(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】統合されたVBUS・CC短絡保護を有するUSBタイプC/PDコントローラ
(51)【国際特許分類】
H02H 3/087 20060101AFI20230712BHJP
G06F 13/38 20060101ALI20230712BHJP
H02H 3/18 20060101ALI20230712BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20230712BHJP
H03K 17/687 20060101ALN20230712BHJP
【FI】
H02H3/087
G06F13/38 350
H02H3/18
H02J1/00 309H
H02J1/00 309P
H03K17/687 A
(21)【出願番号】P 2020558050
(86)(22)【出願日】2019-04-17
(86)【国際出願番号】 US2019027868
(87)【国際公開番号】W WO2019204436
(87)【国際公開日】2019-10-24
【審査請求日】2022-04-16
(32)【優先日】2018-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】ラジディープ ムコパドヤイ
(72)【発明者】
【氏名】プルキット シャー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィノッド ジョセフ メネゼス
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-011442(JP,A)
【文献】特開2018-029451(JP,A)
【文献】特表2008-535459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 3/08 - 3/253
H02J 1/00 - 1/16
G06F 13/38 - 13/42
H03K 17/00 - 17/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニバーサルシリアルバス(USB)タイプC/電力供給(PD)コントローラチップであって、
ホストデバイスから第1の電圧を受け取る
ように適応される第1のピン
と、
第2の電圧を受け取る
ように適応される第2のピン
と、
USBコネクタの構成制御(CC)ピンに結合
されるように適応される第3のピン
と、
前記第3のピンに前記第1の電圧を選択的に渡すように結合されるVCONN電源回路であって、前記第1のピンと前記第3のピン
との間
にホットスワップ電界効果トランジスタ(HSFET)
と直列に結合される第1の遮断電界効果トランジスタ(BFET)と、前記HSFETのソースとゲート
との間
にアノード
-アノード結合される第1及び第2のツェナーダイオードとを含む、前記VCONN電源回路
と、
前記第2のピンと前記第3のピン
との間
に結合される第2のBFETと、前記第2のBFETのゲートと下側レール
との間
に結合される第3のツェナーダイオードとを含むケーブル検出回路
と、
電力供給物理層回路であって、第3のBFETを介して前記第3のピンに結合され
るレシーバと、第4のBFETを介して前記第3のピンに結合され
るトランスミッタと、前記第3のBFETのゲートと前記下側レールとの間
に結合される第4のツェナーダイオードと、前記第4のBFETのゲートと前記下側レールとの間
に結合される第5のツェナーダイオードとを含む、前記電力供給物理層回路
と、
を含む、コントローラチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のコントローラチップであって、
前記第1の電圧
と前記第3のピン
とから
前記第1の電圧と第3の電圧
とを受け取り、前記第3の電圧が前記第1の電圧より大きいと判定することに応答して前記第1のBFETをオフにすることを開始するように結合される第1の逆電流保護コンパレータ
と、
前記第2の電圧
と前記第3の電圧
とを受け取り、前記第3の電圧が前記第2の電圧より大きいと判定することに応答して前記第2、第3及び第4のBFETをオフにすることを開始するように結合される第2の逆電流保護コンパレータ
と、
を
更に含む、コントローラチップ。
【請求項3】
請求項2に記載のコントローラチップであって、
前記第3の電圧を第1の基準電圧と比較し、前記第3の電圧が前記第1の基準電圧より大きいと判定することに応答して前記第1のBFET
と前記HSFET
とをオフにすることを開始するように結合される第1の過電圧保護コンパレータ
と、
前記第3の電圧を第2の基準電圧と比較し、前記第3の電圧が前記第2の基準電圧より大きいと判定することに応答して前記第2、第3及び第4のBFETをオフにすることを開始するように結合される第2の過電圧保護コンパレータ
と、
を
更に含む、コントローラチップ。
【請求項4】
請求項3に記載のコントローラチップであって、
前記第1のBFETのゲートと前記下側レールとの間に結合される第1のバッテリ切れプルダウントランジスタ
と、
前記第2のBFETのゲートと前記下側レールとの間に結合される第2のバッテリ切れプルダウントランジスタ
と、
前記第3のBFETのゲートと前記下側レールとの間に結合される第3のバッテリ切れプルダウントランジスタ
と、
前記第4のBFETのゲートと前記下側レールとの間に結合される第4のバッテリ切れプルダウントランジスタ
と、
を
更に含み、
前記第1、第2、第3及び第4のバッテリ切れプルダウントランジスタの各々が、バッテリ切れプルダウン信号を受け取るように結合される、コントローラチップ。
【請求項5】
請求項4に記載のコントローラチップであって、
前記VCONN電源回路が、前記HSFETのソースに結合されるソースと、前記第1及び第2のツェナーダイオードの間に結合されるドレインとを有する第1のPMOSトランジスタを
更に含む、コントローラチップ。
【請求項6】
請求項5に記載のコントローラチップであって、
前記VCONN電源回路が、前記HSFETのソースとゲート
との間
に第3のPMOSトランジスタと直列に結合される第2のPMOSトランジスタを
更に含む、コントローラチップ。
【請求項7】
請求項6に記載のコントローラチップであって、
前記第3のピンに結合され、前記第1の電圧
と前記第2の電圧
とがゼロであるとき
に前記バッテリ切れプルダウン信号を提供するように
適応されるバッテリ切れプルダウンジェネレータを
更に含む、コントローラチップ。
【請求項8】
請求項7に記載のコントローラチップであって、
前記HSFETが7ボルト横方向拡散金属酸化物シリコン(LDMOS)電界効果トランジスタ(FET)であり、
前記第1のBFET
と第2のBFET
と第3のBFET
と第4のBFET
との各々が、30ボルトドレイン拡張LDMOS FETである、コントローラチップ。
【請求項9】
電源に結合するための第1のピンとUSBコネクタの
構成制御(CC
)ピンに結合するための第2のピンとを有するユニバーサルシリアルバス(USB)タイプC/電力供給(PD)コントローラチップのVCONN電源回路におけるホットスワップ電界効果トランジスタ(HSFET)のための動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記HSFETのソースとゲート
との間
にアノード
-アノード結合される第1及び第2のツェナーダイオード
と、
前記HSFETのソースに結合されるソースと、前記第1及び第2のツェナーダイオードのアノード間に結合されるドレインとを含む第1のP型金属酸化物シリコン(PMOS)トランジスタ
と、
前記HSFETのソースとゲート
との間
に第3のPMOSトランジスタ
と直列に結合される第2のPMOSトランジスタ
と、
を含む、動的ホットスワップオフ保持回路。
【請求項10】
請求項9に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記HSFETのソースと下側レールとの間に第2の抵抗性要素と第1のクランプ-イネーブルトランジスタと直列に結合される第1の抵抗性要素であって、前記第1のクランプ-イネーブルトランジスタのゲートが前記HSFETのためにドライバからクランプ-イネーブル信号を受け取るように結合される、前記第1の抵抗性要素を更に含み、
前記第1のPMOSトランジスタのゲートが、第3のツェナーダイオードを介して前記HSFETのソースと、コンデンサを介して
前記下側レールと、前記第1の抵抗性要素と前記第2の抵抗性要素との間の点とに結合される、動的ホットスワップオフ保持回路。
【請求項11】
請求項10に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記第2のPMOSトランジスタ
と前記第3のPMOSトランジスタ
とが、共通ゲート
と共通ソース
とを共有し、
前記動的ホットスワップオフ保持回路が、
前記共通ゲートに結合されるアノードと、前記共通ソースに結合されるカソードとを有する第4のツェナーダイオード
と、
前記共通ゲートと前記共通ソース
との間
に結合される第3の抵抗性要素
と、
前記共通ゲートと前記下側レール
との間
に第2のクランプ
-イネーブルトランジスタ
と直列に結合される第4の抵抗性要素
であって、前記第2のクランプ
-イネーブルトランジスタのゲートが前記クランプ
-イネーブル信号を受け取るように結合される、
前記第4の抵抗性要素と、
を更に含む、動的ホットスワップ
オフ保持回路。
【請求項12】
請求項11に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記HSFETのゲートと前記下側レールとの間
にプルダウンイネーブルトランジスタ
と直列に結合される第5の抵抗性要素
であって、前記プルダウンイネーブルトランジスタのゲートが前記HSFETのゲートを前記下側レールに選択的に結合するように制御される、
前記第5の抵抗性要素を更に含む、動的ホットスワップオフ保持回路。
【請求項13】
請求項12に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
HSFETドライバであって、
前記第2のピンにおける第1の電圧が第1の基準電圧より大きくなるときを示す過電圧信号と、前記第1の電圧が前記第1のピンにおける第2の電圧より大きくなるときを示す逆電流信号とを受け取
り、
前記プルダウンイネーブルトランジスタ
と、前記第1及び第2のクランプ
-イネーブルトランジスタ
とを制御する
、
ように結合される、
前記HSFETドライバを更に含む、動的ホットスワップオフ保持回路。
【請求項14】
請求項12に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記プルダウンイネーブルトランジスタ
と、前記第1及び第2のクランプ
-イネーブルトランジスタ
とが
、N型金属酸化物シリコン(NMOS)トランジスタである、動的ホットスワップオフ保持回路。
【請求項15】
請求項14に記載の動的ホットスワップオフ保持回路であって、
前記第1の抵抗性要素が4MΩの抵抗を有し、前記第2の抵抗性要素が1MΩの抵抗を有し、前記第3の抵抗性要素が100kΩの抵抗を有し、前記第4の抵抗性要素が500kΩの抵抗を有し、前記第5の抵抗性要素が100kΩの抵抗を有し、前記コンデンサが200fFの容量を有する、動的ホットスワップオフ保持回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して、ユニバーサルシリアルバス(USB)に関し、より詳細には、統合された仮想バス(VBUS)・構成制御(CC)短絡保護を有するUSBタイプC/電力供給(PD)コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
最新世代のUSBケーブルの設計では、電力及びデータの両方を伝送する能力が増強され、プロトコルの柔軟性が増大されている。USBコネクタのピン数が増えている一方で、ますます薄くなるデバイスでUSBケーブルを用い得るように、USBコネクタ自体の大きさは小さくなっている。
図1は、USB2.0、USB3.0、及びUSB3.1デバイスと互換性のあるUSBタイプCコネクタ100のピン配置を示す概略図を示す。ピンA1、A12、B1、及びB12は、いずれも接地接続を提供する。ピンA2、A3、A10、A11、B2、B3、B10、及びB11は、10GbpsでのUSB3.1超高速通信のために用いられ、ピンA6、A7、B6、B7は、480MbpsでのUSB2.0高速通信のために用いられる。VBUSピンA4、A9、B4、B9は、20V DCまでの電力供給ネゴシエーションを提供し得る。CCピンA5、B5は、電力供給通信のために用いられ、電子的に印を付けられたタイプCケーブルの範囲内の集積回路に電力を供給するために5V電力も供給し得、一方、サイドバンド使用(SBU)ピンA8及びB8は、タイプCケーブルのためのオルタネイトモードで用いられ得る。
【0003】
USBタイプCコネクタのスモールフォームファクタが、制御不能ファクタ、例えば、USBタイプCコネクタへのケーブルの挿入角度、ケーブル自体の品質、及びUSBコネクタ又はプラグのいずれかの生じ得る汚染と組み合わさると、各5V CCピンが20V VBUSピンに近接していることは、CCピンに関連する5V回路要素が、より高い電圧のVBUSピンとの短絡から保護されなければならないことを意味する。以前のバージョンのUSBでは機能した解決策では必要なレベルの保護が得られず、許容され得る通信プロトコルとの干渉もより大きくなり、或いは、付加的な抵抗及び/又は漏れの問題がある。さらなる改良が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
説明される実施形態は、短絡に対して少なくとも3つのレベルの保護を提供する。第1のレベルの保護において、保護される各経路における遮断電界効果トランジスタ(BFET)とも称する遮断トランジスタがツェナーダイオードによって保護されて、例えば22V/10nsよりも大きなエッジレートを有する強短絡からゲート酸化物への損傷を防止する。第2のレベルの保護において、過大な逆電流が検出されるときBFETをオフにするように、高速逆電流保護(RCP)コンパレータを用いてトリガをかけ、デバイス損傷を防止するため、BFETをオフにすることは100ns未満に成される。第3のレベルの保護において、過電圧保護(OVP)コンパレータが、CCピン上の電圧を、接地に対して設定される基準電圧と比較し、例えば、エッジレートが22V/100ns未満であり、RCPコンパレータがトリップし得ないか又は十分に迅速にトリップし得ないような弱短絡状況において、BFETをオフにするようにBFETにトリガをかけることができる。BFETは各々、ホストデバイスのバッテリが保護回路要素に電力を供給し得ないときに、バッテリ切れトランジスタがそれぞれの遮断FETのゲートを接地に結合した状態で、遮断FETのゲートに結合されるバッテリ切れトランジスタによってオフにすることもでき、バッテリ切れ回路要素は、CCライン上の短絡からの電力をプルすることによってこの保護を提供する。保護は、ゲート酸化物を保護するために短絡の間ホットスワップ電界効果トランジスタ(HSFET)のゲートとソースを結合するように複数の経路を提供する動的ホットスワップオフ保持回路においても説明され、これらの経路はCCライン上で生じる通信との干渉を引き起こさない。
【0005】
一態様において、USBタイプC/PDコントローラチップの実施形態が説明される。USBタイプC/PDコントローラチップは、ホストデバイスから第1の電圧を受け取るための結合用の第1のピン、第2の電圧を受け取るための結合用の第2のピン、USBコネクタの構成制御(CC)ピンに結合するための第3のピン、第3のピンに第1の電圧を選択的に渡すために結合されるVCONN電源回路であって、VCONN電源回路が、第1のピンと第3のピンの間でホットスワップ電界効果トランジスタ(HSFET)に直列に結合される第1の遮断電界効果トランジスタ(BFET)、並びにHSFETのソースとゲートの間でアノード・アノード結合される第1のツェナーダイオード及び第2のツェナーダイオードを含むVCONN電源回路、第2のピンと第3のピンの間で結合される第2のBFET及び第2のBFETのゲートと下側レールの間で結合される第3のツェナーダイオードを含むケーブル検出回路、及びレシーバ及び送信器を含む電力供給物理層回路であって、レシーバが第3のBFETを介して第3のピンに結合され、送信器が第4のBFETを介して第3のピンに結合され、さらに第3のBFETのゲートと下側レールの間で結合される第4のツェナーダイオード及び第4のBFETのゲートと下側レールの間で結合される第5のツェナーダイオードを含む電力供給物理層回路を含む。
【0006】
別の態様において、電源に結合するための第1のピン及びUSBコネクタのCCピンに結合するための第2のピンを有するユニバーサルシリアルバス(USB)タイプC/電力供給(PD)コントローラチップのVCONN電源回路におけるホットスワップ電界効果トランジスタ(HSFET)のための動的ホットスワップオフ保持回路の実施形態が説明される。動的ホットスワップオフ保持回路は、HSFETのソースとゲートの間でアノード‐アノード結合される第1のツェナーダイオード及び第2のツェナーダイオード、HSFETのソースに結合されるソースと第1及び第2のツェナーダイオードのアノード間に結合されるドレインとを含む第1のP型金属酸化物シリコン(PMOS)トランジスタ、及び、HSFETのソースとゲートの間で第3のPMOSトランジスタに直列に結合される第2のPMOSトランジスタを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に従った、USBコントローラに結合され得るUSBタイプC/PDコネクタの例を示す。
【0008】
【
図2】実施形態に従ったUSBタイプC/PDコントローラチップの一部の実装形態を示す。
【0009】
【
図3】実施形態に従ったUSBタイプC/PDコントローラチップのVCONNモジュールにおけるHSFETのための動的ホットスワップオフ保持回路の実装形態を示す。
【0010】
【
図4】説明されるUSBタイプC/PDコントローラの実施形態と共に用いられ得るバッテリ切れプルダウン発生器の実装形態を示す。
【0011】
【
図5A】実施形態に従った、強短絡中の
図2のUSBコントローラチップ上の幾つかの信号を示す。
【0012】
【
図5B】実施形態に従った、弱短絡中の
図2のUSBコントローラチップ上の幾つかの信号を示す。
【0013】
【
図6】
図2のUSBコントローラチップによって提供される通信信号がUSB PD仕様の信号要件を満たすことを示す。
【0014】
【
図7】HSFET MN2を停止するためにUSBコントローラにおいて用いるために考慮され得る回路を示すが、この回路はCCライン上の通信要件を満たさない。
【0015】
【
図8】USBコントローラの初期バージョンのCCピンのための保護回路を示す。
【0016】
【
図9】USBタイプC/PDコントローラと共に用いられる保護チップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面において、同様の参照符号は類似の要素を示す。本明細書で用いられるように、「結合する」という用語は、無線接続を含み得る「通信可能に結合される」場合のように限定されない限り、間接的又は直接的な電気接続を意味する。そのため、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合、その接続は、直接電気接続によるもの、又は、他のデバイス及び接続を介した間接電気接続によるものとし得る。
【0018】
図2は、CCラインを制御する構成制御に関連する回路要素を含むUSBタイプC/PDコントローラチップ200の一部を示す。構成制御は、新たな接続を構成するために用いられ、USBタイプCケーブルの範囲に存在する電子チップに電力を伝送するためにも用いられ得る。動作において、USBタイプC/PDコントローラチップ200は、別のデバイスに電力及び場合によってはデータを提供し、別のデバイスから電力及び場合によってはデータを受け取るように、或いは、USBタイプCケーブル(具体的には図示せず)を介して電力/データを提供及び受け取るように設計される、任意のタイプの電子機器とし得るホストデバイス(具体的には図示せず)に装備され得る。例えば、ホストデバイスは、充電器、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、スピーカ、マイク、キーボード、eブックリーダー、携帯マルチメディアプレイヤー(PMP)、MP3プレイヤー、携帯医療デバイス、カメラ、ウェアラブルデバイスなどを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0019】
図2に示すUSBタイプC/PDコントローラチップ200の一部に、3本のピンが示されている。第1のピン201は、一実施形態において0.9~5.5Vの範囲とし得る第1の電圧PP_CABLEを受け取るためにホストデバイスに結合され得る。第2のピン203は、一実施形態において3.3Vである、第2の電圧LD0_3V3を受け取るように結合される。第2のピン203は、ホストデバイスに又はUSBタイプC/PDコントローラチップ200内で生成される電圧に結合され得る。第3のピン205は、CCピンに第3の電圧C_CCxを提供するために、ポートとも称され得るUSBコネクタ212に結合され得る。ケーブル検出(CABLEDET)回路202、電力供給物理層(PDPHY)回路204、及びVCONN電源回路206の要素及び動作をこれ以降に簡潔に説明し、その後、この説明によって提供される付加的保護の要素を説明する。
【0020】
VCONN電源回路206は、背面直結共通ドレイン横方向拡散金属酸化物シリコン(LDMOS)FETを用いる。このFETにおいて、ホットスワップFETとして7V LDMOS MN2が用いられ、遮断FETとして30V LDMOS MN1が用いられている。共通ドレイン構造が選択されるのは、この構造が、第1のBFET MN1が感知のために用いられHSFET MN2が調節される過電流状態の間、電流調節をより容易にするからである。VCONN電源回路206は、第1のピン201上の第1の電圧PP_CABLEを受け取り、第1のBFET MN1及びHSFET MN2を介して第3のピン205に第1の電圧を渡して、USBコネクタ212に第1の電圧PP_CABLEを供給する。第1のBFET MN1はBFETドライバ222によって制御され、HSFET MN2はHSFETドライバ224によって制御され、BFETドライバ222及びHSFETドライバ224は、CCラインが電力供給に用いられないときに第1のBFET MN1及びHSFET MN2をオフにする。
【0021】
CABLEDET回路202は、第2のピン203と第3のピン205との間に結合されるプルアップ電流源IPUを含む。ケーブル検出が必要とされないとき、及び、CABLEDET回路202の動作の間VBUS・CCライン短絡が生じるとき、第2のピン203及びプルアップ電流源IPUを第3のピン205から切り離すために、第2のBSET MN3が、プルアップ電流源IPUと第3のピン205の間に直列に結合され、ドライバ214によって制御される。ドライバ214が、VDD3V3、VDD1P5、及びクロックCLKを含む、幾つかの信号を受け取る。CABLEDET回路202は、例えばUSBコネクタ212など、USBケーブルのUSBコネクタへの取り付け又は取り外しを検出し得、USBタイプCケーブルは対称であり両端を逆にし得るのでケーブルの向きも検出し得る。プルアップ電流源IPUは、例えば、80μA、180μA、又は330μAなどの或る値を有するかなり精確な電流をUSBコネクタ212上のCCピンに向かって送るように制御され得る。これらの電流値はそれぞれ、ホストデバイスが扱い得る電流レベルを知らしめる。ケーブルがUSBコネクタ212に取り付けられると、知らしめられた電流によって生成される電圧が変化し、それによって取付けの検出が可能となる。ケーブルの可変抵抗器を用いて、ケーブルの反対の端部のデバイスが扱い得る電流量を示す応答を提供し得る。USBプロトコルにより、USBタイプC/PDコントローラチップ200は、ケーブルの反対の端部に取り付けられているデバイスがUSB2.0の5V充電能力だけを用い得るレガシーデバイスであるかどうか、或いは、このデバイスがより大きな電圧を受けるために電力供給プロトコルを用い得るかどうかを判定し得る。
【0022】
電力供給物理層回路204は送信器218及びレシーバ216を含む。第1の抵抗器R1、第3のBFET MN4、及び第2の抵抗器R2が、レシーバ216と第3のピン205の間に直列に結合される。第1のコンデンサC1及び第9のツェナーダイオードD9が互いに並列に結合され、第1のコンデンサC1の第1の端子及び第5のダイオードD5のカソードが、レシーバ216と抵抗器R1との間の点に結合され、第1のコンデンサC1の第2の端子及び第5のダイオードD5のアノードが、一実施形態では局所接地である下側レールに結合される。第3の抵抗器R3及び第4のBFET MN5が、送信器218と第3のピン205との間に直列に結合される。第3のBFET MN4及び第4のBFET MN5はいずれもドライバ220によって制御されるが、本明細書において第4のBFET MN5への接続のみが具体的に示されている。ドライバ220は、信号VDD3V3、VDD1P5、及びクロックCLKも受け取る。PDPHY回路204は、送信器218及びレシーバ216を用いて、USBタイプC/PDコントローラチップ200を含むホストデバイスと、電力供給も用い得るケーブルの反対側の端部のデバイスとの間の取り決めを確立する。
【0023】
USBタイプC/PDバスによって結合されるデバイスは、シンクを充電するためのシンプルな供給源、例えば、充電器及び充電を必要とするデバイス、とし得る。他の状況において、一方又は両方のデバイスが供給源又はシンクのいずれかとして振る舞い得る。例えば、一例において、ユーザは、自分のパーソナルコンピュータ(PC)へのUSB接続を用いて自分の携帯電話を充電し得、第2の例において、携帯電話を用いて電力をPCに提供し得る。デバイスによってネゴシエートされる取り決めにより、電力伝送の方向、及び、USBタイプC/PDケーブルを介して伝送される電力量を指定し得る。
【0024】
USB電力供給通信プロトコルには、バイフェーズマークコーディング(BMC)が用いられる。BMCは、論理値を示すために遷移の有無を用いる差動符号化方法である。BMCコーディングによれば、レシーバは送出される信号の極性を知る必要がない。これは、情報が絶対電圧レベルによって表されるのではなく、絶対電圧レベルの変化によって表されるからである。言い換えれば、2つの電圧レベルのいずれが受信されるかは問題ではなく、前の電圧レベルと同じであるか異なるかのみが問題であり、そのため、同期がより簡単になる。PDPHY回路204によって送られる信号は、極めてクリーンな信号でなければならず、時間ドメインにおける信号の品質を決定するために用いられるアイダイアグラムテストをパスしなければならない。本応用例において、説明される回路のためのアイダイアグラムテストの例を下記で実際に説明する。
【0025】
そのため、CCラインは5V電力及び信号多重ラインである。通信及び電力供給の両方のためにCCラインを共有して用いるので、この図に示す低電圧回路を保護するだけでなく、CABLEDET回路202及びPDPHY回路204の動作中のVCONN電源回路206によるいかなる干渉も回避することが重要である。一実施形態において、BFET MN1、MN3、MN4、MN5の各々は30V LDMOSであり、HSFET MN2は7V LDMOSである。とりわけ、BFET MN1、MN3、MN4、MN5が30Vとして指定されるが、30Vトランジスタをそのまま用いると、説明される回路の面積及びコストの両方を大きく増大させ得るため、これらのBFETはそれぞれのドレインにおいて30Vを扱うようにのみ設計される。BFET MN1、MN3、MN4、MN5のゲートとソースとの間の破壊電圧は、図示するその他の回路要素と同様に、たかだか5Vである。
【0026】
先に述べたように、USBコネクタ212の5V CCピンが、20Vという高い電圧を担持し得るVBUSピンに物理的に近接しているので、CCラインはVBUSの短絡事象を受けやすい。短絡は、典型的に、USBコネクタ212へのケーブルの挿入又はUSBコネクタ212からのケーブルの取り出しの間に生じ得、USBコネクタピンにおける汚染、仕様を満たさないケーブルなどによって引き起こされ得る。短絡は数百ミリ秒にわたって継続し得る。VBUSラインとCCラインの間の短絡事象において、CCピンに接続されるすべての回路は、30Vまで達し得る高電圧状態から保護される必要がある。これは、名目上は20VであるVBUSが28Vまで遷移し得るからである。
【0027】
VBUS・CC短絡によって引き起こされる損傷により、複数の結果が生じ得る。CABLEDET回路202の低電圧回路において用いられるトランジスタのため、PDPHY回路204及びVCONN電源回路206は5Vのみを扱うように設計されており、短絡によりこの設計を超えるゲート‐ソース電圧のためにゲート酸化物が破壊され得る。こういったトランジスタは、トランジスタがオンであるときとオフであるときのいずれでも保護される必要がある。過大な逆電流によっても、デバイスが損傷され得る。バッテリに接続され得る電圧PP_CABLE及びLD0_3V3によって表される入力源の逆充電により、バッテリが不適切に充電され得、潜在的にバッテリを爆発させる恐れがあるので、いかなる逆電流も最小にする必要がある。それに加えて、ホストデバイスがバッテリ切れになっている場合でも、すなわち、電圧LD0_3V3及びPP_CABLEが浮遊しているか又はゼロボルトである場合でも、提供される保護が行われる必要がある。
【0028】
また、提供される保護は、CCラインにおける信号の完全性を維持する必要があり、低速で低電圧である信号と干渉し得ない。これは、電力供給のネゴシエーションにおける通信不良が、デバイスにそのデバイスを破壊する過大な電力を送ることが潜在的に生じ得るからである。特に、VCONN電力経路は、効率的に電力を供給するために、250mオーム未満のドレイン‐ソースオン抵抗(RDSON)を有する。しかし、この低RDSONは、電力経路がオフであるとき大きな漏れ電流を引き起こし得、それが、ケーブル検出回路の精度に干渉し得る。この漏れを最小にする必要がある。さらなる考察によれば、USB PD信号通信の間、VCONN経路が意図せずにオンになり得、CC信号通信を歪ませ得る。これらの問題はいずれも、CABLEDET回路202、PDPHY回路204、及びVCONN電源回路206において提供される保護を設計する際に考慮されなければならない。
【0029】
図2に戻り、過剰電圧に応答して極めて即座にブレークダウンする5~6Vツェナーダイオードが、第1のレベルの保護として用いられる。VCONN電源回路206、第1のツェナーダイオードD1、及び第2のツェナーダイオードD2が、ゲート‐ソース電圧が許容制限を超えないことを保証するために、HSFET MN2のソースとゲートの間でアノード‐アノード結合される。第1のツェナーダイオードD1はさらに、HSFET MN2のソースと第2のツェナーダイオードD2のアノードの間でスイッチS1と並列に結合される。ツェナーダイオードD1、D2及びスイッチS1は、HSFETドライバ224と共に、下記でさらに説明する動的ホットスワップオフ保持回路226の一部を形成する。CABLEDET回路202において、第3のツェナーダイオードD3が、第2のBFET MN3のゲートと下側レールとの間に結合され、PDPHY回路204において、第4のツェナーダイオードD4が、第3のBFET MN4のゲートと下側レールとの間に結合され、第5のツェナーダイオードD5が、第4のBFET MN5のゲートと下側レールとの間に結合される。エッジレートが22V/10nsより大きいとき「強短絡」によって生じるソースが曝されないように、ツェナーダイオードD3、D4、D5は、BFET MN3、MN4、MN5のそれぞれのゲートをプルダウンするように作用する。また、動的ホットスワップオフ保持回路226は、ツェナーダイオードD1、D2がその一部であり、VCONN電源回路206がオフであるときにVCONN経路における漏れを最小にする。
【0030】
第2のレベルの保護が、2つの高速逆電流保護コンパレータRCPC1及びRCPC2によって提供される。第1の逆電流保護コンパレータRCPC1は、第1のピン201から第1の電圧PP_CABLEを受け取り、第3のピン205から第3の電圧C_CCxを受け取り、これら2つの電圧を比較する。ケーブル検出と、電力供給ネゴシエーションの間、BFETドライバ222及びHSFETドライバ224は、第1のBFET MN1及びHSFET MN2に低信号を提供して、これら2つのトランジスタをオフに保持する。VCONN電源回路206がCCピンに電力を供給しているとき、第1のBFET MN1及びHSFET MN2のゲートがハイに保持されて、それぞれのトランジスタがオンになる。第1のBFET MN1及びHSFET MN2がオンであるとき、第1の電圧PP_CABLEは、第1のBFET MN1及びHSFET MN2の極めて小さな電圧降下のために、第3の電圧C_CCxと同じか、又は、第3の電圧C_CCxより極めてわずかに大きくなるべきである。第3の電圧C_CCxが第1の電圧PP_CABLEよりも大きくなると、この状態は短絡を示し、この場合、第1の逆電流保護コンパレータRCPC1は、第1のBFET MN1及びHSFET MN2をオフにすることを開始することを示す第1の逆電流信号をBFETドライバ222及びHSFETドライバに送る。
【0031】
同様に、第2の逆電流保護コンパレータRCPC2は、第2のピン201から第2の電圧LD0_3V3を受け取り、第3のピン205から第3の電圧C_CCxを受け取り、これら2つの電圧を比較する。BFET MN3、MN4、MN5は、ケーブル検出と、電力供給のためのネゴシエーションの間オンになるようにドライバ214、220によって制御されるが、PP_CABLE・C_CCx電力供給の間、オフにされる。CABLEDET回路202及びPDPHY回路204がアクティブである一方で、第3の電圧C_CCxが第2の電圧LD0_3V3よりも大きくなると、再度、短絡が示され、第2の逆電流保護コンパレータRCPC2は、BFET MN3、MN4、MN5をオフにすることを開始することを示す第2の逆電流信号をドライバ214、220に送る。逆電流保護コンパレータRCPC1、RCPC2は高速に応答するので、それぞれのドライバは、BFET MN1、MN3、MN4、MN5、及びHSFET MN2を100ns未満でオフにし得、デバイスの損傷を防ぎ得る。
【0032】
例えば、22V/100μs未満のエッジレートを有する「弱短絡」が生じると、第3の電圧C_CCxがよりゆっくりと立ち上がる。これにより、電圧PP_CABLE及びLD0_3V3をプルし得る一層小さな逆電流が流れ得、そのため、逆電流保護コンパレータRCPC1、RCPC2がトリップしないことがある。この可能性に対して、第3のレベルの保護が提供される。すなわち、2つの過電圧保護コンパレータOVPC1、OVPC2が、第3の電圧C_CCxを、接地に対して設定される基準電圧と比較し、過電圧保護コンパレータOVPC1、OVPC2の出力を用いて、BFET MN1、MN3、MN4、MN5及びHSFET MN2をオフにし得る。
【0033】
第1の過電圧保護コンパレータOVPC1において、第3の電圧C_CCxが、約6ボルトとし得る第1の基準電圧と比較される。一実施形態において、第1の基準電圧は5.9~6.1Vの範囲である。第3の電圧C_CCxが第1の基準電圧よりも大きくなると、第1の過電圧保護コンパレータOVPC1は、第1の過電圧信号OVP_6Vを送出し、第1の過電圧信号OVP_6Vは、BFETドライバ222及びHSFETドライバ224によって受け取られ、第1のBFET MN1及びHSFET MN2をオフにすることを開始する。
【0034】
同様に、第2の過電圧保護コンパレータOVPC2において、第3の電圧C_CCxが、一実施形態において約4ボルトとし得る第2の基準電圧と比較される。一実施形態において、第2の基準電圧は3.9~4.1Vの範囲である。第3の電圧C_CCxが第2の基準電圧よりも大きくなると、第2の過電圧保護コンパレータOVP2は、第2の過電圧信号OVP_4Vを送出し、第2の過電圧信号OVP_4Vは、ドライバ214、222によって受け取られ、BFET MN3、MN4、MN5をオフにすることを開始する。第2の過電圧信号OVP_4Vは、HSFETドライバ224によっても受け取られ、HSFETドライバ224は、この信号を用いてCCラインが4V未満である時点を正確に判定する。
【0035】
最終的に、ホストデバイスがバッテリ切れを起こし、第1の電圧PP_CABLE及び第2の電圧LD0_3V3がともにゼロである場合でも保護が行われることを保証するために、バッテリ切れプルダウンジェネレータ210が提供される。バッテリ切れプルダウンジェネレータ210は、第3のピン205に結合されて第3の電圧C_CCxを受け取る。USBコネクタ212のVBUSピンとCCピンとの間の短絡事象において、バッテリ切れプルダウンジェネレータ210は、第3のピン205からの電力をプルし、バッテリ切れプルダウン信号DB_pdを提供する。第1のバッテリ切れプルダウントランジスタMN6は、第1のBFET MN1のゲートに結合される。同様に、第2のバッテリ切れプルダウントランジスタMN7、第3のバッテリ切れプルダウントランジスタMN8、及び第4のバッテリ切れプルダウントランジスタMN9は、BFET MN3、MN4、MN5のゲートにそれぞれ結合される。バッテリ切れプルダウントランジスタM6、MN7、MN8、MN9は、ホストデバイスのバッテリ切れで短絡が生じるときに、BFET MN1、MN3、MN4、MN5のゲートをそれぞれ下側レールにプルし得る。これらの複数のレベルの保護により、USBコネクタ212のVBUSとCCピンとの間の短絡が、提供される精密回路要素を破壊しないことが保証される。
【0036】
次に
図3に移り、回路300は、
図2の動的ホットスワップオフ保持回路226を、CCラインに提供される通信信号のいくらかの詳細と共に示す。最初にこの図の上部を見ると、0~1.2Vの範囲で動作する信号304として、送信器218が、第3のピン205に向かって送出される信号302を受け取る。信号304は、USB仕様を満たすように整形されなければならず、アイ306のいかなる部分にも触れ得ない。これらの仕様を満たすため、HSFET MN2を保護するために付加される保護が、CCラインに送られる通信に影響を及ぼさないことが重要である。
【0037】
図2の動的ホットスワップオフ保持回路226として用いられ得る動的ホットスワップオフ保持回路308は、迅速な応答が必要とされる強短絡の場合にHSFET MN2のソースとゲートを結合するように、先に述べたようにHSFET MN2のソースとゲートとの間でアノード‐アノード結合される第1及び第2のツェナーダイオードD1、D2を含む。第1及び第2のツェナーダイオードD1とD2の保護を補うために2つの他の回路が結合される。第1のPMOSトランジスタMP1が、HSFET MN2のソースと第2のツェナーダイオードD2のアノードとの間に結合され、オンにされると、第1のツェナーダイオードD1の破壊電圧をバイパスする。第1のPMOSトランジスタMP1のゲートが、ホットスワップオフ保持回路内の第3のツェナーダイオードであるツェナーダイオードD6を介してHSFET MN2のソースに結合され、また、高電圧コンデンサC2を介して下側レールに結合される。抵抗器とも称する第1及び第2の抵抗性要素R4、R5が、HSFET MN2のソースと下側レールとの間で第1のクランプ‐イネーブルトランジスタMN10に直列に結合され、一方で、第1のPMOSトランジスタMP1のゲートがさらに、第1の抵抗性要素R4と第2の抵抗性要素R5の間の或る地点に結合される。第1のクランプ‐イネーブルトランジスタMN10は、HSFETドライバ224によって送られるクランプ‐イネーブル信号CLAMP_ENによって制御される。
【0038】
第2のPMOSトランジスタMP2及び第3のPMOSトランジスタMP3が、HSFET MN2のソースとゲートの間で直列に結合されて、ツェナーダイオードD1、D2を完全にバイパスし、第2及び第3のPMOSトランジスタMP2、MP3は、共通ソース及び共通ゲートを共有する。動的ホットスワップオフ保持回路内の第4のツェナーダイオードであるツェナーダイオードD7と、第3の抵抗性要素R7とが、PMOSトランジスタMP2、MP3の共通ソースと共通ゲートの間で並列に結合され、ツェナーダイオードD7は、共通ゲートに結合されるアノード及び共通ソースに結合されるカソードを有する。第4の抵抗性要素R8が、PMOSトランジスタMP2、MP3の共通ゲートと下側レールとの間で第2のクランプ‐イネーブルトランジスタMN11に直列に結合され、第2のクランプ‐イネーブルトランジスタMN11のゲートが、HSFETドライバ224からのクランプ‐イネーブル信号CLAMP_ENを受け取るように結合される。最終的に、第5の抵抗性要素R6が、HSFET MN2のゲートと下側レールとの間でプルダウンイネーブルトランジスタMN12に直列に結合され、プルダウンイネーブルトランジスタMN12のゲートが、HSFETドライバ224からのプルダウンイネーブル信号PD_ENによって制御されて、HSFETのゲートが下側レールに選択的に結合される。一実施形態において、ツェナーダイオードD1、D2、D6、D7の各々は5Vであり、第1の抵抗性要素R4は4MΩの抵抗を有し、第2の抵抗性要素R5は1MΩの抵抗を有し、抵抗性要素R6は100kΩの抵抗を有し、第3の抵抗性要素R7は100kΩの抵抗を有し、第4の抵抗性要素R8は500kΩの抵抗を有し、コンデンサC2は200fFの容量を有する。
【0039】
VCONN電源回路206がオフであり、CCライン上の電圧が4V未満であるとき、HSFET MN2のゲートは、プルダウンイネーブル信号PD_ENを用いることによって接地にプルダウンされて、プルダウンイネーブル信号トランジスタMN12をオンにし、それによって漏れが最小になることが保証される。第1のPMOSトランジスタMP1はオフであり、第2及び第3のPMOSトランジスタMP2、MP3はオフであり、プルダウンイネーブル信号PD_ENはハイであり、クランプ‐イネーブル信号CLAMP ENはローである。VCONN電源回路206がオフのままCCライン上の電圧が4Vと5Vの間に上昇すると、PMOSトランジスタMP2、MP3を介する経路は部分的に利用可能になるが、完全には増強されず、同様に、第1のPMOSトランジスタMP1及び第2のツェナーダイオードD2を介する経路は部分的にエンゲージされる。CCシグナリング及びケーブル検出は4Vよりもかなり下で生じ、そのため、いったん電圧が4Vより大きく上昇すれば、いかなる漏れも信号完全性の問題を引き起こさないことに留意されたい。VCONN電源回路206がオフであり、CCライン上の電圧が5Vを上回って上昇すると、第1のPMOSトランジスタMP1及び第2のツェナーダイオードD2を介する経路が完全にエンゲージされて、いかなるVBUS・CC短絡事象の間でもゲート酸化物が保護される。第2及び第3のPMOSトランジスタMP2、MP3を介する経路も、HSFET MN2のゲート‐ソースを短絡するように完全に増強される。プルダウンイネーブル信号PD_ENがローにアサートされ、クランプ‐イネーブル信号CLAMP_ENがハイにアサートされる。
【0040】
強短絡の間、バッテリ電力の存在下又はバッテリ切れのいずれにおいても、第1のPMOSトランジスタMP1がコンデンサC2によりオンにされ、HSFET MN2のゲート‐ソース電圧(VGS)を第2のツェナーダイオードD2の両端間のほぼダイオード電圧降下にクランプする。コンデンサC2は、第1のPMOSトランジスタMP1が電力供給通信の間オンにされないようにサイズ設定される。いかなる状態下でも、HSFET MN2のゲート‐ソース電圧は、第1のツェナーダイオードD1の破壊電圧に第2のツェナーダイオードD2の両端間のダイオード電圧降下を加算したものより大きくならない。説明される回路のシミュレーションによって例証されるように、この回路は、HSFET MN2を保護する一方で、通常の動作の間のCCライン上の通信に干渉しない。
【0041】
図4は、或る実施形態において、例えば、バッテリ切れプルダウンジェネレータ210として用いられ得るバッテリ切れプルダウンジェネレータ400の例を示す。バッテリ切れプルダウンジェネレータ400回路を完全な形で示す。バッテリ切れプルダウンジェネレータ400は、CCピン402と下側レールとの間でN型金属酸化物シリコン(NMOS)トランジスタMN13に直列に結合される抵抗器R9及びR10を含む。高電圧コンデンサC3が、CCピン402と抵抗器R10の間で抵抗器R9に並列に結合される。ツェナーダイオードD8が、抵抗器R10と下側レールの間でNMOSトランジスタMN13に並列に結合され、NMOSトランジスタMN14、MN15、MN16が抵抗器R10と下側レールの間で直列に結合される。ディセーブルバッテリ切れプルダウン信号Dis_DB_pdが、NMOSトランジスタMN13のゲートに提供され、チップ電源が利用可能になるとハイにアサートされ、そのため、バッテリ切れプルダウン信号DB_pdがローにプルされる。抵抗器R11が、NMOSトランジスタMN13のゲートと下側レールとの間で結合されて、ディセーブルバッテリ切れリプルダウン信号Dis_DB_pdがハイにアサートされないとき、NMOSトランジスタMN13のゲートをプルダウンし、そのため、バッテリ切れリプルダウン信号DB_pdが約3Vの値まで上がり得る。次いで、バッテリ切れプルダウン信号DB_pdが、バッテリ切れプルダウントランジスタMN6、MN7、MN8、MN9のゲートをオンにするのに十分になり、これらのゲートがBFET MN1、MN3、MN4、MN5のそれぞれのゲートをプルダウンする。一実施形態において、ツェナーダイオードD8は5Vゲート酸化物保護ダイオードであり、抵抗器R9は12MΩの抵抗を有し、抵抗器R10は20kΩの抵抗を有し、抵抗器R11は4MΩの抵抗を有し、コンデンサC3は200fFの容量を有する。
【0042】
図5Aは、VCONN電源回路206が動作している一方で、USBコネクタ212における20V/10nsのランプレートを有する強短絡のシミュレーションを示す。グラフ(a)~(e)は、共通時間ラインを図示するため、幾つかの信号を重なった形式で提供する。グラフ(a)において、第1の電圧PP_CABLE及び第3の電圧C_CCxは初期的には区別不能であるが、時間T1において、強短絡が生じ、第3の電圧C_CCxが約20Vの値まで迅速に立ち上がる。グラフ(b)からわかるように、ここではRCP1として示す第1の逆電流保護コンパレータRCPC1からの出力信号が、21ns後よりも早くトリップする。グラフ(c)も第1の電圧PP_CABLEを示すが、生じる電圧上昇、0.14V未満の上昇を図示するためにY軸が大きく拡大されている。グラフ(d)は、時間T1において短絡が生じるときに、逆電流、すなわち、負の値を有する電流がC_CCxに流れ込み始めることを図示する。第1の逆電流保護コンパレータRCPC1がトリガをかけると、グラフ(e)は、第1のBFET MN1のゲート上の電圧が、第1のBFET MN1が時間T2においてオフされるまで、短絡から50ns未満の間、降下し始めることを示す。所望されるように、HSFET MN2のゲートは、第3の電圧C_CCxに追従して上昇してHSFET MN2のゲートを保護するが、第1のBFET MN1がオフであるため、VCONN電源回路206を介する経路がオフになり、C_CCxへの逆電流がゼロに戻る。
【0043】
図5Bは、VCONN電源回路206が動作している一方で、USBコネクタ212において20V/1sのランプレートを有する弱短絡のシミュレーションを示す。ここでもグラフ(f)は、第3の電圧C_CCxが上昇し始める時間T3において短絡が生じるまで共に流れる第1の電圧PP_CABLE及び第3の電圧C_CCxを示す。グラフ(g)からわかるように、第1の過電圧保護コンパレータOVPC1がまずトリップし、BFETドライバ222及びHSFETドライバ224に第1の過電圧信号OVP_6Vを送り、そのため、グラフ(i)からわかるように、第1のBFET MN1がオフにされ、HSFET MN2がもはやHSFETドライバ224によって駆動されない。第1の逆電流保護コンパレータRCPC1は、グラフ(h)からわかるように、第1のBFET MN1がすでにオフされた後、短い時間の後、トリップする。グラフ(i)からさらにわかるように、HSFET MN2及び第1のBFET MN1のゲートはいずれも初期的に完全にオンである。時間T3において短絡が検出されるとすぐ、両方のゲート上の電圧が降下し、第1のBFET MN1のゲートがゼロまで降下する一方で、HSFET MN2のゲートがまず降下するが、次いで上昇して、HSFET MN2のソース上の電圧を追尾し始める。グラフ(j)は、短絡時にはるかに小さな逆電流が極めて短く生じるが、すぐにオフにされることを示す。
【0044】
図6は、電力供給シグナリングの間、トランスミッタ218によって生成される信号304のシミュレーションを示し、USB PD仕様によって定義されるアイ306も示す。USB PD仕様によれば、最小スルーレートは300nsであり、最大スルーレートはアイマスクによって決定される。この図からわかるように、本明細書において説明した保護回路要素によるPD信号送信における劣化はない。
【0045】
図7~
図9は、前述のUSBコントローラにおいて用いられているか、或いは、このような用途が考えられ得たが、説明した実施形態によってもたらされる保護も干渉の欠如も提供されない、同じ問題に対する解決策を示す。これらの最後の図は、比較のためだけに、かつ、上述の結果を実現することの困難さを強調するために提供される。
図7において、回路700は、VCONN電源回路206における漏れ低減を目的とし、HSFET MN2のゲートと下側レールとの間で抵抗器Ra及びRbをNMOSトランジスタMNaと直列に結合し、NMOSトランジスタMNaのゲートは、ディセーブルVCONN信号Dis_vconn信号によって制御される。ツェナーダイオードDaが、HSFET MN2のソースとゲートの間で結合され、PMOSトランジスタMPaが、HSFET MN2のソースとゲートの間で結合され、PMOSトランジスタMPaのゲートは、抵抗器RaとRbの間で得られる電圧によって制御される。
【0046】
PMOSトランジスタMPaは、VCONN電源回路206がオフであるときに、HSFET MN2のゲートとソースを短絡するために用いられる。しかし、この回路は、Ra、Rb、及びMNaを介する余分な漏れ経路を導入する。USB PD通信の間、特に信号の立下りエッジにおいて、PMOSトランジスタMPaは、RC遅延、及びPMOSトランジスタMPaのカットオフに起因して、短時間オフになり得る。これにより、HSFET MN2が短時間オンになり得、USB PDシグナリングにおいてひずみが生じ得る。また、0Vのゲート‐ソース電圧でさえ、250mΩ電力経路に対して125℃で15~20μAの漏れ電流が流れ得、これは、プルアップ電流源IPUによって提供される電流の仕様を阻害する。
【0047】
図8は、過渡電圧抑制(TVS)ダイオードがCCラインに配置されて保護を提供するように企図される回路800を示す。TVSダイオードの破壊電圧(Vbr)は22V未満とし得ない。これは、短絡の継続時間が数百ミリ秒のオーダであり得るからであり、そうでない場合にはダイオード自体が損傷し得る。一例として、22VのVBUS電圧及び6Vの破壊電圧の場合、約10ミリΩのVBUS~CC短絡抵抗は、ダイオード両端間で9.6kWのピーク電力消失を暗に示すものである。破壊電圧を22Vより大きく設定すると、CCにおいて接続される5V回路要素へのいかなる保護も提供されず、そのため、この回路は可能な解決策とならない。
【0048】
図9は、やはりVBUS・CC短絡保護を提供することを企図するが、外部チップを用いるシステム900を示す。チップ902は、説明した短絡保護を含まないUSBタイプC/PDチップの初期バージョンである。必要な保護を提供するために、ユーザは、USBタイプC/PDチップ902とUSBコネクタとの間に30V FETが含まれる第2のチップ904をインストールする必要がある。30V FETは、CCxピンにおいて高電圧状態が検出されるたびに解放される遮断FETとして用いられる。チップ904において保護FETを高速にオフにすること及びシステムクランプにより、コントローラチップ902のCCピンにおける遷移は、最悪の場合でも人体モデルの静電放電事象と同等であることが保証される。システム900の解決策が機能してUSBタイプC/PDチップ902を保護する一方で、この解決策の制限には、経路と直列の付加的な30V FETに因るVCONN経路における付加的な抵抗、アドオン保護チップに因る付加的なコスト及び印刷回路基板(PCB)の複雑さ、及び、チップ904の付加的な静止電流が含まれる。これらの制限は、本解決策によって低減又は回避される。
【0049】
USBタイプC/PDコントローラ及びケーブルの出現により、ユーザは、これらが既存の電子機器に損傷を与え得るデバイス又はケーブルを接続していないこと、及び、強固な保護を提供してこのような損傷をなくすことが重要であることを理解する必要がある。説明した実施形態は、VBUS・CC短絡に対して必要な強固な保護を提供する一方で、RDSONを改善し、システムレベルの静止電流を低減する。別個の保護チップ及び対応する受動PCBコンポーネントの必要性をなくすことによってコストも低減される。説明した保護層は、
図7~
図9のデバイス及びシステムの欠点を克服する解決策をもたらす。
【0050】
特許請求の範囲内で、説明した実施形態における改変が可能であり、他の実施形態が可能である。