(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】鍋受け構造
(51)【国際特許分類】
B22D 41/06 20060101AFI20230712BHJP
B22D 41/12 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B22D41/06
B22D41/12 A
(21)【出願番号】P 2019146759
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和希
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-142844(JP,U)
【文献】実開昭61-133540(JP,U)
【文献】実開昭62-092063(JP,U)
【文献】登録実用新案第3113837(JP,U)
【文献】実開昭63-174961(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 41/06
B22D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋台車に設けられた基礎部と、
該基礎部に支持され、排滓側より反排滓側が高くなるように傾動可能に支持された傾動部と、
該傾動部に設けられ、上方へ向かうに従って前記排滓側へ向けて傾斜する案内面を有した案内部と、
前記傾動部に支持される取鍋の側部に設けられ、当該取鍋を前記傾動部に支持した状態で前記案内部の前記案内面に面接触する被案内面を有する被案内部と、
を備えた取鍋受け構造。
【請求項2】
前記案内部は、上方へ向かうに従って厚み寸法が小さくなる楔状に形成されるとともに、前記被案内部は、下方へ向かうに従って厚み寸法が小さくなる楔状に形成され、前記案内部の高さ寸法は、前記被案内部の高さ寸法より大きい請求項1に記載の取鍋受け構造。
【請求項3】
前記被案内部の前記被案内面を前記案内部の前記案内面で案内して前記取鍋を前記傾動部に位置決めする際に前記案内部に対する前記被案内部の位置ずれを許容する許容寸法をB0、前記案内部の高さ寸法をA、前記案内部の前記案内面が水平線に対して成す角度をθと
し、θ≦tan
-1(A/B0)となるように前記案内面と水平線とが成す角度θが設定されている請求項1又は請求項2に記載の取鍋受け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鍋受け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉等の溶鋼設備から溶鋼を取り出す際には、取鍋が用いられている(例えば特許文献1から特許文献6参照)。
【0003】
取鍋に取り出された溶鋼の溶鋼面には、スラグが残留しており、このスラグは、取鍋を傾けて除去する。
【0004】
スラグの除去作業を行う為に、特許文献1では、取鍋台車が用いられる。取鍋台車には、取鍋を傾けるための鍋傾動台が設けられている。鍋傾動台の側壁には、取鍋の側面に設けられた矩形状の凸部を保持する切欠きが設けられている。
【0005】
傾倒方向に位置する切欠きの内側面は、垂直方向に延びており、取鍋を傾ける際に凸部の一側面に接触して支持する。傾倒方向逆側に位置する切欠きの内側面は、傾斜面で構成されており、取鍋の凸部を切欠きに挿入する際に、凸部の面取り部の角が傾斜面に接しながら移動することで、取鍋を所定の位置へ案内する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭61-142844号公報
【文献】WO2010/119777公報
【文献】実開昭61-133540号公報
【文献】特開昭61-087714号公報
【文献】特開平10-251727号公報
【文献】実開平01-109364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような鍋受け構造にあっては、取鍋をセットする際に取鍋の凸部における面取り部の角が鍋傾動台の傾斜面に接しながら移動する。このため、面取り部の角が摩耗し易かった。
【0008】
また、取鍋を傾けた際に凸部の一側面を支持する為のストッパを鍋傾動台の傾倒方向側に別途設ける必要あり、コスト高の要因となっていた。
【0009】
本開示は、このような問題に鑑みなされたものであり、耐久性を高めつつ低コスト化を図ることが可能な鍋受け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1は、取鍋台車に設けられた基礎部と、該基礎部に支持され、排滓側より反排滓側が高くなるように傾動可能に支持された傾動部と、該傾動部に設けられ、上方へ向かうに従って前記排滓側へ向けて傾斜する案内面を有した案内部と、前記傾動部に支持される取鍋の側部に設けられ、当該取鍋を前記傾動部に支持した状態で前記案内部の前記案内面に面接触する被案内面を有する被案内部と、を備えた取鍋受け構造である。
【0011】
すなわち、取鍋を傾動部にセットする際には、取鍋の被案内部の被案内面が傾動部の案内部の案内面に沿って移動することで、取鍋が位置決される。このとき、傾動部の案内部の案内面に取鍋の被案内部の被案内面が接しながら移動する。
【0012】
このため、取鍋の凸部における面取り部の角が取鍋台車側の傾斜面に接しながら移動する場合と比較して、摩耗が抑制される。
【0013】
そして、取鍋をセットした状態で、排滓側より反排滓側が高くなるように傾動部を傾動すると、取鍋の被案内部の被案内面が傾動部の案内部の案内面に接しているので、取鍋の横ずれを防止しつつ取鍋を傾けることができる。
【0014】
このように、傾動部の案内部は、取鍋の位置決め用と取鍋の横ずれ防止用とで共用することができる。このため、取鍋の位置決め用の傾斜面と取鍋の横ずれ防止用のストッパとを個別に設けなければならない場合と比較して、低コスト化が図られる。
【0015】
態様2は、前記案内部は、上方へ向かうに従って厚み寸法が小さくなる楔状に形成されるとともに、前記被案内部は、下方へ向かうに従って厚み寸法が小さくなる楔状に形成され、前記案内部の高さ寸法は、前記被案内部の高さ寸法より大きい態様1に記載の取鍋受け構造である。
【0016】
すなわち、案内部の高さ寸法は、被案内部の高さ寸法より大きく設定されており、案内部の案内面は、被案内部の被案内面より長くなる。
【0017】
このため、取鍋を傾動部にセットする際に傾動部の案内部に対する取鍋の被案内部の位置ずれの許容範囲を広くすることができる。
【0018】
態様3は、前記被案内部の前記被案内面を前記案内部の前記案内面で案内して前記取鍋を前記傾動部に位置決めする際に前記案内部に対する前記被案内部の位置ずれを許容する許容寸法をB0、前記案内部の高さ寸法をA、前記案内部の前記案内面が水平線に対して成す角度をθとし、θ≦tan-1(A/B0)となるように前記案内面と水平線とが成す角度θが設定されている態様1又は態様2に記載の取鍋受け構造である。
【0019】
これにより、取鍋を搬送して傾動部にセットする搬送機構による位置決め精度に応じて案内面と水平線とが成す角度θを設定することで、傾動部への取鍋のセットミスを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、耐久性を高めつつ低コスト化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】本実施形態に係る鍋受け構造を示す側面図である。
【
図4】取鍋の被案内部を傾動部の案内部に位置決めする際に位置ずれが許容される範囲を示す要部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、第一実施形態を図面に従って説明する。始めに溶鋼の処理工程について説明する。
【0023】
(処理工程)
図1に示すように、転炉10で精錬された溶鋼は、取鍋台車で運ばれた取鍋に排出される。取鍋台車上の取鍋は、天井クレーンで吊り上げられて搬送される。この取鍋に収容された溶鋼は、取鍋に収容された状態で、必要に応じて真空脱ガス処理装置12等で二次処理が施される。その後、取鍋は、連鋳機14へ運ばれ、取鍋の溶鋼は貯留槽(タンディッシュ)へ注がれる。
【0024】
取鍋は、天井クレーンで吊下げられ又は軌道上を移動する取鍋台車に載せられて二次処理設備内を移動する。
【0025】
転炉10で受けた溶鋼にはスラグが残留している。二次処理としてLF装置16(取鍋加熱部)を用いた昇熱処理を実施する場合、加熱による覆燐を防止するために、昇熱処理に先立って排滓機18で排滓処理を行う。
【0026】
排滓処理では、取鍋を傾動した状態で溶鋼表面に浮遊するスラグを排滓器のスラグ掻き取り機で掻き出す。これにより、浮遊したスラグを排出する排滓処理を行う。この排滓処理には、取鍋をセットした状態で傾ける傾動機構を備えた取鍋台車が用いられる。
【0027】
(取鍋台車)
図2に示すように、取鍋台車20は、軌道上を転動する車輪22を有した基台24と、基台24上に設けられた基礎部26と、基礎部26の上部に配置された傾動部28とを備えている。
【0028】
基礎部26は、矩形枠状に形成されており、傾動部28は、基礎部26より小さな矩形枠状に形成されている。矩形枠状の傾動部28の内側には、平坦な支持板28Aが設けられており、支持板28A上に取鍋30を載置できるように構成されている。
【0029】
なお、本実施形態では、支持板28Aを平坦に形成した場合を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。例えば、取鍋30の底部を位置決めできる大きさの凹部が形成された支持板28Aを用いてもよい。
【0030】
基礎部26の排滓側X1(
図2では左側)端部の両側面には、固定板32が固定されており(一方のみ図示)、固定板32の先端部は、基礎部26の上部に配置された傾動部28の側部まで延びている。
【0031】
また、基礎部26の反排滓側X2(
図2では右側)端部の両側面には、傾動機構の一例である油圧シリンダ34のシリンダ本体34Aが軸部36を介して回転可能に支持されている。油圧シリンダ34のシリンダ本体34Aより延び出した作動軸34Bは、基礎部26の上部に配置された傾動部28の側部まで延びている。
【0032】
基礎部26より延びた両固定板32の先端部には、支持軸38が支持されている。支持軸38は、傾動部28の排滓側X1の端部を貫通しており、傾動部28は、支持軸38の中心を回転軸40(回転軸心)として傾動可能に支持されている。
【0033】
また、基礎部26の油圧シリンダ34より延び出した各作動軸34Bは、傾動部28の反排滓側X2端部に軸部42を介して回転可能に支持されている。
【0034】
これにより、油圧シリンダ34を作動してシリンダ本体34Aより作動軸34Bを延び出すことで、傾動部28の自由端部である反排滓側X2端部を基礎部26に対して上昇することができる。このとき、傾動部28の先端部は、基礎部26より延び出した固定板32に支持軸38を介して支持されている。
【0035】
このため、油圧シリンダ34で傾動部28の反排滓側X2端部を上昇した際に、傾動部28は、支持軸38が構成する回転軸40を中心として自由端部である反排滓側X2端部が上昇するように傾斜する。これにより、傾動部28は、初期状態で水平であった支持板28Aを傾斜させ、支持板28A上に載置された取鍋30を傾けることで、取鍋30内の溶鋼表面に浮遊したスラグの掻き出しを容易とする。
【0036】
なお、本実施形態では、回転軸40を中心として傾動部28が傾動する場合について説明するが、これに限定されるものではなく、排滓側X1より反排滓側X2が高くなるように傾動部28を傾動する構造であれば、他の構造であってもよい。
【0037】
傾動部28の排滓側X1端部には、支持軸38による支持位置より反排滓側X2の部位に支持アーム46が固定されており、支持アーム46は、傾動部28の両側部に配置されている。支持アーム46は、傾動部28の反排滓側X2へ向けて斜め上方に延びており、反排滓側X2に位置する支持アーム46の先端面46Aは、傾動部28の上面に対して垂直方向に延びている。
【0038】
支持アーム46の先端面46Aには、案内部50が固定されており、案内部50は、
図3にも示したように、固定状態において下方から上方へ向かうに従って厚み寸法50Tが小さくなる楔状に形成される。
【0039】
案内部50は、側面が直角三角形状に形成されており、案内部50は、下側を構成する下面50Aと、下面50Aに対して直交方向に延びる垂直面50Bと、下面50Aと垂直面50Bとを結ぶ案内面50Cとを備える。
【0040】
本実施形態では、側面が直角三角形状に形成された案内部50を例に説明するが、この形状に限定されるものではない。例えば、上辺が下辺より短い台形状の側面を有する楔状部材で案内部50を構成してもよい。
【0041】
案内部50は、垂直面50Bが支持アーム46の先端面46Aに密着した状態で固定されており、取鍋台車20を軌道に配置して傾動部28の上面を水平に保った状態で、案内部50の垂直面50Bが垂直になるとともに下面50Aが水平になる。また、案内面50Cは、
図2に示したように、上方へ向かうに従って排滓側X1である回転軸40の方向へ向けて傾斜している。
【0042】
(取鍋)
取鍋30は、有底円筒状の取鍋本体60を備えており、取鍋本体60の底60Aは、平坦に形成されている。取鍋本体60の側面には、全周に渡って延在する突条62が開口部64側の上縁に沿って設けられている。
【0043】
取鍋本体60の側面には、矩形状に突出する固定部66が両側に設けられており(一側部側のみ図示)、固定部66の上縁66Aは、突条62に接続されている。各固定部66からは、トラニオン68が突出しており、天井クレーンのフックを両側のトラニオン68に引掛けて取鍋30を吊下げることができる。
【0044】
固定部66の一端側(
図2中の排滓側X1)の一端面66Bには、被案内部70が設けられており、被案内部70は、
図3にも示したように、下方へ向かうに従って厚み寸法70Tが小さくなる楔状に形成されている。
【0045】
被案内部70は、側面が直角三角形状に形成されており、被案内部70は、上側を構成する上面70Aと、上面70Aに対して直交方向の延びる垂直面70Bと、上面70Aと垂直面70Bとを結ぶ被案内面70Cとを備える。被案内部70の高さ寸法Hは、案内部50の高さ寸法Aより小さく設定されている。すなわち、被案内部70の上面70Aの幅は、後述する許容寸法B0より狭い。
【0046】
ここで、本実施形態では、側面が直角三角形状に形成された被案内部70を例に説明するが、この形状に限定されるものではない。例えば、上辺が下辺より長い台形状の側面を有する楔状部材で被案内部70を構成してもよい。
【0047】
被案内部70は、垂直面70Bが固定部66の排滓側X1の一端面66Bに密着した状態で固定されており、被案内面70Cは、
図2に示したように、下方へ向かうに従って反排滓側X2、すなわち回転軸40から離れる方向へ向けて傾斜する。
【0048】
被案内部70の被案内面70Cは、取鍋30を傾動部28に支持した状態で、案内部50の案内面50Cに対向した状態で面接触する。そして、取鍋30の底60Aを傾動部28の支持板28Aに支持して取鍋30の底60Aと支持板28Aとの隙間を、0mmとした状態で、
図3に示したように、被案内部70の被案内面70Cと案内部50の案内面50Cとが密着する。この状態において、取鍋台車20を軌道に配置して傾動部28の上面を水平に保った状態で、被案内部70の垂直面70Bが垂直になるとともに上面70Aが水平になる。
【0049】
そして、取鍋30を取鍋台車20の傾動部28へ搬送する天井クレーンは、取鍋30を目標位置に搬送する際に実際に搬送される搬送位置と目標位置との間に生じ得るバラツキが停止精度として長さで規定されている。
【0050】
具体的に、
図4を用いて説明する。取鍋30を天井クレーンで取鍋台車20の傾動部28へ搬送する場合、取鍋30の被案内部70の下端が取鍋台車20の案内部50の案内面50Cの長さ方向の中心Cの真上に配置される位置を目標位置76とする。天井クレーンが取鍋30を目標位置76に搬送する場合、実際に搬送される搬送位置は、目標位置76より排滓側X1又は反排滓側X2にずれが生ずる。この排滓側X1へのずれ量と反排滓側X2へのずれ量とを加算した値がバラツキであり停止精度として長さで示される。
【0051】
そこで、本実施形態では、
図4に示すように、被案内部70の被案内面70Cを案内部50の案内面50Cで案内して取鍋30を傾動部28に位置決めする際に、案内部50に対する被案内部70の位置ずれを許容する許容寸法、すなわち、天井クレーンの位置決め精度である停止精度を、B0とする。このとき、案内部50の下面50Aの幅Bを許容寸法B0より大きく設定する。
【0052】
また、案内部50の高さ寸法をA(mm)、案内部50の案内面50Cが水平線80に対して成す角度をθとした場合、次の(式1)の関係が成立する。
【0053】
θ=tan-1(A/B) ・・・ (式1)
【0054】
ここで、案内部50の高さ寸法Aは、1000mm以下、案内部50の案内面50Cと水平線80に沿って延びる下面50Aとが成す角度θは、45度以上の範囲内で、高さ寸法A及び角度θを定めることが望ましい。
【0055】
前述のようにB≧B0とするには、θ≦tan-1(A/B0)とすればよい。このとき、天井クレーンで取鍋30を傾動部28にセットする際のセットミスを抑制することができる。
【0056】
なお、取鍋30に設けられた被案内部70の被案内面70Cが水平線80の沿って延びる上面70Aに対して成す角度θも、案内面50Cと水平線80に沿って延びる下面50Aとが成す角度θと同角度とする。
【0057】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0058】
すなわち、取鍋30を取鍋台車20の傾動部28にセットする際には、取鍋30を天井クレーンで吊り上げて目標位置76まで搬送し、目標位置76で下降する。すると、取鍋30に設けられた被案内部70の被案内面70Cが取鍋台車20の傾動部28に設けられた案内部50の案内面50Cに沿って滑りながら取鍋30が反排滓側X2へ移動されセットされる。これにより、取鍋台車20の支持板28Aに対して取鍋30が垂直に当たることを抑制し、取鍋台車20の損傷を抑制する。
【0059】
そして、取鍋30は、被案内部70の被案内面70Cが傾動部28の案内部50の案内面50Cに沿って移動することで、支持板28A上の所定の位置に位置決される。このとき、傾動部28の案内部50の案内面50Cに取鍋30の被案内部70の被案内面70Cが接しながら移動する。
【0060】
このため、
図5の比較例に示したように、取鍋100の側部に設けられた凸部102における面取り部104の角106が取鍋台車110の鍋傾動台112に形成された傾斜面114に接しながら移動する場合と比較して、角106の摩耗が抑制される。
【0061】
そして、取鍋30内の溶鋼表面に浮遊するスラグ(鉱滓)を排出する際には、取鍋30がセットされた傾動部28を、回転軸40を中心として自由端部が上昇するように傾動して取鍋30を傾ける。すなわち、排滓側X1より反排滓側X2が高くなるように傾動部28を傾動する。この状態において、取鍋30内の溶鋼表面に浮遊したスラグを掻き出して排出する。
【0062】
このとき、取鍋30の被案内部70の被案内面70Cは、傾動部28の案内部50の案内面50Cに接しており、取鍋30の回転軸40方向への横ずれを抑制することができる。
【0063】
このように、傾動部28の案内部50を、取鍋30の位置決め用と取鍋30の横ずれ防止用とで共用することができる。
【0064】
これにより、
図5に示したように、取鍋100の位置決め用の傾斜面114と取鍋100の横ずれ防止用のストッパ116とを個別に設けなければならない場合と比較して、構造を簡素化し低コスト化を図ることができる。
【0065】
したがって、耐久性を高めつつ低コスト化を図ることが可能となる。
【0066】
ここで、傾動部28を、22度以上傾けると、取鍋30の底60Aと取鍋台車20の支持板28Aとの静摩擦力より大きな力が傾転方向に働いて取鍋30が滑る可能性がある。しかし、本実施形態では、取鍋30の被案内部70の被案内面70Cが傾動部28の案内部50の案内面50Cに接しており、取鍋30の回転軸40方向への横ずれが抑制されている。
【0067】
また、本実施形態では、取鍋30を傾けた状態において、案内部50の案内面50Cが水平に近づく。このとき、本実施形態の案内部50の案内面50Cは、比較例のストッパ116の接触面より水平に近づくので、支持荷重が小さくなる。
【0068】
このため、取鍋30を大きな角度で傾動することが可能となり、取鍋台車20から離れた位置にスラグ(鉱滓)を落下させることができる。これにより、取鍋台車20の走行装置への溶鋼やスラグの飛散を抑制することができ、安定した操業の継続が可能となる。また、取鍋30内の溶鋼が少ない場合であっても、排滓処理を実施することができる。
【0069】
また、取鍋台車20側の案内部50の高さ寸法Aは、取鍋30側の被案内部70の高さ寸法Hより大きく設定されており、案内部50の案内面50Cを、被案内部70の被案内面70Cより長くすることができる。
【0070】
このため、取鍋30の重量増を抑えつつ、取鍋30を傾動部28にセットする際に傾動部28の案内部50に対する取鍋30の被案内部70の位置ずれの許容範囲を広くすることができる。
【0071】
そして、案内部50の案内面50Cが水平線80に対して成す角度θは、許容寸法をB0、案内部50の高さ寸法をAとした際に、θ≦tan-1(A/B0)となるように設定されている。
【0072】
このため、取鍋30を搬送して傾動部28にセットする搬送機構、つまり天井クレーンによる位置決め精度(停止制度)を許容寸法Bとして案内面50Cと水平線80とが成す角度θを設定することで、傾動部28への取鍋30のセットミスを抑制することができる。
【符号の説明】
【0073】
20 取鍋台車
26 基礎部
28 傾動部
28A 支持板
30 取鍋
38 支持軸
40 回転軸
50 案内部
50C 案内面
70 被案内部
70C 被案内面
θ 角度
A 高さ寸法
B 許容寸法
H 高さ寸法
X1 排滓側
X2 反排滓側