(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】放電加工機
(51)【国際特許分類】
B23H 7/36 20060101AFI20230711BHJP
B23H 1/10 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
B23H7/36 C
B23H1/10 Z
(21)【出願番号】P 2022078521
(22)【出願日】2022-05-12
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】保坂 昭夫
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-122525(JP,A)
【文献】特開2015-77646(JP,A)
【文献】特開2002-263961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が収容される加工槽と、
前記加工槽から排出される加工液を貯留する汚液槽と、前記汚液槽から送られる前記加工液を貯留する清液槽と、前記汚液槽と前記清液槽とを区切り第1の連通路を有する仕切板と、を含むサービスタンクと、
前記清液槽内に設けられ膨張可能な袋体と、前記袋体の袋口であり前記第1の連通路に接続されて前記汚液槽と連通する接続口と、を含む貯留袋と、
前記汚液槽内の前記加工液を汲み上げる循環ポンプと、
前記循環ポンプによって送られた前記加工液を濾過して前記清液槽に送るフィルタと、
前記清液槽内の前記加工液を汲み上げ前記加工槽へ送る送液ポンプと、を備える、放電加工機。
【請求項2】
前記仕切板は、前記汚液槽と前記清液槽とに連通する第2の連通路をさらに有し、
前記第2の連通路を開閉する連通シャッタと、をさらに備える、請求項1に記載の放電加工機。
【請求項3】
加工中、前記汚液槽から前記清液槽に送られる前記加工液の量は、前記清液槽から前記加工槽に送られる加工液の量よりも多くなるように構成され、
前記連通シャッタは、加工中に開かれるよう制御される、請求項2に記載の放電加工機。
【請求項4】
前記循環ポンプにより前記汚液槽内の前記加工液を直接前記加工槽へと送る第1の急送管路をさらに備え、
前記循環ポンプは、送液先を前記フィルタと前記第1の急送管路の一方に選択可能に構成され、
前記連通シャッタは、前記第1の急送管路を使用する際に開かれるよう制御される、請求項2に記載の放電加工機。
【請求項5】
前記汚液槽の液面下限は、前記清液槽の液面下限よりも高く設定され、
前記第1の連通路は、前記清液槽の前記液面下限よりも下方に設けられる、請求項1に記載の放電加工機。
【請求項6】
前記貯留袋に貯留可能な前記加工液の最大容量は、前記加工槽に貯留可能な前記加工液の最大容量の90%以上150%以下である、請求項1に記載の放電加工機。
【請求項7】
前記被加工物と電極との間に形成される加工間隙に前記加工液を噴出する噴流ノズルと、
前記清液槽内の前記加工液を汲み上げ前記噴流ノズルへ送る噴流ポンプと、をさらに備える、請求項1に記載の放電加工機。
【請求項8】
前記噴流ポンプにより前記清液槽内の前記加工液を直接前記加工槽へと送る第2の急送管路をさらに備え、
前記噴流ポンプは、送液先を前記噴流ノズルと前記第2の急送管路の一方に選択可能に構成される、請求項7に記載の放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工機は、加工槽中に被加工物を載置し、工具電極(以下、単に電極という)と電極に対向配置された被加工物とで形成される加工間隙に加工電圧を印加して放電を発生させるとともに、電極と被加工物とを相対移動させて放電エネルギにより被加工物を所望の形状に加工する。
【0003】
電極と被加工物との絶縁回復、被加工物の冷却、加工屑の除去等を目的として、加工間隙を加工液に浸漬したり、加工間隙に加工液を吹き付けたりする等して、放電加工中は加工間隙に絶縁性の加工液が供給される。
【0004】
加工液は、サービスタンクと呼ばれる槽に貯留されている。サービスタンクは、加工屑を含む加工液を貯留する汚液槽と、加工屑を除去した加工液を貯留する清液槽と、を含んで構成される。
【0005】
放電加工によって発生した加工屑を含む加工液は、加工槽から汚液槽へと排出される。汚液槽に貯留された加工液は、フィルタによって加工屑が除去され、清液槽へと送られる。清液槽に貯留された加工液は、再度加工槽へ送られ、加工間隙に供給される。このようにして、加工液は清浄に保たれながら、装置内を循環する。
【0006】
放電加工機の運転状況によって、サービスタンクにおける、加工屑を含む加工液(以下、単に汚液という)および加工屑を除去した加工液(以下、単に清液という)の水位と比率は変位する。一般的には、汚液槽および清液槽は、最大水位に合わせて、十分な容量に設計される。
【0007】
サービスタンクを小型に構成する上で、汚液と清液の容量比を変更可能に構成することが考えられる。特許文献1は、汚液槽と清液槽とを仕切る仕切板を水平方向に移動可能に構成した放電加工機を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サービスタンクにおいて汚液と清液の容量比を変更可能に構成するにあたり、より簡易な構成で容量比が変更可能であることが望ましい。また、サービスタンクにおける汚液と清液の実際の貯留比に応じて、随時適切に容量比が変更可能であることが望ましい。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より簡易な構成で、適切に汚液と清液の容量比を変更可能に構成されたサービスタンクを備える放電加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、被加工物が収容される加工槽と、加工槽から排出される加工液を貯留する汚液槽と、汚液槽から送られる加工液を貯留する清液槽と、汚液槽と清液槽とを区切り第1の連通路を有する仕切板と、を含むサービスタンクと、清液槽内に設けられ膨張可能な袋体と、袋体の袋口であり第1の連通路に接続されて汚液槽と連通する接続口と、を含む貯留袋と、汚液槽内の加工液を汲み上げる循環ポンプと、循環ポンプによって送られた加工液を濾過して清液槽に送るフィルタと、清液槽内の加工液を汲み上げ加工槽へ送る送液ポンプと、を備える、放電加工機が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る放電加工機では、加工液を貯留するための容器として、汚液槽と、清液槽と、貯留袋と、が設けられる。貯留袋は、清液槽内に設けられ膨張可能な袋体と、袋体の袋口であり汚液槽と連通する接続口と、を含む。汚液槽に供給された加工液は袋体に流入し、袋体は膨張する。汚液槽から清液槽に加工液が送られると、袋体に清液槽内の加工液の水圧が加わるので袋体は収縮し、袋体から汚液槽に加工液が流出する。このように、袋体の膨張・収縮は、汚液と清液の実際の貯留比に応じて自動的に為されるので、簡易かつ適正に、汚液と清液の容量比を変更することができる。また、汚液を貯留する汚液貯留部が汚液槽と貯留袋とを含んで構成されるので、汚液槽を従来と比べて小型に構成できる。ひいては、サービスタンクを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の放電加工機の概略構成を示す側面図である。
【
図2】サービスタンク周辺の概略構成を示す上面図である。
【
図6】加工準備中において、清液槽内の加工液が液面下限にある状態を示す。
【
図7】加工準備中において、連通シャッタが開状態である状態を示す。
【
図8】加工準備中において、加工槽に送液している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に説明される各種変形例は、それぞれ任意に組み合わせて実施することができる。
【0015】
本実施形態に係る放電加工機1は、電極としてワイヤ電極Eを使用するワイヤ放電加工機であるが、型彫放電加工機、細孔放電加工機等、他の放電加工機であってもよい。また、本実施形態においては、加工液Fとして純水を主成分とする水系加工液が使用されるが、油系加工液等、他の絶縁性の液体であってもよい。
【0016】
図1から
図3に示されるように、本実施形態の放電加工機1は、加工槽2と、サービスタンク3と、貯留袋4と、循環ポンプ51およびフィルタ52を含む循環管路5と、送液ポンプ61、純水器62および冷却器63を含む送液管路6と、噴流ポンプ71を含む噴流管路7と、を備える。
【0017】
加工槽2は、放電加工の対象となる被加工物Wを収容する。加工槽2には、被加工物Wを挟んで対向する上ガイド組体21と、下ガイド組体22と、が設けられる。上ガイド組体21および下ガイド組体22はそれぞれ、ワイヤ電極Eを案内するワイヤガイドと、被加工物Wとワイヤ電極Eとの間に形成される加工間隙に向かって加工液Fを噴出する噴流ノズル23と、を有する。ワイヤ電極Eまたは被加工物Wは相対移動可能に構成され、放電加工中において被加工物Wは所定の加工間隙をもってワイヤ電極Eと対向配置される。不図示の電源からワイヤ電極Eおよび被加工物Wにそれぞれ極性が異なる加工電圧が印加され、放電により被加工物Wの一部が除去される。
【0018】
上ガイド組体21には、加工槽液面センサ26が取り付けられ、加工槽液面センサ26は、加工槽2の液面上限PUを検出する。加工槽2の下部には、加工液Fを排出するドレンが設けられ、ドレンには、開閉可能に構成されたドレンシャッタ24が設けられる。ドレンシャッタ24は、エアシリンダ等の任意のアクチュエータであるドレンシャッタ駆動装置25により開閉される。ドレンシャッタ24に代えて、電磁弁等により加工槽2からの加工液Fの排出を制御してもよいが、ドレンシャッタ24は加工屑による動作不良を起こしにくい点で好ましい。
【0019】
サービスタンク3は、加工液Fを貯留する。サービスタンク3は、汚液槽31と、清液槽33と、仕切板35と、を含む。汚液槽31は、加工槽2から排出される加工液Fを貯留する。すなわち、汚液槽31は、基本的には汚液を貯留する。汚液槽31には、汚液槽31における加工液Fの液面下限DLを検出する汚液槽液面センサ32が設けられる。清液槽33は、汚液槽31からフィルタ52を介して送られる加工液Fを貯留する。すなわち、清液槽33は清液を貯留する。清液槽33には、清液槽33における加工液Fの液面下限CLを検出する清液槽液面センサ34が設けられる。汚液槽31の液面下限DLは、清液槽33の液面下限CLよりも高く設定される。清液槽33が液面下限CLを検出したときは、放電加工ならびに循環ポンプ51、送液ポンプ61および噴流ポンプ71の駆動を停止する。このとき、加工液Fの補充を促すメッセージを制御装置の表示装置等に表示してもよい。仕切板35は、汚液槽31と清液槽33とを区切る板状部材である。仕切板35は、汚液槽31と清液槽33とに連通する開口である、第1の連通路351と第2の連通路352とを有する。
【0020】
貯留袋4は、袋体41と、接続口42と、を含む。袋体41は膨張可能に構成され、清液槽31内に設けられる。袋体42は、その内部に加工液Fを貯留可能な程度の非透水性を有していればよい。すなわち、袋体42においては、加工液Fを貯留できる範囲で多少の透水性が許容され、完全な非透水性までは要求されない。袋体41はその機能を果たす限りにおいて任意の素材から構成されればよいが、例えば、高密度ポリエステルタフタが使用されてもよい。袋体41の下部は、脱着可能にサービスタンク3に固定されてもよい。例えば、袋体41の先端にフックを設け、フックを清液槽33内に設けた固定具に取り付け、袋体41を固定するようにしてもよい。また、袋体41の中に侵入した空気を脱気するため、袋体41の上部に脱気弁が設けられてもよい。接続口42は、袋体41の袋口であり、第1の連通路351と接続される。接続口42を介して、袋体41と汚液槽31との間で加工液Fの流入および流出が行われる。加工液Fの流入および流出を適正に行うようにするため、第1の連通路351は、清液槽33の液面下限CLよりも下方に設けられることが好ましい。
【0021】
以上のような構成によれば、汚液槽31に供給された加工液Fは接続口42を介して袋体41に流入し、袋体41は膨張する。また、汚液槽31から清液槽33に加工液Fが送られると、袋体41に清液槽33内の加工液Fの水圧が加わるので袋体41は収縮し、袋体41から汚液槽31に加工液が流出する。このように、袋体41の膨張・収縮は、汚液と清液の実際の貯留比に応じて自動的に為されるので、簡易かつ適正に、汚液と清液の容量比が変更される。
【0022】
また、汚液の大部分を袋体41に貯留することができるので、汚液槽31を従来よりも小型に構成できる。汚液槽31を小型に構成する上で、貯留袋4に貯留可能な加工液Fの最大容量は、加工槽2に貯留可能な加工液Fの最大容量と、略同等であることが好ましい。具体的には、貯留袋4に貯留可能な加工液Fの最大容量は、加工槽2に貯留可能な加工液Fの最大容量の90%以上150%以下であることが好ましく、95%以上110%以下であることがより好ましい。このとき、汚液槽31は、循環ポンプ51および汚液槽液面センサ32が設置可能な程度に小型であればよい。
【0023】
第2の連通路352には、開閉可能に構成された連通シャッタ36が設けられる。連通シャッタ36は、エアシリンダ等の任意のアクチュエータである連通シャッタ駆動装置37により開閉される。連通シャッタ36を開くことで、汚液槽31と清液槽33とが連通する。
【0024】
ここで、
図3を参照しながら、加工液Fの給排出経路について詳述する。本実施形態においては、加工液Fの給排出経路は、循環管路5と、送液管路6と、噴流管路7と、第1の急送管路8と、第2の急送管路9と、を備える。
【0025】
循環管路5は、汚液槽31内の加工液Fから加工屑を除去して清液槽33に送る。循環管路5は、汚液槽31と清液槽とに接続された配管と、当該配管に設けられた、循環ポンプ51と、フィルタ52と、電磁弁53と、を含む。循環ポンプ51は、汚液槽31内の加工液Fを汲み上げ、フィルタ52へと送る。フィルタ52は、循環ポンプ51によって送られた加工液Fを濾過して清液槽33へと送る。フィルタ52は、要求される濾過能力に応じて、複数設けられてもよい。
【0026】
送液管路6は、清液槽33内の加工液Fを加工槽2に送る。送液管路6は、清液槽33と加工槽2とに接続された配管と、当該配管に設けられた、送液ポンプ61と、電磁弁64と、を含む。また、送液管路6は、純水器62と、電磁弁65と、純水器62および電磁弁65が設けられる配管と、冷却器63と、電磁弁66と、冷却器63および電磁弁66が設けられる配管と、をさらに含む。純水器62および電磁弁65が設けられる配管と、冷却器63および電磁弁66が設けられる配管は、それぞれ、循環ポンプ51と電磁弁64との間の配管に接続される。純水器62は、例えばイオン交換樹脂を有するイオン交換装置であり、加工液Fの比抵抗値を適正な値に保つ。純水器62の制御に関して、放電加工機1は、比抵抗計を備えていてもよい。なお、加工液Fが水系加工液でない場合は、純水器62は省略される。冷却器63は、加工液Fの温度を適正な値に保つ。
【0027】
噴流管路7は、清液槽33内の加工液Fを噴流ノズル23に送る。噴流管路7は、清液槽33と噴流ノズル23とに接続された配管と、当該配管に設けられた、噴流ポンプ71と、電磁弁72と、を含む。
【0028】
第1の急送管路8は、循環管路5に接続される。第1の急送管路8は、循環ポンプ51および電磁弁53間の配管と加工槽2とに接続された配管と、当該配管に設けられた電磁弁81と、を含む。第1の急送管路8の配管は、直接加工槽2と接続されてもよいし、送液管路6と合流してもよい。電磁弁53,81を制御することで、循環ポンプ51の送液先を、フィルタ52と第1の急送管路8のいずれか一方に切り換えることができる。
【0029】
第2の急送管路9は、噴流管路7に接続される。第2の急送管路9は、噴流ポンプ71および電磁弁72間の配管と加工槽2とに接続された配管と、当該配管に設けられた電磁弁91と、を含む。第2の急送管路9の配管は、直接加工槽2と接続されてもよいし、送液管路6と合流してもよい。電磁弁72,91を制御することで、噴流ポンプ71の送液先を、噴流ノズル23と第2の急送管路9のいずれか一方に切り換えることができる。
【0030】
加工準備中において加工槽2に加工液Fを満たす際、送液管路6に加えて、第1の急送管路8および第2の急送管路9を使用して加工液Fの送液を行ってもよい。
【0031】
以上に説明した加工液Fの給排出経路はあくまで一例であり、これに限定されない。上述した以外の管路が設けられてもよく、例えば、ワイヤ放電加工機においては加工槽2において不図示の下アームが貫通する開口を覆うスライドプレートが設けられるが、スライドプレート付近に噴流を供給する管路が設けられてもよい。
【0032】
循環ポンプ51、送液ポンプ61および噴流ポンプ71は、
図1および
図2に示されるように、放電加工機1の背面側に集約して配置されてもよい。このようにすれば、各ポンプへのアクセスが容易となり、メンテナンス性がよい。また、本実施形態においては、フィルタ52はサービスタンク3上に配置されるが、各ポンプを背面側に集約して配置することで、フィルタ52の配置位置の自由度が増す。
【0033】
本実施形態の放電加工機1は、不図示の制御装置を備える。制御装置は、具体的には数字制御装置であり、CPU、RAM、ROM、補助記憶装置、出入力インターフェース等のハードウェアとソフトウェアを任意に組み合わせて構成される。制御装置は、加工液Fの給排出に関して、ドレンシャッタ24、連通シャッタ36、循環ポンプ51、送液ポンプ61、噴流ポンプ71および電磁弁53,64,65,66,72,81,91の制御を行う。
【0034】
ここで、
図4から
図9を参照しながら、以上に説明した放電加工機1における加工液Fの給排出に係る制御方法の例を説明する。各図において、実線で記載されている経路は、その時点で使用されている経路を示す。破線で記載されている経路は、その時点で使用されていない経路を示す。鎖線で記載されている経路は、必要に応じて使用される経路を示す。なお、以下においては、加工間隙を加工液Fに浸漬して放電加工を行う浸漬加工を実施する場合の動作を例にして説明するが、本実施形態の放電加工機1においては種々の放電加工方法が実施可能である。
【0035】
被加工物Wに対する放電加工が完了した後、加工槽2からサービスタンク3への排液が開始される。
図3および
図4は、排液時の状態を示している。まず、ドレンシャッタ24が開かれ、加工槽2から汚液槽31に汚液が排出される。汚液槽31に排出された汚液は、接続口42を介して袋体41へと流入し、袋体41は膨張する。汚液槽31内の汚液は、循環ポンプ51によってフィルタ52へと送られ、加工屑が除去された清液として清液槽33へと供給される。
【0036】
好ましくは、排液と並行して、純水器62および冷却器63が使用され、加工液Fの比抵抗値および温度が所定の値に維持される。電磁弁64が閉じ、電磁弁65が開いた状態で送液ポンプ61が駆動し、清液槽33内の清液が純水器62を通った後に再度清液槽33に戻されることで、加工液Fの比抵抗値が適正に保たれる。本実施形態においては、排液中、電磁弁65は加工液Fの比抵抗値に応じて開閉される。電磁弁64が閉じ、電磁弁66が開いた状態で送液ポンプ61が駆動し、清液槽33内の清液が冷却器63を通った後に再度清液槽33に戻されることで、加工液Fの温度が適正に保たれる。本実施形態においては、排液中、電磁弁66は常時開かれる。
【0037】
加工槽2の排液完了後も、引き続き、循環ポンプ51およびフィルタ52による加工液Fの浄化と、送液ポンプ61、純水器62および冷却器63による比抵抗値および温度の調節が行われる。排液中と同じく、純水器62は必要に応じて使用され、冷却器63は常時使用される。加工液Fの浄化が進むにつれ、汚液槽31および袋体41内の汚液は減少し、清液槽33内の清液は増加する。これに伴い、袋体41は徐々に収縮する。
図6は、汚液槽31内の液面が液面下限DLに到達した直後の状態を示している。
【0038】
汚液槽31内の液面が液面下限DLに到達したことが検出されると、連通シャッタ36が開かれる。
図7に示される通り、第2の連通路352を介して、清液槽33内の清液が汚液槽31に流入する。連通シャッタ36が開かれた後、循環ポンプ51は駆動したままでもよいが、エネルギ消費を抑える上では、連通シャッタ36後の適当なタイミングで停止されることが好ましい。
【0039】
本実施形態の例では、加工液Fの浄化後、次の加工のため加工槽2に加工液Fが送液されるが、次の加工をすぐに実施しない場合は、加工液Fの浄化を完了した段階で放電加工機1を停止させることが望ましい。換言すれば、放電加工を行った後は、加工槽2からの排液を行い、汚液槽31内の液面が液面下限DLに到達するまで循環ポンプ51を駆動させて、加工液Fの浄化を完了させた状態で、放電加工機1を停止させることが望ましい。
【0040】
清液槽33および汚液槽31内にともに清液が貯留された状態で、加工槽2に加工液Fが送液される。このとき、送液管路6に加えて、第1の急送管路8および第2の急送管路9を使用して、加工槽2に加工液Fが供給される。
図8に示されるように、まず、加工槽2のドレンシャッタ24が閉じられる。送液管路6においては、電磁弁64が開かれ、送液ポンプ61が駆動される。迅速に送液を行う上で、電磁弁65,66は閉じられることが好ましい。循環管路5および第1の急送管路8においては、電磁弁53が閉じられ、電磁弁81が開かれた状態で、循環ポンプ51が駆動される。噴流管路7および第2の急送管路9においては、電磁弁72が閉じられ、電磁弁91が開かれた状態で、噴流ポンプ71が駆動される。加工槽2の液面が液面上限PUに到達した時点で、加工槽2が満水になったと判断される。満水後、電磁弁81,91は閉じられ、第1の急送管路8および第2の急送管路9の使用は停止される。
【0041】
循環ポンプ51、送液ポンプ61、噴流ポンプ71の3つのポンプを使用して送液を行うことで、より迅速に加工槽2内に加工液Fを充填させることができる。本実施形態においては、連通シャッタ36は、第1の急送管路8を使用する際に開かれるよう制御される。すなわち、加工液Fの浄化後に連通シャッタ36を開くことで汚液槽31にも清液を貯留するので、汚液槽31に設けられている循環ポンプ51も加工槽2への送液に利用することができる。
【0042】
加工槽2に十分な量の加工液Fが供給された後、放電加工が行われる。
図9は加工中の状態を示している。加工槽2においては、ドレンシャッタ24が加工槽液面センサ26の検出信号に応じて開閉されることで、加工液Fの液面が液面上限PUに保たれる。循環管路5においては、汚液槽31内の加工液Fが循環ポンプ51によって汲み上げられ、フィルタ52を介して清液槽33へと送られる。送液管路6においては、清液槽33内の加工液が送液ポンプ61によって汲み上げられ、加工槽2へと送られる。送液ポンプ61によって汲み上げられた加工液の一部は、純水器62または冷却器63へと送られる。加工中は、電磁弁65は加工液Fの比抵抗値に応じて開閉され、必要時のみ純水器62が使用される。加工中は、電磁弁66は常時開かれ、常時冷却器63が使用される。噴流管路7においては、清液槽33内の加工液が噴流ポンプ71によって汲み上げられ、噴流ノズル23へと送られる。このようにして、加工槽2とサービスタンク3との間で、加工液Fが浄化されながら循環する。
【0043】
加工中、汚液槽31から清液槽33に送られる加工液Fの量は、清液槽33から加工槽2に送られる加工液Fの量よりも多くなるように構成される。すなわち、本実施形態においては、加工液Fに関して、「(循環ポンプ51の吐出量)>(送液ポンプ61の吐出量)-(純水器62および冷却器63からの戻り量)+(噴流ポンプ71の吐出量)」が成り立つよう構成される。
【0044】
このとき、連通シャッタ36は、加工中に常時開かれるよう制御されてもよい。汚液槽31から清液槽33に送られる加工液Fの量が、清液槽33から加工槽2に送られる加工液Fの量よりも多いとき、清液槽33から汚液槽31への加工液Fの流れが常時形成される。そのため、連通シャッタ36を常時開いていても、汚液槽31内の汚液が清液槽33内に流出する虞が少ない。このようにすれば、汚液槽31と清液槽33の液面が同一となるので、汚液槽31の加工液が不足することを防止できる。
【0045】
あるいは、連通シャッタ36は、加工中に必要に応じて開かれるよう制御されてもよい。例えば、汚液槽31の液面が液面下限DLに到達したときに、所定時間だけ連通シャッタ36が開かれるように制御されてもよい。汚液槽31から清液槽33に送られる加工液Fの量が、清液槽33から加工槽2に送られる加工液Fの量よりも多いとき、清液槽33の液面の方が汚液槽31の液面よりも高くなるので、連通シャッタ36を開くと、水圧により清液槽33内の清液が汚液槽31に流入する。このようにしても、汚液槽31の加工液が不足することを防止できる。
【0046】
本発明は、既にいくつかの例が具体的に示されているように、図面に示される実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で種々の変形または応用が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 放電加工機
2 加工槽
23 噴流ノズル
3 サービスタンク
31 汚液槽
DL 液面下限
33 清液槽
CL 液面下限
35 仕切板
351 第1の連通路
352 第2の連通路
36 連通シャッタ
4 貯留袋
41 袋体
42 接続口
51 循環ポンプ
52 フィルタ
61 送液ポンプ
71 噴流ポンプ
8 第1の急送管路
9 第2の急送管路
E ワイヤ電極
F 加工液
W 被加工物
【要約】 (修正有)
【課題】より簡易な構成で、適切に汚液と清液の容量比を変更可能に構成されたサービスタンクを備える放電加工機を提供する。
【解決手段】被加工物Wが収容される加工槽2と、加工槽2から排出される加工液を貯留する汚液槽31と、汚液槽31から送られる加工液を貯留する清液槽33と、汚液槽31と清液槽33とを区切り第1の連通路を有する仕切板35と、を含むサービスタンク3と、清液槽33内に設けられ膨張可能な袋体41と、袋体41の袋口であり第1の連通路に接続されて汚液槽31と連通する接続口42と、を含む貯留袋4と、汚液槽31内の加工液を汲み上げる循環ポンプと、循環ポンプによって送られた加工液を濾過して清液槽33に送るフィルタ52と、清液槽33内の加工液を汲み上げ加工槽2へ送る送液ポンプ61と、を備える、放電加工機1が提供される。
【選択図】
図1