(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】遠心分離機
(51)【国際特許分類】
B04B 1/08 20060101AFI20230711BHJP
B04B 7/14 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B04B1/08
B04B7/14
(21)【出願番号】P 2021572232
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(86)【国際出願番号】 JP2020002486
(87)【国際公開番号】W WO2021149239
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000176752
【氏名又は名称】三菱化工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【氏名又は名称】丸山 重輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213551
【氏名又は名称】丸山 智貴
(72)【発明者】
【氏名】永根 光治
(72)【発明者】
【氏名】加治 圭介
(72)【発明者】
【氏名】羽住 彩花
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特公昭51-014306(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221187(US,A1)
【文献】特開平01-297158(JP,A)
【文献】特開2012-096270(JP,A)
【文献】特開2002-336734(JP,A)
【文献】特表平11-506385(JP,A)
【文献】特表平06-509749(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02050505(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0136649(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0247866(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 1/08
B04B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転容器と、前記回転容器の内部に、積層方向に所定の間隔を空けて積層された複数の円錐台形状を有する分離板とを有し、被処理流体に含まれる比重が異なる成分を遠心力により分離する遠心分離機であって、
前記分離板の表面に、積層された他の分離板との間に、前記所定の間隔を保つ円錐面の母線に沿った短冊状の間隙片が複数設けられ、
前記複数の間隙片が、前記分離板の表面の周方向に、所定の間隔を開けて設けられ、
前記複数の分離板が積層された状態で、前記間隙片の間の領域で、且つ前記領域における前記分離板の表面及び前記他の分離板の裏面に、所定のパターンの凸部及び凹部が形成され、
前記間隙片は、前記所定のパターンの凸部及び凹部が形成されていない領域で、且つ前記分離板の表面の平面上に形成され、
前記所定のパターンは、分離板の円錐面の母線に沿った線分状に形成されていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
前記凸部及び凹部は、前記円錐台形状の底部側よりも頂部側の方が、密度が小さく形成されていることを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理流体中に含まれる固形成分を分離する分離板型の遠心分離装置およびそのような遠心分離装置に用いられる分離板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置は、回転軸の方向に、短冊状の間隙片により所定間隔の分離空隙を空けて多数積層された分離板が設けられ、上記分離空隙に流入した被処理流体が分離板の中心方向に向かって流れる際に、固形分等が遠心沈降によって分離板の外周方向に移動することにより分離されるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような分離板型の遠心分離装置で分離能力を向上させるためには、分離板の枚数を多くしたり、外径を大きくしたりすることが考えられるが、何れも装置の大型化を招くことになる。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、遠心分離装置の大型化などを招くことなく、分離能力を向上させられるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、
回転容器と、上記回転容器の内部に所定の間隔を空けて積層された複数の分離板とを有し、被処理流体に含まれる比重が異なる成分を遠心力により分離する遠心分離装置であって、
上記分離板の表面に、積層された他の分離板との間に上記所定の間隔を保つ間隙部が設けられるとともに、上記複数の分離板における、上記間隙部の間の領域で、かつ、積層方向に互いに重なる位置に、所定のパターンの凸部または凹部の少なくとも一方が形成されていることを特徴とする。
【0007】
これにより、分離板の表面積が大きくなることによって、処理能力を大きくすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、遠心分離装置の大型化などを招くことなく、分離能力を向上させられるようにすることを目的としている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】さらに他の分離板の構成を示す斜視図である。
【
図6】またさらに他の分離板の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態として、例えば船舶用ディーゼルエンジン機関の燃料油および潤滑油等の被処理流体である原液の清浄化や、各種の産業分野において、分級、分離操作などに用いられる分離板型遠心分離機である遠心分離装置について説明する。この分離板型遠心分離機は、回転体内に截頭円錐形状の薄板からなる分離板を案内筒の軸方向に沿って小間隙を有して多数積層して装着した竪型の遠心分離機であって、回転体内でスラッジ等を遠心力により分離するようになっている。上記スラッジは、被処理流体に含まれる比重の異なる固形物等であって、より詳しくは、遠心力で回転体内の最外径部側に分離・堆積される固形分である。
【0011】
(分離板型遠心分離機の概略構成)
分離板型遠心分離機は、
回転軸に取り付けられて高速回転する回転容器の内部に、
図1に示すように上部から供給される原液を回転容器内の最下部に向けて末広がりに導く案内筒105と、
上記原液におけるスラッジ等の各成分を比重差により分離するために、上記案内筒105の軸方向に小間隙を有して多数積層されて装着された分離板201とを有している。
【0012】
上記のような分離板型遠心分離機に導入された原液は、分離板201間の間隙を上昇して流れていくうちに比重の大きい固形分はスラッジ堆積領域へ、油(軽液)は回転容器の中心側へと分離され、分離水は回転容器の上部に設けられた重液インペラより排出される。
【0013】
(分離板201の詳細な構成と分離作用)
分離板201(ディスク)は、
図2に示すように、例えば厚さ0.5mmのステンレス鋼からなる笠状、すなわち上端部を開放底面に平行な平面で切除し、内周側に同平面内のリング状部201aが設けられた円錐台形状を有している。上記分離板201の外周面には、分離板型遠心分離機に組み付けられたときに各分離板201の間隔を例えば0.6mmに保つための間隙部として、分離板の円錐母線に沿った短冊状の間隙片202が設けられている。上記リング状部201aの内周側の一部には、切欠部201bが形成され、
図1に示す案内筒105に形成されたキー溝105aとの間にキー251が挿入されることによって、分離板201の回転方向位置の位置決め(同期、回り止め)がなされるようになっている。なお、間隙片202は、短冊状に限らず、円形状や小判形などでもよい。さらに、間隙片が設けられるのに限らず、後述する凹凸部203等とは異なる凹凸が上下の分離板201で重ならないように形成されたりして、各分離板201の間隔が所定に保たれるようにされてもよい。また、凹凸が上下の分離板201で重なる位置に形成される場合でも、凸部の曲率半径よりも凹部の曲率半径の方が小さいことなどによって各分離板201の間隔が所定に保たれるようにされてもよい。
【0014】
ここで、上記のような分離板201の間に被処理流体を遠心分離によって処理する場合の分離能力(処理量)は、一般に、沈降面積、すなわち分離板201の表面積に比例する。そこで、分離能力を大きくするためには、通常、分離板201の枚数を多くしたり、外径を大きくしたりされる。これに対して、本実施形態の分離板201では、例えば短冊状の間隙片202の間の領域に、円弧状の凹凸部203が形成されている。すなわち、例えば
図3に示すような波形の断面形状が現れる凹凸部203が形成されている。この場合、分離板201の外形寸法が同じでも、円錐面の表面積が大きくなるので、処理能力を大きくすることが容易にできる。それゆえ、例えば、粒子サイズが微少な場合などに高い処理能力を得ることも、容易にできる。
【0015】
(変形例)
分離板201の表面積を大きくするためには、
図2に示したような円弧状の凹凸部203に限らず、例えば
図4に示すような円錐形状の母線に沿った線分状の凹凸部203や、
図5に示すようならせん状などの曲線状の凹凸部203が形成されてもよい。また、
図6に示すような離散した島状の凹凸部204が形成されたりしてもよい。さらに、これらを含む種々の形状の凹凸部が組み合わされたりしてもよい。また、凹部と凸部とが形成されるのに限らず、凹部だけや、凸部だけが形成されたりしてもよい。ここで、分離板201における円錐台形状の底部側部分と頂部側部分とで凹凸部203等の密度を異ならせたりしてもよい。具体的には、例えば、頂部側部分には凹凸部203が設けられていない領域や粗である領域が設けられて、分離板201を円板材料から深絞りによって形成する際に頂部付近でしわなどが生じにくいようにしたりしてもよい。逆に、凹凸部203等を設けることによって、しわなどが吸収されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0016】
105 案内筒
105a キー溝
201 分離板
201a リング状部
201b 切欠部
202 間隙片
203 凹凸部
204 凹凸部
251 キー