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特許7311762シート状物、及び、シート状物の製造方法
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  • 特許-シート状物、及び、シート状物の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】シート状物、及び、シート状物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20230712BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20230712BHJP
   B05D 5/02 20060101ALI20230712BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230712BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08J5/18 CFF
B05D1/02 Z
B05D5/02
B05D7/00 Z
B05D7/24 301V
B05D7/24 302T
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019135392
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017526
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000107619
【氏名又は名称】スターライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】高尾 良祐
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-110468(JP,A)
【文献】特開2012-188616(JP,A)
【文献】特開2020-118012(JP,A)
【文献】特開2002-292335(JP,A)
【文献】特開2014-129711(JP,A)
【文献】特開2008-161363(JP,A)
【文献】特開2018-065356(JP,A)
【文献】特開2018-123491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02、5/12-5/22
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の面と他の面とを有し、常温硬化性ポリウレアからなるシート状物であって、
前記一の面には、前記一の面の側に突出する多数の凸部が形成され、
前記凸部の表面には、高さの差が0.3mm~0.5mmである凹凸形状が形成される、シート状物。
【請求項2】
前記常温硬化性ポリウレアは、二液混合性ポリウレアである、請求項1に記載のシート状物。
【請求項3】
前記凹凸形状は、前記一の面において全体的に形成される、請求項1又は請求項2に記載のシート状物。
【請求項4】
前記凸部の周囲からの突起高さが1.0mm~5.0mmである、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のシート状物。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のシート状物における前記他の面を接地させて使用される、歩行者用滑り止めシート。
【請求項6】
多数の凹部が形成された基面に常温硬化性ポリウレアを吹き付けることにより、前記基面の側に多数の前記凸部が突出したシート素材を形成する、シート素材形成工程と、
前記基面から前記シート素材を剥離する、剥離工程と、
前記シート素材における前記凸部が突出する側の面に常温硬化性ポリウレアを噴霧することにより、前記凸部の表面に高さの差が0.3mm~0.5mmである凹凸形状を形成する、噴霧工程と、を備える、シート状物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化性ポリウレアからなるシート状物、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や各種設備の床面等において、防水性、耐摩耗性、防食性等を高めるためのライニング材としてポリウレア樹脂層が採用されている。ポリウレアは、イソシアネートとポリアミンを原料とする樹脂化合物であり、対象物の強度を高める目的で用いられる(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0003】
特許文献1には、芯材の表面に、それぞれ独立した原料供給ホースから供給されたイソシアネートと、アミノ基を有する硬化剤とを衝突混合スプレーガンで塗布し、芯材表面に沿ってポリウレア樹脂層を形成する技術が記載されている。また、特許文献2には、足場となる板体と、板体の表面を覆うポリウレア樹脂層と、を備える足場板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-78449号公報
【文献】特開2018-123491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に記載のポリウレア樹脂層を用いて床面を構成した場合、床面に油膜が付着した際に滑り抵抗が低下する場合があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、油膜が付着した場合でも、滑り抵抗の低下を抑制することの可能な、シート状物、及び、シート状物の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前述の課題解決のために、以下のシート状物を構成した。
【0008】
(1)一の面と他の面とを有し、常温硬化性ポリウレアからなるシート状物であって、前記一の面には、前記一の面の側に突出する多数の凸部が形成され、前記凸部の表面には、高さの差が0.3mm~0.5mmである凹凸形状が形成される、シート状物。
【0009】
(2)前記常温硬化性ポリウレアは、二液混合性ポリウレアである、(1)に記載のシート状物。
【0010】
(3)前記凹凸形状は、前記一の面において全体的に形成される、(1)又は(2)に記載のシート状物。
【0011】
(4)前記凸部の周囲からの突起高さが1.0mm~5.0mmである、(1)から(3)の何れか一に記載のシート状物。
【0012】
(5)(1)から(4)の何れか一に記載のシート状物における前記他の面を接地させて使用される、歩行者用滑り止めシート。
【0013】
また、本発明は、前述の課題解決のために、以下のシート状物の製造方法を構成した。
【0014】
(6)多数の凹部が形成された基面に常温硬化性ポリウレアを吹き付けることにより、前記基面の側に多数の前記凸部が突出したシート素材を形成する、シート素材形成工程と、前記基面から前記シート素材を剥離する、剥離工程と、前記シート素材における前記凸部が突出する側の面に常温硬化性ポリウレアを噴霧することにより、前記凸部の表面に高さの差が0.3mm~0.5mmである凹凸形状を形成する、噴霧工程と、を備える、シート状物の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るシート状物、及び、シート状物の製造方法によれば、油膜が付着した場合でも、滑り抵抗の低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るシート状物の表側を示した平面図。
図2】本実施形態に係るシート状物の表側を示した斜視図。
図3】本実施形態に係るシート状物の裏側を示した斜視図。
図4】本実施形態に係るシート状物の表側を示した拡大斜視図。
図5】シート状物の試験結果を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、図1から図4を用いて、本実施形態に係るシート状物1の構成を説明する。シート状物1は、一の面である表側面1aと、他の面である裏側面1bと、を有して、二液混合性ポリウレアである常温硬化性ポリウレアで形成される。本実施形態において、シート状物1は、裏側面1bを工場内の床面に接地させて使用する、歩行者用滑り止めシートとして構成されている。但し、シート状物1を他の用途に用いても差し支えない。
【0018】
図1及び図2に示す如く、表側面1aには、表側面1aの側に突出する多数の凸部2が形成されている。図3に示す如く、裏側面1bには、凸部2に対応する箇所(凸部2の裏側)に凹部3が形成される。また、図4に示す如く、凸部の表面を含む表側面1aには、全体的に微小な凹凸形状Gが形成されている。
【0019】
本実施形態に係るシート状物1において、凹凸形状Gの凹形状と凸形状との高さの差は、ポリウレアの噴霧により形成可能という理由で、0.3mm~0.5mmとなるように形成されている。また、シート状物1において、凸部2は周囲からの突起高さが、強度と原料コストのバランスという理由で1.0mm~5.0mmとなるように形成されている。
【0020】
本実施形態に係るシート状物1は、多数の凹部が形成された基面に、それぞれ独立した原料供給ホースから供給されたイソシアネート基を有する化合物と、アミノ基を有する硬化剤とを衝突混合スプレーガンとを吹き付けることにより、基面に常温硬化性ポリウレアの層を形成する。そして、表側面1aの側に多数の凸部2を突出させ、さらに、凸部2の表面に微小な凹凸形状Gを形成する。
【0021】
ポリウレア樹脂層は、イソシアネートと、アミノ基を有する硬化剤とがウレア結合して生成される。イソシアネートと硬化剤との反応は非常に早く、数秒で接触硬化するため、基面の表面にイソシアネートと硬化剤とを衝突混合スプレーガンで塗布すれば、直ちに所定厚さのポリウレア樹脂層が形成される。
【0022】
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネート、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネートの水添物等が挙げられる。より具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)等のジイソシアネート、多価アルコールとジイソシアネートとの付加体(アダクト)、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、イソシアネート基を有する化合物は、イソシアネート基を一次的に保護基で保護して不活性にしたブロック化イソシアネートであってもよい。保護基は熱等によって除去され、イソシアネート基を再生させて使用することができる。保護基となり得る保護剤は、例えば、フェノール、カプロラクタム、オキシム、アルコール等が挙げられる。アミノ基を有する硬化剤としては、ポリアミン等が挙げられる。ポリアミンは、アミノ基を2つ以上有する化合物であればよい。
【0023】
より詳細には、基面に常温硬化性ポリウレアを吹き付けることにより、一方の面の側に多数の凸部が突出したシート素材を形成する(シート素材形成工程)。そして、基面からシート素材を剥離し(剥離工程)、その後、シート素材における一方の面(凸部が突出した面)に常温硬化性ポリウレアを噴霧する(噴霧工程)ことにより、凸部の表面に凹凸形状が形成されたシート状物1が形成される。
【0024】
なお、硬化性樹脂の硬化は、熱硬化性樹脂の熱処理硬化、二液混合による常温硬化、一液湿気硬化の何れかを採用することができる。また、硬化前に加温処理するものであっても良い。また、硬化性樹脂は、無溶剤系、有機溶剤系、水系いずれであっても良い。このうち、環境面、安全性、施工性という理由で無溶剤の二液混合による常温硬化が望ましい。ポリウレアとしてはNUKOTE社製のNUKOTE ST、2液混合硬化型、加温吹付けタイプの芳香族系ポリウレアを使用した。
【0025】
シート状物1の厚さは、強度と原料コストのバランスという理由で1.5~2.5mmの範囲内とすることが望ましい。特に、1.5mmより薄くなると、凸部頂点が薄くなり、凸部が破損し易くなるという点で問題になる。また、シート状物1の大きさは生産効率及び重量が増加するために輸送が困難になるという理由で、1m×2m以下とすることが望ましい。なお、シート状物1は、シート単独で用いてもよく、別の基材に積層して積層シートとして用いてもよい。また、粘着層を設けてテープとして用いてもよい。
【0026】
シート状物1において、凸部2の形状は、本実施形態における半球形型以外にも、三角刑型、方形型等の他の形状を採用することができる。但し、凸部2の加工容易性から、本実施形態の如く半球型とすることが望ましい。また、凸部2の間隔は、金型からの離型性、人間の足の裏に接触できる凸部2の個数バランスという理由で、30~35mmの範囲内とすることが望ましい。
【0027】
シート状物1は、例えば油膜を張りやすい工場の床及び足場や、乗り物の乗り場、階段の踊り場に用いられる。特に不特定多数のものに踏まれるという理由で、乗り物の乗り場用シートに適する。
【0028】
次に、図5を用いて、本願出願人が行ったC.S.R測定試験について説明する。C.S.R測定試験とは、JISA1454で定められる床材の滑り性試験によって滑り抵抗係数を測定する試験である。日本建築学会の推奨値によれば、履物を履いて動作する床においてC.S.R値が0.4以上であることが目安とされている。
【0029】
図5に示す如く本試験は、前記実施形態に係るシート状物1(厚さが2.0mmで、表側面1aの側に突出する多数の凸部2(周囲からの突起高さが3.5mm)が形成され、表側面1aに全体的に微小な凹凸形状G(凹凸形状における高さの差が0.3mm)が形成されたもの)を実施例として行った。また、比較例1として、凸部2を形成せずに凹凸形状Gのみを形成したシート状物を採用した。また、比較例2として、縞鋼板を採用した。また、本試験は、それぞれの測定対象について、乾燥状態、湿潤状態、及び、グリース(AZシャーシーグリース)を塗布した状態、の三つの状態について行った。
【0030】
図5に示す如く、比較例2(縞鋼板)においては、乾燥状態において0.84というC.S.R測定値を得ることができたが、湿潤状態及びグリース塗布状態で0.38という、前記推奨値よりも低い結果となった。また、比較例1(凹凸形状のみ)においては、乾燥状態において0.71、湿潤状態で0.57というC.S.R測定値を得ることができたが、グリース塗布状態で0.25という、前記推奨値よりも低い結果となった。即ち、図5中に※印を記入した箇所については、日本建築学会の推奨値を下回る結果となった。
【0031】
一方、本実施例に係るシート状物1によれば、図5に示す如く、乾燥状態において0.77、湿潤状態で0.60、グリース塗布状態で0.56と、何れも前記推奨値を上回る結果となった。このように、本実施形態に係るシート状物1、及び、シート状物1の製造方法によれば本試験により、表面に油膜が付着した場合でも滑り抵抗の低下を抑制することが可能となることが明らかとなったのである。
【符号の説明】
【0032】
1 シート状物 1a 表側面
1b 裏側面 2 凸部
3 凹部 G 凹凸形状
図1
図2
図3
図4
図5