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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-10
(45)【発行日】2023-07-19
(54)【発明の名称】ガードル
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/00 20060101AFI20230711BHJP
   A41D 13/05 20060101ALI20230711BHJP
【FI】
A41C1/00 F
A41D13/05 136
A41C1/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532201
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(86)【国際出願番号】 JP2020025188
(87)【国際公開番号】W WO2021260912
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】711004469
【氏名又は名称】川畑 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100166589
【弁理士】
【氏名又は名称】植村 貴昭
(72)【発明者】
【氏名】川畑 貴子
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335910(JP,A)
【文献】特開2005-023459(JP,A)
【文献】特開2013-231248(JP,A)
【文献】特開2014-080710(JP,A)
【文献】米国特許第05014354(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 1/00
A41D 13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガードル本体と、前記ガードル本体における後側左右の座骨対応部位を含む2配置領域の前面側に配置される一対のクッション部材と、各クッション部材の後面と前記2配置領域の前面との少なくとも一方に設けられ、前記各クッション部材を配置領域に着脱可能に配置するための第1の着脱手段と、を具備し、
前記ガードル本体は、後側前面に少なくとも腰回りの部位から前記クッション部材までを覆うカバーを有し、前記カバーが前記腰回りの部位を少なくとも除いて部分的に前記ガードル本体に縫い付けられる
ことを特徴とする下着として使用されるガードル。
【請求項2】
請求項1記載のガードルにおいて、前記第1の着脱手段が、前記クッション部材と前記配置領域との両者が重なる部分の1又は2以上の箇所に設けられていることを特徴とするガードル。
【請求項3】
請求項2記載のガードルにおいて、
前記ガードル本体の腰回りの部位と、その部位に対応する前記カバーの部分との間に第2の着脱手段が設けられている
ことを特徴とするガードル。
【請求項4】
請求項2または3に記載のガードルにおいて、前記クッション部材は、袋体と、前記袋体の内側に収納される緩衝部材と、を備え、前記第1の着脱手段は、前記袋体と前記配置領域との両者が重なる部分の1又は2以上の箇所に設けられている
ことを特徴とするガードル。
【請求項5】
ガードル本体と、前記ガードル本体における後側左右の座骨対応部位を含む2配置領域の前面側に配置される一対のクッション部材と、各クッション部材の後面と前記2配置領域の前面との少なくとも一方に設けられ、前記各クッション部材を配置領域に着脱可能に配置するための第1の着脱手段と、を具備するガードルにおいて、
緩衝部材は、複数の短冊状緩衝片がその幅方向に並設されると共に隣同士の間に隙間を開け、かつ前記座骨対応部位及びその近傍部位に配設された構成になっている
ことを特徴とするガードル。
【請求項6】
請求項5に記載のガードルにおいて、緩衝片は、少なくとも前記座骨対応部位において積層されており、前記近傍部位においては前記座骨対応部位よりも積層枚数が少ない
ことを特徴とするガードル。
【請求項7】
請求項6に記載のガードルにおいて、前記座骨対応部位での前記緩衝片は、座骨に近
い層が、座骨から遠い層よりも柔らかい
ことを特徴とするガードル。
【請求項8】
請求項6~7のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記緩衝部材は、片面側に前記緩衝片が取り付けられ、または前記緩衝片を挟んで設けられた緩衝シートを更に有する
ことを特徴とするガードル。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記一対のクッション部材が連結部材を介して連結されている
ことを特徴とするガードル。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記第1の着脱手段が面ファスナーである
ことを特徴とするガードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お尻の部分を肉厚にした下着用の新規なガードルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
年老いた人あるいは例えば癌等の病気や太りたくても太ることができない体質により痩せた人が、例えば座布団の無い椅子などに腰掛けた場合には、お尻が痛くなったり、お尻周りが黒ずんだりするといった問題があった。そこで、衣類のお尻に対応する部位の厚みを縫製等により増やすことが考えられる(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-156193号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ズボンやスラックスのお尻対応部位に対して厚みを変えると、ズボンやスラックス(以下、ズボン等と言う)に凹凸や縫い目が現れたりするので、ガードル側に処理を施すことが望まれる。しかしながら、ガードルのお尻対応部位を厚く縫製すると、椅子に腰掛けるときは良好であるものの、厚い部分と薄い部分とで衣類の伸び率が異なるので、歩行するときのお尻の動きに対して厚い部分が追従し難いため違和感がある。また、洗濯した後に干した際には乾きにくいという問題もある。このように、従来の技術には改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、椅子等に腰掛けているときお尻が痛くなく、しかも違和感なく歩行することができるガードルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明のガードルは、ガードル本体と、前記ガードル本体における後側左右の座骨対応部位を含む2配置領域の前面側に配置される一対のクッション部材と、各クッション部材の後面と前記2配置領域の前面との少なくとも一方に設けられ、前記各クッション部材を前記配置領域に着脱可能に配置するための第1の着脱手段と、を具備することを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明のガードルは、請求項1に記載のガードルにおいて、前記第1の着脱手段が、前記クッション部材と前記配置領域との両者が重なる部分の1又は2以上の箇所に設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明のガードルは、請求項2に記載のガードルにおいて、前記ガードル本体は、後側前面に少なくとも腰回りの部位から前記クッション部材までを覆うカバーを有し、前記カバーが少なくとも前記腰回りの部位を除いた部分において部分的に前記ガードル本体に縫い付けられると共に、前記ガードル本体の腰回りの部位と、その腰回りの部位に対応する前記カバーの部分との間に第2の着脱手段が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明のガードルは、請求項2または3に記載のガードルにおいて、前記クッション部材は、袋体と、前記袋体の内側に収納される緩衝部材と、を備え、前記第1の着脱手段は、前記袋体と前記配置領域との両者が重なる部分の1又は2以上の箇所に設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明のガードルは、請求項1~4のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記緩衝部材は、複数の短冊状緩衝片がその幅方向に並設されると共に隣同士の間に隙間を開け、かつ前記座骨対応部位及びその近傍部位に配設された構成になっていることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明のガードルは、請求項5に記載のガードルにおいて、前記緩衝片は、少なくとも前記座骨対応部位において積層されており、前記近傍部位においては前記座骨対応部位よりも積層枚数が少ないことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明のガードルは、請求項6に記載のガードルにおいて、前記座骨対応部位での前記緩衝片は、前記座骨に近い層が、前記座骨から遠い層よりも柔らかいことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明のガードルは、請求項5~7のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記緩衝部材は、片面側に前記緩衝片が取り付けられ、または前記緩衝片を挟んで設けられた緩衝シートを更に有することを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明のガードルは、請求項1~8のいずれか1つに記載のガードルにおいて、前記一対のクッション部材が連結部材を介して連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明のガードルは、請求項1~9に記載のガードルにおいて、前記着脱手段が面ファスナーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明による場合には、ガードル本体の後側左右の座骨対応部位を含む2配置領域のそれぞれの前面側にクッション部材が第1の着脱手段により着脱可能に配置される構成となっている。よって、歩いて移動するときは、ガードル本体からクッション部材を取り外しておくことで、違和感の無い歩きが可能で、椅子等に座るときは、クッション部材をガードル本体に取り付けることで、お尻が痛くなったり黒ずみができたりするのを防止することができる。
【0017】
そして、請求項2の発明による場合は、クッション部材を所望の位置に簡単かつ確実にセットすることが可能になる。これにより、クッション部材が座骨対応部位に正確に配置され、お尻の痛みを確実に防止することができる。
【0018】
請求項3の発明にあっては、第2の面ファスナーを剥がしてカバーの上端とガードル本体の腰回りの部位とを開けると、その開口の上方からクッション部材を簡単に挿入できる。逆に、第2の面ファスナーを貼り付けてカバーの上端とガードル本体の腰回りの部位とを閉じていると、カバーに足が引っ掛かることがなく履き易い。また、洗濯するとき、第2の面ファスナーを剥がしてクッション部材を取り出しても、カバーの一部がガードル本体に縫い付けられているので、カバーとガードル本体とがバラバラにならず、また洗濯後にカバーの表裏を確認する必要がない。このとき、第2の面ファスナーを貼り付けていると、普通のガードルと同じような取り扱いで洗濯ができる。更に、クッション部材を取り出した状態で乾燥させることができるので、短い時間で乾かすことが可能になる。
【0019】
請求項4の発明による場合には、袋体の内側に緩衝部材が収納される構成であるので、複数種類の袋体、例えば厚みが厚い緩衝部材を収納した袋体や、柔らかい緩衝部材を収納した袋体などを予め用意しておくことで、お尻の痛み状況に応じた緩衝部材を選択使用することができる。袋体に第1の面ファスナーのオス面(またはメス面)を設けておくと、ガードル本体の配置領域に、複数種類の袋体の一つを選択的に取り付けることができる。このとき、ガードル本体の配置領域には、袋体側とは反対の、第1の面ファスナーのメス面(またはオス面)を設けることになる。
【0020】
請求項5の発明による場合には、緩衝部材は複数の短冊状緩衝片がその幅方向に並設されると共に隣同士の間に隙間を開け、かつ座骨対応部位及びその近傍部位に配設された構成を採る。これにより、立ったり座ったりしても、ズボン等のお尻の外観を綺麗にできる。即ち、座骨対応部位及びその近傍部位に、これを覆うように広い緩衝シートを用いる場合、座骨対応部位では受ける力が大きく薄肉になるので、お尻の形に緩衝シートの中央部が変形するが、受ける力が小さい緩衝シートの周辺部では変形を抑制するように引っ張りあうために変形せずに、或は変形しても変形が小さいのでお尻から離れたようになって、ズボン等のお尻の外観を綺麗にできない。これに対し、本発明では緩衝片が短冊状であるので、短冊状緩衝片の長手方向中央部から端部までがお尻に沿うように変形し易くなり、また隣同士の間隔を開けているので、緩衝片が圧縮を受けて幅方向に広がってもその広がりが隣の緩衝片に干渉し難くすることができ、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。これは特に、お尻のボリュームが少なく自信が持てない痩せた人には有用である。
さらに本発明は、同様の理由により、歩行(又はその他の運動)の際のお尻の変形にも追従できるので、歩行(又はその他の運動)がしやすい。
【0021】
請求項6の発明による場合には、座骨対応部位で緩衝片が積層されているので、座骨にかかる負荷を緩衝片が吸収し易くできる。近傍部位では座骨対応部位よりも積層枚数が少ないので、緩衝片の端部がお尻に沿うように変形し易く、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。
【0022】
請求項7の発明による場合には、座骨対応部位での緩衝片は、座骨に近い層が座骨から遠い層よりも柔らかいので、座骨に加わる力を吸収できるので座骨の保護に好適である。
【0023】
請求項8の発明による場合には、緩衝片の少なくとも片面側に緩衝シートを取り付けることで緩衝片の受ける力が緩衝シートにも及んで変形するため、緩衝シートを設けない場合よりも緩衝部材の変形をなだらかにすることができ、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。
【0024】
請求項9の発明による場合には、一対のクッション部材が連結部材を介して連結されているので、各クッション部材の表裏の確認を夫々する必要がなく、片方のクッション部材で表裏確認が可能になる。また、2個のクッション部材がバラバラにならず、探して一対にする必要がなく便利である。
【0025】
請求項10の発明による場合のように、面ファスナーを(第1、第2の)着脱手段に用いる場合には、着脱を非常に簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るガードルを示す分解斜視図であり、一部を破断して示す。
図2】ガードル本体にカバーが取り付けられた状態を斜め上方から見た斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るガードルを示す正面図である。
図4】緩衝部材を斜め下方から見た分解斜視図である。
図5】緩衝部材を示す縦断面図である。
図6】座骨対応部位の説明図である。
図7】本発明に適用可能な他の緩衝部材を示す正面図である。
図8】本発明に適用可能な更に他の緩衝部材を示す正面図である。
図9】本発明に適用可能な更に他の緩衝部材を示す正面図である。
図10】本発明に適用可能な更に他の緩衝部材を示す正面図である。
図11】本発明に適用可能な更に他の緩衝部材を示す正面図である。
図12】本発明に適用可能な更に他の緩衝部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態につき図面を用いて説明する。なお、以下では、ガードル着用時に、着用者の体の向きを基準として「前」「後」との文言を用いている。
図1は、この実施の形態に係るガードルを示す分解斜視図である。
図2は、ガードル本体2にカバー7が取り付けられた状態を斜め上方から見た斜視図である。
このガードル1は、腰回りから太ももまでを覆うガードル本体2と、ガードル本体2における後側左右の座骨対応部位3、3を含む2つの配置領域4,4の前面側に配置される一対のクッション部材5A,5Bと、各クッション部材5A,5Bの後面と各配置領域4の前面とに設けられた第1の面ファスナー6を有する。クッション部材5Aとクッション部材5Bは、2つの連結部材5Cを介して連結されている。連結部材5Cは、1つまたは3以上用いてもよい。
【0028】
第1の面ファスナー6は、各クッション部材5A,5Bを各配置領域4に着脱可能に配置するための着脱手段として機能し、クッション部材5A,5Bと配置領域4との両者が重なる部分の2箇所に設けられている。
【0029】
ガードル本体2は、図1図2に示すように後側(お尻側)前面にカバー7を有し、このカバー7はガードル本体2の腰回りの部位8から少なくともクッション部材5A,5Bまでを覆う。このカバー7は、少なくとも腰回りの部位8を除いた部分において、ガードル本体2に部分的に縫い付けられている。縫い付け箇所は、図1に×印で示す部分である。また、ガードル本体2の腰回りの部位8と、腰回りの部位8に対応するカバー7の上端部分9とには、第2の面ファスナー10が設けられている。腰回りの部位8には第2の面ファスナー10のオス面10Aが設けられ、カバー7の上端部分9には第2の面ファスナー10のメス面10Bが設けられている。なお、腰回りの部位8に第2の面ファスナー10のメス面を設け、カバー7の上端部分9に第2の面ファスナー10のオス面を設けてもよい。
【0030】
クッション部材5A,5Bは、図3に示すように袋体11と、袋体11の内側に収納される緩衝部材12とを備え、左右対称に形成されている。
【0031】
次に、クッション部材5A,5Bの構成を、片方のクッション部材5Aについて説明する。緩衝部材12は、5個の短冊状緩衝片13と、3個の短冊状緩衝片14と、大きい緩衝シート15と、小さい緩衝シート16とを有して構成されている。小さい緩衝シート16はお尻側(前側)に配設され、大きい緩衝シート15は緩衝片13、14を挟む状態で小さい緩衝シート16とは反対側に、つまり外側(後側)に配設される。緩衝シート15及び緩衝シート16は、長手方向の両辺が円弧状に形成され、幅寸法がほぼ同一になっている。緩衝シート15は緩衝シート16よりも長く、緩衝シート15と緩衝シート16とは重ねられて用いられ、緩衝シート15の長手方向の両辺が緩衝シート16の長手方向の両辺よりも外側に位置する。
【0032】
図3図4に示すように、小さい緩衝シート16の片面には、5つの短冊状の緩衝片13がその幅方向に並設されていると共に、隣り合う緩衝片13同士の間に隙間tを開けて配設されている。緩衝片13は、緩衝シート16の幅方向の片方の端16Aと緩衝片13の長手方向の片方の端13Aとを一致させて配置される。このとき、一致させる緩衝シート16の端16Aと緩衝片13の端13Aは、もう片方のクッション部材5B側の端に揃えている。緩衝シート16の幅寸法は、緩衝片13の長さ寸法よりも長く設定されていて、緩衝シート16のクッション部材5Bと反対側は、緩衝片13が無い。
【0033】
中央部の3つの緩衝片13には、図5に示すように緩衝片14が重ねて配設される。緩衝片14は緩衝片13よりも短く、緩衝片14の長手方向の片方の端14Aは、緩衝片13の端13Aと一致している。よって、緩衝片13と緩衝片14とが重なっていない部分に段差がある。このような緩衝片13及び緩衝片14の上であって、緩衝シート16とは反対側には、前記緩衝シート15が重ねられる。緩衝シート15は、その端15Aを緩衝片14の端14Aに一致させて設けられる。
【0034】
このように構成された緩衝部材12に対し、袋体11が被せられる。袋体11の大きさは、緩衝シート15とほぼ同じか、少し大きい程度に作製される。袋体11には、第1の面ファスナー6のオス面6Aが設けられ、一方ガードル本体2の配置領域4には第1の面ファスナー6のメス面6Bが設けられる。
【0035】
5つの緩衝片13のうちの中央に位置する緩衝片13と、これに重なる緩衝片14は、図6に示すように座ったときに座骨Xの下に配される座骨対応部位3に位置するように配設され、他の緩衝片13及び緩衝片14は、座骨対応部位3の近傍部位3Aに配設されるように設計される。なお、図6中のYは骨盤を示す。
【0036】
次に、緩衝部材12の材質につき説明する。緩衝片13、緩衝シート15、及び、緩衝シート16は、ポリエーテル系ウレタンフォームからなり、緩衝片14は、これよりも硬質のポリエーテル系ウレタンフォームからなる。なお、この硬度の違いは、製造工程において密度を変化させることで実現される。
【0037】
このような構成のクッション部材5Aに対し,クッション部材5Bは左右対称に構成されており、説明は省略する。
【0038】
続いて、袋体11に設ける第1の面ファスナー6のオス面6Aと、ガードル本体2の配置領域4に設ける第1の面ファスナー6のメス面6Bとの配置につき説明する。ここで、便宜上、ガードル本体2の腰回りの部位8を上側、股下を下側と称する。
【0039】
第1の面ファスナー6のオス面6Aは、クッション部材5A、5Bの夫々につき上下2箇所、第1の面ファスナー6のメス面6Bも2つの配置領域4の夫々につき上下2箇所に設けられている。
【0040】
クッション部材5Aの上側のオス面6A(1)は、クッション部材5B側に寄せて設けられ、クッション部材5Aの下側のオス面6A(2)は、クッション部材5Aの幅中央に設けられ、クッション部材5Bの上側のオス面6A(3)は、クッション部材5A側に寄せて設けられ、クッション部材5Bの下側のオス面6A(4)は、クッション部材5Bの幅中央に設けられている。
【0041】
クッション部材5Aが配置される配置領域4Aの上側のメス面6B(11)、配置領域4Aの下側のメス面6B(12)、クッション部材5Bが配置される配置領域4Bの上側のメス面6B(13)、及び配置領域4Bの下側のメス面6B(14)は、夫々オス面6A(1)、オス面6A(2)、オス面6A(3)及びオス面6A(4)に対応する位置に設定されている。
【0042】
オス面6A(1)をメス面6B(11)に貼り付け、オス面6A(2)をメス面6B(12)に、オス面6A(3)をメス面6B(13)に、オス面6A(4)をメス面6B(14)に夫々貼り付ける。すると、上述したように、5つの緩衝片13のうちの中央に位置する緩衝片13と、これに重なる緩衝片14は、図2及び図6に示したように座ったときに座骨Xの下の座骨対応部位3に位置するように配設され、他の緩衝片13及び緩衝片14は、近傍部位3Aに配設される。
【0043】
従って、本実施形態のガードル1にあっては、歩いて移動するときは、隙間tにより違和感の無い歩きが可能であり、あるいはガードル本体2からクッション部材5A,5Bを取り外しておくこともできる。一方、椅子等に座るときは、クッション部材5A,5Bをガードル本体2の配置領域4に取り付けることで、お尻が痛くなったり黒ずみができたりするのを防止することができる。クッション部材5A,5Bの取り付け、取り外しは、第1の面ファスナー6と第2の面ファスナー10を貼り付けたり、剥がしたりするだけでよく、非常に簡単にできる。
【0044】
特に、本実施形態のように各クッション部材5A(5B)に対して第1の面ファスナー6を2箇所に設けておくと、クッション部材5A,5Bを配置領域4の所望の位置に簡単かつ確実にセットすることが可能になり、座った際に座骨対応部位3,3が座骨Xの下に正確に配置される。また、尾てい骨の下にはクッション部材5A,5Bが配置されないものの、座骨対応部位3,3が座骨Xの下に正確に配置されることで、座った際には、尾てい骨と着座面との間に隙間ができる(接触しない)。したがって、お尻の痛みを確実に防止することができる。なお、第1の面ファスナー6を設置する箇所は、各クッション部材5A(5B)に対して2箇所に限らず、1箇所又は3箇所以上であってもよい。3箇所以上の場合には、本実施形態と同様の効果が得られるが、貼り付けたり、剥がしたりするのが面倒である。
【0045】
また、第2の面ファスナー10を剥がしてカバー7の上端部分9とガードル本体2の腰回りの部位8とを開けると、その開口の上方からクッション部材5A,5Bを簡単に挿入できる。逆に、第2の面ファスナー10を貼り付けてカバー7の上端部分9とガードル本体2の腰回りの部位8とを閉じていると、履く際に足がカバー7に引っ掛かることがないので履き易い。また、洗濯するとき、第2の面ファスナー10を剥がしてクッション部材5A,5Bを取り出しておくと、乾き易くすることができる。また、カバー7の一部がガードル本体2に縫い付けられているので、カバー7とガードル本体2とがバラバラにならず、また洗濯後にカバー7の表裏を確認する必要がない。このとき、第2の面ファスナー10を貼り付けていると、普通のガードルと同じような取り扱いで洗濯、乾燥ができる。
【0046】
また、袋体11の内側に緩衝部材12が収納される構成であるので、複数種類の袋体11、例えば厚みが厚い緩衝部材12を収納した袋体11や、柔らかい緩衝部材12を収納した袋体11などを予め用意しておくことで、お尻の痛み状況に応じた緩衝部材12を選択使用することができる。そして、袋体11に第1の面ファスナー6のオス面(またはメス面)を設けておくと、ガードル本体2の配置領域4に、複数種類の袋体11の一つを選択的に取り付けることができる。このとき、ガードル本体2の配置領域4には、袋体11側とは反対の、第1の面ファスナー6のメス面(またはオス面)を設けることになる。
【0047】
本実施形態にあっては、緩衝部材12は短冊状緩衝片13、14がその幅方向に並設されると共に隣同士の緩衝片13、14の間に隙間tを開け、かつ座骨対応部位3及びその近傍部位3Aに配設された構成を採るので、立ったり座ったりしても、ズボン等のお尻の外観を綺麗にできる。即ち、座骨対応部位3及びその近傍部位3Aに、これを覆うように広い緩衝用のシート片を用いる場合、座骨対応部位3では応力が大きく薄肉になるので、お尻の形に緩衝用のシート片の中央部が変形するが、応力が小さい緩衝用のシート片の周辺部では変形を抑制するように引っ張りあうために変形せずに、或は変形しても変形が小さいのでお尻から離れたようになって、ズボン等のお尻の外観を綺麗にできない。これに対し、本発明では緩衝片13,14が短冊状であるので、短冊状緩衝片13,14の長手方向中央部から端部までがお尻に沿うように変形し易くなり、また隣同士の間に隙間tを開けているので、緩衝片13,14が圧縮を受けて幅方向に広がってもその広がりが隣の緩衝片13,14に干渉し難くすることができ、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。
【0048】
本実施形態にあっては、座骨対応部位3で2層の緩衝片13,14が積層されているので、座骨Xにかかる負荷を緩衝片13,14が吸収し易くできる。近傍部位3Aでは、座骨対応部位3よりも積層枚数が少なく1つの緩衝片13だけであるので、その緩衝片13の端部がお尻に沿うように変形し易く、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。
【0049】
また、座骨対応部位3における座骨Xに近い緩衝片13が座骨Xから遠い緩衝片14よりも柔らかいので、座骨Xに加わる強い力を固い方の緩衝片14が吸収し、座骨Xに加わる弱い力を柔らかい方の緩衝片13が吸収するので、色々な椅子に対応して座骨Xに伝わる力を弱くすることができ、座骨Xの保護に好適である。なお、座骨対応部位3における緩衝片の積層数は2層に限らず、3層以上にしてもよい。また、近傍部位3Aにおける緩衝片は1層に限らず、2層以上にしてもよいが、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にするためには、座骨対応部位3よりも緩衝片を薄くするのがよい。
【0050】
更に、本実施形態にあっては、緩衝片13,14の両側に緩衝シート15,16を取り付けることで緩衝片13,14の受ける力が緩衝シート15,16にも及んで変形するため、緩衝シート15,16を設けない場合よりも緩衝部材12の変形をなだらかにすることができ、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。この場合、図5に示すように緩衝シート15,16のうち、大きい緩衝シート15を外側に配するようにすることで、緩衝部材12の凹凸の変化を緩やかに見せ、小さい緩衝シート16を外側に配するよりも緩衝部材12の変形をよりなだらかに見せることができ、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にできる。但し、座骨にかかる負荷を軽減するだけを目的にするなら、緩衝片13,14及び緩衝シート15,16のうちいずれか1つ以上の厚みを厚くすることで、緩衝シート15,16の一方を省略することもできる。
【0051】
本実施形態にあっては、一対のクッション部材5A,5Bが連結部材5Cを介して連結されているので、各クッション部材5A,5Bの表裏の確認を夫々する必要がなく、片方のクッション部材5A(または5B)で表裏確認が可能になる。また、2つのクッション部材5A,5Bがバラバラにならず、探して一対にする必要がなく便利である。なお、連結部材5Cを省略しても良い。この場合には、左右で異なる緩衝性能のクッション部材5Aとクッション部材5Bを取り付けることが可能になり、お尻の左右で痛みが異なる場合に調整することができる。また、クッション部材5A,5Bをガードル本体2に取り付ける際に、クッション部材5A,5Bを誤って落下させても連結部材5Cがガードル本体2の股部分に引っ掛かり易いので、取り扱いに便利である。さらには、ガードル1の着用時に例えばスクワットのような姿勢をしても、連結部材5Cによって連結されたクッション部材5A,5Bはそれぞれお尻の横側に拡がるようにバラけることがない。
【0052】
また、年老いた人あるいは例えば癌等の病気や太りたくても太ることができない体質により痩せた人は、季節を問わず身体が冷えやすいという悩みがあるが、ガードル1を着用することで保温効果を奏することができる。
【0053】
上述した実施形態にあっては、図3に示すように、クッション部材5A(5B)は衝片13を5個,緩衝片14を3個用いているが、本発明はこれに限らない。例えば、図7に示すように緩衝片13を4個,緩衝片14を2個用いてクッション部材を構成してもよく、或は緩衝片13を2個(または3個),緩衝片14を1個(または2個)用いてクッション部材を構成してもよく、緩衝片13を6個以上,緩衝片14を4個以上用いてクッション部材を構成してもよい。緩衝片14の個数が緩衝片13の個数よりも少ないのは、ズボン等のお尻の見た目を綺麗にするためである。緩衝性能の向上やお尻の見た目を綺麗にできるのであれば、緩衝片14の個数及び緩衝片13の個数は適宜変更してもよい。
【0054】
また、上述した実施形態にあっては、積層される緩衝シート15,16及び緩衝片13,14が、一纏めに縫い合わされているものとしてもよい。その場合、縫い目が緩衝シート15(16)の長手方向に延伸するようにする。より好ましくは、当該縫い目が緩衝シートの幅方向中央よりも中央側(すなわち緩衝シート15においては端15A側)において緩衝シート15(16)の長手方向に延伸するようにする。
【0055】
また、上述した実施形態にあっては、図3に示すように緩衝片13,14を、その長手方向を緩衝シート15,16の幅方向に一致させて並設しているが、本発明はこれに限らない。例えば、図8に示すように緩衝片13,14を、その長手方向を緩衝シート15,16の幅方向と交差させるように並設してもよい。交差角度は適宜選択できる。また、緩衝片13,14の隣との隙間も、適宜選択できる。
【0056】
更に、上述した実施形態にあっては、第1の面ファスナー6によりガードル本体2の配置領域4にクッション部材5A,5Bを取り付けているが、本発明はこれに限らず、ガードル本体2の配置領域4に、着脱手段としてポケットを設け、そのポケットに対してクッション部材5A,5Bを着脱する構成としてもよい。但し、この構成の場合には、ポケットの底にクッション部材5A,5Bが当たることになり、使用経過に伴ってクッション部材5A,5Bの底当接部位が撓んで変形し、座骨対応部位3が座骨Xからずれる虞がある。よって、配置領域4にポケットを設ける場合にあっても、第1の面ファスナー6を併用することが好ましい。
【0057】
更に、上述した実施形態にあっては、オスメス型の面ファスナー6,10の説明をしているが、本発明はこれに限るものではなく、オスメスの区別のない単一型の面ファスナーであってもよい。さらに言えば、面ファスナーと同等の作用(着脱が可能)を奏する着脱手段であれば何でも良い。ただし、面ファスナー(オスメス型、単一型)を着脱手段に用いる場合には、着脱を非常に簡単に行うことができる。
【0058】
更にまた、上述した実施形態では、ガードルが腰回りから太ももまでを覆うものを対象としているが、本発明はこれに限らず、丈の長さが種々異なるガードルにも適用することができる。例えば、腰回りから股までのガードルや、腰回りから膝までのガードルなどにも適用することができる。但し、座骨対応部位3からその下側までの長さが短いガードルに対応する場合は、クッション部材を短くしたり形状を変えたりしてもよい。
【0059】
更にまた、上述した実施形態では、緩衝部材12が短冊状の緩衝片13、14を備えるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、図9(片方のクッション部材の緩衝部材12のみ示す。図10~12も同様)のように、緩衝片13が略円板状であり、積層された複数の緩衝片13は、お尻側(前方側)ほど小径となるようにし、各緩衝片13は少なくとも配置領域4を含むように配置されて積層されるようにしてもよい。また、このうちお尻側(前方側)から順に任意の数の層を、より硬質の緩衝片14としてもよい(ただし、少なくとも最も外側(後方側)の層は緩衝片13とする)。また、緩衝シート15,16はこの複数層の緩衝片を挟むように設けられるようにしてもいいが、設けなくとも良い。
【0060】
あるいは、図10のように、緩衝片13は長方形としてもよく、図11のように、四つ角がそれぞれ面取された長方形としてもよく、さらには、図12のように、トラック型にしてもよい。いずれにせよ、緩衝片13は積層されており、お尻側(前方側)から順に任意の数の層を緩衝片14としてもよく、緩衝シート15,16はあってもなくてもよい。
【0061】
更にまた、上述した実施形態では、緩衝片13が緩衝片14よりも柔らかいものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、互いの硬度を反対にしてもよく、あるいは同一にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、椅子等に腰掛けているときお尻が痛くなく、しかも違和感なく歩行することができるガードルに関する。
【符号の説明】
【0063】
1 ガードル
2 ガードル本体
3 座骨対応部位
3A 近傍部位
4 配置領域
5A,5B クッション部材
5C 連結部材
6 第1の面ファスナー(第1の着脱手段)
7 カバー
8 腰回りの部位
9 上端部分
10 第2の面ファスナー(第2の着脱手段)
11 袋体
12 緩衝部材
13 短冊状緩衝片
14 短冊状緩衝片
15 大きい緩衝シート
16 小さい緩衝シート
X 座骨
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図12