(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】表面加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/142 20140101AFI20230712BHJP
【FI】
B23K26/142
(21)【出願番号】P 2019037649
(22)【出願日】2019-03-01
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】弁理士法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 辰彦
(72)【発明者】
【氏名】濱村 秀行
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第202226886(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054570(US,A1)
【文献】特開2016-000423(JP,A)
【文献】特開2001-084579(JP,A)
【文献】特開2014-217862(JP,A)
【文献】特開2014-084245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を通板する複数のローラと、
前記鋼板の加工面にレーザを照射して前記加工面を加工するレーザ照射装置と、
前記鋼板に対して前記レーザを照射するレーザ照射位置よりも前記鋼板の通板方向の上流側に設けられ、前記通板方向の上流側から前記レーザ照射位置に向けて気体を噴射し、前記レーザにより前記加工面を加工する際に前記レーザ照射位置で前記加工面から発生するスパッタを吹き飛ばす気体噴射装置と、
前記レーザ照射位置よりも前記通板方向の下流側に設けられ、前記レーザ照射位置よりも前記通板方向の下流側で、前記気体の気流方向が前記加工面に沿った気流とならないように、前記鋼板を前記レーザにより加工されない非加工面側に曲げることで、前記鋼板の通板方向を変更する通板方向変更ローラと、
前記通板
方向変更ローラで前記鋼板の通板方向を変更することでできた空間の、前記レーザ照射位置での前記鋼板の前記通板方向を直線的に延ばした延長線上に配置され、前記気体によって前記レーザ照射位置から前記鋼板に沿って飛散する前記スパッタを回収するスパッタ回収装置と、
を備える、表面加工装置。
【請求項2】
前記スパッタ回収装置は、
前記レーザ照射位置での前記通板方向の前記延長線上に、前記スパッタを回収する開口部が設けられている、
請求項1に記載の表面加工装置。
【請求項3】
前記レーザ照射装置は、
前記鋼板の前記加工面と垂直な方向から前記レーザを照射し、
前記気体噴射装置は、
前記レーザ照射装置から発する前記レーザの光軸と直交する方向から前記加工面に沿った前記気体を噴射する、
請求項1又は2に記載の表面加工装置。
【請求項4】
前記レーザ照射装置は、
縦方向に通板されている前記鋼板の前記加工面に前記レーザを照射し、
前記気体噴射装置は、
縦方向下側にある前記レーザ照射位置に向けて前記鋼板の前記加工面に沿った前記気体を噴射し、
前記スパッタ回収装置は、
前記レーザ照射位置での前記鋼板の前記通板方向を直線的に縦方向下側に向けて延ばした延長線上に配置されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の表面加工装置。
【請求項5】
前記スパッタ回収装置は、
供給管を介して水が供給されるとともに、排出管を介して前記水が排出される貯留部を備え、前記水が循環する前記貯留部により前記スパッタを回収する水流型スパッタ回収装置である、
請求項4に記載の表面加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁鋼板(以下、単に鋼板とも称する)を用いて鉄心を作製する際、鉄心を形成する前に鋼板の表面にレーザを照射して溝を形成し、鉄心の鉄損を低減させることが知られている。一般的に、鋼板の表面に溝を形成する場合、鋼板の表面にレーザを照射している。レーザを鋼板に照射すると、レーザの照射位置で鋼板が瞬時に溶融し、溶融金属が発生する。その後、レーザ照射位置での急激な圧力上昇により、溶融金属の液滴(以下、スパッタと称する)が周囲に飛散して鋼板の表面に溝が形成される。
【0003】
鋼板の表面に溝を形成する際に、鋼板から発生するスパッタが周囲に飛散すると、飛散したスパッタが鋼板の他の表面にも付着してしまう恐れがある。スパッタが付着した状態のまま鋼板をコイル状に巻き取ると、鋼板間にスパッタが巻き込まれてしまうため、表面疵の原因になってしまう。
【0004】
また、スパッタが周囲に飛散した場合には、レーザ照射装置等の周辺機器にも付着する恐れもある。例えば、スパッタが周辺機器に繰り返し付着すると、スパッタが周辺機器に堆積してゆき、金属の塊となってしまう。このような金属の塊は、鋼板に落下して鋼板の表面に付着してしまう恐れもあり、上記と同様に疵やトラブルの発生原因となる。
【0005】
そこで、このような問題点を解決するために、例えば、特許文献1には、レーザ照射位置に鋼板の表面とほぼ平行にアシストガスを噴射し、アシストガスによってスパッタを吹き飛ばすことで溝周辺に溶融金属の突起が形成されることを抑制することが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、鋼板の表面にレーザを照射したことにより鋼板の表面に形成される溶融副産物(スパッタ)を、エアブローイングにより除去したり、或いは、吸引したりして除去することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-292484号公報
【文献】特表2015-510543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、レーザが照射されるレーザ照射位置にアシストガスを噴射し、レーザ照射位置で発生するスパッタを単にガス流方向に向けて強制的に吹き飛ばしているに過ぎないため、飛ばされたスパッタが再び鋼板の表面に付着してしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2では、吸引ダクト等を設置することでスパッタを回収し易くなるものの、吸引ダクトの設置場所によっては、吸引ダクト内の壁等にスパッタが衝突して跳ね返ってしまい、飛ばされたスパッタが再び鋼板の表面に付着してしまうという問題がある。さらに、吸引ダクトを鋼板の表面上に設置しても、吸引ダクトと鋼板との間には隙間が存在するため、エアブローイングにより鋼板の表面に沿って飛散したスパッタについては、吸引ダクトと鋼板との間にある隙間を通過してしまい、スパッタが再び鋼板の表面に付着してしまうという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、従来よりも一段と確実にスパッタを回収し、鋼板にスパッタが付着することを抑制し得る表面加工装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表面加工装置は、鋼板を通板する複数のローラと、前記鋼板の加工面にレーザを照射して前記加工面を加工するレーザ照射装置と、前記鋼板に対して前記レーザを照射するレーザ照射位置に気体を噴射し、前記レーザにより前記加工面を加工する際に前記レーザ照射位置で前記加工面から発生するスパッタを前記気体によって吹き飛ばす気体噴射装置と、前記気体噴射装置から前記レーザ照射位置に向かって前記気体が流れる気流方向において前記レーザ照射位置よりも前記気体の気流方向下流側で、前記レーザにより加工されない非加工面側に前記鋼板を曲げ、前記レーザ照射位置での前記鋼板の通板方向を変更する通板方向変更ローラと、前記レーザ照射位置での前記鋼板の前記通板方向を直線的に延ばした延長線上に配置され、前記気体によって前記レーザ照射位置から前記鋼板に沿って飛散する前記スパッタを回収するスパッタ回収装置と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、通板方向変更ローラで鋼板の通板方向を変えることで、鋼板と干渉させずに、レーザ照射位置から通板方向に直線的に延ばした延長線上の位置にスパッタ回収装置を配置させることができる。よって、本発明では、レーザ照射位置から鋼板に沿って飛散するスパッタをスパッタ回収装置により回収することができるので、従来よりも一段と確実にスパッタを回収し得、鋼板にスパッタが付着することを抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態による表面加工装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図1の表面加工装置における通板方向変更ローラの周辺を拡大した部分拡大図である。
【
図3】スパッタ回収装置の構成を示す概略図である。
【
図4】第2実施形態による表面加工装置の構成を示す概略図である。
【
図5】
図4の表面加工装置における通板方向変更ローラの周辺を拡大した部分拡大図である。
【
図6】第3実施形態による表面加工装置の構成を示す概略図である。
【
図7】水流型スパッタ回収装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施形態を詳述する。以下の説明において、同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
(1)<第1実施形態>
(1-1)<第1実施形態による表面加工装置の構成>
図1は、第1実施形態による表面加工装置1の全体構成を示した概略図である。ここでは、表面加工装置1によりレーザ3aで表面が加工される鋼板として、例えば、表面に溝が形成される方向性電磁鋼板を一例として以下説明する。また、以下、レーザ3aで加工される鋼板7の表面を加工面7aと称し、レーザ3aにより加工されない鋼板7の裏面を非加工面7bと称する。
【0016】
なお、方向性電磁鋼板は、結晶粒の磁化容易軸(立方晶(100)<001>)が製造工程における圧延方向にほぼ揃っている鋼板である。
【0017】
このような方向性電磁鋼板は、例えば、鋳造工程、熱間圧延工程、焼鈍工程、冷間圧延工程、脱炭焼鈍工程、焼鈍分離剤塗布工程、最終仕上げ焼鈍工程、絶縁皮膜形成工程、レーザ照射工程及び絶縁皮膜形成工程を順次経て作製される。表面加工装置1は、レーザ照射工程において用いられ、レーザ3aによって鋼板7の表面に溝を形成する。なお、このレーザ照射工程は、冷間圧延工程、脱炭焼鈍工程又は最終仕上げ焼鈍工程の後に行うこともできる。これら各工程については、公知の技術であるため、ここではその説明は省略する。
【0018】
図1に示すように、表面加工装置1は、複数のローラ9と、通板方向変更ローラ5と、気体噴射装置2と、レーザ照射装置3と、スパッタ回収装置6、集塵機11と、吸引ブロア12とを備えている。ローラ9は、平板状の鋼板7が通板される通板路に沿って複数設けられており、鋼板7を一定速度で通板方向x1,x3に通板する。
【0019】
レーザ照射装置3は、ローラ9により通板されている鋼板7の片面に向けてレーザ3aを集光・照射して、鋼板7の通板方向x1と直交する鋼板7の幅方向に走査し、レーザ3aが照射される位置(レーザ照射位置)において鋼板7の加工面7aに溝を形成する。これにより、鋼板7の加工面7aには、通板方向x1にほぼ直交する幅方向に延びる溝が、通板方向x1において所定間隔で形成される。
【0020】
なお、第1実施形態では、レーザ照射位置O1よりも通板方向上流側に配置したローラ9により鋼板7が横方向に通板されている。これにより、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1も横方向となっている。ここで、横方向とは、重力が働く鉛直方向と直交する水平方向だけでなく、水平方向に対して所定角度傾いている方向も含むものである。
【0021】
レーザ照射装置3は、例えば、ファイバコアにレーザ媒質としてYb(イッテルビウム)がドープされたファイバレーザを用いて、通板方向x1に一定速度で通板される鋼板7の加工面7aに溝を形成する。なお、レーザ照射装置3は、ファイバレーザに限定されるものではなく、例えばCO2レーザ、YAGレーザ、半導体レーザ等、レーザ加工に一般に用いられるものであれば良い。
【0022】
第1実施形態におけるレーザ照射装置3は、ローラ9によって横方向に通板する鋼板7の上方に配置されており、横方向に通板する鋼板7の加工面7aに垂直な方向からレーザ3aを照射する。ここで、鋼板7の加工面7aに垂直な方向とは、レーザ照射位置O1での鋼板7の面法線の方向だけでなく、ローラ9又はレーザ照射装置3等の設置誤差によるずれを含むものである。
【0023】
気体噴射装置2は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1(
図1では横方向)において、レーザ照射位置O1よりも通板方向上流側に配置されており、通板方向上流側からレーザ照射位置O1に向けて、横方向に鋼板7の加工面7aに沿った気体を噴射する。気体噴射装置2は、横方向からレーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8において、レーザ照射位置O1よりも気流方向下流側に、レーザ照射位置O1で鋼板7から発生したスパッタを吹き飛ばす。
【0024】
かかる構成に加えて、表面加工装置1には、レーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8において、レーザ照射位置O1よりも気流方向下流側に通板方向変更ローラ5が設けられている。通板方向変更ローラ5は、レーザ照射位置O1よりも気流方向下流側で、鋼板7を非加工面7b側に曲げ、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を変更する。
図1では、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向をx1とし、通板方向変更ローラ5により変更された鋼板7の通板方向をx2としている。
【0025】
通板方向変更ローラ5は、例えば円柱状に形成されており、鋼板7のレーザ3aが照射されない非加工面7b側に配置されており、通板方向変更ローラ5の曲面に沿って鋼板7を曲げながら通板する。これにより、通板方向変更ローラ5は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を、非加工面7b側に向かう通板方向x2に変更する。ここで、第1実施形態では、通板方向変更ローラ5により変更される通板方向x2の一例として、下方に向かう方向を示している。
【0026】
なお、通板方向変更ローラ5よりも通板方向下流に設けたローラ9は、鋼板7の溝が形成された加工面7aに曲面を当接させ、通板方向変更ローラ5で下方に向けて通板されている鋼板7を曲面に沿って再び横方向に通板している。
図1に示したx3は、通板方向変更ローラ5を通過した鋼板7が、通板方向変更ローラ5よりも通板方向下流に位置するローラ9によって変更された方向を示す。
【0027】
通板方向変更ローラ5は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を、非加工面7b側に曲げて異なる通板方向x2に変更し、レーザ照射位置O1に吹き付けられた気体の気流方向下流側に、鋼板7と干渉せずにスパッタ回収装置6が設置可能な設置空間を形成する。
【0028】
スパッタ回収装置6は、このようにして通板方向変更ローラ5によって鋼板7の通板方向x1が変更されることにより形成された設置空間に設置されている。これにより、スパッタ回収装置6は、鋼板7と干渉することなく、レーザ照射位置O1の近傍に配置させることができる。
【0029】
ここで、気体噴射装置2はレーザ照射位置O1に横方向から気体を強く吹き付けている。そのため、レーザ照射位置O1に対して横方向から吹き付けられた気体は、通板方向変更ローラ5により下方向に曲げられた鋼板7に沿った気流とはならずに、大部分はレーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1にほぼ沿ってそのまま直線的に横方向に流れる。これにより、レーザ照射位置O1で鋼板7から発生したスパッタは、気流方向下流側に位置するスパッタ回収装置6に向けて吹き飛ばされる。
【0030】
この場合、スパッタ回収装置6には、吸引ブロア12と集塵機11とが通気ダクト10を介して接続されている。スパッタ回収装置6は、吸引ブロア12が駆動されることで、開口部周囲の気体を吸引し、通気ダクト10を介して集塵機11に取り込む。集塵機11は、取り込まれた気体内に含まれるスパッタ等を集塵した後、スパッタ等を取り除いた気体を、通気ダクト10を介して吸引ブロア12に取り込ませる。
【0031】
これにより、表面加工装置1は、気体により鋼板7の加工面7aに沿って吹き飛ばされたスパッタを、レーザ照射位置O1からそのまま直線的に横方向に流れる気体の気流方向下流に配置したスパッタ回収装置6によって回収することができる。
【0032】
次に、
図1に示した表面加工装置1において、加工面7aで発生したスパッタをスパッタ回収装置6により回収する構成について詳細に説明する。
図2は、
図1に示した表面加工装置1のうち、通板方向変更ローラ5の周辺を拡大した部分拡大図である。
図2に示すように、レーザ照射装置3から発するレーザ3aは、鋼板7の加工面7aに縦方向から照射されており、当該レーザ3aによって鋼板7の加工面7aに溝を形成する。
【0033】
気体噴射装置2は、気体を鋼板7へ向けて噴射するノズルを有しており、ノズルからレーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8が、レーザ3aの光軸3bとほぼ直交する横方向に選定されている。また、気体噴射装置2のノズルは、鋼板7の表面近傍に配置されており、横方向に噴射する気体を、レーザ照射位置O1における鋼板7の加工面7aに沿って吹き付けている。
【0034】
これにより、気体噴射装置2は、レーザ照射位置O1でレーザ3aによって鋼板7の加工面7aに溝が形成される際に発生するスパッタを、レーザ照射位置O1で加工面7aに沿って通板方向x1(横方向)に流れる気体により、スパッタ回収装置6に向けて吹き飛ばす。
【0035】
ここで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1と直交する面法線をL1とし、通板方向変更ローラ5によって非加工面7b側に鋼板7が曲げられた後の鋼板7の通板方向x2と直交する面法線をL2として、通板方向変更ローラ5によって非加工面7b側に鋼板7を曲げたときに、変更前の面法線L1から変更後の面法線L2へと変化する際の内角を変更角度θとする。この変更角度θは、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1から、通板方向変更ローラ5によって非加工面7b側に鋼板7が曲げられて鋼板7が通板方向x2に変化するときの曲げ角度を示すものである。
【0036】
このような変更角度θは、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上に、スパッタ回収装置6が設置可能な設置空間を確保できる角度であれば、特に限定されない。ただし、その中でも好ましい変更角度θとしては、20度以上90度以下である。
【0037】
スパッタは、レーザ照射位置O1からある程度拡散するものであり、また、噴射気体の一部が鋼板7の加工面7aに沿って流れることから、変更角度θが小さいと、加工面7aの極近傍に沿ってスパッタが流れることになる。その場合、スパッタ回収装置6で十分にスパッタを回収できない場合がある。そこで、変更角度θを20度以上とすることで、スパッタの拡散や加工面7aに沿った流れがあったとしても、鋼板7の通板方向を大きく変化させることで、レーザ照射位置O1の近傍で鋼板7の加工面7aの近傍を流れたスパッタは、鋼板7から離れることになり、スパッタ回収装置6での回収が容易となる。
【0038】
また、変更角度θは大きい方がスパッタ回収装置6の設置スペースを大きく設定することが可能となり、スパッタ回収装置6の開口部6bの開口を大きく設計することが容易となって好ましいが、変更角度θが90度のときに、設置可能な開口部6bはほぼ最大となる。一方、変更角度θが更に大きくなると、通板時の鋼板7の曲げ応力による通板方向変更ローラ5への荷重が大きくなり、通板方向変更ローラ5の設計、通板速度に制約が発生してしまう。そのため、変更角度θは90度以下とすることが好ましい。
【0039】
気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて噴射された気体は、鋼板7の通板方向x1が通板方向変更ローラ5により非加工面7b側に変更角度θだけ変更されても、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1にほぼ沿って流れる気流となり得る。
【0040】
この場合、スパッタ回収装置6は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上に配置されている。また、スパッタ回収装置6は、大気中の気体を吸引する開口部6bとレーザ照射位置O1との距離Dが、延長線EL1上にほぼ沿って流れる気体を取り込むことができる距離に選定されている。
【0041】
なお、本実施例では気体噴射装置2からの気体噴射方法は、通板方向x1にほぼ平行として説明しているが、鋼板7の加工面7aに向けて斜め上から噴射するようにしてもよい。この場合でも噴射気体は鋼板7の加工面7aで偏向されて、延長線EL1にほぼ沿って流れるため、延長線EL1上に配置したスパッタ回収装置6に向けてスパッタを吹き飛ばすことができる。
【0042】
ここで、開口部6bとレーザ照射位置O1との距離Dは、気体噴射装置2からの気体の噴射力、スパッタ回収装置6の吸引力、及び、通板方向変更ローラ5により鋼板7を曲げる変更角度θを変えることで形成される設置空間の大きさを調整することにより決めることができる。
【0043】
スパッタ回収装置6は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1が、開口部6bの開口領域内に含まれるように、開口部6bの一端部6cから他端部6dまでの幅Hが選定されている。
【0044】
スパッタ回収装置6は、通板方向変更ローラ5によって鋼板7の通板が回避されていることから、鋼板7と干渉させずに、通板方向変更ローラ5で鋼板7が曲げられる方向側(
図2では下方側)に、開口部6bの一端部6cを配置させることができる。
【0045】
なお、開口部6bの一端部6cは、通板方向変更ローラ5によって鋼板7の変更角度θを調整することで、例えば、レーザ照射位置O1周辺における通板方向変更ローラ5の頂上部よりも、さらに下方側に配置させることができる。
【0046】
ここで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1と、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8との関係について説明する。レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1と、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8とは、必ずしも平行である必要はなく、これら通板方向x1と気流方向8との先にスパッタ回収装置6の開口部6bが配置されていればよい。
【0047】
これにより、スパッタ回収装置6は、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8によって吹き飛ばされたスパッタを回収する際、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1に向けて加工面7aに沿って吹き飛ばされたスパッタについても回収することができる。
【0048】
なお、より好ましくは、気体噴射装置2から噴射される気体のレーザ照射位置O1への吹き付け角度や、レーザ照射位置O1との距離等を調整し、レーザ照射位置O1で鋼板7の加工面7aに沿って気体が流れることが望ましい。これにより、レーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8が、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1とほぼ一致するので、当該通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上に配置したスパッタ回収装置6に向けてスパッタを吹き飛ばすことができる。
【0049】
ここで、
図3は、スパッタ回収装置6の構成を示した概略図である。
図3に示すように、スパッタ回収装置6は、筐体6aの先端に開口部6bが形成されており、根元部側に通気ダクト10が接続されている。開口部6bの一端部6c及び他端部6dの幅Hは、通気ダクト10が接続された筐体6aの根元側の幅よりも幅広に形成され、開口部6bから根元部側に向かうに従って次第に幅狭に形成されている。これより、スパッタ回収装置6は、開口部6bで大気中の気体をより多く吸引し得るように構成されており、気体により開口部6bに向けて吹き飛ばされたスパッタを一段と確実に吸引し得る。
【0050】
(1-2)<作用及び効果>
以上の構成において、表面加工装置1では、鋼板7に対してレーザ3aを照射するレーザ照射位置O1に気体を噴射し、レーザ3aにより加工面7aを加工する際にレーザ照射位置O1で加工面7aから発生するスパッタを気体によって吹き飛ばす。
【0051】
そして、表面加工装置1では、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8においてレーザ照射位置O1よりも気流方向下流側で、レーザ3aにより加工されない非加工面7b側に鋼板7を曲げ、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を変更させるようにした。
【0052】
このように、表面加工装置1では、通板方向変更ローラ5で鋼板7の通板方向x1を変えることで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に横方向に延ばした延長線EL1上に、スパッタ回収装置6を鋼板7と干渉させずに配置させることができる。
【0053】
従って、レーザ3aにより加工面7aを加工する際、気体によってレーザ照射位置O1から鋼板7の加工面7aに沿って飛散するスパッタを、スパッタ回収装置6により回収することができる。よって、表面加工装置1は、従来のように、単に鋼板7と対向させてスパッタ回収装置を配置させた構成よりも一段と確実にスパッタを回収し得、鋼板7にスパッタが付着することを抑制し得る。
【0054】
また、第1実施形態では、横方向に通板されている鋼板7を通板方向変更ローラ5によって縦方向に曲げながら通板することで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま横方向に向けて直線的に延ばした延長線EL1上にスパッタ回収装置6の設置空間を形成することができる。これにより、表面加工装置1では、レーザ照射位置O1に対して横方向側にスパッタ回収装置6を配置させた構成とし得、レーザ照射位置O1から横方向に向けて飛散するスパッタを回収することができる。
【0055】
(2)<第2実施形態>
(2-1)<第2実施形態による表面加工装置の構成>
図4は、第2実施形態による表面加工装置21の全体構成を示した概略図である。第2実施形態では、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1が縦方向となっている点と、通板方向変更ローラ5により変更される通板方向x2が横方向となっている点が上述した第1実施形態と異なっている。なお、ここで、縦方向とは、重力が働く鉛直方向だけでなく、鉛直方向に対して所定角度傾いている方向も含むものである。
【0056】
以下、上述した、第1実施形態と異なる構成について着目して説明し、第1実施形態と同じ構成については説明が重複するため説明を省略する。
図4に示すように、第2実施形態におけるレーザ照射装置3は、ローラ9によって縦方向に通板する鋼板7に対して横方向に配置されており、縦方向に通板する鋼板7の加工面7aに垂直な方向からレーザ3aを照射する。
【0057】
気体噴射装置2は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1(
図4では縦方向)において、レーザ照射位置O1よりも通板方向上流側となる上方に配置されており、通板方向上流側から下方のレーザ照射位置O1に向けて鋼板7の加工面7aに沿った気体を噴射する。これにより、気体噴射装置2は、縦方向からレーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8において、レーザ照射位置O1よりも気流方向下流側に、レーザ照射位置O1で鋼板7から発生したスパッタを吹き飛ばす。
【0058】
かかる構成に加えて、通板方向変更ローラ5は、レーザ照射位置O1に向かって気体が流れる気流方向8において、レーザ照射位置O1よりも気流方向下流側で、鋼板7を非加工面7b側に曲げて、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を横方向に変更する。なお、
図4でも、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向をx1とし、通板方向変更ローラ5により変更された鋼板7の通板方向をx2としている。また、第2実施形態では、通板方向変更ローラ5により変更される通板方向x2の一例として、横方向に向かう方向を示している。
【0059】
第2実施形態においても、通板方向変更ローラ5は、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を、非加工面7b側に曲げて異なる通板方向x2に変更し、レーザ照射位置O1に吹き付けられた気体の気流方向下流側に、鋼板7と干渉せずにスパッタ回収装置6が設置可能な設置空間を形成する。
【0060】
スパッタ回収装置6は、このようにして通板方向変更ローラ5によって鋼板7の通板方向x1が変更されることにより形成された設置空間に設置されている。これにより、スパッタ回収装置6は、鋼板7と干渉することなく、レーザ照射位置O1の近傍に配置させることができる。
【0061】
次に、
図4に示した表面加工装置21において、加工面7aで発生したスパッタをスパッタ回収装置6により回収する構成について詳細に説明する。
図5は、
図4に示した表面加工装置21のうち、通板方向変更ローラ5の周辺を拡大した部分拡大図である。
【0062】
ここで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1から、通板方向変更ローラ5によって非加工面7b側に鋼板7が曲げられて鋼板7が通板方向x2に変更されるときの曲げ角度(変更角度)θは、上述した第1実施形態と同様に、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上にスパッタ回収装置6が設置可能な設置空間が確保できる角度であれば、特に限定されないが、その中でも好ましい変更角度θとしては、20度以上90度以下である。
【0063】
本実施形態の場合、加工面7aにレーザ3aを照射するレーザ照射位置O1が調整されており、レーザ照射位置O1での通板方向x1と、レーザ照射位置O1に向かって流れる気体の気流方向8とがほぼ平行になるように選定されている。
【0064】
なお、第2実施形態においても上述した第1実施形態と同様に、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1と、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8とは、必ずしも平行である必要はなく、これら通板方向x1と気流方向8との先にスパッタ回収装置6の開口部6bが配置されていればよい。
【0065】
これにより、スパッタ回収装置6は、気体噴射装置2からレーザ照射位置O1に向けて流れる気体の気流方向8によって吹き飛ばされたスパッタを回収する際、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1に沿って吹き飛ばされたスパッタについても回収することができる。
【0066】
(2-2)<作用及び効果>
以上の構成において、第2実施形態による表面加工装置21でも、通板方向変更ローラ5で鋼板7の通板方向x1を変えることで、鋼板7と干渉させずに、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に縦方向下側に延ばした延長線EL1上にスパッタ回収装置6を配置させることができる。従って、レーザ3aにより加工面7aを加工する際、気体によってレーザ照射位置O1から鋼板7の加工面7aに沿って飛散するスパッタを、鉛直方向下側、即ち、重力方向に設置したスパッタ回収装置6により回収することができるので、重力の作用によりスパッタ回収装置6の開口部6b内に入ったスパッタは跳ね返りが少なく、従来よりも一段と確実にスパッタを回収し得、鋼板7にスパッタが付着することを抑制し得る。
【0067】
また、第2実施形態では、縦方向に通板されている鋼板7を通板方向変更ローラ5によって横方向に向けて曲げながら通板することで、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま縦方向に向けて直線的に延ばした延長線EL1上にスパッタ回収装置6の設置空間を形成することができる。これにより、表面加工装置21では、レーザ照射位置O1に対して縦方向側にスパッタ回収装置6を配置させた構成とし得、レーザ照射位置O1から縦方向に向けて飛散するスパッタを回収することができる。
【0068】
(3)<第3実施形態>
(3-1)水流型スパッタ回収装置の構成
次に、スパッタ回収装置の構成を変えた第3実施形態について以下説明する。
図6は、
図4に示した表面加工装置21のスパッタ回収装置6に変えて、水流型スパッタ回収装置32を設けた表面加工装置31を示す。ここでは、上述した第2実施形態とは異なる水流型スパッタ回収装置32に着目して以下説明し、その他の構成については説明が重複するため省略する。
【0069】
図6に示すように、表面加工装置31は、レーザ照射位置O1よりも上方に配置された気体噴射装置2から下方のレーザ照射位置O1に向けて気体を噴射している。水流型スパッタ回収装置32は、レーザ照射位置O1及び通板方向変更ローラ5よりも下方の位置であって、かつ、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上に配置されている。
【0070】
これにより、レーザ照射位置O1で鋼板7の加工面7aから発生するスパッタは、レーザ照射位置O1で鋼板7の加工面7aに沿って縦方向(通板方向x1)に流れる気体により、水流型スパッタ回収装置32に向けて吹き飛ばされる。水流型スパッタ回収装置32は、上面に形成された開口部32dを介して外気と連通した中空状の貯留部36を備えており、この貯留部36に向けて気体が吹き付けられる。水流型スパッタ回収装置32は、貯留部36内で水Wが循環しており、水Wが貯留された貯留部36によってスパッタを回収する。
【0071】
このように、表面加工装置31は、レーザ照射位置O1で鋼板7から発生したスパッタが気体により鋼板7の加工面7aに沿って吹き飛ばされても、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1を直線的に延ばした延長線EL1上に配置した水流型スパッタ回収装置32により、当該スパッタを回収することができる。
【0072】
ここで、水流型スパッタ回収装置32の貯留部36には、貯留部36内に水Wを供給する供給管32bと、貯留部36内から水Wを排出する排出管32cが設けられている。水流型スパッタ回収装置32は、供給管32bに接続されたポンプ(図示せず)により、供給管32bから貯留部36内に水Wが常時送り込まれている。
【0073】
また、水流型スパッタ回収装置32には、配管33を介してポンプ35と集塵機34とが接続されており、集塵機34に排出管32cが接続されている。水流型スパッタ回収装置32は、ポンプ35が駆動されることで、貯留部36内の水Wを排出管32cから吸引し、排出管32cを介して集塵機34に取り込む。集塵機34は、取り込まれた水W内に含まれるスパッタ等を集塵した後、スパッタ等を取り除いた水Wを、配管33を介してポンプ35に取り込ませる。
【0074】
これにより、水流型スパッタ回収装置32は、新たな水Wが常に供給管32bから供給されつつ、貯留部36内に貯留した古い水Wを排出管32cより排出し、貯留部36内の水Wを常に循環し続けている。
【0075】
次に、水流型スパッタ回収装置32の詳細構成について以下説明する。
図7は、水流型スパッタ回収装置32の構成を示した概略図である。
図7に示すように、水流型スパッタ回収装置32は、上面に開口部32dが形成された筐体32aを有している。筐体32aには、開口部32dを介して外気と連通した中空状の貯留部36が内部に形成されている。
【0076】
貯留部36は、開口部32d側に形成された上部領域36aと、上部領域36aの下部に形成された下部領域36bとを有する。上部領域36aは、開口部32dの幅が広く、開口部32dから下部領域36bに近づくに従って次第に幅狭になるように内側面が傾斜した、逆台形状の中空空間を形成している。上部領域36aの傾斜した内壁面には、供給管32bと連通する供給口37aが形成されている。
【0077】
下部領域36bは、開口部32dよりも幅狭に形成された中空空間を形成し、排出管32cと連通する排出口37bが内壁面に形成されている。貯留部36は、上部に形成した供給口37aから常に水Wが供給され続けるとともに、下部に形成された排出口37bから常に水Wが排出され続けており、上から下へ水Wが移動している。
【0078】
(3-2)<作用及び効果>
以上の構成において、第3実施形態による表面加工装置31でも、通板方向変更ローラ5で鋼板7の通板方向x1を変えることで、鋼板7と干渉させずに、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1をそのまま直線的に延ばした延長線EL1上に水流型スパッタ回収装置32を配置させることができる。従って、レーザ3aにより加工面7aを加工する際、気体によってレーザ照射位置O1から鋼板7の加工面7aに沿って飛散するスパッタを、水流型スパッタ回収装置32により回収することができるので、従来よりも一段と確実にスパッタを回収し得、鋼板7にスパッタが付着することを抑制し得る。
【0079】
また、これに加えて、水流型スパッタ回収装置32は、レーザ照射位置O1(
図7)で鋼板7から発生したスパッタが飛ばされてきても、貯留部36内の水Wによりスパッタの衝撃を吸収することができる。よって、水流型スパッタ回収装置32は、スパッタが筐体32aの内壁面に直接衝突し難い分、スパッタの跳ね返りを抑制し得、スパッタの回収を一段と確実に行うことができる。
【0080】
さらに、水流型スパッタ回収装置32は、レーザ照射位置O1で発生する高温金属粒等のスパッタであっても、貯留部36内の水Wによって当該スパッタを瞬時に冷却させることができるので、水流型スパッタ回収装置32の周辺に配置された周辺機器に対して、スパッタの熱による影響を低減できる。
【0081】
(4)<他の実施形態>
なお、上述した各実施形態においては、鋼板として、方向性電磁鋼板を適用したが、本発明はこれに限らず、例えば、無方向性電磁鋼板や、単なる鋼板等、その他種々の鋼板を適用してもよい。また、レーザ照射による加工は、溝の形成だけでなく、鋼板の切断やその他種々の表面加工であってもよい。さらに、レーザ照射位置O1での鋼板7の通板方向x1と、通板方向変更ローラによって変更される通板方向x2とについても、上述した各実施形態において説明した横方向や縦方向だけでなくそれ以外の方向であってもよい。
【0082】
また、上述した各実施形態においては、レーザ照射位置O1よりも通板方向上流側に気体噴射装置2を設け、レーザ照射位置O1よりも通板方向下流側にスパッタ回収装置6又は水流型スパッタ回収装置32を設け、通板方向x1と同じ方向に気流を流すようにしたが、本発明はこれに限らない。例えば、レーザ照射位置O1よりも通板方向下流側に気体噴射装置2を設け、レーザ照射位置O1よりも通板方向上流側にスパッタ回収装置6又は水流型スパッタ回収装置32を設け、通板方向x1と逆向きに気流を流すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1、21、31 表面加工装置
2 気体噴射装置
3 レーザ照射装置
5 通板方向変更ローラ
6 スパッタ回収装置
7 鋼板
7a 加工面
7b 非加工面
9 ローラ
32 水流型スパッタ回収装置(スパッタ回収装置)