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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】フィルタ交換用装置および部品実装装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20230711BHJP
【FI】
H05K13/04 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022510319
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020013984
(87)【国際公開番号】W WO2021192215
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和広
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/046919(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/104789(WO,A1)
【文献】特開平11-180497(JP,A)
【文献】特開2000-142885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
B25J 15/06
B01D 46/00-46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に凹部を有するノズルシャフトと、前記凹部内に配置されて前記ノズルシャフトに保持されるフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に着脱可能に装着される吸着ノズルとを備える、少なくとも一つの部品吸着ヘッドが装備された部品実装装置における前記フィルタの交換用装置であって、
先端部にカエシを備えた軸状の針部材と、
前記針部材の先端部が前記フィルタに突き刺さって当該フィルタに係合するように、前記吸着ノズルが取り外された状態の前記ノズルシャフトに対してその軸方向に前記針部材を相対的に移動させることが可能な移動機構と、を備えることを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフィルタ交換用装置において、
先端面を有しかつ当該先端面から突出する突出位置と前記先端面から内部に引き下がった退避位置とに亘って前記針部材が出没可能に収納される針収容部材をさらに備え、
前記移動機構は、前記針収容部材に対して前記突出位置と前記退避位置との間で前記針部材を相対的に移動させる機構と、前記ノズルシャフトに対して前記針部材を前記針収容部材と共に前記軸方向に移動させる機構とを含む、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタ交換用装置において、
前記針収容部材の先端面は、ノズルシャフトの軸方向に沿って交換用の前記フィルタを前記凹部に押し込むことが可能なフィルタ押込部を含む、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のフィルタ交換用装置において、
前記針部材を前記退避位置に向かって付勢する付勢部材をさらに備える、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一項に記載のフィルタ交換用装置において、
前記針部材を前記退避位置にロックすることが可能なロック機構をさらに備える、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一項に記載のフィルタ交換用装置において、
前記突出位置に針部材が配置された状態において少なくとも針部材の先端部を包囲するカバー部材をさらに備える、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載のフィルタ交換用装置において、
前記ノズルシャフトの先端に対して前記針部材を位置決めするための位置決め部材をさらに備える、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項8】
請求項に記載のフィルタ交換用装置において、
前記カバー部材が前記ノズルシャフトの先端に嵌合可能な形状を有することにより、当該カバー部材が前記ノズルシャフトの先端に対して前記針部材を位置決めするための機能を兼ね備えている、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項9】
請求項1乃至の何れか一項に記載のフィルタ交換用装置において、
部品実装装置は、所定方向に一定間隔で配列された複数の前記部品吸着ヘッドを備えるものであり、
当該フィルタ交換用装置は、前記部品吸着ヘッドと同じ数及び同じ配列で設けられた複数の前記針部材を備え、
前記移動機構は、前記複数の針部材を、前記ノズルシャフトに対して一体に移動させる、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載のフィルタ交換用装置において、
前記移動機構を駆動するアクチュエータを備える、ことを特徴とするフィルタ交換用装置。
【請求項11】
先端に凹部を有するノズルシャフトと、前記凹部内に配置されて前記ノズルシャフトに保持されるフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に着脱可能に装着される吸着ノズルとを備える、少なくとも一つの部品吸着ヘッドと、
前記部品吸着ヘッドの可動領域内に配置される、請求項に記載のフィルタ交換用装置と
前記移動機構を駆動するアクチュエータとを備える、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項12】
請求項11に記載の部品実装装置において、
前記フィルタ交換用装置は、前記針収容部材を備えるものであって、
当該部品実装装置は、前記移動機構を駆動制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、
前記吸着ノズルが取外されかつ所定位置に配置された前記ノズルシャフトに対して、前記針部材を前記突出位置に配置した状態で前記針収容部材と共に進退駆動することにより前記フィルタを前記凹部から取り外す動作と、
前記針部材を前記突出位置から前記退避位置に変位させることにより、前記針部材の先端部から前記フィルタを取り外す動作と、を含む、フィルタ取外し動作処理を実行する、ことを特徴とする部品実装装置。
【請求項13】
請求項12に記載の部品実装装置において、
前記針収容部材の先端面は、ノズルシャフトの軸方向に沿って交換用の前記フィルタを前記凹部に押し込むことが可能なフィルタ押込部を備え、
当該部品実装装置は、交換用のフィルタを供給するフィルタ供給部をさらに備え、
前記制御装置は、
前記フィルタ取外し動作処理の後、前記フィルタ供給部が供給する交換用のフィルタを前記ノズルシャフトに吸着させて、その先端に仮保持させる動作と、
交換用のフィルタが仮保持された前記ノズルシャフトを前記所定位置に配置し、かつ前記針部材を退避位置に配置した状態で前記針収容部材を進退駆動することにより、交換用のフィルタを前記針収容部材の前記フィルタ押込部で前記凹部内に押し込む動作と、を含むフィルタ取付動作処理を実行する、ことを特徴とする部品実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装装置の部品吸着ヘッド内に備えられたフィルタを交換するために使用されるフィルタ交換用装置、及びこのフィルタ交換用装置を備えた部品実装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
部品供給部から供給される電子部品等の部品を、部品吸着ヘッドによりピックアップしてプリント配線板などの基板上に搭載(実装)する部品実装装置が公知である。部品吸着ヘッドは、ノズルシャフトとその先端に装着された、部品吸着用のノズル(吸着ノズルという)とを備えている。ノズルシャフトの内部には、負圧発生装置に繋がる通路が設けられており、当該通路を通じて吸着ノズルの先端に負圧が供給される。部品吸着ヘッドは、この負圧により吸着ノズルの先端に部品を吸着した状態で、部品供給部から基板上に部品を搬送する。
【0003】
部品吸着ヘッドにおける負圧経路上には、異物を除去するためのフィルタが配置されている。例えば特許文献1に開示される部品実装装置では、吸着ノズルの内部に円盤状のフィルタが備えられている。フィルタは、吸着ノズルの側壁面に形成された第1開口部(挿入孔)を通じて、当該吸着ノズルの内部に装着されている。吸着ノズルの側壁面のうち前記第1開口部に対向する位置には第2開口部(押出棒挿入孔)が設けられており、フィルタ交換時には、この第2開口部から押出棒を挿入してフィルタを第1開口部から外部に押し出すことができるようになっている。
【0004】
しかし、特許文献1のような構造は些か特殊であり、生産性やコスト面、さらには第1、第2開口部による負圧リークを避ける観点から、例えば次のような部品吸着ヘッドの構造が採用される場合が多い。すなわち、ノズルシャフトの先端(下端部)にその軸方向に延びる凹部(段付孔)が設けられ、この凹部内にフィルタが配置された状態で、当該ノズルシャフトの先端に吸着ノズルが装着される。
【0005】
負圧経路上にフィルタが備えられる部品実装装置では、部品の実装が繰り返し実施されることによりフィルタに目詰まりが発生する。フィルタの目詰まりを放置すると、部品の吸着力が低下して部品の吸着ミスに繋がるため、フィルタの定期的な交換が必要となる。この場合、第2開口部に押出棒を挿入してフィルタを第1開口部から押し出すことができる特許文献1の構成によれば、フィルタの取り出しは比較的容易と言える。しかし、ノズルシャフト先端の凹部(段付孔)にフィルタが装着される部品吸着ヘッドの構造では、細い棒状の部材でフィルタを凹部から掻き出さざるを得ず、フィルタの取外し、ひいてはフィルタの交換が煩雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-17509号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ノズルシャフト内に配置されたフィルタの交換作業の作業性向上に寄与する技術を提供することを目的とする。
【0008】
そして、本発明は、先端に凹部を有するノズルシャフトと、前記凹部内に配置されて前記ノズルシャフトに保持されるフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に着脱可能に装着される吸着ノズルとを備える、少なくとも一つの部品吸着ヘッドが装備された部品実装装置における前記フィルタの交換用装置であって、先端部にカエシを備えた軸状の針部材と、前記吸着ノズルが取り外された状態の前記ノズルシャフトに対してその軸方向に前記針部材を相対的に移動させる移動機構と、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る部品実装装置を示す平面図である。
図2】ヘッドユニットの要部斜視図である。
図3A】部品吸着ヘッドの先端部分の断面図である。
図3B】吸着ノズルが取り外された状態の部品吸着ヘッド(ノズルシャフト)の先端部分の断面図である。
図4】フィルタ交換装置の概略断面図である。
図5A】偏心カムがホームポジションから90°回転した状態を示す模式図である。
図5B】偏心カムがホームポジションから180°回転した状態を示す模式図である。
図6】フィルタフィーダによるフィルタ供給方法を説明する斜視図である。
図7】部品実装装置の制御系を示すブロック図である。
図8】制御装置によるフィルタ交換処理の制御を示すフローチャートである。
図9】フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置の動作を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図10】フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置の動作を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図11】フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置の動作を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図12】フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置の動作を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図13】フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置の動作を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図14】フィルタの供給方法の変形例を説明する斜視図である。
図15】本発明の第2実施形態に係るフィルタ交換装置の断面概略図である。
図16】フィルタ交換装置を用いたフィルタ交換作業の手順を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図17】フィルタ交換装置を用いたフィルタ交換作業の手順を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図18】フィルタ交換装置を用いたフィルタ交換作業の手順を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図19】フィルタ交換装置を用いたフィルタ交換作業の手順を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図20】フィルタ交換装置を用いたフィルタ交換作業の手順を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
図21】フィルタ交換装置の作用効果を説明する、同フィルタ交換装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
[1.部品実装装置の全体構成]
図1は、本発明に係る部品実装装置を平面図で示している。なお、図面中には、方向関係を明確にするために、XYZ直角座標軸を示している。X方向は水平面と平行な方向であり、Y方向は水平面上でX方向と直交する方向であり、Z方向はX、Y両方向に直交する方向、すなわち上下方向である。
【0012】
部品実装装置1は、平面視矩形の基台1aと、この基台1a上でプリント配線板等の基板Pを搬送する基板搬送機構2と、部品供給部3と、ヘッドユニット6と、このヘッドユニット6を駆動するヘッドユニット駆動機構と、ノズル交換装置9と、部品認識カメラ8と、フィルタ交換装置18(本発明の「フィルタ交換用装置」に相当する)とを備えている。
【0013】
基板搬送機構2は、基板PをX方向に搬送する一対のコンベア2aと、当該コンベア2aによって搬送される基板Pを位置決めする図外の位置決め機構とを備えている。コンベア2aは、いわゆるベルトコンベアである。コンベア2aは、その一方側(X1側)から基板Pを受け入れて所定の実装作業位置(同図に示す基板Pの位置)に搬送し、実装作業後、基板Pを他方側(X2側)に搬出する。位置決め機構は、基板Pをコンベア2aから持ち上げて上記実装作業位置に位置決めする。
【0014】
部品供給部3は、基板搬送機構2の両側(Y1側及びY2側)に各々設けられている。当例では、各部品供給部3は、基台1aに対して一体的に組み込まれた固定型のものであるが、基台1aに対して着脱可能な台車型のものであってもよい。
【0015】
部品供給部3には、コンベア2aに沿って複数のテープフィーダが着脱可能に配置されている。複数のテープフィーダには、テープを担体(キャリア)として、IC、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の電子部品(以下、単に部品と称す)を供給する部品フィーダ4と、後記部品吸着ヘッド20(ノズルシャフト22)内に備えられるフィルタ28、つまり、交換用のフィルタ28を供給するフィルタフィーダ5とが含まれる。
【0016】
部品フィーダ4は、部品を収納、保持した前記テープが巻回されたリールを備え、このリールから間欠的にテープを繰り出しながら所定の部品供給位置に部品を供給する。同様に、フィルタフィーダ5は、フィルタ28を収納、保持した前記テープが巻回されたリールを備え、このリールから間欠的にテープを繰り出しながら所定のフィルタ供給位置に交換用のフィルタ28を供給する。このフィルタフィーダ5については、後に詳述する。
【0017】
部品供給部3に配置されるテープフィーダの大部分は部品フィーダ4である。フィルタフィーダ5は、後述するフィルタ交換装置18の近傍の位置、当例では、片側(Y2側)の部品供給部3の端部(X1側端部)に1又は2つ配置されている(図1ではハッチングを付してフィルタフィーダ5を示している)。
【0018】
前記ヘッドユニット6は、部品供給部3の各部品フィーダ4から部品を取り出して基板P上に実装するものであり、ヘッドユニット駆動機構の作動により一定の領域内でX方向およびY方向に移動する。
【0019】
ヘッドユニット駆動機構は、高架フレームに固定された固定レール10に沿ってY方向に移動自在なユニット支持部材11と、このユニット支持部材11を、ボールねじ軸12を介して駆動するY軸サーボモータ13と、ユニット支持部材11に対してヘッドユニット6をX方向に移動自在に支持する固定レール14と、ヘッドユニット6を、ボールねじ軸15を介して駆動するX軸サーボモータ16とを含む。これらサーボモータ13、16の駆動により、ヘッドユニット6が予め定められたX-Y面内の任意の位置に移動する。なお、ヘッドユニット駆動機構は、リニアモータを駆動源としてユニット支持部材11やヘッドユニット6をダイレクトに駆動する構成であってもよい。
【0020】
図2は、ヘッドユニット6の要部斜視図である。同図に示すように、ヘッドユニット6は、Y方向に延びる中心軸Ax1の周りに配置された軸状の複数の部品吸着ヘッド20と、これら部品吸着ヘッド20を駆動する部品吸着ヘッド駆動機構とを備えている。要するに、ヘッドユニット6は、ロータリヘッドと称されるタイプのヘッドユニット構造を有している。
【0021】
部品吸着ヘッド駆動機構は、中心軸Ax1周りに前記複数の部品吸着ヘッド20を回転(公転/N方向に回転)させるための公転機構と、各部品吸着ヘッド20を選択的に上下方向(Z方向)に移動させるための昇降機構と、各部品吸着ヘッドをその中心軸Ax2回りに回転(自転/R方向に回転)させるための自転機構とを含む。
【0022】
公転機構は、ヘッドユニット6のフレームに相当する図外のユニット本体部に回転自在に支持された上下方向に延びる主回転軸30と、この主回転軸30の下端部に固定されたドラム型のヘッド保持体31と、駆動源としてのN軸サーボモータ32とを含む。なお、前記中心軸Ax1は、主回転軸30の中心を通る仮想軸である。
【0023】
ヘッド保持体31には、中心軸Ax1を中心とする円周上に、当該ヘッド保持体31を各々上下方向に貫通しかつ当該ヘッド保持体31に対して各々回転自在に支持された複数のシャフトホルダ33が備えられている。これらシャフトホルダ33内に各々前記部品吸着ヘッド20が保持されている。この構成により、N軸サーボモータ32が作動すると、ヘッド保持体31と一体に前記複数の部品吸着ヘッド20が中心軸Ax1周りに回転(公転)する。
【0024】
部品吸着ヘッド20は、相対的な上下動が可能でかつ相対的な回転が不能となるようにシャフトホルダ33に支持されたノズルシャフト22と、ノズルシャフト22の先端(下端)に着脱可能に装着された吸着ノズル25とを備えている(図3A参照)。ノズルシャフト22の外周にはコイルバネ34が装着されている。コイルバネ34は、ノズルシャフト22の上端に固定されたバネ止めボルト35とシャフトホルダ33の上端部との間に圧縮された状態で介設されている。この構成により、部品吸着ヘッド20が、コイルバネ34の弾発力によって上方(Z1方向)に付勢されている。
【0025】
各部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22は、その内部にシャフト内通路24(図3A参照)を備えており、当該シャフト内通路24は、負圧/正圧切替バルブ52を介して負圧発生装置53及び正圧発生装置54に連通可能となっている。この構成により、部品供給部3からの部品取出時には、吸着ノズル25に負圧が供給されてその先端に部品が吸着保持され、基板Pへの部品搭載時には、吸着ノズル25に正圧が供給されて部品が吸着状態から開放される。
【0026】
自転機構は、主回転軸30を包囲するように配置されて中心軸Ax1に沿って伸びる筒状の自転用回転軸37と、この自転用回転軸37を駆動するR軸サーボモータ39とを含む。
【0027】
自転用回転軸37は、主回転軸30及びヘッド保持体31に対してベアリングを介して相対回転に支持されており、その上端部に自転用第1従動ギア38aを、下端部に自転用第2従動ギア38bを備えている。自転用第1従動ギア38aは、R軸サーボモータ39の出力軸に固定された自転用駆動ギア39aに噛合しており、自転用第2従動ギア38bは、前記各シャフトホルダ33の外周面に形成された自転用第3従動ギア33aに噛合している。この構成により、R軸サーボモータ39が作動すると、その回転駆動力が自転用駆動ギア39a及び各従動ギア33a、38a、38bを介してシャフトホルダ33に伝達され、当該シャフトホルダ33と共に部品吸着ヘッド20(ノズルシャフト22)が回転(自転)する。全てのシャフトホルダ33の自転用第3従動ギア33aは自転用第2従動ギア38bに噛合しており、よって、R軸サーボモータ39が作動すると、全ての部品吸着ヘッド20が一体に同一方向に回転する。
【0028】
昇降機構は、部品吸着ヘッド20を押し下げるための押下部材40と、部品吸着ヘッド20を押し下げるべく押下部材40を上下方向に移動させる押下機構と、押下部材40を中心軸Ax1周りに旋回させる旋回機構とを含む。
【0029】
旋回機構は、主回転軸30を包囲するようにその外周面上に設けられた円筒状の軸状体42と、この軸状体42を包囲するようにその外周面上に設けられた筒状の可動体43と、駆動源としてのT軸サーボモータ44とを含む。可動体43の外周部に前記押下部材40が設けられている。
【0030】
軸状体42は、主回転軸30及び自転用回転軸37に対して相対的な回転のみが可能となるように設けられ、その上端部には旋回用従動ギア42aが備えられている。旋回用従動ギア42aは、T軸サーボモータ44の出力軸に固定された旋回用駆動ギア44aに噛合している。この構成により、T軸サーボモータ44が作動すると、その回転駆動力が旋回用駆動ギア44a及び旋回用従動ギア42aを介して可動体43に伝達され、当該可動体43と共に押下部材40が中心軸Ax1周りに旋回する。
【0031】
押下機構は、上下方向に延びるねじ軸46と、これを回転駆動するZ軸サーボモータ47と、ボールねじ軸46に螺合装着されたナット部材48と、このナット部材48と前記可動体43を連結する連結部材49とを備えている。可動体43は連結部材49に対して相対回転が可能に連結されている。この構成により、Z軸サーボモータ47が作動すると、ねじ軸46が回転して可動体43がナット部材48と共にねじ軸46に沿って移動し、その結果、押下部材40が上下方向に移動する。
【0032】
つまり、昇降機構は、T軸サーボモータ44の作動により押下部材40を中心軸Ax1周りに移動させて任意の部品吸着ヘッド20の上方に配置した後、Z軸サーボモータ47の作動により押下部材40を下方に移動させる。これにより、任意の部品吸着ヘッド20を押下部材40で押し下げる。その後、T軸サーボモータ44が反転駆動されて押下部材40が上方に移動すると、前記コイルバネ34の弾発力によって押下部材40に追従するように部品吸着ヘッド20が上昇する。
【0033】
なお、軸状体42の外周にはコイルバネ50が装着されている。コイルバネ50は、軸状体42の下端部近傍の外周に形成された鍔部42bと可動体43の下面との間に圧縮された状態で介設されている。この構成により、可動体43(押下部材40)がナット部材48に追従して上下方向に移動するようになっている。
【0034】
ヘッドユニット6は、さらに基板認識カメラ7を備えている。基板認識カメラ7は、基板Pの識別や位置決めのために、ヘッドユニット6と共に移動して、基板Pの上面に記された各種マークを上方から撮像するものである。
【0035】
図1に示すように、基台1aの上面であって、前記ヘッドユニット6の可動範囲内には、前記部品認識カメラ8、前記ノズル交換装置9及び前記フィルタ交換装置18が配置されている。
【0036】
部品認識カメラ8は、図1に示すように、基台1a上の各部品供給部3と基板搬送機構2との間の位置にそれぞれ配設されている。部品認識カメラ8は、部品吸着ヘッド20によって部品供給部3から取り出された部品の吸着状態を認識するために、当該部品を下側から撮像するものである。
【0037】
フィルタ交換装置18は、部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22内に備えられるフィルタ28を交換するもの、つまり、フィルタ28をノズルシャフト22から取り外して、新たなフィルタ28をノズルシャフト22内に取り付けるためのものである。
【0038】
ここで、図3A及び図3Bを用いて、フィルタ28を含む、部品吸着ヘッド20の構成について詳しく説明する。図3Aは、部品吸着ヘッド20の先端部分の断面図であり、図3Bは、吸着ノズル25が取り外された状態の部品吸着ヘッド20、すなわちノズルシャフト22の先端部分の断面図である。
【0039】
部品吸着ヘッド20は、上述した通り、ノズルシャフト22と、ノズルシャフト22の先端(下端)に着脱可能に装着された吸着ノズル25とを備えている。
【0040】
吸着ノズル25は、ノズルシャフト22の先端部に装着(外嵌)されるノズルホルダ26cと、このノズルホルダ26cの先端部に対して上下方向に移動可能に保持されるノズル本体26aと、ノズルホルダ26cに対してノズル本体26aを下方に付勢するコイルバネ26bとを備えている。この構成により部品吸着自および部品装着時にはノズル本体26aを弾性的に変位させて衝撃を吸収する。
【0041】
ノズル本体26a及びノズルホルダ26cは筒状に形成されており、図3Aに示すように、ノズルシャフト22の先端部に吸着ノズル25(ノズルホルダ26c)が装着された状態では、ノズルシャフト22の軸心に沿って形成された前記シャフト内通路24と吸着ノズル25の内部とが後記フィルタ28を介して連通する。この構成により、吸着ノズル25の先端に負圧発生装置53からの負圧又は正圧発生装置54からの正圧が供給可能となっている。
【0042】
図3Bに示すように、ノズルシャフト22の先端部には、上向きに凹みかつ前記シャフト内通路24に連通する凹部23(段付孔)が形成されている。凹部23の内径はシャフト内通路24の内径より大きい。換言すれば、シャフト内通路24のうちノズルシャフト22の先端部の内径がその他の部分の内径よりも大きく設定されているとも言える。
【0043】
前記凹部23には、フィルタ28が保持されている。フィルタ28は、負圧供給時に吸着ノズル25から吸引される埃等の異物を捕捉するものである。フィルタ28は、底壁部28aと周壁部28bとを備えた有底円筒状の形状を有しており、全体が紙材料で一体に形成されている。図3Bに示すように、フィルタ28は、その開口側(底壁部28aとは反対側)から凹部23に嵌入されて当該凹部23の奥端部に突き当てられている。凹部23の内周面には、内向きに突出する無端状の鍔部23aが形成されており、フィルタ28は、その弾発力で凹部23内に保持されるとともに、当該鍔部23aにより抜止めされている。
【0044】
フィルタ28は、吸着ノズル25が異物を吸引することにより目詰まりを起こす。このようなフィルタ28の目詰まりは、前記負圧による部品の吸着力を低下させ、最悪の場合には部品の吸着ミスに繋がるため定期的な交換が必要となる。前記フィルタ交換装置18は、このフィルタ28の交換を行うためのものであり、後に詳述することにする。
【0045】
ノズル交換装置9は、部品吸着ヘッド20の吸着ノズル25を交換するためのものである。詳細図を省略するが、このノズル交換装置9は、吸着ノズル25を挿入可能な複数のスロット(凹部)と、スロット内に挿入された吸着ノズル25を挟持するチャック機構とを備える。つまり、吸着ノズル25の交換時には、部品吸着ヘッド20の下降動作により吸着ノズル25がスロット内に挿入される。そして、チャック機構により吸着ノズル25が挟持された後、部品吸着ヘッド20の上昇動作により、吸着ノズル25が部品吸着ヘッド20(ノズルシャフト22)から取り外されてノズル交換装置9に保持される。その後、別のスロット内に保持されている吸着ノズル25に対して上記と逆の動作が実行されることにより、ノズルシャフト22(部品吸着ヘッド20)に新たな吸着ノズル25が装着される。
【0046】
上述した部品実装装置1における部品の実装動作は次の通りである。まず、ヘッドユニット6が部品供給部3上に移動し、各部品吸着ヘッド20によりテープフィーダ4から部品の取り出しが行われる。その後、ヘッドユニット6が最寄りの部品認識カメラ8上を通過することにより、各部品吸着ヘッド20に吸着された部品が当該部品認識カメラ8に撮像され、部品の吸着状態が認識される。そして、ヘッドユニット6が基板P上に移動し、各部品吸着ヘッド20の吸着部品が順次基板Pに実装される。このとき、部品認識結果に応じてヘッドユニット6の位置及び各部品吸着ヘッド20の回転(自転)角度等が制御されることで、基板Pの各搭載点に部品が適切に実装される。これにより実装動作の一サイクルが終了し、必要に応じてこの動作が繰り返されることで所要数の部品が基板Pに実装される。そして、予め設定されたタイミングで、前記フィルタ交換装置18により各部品吸着ヘッド20のフィルタ28の交換が行われる。
【0047】
[フィルタ交換装置18の全体構成]
フィルタ交換装置18は、図1に示すように、基台1aの上面であって、一方側(Y2側)の部品供給部3の一端(X1側端)の近傍位置に配置されている。当例では、フィルタ交換装置18は、ノズル交換装置9に隣接して配置されている。
【0048】
図4は、フィルタ交換装置18の概略断面図である。同図に示すように、フィルタ交換装置18は、交換ヘッド70と、この交換ヘッド70を支持する一対のフレーム60と、交換ヘッド70を駆動する交換ヘッド駆動機構と、使用済みのフィルタ28を回収するフィルタ回収部83とを備えている。
【0049】
前記一対のフレーム60は、X方向に所定間隔を隔てて配置されており、これらフレーム60の間に交換ヘッド70が配置されている。交換ヘッド70は、同一軸線上に配置された一対の支持軸61を介して各フレーム60に対して回転自在に支持されている。詳しくは、図外のベアリング等を介してフレーム60に各支持軸61が回転自在に支持され、これら支持軸61に交換ヘッド70が固定されている。この構成により、図4の実線に示すように交換ヘッド70が上向きとなる(Z1方向を向く)第1ポジションP1と、二点鎖線で示すように交換ヘッド70が下向きとなる(Z2方向を向く)第2ポジションP2との間で、交換ヘッド70が各支持軸61の中心(中心軸Ax3)回りに変位(回動)可能となっている。なお、各支持軸61は、円筒状の軸体である。
【0050】
交換ヘッド70は、各支持軸61に固定されたヘッド本体部72と、このヘッド本体部72に対して各々変位可能な第1可動部74及び第2可動部76と、前記ヘッド本体部72の先端部に連結されたカバー部78とを備えている。なお、以下の説明では、便宜上、交換ヘッド70が第1ポジションP1に配置されている図4に示す状態に基づいて、交換ヘッド70の各部の構成について説明する。
【0051】
ヘッド本体部72は、X方向に間隔を隔て配置される一対のアーム部72aと、その上端(先端)に一体に備えられて上下方向に延びるガイド軸72bとを有し、これらアーム部72aの上端(先端)に、前記カバー部78が固定されている。なお、アーム部72aは、第1可動部74のガイドと回転規制の役割を果たすものである。よって、当該機能を備えるものであれば、アーム部72aは、一対に限定されず、一つでも良いし、又3つ以上であってもよい。
【0052】
カバー部78は、ガイド軸72bの上端に固定されるプレート状のベース部78aと、その中心部から上方(Z1方向)に延びる断面円形の軸状部78bと、軸状部78bの先端に連続的に形成されるフード部78cとを備えた断面逆T字型の形状を有している。カバー部78の中心部に、軸状部78bの中心に沿って延びて当該カバー部78を貫通する断面円形のガイド孔79が形成されている。なお、フード部78cは、ガイド孔79よりも内径が大きい断面円筒状であり、ガイド孔79はフード部78cの中心でその内部空間に連通している。ガイド孔79の内径は、フィルタ28の外径と同等又はそれより若干小さく設定されている。これにより後述する通り、当該ガイド孔79内にフィルタ28を保持することが可能となっている(図10のセクション(b)参照)。つまり、ガイド孔79はフィルタ保持部としての機能を有する。
【0053】
フード部78cの内径D1は、前記ノズルシャフト22の先端の外径D2(図3B参照)よりも僅かに大きく設定されている。これにより、後述する通り、ノズルシャフト22の先端をフード部78cさせると、ノズルシャフト22と交換ヘッド70の後記針部74bとが位置決めされるようになっている。当例では、このフード部78cが本発明の「位置決め部材」として機能する。
【0054】
ヘッド本体部72のガイド軸72bには、第2可動部76がスライド自在に支持されている。第2可動部76は、プレート状のベース部76aと、このベース部76aの中心部から上方(Z1方向)に延びる断面円形の軸状部76bと、ベース部76aの下面から下方(Z2方向)に延びる複数のガイド軸76cとを備えている。第2可動部76は、後退位置と前進位置との間で前記ガイド軸72bに沿ってスライド可能となっている。後退位置は、ベース部76aがアーム部72aに当接する位置(図4に示す位置)であり、前進位置は、ベース部76aがカバー部78(ベース部78a)に当接する位置(図9のセクション(c)参照)である。なお、ベース部76aとカバー部78との間には後記コイルバネ82が介在するため、実際にはベース部76aとカバー部78とが直接当接することはないが、説明の便宜上、第2可動部76の前進位置は、ベース部76aとカバー部78とが当接する位置として説明を進める。
【0055】
第2可動部76の軸状部76bは、第2可動部76が後退位置に配置された状態において、先端部がカバー部78のガイド孔79に挿入されている。軸状部76bの外径とガイド孔79の内径とは、軸状部76bの外周面とガイド孔79の内周面とが摺接する程度の寸法に設定されている。軸状部76bの外周にはコイルバネ82が装着されている。このコイルバネ82は、第2可動部76のベース部76aとカバー部78のベース部78aとの間に圧縮された状態で介装されている。従って、外力が作用しない状態では、第2可動部76は、図4の実線で示すように、コイルバネ82の弾発力によって後退位置に保持される。
【0056】
第2可動部76の中心部に、軸状部76bの中心に沿って延びて当該第2可動部76を貫通する断面円形のガイド孔77が形成されている。ガイド孔77は、基本的には後記針部74bをガイドするものであるが、例えば、針部74bがガイド孔77の中心線に沿って設けられていてその内周面に接触しない構成の場合には、当該ガイド孔77は、単なる針部74bの収容部と言うこともできる。 第1可動部74は、第2可動部76のベース部76aの下方に配置されており、前記ガイド軸76cにスライド自在に支持されている。第1可動部74は、プレート状のベース部74aと、このベース部74aの中心部に立設された軸状の針部74b(本発明の「針部材」に相当する」)とを備えている。第1可動部74は、後退位置と前進位置との間で前記ガイド軸72bに沿ってスライド可能となっている。後退位置は、ベース部74aが、第2可動部76のガイド軸76cの末端(下端)に設けられたカムフォロア76dに当接する位置(図4に示す位置)であり、前進位置は、ベース部74aが、第2可動部76のベース部76aに当接する位置である(図9のセクション(b)参照)。ベース部74aと第2可動部76のベース部76aとの間には後記コイルバネ81が介在するため、実際にはベース部74aと第2可動部76のベース部76aとが直接当接することはないが、説明の便宜上、第1可動部74の前進位置は、ベース部74aと第2可動部76のベース部76aとが当接する位置として説明を進める。なお、第1可動部74は、第2可動部76のガイド軸76cに対して前記カムフォロア76dによって抜け止めされている。
【0057】
針部74bは、Z1方向に延びてその先端にカエシ741を備えている。図4に示すように、針部74bは、その大部分が第2可動部76の軸状部76b(ガイド孔77)に挿入されている。詳しくは、第1可動部74及び第2可動部76が共に後退位置に配置された状態において、針部74bは、その先端部が軸状部76bの先端近傍であって外部に突出しない位置に配置されている。これにより、第1可動部74が前進位置に配置されると、針部74bの先端部が、第2可動部76の軸状部76bの先端面761から外部に突出する。つまり、針部74bは、軸状部76bの先端面761から突出する突出位置(すなわち前進位置)と先端面761から軸状部76bの内部に引き下がった退避位置(すなわち後退位置)とに亘って、当該第2可動部76に出没可能に収納されている。当例では、この第2可動部76が本発明の「針収容部材」に相当する。なお、第2可動部76(軸状部76b)の先端面761は、後述する通り、交換用のフィルタ28の周壁部28bを押圧することが可能な平坦な形状を有しており、よって、当例では、第2可動部76の先端面761の前端が本発明の「フィルタ押込部」に相当する。
【0058】
軸状部76bのガイド孔77の内径は、針部74bをその軸方向に沿って案内し得る寸法に設定されている。針部74bの外周にはコイルバネ81(本発明の「付勢部材」に相当する)が装着されている。このコイルバネ81は、第1可動部74のベース部74aと第2可動部76のベース部76aとの間に圧縮された状態で介装されている。従って、外力が作用しない状態では、第1可動部74は、図4の実線で示すように、コイルバネ81の弾発力によって後退位置に保持されている。
【0059】
前記コイルバネ81のバネ定数は、コイルバネ82のバネ定数よりも小さく設定されている。具体的には、図4に示す状態において、第1可動部74にZ1方向の外力を与えた場合、第2可動部76が退避位置に保持された状態で、第1可動部74のみがZ1方向に移動するように、各コイルバネ81、82のばね定数が設定されている。なお、当例では、ヘッド本体部72、第1可動部74及び第2可動部76等が本発明の「移動機構」に相当する。
【0060】
交換ヘッド70を駆動する交換ヘッド駆動機構は、第1可動部74及び第2可動部76を進退駆動する第1進退駆動機構部Re1と、第2可動部76のみを進退駆動する第2進退駆動機構部Re2と、交換ヘッド70を中心軸Ax3回りに回転駆動する回転駆動機構部Roとを含む。
【0061】
第1進退駆動機構部Re1は、前記一対の支持軸61のうちの一方側(X1側)の支持軸61の内側に配置されて当該支持軸61に対して相対的に回転可能に支持される第1駆動軸62aと、第1駆動軸62aを回転駆動する第1サーボモータ64aと、第1駆動軸62aの先端に固定されて、第1可動部74の下方に配置される第1偏心カム63aとを含む。すなわち、第1進退駆動機構部Re1は、サーボモータ64aにより第1駆動軸62aを介して第1偏心カム63aを回転駆動する。
【0062】
第1偏心カム63aは、図5Aに示すようないわゆる偏心円板カムである。第1偏心カム63aは、同図中の二点鎖線に示すように、第1駆動軸62a(中心軸Ax3)からの直線距離が最大となる外周面上の位置、すなわちリフト量が最大となるカム面の位置Lm1が第1駆動軸62aを挟んで各可動部74、76とは反対側となる位置をホームポジションとする。図4では、前記カム面の位置Lm1が第1駆動軸62aの真下となる位置が第1偏心カム63aのホームポジションである。
【0063】
第1偏心カム63aがホームポジションに配置された状態では、図4に示すように、当該第1偏心カム63aと第1可動部74とは非接触状態である。ホームポジションから第1偏心カム63aが回転すると、まず、第1可動部74のベース部74aに第1偏心カム63aが当接して当該ベース部74aを押圧する。
【0064】
ここで、前記コイルバネ81のバネ定数は、上記の通りコイルバネ82のバネ定数よりも小さく設定されている。従って、第1偏心カム63aの回転に伴い、まず、第1可動部74のみが第2可動部76に対して相対的に移動し、その結果、第1可動部74のみが後退位置から前進位置に移動する(図9のセクション(b)参照)。当例では、例えば図5A中の実線で示すように、第1偏心カム63aがホームポジションから90°回転したときに、第1可動部74の前進位置への移動が完了する。
【0065】
その後、第1偏心カム63aがさらに回転すると、第1可動部74を介して第2可動部76が第1偏心カム63aに押圧され、第1可動部74と第2可動部76とが一体に移動する。その結果、第2可動部76が後退位置から前進位置に移動する(図9のセクション(c)参照)。当例では、図5B中の実線で示すように、第1偏心カム63aがホームポジションから180°回転したときに、第2可動部76の前進位置への移動が完了する。この状態では、両可動部74、76共に前進位置に配置されている。
【0066】
第2進退駆動機構部Re2は、前記一対の支持軸61のうち他方側(X2側)の支持軸61の内側に配置されて当該支持軸61に対して相対的に回転可能に支持される第2駆動軸62bと、第2駆動軸62bを回転駆動する第2サーボモータ64bと、第2駆動軸62bの先端に固定されて、第2可動部76の前記カムフォロア76dの下方に配置される第2偏心カム63bとを含む。すなわち、第2進退駆動機構部Re2は、サーボモータ64bにより第2駆動軸62bを介して第2偏心カム63bを回転駆動する。
【0067】
第2偏心カム63bも第1偏心カム63aと同様に偏心円板カムである。便宜上、図5A及び図5B中には括弧書きで符号を示している。第2偏心カム63bも、同図中の一点鎖線に示すように、第2駆動軸62bからの直線距離が最大となる外周面上の位置、すなわちリフト量が最大となるカム面の位置Lm2が第2駆動軸62bを挟んで各可動部74、76とは反対側となる位置をホームポジションとする。図4では、前記カム面の位置Lm2が第2駆動軸62bの真下となる位置が第2偏心カム63bのホームポジションである。
【0068】
第2偏心カム63bがホームポジションに配置された状態では、図4に示すように、当該第2偏心カム63bとカムフォロア76dとは非接触状態である。前記第1偏心カム63aがホームポジションに配置された状態で、第2偏心カム63bがホームポジションから回転すると、カムフォロア76dを介して第2可動部76が第2偏心カム63bにより押圧される。これにより、第2可動部76のみが後退位置から前進位置に移動する(図11のセクション(c)参照)。当例では、図5B中の実線で示すように、第2偏心カム63bがホームポジションから180°回転したときに、第2可動部76の前進位置への移動が完了する。この場合、第1偏心カム63aはホームポジションに配置されているので、第1可動部74は、コイルバネ81の弾発力により後退位置に保持されており、当該後退位置に配置された状態で第2可動部76と共に移動することとなる。
【0069】
回転駆動機構部Roは、第3サーボモータ65を含み、前記一対の支持軸61のうち一方側(X1側)の第1支持軸61を回転駆動するように構成されている。すなわち、回転駆動機構部Roは、第3サーボモータ65により支持軸61を介して交換ヘッド70を中心軸Ax3まわりに回転駆動する。具体的には、図4の実線に示す前記第1ポジションP1と、二点鎖線で示す前記第2ポジションP2との間で交換ヘッド70を回転駆動する。
【0070】
交換ヘッド70の下方には、使用済みのフィルタ28を回収する前記フィルタ回収部83が設けられている。フィルタ回収部83は、上部開口を備えた有底のプラスチック容器からなり、前記フレーム60に対して着脱可能に装着されている。
【0071】
フィルタ回収部83は、図4に示すように、第2ポジションP2に配置された交換ヘッド70の先端、具体的には、カバー部78のフード部78cの先端との間に僅かな隙間を介して対向し得る位置に配置されている。
【0072】
[部品実装装置1の制御系]
次に、図7を用いて部品実装装置1の制御系について説明する。
【0073】
部品実装装置1は、図7に示すような制御装置90を備えている。この制御装置90は、部品実装装置1の動作を統括的に制御する主制御部91と、この主制御部91にバスを介して接続される駆動制御部92、記憶部93、画像処理部94、入出力制御部95及び通信制御部96とを含む。
【0074】
主制御部91は、CPUやメモリで構成されたコンピュータであり、記憶部93に記憶されているプログラム及び各種データに基づいて所定の部品実装処理を実行するとともに、これに伴う各種演算処理および各種判定処理を実行する。また、主制御部91は、前記各種データの一つとして記憶部93に記憶されているフィルタ交換タイミングデータに基づき、フィルタ交換タイミングが到来すると、記憶部93に記憶されているプログラムに基づき、各部品吸着ヘッド20の前記フィルタ28を交換する後記フィルタ交換処理を実行する。フィルタ交換タイミングは、例えば、部品実装装置1の稼働時間や実装部品数などで規定されており、図外のカウンタによるカウント時間やカウント部品点数が設定値に達すると、主制御部91は、部品吸着ヘッド20毎に前記フィルタ28を交換するフィルタ交換処理を実行する。当例では、主制御部91が主に本発明の「制御装置」として機能する。
【0075】
駆動制御部92は、主制御部91から出力される制御信号に基づき、ヘッドユニット6及び部品吸着ヘッド20(すなわちX、Y、N、R、T、Z軸の各サーボモータ13、16、32、39、44、47)、コンベア2a、ノズル交換装置9及びフィルタ交換装置18の駆動を制御するものである。
【0076】
画像処理部94は、基板認識カメラ7及び部品認識カメラ8から出力される画像データに所定の処理を施すものである。主制御部91は、この画像データに基づき、基板Pに付された各種マークや吸着ノズル25の吸着部品などの対象物を認識する。
【0077】
入出力制御部95は、フィーダ4、5以外の機器に対するインターフェースである。この入出力制御部95には、各種情報を表示するための液晶表示装置などの表示装置およびキーボード等の入力装置を備えた表示/操作ユニット97や前記負圧/正圧切替バルブ52が接続されている。
【0078】
通信制御部96は、フィーダ4、5に対するインターフェースであり、各部品フィーダ4及びフィルタフィーダ5と主制御部91との間の通信を制御する。
【0079】
[フィルタ交換処理制御]
次に、主制御部91によるフィルタ交換処理の制御について、図9図13等を参照しつつ図8のフローチャートに基づき説明する。図9図13は、フィルタ交換処理制御におけるフィルタ交換装置18の動作を説明する、同フィルタ交換装置18の断面図である。詳しくは、図9図11は、フィルタ取外し時の動作状態を示し、図12図13は、フィルタ取付け時の動作状態を示している。
【0080】
図8に示すフローチャートの制御がスタートすると、主制御部91は、フィルタ28の交換時期か否かを判断し(ステップS1)、Yesの場合には、部品吸着ヘッド20から吸着ノズル25を取り外す、吸着ノズル取外し処理を実行する(ステップS3)。
【0081】
具体的には、ヘッドユニット6をノズル交換装置9の上方に移動させ、複数の部品吸着ヘッド20のうち予め定められた第1番目の部品吸着ヘッド20を下降させて所定の前記スロットに吸着ノズル25を挿入させる。その後、チャックにより吸着ノズル25を挟持させた後、部品吸着ヘッド20を上昇させる。これにより、部品吸着ヘッド20(ノズルシャフト22)から吸着ノズル25が取り外される。
【0082】
第1番目の吸着ノズル25の取り外し処理が完了すると、主制御部91は、全ての部品吸着ヘッド20について吸着ノズル25の取り外し処理が完了したかを判断する(ステップS5)。ここで、Noの場合には、主制御部91は、処理をステップS3にリターンし、予め定められ第2番目の部品吸着ヘッド20について、上記と同様に吸着ノズル取外し処理を実行する。
【0083】
こうして全ての部品吸着ヘッド20についての吸着ノズル取外し処理が完了すると(ステップS5でYes)、主制御部91は、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22からフィルタ28を取り外す、フィルタ取外し処理を実行する(ステップS7)。
【0084】
具体的には、主制御部91は、ヘッドユニット6をフィルタ交換装置18の上方に移動させ、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22を下降させる。これにより、図9のセクション(a)に示すように、ノズルシャフト22のその先端を交換ヘッド70のカバー部78(フード部78c)に挿入させる。この場合、主制御部91は、フィルタ交換装置18を予め図4に示す初期状態に制御する。つまり、交換ヘッド70を第1ポジションP1に配置し、この第1ポジションP1の交換ヘッド70に対して第1偏心カム63a及び第2偏心カム63bをホームポジションに配置しておく。これにより、ノズルシャフト22の下降に伴いその先端を交換ヘッド70のカバー部78(フード部78c)に挿入させることが可能となる。なお、ノズルシャフト22は、その先端がフード部78cの奥端部(軸状部78bの先端部)に当接する所定の高さ位置まで下降される。上記の通り、フード部78cの内径D1は、ノズルシャフト22の先端の外径D2(図3B参照)よりも僅かに大きく設定されている。そのため、ノズルシャフト22の先端がフード部78cに挿入されることにより、交換ヘッド70がノズルシャフト22に対して適切に位置決めされる。
【0085】
次に、主制御部91は、第1駆動軸62aを駆動させて第1偏心カム63aをホームポジションから一回転(360°回転)させる。このように第1偏心カム63aが一回転すると、まず、図9のセクション(b)に示すように、第2可動部76の位置がコイルバネ82により維持された状態で、第1可動部74が後退位置から前進位置に変位し、第2可動部76の軸状部76bの先端面761から上方に針部74bが突出する。次に、第1可動部74と共に第2可動部76が後退位置から前進位置に変位する。これにより、図9のセクション(c)に示すように、針部74bが軸状部76bの先端部分と共にノズルシャフト22の先端から凹部23の内部に挿入される。この挿入により、針部74bがフィルタ28の底壁部28aに突き刺さり、針部74bのカエシ741が当該底壁部28aに係合した状態となる。なお、ここでの「係合」は、針部74bのカエシ741が低壁部28bの内部で当該底壁部28bに係合している状態、及び針部74bの先端が底壁部28bを貫通してその上方にカエシ741が配置されることにより、当該カエシ741が実質的に底壁部28bに係合していると言える状態の双方を含む。
【0086】
その後、第1偏心カム63aの回転に伴い、コイルバネ81、82の弾発力で第2可動部76及び第1可動部74が順次この順番で前進位置から後退位置に変位する。これにより、フィルタ28がノズルシャフト22から交換ヘッド70に引き込まれて保持される。詳しくは、まず、第2可動部76が前進位置から後退位置に復帰することにより、図10のセクション(a)に示すように、フィルタ28が針部74bによってノズルシャフト22からカバー部78のガイド孔79内に引き込まれる。その後、第1可動部74が前進位置から後退位置に変位することにより、図10のセクション(b)に示すように、フィルタ28から針部74bが引き抜かれる。つまり、針部74bが軸状部76b内に収容されるのに伴い、フィルタ28が軸状部76bの先端面761に当接する。これにより、フィルタ28から針部74bが引き抜かれて、フィルタ28がガイド孔79内に保持される。
【0087】
第1偏心カム63aが一回転してホームポジションにリセットされると、主制御部91は、図11のセクション(a)に示すように、ノズルシャフト22を交換ヘッド70から上方に引き離し、その後、一方側(X1側)の支持軸61を駆動する。これにより、図11のセクション(b)に示すように、交換ヘッド70を第1ポジションP1から第2ポジションP2に変位させる。このとき、主制御部91は、第1駆動軸62a及び第2駆動軸62bを駆動し、第2ポジションP2に配置された交換ヘッド70に対して第1偏心カム63a及び第2偏心カム63bがホームポジションに配置されるように、当該第1偏心カム63a及び第2偏心カム63bを回転(反転)させる。
【0088】
主制御部91は、その後、第2駆動軸62bを駆動させて第2偏心カム63bを一回転させる。第2偏心カム63bが回転すると、第1可動部74が後退位置に保たれた状態のままで、つまり、針部74bが軸状部76bの内部に収容された状態のままで、第2可動部76が後退位置から前進位置に変位する。これにより、図11のセクション(c)に示すように、ガイド孔79内に保持されたフィルタ28が軸状部76bにより押し出されて交換ヘッド70から落下し、前記フィルタ回収部83に収容されることとなる。
【0089】
その後、主制御部91は、支持軸61、第1駆動軸62a及び第2駆動軸62bを駆動し、交換ヘッド70を図4に示す初期状態にリセットする。これにより、フィルタ取外し処理が完了する。なお、当例では、このフィルタ取外し処理が、本発明の「フィルタ取外し動作処理」に相当する。
【0090】
前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてのフィルタ取外し処理が終了すると、主制御部91は、全ての部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてフィルタ取外し処理が完了したかを判断する(ステップS9)。ここで、Noの場合には、主制御部91は、処理をステップS7にリターンし、前記第2番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22について、上記と同様にフィルタ取外し処理を実行する。
【0091】
こうして全ての部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてフィルタ28が取り外されると(ステップS9でYes)、主制御部91は、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22に交換用のフィルタ28を取り付ける、フィルタ取付処理を実行する(ステップS10)。
【0092】
具体的には、主制御部91は、ヘッドユニット6を部品供給部3の上方に移動させ、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22により、前記フィルタフィーダ5からフィルタ28をピックアップさせる。
【0093】
ここで、フィルタフィーダ5は、テープ100を担体(キャリア)として交換用のフィルタ28を供給するものであり、基本的な構成は部品フィーダ4と同じである。すなわち、図6に示すように、テープ100は、テープ本体101と図外のカバーテープとで構成された長尺のフィルタ供給用の媒体である。テープ本体101には、上部に開口した多数のフィルタ収納部102(凹部)が長手方向に一定間隔で形成されており、各フィルタ収納部102にフィルタ28が収納されている。フィルタ28は、図6に示すように、その開口を上にした起立姿勢でフィルタ収納部102に収容されている。テープ本体101の上面には、カバーテープが接着されており、これにより各テープ本体101がカバーテープにより閉鎖されている。テープ本体101のうちフィルタ収納部102の側方には、長手方向に一定間隔で複数の係合孔103が設けられており、当該係合孔103に図外のスプロケットが噛合している。
【0094】
フィルタフィーダ5は、前記テープ100が巻回されたリールを備え、前記スプロケットを駆動することにより、このリールから間欠的にテープ100を繰り出すとともに、その途中でカバーテープを開封しながら所定のフィルタ供給位置にフィルタ28を供給する。
【0095】
主制御部91は、ノズルシャフト22をフィルタフィーダ5のフィルタ供給位置の上方に配置させた後、当該ノズルシャフト22を下降させて、フィルタ収納部102内の交換用のフィルタ28を負圧で吸着させる。詳しくは、ノズルシャフト22の先端の凹部23内にフィルタ28を吸い入れて仮保持させる。この状態で、ノズルシャフト22を上昇させることにより、フィルタフィーダ5からフィルタ28をピックアップさせる。なお、凹部23の内周面には鍔部23aが備えられているため、この段階では、フィルタ28は凹部23の奥端部まで完全には入り切らず、一部が凹部23から下方に突出した状態でノズルシャフト22の先端に仮保持される(図12のセクション(a)参照)。
【0096】
交換用のフィルタ28のピックアップが完了すると、主制御部91は、ヘッドユニット6をフィルタ交換装置18の上方に移動させ、ズルシャフト22を下降させる。これにより、図12のセクション(a)及び(b)に示すように、ノズルシャフト22の先端を交換ヘッド70のカバー部78(フード部78c)に挿入させる。
【0097】
次に、主制御部91は、第2駆動軸62bを駆動させて第2偏心カム63bを一回転させる。第2偏心カム63bが回転すると、第1可動部74が後退位置に保たれた状態(針部74bが軸状部76bの内部に収容された状態)のままで、第2可動部76が後退位置から前進位置に変位しさらに後退位置にリセットされる。このように第2可動部76が進退すると、図12のセクション(c)及び図13のセクション(a)に示すように、ノズルシャフト22の先端に仮保持されていたフィルタ28が、軸状部76bの先端面761で押圧されて凹部23の奥端部に突き当たる位置まで押し込まれることとなる。つまり、フィルタ28が完全にノズルシャフト22に取り付けられた状態となる。
【0098】
その後、主制御部91は、図13のセクション(b)に示すように、ノズルシャフト22を上昇させ、当該ノズルシャフト22を交換ヘッド70から引き離す。これにより、ノズルシャフト22に対するフィルタ取付処理が完了する。なお、当例では、このフィルタ取付処理が、本発明の「フィルタ取付動作処理」に相当する。
【0099】
こうして前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてのフィルタ取付処理が終了すると、主制御部91は、全ての部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてのフィルタ取付処理が完了したかを判断する(ステップS11)。ここで、Noの場合には、主制御部91は、処理をステップS10にリターンし、前記第2番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22について、上記と同様にフィルタ取付処理を実行する。
【0100】
こうして全ての部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22についてのフィルタ取付処理が終了すると(ステップS11でYes)、主制御部91は、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22に吸着ノズル25を取り付ける、吸着ノズル取付け処理を実行する(ステップS13)。
【0101】
この吸着ノズル取付け処理の制御は、基本的にはステップS3の吸着ノズル取外し処理と逆手順の制御となる。すなわち、主制御部91は、ヘッドユニット6をノズル交換装置9の上方に移動させ後、前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22を下降させ、前記スロットに保持されている吸着ノズル25をノズルシャフト22に嵌合させる。そしてその後、ノズルシャフト22を上昇させることにより、ノズルシャフト22に吸着ノズル25が取り付けられる。
【0102】
前記第1番目の部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22について吸着ノズル取付け処理が完了すると、主制御部91は、全ての部品吸着ヘッド20のノズルシャフト22について吸着ノズル取付け処理が完了したかを判断する(ステップS15)。ここで、Noの場合には、主制御部91は、処理をステップS13にリターンし、前記第2番目の部品吸着ヘッド20について、上記と同様に吸着ノズル取付け処理を実行する。
【0103】
こうして全ての部品吸着ヘッド20について吸着ノズル取付け処理が完了すると(ステップS15でYes)、主制御部91は、本フローチャートの制御を終了する。
【0104】
[作用効果等]
以上のような部品実装装置1によると、基台1aにフィルタ交換装置18が備えられており、予め定められたタイミングで各部品吸着ヘッド20のフィルタ28を自動的に交換することが可能となる。そのため、従来(特許文献1)のように、部品吸着ヘッドのフィルタを作業者が手作業で取り外して交換するという作業が不要になる。また、ヘッドユニット6に備えられた複数の部品吸着ヘッド20のフィルタ28を短時間で交換することが可能となる。そのため、フィルタ交換のためのメンテナンス時間、換言すれば部品実装装置1の非稼働時間を短縮して、より効率良く部品実装基板の生産を行うことが可能となる。
【0105】
特に、フィルタ交換装置18は、先端にカエシ741を備えた軸状の針部74bの進退動作に伴い、針部74bをノズルシャフト22の先端から凹部23に挿入させ、当該針部74bをフィルタ28(底壁部28a)に係合させて凹部23から引き出す構成である。そのため、ノズルシャフト22の凹部23内に嵌入(圧入)されているフィルタ28を、比較的簡単な構成で確実に取り出すことができる。
【0106】
しかも、針部74bは、第2可動部76(軸状部76b)の先端面761から出没可能に設けられており、針部74bが軸状部76b内に後退すると、自ずと先端面761にフィルタ28が当接して、当該フィルタ28が針部74bから取り外される。そのため、このフィルタ交換装置18によれば、針部74bの進退動作という単純な動作で、針部74bによる凹部23からのフィルタ28の取外し、及び当該針部74bからの使用済みフィルタ28の取外しを行うことができる。
【0107】
また、フィルタ交換装置18は、フィルタ28の取外後、ノズルシャフト22の先端に仮保持されたフィルタ28を、第2可動部76の軸状部76bの先端面761で押圧して凹部23内に押し込むように構成されている。つまり、同一の交換ヘッド70で、ノズルシャフト22からのフィルタ28の取外しと、ノズルシャフト22(凹部23)へのフィルタ28の取付けの双方を行うことが可能である。そのため、このフィルタ交換装置18は、利便性の高いものと言うことができる。
【0108】
また、交換ヘッド70には、フード部78cを備えたカバー部78が設けられており、第1可動部74及び第2可動部76が共に前進位置に配置された場合でも、針部74bがフード部78c内に配置されるように構成されている。つまり、針部74bはフード部78cから外部に突出することが一切ない。従って、例えばメンテナンス時などに作業者が使用している工具等が誤って針部74bに触れて針部74bが曲がる、折れる等してフィルタ交換装置18が破損するといったトラブルを未然に防止することができる。
【0109】
しかも、フィルタ交換処理の際には、上述の通り、フード部78cにノズルシャフト22が挿入されることにより、ノズルシャフト22に対して交換ヘッド70(つまり針部74b)を位置決めすることが可能となっている。従って、このフィルタ交換装置18によれば、フード部78c(カバー部78)がノズルシャフト22に対する位置決め部材としての機能を兼ね備えた合理的な構成が達成されるという利点もある。
【0110】
なお、この部品実装装置1では、交換用のフィルタ28は、部品供給部3に配置されたフィルタフィーダ5によって供給される。しかし、交換用のフィルタ28の供給方法はこれに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、複数の交換用のフィルタ28を保持させたトレイ105をヘッドユニット6の可動領域内に配置し、このトレイ105上のフィルタ28をノズルシャフト22により吸着させるようにしてもよい。
【0111】
また、上記フィルタ交換装置18では、交換ヘッド70を駆動する駆動機構部Re1、Re2、Roは、モータ(サーボモータ64a、64b、65)により駆動されるものである。しかし、交換ヘッド70を駆動する各機構部は、エアシリンダや電磁ソレノイドなどの他のアクチュエータにより駆動されるものであってもよい。
【0112】
また、上記フィルタ交換装置18は、一つの交換ヘッド70を備えるものであるが、複数の交換ヘッド70を備えた構成であってもよい。例えばフィルタ交換装置18は、ヘッドユニット6に備えられる部品吸着ヘッド20と同じ数及び同じ配列で設けられる複数の交換ヘッド70と、これらの交換ヘッド70を作動させる駆動機構部とを備え、主制御部91により各交換ヘッド70の動作が同期して行われるように構成されていてもよい。この構成によれば、ヘッドユニット6に備えられる全ての部品吸着ヘッド20のフィルタ28の交換を同時に行うことが可能となるので、フィルタ交換の時間をより一層短縮することが可能となる。
【0113】
また、この部品実装装置1では、フィルタ交換装置18は、ノズルシャフト22からフィルタ28を取り外すフィルタ取外し処理と、ノズルシャフト22に交換用のフィルタ28を取付けるフィルタ取付処理の両方を実行可能に構成されているが、勿論、フィルタ取外し処理のみを実行するように構成されていてもよい。
【0114】
なお、この部品実装装置1のヘッドユニット6は、中心軸Ax1の周りに複数の部品吸着ヘッド20が配列されたロータリヘッド側の構成であるが、勿論、複数の部品吸着ヘッド20がX方向などに直線状に一列に配列されたインラインヘッド型の構成であっても上記フィルタ交換装置18は適用可能である。
【0115】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0116】
第1実施形態では、フィルタ交換装置18を搭載した部品実装装置1について説明した。つまり、フィルタ交換装置18は、主制御部91(制御装置90)により駆動制御されるタイプのフィルタ交換装置である。以下に説明する第2実施形態に係るフィルタ交換装置110は、例えば作業者が携帯し、必要に応じて手動で使用される、いわゆる治具タイプのフィルタ交換装置である。
【0117】
[フィルタ交換装置110の全体構成]
図15は、第2実施形態に係るフィルタ交換装置110の断面概略図である。このフィルタ交換装置110の基本的な構成は、第1実施形態で説明したフィルタ交換装置18の交換ヘッド70と概ね共通する。従って、以下の説明では、交換ヘッド70と共通する部分については、同一符号を付して説明を省略または簡略化し、主に交換ヘッド70との相違点について説明することにする。
【0118】
フィルタ交換装置110は、前記交換ヘッド70と同様に、ヘッド本体部72、第1可動部74、第2可動部76及びカバー部78とを備えている。但し、ヘッド本体部72には、アーム部72aは備えられておらず、その代わりに、ガイド軸72bの端部に、第2可動部76の脱落防止用の抜止部72cが設けられている。
【0119】
また、第2可動部76のガイド軸76cの一つ(図15の右側のガイド軸76c)は、図15に示すように他のガイド軸76cに比べて短くかつ抜止部(前記カムフォロア76dに相当する部分)の無い短軸構造となっている。この短軸のガイド軸76cは、後述するロック機構86の一部として機能するものであり、よって、以下、ロック用ガイド軸76cと称す。
【0120】
第1可動部74には、当該第1可動部74を後退位置に拘束するためのロック機構86が備えられている。ロック機構86はストッパ87を備えている。ストッパ87は、第1可動部74のベース部74aに設けられており、ロック用ガイド軸76cが挿通されたガイド孔74cの内部に突入するロック位置(図20のセクション(a)参照)と、ガイド孔74cの外側に退避したアンロック位置(図15に示す位置)との間で、当該ガイド孔74cの軸方向と直交する方向にスライド可能に設けられている。ストッパ87は、第1可動部74が退避位置に配置された状態でのみロック位置とアンロック位置との切り替えが可能となっている。そして、ストッパ87がロック位置に配置された状態では、ストッパ87とロック用ガイド軸76cとが係合して第1可動部74の変位が規制される。つまり、第1可動部74は後退位置に拘束される。一方、ストッパ87がアンロック位置に配置された状態では、ストッパ87とロック用ガイド軸76cとが非係合状態となって第1可動部74の変位が許容される。
【0121】
[フィルタ交換装置110の使用方法]
次に、フィルタ交換装置110の使用方法について、図16図20を用いて説明する。まず、フィルタ交換装置110を用いて部品吸着ヘッド20からフィルタ28を取り外す方法について説明する。なお、フィルタ交換装置110を用いてフィルタ28を交換する場合には、部品実装装置を事前に停止させておく。
【0122】
まず、部品吸着ヘッド20から吸着ノズル25を取り外す。吸着ノズル25の取り外しは、第1実施形態と同様に、部品実装装置の自動制御により事前に行っておいてもよいし、作業者が手作業でノズルシャフト22から取り外してもよい。
【0123】
次に、ノズルシャフト22の先端にフィルタ交換装置110をセットする。具体的には、図16のセクション(a)に示すように、カバー部78(フード部78c)の内側にノズルシャフト22を挿入させて、ノズルシャフト22の先端をフード部78cの奥端部(軸状部78bの先端部)に当接させる。この際、ストッパ87は、アンロック位置に配置しておく。
【0124】
次に、カバー部78(ベース部78a)を例えば人差し指と中指とで上から支えながら、図16のセクション(a)に矢印で示すように、第1可動部74の中央部を親指で押し上げる。具体的には、第1可動部74が停止する位置まで第1可動部74を押し上げ、その後、親指の力を抜くようにする。
【0125】
このようにすると、まず、第1可動部74が後退位置から前進位置に変位し、第2可動部76の軸状部76bの先端面761から上方に針部74bが突出する(図16のセクション(b))。さらに、第1可動部74と共に第2可動部76が後退位置から前進位置に変位することにより、針部74bが軸状部76bの先端部分と共にノズルシャフト22の凹部23に挿入され、この挿入により、針部74bがフィルタ28の底壁部28aに突き刺る(図16のセクション(c))。そして、親指の力を抜くと、コイルバネ81、82の弾発力により、第2可動部76及び第1可動部74が順次この順番で前進位置から後退位置に復帰し、これに伴い、フィルタ28がノズルシャフト22からフィルタ交換装置110に引き込まれる。具体的には、フィルタ28がカバー部78のガイド孔79内に引き込まれて保持される(図17のセクション(a)、(b))。その後、フィルタ交換装置110をノズルシャフト22から取り外すことで、フィルタ28の取り外しが完了する(図17のセクション(c))。
【0126】
なお、フィルタ28を取り外した後は、フィルタ交換装置110のストッパ87をアンロック位置からロック位置に切り替え、フィルタ交換装置110を上下逆さまにした状態で、第1可動部74を押し下げる。このようにすると、図18に示すように、針部74bが軸状部76bの内部に収容された状態のままで、第2可動部76が後退位置から前進位置に変位する。これにより、ガイド孔79内に保持されたフィルタ28が軸状部76bにより押し出されて落下する。そのため、取り外したフィルタ28を難なく廃棄することができる。
【0127】
次に、フィルタ交換装置110を用いて部品吸着ヘッド20に交換用のフィルタ28を取付ける方法について説明する。
【0128】
まず、ノズルシャフト22の先端(凹部23)にフィルタ28を仮保持させる。具体的には、一部が凹部23から突出するような状態でノズルシャフト22の先端にフィルタ28を仮保持させる。この作業は、第1実施形態と同様に、部品実装装置の自動制御により事前に行ってもよいし、作業者が手作業で行ってもよい。また、このようにノズルシャフト22の先端にフィルタ28を保持させる代わりに、予めフィルタ交換装置110のカバー部78の内側(軸状部78bのガイド孔79)に作業者がフィルタ28を装填しておくようにしてもよい。
【0129】
上記の何れかの状態で、ノズルシャフト22の先端にフィルタ交換装置110をセットする(図19のセクション(a))。この場合、ストッパ87はロック位置に配置しておく。そして、フィルタ取外し時と同様に、第1可動部74の中央部を押し上げ、その後、力を抜くようにする。このようにすると、ノズルシャフト22の先端に保持されているフィルタ28、若しくはカバー部78(軸状部78b)に装填されているフィルタ28が、第2可動部76の軸状部76bの先端面761で押圧されて、ノズルシャフト22の凹部23に押し込まれる(図19のセクション(b))。これにより、ノズルシャフト22の凹部23にフィルタ28が取付けられる。そして力を抜くと、コイルバネ81、82の弾発力により、第2可動部76が前進位置から後退位置に復帰するので、その後、フィルタ交換装置110をノズルシャフト22から取り外すようにする(図20のセクション(a)、(b))。これにより、ノズルシャフト22へのフィルタ28の取り付けが完了する。
【0130】
フィルタ28の取付けが完了したら、部品吸着ヘッド20に吸着ノズル25を取り付ける。吸着ノズル25の取り付けは、第1実施形態と同様に、部品実装装置の自動制御により行うようにしてもよいし、作業者が手作業で行ってもよい。これにより、フィルタ交換装置110を用いたフィルタ28の交換作業が終了する。
【0131】
[作用効果等]
以上のようなフィルタ交換装置110によると、ノズルシャフト22の先端にフィルタ交換装置110をセットし、作業者が第1可動部74を押圧して針部74bを進退させるだけで、ノズルシャフト22の凹部23内に嵌入(圧入)されているフィルタ28を難なく取り外すことができる。しかも、フィルタ交換装置110をノズルシャフト22から取り外した後、ストッパ87をアンロック位置からロック位置に切り替えて第1可動部74を押圧すれば、針部74bに刺さっているフィルタ28を難なく当該針部74bから取り外して廃棄することができる。
【0132】
また、ノズルシャフト22の先端に交換用のフィルタ28を仮保持させた状態、又はカバー部78(軸状部78b)にフィルタ28を装填した状態でフィルタ交換装置110をノズルシャフト22の先端にセットして第1可動部74を押圧すれば、ノズルシャフト22の凹部23に対してフィルタ28を難なく押し込んで取り付けることができる。
【0133】
従って、このフィルタ交換装置110によれば、作業者が主に手作業でフィルタ28の交換を行う場合の作業性を効果的に向上させることができる。
【0134】
また、このフィルタ交換装置110の場合も、第1実施形態のフィルタ交換装置18と同様に、フード部78cを備えたカバー部78が設けられている。そのため、仮に第2可動部76の軸状部76bの先端面761から針部74bが突出した状態で作業者がフィルタ交換装置110を取り扱ったとしても、図21に示すように、作業者が使用している工具(例えばドライバ)等が針部74bに触れることがカバー部78で防止される。よって、メンテナンス時などに誤って工具等が針部74bに触れて針部74bが曲がる、又は折れる等のトラブルを未然に防止することができる。
【0135】
また、第1実施形態のフィルタ交換装置18と同様に、フード部78cにノズルシャフト22の先端を挿入することにより、フィルタ交換装置110をノズルシャフト22に好適に位置決めすることができる。従って、フード部78c(カバー部78)がノズルシャフト22に対する位置決め部材としての機能を兼ね備えた合理的な構成が達成されるという利点もある。
【0136】
以上説明した本発明をまとめると以下の通りである。
【0137】
本発明の一の局面に係るフィルタ交換用装置は、先端に凹部を有するノズルシャフトと、前記凹部内に配置されて前記ノズルシャフトに保持されるフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に着脱可能に装着される吸着ノズルとを備える、少なくとも一つの部品吸着ヘッドが装備された部品実装装置における前記フィルタの交換用装置であって、先端部にカエシを備えた軸状の針部材と、前記針部材の先端部が前記フィルタに突き刺さって当該フィルタに係合するように、前記吸着ノズルが取り外された状態の前記ノズルシャフトに対してその軸方向に前記針部材を相対的に移動させる移動機構と、を備えるものである。
【0138】
このフィルタ交換用装置によれば、吸着ノズルが取り外されたノズルシャフトと針部材とをそれらの軸方向に対向させた状態で、針部材をノズルシャフトに対して相対的に進退させると、その前進に伴いノズルシャフトの凹部内に保持されたフィルタに針部材が突き刺さり、針部材の後退に伴い針部材がフィルタに係合して凹部から引き出される。そのため、ノズルシャフトに対して相対的に針部材を進退させるだけの簡単操作で、ノズルシャフトからフィルタを取外すことが可能となる。
【0139】
上記フィルタ交換用装置においては、先端面を有しかつ当該先端面から突出する突出位置と前記先端面から内部に引き下がった退避位置とに亘って前記針部材が出没可能に収納される針収容部材をさらに備え、前記移動機構は、前記針収容部材に対して前記突出位置と前記退避位置との間で前記針部材を相対的に移動させる機構と、前記ノズルシャフトに対して前記針部材を前記針収容部材と共に前記軸方向に移動させる機構とを含むものであるのが好適である。
【0140】
この構成によれば、針部材によりノズルシャフトから取外したフィルタを、さらに針部材から容易に取外すことが可能となる。すなわち、針部材を突出位置に配置した状態で、当該針部材と針収容部材とを一体にノズルシャフト部材に対して進退させると、上述した通り、針部材がフィルタに突き刺さって当該フィルタがノズルシャフトから引き出される。その後、針部材を突出位置から退避位置に変位させると、フィルタが針収容部材の先端面に当接して針部材から強制的に引き抜かれる。そのため、ノズルシャフトからのフィルタの取外しに加え、その後の針部材からのフィルタの取外しを行うことが可能となる。
【0141】
この場合、前記針収容部材の先端面は、ノズルシャフトの軸方向に沿って交換用の前記フィルタを前記凹部に押し込むことが可能なフィルタ押込部を含むものであるのが好適である。
【0142】
この構成によれば、フィルタが取り外されたノズルシャフトの凹部に対して新たなフィルタ(交換用のフィルタ)を装着させることが可能となる。すなわち、例えばノズルシャフトの凹部の入口に新たなフィルタを仮保持させた状態で、退避位置に針部材を配置した状態の針収容部材をノズルシャフトに対して相対的に前進させれば、フィルタ押込部によりフィルタを凹部内に押し込み、当該凹部にフィルタを取付けることが可能となる。
【0143】
なお、針収容部材を備えているフィルタ交換用装置においては、前記針部材を前記退避位置に向かって付勢する付勢部材さらに備えるのが好適である。
【0144】
この構成によれば、付勢部材の弾発力に抗して針部材を突出位置に配置した後、針部材に付与した外力を除去すると、付勢部材の付勢力によって針部材が突出位置から退避位置にリセットさせる。そのため、簡単な機構で、突出位置に配置された針部材を自動的に退避位置に移動させることが可能となる。
【0145】
また、針収容部材を備えているフィルタ交換用装置においては、前記針部材を前記退避位置にロックすることが可能なロック機構をさらに備えるのが好適である。
【0146】
この構成によれば、針部材を退避位置にロックしておくことにより、ノズルシャフトに新たなフィルタ(交換用のフィルタ)を装着する際に、針部材が意図せず退避位置から突出位置に変位することを避けることが可能となる。
【0147】
また、針収容部材を備えているフィルタ交換用装置においては、前記突出位置に針部材が配置された状態において少なくとも針部材の先端部を包囲するカバー部材をさらに備えているのが好適である。
【0148】
この構成によれば、突出位置に針部材が配置されているときに、作業者が使用している工具等が誤って針部材に触れて針部材が曲がる、又は折れるといったトラブルの発生を抑制することが可能となる。
【0149】
また、上記各フィルタ交換用装置においては、前記ノズルシャフトの先端に対して前記針部材を位置決めするための位置決め部材をさらに備えているのが好適である。
【0150】
この構成によれば、ノズルシャフト(凹部)に対して、ひいてはフィルタに対して針部材の位置を正確に保った状態で、当該針部材を進退させることが可能となる。そのため、フィルタをより確実にかつ円滑に取外すことが可能となる。
【0151】
この場合、前記カバー部材を備えるものである場合には、当該カバー部材が前記ノズルシャフトの先端に嵌合可能な形状を有することにより、当該カバー部材が前記位置決め部材としての機能を兼ね備えているのが好適である。
【0152】
この構成によれば、カバー部材が位置決め部材としての機能を兼ね備えた合理的な構成が達成される。
【0153】
なお、上記フィルタ交換用装置において、部品実装装置が、所定方向に一定間隔で配列された複数の前記部品吸着ヘッドを備えるものである場合には、当該フィルタ交換用装置は、前記部品吸着ヘッドと同じ数及び同じ配列で設けられた複数の前記針部材を備え、前記移動機構は、前記複数の針部材を、前記ノズルシャフトに対して一体に移動させるものであるのが好適である。
【0154】
この構成によれば、複数の部品吸着ヘッドの各フィルタを一括して同時に取り外すことが可能となる。
【0155】
また、針収容部材を備えているフィルタ交換用装置においては、前記移動機構を駆動するアクチュエータを備えるものであってもよい。
【0156】
この構成によれば、モータやエアシリンダ等のアクチュエータの駆動力を用いてノズルフィルタからフィルタをより速やかに取外すことが可能となる。
【0157】
一方、本発明の一の局面に係る部品実装装置は、先端に凹部を有するノズルシャフトと、前記凹部内に配置されて前記ノズルシャフトに保持されるフィルタと、前記ノズルシャフトの先端に着脱可能に装着される吸着ノズルとを備える、少なくとも一つの部品吸着ヘッドと、前記部品吸着ヘッドの可動領域内に配置される上記フィルタ交換用装置(移動機構を駆動するアクチュエータを備えるもの)とを備えているものである。
【0158】
この部品実装装置によれば、上述した通りのフィルタ交換用装置が備えられているので、ノズルシャフトに対して相対的に針部材を進退駆動させるだけで、ノズルシャフトからフィルタを容易に取外すことが可能となる。
【0159】
この場合、前記フィルタ交換用装置が前記針収容部材を備えるものでは、当該部品実装装置は、前記移動機構を駆動制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記吸着ノズルが取外されかつ所定位置に配置された前記ノズルシャフトに対して、前記針部材を前記突出位置に配置した状態で前記針収容部材と共に進退駆動することにより前記フィルタを前記凹部から取り外す動作と、前記針部材を前記突出位置から前記退避位置に変位させることにより、針部材の先端部から前記フィルタを取り外す動作と、を含む、フィルタ取外し動作処理を実行するように構成される。
【0160】
この構成によれば、ノズルシャフトからのフィルタの取外し、及びその後の針部材からのフィルタの取外しの自動化が可能となる。
【0161】
この場合には、前記針収容部材が前記フィルタ押込部を備えるものでは、当該部品実装装置は、交換用のフィルタを供給するフィルタ供給部をさらに備え、前記制御装置は、前記フィルタ取外し動作処理の後、前記フィルタ供給部が供給する交換用のフィルタを前記ノズルシャフトに吸着させて、その先端に仮保持させる動作と、交換用のフィルタが仮保持された前記ノズルシャフトを前記所定位置に配置し、かつ前記針部材を退避位置に配置した状態で前記針収容部材を進退駆動することにより、交換用のフィルタを前記針収容部材の前記フィルタ押込部で前記凹部内に押し込む動作と、を含むフィルタ取付動作処理を実行するように構成される。
【0162】
この構成によれば、ノズルシャフトに対する交換用のフィルタの取付けを自動化することが可能となる。つまり、フィルタの取外しから交換用のフィルタの取付けまでの一連のフィルタ交換作業の自動化が可能となる。
図1
図2
図3A
図3B
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図5A
図5B
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