IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クー.アント ゲー・エム・ベー・ハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】粒子を特徴付けるためのセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230711BHJP
   G01N 15/10 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01N15/10 A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021576952
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020060392
(87)【国際公開番号】W WO2020259889
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】102019209213.6
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521038809
【氏名又は名称】クー.アント ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Q.ant GmbH
【住所又は居所原語表記】Handwerkstrasse 29, 70565 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フェアチュ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヘンゲスバッハ
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-185796(JP,A)
【文献】国際公開第2014/024556(WO,A1)
【文献】特開2009-074835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 15/00-15/14
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子(P)を特徴付けるための、粒子の位置(P,P)、粒子の速度(v,v)、粒子の加速度(a,a)、及び/又は、粒子のサイズ(D)を特定するためのセンサ装置(1)であって、
前記センサ装置(1)は、送信機(2)と、集束光学系(8)と、受信機(4)とを含み、
前記送信機(2)は、
レーザビーム(3)を生成するためのレーザ源(5)と、
前記レーザビーム(3)の局所的な強度(I(X,Y))と局所的な偏光方向(R(X,Y))との異なる組合せを各位置(X,Y)において有する、前記レーザビーム(3)の界分布(11,11a)を生成するためのモード変換デバイス(7)とを備えており、
前記集束光学系(8)は、焦点面(9)における、前記粒子(P)が通過する少なくとも1つの測定領域(10;10a~10c)に、前記レーザビーム(3)の前記界分布(11)を集束させ、
前記受信機(4)は、
前記少なくとも1つの測定領域(10;10a~10c)における前記レーザビーム(3)の前記界分布(11,11a)の偏光関連強度信号(I,I,I,I)を求めるためのアナライザ光学系(14)と、
前記偏光関連強度信号(I,I,I,I)に基づいて、前記粒子(P)を特徴付ける、前記粒子の位置(P,P)、前記粒子の速度(v,v)、前記粒子の加速度(a,a)及び/又は前記粒子のサイズ(D)を特定するための評価デバイス(20)と、
を備えている、
粒子(P)を特徴付けるためのセンサ装置(1)。
【請求項2】
前記モード変換デバイス(7)は、放射状に対称な偏光方向(R(X,Y))において前記界分布(11)を生成するように、又は、線形に一定の偏光方向(R(X,Y))において前記界分布(11a)を生成するように構成されている、
請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記モード変換デバイス(7)は、位相板として、回折光学要素として、フォトニック結晶ファイバとして、又は、液晶として構成されている、
請求項1又は2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記レーザ源(5)はパルス状レーザビーム(3)を生成するように構成されている、
請求項1から3までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記送信機(2)は、ビーム経路において、前記モード変換デバイス(7)の後に配置されている、前記モード変換デバイス(7)によって生成された前記界分布(11,11a)を有する複数の部分ビーム(3a~3c)に前記レーザビーム(3)を分割するためのビームスプリッタデバイス(26)を有しており、
前記集束光学系(8)は、前記焦点面(9)における複数の測定領域(10a~10c)における前記複数の部分ビーム(3a~3c)の集束のために構成されており、
前記受信機(4)はそれぞれ異なる遅延持続時間(Δt,Δt,Δt)における、前記複数の部分ビーム(3a~3c)の遅延のための遅延デバイス(27)を有する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記ビームスプリッタデバイス(26)は、同一の波長(λ,λ,λ)を有する前記複数の部分ビーム(3a~3c)を生成するための回折光学要素及び/又は少なくとも1つのマイクロレンズアレイを有する、
請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記ビームスプリッタデバイス(26)は、異なる波長(λ,λ,λ)を有する前記複数の部分ビームを生成するための回折光学要素を有しており、
前記遅延デバイス(27)はそれぞれ異なる遅延持続時間(Δt,Δt,Δt)における、異なる波長(λ,λ,λ,…)を有する前記部分ビーム(3a~3c)の遅延のための回折光学要素又は分散光学要素を有する、
請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記アナライザ光学系(14)は、前記アナライザ光学系(14)の前記ビーム経路を第1の検出ビーム経路(16a)と第2の検出ビーム経路(16b)とに分割するためのビームスプリッタ(15)を含む、
請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記第1の検出ビーム経路(16a)は、第1の偏光ビームスプリッタ(17a)並びに第1の光学的な検出器(18a)及び第2の光学的な検出器(18b)を含み、
前記第2の検出ビーム経路(16b)は、第2の偏光ビームスプリッタ(17b)並びに第3の光学的な検出器(18c)及び第4の光学的な検出器(18d)を含む、
請求項8に記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記アナライザ光学系(14)は、偏光回転式デバイス(19)を有しており、前記偏光回転式デバイス(19)は、前記第1の偏光ビームスプリッタ(17a)の前又は前記第2の偏光ビームスプリッタ(17b)の前において、前記レーザビーム(3)の偏光方向を45°回転させる、
請求項9に記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記アナライザ光学系(14)の前記ビームスプリッタ(15)から、前記第1の光学的な検出器から前記第4の光学的な検出器(18a~18d)までの光路長は、同一の長さである、
請求項9又は10に記載のセンサ装置。
【請求項12】
前記評価デバイス(20)は、前記第1の光学的な検出器(18a)及び前記第2の光学的な検出器(18b)の、求められた前記偏光関連強度信号(I,I)から和信号(I+I)及び/又は差信号(I-I)を形成するように、及び/又は、前記第3の光学的な検出器(18c)及び前記第4の光学的な検出器(18d)の、求められた前記偏光関連強度信号(I,I)から他の和信号(I+I)及び/又は他の差信号(I-I)を形成するように、構成されている、
請求項9から11までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項13】
前記評価デバイス(20)は、前記和信号(I+I)及び/又は前記他の和信号(I+I)から前記粒子のサイズ(D)を計算するように構成されている、
請求項12に記載のセンサ装置。
【請求項14】
前記評価デバイス(20)は、前記差信号(I-I)及び/又は前記他の差信号(I-I)に基づいて、前記焦点面(9)における前記粒子の位置(P,P)及び/又は前記粒子の速度(v,v)及び/又は前記粒子の加速度(a,a)を計算するように構成されている、
請求項12又は13に記載のセンサ装置。
【請求項15】
前記測定領域(10)内の前記焦点面(9)と交差する他の焦点面(9a)において他のレーザビーム(3a)を集束させるための他の送信機(2a)と、
前記他のレーザビーム(3a)を受信するための他の受信機(4a)と、
をさらに含み、
前記評価デバイス(20)は、3つの空間方向(X,Y,Z)において、粒子の位置(P,P,P)、粒子の速度(v,v,v)、粒子の加速度(a,a,a)、及び/又は、粒子のサイズ(D,D,D)を特定するように構成されている、
請求項1から14までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項16】
前記送信機(2)は、出射窓(21a)を備えたハウジング(23)を有しており、前記受信機(4)は、入射窓(21b)を備えたハウジング(24)を有しており、これらの間に前記焦点面(9)が形成されている、
請求項1から15までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項17】
前記送信機(2)と前記受信機(4)とは、互いに固定的に結合されている、
請求項1から16までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項18】
前記送信機(2)と前記受信機(4)とは互いに固定的に結合されておらず、
記送信機(2)と前記受信機(4)との間の光学的な接続が、能動的なレーザビーム安定化によって維持される、
請求項1から15までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項19】
前記受信機(4)は、前記レーザビーム(3)のビーム成分を空間分解式検出器、特にカメラ(22)に取り出すための他のビームスプリッタ(13)を有する、
請求項1から18までのいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項20】
特にEUVビーム生成設備(30)のための光学的な装置であって、
粒子(P)が目標領域(36)に供給可能な真空チャンバ(38)と、
請求項1から19までのいずれか1項に記載の、前記真空チャンバ(38)内の前記粒子(P)を特徴付けるセンサ装置(1)と、
を含む光学的な装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子を特徴付けるための、特に、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズを特定するためのセンサ装置に関する。本発明はまた、このようなセンサ装置を備えた、例えばEUVビーム生成設備用の光学的な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子又は粒子流の特徴付け、例えば、粒子のサイズ/体積、粒子の位置又は軌道及び粒子の速度又は飛行方向の特徴付けは、化学産業、製薬産業又は半導体産業などの多くの業界にとって非常に重要である。特に、粒子が小さい場合、即ち、粒子のサイズがナノメートルの範囲及びマイクロメートルの範囲にある場合及び粒子が高い周波数で流れる場合、確立されたセンサシステムは、自身の限界に突き当たる。さらに、粒子が液体中を移動する場合、粒子の特徴付けには極めて多くの労力を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の課題
本発明の課題は、特にリアルタイムで、異なるタイプの媒体中の粒子を特徴付けるために使用することができるセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の主題
上述の課題はセンサ装置によって解決され、このセンサ装置は、送信機と、集束光学系と、受信機とを含み、送信機は、レーザビームを生成するためのレーザ源と、局所的な強度と局所的な偏光方向との異なる組合せを各位置において有する、レーザビームの界分布を生成するためのモード変換デバイスとを備えており、集束光学系は、焦点面における、粒子が通過する少なくとも1つの測定領域に、レーザビームの界分布を集束させ又はイメージングし、受信機は、少なくとも1つの測定領域におけるレーザビームの界分布の偏光関連強度信号を求めるためのアナライザ光学系と、偏光関連強度信号に基づいて、特に強度信号の時間経過に基づいて、粒子を特徴付ける、特に、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズを特定するための評価デバイスとを備えている。
【0005】
ここに記載するセンサ装置は、局所的な強度分布と局所的な偏光方向との間に明確な相関関係を有する界分布又は光学モードの生成に基づいている。このような光学モードの形態における測定領域を通って移動する粒子は、界分布の強度と偏光との両方の時間的な変化を引き起こす。光学モードの厳密に1つの部分領域又は厳密に1つの位置への各偏光/強度の組合せが明確に割り当て可能であることによって、(現在の)粒子の位置が特定され、強度信号の時間経過に基づいて、粒子の時間経過、即ち、粒子の軌道も特定される。即ち、評価デバイスは、空間座標又は軌道を逆算するように構成されている。(現在の)粒子の速度又はその時間経過も、強度信号の時間経過に基づいて特定される。同様に、粒子のサイズ又はその時間経過を特定することができる。本出願の文脈では、粒子のサイズは、焦点面における粒子の断面積を意味すると理解される。このセンサ装置においては、粒子は、GHz範囲の高速で特徴付けされる。即ち、粒子の検出又は特徴付けをリアルタイムで行うことができる。
【0006】
送信機は、レーザ源とモード変換デバイスとの両方を含む。基本的に、あらゆるタイプのレーザがレーザ源として適している。例えば、レーザ波長が1550nmで光学的なパワーが100mWのレーザダイオードをレーザ源として使用することができる。このようなレーザ源は、センサ装置の基本原理を制限することなく、他のレーザ波長を有するレーザによって置き換え可能である。従って、センサ装置又は使用される測定方法は、それが可視スペクトル外であっても、利用可能な任意のレーザ波長及び複数のレーザ波長の組合せのもとで実装される。従って、多数の異なる媒体(気体、液体又は固体)において粒子を特徴付けるために、このセンサ装置を使用することができる。レーザ源によって生成されるレーザビームの横モードプロファイルは通常TEM00であるが、レーザ源は場合によっては他のモードプロファイルを生成することもできる。
【0007】
レーザビームを、送信機において、例えばレンズの形態の少なくとも1つの集束光学要素を有する集束光学系によって焦点面に集束させることができ、ここでは、モード変換デバイスによって生成された界分布が焦点面にイメージングされる。レーザビームを、集束光学系によってコリメートし、任意選択的にテレスコープによって拡大することができ、これによって、ビーム断面を、ビーム経路において後続するモード変換デバイスに合わせることができ、その結果、モード変換デバイスが最適に照射される。集束光学要素の焦点距離は、送信機と粒子流若しくは特徴付けられる粒子との間の所望の、十分に大きい動作間隔に合わせられており又は場合によって合わせることができる。焦点面の測定領域は一種の「仮想センサ面」を形成する。この「仮想センサ面」は、粒子の遠隔特徴付けを可能にし、この際に焦点面又は粒子の場所にセンサを位置付ける必要はない。集束光学系は、レトロフォーカスレンズを有するものとしてよい。集束光学系は、焦点面への焦点サイズの調整のために、ズーム光学系も有するものとしてよい。
【0008】
一実施形態においては、モード変換デバイスは、放射状に対称な偏光方向においてレーザビームの界分布を生成するように、又は、線形に一定の偏光方向において界分布を生成するように構成されている。上述したように、粒子センサは、界分布又は横ビームプロファイル(即ち、レーザビームの伝搬方向に対して垂直)の光学的な横モード及び光学的な偏光モードの固有の絡み合いに基づいている。モード変換デバイスは、(a)レーザビームに付加的な横位相を加える、(b)レーザビームの局所的な偏光を局所的に変化させる、ように構成されている。このようにして、焦点面における焦点合わせの際に、(a)振幅/強度及び(b)偏光ベクトルの方向(偏光方向に相当する)の各組合せが、ビームプロファイルの明確に定められた横位置にのみ存在する電磁界分布が生じる。このような界分布の例は、放射偏光、即ち、放射状に対称な偏光分布であり、これは、TEM01モードとTEM10モードとの重ね合わせによって表される。他の例は、放射状の偏光を有し、強度が1つの方向において連続的に上昇する界分布である。このようにして、線上の各点の強度が異なるため、強度と偏光方向との組合せを明確に1つの点に割り当てることができる。異なる線上の点は、異なる偏光方向を有するので、同様に、互いに区別可能である。
【0009】
他の実施形態においては、モード変換デバイスは、(場合によってはセグメント化された)位相板として、回折光学要素として、フォトニック結晶ファイバとして又は液晶として構成されている。基本的には、異なる光学要素において、横位相を加え、偏光を局所的に変化させることが可能である。しかし、通常は、位相及び偏光の両方の変更を同一の光学要素で行うことが有利である。これは、例えば、上述のタイプの光学要素によって実現可能である。
【0010】
他の実施形態においては、レーザ源は、好ましくは1ns未満のパルス持続時間を有する、パルス状レーザビームを生成するように構成されている。基本的に、レーザ源は連続波ビーム(cwビーム)を生成するように構成されるものとしてよい。ここに記載する実施形態においては、レーザ源は、パルス状レーザ源又はパルス状レーザシステムであり、例えば、ピコ秒範囲のパルス持続時間を有するレーザパルスを生成することができる超短パルスレーザである。以下においてより詳細に説明するように、パルス状レーザビームを使用して、焦点面における測定領域又は仮想センサ面を大きくすることができる。連続波ビームでの動作方式とパルス状レーザビームでの動作方式との間における切り替えを行うことができるレーザ源も使用可能であることが自明である。
【0011】
他の実施形態においては、送信機は、ビーム経路において、モード変換デバイスの後に配置されている、モード変換デバイスによって生成された界分布を有する複数の部分ビームにレーザビームを分割するためのビームスプリッタデバイスを有しており、集束光学系は、焦点面における複数の測定領域における複数の部分ビームの集束のために構成されている。受信機は、好ましくは、それぞれ異なる遅延持続時間における、複数の部分ビームの遅延のための(光学的な)遅延デバイスを有する。このようなケースでは、仮想センサ面は、焦点面において、複数の測定領域を空間的に隣り合わせに生成することによって大きくなる。
【0012】
この目的のために、レーザビームは、ビームスプリッタデバイスによって所望の複数の部分ビームに分割され、これらの部分ビームはそれぞれ、モード変換デバイスによって生成された同様の界分布を有する。集束光学系は、焦点面における複数の測定領域に、特に、通常は規則的な配置で、即ち、N個の行及びM個の列で配置されているN×M個の測定領域の数を有するグリッド又はアレイにより部分ビームを集束させる。この目的のために、集束光学系は、例えば、複数の集束レンズ、又は、1つ又は複数のレンズアレイを有するものとしてよい。
【0013】
N×M個の部分ビームの数に対応する数の、アナライザ光学系又は受信機をセンサ装置内に設けることが可能である。このようなケースでは、(光学的な)遅延デバイスを省略することができ、又は、このような遅延が総じて必要とされる場合には、(光学的な)遅延デバイスをアナライザ光学系の強度信号の純粋な電子的な遅延によって置き換えることができる。
【0014】
受信機において遅延デバイスは、各測定領域を通過した偏光関連強度信号又は部分ビームを異なる遅延持続時間により時間的に次のように遅延させるために使用される。即ち、異なる測定領域から発せられたパルス状部分ビームが異なる時点においてアナライザ光学系に入り、そこに存在している光学的な検出器に入射するように遅延させるために使用される。遅延デバイスは、通常、アナライザ光学系への各部分ビームの異なる光路長を生成することによって異なる遅延を可能にする。この(光学的な)遅延デバイスによって、アナライザ光学系を1つだけ用いて、複数の部分ビームを評価することが可能になる。
【0015】
遅延が異なるため、異なる測定領域による空間分解能の、時間分解能又は時間的に変化する信号への変換が可能である(時分割多重化)。各パルス状部分ビームによって生成された、時間的に変化する信号又は偏光パラメータの割り当てを容易にするために、トリガ値を生成することができる。これは、例えば、完全な吸収を行う測定領域を使用することによって、又は、アナライザ光学系によって求められた偏光関連強度信号の、トリガ値若しくはトリガ信号を生成するために使用される測定領域への明確な割り当てを可能にするように、部分ビームのうちの1つの部分ビームを変調することによって行われる。
【0016】
発展形態においては、ビームスプリッタデバイスは、同一の波長を有する複数の部分ビームを生成するための回折光学要素及び/又は少なくとも1つのマイクロレンズアレイを有する。この実施形態においては、レーザビームは、回折光学要素で複数の部分ビームに分割され、複数の部分ビームは、それぞれ(ほぼ)同一の波長を有する。次に、空間的に分離されているこれら部分ビームが、遅延デバイスの少なくとも1つの光学要素によって、例えば、ガラスプレート又はウェッジプレートによって異なる程度で遅延させられる。
【0017】
選択的な発展形態においては、ビームスプリッタデバイスは、異なる波長を有する複数の部分ビームを生成するための回折光学要素を有しており、遅延デバイスは、好ましくは、それぞれ異なる遅延持続時間における、異なる波長を有する部分ビームの遅延のための回折光学要素又は分散光学要素として構成されている。このようなケースにおいては、各部分ビームは、異なる波長を有し、回折光学要素、例えば、反射格子又は透過格子又は分散光学要素によって空間的に分割されるものとしてよく、相応の遅延経路、例えば、多重化のための異なる長さのグラスファイバケーブルによって、時間的に異なる程度で遅延させられるものとしてよい。
【0018】
基本的に、遅延デバイスは、屈折光学要素又は光学要素、例えば、偏向ミラー、ウェッジプレート、プリズムなども有するものとしてよく、これによって、部分ビームを異なる程度で、典型的にはそれらが受信機のアナライザ光学系に入る前に、遅延させることができる。アナライザ光学系に入る前に部分ビームを空間的に重畳させるために、屈折光学要素に、波長に関連する反射度を備えた反射防止コーティングが設けられるものとしてよく、又は、屈折光学要素が反射防止コーティングにおける勾配を有するものとしてよく、これによって、異なる波長を有する複数の部分ビームの重畳が行われる。
【0019】
受信機は、通常、アナライザ光学系に入る前にレーザビーム又はレーザビームの部分ビームをコリメートするためのコリメーション光学系を含む。偏光関連強度、即ち、偏光方向に関連する強度(又は、これに同等に、各パワー)を求めるために使用されるアナライザ光学系が種々の形式で構成されるものとしてよい。この目的のために、アナライザ光学系は、通常は空間的な分解を行わない、少なくとも1つの検出器を有しており、これは、例えばフォトダイオード、例えばPINダイオードの形態で構成されるものとしてよい。異なる(直線)偏光方向のもとで2つ以上の強度を求めるために、アナライザ光学系は、例えば、静止した偏光器及び偏光回転式デバイスを、例えば、回転式のλ/2遅延板の形態で有するものとし得る。しかし、可動光学要素の使用は、GHz範囲の周波数における高速評価には不利である。従って、アナライザ光学系が可動光学要素を有しないことが有利である。
【0020】
一実施形態においては、アナライザ光学系は、アナライザ光学系のビーム経路を第1の検出ビーム経路と第2の検出ビーム経路とに分割するための(幾何学的)ビームスプリッタを含む。幾何学的ビームスプリッタは、例えば、ビームスプリッタキューブなどの態様で構成されるものとしてよく、固定された所定の比率(例えば、50:50)で、2つの検出ビーム経路に、レーザビームのパワーを分割するために用いられる。
【0021】
発展形態においては、第1の検出ビーム経路は、第1の偏光ビームスプリッタ並びに第1の光学的な検出器及び第2の光学的な検出器を含み、第2の検出ビーム経路は、第2の偏光ビームスプリッタ並びに第3の光学的な検出器及び第4の光学的な検出器を含む。例えばフォトダイオード、例えば(小型)PINダイオードの形態の光学的な検出器は、10GHz以上のサンプリングレート又は分解能を可能にする。以下においてより詳細に説明するように、偏光関連強度から界分布の偏光パラメータ(ストークスパラメータ)を求めるために、4つの検出器の使用が有利であることが証明されている。光学的な検出器は、レーザビーム又は部分ビームの波長に適合させられる。光学的な検出器又はPINダイオードは、自由放射ダイオード又はファイバ結合ダイオード(シングルモード若しくはマルチモード)として構成されるものとしてよい。後者は、散乱光の影響を受けにくいという利点を有する。使用される検出器は、サンプリングの際に可能な最大時間分解能を決定する。
【0022】
発展形態においては、アナライザ光学系は、偏光回転式デバイスを有しており、これは第1の偏光ビームスプリッタの前又は第2の偏光ビームスプリッタの前で、レーザビーム(又はレーザビームの各部分ビーム)の偏光方向を45°回転させる。偏光回転式デバイスは、例えば、適当に配向されたλ/2遅延板であるものとしてよい。偏光パラメータを求めるために、4つの検出器が、互いに垂直に配向される2つの偏光方向(0°及び90°又は45°及び135°)のもとで、パワー又は強度を検出することが有利であることが証明されている。2つの検出ビーム経路間において偏光方向を45°回転させることによって、偏光関連強度から偏光パラメータを求めることが容易になる(以下を参照)。偏光回転式デバイスを除いて、アナライザ光学系において、2つの検出ビーム経路又はレーザビームの、反射ビーム成分及び透過ビーム成分が交換可能である。
【0023】
他の発展形態においては、(幾何学的)ビームスプリッタから、第1の光学的な検出器から第4の光学的な検出器までのアナライザ光学系の光路長は、同一の長さである。アナライザ光学系における光路長又はビームスプリッタから検出器までの光路長が同一の長さであることは、有利であることが証明されており、これによって、光学的な検出器で求められる偏光関連強度信号間に伝搬時間差が生じることがなくなる。レーザビームを1つだけ使用するケースにおいては、アナライザ光学系における光路長だけでなく、焦点面から4つの検出器までの光路長も同一の長さである。
【0024】
他の実施形態においては、評価デバイスは、第1の検出器及び第2の検出器の、求められた偏光関連強度から和信号及び/又は差信号を形成するように、及び/又は、第3の検出器及び第4の検出器の、求められた偏光関連強度から他の和信号及び/又は他の差信号を形成するように構成されている。評価デバイスは、第1の検出器及び第2の検出器、又は、第3の検出器及び第4の検出器の偏光関連強度から和信号若しくは差信号を生成するように構成されている。直交に配向された2つの偏光方向において求められた2つの各強度間の和又は差から、測定領域における界分布の偏光パラメータを決定することができる。偏光パラメータは通常、2つ以上の、いわゆるストークスパラメータであるが、基本的には、測定領域における界分布の偏光状態を表す他のパラメータが決定されるものとしてもよい。この和信号及び差信号に基づいて、粒子の位置又は粒子の速度及び粒子のサイズを同時に特定することができる。
【0025】
評価デバイスにおける和信号若しくは差信号の形成を、方向性結合器を介して読出電子装置により受動的に行い、又は、電子的な増幅器(演算増幅器)を介して能動的に行うことができ、これによって、センサ装置の信号対雑音比、ひいては分解能を向上させることができる。読出電子装置の速度は、フォトダイオードの帯域幅に適合させられている。評価デバイスの読出電子装置は受信機内に統合されている。評価デバイスの残余の部分は、同様に、受信機又は受信機のハウジング内に収容されるものとしてよいが、例えば、この計算が評価用コンピュータなどで実行される場合、評価デバイスの一部がインタフェースを介して受信機と接続されるものとしてもよい。
【0026】
発展形態においては、評価デバイスは、和信号及び/又は他の和信号から粒子のサイズを計算するように構成されている。評価の際の測定領域が比較的狭く、時間分解能が高いことに基づいて、分かりやすくするために、それぞれ1つの粒子のみが測定領域を通過する、即ち、求められた偏光関連強度を1つの粒子に明確に割り当てることができると想定可能である。第1の検出器及び第2の検出器で求められた偏光関連強度からの和信号は、測定領域を通過したレーザビームの強度総計に比例する(ストークスパラメータs)。強度総計又は和信号が小さくなるほど、測定領域が粒子によってより強く影にされる。即ち、焦点面において粒子又は粒子の断面が大きくなる。検出された粒子を自身のサイズで分類するために、和信号を1つ又は複数の閾値と比較することができる。場合によっては、読出電子装置は、この目的のために、場合によっては調整可能な閾値を備える1つ又は複数の電子的なコンパレータを有するものとしてよい。較正を用いて、又は、既知の粒子のサイズを有する粒子を測定領域に供給することによって、検出された粒子のサイズを相対的にだけでなく、絶対的に特定することができる。粒子を、自身の粒子のサイズに従って又は自身の粒子断面に従って、例えば、約100nm~5000nmの大きいサイズ間隔にわたって分類することができる。
【0027】
他の発展形態においては、評価デバイスは、差信号及び/又は他の差信号に基づいて、焦点面又は測定領域における粒子の位置、粒子の速度、及び/又は、粒子の加速度を計算するように構成されている。この目的のために、差信号の時間経過、通常は2つの差信号の時間経過を評価することができ、これらは、偏光の線形成分を表す2つのストークスパラメータs,sである。さらに、和信号又はストークスパラメータsもこの目的のために使用することができる。焦点面における偏光分布と界分布の強度分布との間の相関関係に基づいて、測定領域内の粒子の位置を再構築することができ、ひいては時間経過に基づいて粒子の軌道を再構築することができる。この目的のために、場合によっては事前に各ストークスベクトルs,s,sに測定領域内の位置を割り当て、測定領域内の位置をテーブル内に格納することができる。測定領域における粒子の速度及び加速度も、時間経過又はストークスベクトルs,s,sの変化に基づいて求めることができる。
【0028】
粒子のサイズの計算に関連して上述したように、例えば、電子的なコンパレータを使用して、目標軌道からの粒子の軌道の偏差を検出することができる。電子的なコンパレータは、差信号を、場合によっては調整可能な閾値と比較する。偏差が大きすぎる場合は、場合によっては、粒子が生成されるプロセス又は粒子の軌道が設定されるプロセスに、制御又は調整によって介入することができる。目標軌道は、特に、粒子が保持されるべき、粒子の所定の一定の目標位置であるものとしてよい。GHz範囲における時間分解能によって、このような目標位置からの最小偏差もリアルタイムで決定することができる。
【0029】
送信機と受信機とを用いて、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズを、焦点面の2つの空間方向において特定することができる。3つの空間方向の総てにおいて、測定領域を通過する粒子を特徴付けるためには、送信機と受信機との1つの対の使用では、通常、不十分である。
【0030】
他の実施形態においては、センサ装置は、測定領域内の焦点面と交差する他の焦点面において他のレーザビームを集束させるための他の送信機と、この他のレーザビームを受信するための他の受信機とを含む。評価デバイスは、3つの空間方向において、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズを特定するように構成されている。他の送信機及び他の受信機は、特に、上述の送信機及び受信機と構造的に同様に構成されるものとしてよく、他の焦点面における2つの空間方向において、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズを特定するように構成されるものとしてよい。他の焦点面と焦点面とは、粒子が通過する測定領域において交差するので、3つの空間方向の総てにおける、測定領域を通過する粒子の特徴付けのための総ての情報が、評価デバイスに提供される。焦点面と他の焦点面とが互いに垂直に配向されることは、有利である。
【0031】
他の実施形態においては、送信機は、出射窓を備えたハウジングを有しており、受信機は、入射窓を備えたハウジングを有しており、これらの間に焦点面が形成される。送信機のハウジング及び受信機のハウジングは、窓によって、検査される粒子及び媒体から密閉されている。投影された測定面及び粒子の行路曲線は、2つの密閉されたハウジング間に位置する焦点面において検出される。
【0032】
他の実施形態においては、送信機と受信機とは、より正確にはそれらのハウジングは、互いに固定的に結合されている。送信機と受信機とが、固定された、分解不可能な結合によって相互に結合されるものとしてよく、例えば、送信機と受信機とがCフレームに固定されるものとしてよい。送信機と受信機との間の固定的な結合が分解可能に構成されるものとしてもよく、例えば、送信機と受信機とはプラグ結合によって互いに固定的に結合されるものとしてよい。固定的な結合によって、送信機と受信機とが互いに所定の間隔を置いて配置されており、所望のように相互に配向される、即ち、通常は、平行に配向される入射窓と出力窓とを伴って、相互に配向されることが保証される。
【0033】
選択的に、センサ装置の送信機と受信機とは互いに固定的に結合されていない。このようなケースにおいては、送信機と受信機とは最初に相互に配向され、この配向において安定化が行われる(受動的な構成)。選択的に、送信機と受信機とは互いに固定的に結合されてないが、送信機と受信機との相対的な光学的な接続又は配向が、レーザビームの能動的な安定化によって維持される(能動的な構成)。レーザビームの安定化のために、例えば、アナライザ光学系の総ての検出器の和信号の変化が、粒子の読出周波数よりも低いサンプリングレートと組み合わせて、安定性基準として使用されるものとしてよい。このようなケースにおいては、和信号は、粒子の読出周波数よりも格段に長い持続時間にわたって積分される。積分時間が長くなったことによって、例えば、送信機と受信機との間の温度ドリフトに起因する、送信機と受信機との間の長期ドリフトが和信号において可視になる。安定性基準としての和信号に関連した、送信機と受信機との相対的な適当なシフト及び/又は回転によって、送信機と受信機との間の光学的な接続又は配向を維持することができる。選択的又は付加的に、カメラの信号(以下を参照)も、安定性基準として使用することができる。
【0034】
他の実施形態においては、受信機は、レーザビームのビーム成分を空間分解式検出器、特にカメラに取り出すための他のビームスプリッタを有する。この他のビームスプリッタによって、レーザビームの任意のパワー成分を、プロセス観察のために、カメラに取り出すことができる。プロセス観察は、特に、レーザビームに対して相対的な、検査される粒子の初期配向のために使用可能である。送信機と受信機との配向の、上述した能動的な安定化を、安定性基準として使用されるカメラの出力信号を用いて実現することもできる。カメラは受信機内に統合されるものとしてよい。選択的に、受信機は取り出し窓を有するものとしてよく、この取り出し窓で、取り出されたビーム成分が、カメラへ向かう方向において、受信機から取り出される。
【0035】
本発明の他の態様は、特に、EUVビーム生成設備のための光学的な装置に関しており、この光学的な装置は、粒子が供給可能な真空チャンバと、上述のように構成されているセンサ装置とを含む。このセンサ装置は、真空チャンバ内の粒子の特徴付け、特に、粒子の位置、粒子の速度、粒子の加速度、及び/又は、粒子のサイズの特定のためのものである。上述したように、このセンサ装置は、固体、液体又は気体の粒子又は粒子流を特徴付けるために、多くの適用分野において使用可能である。
【0036】
例えば、センサ装置は、EUVビーム生成設備の真空チャンバ内の粒子又は粒子流を特徴付けるために使用されるものとしてよい。このようなEUVビーム生成設備は、通常、ドライバレーザビームを生成するためのドライバレーザ装置と、ドライバレーザビームを上述の真空チャンバに供給するためのビーム供給装置とを有する。ドライバレーザビームは、真空チャンバの目標領域内に集束される。目標領域には、すず粒子又はすず液滴の形態のターゲット材料が導入される。ドライバレーザビームで照射すると、各粒子はプラズマ状態に移行し、この際にEUVビームを放出する。目標領域に誘導されたターゲット材料の粒子と、レーザビームがターゲット材料に当たるとき(ターゲット材料が噴霧されるとき)に生成される粒子とを、上述のセンサ装置を用いて特徴付けることができる。このセンサ装置が、他の適用分野において粒子を特徴付けるため、例えばすず粒子などを特徴付けるためにも使用可能であることが自明である。
【0037】
本発明の他の利点は、明細書及び図面から明らかになる。同様に、上述され、さらに詳細に記載される複数の特徴を、個別に又は任意の組合せにおける複数で使用することができる。図示及び記載される実施形態は、網羅的な列挙として理解されるべきではなく、むしろ、本発明を説明するための例示的な特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1a】送信機と受信機との間の焦点面における測定領域を通過する粒子を特徴付けるためのセンサ装置の概略図である。
図1b】他の送信機と他の受信機とを備えた、図1aに類似したセンサ装置の概略図である。
図2a】焦点面に複数の測定領域を生成するように構成されるセンサ装置の概略図である。
図2b】焦点面に複数の測定領域を生成するように構成されるセンサ装置の概略図である。
図3】真空チャンバ内の粒子を特徴付けるためのセンサ装置を有するEUVビーム生成設備の概略図である。
図4】モード変換デバイスによって生成された2つの界分布の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下の図面の説明においては、同一の又は機能的に等しい構成部分に同一の参照符号が用いられている。
【0040】
図1aは、レーザビーム3を送信するための送信機2と、レーザビーム3を受信するための受信機4とを有するセンサ装置1の例を概略的に示している。送信機2は、レーザビーム3を生成するためのレーザ源5を有しており、これは、図示の例においては、用途に応じて、約180nm~約10000nmの間の波長範囲から選択されるレーザ波長を有するダイオードレーザである。レーザビーム3のビーム経路において、レーザ源5の後に、レーザビーム3をコリメートするためのコリメーションレンズ6の形態のコリメーション光学系が続いている。次に、コリメートされたレーザビーム3が、モード変換デバイス7に入射し、後続の、(焦点距離fを有する)集束レンズ8の形態の集束光学系によって、焦点面9に、特に、焦点面9内のレーザビーム3の焦点ゾーンに対応する測定領域10に集束される。
【0041】
センサ装置1は、測定領域10を通過する粒子Pを特徴付けるために使用される。測定領域10は、図1aにおける詳細な表示において、レーザビーム3の伝搬方向Zに対して垂直なXY平面において示されている。センサ装置1によって、測定領域10を通過する粒子Pの粒子の位置P,P、粒子の速度v,v及び粒子のサイズ又は粒子の直径Dを特定することができる。
【0042】
これを可能にするために、モード変換デバイス7は、図4aに示されているように、焦点面9において界分布11を生成する。モード変換デバイス7は、図示の例においては、セグメント化された位相板として構成されており、選択的に例えばフォトニック結晶ファイバとして、液晶として又は回折光学要素として構成されるものとしてよい。モード変換デバイス7によって生成された界分布11は、放射状に対称的に偏光される。即ち、界分布11の局所的な偏光方向R(X,Y)は、常に、レーザビーム3のビームプロファイルの中心に対して放射状に配向される。界分布11におけるレーザビーム3の局所的な強度I(X,Y)は、放射状に偏光されたモードを形成する。TEM01モードとTEM10モードとの重ね合わせを表す、図4aに示された界分布11は、モード変換デバイス7を用いて、レーザビーム3がレーザ源5からの出射時に有するTEM00モードプロファイルから生成される。
【0043】
図4aに示された界分布11は、これが、界分布11、ひいては測定領域10の各位置X,Yにおいて、局所的な強度I(X,Y)と局所的な偏光方向R(X,Y)との異なる組合せを有するという特殊性を有する。即ち、位置X,Yにおいて、界分布11の偏光方向R(X,Y)も強度I(X,Y)も一致することはない。これによって、界分布11の各位置X,Yを、厳密に1つの、強度I(X,Y)と偏光方向R(X,Y)との組合せに明確に割り当てることができる。
【0044】
図4bは界分布11aを示しており、これは同様に、各位置X,Yに明確に偏光/強度の組合せが割り当て可能であるという、図4aに関連して記載された特性を有する。図4aに示された界分布11とは対照的に、図4bに示された界分布11aにおいて偏光方向R(X,Y)は放射状に延在する。強度I(X,Y)は、界分布11aにわたって、規定された方向に沿って連続的に上昇する。
【0045】
図4a,図4bに示された界分布11,11aの特性を利用して、空間分解式の測定を実行する必要なく、上述の形式で粒子Pを特徴付けることができる。この目的のために、測定領域10を通過した後、レーザビーム3は、はじめに、受信機4内に配置された、コリメーションレンズ12の形態のコリメーション光学系によってコリメートされる。コリメートされたレーザビーム3は、第1の幾何学的ビームスプリッタ13を介してアナライザ光学系14に入る。レーザビーム3のビーム成分、例えば、ビームパワーの約50%は、第1のビームスプリッタ13で取り出され、アナライザ光学系14に入らない。レーザビーム3のビームパワーの残余の50%は、第2の幾何学的ビームスプリッタ15に入射し、ここで、レーザビーム3、より正確には、レーザビーム3のビームパワーは、同様に、50:50の比率で、第1の検出ビーム経路16aと第2の検出ビーム経路16bとに分割される。
【0046】
第1の検出ビーム経路16aにおいて、第2のビームスプリッタ15を通り抜けたレーザビーム3は、第1の偏光ビームスプリッタ17aに入射する。第1の偏光ビームスプリッタ17aは、レーザビーム3を、互いに垂直な2つの直線偏光成分に分割する。ここでは、第1の検出器18aによって、0°の偏光角を有するレーザビームの強度Iが検出され、これに対して垂直に、即ち、90°の偏光角で偏光させられたレーザビームの強度Iは、第2の検出器18bによって検出される。第2の検出ビーム経路16bにおいて、第2のビームスプリッタ15で反射したレーザビーム3は第2の偏光ビームスプリッタ17bに入射するが、その前に、レーザビーム3の偏光状態を45°回転させるλ/2遅延板19の形態の偏光回転式デバイスを通過する。偏光方向が45°の偏光角を有する第2の偏光ビームスプリッタ17bで反射したビーム成分の強度Iは、第3の検出器18cによって検出される。これに相応して、偏光方向が135°の偏光角を有する、第2の偏光ビームスプリッタ17bを通り抜けたビーム成分の強度Iは、第4の検出器18dによって検出される。従って、4つの偏光関連強度信号I~Iが、4つの検出器18a~18dを用いて検出される。
【0047】
図示の例においては、光学的な検出器18a~18dは、フォトダイオード、より正確には、GHz範囲におけるサンプリングを可能にするPINダイオードである。図1aに示された例においては、検出器18a~18dは、自由放射ダイオードとしてのPINダイオードの形態で構成されている。アナライザ光学系14は、レーザビーム3の4つの直線偏光成分を各PINダイオード18a~18dに集束させるための集束レンズを有する。選択的に、光学的な検出器18a~18dは、例えば、ファイバ結合PINダイオードとして構成されるものとしてよい。光学的な検出器18a~18dは、レーザビーム3の波長に合わせて調整又は最適化されるものとしてよい。しかし、Si、InGaAs又はGeで作られた従来の半導体検出器18a~18dは、上述の波長範囲を良好にカバーするので、このような最適化は必須ではない。強度信号I,I,I,Iは、以下においてより詳細に説明されるように、評価デバイス20によって評価される。
【0048】
図示の例においては、送信機2は、ハウジング23によって、周囲に対して遮蔽される。これに相応して、受信機4も、ハウジング24によって、周囲から保護される。レーザビーム3の出射のために、送信機2のハウジング23に出射窓21aが形成されている。測定領域10を通過した後に、レーザビーム3が受信機4に入るための入射窓21bが、相応に、受信機4のハウジング24に形成されている。受信機4は、取り出し窓21cを有しており、これを通じて、第1の幾何学的ビームスプリッタ13を通り抜けたレーザビーム3のビーム成分が、受信機4から、カメラ22の形態の空間分解式検出器に取り出される。カメラ22はプロセス観察のために用いられ、例えば、焦点面9に相対的な粒子P又は粒子流の配向を識別し、場合によっては修正するために使用されるものとしてよい。窓21a~21cは、周囲に対して送信機2及び受信機4を遮蔽することを可能にし、その結果、センサ装置1を使用して、種々の液体、気体又は固体の媒体を検出することが可能になる。
【0049】
送信機2及び受信機4は、相対的な配向のためにフレーム25に固定されている。フレーム25は、送信機2及び受信機4を互いに一定の間隔及び一定の角度配向に保持し、送信機2の光軸と受信機4の光軸との同軸配向を可能にする。図示の例に対して選択的に、送信機2と受信機4とを、例えばプラグ結合によって、分解可能に互いに結合することが可能である。送信機2と受信機4とを互いに結合するのではなく、最初にそれらを互いに配向すること(受動的な配向)又は能動的なビーム安定化によって相対的に配向すること(能動的な配向)も可能である。後者のケースにおいては、送信機2と受信機4との相対的な配向は、能動的なレーザビーム安定化を用いて維持される。この目的のために、例えば、カメラ22によって生成された信号を使用することができ、これは、送信機2と受信機4との相対的な配向のための安定性基準として用いられる。総ての検出器18a~18dの和信号I+I+I+Iも、十分に長い積分時間を前提条件として、安定性基準として用いることができる。
【0050】
粒子Pの特徴付けのために、評価デバイス20において、第1の検出器18a及び第2の検出器18bの偏光関連強度I,Iから和信号I+I及び差信号I-Iが形成される。これらは、ストークスパラメータs又はストークスパラメータsに対応する。これに相応して、第3の検出器18c及び第4の検出器18dにおいて求められた偏光関連強度I,Iから他の和信号I+I及び他の差信号I-Iが形成される。他の差信号I-Iはストークスパラメータsに対応する。各和信号I+I,I+I又は各差信号I-I,I-Iの形成は、評価デバイス20において、受動的な電子的な構成要素、例えば方向性結合器を用いて、又は、能動的な構成要素、例えば演算増幅器を用いて行われるものとしてよい。評価デバイス20の読出電子装置の速度は、検出器18a~18dの帯域幅に適合させられる。
【0051】
評価デバイス20は、和信号s(又はI+I)に基づいて、粒子のサイズDを計算するように構成されている。ここでは、和信号sが、測定領域10を通過したレーザビーム3の強度総計に比例するという事実が利用される。測定領域10が粒子Pによって部分的に又は場合によって完全に覆われる場合、レーザビーム3の強度総計、ひいては和信号sの値も減少する。これに相応して、粒子のサイズDを計算するために、他の和信号I+Iも評価されるものとしてよい。和信号sの値に基づいて、粒子Pをサイズにおいても分類することができ、これは、例えば、和信号sの値を、例えばコンパレータを用いて、粒子Pの各サイズクラスに割り当てられる、異なる大きさの閾値と比較することによって行われる。
【0052】
評価デバイス20はまた、差信号s及び他の差信号sに基づいて、焦点面9における粒子Pの粒子の位置P,Pを特定するように構成されている。場合によっては、付加的に、和信号s(又は他の和信号I+I)をこの目的のために使用することができる。位置を特定するために、評価デバイス20は、例えば、各組合せs,s又は場合によっては各組合せs,s,sに測定領域10内の位置P,Pを割り当てるテーブルなどを有するものとしてよい。測定領域10内の粒子Pの軌道を、差信号s,sの時間経過に基づいて特定することができる。差信号s,sの時間経過に基づいて、さらに、焦点面9における各粒子の位置P,Pでの粒子の速度v,v及び粒子の加速度a,aも特定することができる。
【0053】
粒子Pの特徴付けのために、和又は差が、各偏光関連強度信号I,I,I,Iから計算されるので、アナライザ光学系14における4つの検出器18a~18dに対して、時間的なずれ又は伝搬時間差が生じないことが必要である。これを阻止するために、アナライザ光学系14は、レーザビーム3を第1の検出ビーム経路16aと第2の検出ビーム経路16bとに分割するビームスプリッタ15の光路長が、4つの検出器18a~18dそれぞれに対して同一の長さであるように構成されている。
【0054】
図1bは、図1aの送信機2及び受信機4並びに図1aの送信機2及び受信機4と構造的に等しい他の送信機2a及び他の受信機4aを有するセンサ装置1を示している。他の送信機2aは、図1の焦点面9に対して垂直に配向される他の焦点面9aにおいて、他のレーザビーム3aを集束させるための他の(図示されていない)集束デバイスを含む。焦点面9と他の焦点面9aとは、測定領域10において交差する。他の受信機4aの図示されていない他の評価光学系は、粒子Pの粒子の位置P,P、粒子の速度v,v及び粒子の加速度a,aを他の焦点面9aにおいて特定することを可能にする。2つの焦点面9,9aは、X方向に延在する、測定領域10の直線部分において交差するので、評価デバイス20は、この付加的な情報を利用して、測定領域10を通過する粒子Pの粒子の位置P,P,P、粒子の速度v,v,v及び粒子の加速度a,a,aを、3つの空間方向X,Y,Zの総てにおいて特定することができる。これに相応して、評価デバイス20は、3つの空間方向X,Y,Zの総てにおいて、粒子のサイズD,D,Dを特定することもできる。
【0055】
図2a,図2bに示されたセンサ装置1は、図1a,図1bに示されたセンサ装置1と、実質的に、1つの測定領域10が焦点面9において生成されるのではなく、複数の測定領域が生成されるという点において異なる。これらの測定領域のうち、例示的に3つの測定領域10a~10cが示されている。複数の測定領域10a~10cを生成するために、ビーム経路において、モード変換デバイス7の後に、ビームスプリッタデバイス26が配置されており、これは、レーザビーム3を、相応の複数の部分ビームに分割する。複数の部分ビームのうち、例示的に3つの部分ビーム3a~3cが図2a,図2bに示されている。3つの部分ビーム3a~3cは、適当に修正された集束光学系8によって、焦点面9において互いに間隔を置いて配置される3つの測定領域10a~10cにおいて集束される。通常、測定領域10a~10c,…は、焦点面9において規則的な配置(測定グリッド)で配置される。レーザビーム3を複数の部分ビーム3a~3cに分割することによって、センサ装置1を用いて監視可能な、焦点面9内の領域を格段に大きくすることができる。
【0056】
図2a,図2bに示されたセンサ装置1のレーザ源5はパルス方式で動作し、即ち、これは、レーザパルス又はパルス状レーザビーム3を生成するように構成されている。従って、3つの測定領域10a~10cを通過する、ビームスプリッタデバイス又はビームスプリッタ光学系で生成された部分ビーム3a~3cも、それらが受信機4に入るときにパルス状にされる。受信機4は、遅延デバイス27を有しており、これによって、それぞれ異なる遅延持続時間Δt,Δt,Δtで部分ビーム3a~3cを遅延させることができ、その結果、これらは時間的にずらされて、アナライザ光学系14に入り、異なる測定領域10a~10cに割り当てられる強度信号I,I,I,Iが、時間的にずらされて、検出器18a~18dに入射する。このようにして、時分割多重化を実行することができ、その結果、異なる測定領域10a~10cに割り当てられる強度信号I,I,I,Iを時間的に連続して評価することができる。場合によっては、部分ビーム3a~3cのうちの1つは、各部分ビーム3a~3cが明確に識別可能な(変化しない)強度信号I,I,I,Iを生成する場合、評価デバイス20における評価のためのトリガ信号として使用されるものとしてよい。例えば、これは、例えば測定領域10a~10cのうちの1つが対応する部分ビーム3a~3cを実質的に吸収することによって各部分ビーム3a~3cがぼかされる場合に実現されるものとしてよい。
【0057】
ビームスプリッタデバイス26及び遅延デバイス27を実現するために、種々の手法が存在する:図2aに示されている例においては、ビームスプリッタデバイス26は、回折光学要素(回折格子)として構成されており、異なる波長λ,λ,λを有する複数の部分ビーム3a~3cを生成するために用いられる。これに相応して、遅延デバイス27は、例えば、反射格子若しくは透過格子である回折光学要素として、又は、それぞれ異なる遅延持続時間Δt,Δt,Δtで、異なる波長λ,λ,λ,…を有する部分ビーム3a~3cを遅延させるための分散光学要素として構成されている。
【0058】
図2bに示された例においては、ビームスプリッタデバイス26は、同一の波長λ,λ,λを有する複数の部分ビーム3a~3cを生成するための少なくとも1つのマイクロレンズアレイを有する。焦点面9内の測定領域10a~10cのグリッド状の配置を生成するために、ビームスプリッタデバイス26は、例えば、円筒形レンズアレイを有するものとしてよい。マイクロレンズアレイに対して選択的に又は付加的に、回折光学要素をビームスプリッタデバイス26において使用することもでき、これは、実質的に同一の波長λ,λ,λを有する複数の部分ビーム3a~3cを生成する。このようなケースにおいては、遅延デバイス27は、典型的には、例えば、ガラスプレート又はウェッジプレートの形態の、少なくとも1つの分散光学要素を有する。
【0059】
図2bに示されているように、集束光学系8は、このようなケースにおいては、各部分ビーム3a~3cを測定領域10a~10cに集束させるために、複数の集束レンズを有するものとし得る。基本的に、集束光学系8も、図2a,図2bには示されていないコリメート光学系12も、球面レンズ、非球面レンズ、アクロマティックレンズ、交差シリンドリカルレンズ又はGRINレンズを有するものとし得る。集束光学系8及びコリメーション光学系12が、透過光学要素に対して選択的に又は付加的に、反射光学要素も有するものとし得ることは自明である。
【0060】
図1a及び図1b並びに図2a及び図2bに関連して説明されたセンサ装置1は、多数の異なる用途において粒子Pを特徴付けるために使用されるものとしてよい。以下においては、例示的に、図3に基づいて、このような用途を、EUVビーム生成設備30に基づいてより詳細に説明する。EUVビーム生成設備30は、ビーム源31と、3つの光学的な増幅器又は増幅器段33a~33cを備えた増幅器装置32と、詳細には示されていないビーム誘導デバイス34と、集束デバイス35とを含む。集束デバイス35は、ビーム源31によって生成され、増幅器装置32によって増幅されたドライバレーザビーム31aを、粒子Pが導入される真空チャンバ38内の目標領域36に集束させるために用いられる。粒子P又は個別のすず液滴がターゲット材料として用いられ、ドライバレーザビーム31aによって照射される。この際に、すず液滴はプラズマ状態に移行し、コレクタミラー37によって集束されるEUVビームを放出する。図3に示された例においては、コレクタミラー37は、レーザビーム31aが通過するための開口部を有する。図示された例においては、ビーム源31は、2つのCOレーザを有しており、これによって、プリパルス及びメインパルスが生成され、これらは、増幅器装置32において共に増幅され、目標領域36に集束される。ビーム源31は、増幅器装置32とともに、EUVビーム生成設備30のドライバレーザ装置39を構成する。
【0061】
図3においても見て取れるように、センサ装置1の送信機2及び受信機4は、真空チャンバ38に取り付けられている。1つ又は複数の測定領域10,10a~10cが形成される焦点面9は、すず液滴の形態の粒子Pを伴う目標領域36を通過する。センサ装置1を用いて、粒子P又は粒子Pの、目標領域36への動きを検査することができ、粒子Pの動き又は軌道を特定することができる。粒子Pのサイズ又は各すず液滴の噴霧の際にドライバレーザビーム31aによって生成される、比較的小さい粒子のサイズも、センサ装置1を用いて検出され得る。噴霧の際に生成される粒子Pの軌道又は速度も、センサ装置1を用いて検出することができる。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3
図4a
図4b