(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】位置調整装置およびバッフルプレートユニット
(51)【国際特許分類】
C23C 2/20 20060101AFI20230712BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C23C2/20
C23C2/40
(21)【出願番号】P 2019164108
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128923
【氏名又は名称】納谷 洋弘
(74)【代理人】
【識別番号】100180297
【氏名又は名称】平田 裕子
(72)【発明者】
【氏名】曽我 和彦
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕大
(72)【発明者】
【氏名】山下 竜一
(72)【発明者】
【氏名】森下 久生
(72)【発明者】
【氏名】岩弘 尚典
(72)【発明者】
【氏名】菅 篤雄
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-091630(JP,A)
【文献】特開2012-102389(JP,A)
【文献】特開2012-021183(JP,A)
【文献】特開2010-230776(JP,A)
【文献】特開平05-068384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00-2/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属めっき浴から引き上げられる金属帯を挟んで配置されるワイピングノズルを、前記金属帯のパスラインに応じて該金属帯の面と略直交する法線方向に移動させることが可能なワイピング装置に用いられるバッフルプレートユニットであって、
前記金属帯の幅方向端部の外側に設けられたバッフルプレートと、
駆動時には前記バッフルプレートを前記ワイピングノズルよりも速い速度で前記法線方向に移動させるプレート駆動機構と、
前記プレート駆動機構の駆動を制御するプレート位置制御手段と、
を備え、
前記プレート位置制御手段は、
前記プレート駆動機構の駆動時には前記ワイピングノズルよりも速い速度で前記法線方向に移動する前記バッフルプレートの見掛け上の移動速度と、前記法線方向への前記ワイピングノズルの移動に基づいて前記法線方向に移動する前記ワイピングノズルのセンターラインの移動速度と、が同じとなるように前記プレート駆動機構を間歇的に駆動させることにより、前記ワイピングノズルの移動に追従する態様で前記バッフルプレートを移動させることが可能に構成される
バッフルプレートユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材に関する位置調整を行う位置調整装置およびバッフルプレートユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
平面部を有し且つ該平面部の位置が変化しうる第1部材と、該第1部材の平面部に対して略平行な平面部を有する第2部材との2つの部材を備える装置において、第1部材の平面部の位置変化に応じて該第2部材を移動させることがある。
【0003】
例えば、特許文献1等に開示されているように、溶融金属めっき設備のガスワイピング装置に設けられるバッフルプレートユニットにおいて、溶融金属めっき浴から引き上げられる金属帯の面の位置の変化、すなわち金属帯のパスラインの変化に応じて、金属帯の幅方向端部の外側に配置されたバッフルプレートを移動させることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、第1部材(例えば、金属帯)の位置が変化する速度と第2部材(例えば、バッフルプレート)の移動速度とが同じとは限らない。
【0006】
例えば上記のようなバッフルプレートユニットにおいて、金属帯の位置が変化する速度とバッフルプレートの移動速度とが異なる場合、金属帯の位置変化に応じてバッフルプレートを移動させる際に、両者の速度差によって金属帯の厚み方向において金属帯とバッフルプレートとの間に隙間が生じるおそれがある。金属帯とバッフルプレートとの間に隙間が存在する場合には、金属帯を挟んで対向配置される一対のワイピングノズルから吹き出されたガスが互いに干渉し、エッジオーバーコート(金属帯のエッジ部のめっき厚がセンター部のめっき厚に比べて厚くなる現象)が発生しうる。
【0007】
そのため、金属帯の位置変化に応じてバッフルプレートが移動する際には、金属帯の厚み方向において該金属帯とバッフルプレートとの間の隙間を極力小さくすることが好ましい。
【0008】
また、金属帯のパスラインに応じてワイピングノズルを移動させることが可能に構成されたバッフルプレートユニットにおいて、バッフルプレートの移動速度がワイピングノズルの移動速度よりも速いこともある。
【0009】
このような場合にも、金属帯のパスラインの変化に応じたワイピングノズルの移動にともなってバッフルプレートが移動する際には、金属帯の厚み方向において該金属帯とバッフルプレートとの間の隙間を極力小さくすることが好ましい。
【0010】
本発明は、そのような点に鑑みてなされたものであり、2つの部材に関する位置調整を好適に行うことが可能な位置調整装置およびバッフルプレートユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のバッフルプレートユニットは、
溶融金属めっき浴から引き上げられる金属帯を挟んで配置されるワイピングノズルを、前記金属帯のパスラインに応じて該金属帯の面と略直交する法線方向に移動させることが可能なワイピング装置に用いられるバッフルプレートユニットであって、
前記金属帯の幅方向端部の外側に設けられたバッフルプレートと、
駆動時には前記バッフルプレートを前記ワイピングノズルよりも速い速度で前記法線方向に移動させるプレート駆動機構と、
前記プレート駆動機構の駆動を制御するプレート位置制御手段と、
を備え、
前記プレート位置制御手段は、
前記プレート駆動機構の駆動時には前記ワイピングノズルよりも速い速度で前記法線方向に移動する前記バッフルプレートの見掛け上の移動速度と、前記法線方向への前記ワイピングノズルの移動に基づいて前記法線方向に移動する前記ワイピングノズルのセンターラインの移動速度と、が同じとなるように前記プレート駆動機構を間歇的に駆動させることにより、前記ワイピングノズルの移動に追従する態様で前記バッフルプレートを移動させることが可能に構成される
ことを特徴とする。
【0014】
上記のバッフルプレートユニットによれば、金属帯のパスラインに応じたワイピングノズルの移動にともなってバッフルプレートが移動する際に、該金属帯とバッフルプレートとの間の隙間を極力小さくすることができ、2つの部材に関する位置調整を好適に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2つの部材に関する位置調整を好適に行うことが可能な位置調整装置およびバッフルプレートユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯がガスワイピングされる態様を示す概要図の一例である。
【
図2】バッフルプレートおよび表側ガスワイピングノズルの周辺の概要を示す外観斜視図の一例である。
【
図3】溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯と、ガスワイピングノズルと、バッフルプレートとの位置関係を示す平面模式図の一例であって、(A)金属帯とバッフルプレートとの間にX方向の隙間が生じている状態を示す図、(B)金属帯とバッフルプレートとの間にY方向の隙間が生じている状態を示す図、(C)金属帯とバッフルプレートとの間に隙間がほぼ存在しない状態を示す図、である。
【
図4】表側ガスワイピングノズルまたは/および裏側ガスワイピングノズルの移動方向と、バッフルプレートの移動方向との関係性を示すタイムチャートの一例であって、(A)表側ガスワイピングノズルと裏側ガスワイピングノズルとの両方が閉方向に向けて移動を開始した場合におけるバッフルプレートの移動方向を説明するための図、(B)表側ガスワイピングノズルと裏側ガスワイピングノズルとの両方が開方向に向けて移動を開始した場合におけるバッフルプレートの移動方向を説明するための図、(C)閉方向に向けた表側ガスワイピングノズルの移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズルの移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレートの移動方向を説明するための図、(D)開方向に向けた表側ガスワイピングノズルの移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズルの移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレートの移動方向を説明するための図、である。
【
図5】金属帯とバッフルプレートとの位置関係を示す平面模式図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態としてのバッフルプレートユニットおよびバッフルプレートの位置調整方法を説明する前に、先ず、バッフルプレートが用いられるガスワイピング装置の周辺設備の概要について、
図1を参照して簡単に説明する。
【0018】
図1は、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10がガスワイピングされる態様を示す概要図の一例である。
【0019】
なお、この明細書において、説明の便宜上、溶融金属めっき設備の操作側(ワークサイド(以下、単に「WS」と称する))から駆動側(ドライブサイド(以下、単に「DS」と称する))に向かう方向をX方向の正方向(+X方向)と定義し、溶融金属めっき設備の入側(
図1の右側)から出側(
図1の左側)に向かう方向をY方向の正方向(+Y方向)と定義し、鉛直方向の下方から上方に向かう方向をZ方向の正方向(+Z方向)と定義する。
【0020】
また、この明細書において、Y方向の正方向側(
図1の左側)を金属帯10の表面(おもて面)とし、Y方向の負方向側(
図1の右側)を金属帯10の裏面と定義する。ただし、いずれが表面でいずれが裏面であるかは設備によって異なるためこれに限定されない。
【0021】
図1に示されるように、例えば冷間圧延された鋼板等に代表される金属帯10は、非酸化雰囲気に保たれたスナウト2の内部をとおって、溶融金属ポット4に貯留された溶融金属に浸漬される。なお、溶融金属は、例えばZn(亜鉛)を主成分とするものであってもよいし、Al(アルミニウム)を主成分とするものであってもよく、特定の金属に限定される必要はない。
【0022】
そして、溶融金属に浸漬された金属帯10は、シンクロール6によって方向を変えられ、浴中サポートロール8に支持されつつ上方に引き上げられる。
【0023】
溶融金属が貯留された溶融金属ポット4から引き上げられた金属帯10の表裏面には余剰金属が付着しており、次述のガスワイピング装置20によってこの余剰金属が除去される。
【0024】
ガスワイピング装置20は、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10の表面にガスを吹き付ける表側ガスワイピングノズル22と、金属帯10の裏面にガスを吹き付ける裏側ガスワイピングノズル24とを備える。なお、表側ガスワイピングノズル22は、表面側ワイピングノズルとも称され、裏側ガスワイピングノズル24は、裏面側ワイピングノズルとも称される。
【0025】
表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24は、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10を挟むようにして、金属帯10の面と略直交する法線方向における金属帯10の両側に対向配置されている。詳細には、表側ガスワイピングノズル22は、金属帯10の表面側において該金属帯10の表面と対向して配置されており、裏側ガスワイピングノズル24は、金属帯10の裏面側において該金属帯10の裏面と対向して配置されている。なお、この実施形態では、Y方向が、金属帯10の面と略直交する法線方向に相当する。
【0026】
次に、ガスワイピング装置20および本発明の一実施形態としてのバッフルプレートユニット30がそれぞれ備える構成の概要について、
図2を参照して簡単に説明する。
【0027】
図2は、バッフルプレート32および表側ガスワイピングノズル22の周辺の概要を示す外観斜視図の一例である。なお、裏側ガスワイピングノズル24の周辺の概要は、表側ガスワイピングノズル22の周辺の概要と同様である。
【0028】
表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24は、それぞれ、金属帯10の幅方向(ここでは、X方向)に伸延する長尺状に形成されている。表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24には、スリット状の噴射口(ノズル口)がそれぞれ設けられている。
【0029】
表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24とのX方向長さは、それぞれ、この溶融金属めっき設備で処理可能な最大板幅の金属帯10の幅方向全域にわたってガスを吹き付けることができる長さとなっている。
【0030】
表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24は、それぞれ、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10のパスライン(金属帯10の面の位置)に応じてY方向に移動可能に構成されている。
【0031】
なお、Y方向への表側ガスワイピングノズル22または/および裏側ガスワイピングノズル24の移動は、金属帯10への溶融金属の付着量をコントロールするためや、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10のパスラインの移動に対応するために行われるものである。そのため、表側ガスワイピングノズル22から金属帯10の表面までの距離と、裏側ガスワイピングノズル24から金属帯10の裏面までの距離とがほぼ等しくなるように、Y方向への表側ガスワイピングノズル22または/および裏側ガスワイピングノズル24の移動が行われる。
【0032】
本実施形態において、ガスワイピング装置20では、表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24がY方向の正方向と負方向とのいずれに向けて移動する場合であっても、表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24を高速または低速で移動させることができるようになっている。以下において、高速時の移動速さを2Vとし、低速時の移動速さをVとする。
【0033】
バッフルプレートユニット30は、バッフルプレート32と、バッフルプレート32を金属帯10の厚み方向(ここではY方向)に移動させることが可能な厚み方向駆動機構(厚み方向プレート駆動機構とも称される)36と、バッフルプレート32を金属帯10の幅方向(ここではX方向)に移動させることが可能な幅方向駆動機構(幅方向プレート駆動機構とも称される)34と、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10の幅方向の端部(エッジ)の位置を検出可能な金属帯エッジ検出装置38とを備える。
【0034】
バッフルプレートユニット30は、第1部材としての金属帯10のパスラインの変化に応じて、第2部材としてのバッフルプレート32の位置を調整する位置調整装置として機能する。
【0035】
バッフルプレート32は、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との間において、金属帯10の幅方向端部の両外側にそれぞれ設けられている。詳細には、バッフルプレート32は、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10のDSに配置されたDS側バッフルプレート321と、この金属帯10のWSに配置されたWS側バッフルプレート322とを備える。
【0036】
厚み方向駆動機構36は、DS側バッフルプレート321およびWS側バッフルプレート322を同時にY方向に移動させることもできるし、DS側バッフルプレート321を単独でY方向に移動させることもできるし、WS側バッフルプレート322を単独でY方向に移動させることもできる。なお、上記のY方向には、Y方向の正方向および負方向のいずれも含まれる。
【0037】
厚み方向駆動機構36は、例えば、モータと、チェーン等によって互いに連結された一対のプーリと、回転シャフトと、バッフルプレート32を支持する支持部材とを備えて構成される。該回転シャフトには、ねじが形成されているとともに、該支持部材には、回転シャフトのねじと螺合するねじが形成された貫通孔が設けられており、この貫通孔を回転シャフトが貫通している。
【0038】
このような構成において、モータが回転すると、モータの回転力が一対のプーリを介して回転シャフトに伝達されて、回転シャフトがY方向を回転中心として回転する。そして、回転シャフトの回転に応じて、支持部材がY方向に移動する。これにより、バッフルプレート32をY方向に移動させることができる。なお、バッフルプレート32をY方向の正方向と負方向とのいずれに移動させるかは、モータの回転方向によって制御される。
【0039】
幅方向駆動機構34は、DS側バッフルプレート321およびWS側バッフルプレート322を同時に、X方向の正方向および負方向の何れにも移動させることができる。なお、ここでは、幅方向駆動機構34が、金属帯エッジ検出装置38の動作用装置としても機能している。ただし、これに限定されず、幅方向駆動機構34と金属帯エッジ検出装置38の動作用装置とが別個のものであってもよい。
【0040】
なお、バッフルプレート32を、表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24の移動にともなってZ方向に移動させる機構を備えていてもよい。
【0041】
また、バッフルプレートユニット30は、バッフルプレート32の位置を調整する制御を実行する制御装置(不図示)を備える。該制御装置は、厚み方向駆動機構36を駆動させてY方向におけるバッフルプレート32の位置を制御するプレート位置制御手段として機能する。
【0042】
なお、厚み方向駆動機構36のモータの回転によってY方向に移動するバッフルプレート32は、Y方向の正方向および負方向のいずれに向けて移動する場合であっても、厚み方向駆動機構36のモータを継続して回転させる限り、表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24の高速時と同じ移動速さ(2V)で移動できるように構成されている。
【0043】
後述するように、制御装置は、厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることによって、厚み方向駆動機構36の駆動時には速さ2Vで移動するバッフルプレート32の見掛け上の移動速さを調整することが可能である。
【0044】
次に、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10と、ガスワイピングノズル22,24と、バッフルプレート32との好ましい位置関係について、
図3を参照して説明する。
【0045】
図3は、溶融金属めっき浴から引き上げられた金属帯10と、ガスワイピングノズル22,24と、バッフルプレート32との位置関係を示す平面模式図の一例であって、(A)金属帯10とバッフルプレート32との間にX方向の隙間が生じている状態を示す図、(B)金属帯10とバッフルプレート32との間にY方向の隙間が生じている状態を示す図、(C)金属帯10とバッフルプレート32との間に隙間がほぼ存在しない状態を示す図、である。
【0046】
図3(A)に示されるように、金属帯10とバッフルプレート32との間にX方向の隙間が生じている場合、表側ガスワイピングノズル22から金属帯10の表面に向けて吹き付けられたガスと、裏側ガスワイピングノズル24から金属帯10の裏面に向けて吹き付けられたガスとが衝突して乱流が発生するおそれがある。このような乱流が発生すると、溶融金属がスプラッシュ(飛散)し、例えば、スプラッシュした溶融金属がガスワイピングノズル22,24の幅方向端部付近のノズル口に付着するとノズル詰まりの原因となる。そして、ガスワイピングノズル22,24の幅方向端部付近のノズル口にノズル詰まりが発生すると、金属帯10の幅方向の端部近傍には中央近傍と比べて十分なガスが吹き付けられず、エッジオーバーコート(金属帯のエッジ部のめっき厚がセンター部のめっき厚に比べて厚くなる現象)が発生するおそれがある。
【0047】
また、
図3(B)に示されるように、金属帯10とバッフルプレート32との間にY方向の隙間が生じている場合も、
図3(A)と同様に、表側ガスワイピングノズル22から金属帯10の表面に向けて吹き付けられたガスと、裏側ガスワイピングノズル24から金属帯10の裏面に向けて吹き付けられたガスとが衝突することにより、エッジオーバーコートが発生するおそれがある。
【0048】
したがって、エッジオーバーコートの発生を抑制するためには、例えば
図3(C)に示されるように、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上に存在し、金属帯10とバッフルプレート32との間に隙間がほぼ存在しない状態とすることが好ましい。
【0049】
なお、本願において、「略同一平面上」には、
図5の(イ)~(ハ)に示されるようにY方向においてバッフルプレート32の+Y側の面と-Y側の面との間に金属帯10が存在する態様のみならず、金属帯10の-Y側の面とバッフルプレート32の+Y側の面とが略一致する態様(
図5の(ニ)を参照)、および金属帯10の+Y側の面とバッフルプレート32の-Y側の面とが略一致する態様(
図5の(ホ)を参照)も含まれる。このように、金属帯10とバッフルプレート32とが「略同一平面上」となる状態は、金属帯10の厚み方向(Y方向)において金属帯10の少なくとも一部がバッフルプレート32と重なる状態である。すなわち、Y方向において金属帯10とバッフルプレート32との間に隙間がほぼ存在しない状態が、金属帯10とバッフルプレート32とが「略同一平面上」となる状態に相当する。
【0050】
ところで、金属帯10とバッフルプレート32との間にX方向の隙間が発生している場合、バッフルプレート32を、金属帯エッジ検出装置38(
図2)による検出結果に基づいて、金属帯10の幅方向の端部に近接させるように金属帯10に追従してX方向に移動させることによって、X方向の隙間を極力小さくすることができる。
【0051】
しかし、例えば反射式や渦流式の距離計を用いたとしても、表側ガスワイピングノズル22から金属帯10の表面までの距離や裏側ガスワイピングノズル24から金属帯10の裏面までの距離を測定することは困難であるため、バッフルプレート32を金属帯10に追従してY方向に移動させることは現実的でない。
【0052】
このような事情から、本実施形態では、金属帯10のパスラインが変化すると表側ガスワイピングノズル22または/および裏側ガスワイピングノズル24がY方向に移動することを前提として、制御装置により以下の制御が行われるようにしている。すなわち、Y方向への表側ガスワイピングノズル22または/および裏側ガスワイピングノズル24の移動状況に基づいて、制御装置により厚み方向駆動機構36を駆動させることにより、バッフルプレート32をY方向に移動させる制御が行われるようにしている。
【0053】
ただし、バッフルプレート32の移動速さとガスワイピングノズル22,24の移動速さ(すなわち、金属帯10の位置変化の速さ)とが同じ速さとは限らない。バッフルプレート32の移動速さとガスワイピングノズル22,24の移動速さとが異なる場合、金属帯10のパスラインの変化に応じたガスワイピングノズル22,24の移動にともなってバッフルプレート32がY方向に移動する際に、Y方向において金属帯10とバッフルプレート32との間に隙間が生じてエッジオーバーコートが発生するおそれがある。また、バッフルプレート32とガスワイピングノズルとの両部材がY方向に移動する際に、一方の部材が他方の部材に追い付いて衝突するおそれもある。
【0054】
そこで、本実施形態では、金属帯10のパスラインがY方向に変化したことにともなって厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることにより、金属帯10の面とバッフルプレート32の面とが略同一平面上となるようにバッフルプレート32を移動させる制御が行われるようにしている。詳細には、以下に示すように、金属帯10の位置変化に応じたY方向へのガスワイピングノズル22,24の移動に基づいて厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることにより、ガスワイピングノズル22,24の移動に追従する態様でバッフルプレート32を移動させる制御が行われるようにしている。
【0055】
以下に、本発明の一実施形態としてのバッフルプレートユニット30およびバッフルプレート32の位置調整方法、すなわちバッフルプレート32をY方向に移動させる制御について、
図4を参照して説明する。
【0056】
図4は、表側ガスワイピングノズル22または/および裏側ガスワイピングノズル24の移動方向と、バッフルプレート32の移動方向との関係性を示すタイムチャートの一例であって、(A)表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両方が閉方向に向けて移動を開始した場合におけるバッフルプレート32の移動方向を説明するための図、(B)表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両方が開方向に向けて移動を開始した場合におけるバッフルプレート32の移動方向を説明するための図、(C)閉方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレート32の移動方向を説明するための図、(D)開方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレート32の移動方向を説明するための図、である。
【0057】
なお、
図4に示される「正方向」はY方向の正方向(+Y方向)に相当し、「負方向」はY方向の負方向(-Y方向)に相当する。また、
図4に示される「閉」は、Y方向においてガスワイピングノズル22,24を金属帯10に近接させる方向に相当し、「開」は、Y方向においてガスワイピングノズル22,24を金属帯10から離間させる方向に相当する。
【0058】
また、ガスワイピングノズル22,24とバッフルプレート32との各移動速さの一例として、ここでは、表側ガスワイピングノズル22および裏側ガスワイピングノズル24は、速さVで移動し、バッフルプレート32は、厚み方向駆動機構36の駆動時には速さ2V(>V)で移動することを想定する。
【0059】
先ず、
図4(A)を参照して、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両ノズル22,24が閉方向に向けて移動を開始した場合におけるバッフルプレート32の移動制御について説明する。
【0060】
両ノズル22,24が閉方向に向けて速さVで移動を開始した場合(
図4(A)のa1を参照)、バッフルプレート32をY方向に移動させる制御(バッフルプレート32の位置調整制御)は開始されない。
【0061】
詳細には、表側ガスワイピングノズル22が-Y方向に向けて速さVで移動し且つ裏側ガスワイピングノズル24が+Y方向に向けて速さVで移動する場合、言い換えれば、両ノズル22,24が互いに反対方向(互いに近接する方向)に向けて速さVで移動する場合には、バッフルプレート32をY方向に移動させる制御は実行されない。すなわち、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との間の略中央位置(略センターライン)が変化しない場合には、バッフルプレート32をY方向に移動させる制御は実行されず、バッフルプレート32の位置が現在の位置のまま維持される。
【0062】
これに対して、両ノズル22,24が閉方向に向けて速さVで移動を開始したものの(
図4(A)のc1を参照)、その後に両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22のみが停止した場合には(
図4(A)のd1を参照)、移動する裏側ガスワイピングノズル24に追従(同調)する態様でバッフルプレート32をY方向に移動させる制御が開始される。
【0063】
詳細には、移動するガスワイピングノズルの移動方向と同じ方向に向けて、該移動するガスワイピングノズルに追従する速さでバッフルプレート32を移動させる制御が実行される。ここでは、裏側ガスワイピングノズル24の移動方向(+Y方向)に向けて、該裏側ガスワイピングノズル24に追従する速さでバッフルプレート32を移動させる制御が実行される。
【0064】
移動するガスワイピングノズルに追従する速さとして、この実施形態では、両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さが例示される。
【0065】
詳細には、両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22が停止し且つ裏側ガスワイピングノズル24が+Y方向に向けて速さVで移動する場合は両ノズル22,24間の略センターラインが速さ0.5V(=V/2)で+Y方向に向けて移動することに基づいて、バッフルプレート32を+Y方向に向けて速さ0.5Vで移動させる制御が実行される。
【0066】
より詳細には、制御装置は、厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることにより、金属帯10の面とバッフルプレート32の面とが略同一平面上となるように、厚み方向駆動機構36の駆動時には速さ2Vで移動するバッフルプレート32の見掛け上の速さを0.5Vに制御する。このときの間歇率K(デューティ比とも称される)は0.25(=0.5V/2V)となる。
【0067】
間歇率Kは、次のようにして求められる。
【0068】
先ず、両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さV1に移動時間Tを乗じると、該両ノズル22,24間の略センターラインの移動距離D1が得られる(D1=V1×T)。また、厚み方向駆動機構36の駆動時におけるバッフルプレート32の移動速さV2に間歇率Kと移動時間Tとを乗じると、バッフルプレート32の移動距離D2が得られる(D2=V2×T)。両移動距離D1,D2を等しい値とすると、上記の2式に基づいて、関係式「間歇率K=両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さV1/バッフルプレート32の移動速さV2」が得られる。これにより、間歇率Kが求められる。なお、厚み方向駆動機構36のオン/オフ周期(パルス周期)が短い程、バッフルプレート32の移動中において金属帯10とバッフルプレート32との間の隙間を極力小さくすることが可能となる。
【0069】
このように、両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さV1に応じて間歇率Kを変更することによって、厚み方向駆動機構36の駆動時には速さ2Vで移動するバッフルプレート32を任意の速さで移動させることができ、ガスワイピングノズルの移動に該バッフルプレート32を追従させる制御が実現される。
【0070】
その後、裏側ガスワイピングノズル24が停止すると、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(A)のe1を参照)。このとき、該金属帯10の面とバッフルプレート32の面とが略同一平面上となる。
【0071】
また、両ノズル22,24が閉方向に向けて移動を開始したものの(
図4(A)のf1を参照)、その後に両ノズル22,24のうち裏側ガスワイピングノズル24のみが停止した場合(
図4(A)のg1を参照)には、移動する表側ガスワイピングノズル22に追従する態様でバッフルプレート32をY方向に移動させる制御が開始される。
【0072】
詳細には、両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22が-Y方向に向けて速さVで移動し且つ裏側ガスワイピングノズル24が停止する場合、これに基づいて、上記の制御と同様にして、バッフルプレート32を-Y方向(移動する表側ガスワイピングノズル22に追従する方向)に向けて移動させる制御が実行される。なお、このときの間歇率Kは0.25であり、バッフルプレート32の見掛け上の移動速さは0.5Vとなる。その後、表側ガスワイピングノズル22が停止すると、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(A)のh1を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0073】
次に、
図4(B)を参照して、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両ノズル22,24が開方向に向けて速さVで移動を開始した場合におけるバッフルプレート32の移動制御について説明する。
【0074】
両ノズル22,24が開方向に向けて速さVで移動を開始した場合(
図4(B)のa2を参照)、バッフルプレート32をY方向に向けて移動させる制御は開始されない。詳細には、表側ガスワイピングノズル22が+Y方向に向けて速さVで移動し且つ裏側ガスワイピングノズル24が-Y方向に向けて速さVで移動する場合、すなわち、両ノズル22,24が互いに反対方向に向けて速さVで移動する場合には、バッフルプレート32をY方向に移動させる制御は実行されない。
【0075】
これに対して、両ノズル22,24が開方向に向けて速さVで移動を開始したものの(
図4(B)のc2を参照)、その後に両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22のみが停止した場合(
図4(B)のd2を参照)、移動する裏側ガスワイピングノズル24に追従する態様でバッフルプレート32をY方向に移動させる制御が開始される。
【0076】
詳細には、移動する裏側ガスワイピングノズル24の移動方向と同じ方向(-Y方向)に向けて、該裏側ガスワイピングノズル24に追従する速さでバッフルプレート32を移動させる制御が実行される。ここでは、上記の制御と同様にして、バッフルプレート32を-Y方向に向けて間歇率0.25で(すなわち、速さ0.5Vで)移動させる制御が実行される。その後、裏側ガスワイピングノズル24が停止すると、Y方向の負方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(B)のe2を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0077】
また、両ノズル22,24が開方向に向けて速さVで移動を開始したものの(
図4(B)のf2を参照)、両ノズル22,24のうち裏側ガスワイピングノズル24のみが停止した場合(
図4(B)のg2を参照)も、移動する表側ガスワイピングノズル22に追従する態様でバッフルプレート32をY方向に移動させる制御が実行される。
【0078】
詳細には、両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22が+Y方向に向けて速さVで移動し且つ裏側ガスワイピングノズル24が停止する場合、これに基づいて、上記の制御と同様にして、バッフルプレート32を+Y方向に向けて間歇率0.25で(すなわち、速さ0.5Vで)移動させる制御が開始される。その後、表側ガスワイピングノズル22が停止すると、Y方向の負方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(B)のh2を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0079】
次に、
図4(C)を参照して、閉方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレート32の移動制御について説明する。
【0080】
閉方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合(
図4(C)のa3を参照)、移動するガスワイピングノズル22,24の移動方向と同じ方向(-Y方向)に向けて、該ガスワイピングノズル22,24に追従する速さでバッフルプレート32を移動させる制御が実行される。
【0081】
詳細には、ここでは、両ノズル22,24間の略センターラインが速さVで-Y方向に移動することに基づいて、バッフルプレート32を-Y方向に向けて速さVで移動させる制御が実行される。なお、このときの間歇率Kは0.5(=V/2V)となる。その後、閉方向に向けて移動する表側ガスワイピングノズル22と開方向に向けて移動する裏側ガスワイピングノズル24とのいずれもが停止すると(
図4(C)のb3を参照)、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0082】
また、閉方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始されたものの(
図4(C)のc3を参照)、両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22のみが停止したとしても(
図4(C)のd3を参照)、-Y方向(移動する裏側ガスワイピングノズル24に追従する方向)に向けたバッフルプレート32の移動は継続される。ただし、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動速さは、表側ガスワイピングノズル22が停止したことに基づいてVから0.5Vに減速される。すなわち、間歇率Kが0.5から0.25に低減される。その後、裏側ガスワイピングノズル24の停止に基づいて、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(C)のe3を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0083】
また、閉方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と開方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始されたものの(
図4(C)のf3を参照)、両ノズル22,24のうち裏側ガスワイピングノズル24のみが停止したとしても(
図4(C)のg3を参照)、-Y方向(移動する表側ガスワイピングノズル22に追従する方向)に向けたバッフルプレート32の移動は継続される。ただし、裏側ガスワイピングノズル24が停止したことに基づいて間歇率Kは0.5から0.25に低減され、これに応じて、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動速さはVから0.5Vに減速される。その後、表側ガスワイピングノズル22の停止に基づいて、-Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(C)のh3を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0084】
次に、
図4(D)を参照して、開方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合におけるバッフルプレート32の移動制御について説明する。
【0085】
開方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始された場合(
図4(D)のa4を参照)、両ノズル22,24間の略センターラインが速さVで+Y方向に向けて移動することに基づいて、バッフルプレート32を+Y方向に向けて速さVで移動させる制御が実行される。その後、開方向に向けて移動する表側ガスワイピングノズル22と閉方向に向けて移動する裏側ガスワイピングノズル24とのいずれもが停止すると(
図4(D)のb4を参照)、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0086】
また、開方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始されたものの(
図4(D)のc4を参照)、両ノズル22,24のうち表側ガスワイピングノズル22のみが停止したとしても(
図4(D)のd4を参照)、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動は継続される。ただし、表側ガスワイピングノズル22が停止したことに基づいて間歇率Kは0.5から0.25に低減され、これに応じて、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動速さはVから0.5Vに減速される。その後、裏側ガスワイピングノズル24の停止に基づいて、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(D)のe4を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0087】
また、開方向に向けた表側ガスワイピングノズル22の移動と閉方向に向けた裏側ガスワイピングノズル24の移動とが同時に開始されたものの(
図4(D)のf4を参照)、両ノズル22,24のうち裏側ガスワイピングノズル24のみが停止したとしても(
図4(D)のg4を参照)、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動は継続される。ただし、裏側ガスワイピングノズル24が停止したことに基づいて間歇率は0.5から0.25に低減され、これに応じて、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動速さはVから0.5Vに減速される。その後、表側ガスワイピングノズル22の停止に基づいて、+Y方向に向けたバッフルプレート32の移動も停止される(
図4(D)のh4を参照)。このとき、金属帯10とバッフルプレート32とが略同一平面上となる。
【0088】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることにより、厚み方向駆動機構36の駆動時にはガスワイピングノズル22,24の移動速さよりも速い速さで移動するバッフルプレート32の見掛け上の移動速さを低速化することができる。したがって、厚み方向駆動機構36を連続的に駆動させる場合と比較して、Y方向へのバッフルプレート32の移動に際して金属帯10とバッフルプレート32との間の隙間を小さくすることが可能であり、ひいては、金属帯10とバッフルプレート32とに関する位置調整を好適に行うことが可能である。
【0089】
また、Y方向へのガスワイピングノズル22,24の移動に基づいて厚み方向駆動機構36を間歇的に駆動させることにより、該ガスワイピングノズル22,24の移動に追従する態様でバッフルプレート32を移動させるので、ガスワイピングノズル22,24へのバッフルプレート32の衝突を回避することも可能である。
【0090】
ところで、上記の実施形態では、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両方が同じ方向に向けて移動するか一方のみが移動するかに応じて、Y方向へのバッフルプレート32の移動速さが異なるように制御される。
【0091】
詳述すると、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両ノズルが同じ方向に向けて移動速さVで移動する場合、両ノズル22,24間の略センターラインも速さVで移動することとなるため、バッフルプレート32は、両ノズル22,24の移動方向と同じ方向に向けて移動速さVで移動するよう制御される。
【0092】
一方、両ノズル22,24のうちいずれか一方のみが移動する場合は、両ノズル22,24間の略センターラインは、移動するガスワイピングノズルの移動方向に向けて速さ0.5Vで移動することとなるため、バッフルプレート32は、移動するガスワイピングノズルの移動方向と同じ方向に向けて移動速さ0.5Vで移動するよう制御される。
【0093】
このように、表側ガスワイピングノズル22と裏側ガスワイピングノズル24との両方が同じ方向に向けて移動するか一方のみが移動するかに応じて、バッフルプレート32の移動速さが切り替えられる。換言すれば、バッフルプレート32の移動速さが両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さと略同一になるように厚み方向駆動機構36の間歇駆動を制御することによって、ガスワイピングノズルの移動に追従する態様でのバッフルプレート32の移動が実現される。
【0094】
これによれば、Y方向へのバッフルプレート32の移動中において金属帯10とバッフルプレート32との間の隙間を極力小さくすることが可能である。
【0095】
なお、これに限定されず、例えば、バッフルプレート32の移動速さがガスワイピングノズル22,24の移動速さ(例えばV)と略同一になるように厚み方向駆動機構36の間歇駆動を制御することによって、ガスワイピングノズルの移動に追従する態様でのバッフルプレート32の移動が実現されてもよい。
【0096】
このような場合においても、厚み方向駆動機構36を連続的に駆動させる場合、すなわちバッフルプレート32を間歇移動させない場合と比較して、Y方向へのバッフルプレート32の移動に際して金属帯10とバッフルプレート32との間の隙間を小さくすることが可能であるとともに、ガスワイピングノズル22,24へのバッフルプレート32の衝突を回避することも可能である。
【0097】
ただし、金属帯10とバッフルプレート32との間の隙間を極力小さくした状態でバッフルプレート32を移動させるためには、バッフルプレート32の移動速さが両ノズル22,24間の略センターラインの移動速さと略同一になるように厚み方向駆動機構36の間歇駆動が制御されることが好ましい。
【0098】
なお、上記の実施形態では、位置調整装置としてバッフルプレート32が例示されたが、これに限定されず、位置調整装置が、例えば次述のような搬送装置であってもよい。
【0099】
詳細には、搬送装置が、平面部を有し且つ該平面部の位置が変化しうる第1の台(第1部材)と、当該第1の台の平面部に対して略平行な平面部を有する第2の台(第2部材)とを備えており、該搬送装置の制御装置が、第1の台の位置変化にともなって第2の台を高さ方向に移動させることによって対象物を搬送するようにしてもよい。
【0100】
以上説明した実施形態によれば、以下のような発明を提供することができる。
【0101】
先ず、本発明の位置調整装置は、
平面部を有し、該平面部の位置が変化しうる第1部材(例えば、金属帯10)と、
前記第1部材の平面部と略平行な平面部を有する第2部材(例えば、バッフルプレート32)と、
前記第2部材を、前記第1部材の位置が変化する方向と略同じ方向に移動させることが可能な駆動機構(例えば、厚み方向駆動機構36)と、
前記駆動機構を駆動させて、前記第1部材の平面部の位置が変化する速度よりも速い速度で前記第2部材を移動させることが可能な移動制御手段と、
を備え、
前記移動制御手段は、
前記第1部材の平面部の位置が変化したことにともなって前記駆動機構を間歇的に駆動させることにより、該第1部材の平面部と前記第2部材の平面部とが略同一平面上となるように前記第2部材を移動させることが可能に構成される
ことを特徴とするものである。
【0102】
また、本発明のバッフルプレートユニットは、
溶融金属めっき浴から引き上げられる金属帯(例えば、金属帯10)を挟んで配置されるワイピングノズルを、前記金属帯のパスラインに応じて該金属帯の面と略直交する法線方向(例えば、Y方向)に移動させることが可能なワイピング装置に用いられるバッフルプレートユニット(例えば、バッフルプレートユニット30)であって、
前記金属帯の幅方向端部の外側に設けられたバッフルプレート(例えば、バッフルプレート32)と、
前記バッフルプレートを前記法線方向に移動させることが可能なプレート駆動機構(例えば、厚み方向駆動機構36)と、
前記プレート駆動機構を駆動させて、前記法線方向への前記ワイピングノズルの移動速度よりも速い速度で前記バッフルプレートを前記法線方向に移動させることが可能なプレート位置制御手段と、
を備え、
前記プレート位置制御手段は、
前記法線方向への前記ワイピングノズルの移動に基づいて前記プレート駆動機構を間歇的に駆動させることにより、該ワイピングノズルの移動に追従する態様で前記バッフルプレートを移動させることが可能に構成される
ことを特徴とするものである。
【0103】
なお、本発明は、上記の好ましい実施形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が可能である。
【符号の説明】
【0104】
10 金属帯
22 表側ガスワイピングノズル
24 裏側ガスワイピングノズル
30 バッフルプレートユニット
32 バッフルプレート