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特許7311757無線中継装置およびそれを用いる無線LANシステムならびに無線中継方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】無線中継装置およびそれを用いる無線LANシステムならびに無線中継方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/30 20090101AFI20230712BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230712BHJP
   H04W 48/10 20090101ALI20230712BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20230712BHJP
【FI】
H04W36/30
H04W84/12
H04W48/10
H04W36/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019103131
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020198519
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】津田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】松岡 佑海
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-131417(JP,A)
【文献】特開2008-011387(JP,A)
【文献】特開平08-191305(JP,A)
【文献】特開2003-046540(JP,A)
【文献】特開2004-304570(JP,A)
【文献】特開2013-165372(JP,A)
【文献】特開2006-295820(JP,A)
【文献】特開2004-248257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタリング機能を有する スイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置において、
予め定める移行条件に従い、自機に接続されている無線中継子機に接続先を移行させるべきか否かを判定し、移行を判定すると、前記無線中継子機に、予め記憶している他の無線中継親機の情報を与えて該無線中継子機の接続先を切換えさせる移行条件判定部と、
前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶部と、
前記移行条件判定部が前記無線中継子機に接続先を切換えさせると、前記記憶部に記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出部とを含むことを特徴とする無線中継装置。
【請求項2】
前記移行条件判定部は、電波状況に応じてチャンネル移行すべきか否かを判定する電波状況検出部であることを特徴とする請求項1記載の無線中継装置。
【請求項3】
フィルタリング機能を有する スイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置において、
前記無線中継子機が自機から接続先を切換えたことを判定する子機移行判定部と、
前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶している記憶部と、
前記子機移行判定部が前記無線中継子機が接続先を切換えたことを判定すると、前記記憶部に記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出部とを含むことを特徴とする無線中継装置。
【請求項4】
1または複数の前記無線中継子機が無線接続される無線中継親機であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の無線中継装置。
【請求項5】
前記無線中継子機と、ビル間通信ユニットを構成することを特徴とする請求項3または4記載の無線中継装置。
【請求項6】
前記請求項1~5の何れか1項に記載の無線中継装置を用いることを特徴とする無線LANシステム。
【請求項7】
フィルタリング機能を有する スイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置における無線中継方法において、
前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶ステップと、
予め定める移行条件に従い、自機に接続されている無線中継子機に接続先を移行させるべきか否かを判定し、移行を判定すると、前記無線中継子機に、予め記憶している他の無線中継親機の情報を与えて該無線中継子機の接続先を切換えさせる移行条件判定ステップと、
前記移行条件判定ステップで前記無線中継子機に接続先を切換えさせると、前記記憶ステップで記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出ステップとを含むことを特徴とする無線中継方法。
【請求項8】
フィルタリング機能を有する スイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置における無線中継方法において、
前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶ステップと、
前記無線中継子機が自機から接続先を切換えたことを判定する子機移行判定ステップと、
前記子機移行判定ステップで前記無線中継子機が接続先を切換えたことを判定すると、前記記憶ステップで記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出ステップとを含むことを特徴とする無線中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線中継装置およびそれを用いる無線LANシステムならびに無線中継方法に関し、特に無線LANシステムは、スイッチングハブと、それに接続され、無線中継親機となる複数の上記の無線中継装置と、前記無線中継親機に無線接続される1または複数の無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される多数の有線または無線の通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANシステムで使用される周波数は、混雑の回避や、より高速なデータ転送を可能にするために、当初の2.4GHzの帯域に加えて、5GHzの帯域が使用されるようになっている。しかしながら、その5GHzの帯域は、従来から、気象レーダーなどの他の用途でも、既に使用されている。
【0003】
そのため、たとえば無線LANのIEEE802.11a規格では、W53やW56と称される周波数帯(チャンネル)を使用する場合、前記気象レーダーなどの他の用途との干渉を防ぐために、DFS(Dynamic Frequency Selection)と呼ばれる制御が行われている。前記DFS制御は、前記他の用途での電波を検知すると、チャンネル移行して干渉を回避するものであり、さらに、移行先のチャンネルでも、前記他の用途での電波が検知されないかどうかを、所定期間監視して判定するCAC(Channel Availability Check)も行われる。したがって、これらの間、無線LANの通信ができなくなる。また、CACを行った際、再度、前記他の用途での電波が検知されると、さらに別のチャンネルを捜す作業を繰返すことになり、その間は引続き、通信できない。
【0004】
そこで、特許文献1には、無線LANアクセスポイントに、それぞれ異なるSSIDを持った複数の無線インターフェイスを備え、気象レーダーによって一の無線インターフェイスが使用していたチャンネルが使えなくなると、他の無線インターフェイスが、1つの無線インターフェイスで複数のSSIDを扱うことのできるマルチSSID機能によって、使えなくなった無線インターフェイスのSSIDを提供することで、配下の通信端末のセッションが途切れないようにした無線LANアクセスポイントが提案されている。
【0005】
また、上記のように複数の無線インターフェイスを1つの無線LANアクセスポイントに搭載するのではなく、無線LANアクセスポイントを、スイッチングハブを介して複数配置することも考えられる。
【0006】
これらのケースでは、無線LANアクセスポイントや無線通信端末は接続先が変わったことが認識できるが、スイッチングハブは無線通信端末の接続先が変わったことを検知できず、誤ったポートにパケットを送信し続けてしまう。そこで、このような問題に、特許文献2や特許文献3では、通信端末は、接続する無線LANアクセスポイントを切換えたとき(ローミングしたとき)、所定のフレームをブロードキャスト送信することで、スイッチングハブのアドレステーブルを書換えさせ、ローミング後にも適切なフレームが、素早く届くようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-100210号公報
【文献】特開2003-152740号公報
【文献】特開2018-107726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無線LANのシステム構成は様々であり、上述のように、通信端末が、スイッチングハブに直接接続されたアクセスポイント等の無線中継装置と無線通信を行うだけでなく、前記スイッチングハブに直接接続された無線中継装置を無線中継親機として、さらに無線中継装置となる無線中継子機と、無線や有線で接続されるような多段構成のシステムで構成されることもある。そのようなケースでは、通信端末は、自機が所属している無線中継子機が他の無線中継親機に接続先を切換えても(ローミングしても)、該通信端末ではそのことが分からず、特許文献2や3の手法は使えない。また、無線中継装置が接続されるスイッチングハブを、複数段備えて構成される無線LANシステムもある。
【0009】
本発明の目的は、スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継装置を無線中継親機として、その無線中継親機に無線中継子機を介して通信端末が接続される場合に、それらの間の接続を切換えても、通信端末の通信が可能になる無線中継装置およびそれを用いる無線LANシステムならびに無線中継方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の無線中継装置は、フィルタリング機能を有するスイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置において、予め定める移行条件に従い、自機に接続されている無線中継子機に接続先を移行させるべきか否かを判定し、移行を判定すると、前記無線中継子機に、予め記憶している他の無線中継親機の情報を与えて該無線中継子機の接続先を切換えさせる移行条件判定部と、前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶部と、前記移行条件判定部が前記無線中継子機に接続先を切換えさせると、前記記憶部に記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出部とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の無線中継方法は、フィルタリング機能を有するスイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置における無線中継方法において、前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶ステップと、予め定める移行条件に従い、自機に接続されている無線中継子機に接続先を移行させるべきか否かを判定し、移行を判定すると、前記無線中継子機に、予め記憶している他の無線中継親機の情報を与えて該無線中継子機の接続先を切換えさせる移行条件判定ステップと、前記移行条件判定ステップで前記無線中継子機に接続先を切換えさせると、前記記憶ステップで記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、スイッチングハブの各ポートに接続されて、無線中継親機となる無線中継装置およびその無線中継方法において、たとえば無線LANのIEEE802.11a規格におけるW53やW56の周波数帯(チャンネル)を使用し、気象レーダーとの干渉を防ぐためのDFS(Dynamic Frequency Selection)制御を行う場合のように、その無線中継親機が電波状況に応じてチャンネル移行しようとすると、無線中継子機を介してその無線中継親機に接続している通信端末は、そのチャンネルで他の用途の電波が検知されるか否かを判定するCAC(Channel Availability Check)の間、通信ができなくなる。また、CACを行った際、再度、他の用途の電波が検知されると、さらに別のチャンネルを捜す作業を繰返すことになり、その間、通信できなくなる。そこで、本発明では、移行条件判定ステップにおいて、移行条件判定部が、所定の移行条件に従いチャンネル移行すべきか否かを判定し、移行を判定すると、予め記憶している他の無線中継親機の情報を前記無線中継子機に与えて、つまり紹介を行い、該無線中継子機が接続する無線中継親機を切換えさせる(接続先を変更させる)。これによって、その無線中継子機の配下の通信端末が、連続して(切れ目無く)、ネットワークに接続できるようにする。
【0013】
好ましくは、前記移行条件判定部は、前記電波状況に応じてチャンネル移行すべきか否かを判定する電波状況検出部である。
【0014】
しかしながら、そのままでは、スイッチングハブには、その移行先の無線中継親機に対応したポートと通信端末の情報とが対応付けられていない。一方、スイッチングハブは、パケットの送信元MACアドレスから、各ポートに属する通信端末の一覧を学習しており、宛先MACアドレスに基づき、必要なポートのみにパケットを転送するフィルタリング機能を有するので、学習できていなければ、通信端末へのパケットを転送できない。
【0015】
そこで本発明では、さらに、前記無線中継子機に接続される通信端末におけるIPアドレスなどの情報を、予め記憶ステップにおいて記憶部に記憶しており、前記電波状況検出部が無線中継子機の接続先を他の無線中継親機に切換えさせる際、端末呼出ステップにおいて、端末呼出部が、ARP(Address Resolution Protocol)Probeなどをブロードキャストまたはマルチキャスト送信する。すると、該当の通信端末は、ARP Replyなどをユニキャストで返信する。これによって、前記送信元は、MACアドレスなどが入手できるとともに、スイッチングハブは、該当の通信端末は、どのポートの無線中継親機に接続されているかを学習することができる。
【0016】
したがって、無線中継親機に無線中継子機を介して通信端末が接続される場合に、無線中継親機が電波状況に応じてチャンネル移行する際も、他の無線中継親機を介して、通信端末の通信が可能になる(イーサネット(登録商標)フレームを転送できるようになる)。
【0017】
さらにまた、本発明の無線中継装置は、フィルタリング機能を有するスイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置において、前記無線中継子機が自機から接続先を切換えたことを判定する子機移行判定部と、前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶している記憶部と、前記子機移行判定部が前記無線中継子機が接続先を切換えたことを判定すると、前記記憶部に記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出部とを含むことを特徴とする。
【0018】
また本発明の無線中継方法は、フィルタリング機能を有するスイッチングハブと、該スイッチングハブの各ポートに接続される無線中継親機と、前記無線中継親機に無線接続される無線中継子機と、前記無線中継子機に接続される通信端末とを備えて構成される無線LANシステムに、前記無線中継親機として用いられる無線中継装置における無線中継方法において、前記無線中継子機に接続される通信端末の情報を記憶する記憶ステップと、前記無線中継子機が自機から接続先を切換えたことを判定する子機移行判定ステップと、前記子機移行判定ステップで前記無線中継子機が接続先を切換えたことを判定すると、前記記憶ステップで記憶されていた前記通信端末の情報に基づき、該通信端末に応答を要求する信号を、前記スイッチングハブを介して、ブロードキャストまたはマルチキャスト送信する端末呼出ステップとを含むことを特徴とする。
【0019】
前述の電波状況検出ステップは、無線中継親機の電波状況検出部による気象レーダー波検知によるDFS制御に対するチャンネル移行時の動作について述べているのに対して、上記の構成によれば、子機移行判定ステップにおいて、子機移行判定部は、無線中継子機が電波状況などを判断して接続先の無線中継親機の切換えを判断して、移行する場合にも同様に、通信遮断を抑えることができる。
【0020】
好ましくは、1または複数の前記無線中継子機が無線接続される無線中継親機であることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、無線中継子機は、前記DFSなどで、1つの(たとえば、常用の)無線中継親機でのチャンネルが使えなくなると、直ちに、もう1つの(非常用の)無線中継親機を介してネットワーク接続できる。
【0022】
これによって、無線中継親機の冗長構成を実現することができる。
【0023】
さらにまた、本発明の無線中継装置では、前記無線中継子機と、ビル間通信ユニットを構成することを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、ビル間通信ユニットは、社内ネットワークなどを構成するので、接続に障害が出ないようにすることは、効果的で、好適である。
【0025】
また、本発明の無線LANシステムは、前記の無線中継装置を用いることを特徴とする。
【0026】
上記の構成によれば、上記の無線中継装置を無線中継親機として、それに、スイッチングハブ、1または複数の無線中継子機および多数の通信端末を加えて構成される無線LANシステムにおいて、DFSなどによる無線中継親機のチャンネル切換えなどに伴う無線中継子機の接続先の切換えに対して、通信端末へのパケットを切れ目無く転送できるシステムを実現することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の無線中継装置およびそれを用いる無線LANシステムならびに無線中継方法は、以上のように、スイッチングハブの各ポートに接続され、無線中継親機として用いられる無線中継装置において、該無線中継親機や無線中継子機が電波状況などに応じて接続先を切換える際に、予め記憶しておいたその無線中継子機に接続される無線端末を、ARP Probeなどをブロードキャストまたはマルチキャスト送信して呼出す。
【0028】
それゆえ、その呼出された通信端末がARP Replyなどによって応答すると、送信元は、MACアドレスなどが入手できるとともに、スイッチングハブは、該当の通信端末がどのポートの無線中継親機に接続されているかを学習することができ、以降の通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施の一形態に係る無線中継装置である無線中継親機を用いる無線LANシステムの構成を示すブロック図である。
図2図1の無線LANシステムにおいて、無線中継親機が、無線中継子機に、接続先を切換えさせる際のパケットの流れを説明する図である。
図3図2におけるスイッチングハブおよび無線中継親機における通信端末リストを示す図である。
図4】本発明の実施の他の形態に係る無線中継装置である無線中継親機を用いる無線LANシステムの構成を示すブロック図である。
図5図4の無線LANシステムにおいて、無線中継子機が、接続(ローミング)先の無線中継親機を切換える際のパケットの流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の一形態の無線中継装置である無線中継親機1を用いる無線LANシステム10のブロック図である。この無線LANシステム10は、前記無線中継親機1と、スイッチングハブ5と、無線中継子機3と、利用者が操作する通信端末4と、もう1つの無線中継親機2とを備えて構成される。
【0031】
無線中継親機1,2は、その無線通信エリアが相互に重なるように設置されて冗長構成を成すものであり、同じエリアに3台以上が設置されてもよい。また、図1では図面の簡略化のために省略しているが、無線中継親機1の配下となる無線中継子機3は1または複数であり、その無線中継子機3の配下となる通信端末4は多数である。後述の通信経路に、スイッチングハブ5が複数段介在することもあり、勿論、他の通信端末から無線中継子機3を通さずに、スイッチングハブ5から無線中継親機1,2を介する通信が行われることもある。無線中継親機2は、無線中継親機1と同様の構成であり、それらはスイッチングハブ2のポートP2およびP1にそれぞれ接続されている。また、無線中継子機3も無線中継親機1,2と同様の構成の場合もあり、その場合、設定によって、親機になるか子機になるかは切換え可能である。
【0032】
通常、通信端末4は、無線中継子機3から、無線中継親機1およびスイッチングハブ5を介してネットワークに接続され、パケットの送受信が可能になっている。無線中継子機3と無線中継親機1との間が、IEEE802.11規格などの無線LANによる接続である。また、通信端末4と無線中継子機3との間は、前記IEEE802.11規格などの無線LANによる接続や、有線LANによる接続であってもよい。無線中継親機1内では、スイッチングハブ5側のハブ側通信部12と無線中継子機3側の子機側通信部13との間が、送受信を制御する通信制御部14を介して、前記パケットの双方向の送受信が可能になっている。
【0033】
そして、子機側通信部13の通信には、2.4GHz帯と、前記5GHz帯が用いられることがあり、該子機側通信部13が使用する周波数(チャンネル)の電波状況は、移行条件判定部である電波状況検出部15でモニターされている。電波状況検出部15は、前記IEEE802.11a規格におけるW53やW56の周波数帯(チャンネル)の使用時において、気象レーダー波を検知すると、干渉を防ぐためのDFS制御を実現するため、子機側通信部13が使用するチャンネルの移行を行わせる。その移行にあたっては、移行先のチャンネルでも、気象レーダー波が検知されないかどうかを判定するCACを、予め定める時間、たとえば1分間行わなければならず、またCAC中に再度レーダー波が検知された場合、電波状況検出部15および子機側通信部13は、さらに別のチャンネルを捜す作業を繰返すことになる。そのため、無線中継子機3、すなわち通信端末4は、その間、通信できなくなる。
【0034】
そこで注目すべきは、本実施形態の無線中継親機1は、移行条件判定ステップである電波状況検出ステップにおいて、電波状況検出部15で、予め定める移行条件であるレーダー波が検知された場合、DFS制御により通信停止となるまでの猶予期間、たとえば10秒の間に、無線中継子機3の接続先を切換えさせる。その切換えは、子機側通信部13から無線中継子機3に、予め記憶している他の無線中継親機2の情報(MACアドレスおよび使用チャンネル)を与えて(紹介を行い)、該無線中継子機3の接続先を、参照符号31から参照符号32で示すように切換えさせることで実現することができる。これによって、通信端末4が、連続して(切れ目無く)、ネットワークに接続できるようにする。
【0035】
しかしながら、そのままでは、スイッチングハブ5には、その移行先の無線中継親機2に対応したポートP2と通信端末4の情報とが対応付けられていない(ポートP1への対応付のまま)。一方、スイッチングハブ5は、パケットの送信元MACアドレスから、各ポートに属する通信端末4の一覧を学習して、予め定める時間、たとえば2分間、テーブル51に保管しており、宛先MACアドレスに基づき、必要なポートのみにパケットを転送するフィルタリング機能を有する。したがって、スイッチングハブ5が学習できていなければ、すなわちテーブル51に通信端末4が正しく登録されていなければ、スイッチングハブ5は、通信端末4からのパケットが到達するか、前記予め定める時間が経過してテーブル51から通信端末4のMACアドレスを廃棄するまで、該通信端末4へのパケットを転送できないことになる(間違ったポートP1に転送し続ける)。
【0036】
そこで本実施形態の無線中継親機1では、無線中継子機3に接続される通信端末4におけるIPアドレスを含むトラフィック情報を、記憶ステップにおいて、予め子機側通信部13から取得して格納している記憶部17を設けるとともに、前記電波状況検出部15が無線中継子機3に接続先を切換えさせ、切換えが行われて無線中継子機3の通信の再開が可能になる所定の適宜時間経過後に、端末呼出ステップにおいて、通信端末4の前記IPアドレスをターゲットIPアドレスとした、ARP Probeを、ハブ側通信部12からブロードキャスト送信する端末呼出部18を設けている。
【0037】
無線中継子機3が参照符号32で示す無線中継親機2との通信が可能になっていると、通信端末4は、無線中継親機1が送出した前記ARP Probeを受信することができる。通信端末4は、ARP ProbeのターゲットIPアドレスが自機のIPアドレスと一致していた場合、ARP Replyをユニキャストで返信する。これによって、スイッチングハブ5は、該当の通信端末4が、どのポート(この場合はP2)の無線中継親機(この場合は無線中継親機2)に接続されているかを学習し、テーブル51に保管することができる。つまり、所定のIPアドレスが使用中でないかを確認するIPアドレス衝突回避の仕組み(RFC 5227)を用いて、チャンネル移行した無線中継子機3の配下の通信端末4と、元の無線中継親機1との間にある総てのスイッチングハブ5のテーブル51におけるMACアドレス情報を更新して、正しいポートP2へパケットが転送されるようにする。
【0038】
したがって、無線中継親機1に、無線中継子機3を介して通信端末4が接続される場合に、該無線中継親機1が電波状況に応じてチャンネル移行する間にも、他の無線中継親機2を介して、通信端末4の通信が可能になる(イーサネット(登録商標)フレームを転送できるようになる)。また、本実施形態の無線LANシステム10は、上記のような無線中継親機1,2となる無線中継装置を用いることで、DFSなどによる無線中継装置のチャンネル切換えなどに伴う無線中継子機3の接続先の切換えに対して、通信端末4へのパケットを切れ目無く転送できるシステムを実現することができる。
【0039】
図2および図3を参照して、上述のような無線中継子機3の無線中継親機1から無線中継親機2への接続先の切換わりによるスイッチングハブ5のテーブル51の変化を説明する。図2はパケットの流れを示し、図3はスイッチングハブ5および無線中継親機1における通信端末リストを示す。図2では、無線中継親機1を親機1、無線中継親機2を親機2、無線中継子機3を子機、通信端末4を端末1としている。図2では、他の通信端末(無線に限らず、有線接続でもよい)4aが、端末Xとして追加されている。
【0040】
図2で示すように、スイッチングハブ5に2つの無線中継親機1,2および端末4aが繋がっており、無線中継親機1に無線中継子機3を介して通信端末4が繋がっている。無線中継親機1のMACアドレスは00:22:44:66:88:00であり、通信端末4のMACアドレスは00:11:22:33:44:55であり、IPアドレスは192.168.0.10であり、通信端末4aのMACアドレスは00:55:44:33:22:11である。
【0041】
その状態で、図2(a)で示すように通信端末4が通常の通信を開始すると、図3(a)で示すように、スイッチングハブ5のテーブル51には、通信端末4のMACアドレス00:11:22:33:44:55が、ポートP1に対応付けて新規登録され、無線中継親機1には通信端末4のIPアドレス192.168.0.10が新規登録される。
【0042】
すると、通信端末4への通信も可能になり、図2(b)で示すように、通信端末4aが通信端末4にパケットの転送を開始すると、図3(b)で示すように、スイッチングハブ5には、通信端末4aのMACアドレス00:55:44:33:22:11が、ポートP3に対応付けて新規で追加登録され、無線中継親機1には通信端末4のIPアドレス192.168.0.10が継続して登録される。
【0043】
その後、前記DFS制御に伴い、無線中継親機1は、図2(c)で示すように、無線中継子機3に、接続先を、予め決めておいた(設定しておいた)無線中継親機2に移行させる。しかしながら、この時、スイッチングハブ5には、前記移行が分からないので、図3(c)で示すように、スイッチングハブ5のテーブル51では、ポートP1における通信端末4のMACアドレス00:11:22:33:44:55の情報は古くなり、図3(b)のポートP3に対する通信端末4aのMACアドレス00:55:44:33:22:11だけが有効な情報として残ることになる。無線中継親機1では、通信端末4のIPアドレス192.168.0.10が残っている。
【0044】
この状態で、図2(b)と同様に、図2(d)で示すように、通信端末4aが通信端末4にパケットの転送を試みると、スイッチングハブ5は、フィルタリング機能によって、図3(d)で示す通信リストから、無線中継親機1、すなわちポートP1を使用するが、転送不能になる。
【0045】
しかしながら、スイッチングハブ5では、ポートP1を使用して、無線中継親機1が末端となっての通信は可能であり、無線中継子機3の移行(ローミング)期間を考慮した所定時間後に、図2(e)で示すように、無線中継親機1は、記憶していた通信端末4のIPアドレス192.168.0.10を、ARP Probeとしてブロードキャスト送信する。この時、無線中継子機3が参照符号32で示す無線中継親機2との通信が可能になっていると、ブロードキャスト送信であるので、通信端末4は、前記ARP Probeを受信することができる。無線中継親機1の送信によって、スイッチングハブ5のテーブル51では、ポートP1における無線中継親機1のMACアドレス00:22:44:66:88:00が新規に追加登録され、無線中継親機1では、通信端末4のIPアドレス192.168.0.10が残っている。
【0046】
前記ARP Probeに自機のIPアドレス192.168.0.10が含まれていると、図2(f)で示すように、通信端末4は、無線中継親機1へ、ARP Replyをユニキャストで返信する。これによって、スイッチングハブ5は、通信端末4が、ポートP2の無線中継装置2に接続されていることを認識し、図3(f)で示すように、テーブル51で、その通信端末4のMACアドレス00:11:22:33:44:55を、ポートP2の正しい情報に更新する。これによって、無線中継親機1は、通信端末4が自機の配下でなくなったことを確認し、保管していたIPアドレス192.168.0.10を破棄する。
【0047】
以降、図2(g)で示すように、通信端末4aは、通信端末4へのパケットの転送が可能になる。このとき、図3(g)で示すスイッチングハブ5のテーブル51や無線中継親機1の端末リストは、図3(f)と変わらない。無線中継親機1のチャンネル移行が完了して、無線中継子機3の接続先を無線中継親機1に戻す際も、同様の動作で実現することができる。
【0048】
このようにして、本実施形態の無線LANシステム10は、無線中継装置として上記のような無線中継親機1,2を用い、DFSなどによる無線中継親機1,2のチャンネル切換えなどに伴う無線中継子機3の接続先の切換えに対して、通信端末4へのパケットを切れ目無く転送することができる。
【0049】
上述の無線LANシステム10は、無線中継親機1,2は、2機で運用しているので、常時は、前述のように負荷(通信端末4)を分散していることが好ましい。これによって、負荷(通信端末4)の増大に対応しつつ、非常時に通信が途切れないシステムを実現することができる。この負荷分散の場合、無線中継親機1,2は、3台以上であってもよい。そして、上述の説明では、無線中継子機3の接続先を切換える条件はレーダー波検知による電波状況であったが、上記のような負荷分散の場合、無線中継親機1,2への負荷の加わり方(不均等)を条件としてもよい。
【0050】
そこで、本実施形態の無線中継親機1,2では、チャンネル移行すべきか否かを判定する予め定める移行条件として、無線中継子機3による負荷量を検出する負荷検出部16を設けている。負荷検出部16は、もう1つの移行条件判定部を構成し、もう1つの移行条件判定ステップである負荷検出ステップにおいて、負荷、たとえば無線中継子機3の接続機数や、データ(パケット)量の偏りなどが大きい場合に、適切な無線中継子機3を指定して、上述のように、子機側通信部13からの指示で、接続先を切換えさせる。このようにして、常時は負荷分散によって、それぞれの無線中継子機3や通信端末4に大きな転送レートを与えることができる。
【0051】
無線中継装置1,2は、無線LANアクセスポイントのように屋内に設置される無線中継装置であってもよく、ビル間通信を行うために屋外に設置される無線中継装置であってもよい。特に、ビル間通信ユニットは、社内ネットワークなどを構成するので、接続に障害が出ないようにすることは効果的で、またスイッチングハブ5などが多段で構成されることがあるので、接続先を学習させる本実施形態は好適である。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の他の形態の無線中継装置である無線中継親機1aを用いる無線LANシステム10aのブロック図である。この無線LANシステム10aは、上述の無線LANシステム10に類似し、無線中継親機1a,2aの構成が異なる。無線中継親機1aにおいて、上述の無線中継親機1に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0052】
注目すべきは、本実施形態の無線中継親機1aでは、子機移行判定部19および親機報知部11が設けられていることである。ここで、無線中継親機1aと無線中継子機3との間は、無線中継子機3が無線中継親機1aに接続要求を送信し、それを無線中継親機1aが、許可すれば接続可能となり、拒否すれば接続不可となる。また、本実施形態では、前述のように無線中継親機1aは、電波状況を判断して無線中継子機3に接続先を紹介するが、通常、無線中継子機3は、自機でも電波状況を判断しており、現在の接続先の電波状況が一定以下となると、接続解除の信号を送信して接続を解除した後に、条件の良い親機を探索し、接続要求を送信する。したがって、無線中継親機1aと無線中継子機3との間は、相互に接続しているかどうかを認識可能である。
【0053】
そこで本実施形態の無線中継親機1aでは、子機移行判定部19は、子機側通信部13から無線中継子機3との通信の状況を受信しており、子機移行判定ステップにおいて、無線中継子機3が自発的に自機から接続を解消したと判定すると、その接続解消から所定の適宜時間が経過して、無線中継子機3の通信の再開が可能になる頃に、前記端末呼出ステップにおいて、前記端末呼出部18に、通信端末4の前記IPアドレスをターゲットIPアドレスとした、ARP Probeをブロードキャスト送信させる。
【0054】
この無線中継子機3からの接続先の変更は、たとえば接続していた無線中継親機の近くに遮蔽物が置かれたり、同じチャンネルが全く別の通信機器で使用されたりするなどして、無線中継子機に電波が届かなくなる場合などで発生する。スキャン後、再度同じ無線中継親機に接続することもある。
【0055】
このように構成することで、接続を解消した無線中継子機3が発生した場合、該無線中継子機3の配下の通信端末4を呼出し、前記ARP Replyを返信させることで、スイッチングハブ5に、新たな接続先の無線中継親機(たとえば2a)のポート(P2)と、その通信端末4との関係を学習させることができ、同様に通信遮断を抑えることができる。
【0056】
また、本実施形態では、その子機移行判定部19に関連して、親機報知部11を設けている。上述の説明では、子機移行判定部19は、無線中継子機3の、自機からの接続解消を検出していたが、前述の接続手順から、自機への接続も検出することができる。この機能を利用して、親機報知部11は、前記子機移行判定ステップで、子機移行判定部19が、自機への無線中継子機3の接続を判定すると、該無線中継子機3を装い、親機報知ステップにおいて、ハブ側通信部12から、無線中継子機3のMACアドレスを送信元とするパケットを、ブロードキャスト送信する。
【0057】
これは、電波状況などで無線中継子機3が自発的に接続先の無線中継親機を切換える場合は(例として1a→2aとする)、接続解消の信号が電波状況の悪化などで元の無線中継親機(1a)に届かず、子機移行判定部19が接続解消を検出できないケースがあるためである。そこで、新しい接続先の無線中継親機(2a)の親機報知部11が、接続してきた無線中継子機3を装い、前記無線中継子機3のMACアドレスを送信元とするパケットをブロードキャスト送信することで、自機の配下にその無線中継子機3があることを周囲に報知することができる。
【0058】
これによって、元の無線中継親機(1a)に、無線中継子機3の接続が解消されたことを認識させることができる。その後、該元の無線中継親機(1a)が記憶部17に記憶していた通信端末4のIPアドレスで、端末呼出部18に前述の端末呼出ステップを行わせ、ARP Probeを送信し、通信端末4がARP Replyを返信することで、スイッチングハブ5に、通信端末4がどのポート(P2)に接続されているかを認識させることができる。
【0059】
ここで、無線中継子機3が、通信端末4のIPアドレスを分かっていれば、該無線中継子機3が前記ARP Probeを送信することも考えられるが、通信端末4からARP Replyが返信されても、該無線中継子機3迄しか届かず(そこでやり取りが完結してしまう)、スイッチングハブ5は、通信端末4の対応しているポートを認識できない。また、無線中継子機3が通信端末4のふりをして、スイッチングハブ5に、「通信端末4はここに接続されている」という信号を送信することも考えられるが、無線中継子機3が持っているのはトラフィック情報である。そのため、たとえば無線中継子機3が通信端末4の通信情報を2分間保持する場合、通信端末4が、無線中継子機3を介しての通信終了後、直ぐにスイッチングハブ5の別のポートに単体で移動して、前記2分以内に無線中継子機3が無線中継親機(1a)から移動した場合、その時点では無線中継子機3は通信端末4のデータを保持しており、実際は配下にいないのに、前記「通信端末4はここに接続されている」という信号を送信してしまうと、実際の通信端末4からの応答と衝突してしまうことになる。
【0060】
図2と同様の図5を用いて、上述の無線中継子機3からの接続先の切換わり動作について説明する。無線中継子機3が接続先の切換えを判断すると、図5(a)で示すように、切断することを伝える信号を無線中継親機(1a)に送信する。ただし、接続先切換えの判断をするときは、電波状況が悪いことが多いので、該無線中継子機3からの信号が無線中継親機(1a)に届かないこともある。
【0061】
次に、図5(b)で示すように、無線中継子機3が新たな無線中継親機(2a)に接続して、前述の通信可否を決定する接続処理を完了し、互いの接続を認識すると、無線中継親機(2a)は無線中継子機3を装って、該無線中継子機3のMACアドレスを送信元とするパケットをブロードキャストで送信する。ただし、ここではブロードキャスト信号であり、また、通信端末4の情報ではないので、スイッチングハブ5の情報は更新されない。また、接続処理が完了すると、通常考えられる通り、無線中継子機3自身が、該無線中継子機3のMACアドレスを送信元とするパケットをブロードキャストで送信してもよいが、接続処理が完了していると、無線中継親機(2a)は無線中継子機3が配下にいることが分かっており、該無線中継子機3の情報も持っているので、上述のように、無線中継親機(2a)がそのまま該無線中継子機3を装って情報を送ることで、子機から親機への通信処理を無くすことができる。
【0062】
その後、図5(a)の際、無線中継子機3からの切断の信号が無線中継親機(1a)に届いていなかった場合、図5(b)の処理で該無線中継親機(1a)は無線中継親機(2a)からのブロードキャスト信号(無線中継子機3を装って送った信号)を受信することで、該無線中継親機(1a)は無線中継子機3が接続先を変更したことを認識し、図5(c)で示すように、図2(e)の通信端末4の呼出し処理に続くことができる。
【0063】
一方、図5(a)の際、無線中継子機3からの切断の信号が無線中継親機(1a)に届いていた場合、該無線中継親機(1a)は、所定時間後に、そのまま図5(c)で示すように、図2(e)の通信端末4の呼出し処理を行う。なお、無線中継親機(1a)が無線中継子機3の接続先の切換わりを判別する方法は、上記2通りの方法の両方を行うのみではなく、どちらか一方のみでもよい。もし、上記2通りの方法の両方を行う場合、無線中継親機(1a)からのARP Probeは2回送信されてもよい。
【0064】
本明細書では、気象レーダー波の検知に伴うDFS、CACによる待機時間が生じないための接続切換えの手法について説明したが、本発明は、こうした実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。たとえば、通信エリアが拡がるように、無線中継親機1,2を相互に離間して設置し、無線中継子機3が移動することで接続先が切換わるような場合にも、本発明を適用して、スイッチングハブ5の(アドレス)テーブル51を書替えさせることができる。
【0065】
また、本明細書では、無線中継子機3に接続される通信端末4の呼出しを、ARP Probeをブロードキャスト送信することによって行っていたが、これに限定されるものではなく、たとえば、インターネットプロトコルバージョン6(IPv6)環境では、ARP Probeのブロードキャストに代えて、Neighbor Solicitationメッセージをマルチキャスト送信することによって行ってもよい。
【0066】
また、本明細書では、便宜上、スイッチングハブ5側に接続される無線中継装置(1,1a;2,2a)を親機、通信端末4を接続する無線中継装置(3)を子機と記載しているが、必ずしも、親機がチャンネルを設定し、子機がスキャンを行って親機を見つけることで接続の確立を行うような方式でなくてもよく、たとえば、親機、子機との接続は、お互いが使用するチャンネルを予め設定(複数可)しておき、相手が見つかればデータを送信、見つからなければ送信しない、所謂対等通信によって行われていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,2 無線中継親機(無線中継装置)
10 無線LANシステム
12 ハブ側通信部
13 子機側通信部
14 通信制御部
15 電波状況検出部
16 負荷検出部
17 記憶部
18 端末呼出部
19 子機移行判定部
3 無線中継子機
4,4a 通信端末
5 スイッチングハブ
51 テーブル
図1
図2
図3
図4
図5