(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】触媒組成物およびその用途
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20230711BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20230711BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20230711BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230711BHJP
C01B 3/26 20060101ALI20230711BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20230711BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20230711BHJP
【FI】
B01J23/80 M
B01J35/10 301G
B01J37/08
B01J37/02 101A
C01B3/26
C01B32/05
C01B32/16
(21)【出願番号】P 2021527857
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 IN2020050642
(87)【国際公開番号】W WO2021033197
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】201921033744
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】521214322
【氏名又は名称】ヒンドスタン ペテローリアム コーポレーション リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HINDUSTAN PETROLEUM CORPORATION LIMITED
【住所又は居所原語表記】Hindustan Petroleum Corporation Limited, Petroleum House 17, Jamshedji Tata Road, Church Gate, Maharashtra Mumbai 400020 India
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】メーサラ ラバニャ
(72)【発明者】
【氏名】クメール プラモッド
(72)【発明者】
【氏名】ボージャ ラーマチャンドラ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ガンダム スリ ガネーシャ
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522083(JP,A)
【文献】国際公開第2010/084721(WO,A1)
【文献】特開2017-222547(JP,A)
【文献】特開2006-281168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
C01B 32/00 - 32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および
(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む少なくとも1つの三金属触媒であって、前記少なくとも1つのスチームバイ
オチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、三金属触媒、
を含む、
水素ガスおよびカーボンナノチューブを製造するための触媒組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31重量%の範囲であり、銅担持量が2.0~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.0~2.7重量%の範囲である、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1つの三金属触媒が、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーの上に、その中に、あるいは、その上またはその中に組み合わせて、配置される、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、700~950m
2/gの範囲の表面積を有し、0.60~0.70cc/gの範囲の細孔容積を有する、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、生バイオチャーおがくず、生バイオチャー稲わら、生バイオチャー籾殻、生バイオチャーバガス、その他の農業廃棄物、およびそれらの組み合せから得られる、請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項6】
(a)生バイオチャーをスチームで加熱して、少なくとも1つのスチームバイオチャーを得ること;
(b)少なくとも1つの三金属触媒を得ること;および
(c)前記少なくとも1つの三金属触媒を、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに含浸(impregnate)させ、続いて焼成(calcination)して、前記組成物を得ること、
を含む、請求項1に記載の触媒組成物の製造方法。
【請求項7】
スチームでの生バイオチャーの加熱は、700~900℃の範囲の温度で、5~6時間の範囲の期間行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(a)請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を得ること;
(b)少なくとも1つのガス状炭化水素と、前記請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物とを接触させて、混合物と水素ガスとを得ること;および
(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得ること、
を含む、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガス状炭化水素と前記請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物との接触が、15分~600分の範囲の期間、600℃~800℃の範囲の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのガス状炭化水素が、300~800 l/l/hの範囲のGHSVを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を処理してカーボンナノチューブを得ることが、酸性処理、洗浄、乾燥、およびそれらの組み合わせから選択されるプロセスを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記カーボンナノチューブが、ID/IG比が0.65~1.0である多層ナノチューブである、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が、流動床反応器、移動床反応器、または回転床反応器から選択される反応器内で実施される、請求項8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒組成物の分野に関する。特に、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造に役立つ触媒組成物に関する。より詳細には、本開示は、触媒組成物上での少なくとも1つ(1種)のガス状炭化水素の触媒分解から水素ガスおよびカーボンナノチューブを製造(調製)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界では、人口増加による深刻なエネルギー問題があり、エネルギー需要が増大しており、地球規模での持続可能な発展とは相容れない状況にある。現在のエネルギー戦略の下では、2130年より後に、化石燃料を犠牲にして環境に動機づけられた政策のための可能なシナリオを実行することはできない。
【0003】
よく知られているように、判明している天然ガス埋蔵量は、世界の判明している石油埋蔵量よりもはるかに上回っている。天然ガスは気体であることに加えて、流体や粘性のある液体よりも内部から抽出しやすい。現在、水素はメタンの水蒸気改質によって製造されているが、大量の二酸化炭素と関連している。実際、メタンの水蒸気改質を行うと、水素とは別にCO2も放出される。CO2のこのような著しい排出に加えて、一酸化炭素から水素を分離するための追加の精製ステップは、このプロセスを非常に高価な水素製造方法にする。
【0004】
水素製造のための最も有望な代替技術の1つは、メタンの熱分解(thermal decomposition)であり、メタンの熱クラック(thermal cracking)とも呼ばれる。この方法はメタンを固体炭素と水素に熱分解する。このワンステッププロセスの場合、それは技術的に簡単である。メタン分解の主な利点の1つは、温室効果ガスの排出の削減と実際的な除去である。しかしながら、メタンの熱分解は、通常では、メタンを固体炭素および水素に完全に変換するために、1300℃を超える温度を必要とする。代替アプローチであるメタンの熱触媒分解(Thermal catalytic decomposition)。半世紀にわたる研究にもかかわらず、文献には、メタンの熱触媒分解の利用に関連する多くの問題についても記載されている。これらの問題には、触媒再生中の温室効果ガス排出、結果として生じる炭素酸化物の水素汚染、触媒の寿命の短さ、および常に制御できるとは限らない多種多様な炭素生成物の生成が含まれる。
【0005】
したがって、当技術分野では、上記の問題を解決することができる、様々な供給源からの価値ある生成物(valuable product)および水素の製造方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本開示の一態様では、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つ(1種)のスチームバイオチャー(steamed biochar);および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、少なくとも1つ(1種)の三金属(tri-metallic)触媒であって、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量(負荷、充填量)(loading)が20~60重量%の範囲内であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲内であり、亜鉛担持量が0.5~5重量%の範囲内である、三金属触媒。
【0007】
本開示の別の態様では、以下を含む触媒組成物を調製するための方法が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む少なくとも1つの三金属触媒であって、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5重量%の範囲である、三金属触媒。前記方法は以下(のステップ)を含む:(a)生(未加工の)(raw)バイオチャーをスチーム(蒸気)で加熱して、少なくとも1つのスチームバイオチャーを得ること;(b)少なくとも1つの三金属触媒を得ること;(c)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに、前記少なくとも1つの三金属触媒を含浸(impregnate)させ、続いて、焼成(calcination)して、前記触媒組成物を得ること。
【0008】
本開示のさらに別の態様では、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供され、この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む、少なくとも1つの三金属触媒であって、少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、三金属触媒を含む触媒組成物を得ること;ならびに(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、前記触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得ること;ならびに(iii)前記混合物を処理(process)して、カーボンナノチューブを得ること。
【0009】
本主題のこれらおよび他の特徴、態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照するとよりよく理解されるであろう。この概要では、いくつかの概念を簡略化して紹介する。この概要は、クレームされた主題の範囲を限定するために使用することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
詳細な説明については、添付の図を参照して説明する。図中、参照番号の左端の桁は、参照番号が最初に表示される図を識別する。特徴や構成要素などを参照するために、同じ番号が図面全体で使用されている。
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施による、触媒3のTGA分析を示す。
【0012】
【
図2】
図2は、本開示の実施による、様々な触媒の水素収率対流れの時間(hydrogen yield versus time on stream)(TOS)を示す。
【0013】
【
図3】
図3は、本開示の実施による、使用済み触媒1のSEM画像を示す。
【0014】
【
図4】
図4は、本開示の実施による、使用済み触媒2のSEM画像を示す。
【0015】
【
図5】
図5は、本開示の実施による、使用済み触媒3のSEM画像を示す。
【0016】
【
図6】
図6は、本開示の実施による、使用済み触媒4のSEM画像を示す。
【0017】
詳細な説明
当業者であれば、本開示が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正の対象となることを理解されたい。本開示は、全てのそのような変形および修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において、参照または示される、全てのそのようなステップ、特徴、組成物および化合物を、個々にまたは集合的に、ならびにそのようなステップまたは特徴のいずれかまたは複数の任意および全ての組み合わせを含む。
【0018】
定義
便宜上、本開示のさらなる説明の前に、本明細書で使用される特定の用語、および例をここに収集する。これらの定義は、本開示の残りの部分に照らして読まれ、当業者によって理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜上および完全性のために、特定の用語およびそれらの意味を以下に示す。
【0019】
冠詞「a」、「an」、および「the」は、記事の文法目的語(grammatical object)の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を参照するために使用される。
【0020】
「含む(comprise)」および「含んでいる(comprising)」という用語は、包括的でオープンな意味で使用され、追加の要素が含まれ得ることを意味する。本明細書を通じて、文脈上別段の解釈を要する場合を除き、「含む(comprise)」という語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、記載された要素またはステップあるいは要素またはステップの群(group)の包含を意味するが、他の要素またはステップあるいは要素またはステップの群の除外を意味するものではないと理解される。
【0021】
「含む(including)」という用語は、「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」という意味で使用される。「含む(including)」と「含むがこれに限定されない(including but not limited to)」は同じ意味で使用される。
【0022】
「間(between)」という用語は、限界値(limit)を含むものとして理解されるべきである。
【0023】
「その他の農業廃棄物」という句は、小麦わら(wheat straw)、コーンストバー(corn stover)などの作物収集後に生成される任意の材料(material)を指し、当業者に知られている農業廃棄物を含む。
【0024】
「GHSV」という用語は、ガスの毎時空間速度を指す。これは、充填した(loaded)触媒(活性相のみ、すなわち触媒)の体積に対する、標準状態でのガス流量の比である。
【0025】
「生バイオチャー」という用語は、おがくず、稲わら、籾殻、バガス、その他の農業廃棄物などのバイオマスの1つの加速熱分解から得られる生成物を指す。
【0026】
別段に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本開示が属する当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の方法および材料は、本開示の実施または試験において使用することができるが、ここでは、好ましい方法および材料を記載する。本明細書に記載されるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
金属と有機剤とのモル当量比を範囲形式で本明細書中に提示することができる。このような範囲フォーマット(format)は、単に便宜と簡潔さのために使用され、範囲の限界として明示的に記載されている数値を含むだけでなく、各数値およびサブ範囲(sub-ranges)が明示的に記載されているかのように、その範囲内に包含される、全ての個々の数値またはサブ範囲をも含むように、柔軟に解釈されるべきであることが理解されるべきである。例えば、約40℃~約50℃の温度範囲は、明示的に記載された約40℃~約50℃の限界値だけでなく、例えば、45℃~48℃などのサブ範囲、ならびに、例えば、42.2℃、40.6℃、および49.3℃などの特定の範囲内の小数(fractional amounts)を含む個々の量も含むと解釈されるべきである。
【0028】
本開示は、例示のみを目的とする本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。機能的に等価な生成物(product)、組成物および方法は、本明細書に記載されるように、明らかに本開示の範囲内にある。
【0029】
我々の世紀のエネルギー部門における既存のドリフトの枠組みでは、二酸化炭素排出量を削減するための大規模な実用的な解決策は、現実の問題を提起する。したがって、水素製造技術は極めて重要である。さらに、水素の生成は、二酸化炭素の生成がないようなものでなければならない。触媒および反応条件の適切な選択は、合成における柔軟性を提供することができ、これは、特に、使用される触媒から生成されたカーボンナノチューブの容易な分離を可能にする方法で、固体炭素生成物と共に水素の純粋かつ効率的な生成を導くことができる。したがって、本開示は、以下を含む触媒組成物を提供する:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、これにより、上記の問題が緩和される。重要なことは、水素製造および固体炭素生成物(カーボンナノチューブ)に対する高い選択性を維持しつつ、触媒活性の損失の防止を可能にするのは、触媒組成および反応条件(温度と圧力の選択によって制御される)であるということに注意することである。
【0030】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲内であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲内であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲内である、少なくとも1つの三金属触媒。
【0031】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、かつ亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、金属構造(金属構造体)(the metal structure)が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0032】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、金属構造が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー内に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0033】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、金属構造が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上またはその中に組み合わせて配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0034】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31%の範囲であり、銅担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.3~2.7重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒。
【0035】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31重量%の範囲であり、銅担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、金属構造が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0036】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31重量%の範囲であり、銅担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、金属構造が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー内に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0037】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31重量%の範囲であり、銅担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、金属構造が、前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上またはその中に組み合わせて配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0038】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
本開示の別の実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャー内に配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
本開示のさらに別の実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)金属構造が前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上またはその内部に組み合わせて配置されている、少なくとも1つの三金属触媒。
【0039】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが700~950m2/gの範囲の表面積を有し、かつ0.60~0.70cc/gの範囲の細孔容積を有する、少なくとも1つの三金属触媒。
【0040】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、750~900m2/gの範囲の表面積を有し、かつ0.62~0.68cc/gの範囲の細孔容積を有する、少なくとも1つの三金属触媒。
【0041】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、800~900m2/gの範囲の表面積を有し、かつ0.62~0.65cc/gの範囲の細孔容積を有する、少なくとも1つの三金属触媒。
【0042】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、830m2/gの表面積を有し、かつ0.63cc/gの細孔容積を有する、少なくとも1つの三金属触媒。
【0043】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物が提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーが、生バイオチャーおがくず、生バイオチャー稲わら、生バイオチャー籾殻、生バイオチャーバガス、その他の農業廃棄物、およびこれらの組み合わせから得られる、少なくとも1つの三金属触媒。
【0044】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物を調製するためのプロセスが提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、かつ亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、ここで、前記プロセスは以下(のステップ)を含む:(i)生バイオチャーをスチームで加熱して、少なくとも1つのスチームバイオチャーを得る;(ii)少なくとも1つの三金属触媒を得る;および(iii)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに、前記少なくとも1つの三金属触媒を含浸させた後、焼成して、触媒組成物を得る。
【0045】
本開示の一実施形態において、以下を含む触媒組成物を調製するためのプロセスが提供される:(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、かつ亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、ここで、前記プロセスは以下(のステップ)を含む:(i)生バイオチャーをスチームで加熱して、少なくとも1つのスチームバイオチャーを得る;(ii)少なくとも1つの三金属触媒を得る;および(iii)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに、前記少なくとも1つの三金属触媒を含浸させた後、焼成して、触媒組成物を得る。ここで、スチームを用いた生バイオチャーの加熱は、700~900℃の範囲の温度で、5~6時間の範囲の期間、行われる。
【0046】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブを製造するためのプロセスが提供される。このプロセスは、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。
【0047】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブを製造するためのプロセスが提供される。このプロセスは、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が26~32重量%の範囲であり、銅担持量が2.3~2.7重量%の範囲であり、亜鉛担持量が2.3~2.7重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。
【0048】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供される。この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物との接触を、600℃~800℃の範囲の温度で行い、混合物および水素ガスを得る;ならびに(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。
【0049】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供される。この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が27~31重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物との接触を、600℃~800℃の範囲の温度で行い、混合物および水素ガスを得る;(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。
【0050】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供される。この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに、(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。ここで、前記少なくとも1つのガス状炭化水素は、300~800 l/l/hの範囲のGHSVを有する。
【0051】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供される。この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲内であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲内であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲内である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。ここで、このステップは、酸性処理、洗浄、乾燥、およびこれらの組み合わせから選択されるプロセスを含む。
【0052】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供される。この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲内であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲内であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲内である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに、(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る。ここで、前記カーボンナノチューブは、ID/IG比が0.65~1.0である多層ナノチューブである。
【0053】
本開示の一実施形態において、水素ガスおよびカーボンナノチューブの製造方法が提供され、この方法は、以下(のステップ)を含む:(i)(a)少なくとも1つのスチームバイオチャー;および(b)ニッケル、銅、亜鉛、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含み、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量が20~60重量%の範囲内であり、銅担持量が0.5~5.0重量%の範囲内であり、亜鉛担持量が0.5~5.0重量%の範囲内である、少なくとも1つの三金属触媒、を含む触媒組成物を得る;(ii)少なくとも1つのガス状炭化水素と、本開示の触媒組成物とを接触させて、混合物および水素ガスを得る;ならびに、(c)前記混合物を処理して、カーボンナノチューブを得る、ここで、前記プロセスは、流動床反応器、移動床反応器、または回転床反応器から選択される反応器内で行われる。
【0054】
例
以下の例は、本発明の例示として与えられ、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも例示的かつ説明的なものにすぎず、請求項に係る主題のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【0055】
例1:触媒組成物の製造方法
生バイオチャーは、バイオマス(おがくず、稲わら、籾殻、バガス、その他の農業廃棄物)の1つの熱分解からの副産物として得られた。熱分解は、低速、高速またはフラッシュ熱分解法から選択される任意の方法から行うことができる。おがくずは、流動床反応器中、500℃、N2雰囲気下で、連続供給により熱分解した。生成物から揮発性ガスを分離した後、生バイオチャーを回収した。生バイオチャーを、流動床で、800℃で5時間、スチームを用いてさらに改質した。
【0056】
本開示の触媒組成物の調製方法は、以下のステップを含む:(a)生バイオチャーをスチームで加熱して、少なくとも1つ(1種)のスチームバイオチャーを得る;(b)少なくとも1つ(1種)の三金属触媒を得る;ならびに、(c)前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに、前記金属構造体を含浸させ、続いて焼成して、触媒組成物を得る。
【0057】
生バイオチャーを800℃のスチームで5~6時間処理して、スチームバイオチャーを得た。スチームバイオチャー(SBC)は、非常に多孔性で、生バイオチャーと比較して、優れた表面積(表面積:830m2/gおよび細孔容積:0.63cc/gの範囲内)を有していた。初期(incipient)湿式含浸法により、スチームバイオチャーを調製した。この試験におけるすべての化学物質は分析グレードであり、さらに精製することなく使用された。硝酸ニッケル(II)六水和物(111.48g)、硝酸銅(II)三水和物(7.12g)、硝酸亜鉛四水和物(8.53g)を活性金属前駆体として使用し、化学薬品サプライヤーから調達して、75gの新しい(fresh)触媒を調製した。
【0058】
金属前駆体は、少なくとも1つのスチームバイオチャーに同時にまたは連続的に充填(load)することができ、その結果、少なくとも1つの三金属触媒が得られた。少なくとも1つの三金属触媒は、ニッケル、銅、および亜鉛の組み合わせであり、前記少なくとも1つのスチームバイオチャーに対して、ニッケル担持量は27~31重量%の範囲内であり、銅担持量は2.3~2.7重量%の範囲内であり、亜鉛担持量は2.3~2.7重量%の範囲内である。前記少なくとも1つの三金属触媒を、前記少なくとも1つのスチームバイオチャー上に配置した。あるいは、前記少なくとも1つの三金属触媒を、前記少なくとも1つのスチームバイオチャー内に配置した。金属充填後、粒子(particle)を不活性雰囲気下、550℃でか焼して、触媒組成物を得た。
【0059】
触媒組成物を特性化するために、種々の特性化試験を行った。波長分散型蛍光X線分析などの特定の分析法を元素分析のために実施し、得られた結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0060】
例2:水素ガスおよびCNTの製造方法:メタン分解(CNTおよび水素を生成するため)ならびに触媒再生の試験
この方法は、流動床反応器で実施された。炭素源として、メタンを10SPLHの流量(300~800 l/l/hの範囲内のGHSV)で供給した。17gの触媒組成物を反応器に装填した。反応器をN2でフラッシュした後、窒素下で550℃まで加熱した。さらに、H2環境下で還元を行い、触媒組成物を3時間還元した。還元後、反応器を反応温度750℃に加熱した。
【0061】
種々のタイプの触媒、すなわち、触媒1:スチームバイオチャー;触媒2:SBC上に担持されている(support)15%Ni;触媒3:SBC上に担持されている30%Ni、2.5%Cu、2.5%Zn;触媒4:SBC上に担持されている60%Ni、2.5%Cu、2.5%Znに対して行った試験結果を、以下の表1に示す。
【表2】
【0062】
表1から、水素発生の最大パーセンテージ体積が観察され、CO発生がなく、CO
2の発生の割合がごくわずかであることが観察されたものは、触媒3であったと推測できる。さらに、
図2は、それぞれ750℃の反応温度における、触媒1、触媒2、触媒3、触媒4に対する、水素収率対流れの時間(TOS)をそれぞれ示す。種々の触媒の水素収率曲線から、全ての触媒は時間と共に失活したが、30%Niと促進剤を添加した触媒3は、時間と共にオフガス中に70~90H
2体積%を与えたことがわかった。これらの触媒の中で、より優れた触媒性能を有する触媒3が、最良の触媒であった。例えば、触媒3は、初期水素収率40体積%および最終水素収率29体積%である触媒1と比較して、初期水素収率89体積%および最終水素収率79体積%を示した。
【0063】
全体として、スチームバイオチャーに担持されたすべての触媒の中で、触媒3が依然として最良の触媒であり、CO生成がなく、CO2生成が無視できる他の触媒と比較して、良好な触媒活性を示した。
【0064】
長時間(>5h)の分解後の最終生成物は、複合材料に直接使用できる10%未満の金属不純物を有するMWCNT(ID/IG比0.65~1.0)の生成物をもたらす。しかしながら、反応器の流れの時間(稼働時間)(time on stream)を延長することによって、10%未満の不純物のCNTを有する使用済み触媒を得ることができ、これはさらに、公知の手段によって精製することができる。この精製されたものは、その後、適した(niche)CNTアプリケーションで使用することができる。
【0065】
触媒3のTGA分析を行ったところ、流れの時間が長くなるにつれて、使用済み触媒中のCNT量が増加し、使用済み触媒中の金属不純物が減少することが観察された。長時間の運転が可能なため、最終使用済み触媒を酸分解により精製し、微量の金属を除去することができる(
図1)。
【0066】
例3
CNTの形成を、
図3、
図4、
図5、および
図6に示すSEM画像により分析した。例2のプロセスで触媒1を使用した場合、表面には、ごくわずか(very few)/無視できる(negligible)CNTが観察された(
図3)。例2のプロセスで触媒2を使用した場合、SEM画像から触媒上にカーボンナノフォームの核形成が認められたが、チューブ/シートの形成は認められなかった(
図4)。しかし、触媒3を用いた場合には、このプロセスにより、直径40nm~100nmの範囲の多層CNTが生成された(
図4)。
【0067】
触媒4、すなわち、より高いNi担持量(60%)では、初期転化率(conversion)は触媒3と同じであった。しかし、2時間後には、触媒の凝集のために、反応は進行できなかったが、触媒3は、いかなる操作上の問題もなく4時間反応を行うことができた。
【0068】
したがって、結果から、触媒3がカーボンナノチューブの形成を確実にしたことが明らかである。
【0069】
主題は、特定の例および実施形態を参照してかなり詳細に説明されてきたが、この説明は、限定的な意味で解釈されることを意図するものではない。開示された実施形態の様々な修正、ならびに、主題の代替の実施形態は、主題の説明を参照することにより、当業者に明らかになるであろう。したがって、そのような修正は、定義された本主題から逸脱することなく行うことができると考えられる。
【0070】
本開示の利点
本開示は、水素およびカーボンナノチューブの製造方法に使用される触媒組成物を提供する。水素の製造の他に、それはまた、高品質、特に要求の厳しい産業用途に適した純度のカーボンナノチューブを得ることを可能にする。
【0071】
上記の利点に加えて、本開示に係るCNT製造方法は、追加の精製段階を必要とすることなく、利用される触媒の生産性を著しく向上させることを可能にする。また、水素およびCNTの製造中に合成される副生成物の再生利用(リサイクル)が可能になり、製造コストが低減され、エネルギーバランスが良好となる。