の平均的な間隔に依存する。平坦な膜を用いると、隣接する膜は互いに平行であり、したがって、隣接する膜の間の平均間隔は、隣接する膜の間の最小の距離である。管状の膜が使用される場合、膜は、互いに平行ではなく、隣接する膜の間の平均的な間隔は、隣接する膜の間の最小距離よりも大きい。したがって、平坦な膜が使用されるとき、水素の移動距離は少なくなる。
【0112】
実施形態では、水素は、各ガス分離セクション300の実質的に正方形の部分の縁部と、各ガス分離セクション300の実質的に環状の部分との間で、少なくとも一方の出口チャネル501および504において収集される。出口チャネルは、出力ポートへの水素の流路を提供する。有利には、水素に対する流路を提供することは、膜が、一定の形状を有することを可能にし、例えば、膜は立体的な正方形(solid square)とすることができる。こうすることは、膜の平面に孔を作ることが必要な水素流路を提供することよりも有利である。特に、これは、各環状の膜の中央を通る収集された水素のための流路を備える環状膜を用いることよりも有利である。このような実装形態は、利用可能な膜寸法を低減することになる。システム内においてかなりの圧力差も生ずるはずである。
【0113】
実施形態は、上記で述べたような技法に対するいくつかの修正および変形を含む。
【0114】
実施形態が、合成ガスの他の成分から分離される水素ガスを参照して述べられてきた。実施形態はまた、他の適用分野も含む。例えば、水素は、アルキンへのアルケンの反応中の水素除去、および水素の精製など、他のガス混合物から分離することができる。
【0115】
実施形態は、パラジウム膜以外の他の膜の使用を含む。他の膜を使用することは、水素以外の他のガスを、ガス混合物から分離できるようにする。実施形態による分離デバイス500は、したがって、ガス混合物から膜を通って流れることのできる1つまたは複数のガスのいずれかを分離するために使用することができる。
【0116】
実施形態は、ガス分離デバイス500として述べられてきた。実施形態はまた、ガス清浄化デバイスであると考えることもできる。すなわち、実施形態による分離デバイス500は、水素、または膜201を通って流れることのできる任意の他のガスの純度を高めるために使用することができる。
【0117】
図4Bで示されるように、メッシュは、複数のチャネルを備えるプレートとすることができ、前記複数のチャネルのそれぞれは、第2のチャネル204である。メッシュは、鋼メッシュとして述べられてきた。実施形態は、必要な構造的支持を提供する特性を有する任意の他の材料から作られたメッシュを含む。メッシュは、メッシュに取り付けられた基板203を支持する任意の構造を有することができる。
【0118】
膜201は、正方形形状の平面を有するとして述べられてきた。しかし、実施形態は、円形の平面、または長方形の平面など、他の形状の平面を有する平面を含む。
【0119】
水素フレーム301および合成ガスフレーム404は、導管を備えることができる。水素、合成ガス、および/または残留ガスの流路は、入口/出口チャネル501、502、503、および504に加えて、またはそれに代えて、これらの導管を通ることができる。
【0120】
実施形態が、平坦な膜を有するガス分離セクション300を備える分離デバイス500を用いて述べられてきた。これは実施形態のうちの好ましい実装形態であるが、実施形態はまた、分離デバイス500に管状の膜を使用することも含む。膜、基板、およびメッシュは、管状/円筒形の構造を有するようになるが、その他の点では、実質的に、実施形態による平坦な膜に対して述べられた通りであり得る。
【0121】
本明細書において、流れ図およびその説明は、本明細書で述べられた方法ステップを実施する固定された順序を規定するものと理解されるべきではない。そうではなくて、方法ステップは、実行可能な任意の順序で実施することができる。本発明は、特定の例示的な実施形態に関して述べられてきたが、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に対して、当業者には明らかな様々な変更、置換え、および改変を加え得ることを理解されたい。
【符号の説明】
【0122】
201 膜
202 第1のチャネル
203 基板
204 第2のチャネル
205 入口
206 出口
207 出口
300 ガス分離セクション
301 水素フレーム
303 ガスケット
402 ベース
403 ガイドピン
404 合成ガスフレーム
500 分離デバイス
501 入口/出口チャネル
502 入口/出口チャネル
503 入口/出口チャネル
504 入口/出口チャネル
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B