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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20230712BHJP
   F27B 21/08 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C22B1/20 Q
C22B1/20 L
F27B21/08 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019224198
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091942
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 勝
(72)【発明者】
【氏名】原 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】石山 理
(72)【発明者】
【氏名】山口 泰英
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193930(JP,A)
【文献】特開2006-225682(JP,A)
【文献】特開2016-191079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/20
F27B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドワイトロイド式焼結機を用い、返鉱を含む配合原料を焼結して焼結鉱を製造する方法であって、
前記ドワイトロイド式焼結機は、点火器と、前記点火器の下流側に離間して設けられ、原料充填層の上面をフレーム加熱するフレーム加熱装置とを有し、
前記点火器と前記フレーム加熱装置の間には、フレームによる加熱が行われない区間が形成されており、
前記返鉱のうちの少なくとも一部をバイパス返鉱として除いた配合原料を造粒し、造粒した造粒後原料に、前記バイパス返鉱を添加して前記配合原料とする、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
前記バイパス返鉱の比率が、新原料に対し、5質量%以上15質量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記バイパス返鉱が、前記焼結鉱が篩い分けられる熱間篩の篩下として回収される返鉱を含む、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高炉製銑法の主原料は、焼結鉱である。
焼結鉱は、通常、次のように製造される。焼結鉱の原料(焼結原料)は、鉄鉱石(粉)、スケールや製鉄ダスト等の含鉄雑原料、橄欖岩等のMgO含有副原料、石灰石等のCaO含有副原料、返鉱、および、燃焼熱によって焼結鉱を焼結(凝結)させる燃料となる炭材(凝結材ともいう)である。まず、原料槽に貯蔵されている各原料を、原料搬送用のベルトコンベア上に所定量切り出して配合原料を、造粒機まで搬送する。造粒機では、配合原料を混合し、混合した配合原料に水分を添加して造粒する。次に、造粒した配合原料(造粒物)を、ホッパより、下方吸引式のドワイトロイド(DL)式焼結機のパレット上に装入する。連続的に移動するパレット上に原料充填層を形成し、原料充填層の上方に配置した点火炉(点火器)により、原料充填層の上部(表面層)の炭材に点火する。そして、パレットの下方から空気(酸素含有ガス)を吸引する。吸引により、原料充填層中に上方から酸素を供給し、炭材の燃焼を下方に進行させる。炭材の燃焼熱により、原料充填層は、上層から下層へ順次焼結される。焼結により得られた焼結部(シンターケーキ)は、粉砕され、篩分け等により所定の粒度に整粒され、高炉の原料である焼結鉱となる。
【0003】
ここで、焼結鉱を製造する際に、配合原料を造粒する造粒工程を設けるのは、空気の下方吸引によって焼結を行うためである。配合原料が造粒されないままでは、配合原料粒子の隙間に小さい配合原料粒子が詰まり原料充填層の通気性が低下し、下方吸引が阻害されて焼結が滞るからである。
【0004】
造粒工程では、上述のように、配合原料に水分を添加する。水分を添加して造粒操作を行うことにより、水がバインダーとなって配合原料粒子が相互に付着する。例えば、比較的粗い粒子の周りに比較的細かい粒子が付着するなどして、疑似粒子が作られる。造粒前の配合原料粒子の粒径よりも、疑似粒子の粒径(見掛けの原料粒径、以下、「造粒後原料粒径」ともいう)が大きくなり、パレット上に形成した原料充填層の空隙率および空隙径が増加して、通気性が向上する。
【0005】
このように、配合原料への水分の添加は、造粒機内での造粒を容易にし、原料充填層の通気性を向上させるために不可欠である。しかしながら、焼結反応が開始すると、造粒のために添加した水分が原料充填層の通気性低下の原因となる。それは、焼結反応が原料充填層の上層部から下層部に進行するにつれて、造粒物中の水分が蒸発して水蒸気が発生し、この水蒸気が下方吸引により下層部に凝集するためである。また、添加した水分は、蒸発する際に気化熱を奪うため、この気化熱を補填するための熱源が必要になる。熱源としては、例えば、高温ガスを供給することが考えられる。
【0006】
以上のように、造粒工程において添加された水分は、焼結初期においては通気性を向上させるという利点を有する一方、焼結進行期においては通気性を低下させるとともに必要高温ガス量を増大させるという欠点を有している。そのため、造粒工程において添加する水分は、焼結初期において造粒が保たれ、焼結進行時には余分な水蒸気を発生させないように、その量を調整する必要がある。
【0007】
このような課題に対して、返鉱バイパス添加焼結法とよばれる技術が提案されている。特許文献1には、返鉱を除いた焼結原料に水分を添加して造粒した後に、その造粒物に返鉱を添加して原料充填層形成用の配合原料と成し、焼結機に装入して焼結を行う技術が開示されている。また、非特許文献1には、配合原料として配合する一部または全部の返鉱を除いた焼結原料に水分を添加して造粒し、その造粒物に、未配合分の返鉱(造粒時に除かれた前記一部または全部の返鉱)を造粒せずに添加して、原料充填層形成用の配合原料と成し、焼結機に装入して焼結を行う技術が開示されている。返鉱バイパス添加焼結法において、造粒後の原料に添加される未配合分の返鉱(バイパス返鉱)は、造粒前に他の焼結原料に配合されて造粒される返鉱が搬送される通常の経路から分岐して設けられた別系統の経路(バイパス)を通って、造粒後の焼結原料に添加される。
【0008】
返鉱は、粉砕されたシンターケーキを篩分けした際の篩下である。返鉱は乾燥しているので、一部または全部の返鉱を除いて焼結原料を造粒することにより、造粒時に添加する水分量を抑えることができる。また、一部または全部の返鉱を除いた焼結原料の造粒物に、後から未配合分の返鉱(バイパス返鉱)を添加することにより、造粒物の表面水分をバイパス返鉱に移動させる効果が得られる。特に、返鉱は乾燥しているので、造粒物の余分な水分を除去する効果が高い。
【0009】
返鉱バイパス添加焼結法によれば、造粒状態を維持するために必要な水分は保持しつつ、水蒸気の発生および凝集の元となる過剰な水分の添加を抑制することができる。また、水蒸気の発生を抑制することにより、造粒物(造粒後原料)の崩壊による造粒物粒子の隙間詰まりを防止することができる。その結果、原料充填層の通気性の向上により、燃焼前線降下速度(FFS:Flame Front Speed)が大きくなり、生産性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許5194378号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】鉄と鋼 100(2014) No.2 p.180-188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
返鉱バイパス添加焼結法によれば、上述のように通気性が向上するが、通気性が向上するということは、下方吸引による空気が原料充填層に多量に供給され、焼結速度が上昇する。焼結速度が上昇すると、配合原料(添加後配合原料)により形成された原料充填層を焼成するための高温保持時間が実質的に短くなるので、焼結不十分な焼結鉱が発生し、成品歩留が低下してしまう。返鉱バイパス添加焼結法において、成品歩留が維持できれば、より生産性(生産率)を向上させることができる。
本発明の目的は、返鉱バイパス添加焼結法を用いた焼結鉱の製造方法において、成品歩留と生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明の要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)ドワイトロイド式焼結機を用い、返鉱を含む配合原料を焼結して焼結鉱を製造する方法であって、
前記ドワイトロイド式焼結機は、点火器と、前記点火器下流側に離間して設けられ、原料充填層の上面をフレーム加熱するフレーム加熱装置とを有し、
前記点火器と前記フレーム加熱装置の間には、フレームによる加熱が行われない区間が形成されており、
前記返鉱のうちの少なくとも一部をバイパス返鉱として除いた配合原料を造粒し、造粒した造粒後原料に、前記バイパス返鉱を添加して前記配合原料とする、ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
(2)前記バイパス返鉱の比率が、新原料に対し、5質量%以上15質量%以下である、ことを特徴とする(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
(3)前記バイパス返鉱が、前記焼結鉱が篩い分けられる熱間篩の篩下として回収される返鉱を含む、ことを特徴とする(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、返鉱バイパス添加焼結法において、フレーム加熱装置によるフレーム加熱により、焼結に必要な高温保持時間を確保することにより、成品歩留の向上と生産性向上が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一般的なDL式焼結機の全体概要図である。
図2】一般的な焼結法を説明する説明概要図である。
図3】一般的な焼結法の工程を説明する概要図である。
図4】返鉱バイパス添加焼結法の工程を説明する概要図である。
図5】フレーム加熱法を説明する説明概要図である。
図6】フレーム加熱装置の配置場所の範囲を算定する方法を示す説明図である。
図7】本発明の実施形態の一例を説明する説明概要図である。
図8】本発明の実施形態の変形例である焼結工程の一例を説明する概要図である。
図9】バイパス返鉱比率と生産率の関係を図示した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に課題を解決した経緯について詳細に説明する。
本発明の焼結鉱の製造方法は、返鉱バイパス添加焼結法に後述するフレーム加熱法を組み合わせたものである。まず、フレーム加熱法の概要を説明する。
DL式焼結機では、原料充填層の上層表面に点火し、原料充填層の下方からガスを吸引することにより点火した上層から下層に向けて順次焼結を進行させる。そのため、一般に、焼結過程において、原料充填層の高さ方向の熱的分布が異なり、下層部では熱量が十分であっても、上層部では熱量不足となる傾向がある。これは、下層部では、上層部の焼結の進行により徐々に昇温し充分に予熱された後にコークスなどの炭材が燃焼し、さらに燃焼完了後も上層部の残熱により徐々に冷却されるのに対し、上層部では、上方より吸引される低温の空気(酸素含有ガス)のために燃焼温度が十分に上昇せず、また、炭材の燃焼完了後には低温の空気により急冷されることによるものである。上層部で熱量不足により焼結が十分に進行しないと、上層部の焼結鉱の強度不足を引き起こし、全体の歩留も悪くなる。
【0017】
本発明者は、点火器での点火後に、種々の方法で原料充填層の上面を加熱し、各方法や各条件における歩留を調べた。その結果、点火器での点火完了後、所定の区間に大気吸引領域を設けて一定時間大気(酸素含有ガス)を吸引し、その後、再度、原料充填層の上面を点火して加熱することによって、成品歩留が向上することを見出した。DL焼結機を使った焼結鉱の製造方法において、最初の点火後に所定の間隔を空けたタイミングでフレーム(火炎)加熱を行う技術を、フレーム加熱法と呼ぶ。
【0018】
フレーム加熱法は、比較的簡便な焼結機の装置構成により、原料充填層の焼結に必要な高温保持時間を延長し、歩留を向上させるものである。具体的には、点火器から所定の間隔を設けて配置したフレーム加熱装置を備えた焼結機を使用し、フレーム加熱装置により、原料充填層の上面を再加熱する。再加熱により、原料充填層上部空間が高温に保たれ、かつ高温に保たれた原料充填層上部空間の空気が下方吸引により焼結層内へ導入される。そのため、再加熱による高温ガスが原料充填層への熱供給に活用され、燃料(コークス)による加熱が効率的に行われる。その結果、熱不足、高温保持時間不足による焼結不良が防止でき、原料充填層の歩留改善に有効となる。
【0019】
本発明者らは、歩留に課題のある返鉱バイパス添加焼結法において、歩留の向上を目的に、上述のフレーム加熱技術を適用することを考案した。フレーム加熱法によれば、大気吸引領域を設けることにより、原料充填層に高温ガスを供給し、かつ、焼結帯の上下方向(深さ方向)の幅を拡大することができる。その結果、焼結の進行に必要な高温保持時間を延長させることができ、予測を超えた、フレーム加熱技術と返鉱バイパス添加焼結法の相乗効果が得られることが明らかとなった。このような知見に基づいてなされた本発明の実施形態について、以下で詳細に説明する。
【0020】
(焼結機と焼結鉱の製造方法)
まず、一般的な焼結鉱の製造装置および製造方法について、図面を参照して説明する。
図1は、一般的なDL式焼結機の構成を示す概略図である。図2は、一般的なDL式焼結機による焼結鉱の製造方法を説明する説明図である。図3は、一般的な焼結鉱の製造工程を説明する概略図である。図2では、DL式焼結機30の一部の構成のみ図示し、パレット39、トラックガイド40、駆動輪41、遊動輪42、ダクト43、風箱44の記載を省略している。なお、後述する返鉱バイパス添加焼結法、フレーム加熱法、および本発明において、使用する焼結機や焼結鉱の製造方法も、このような一般的な焼結機の構成および一般的な焼結鉱の製造方法に準拠している。以後の説明において、同様の構成については、同様の符号や名称を付す等して重複する説明は省略する。
【0021】
まず、DL式焼結機30の構成について説明する。
図1に示すように、DL式焼結機30は、点火器32、ホッパ37、パレット39、トラックガイド40、駆動輪41、遊動輪42、ダクト43、および風箱44を備えて構成される。DL式焼結機30は、パレット中に装入した配合原料の上部から、バーナー火炎により配合原料中の炭材(凝結材)に点火し、点火した炭材の燃焼熱により配合原料を焼成して、焼結鉱を製造する装置である。
【0022】
ホッパ37は、配合原料を装入する原料供給部である。上部から配合原料が供給され、下部排出口からパレット39内に所定量の配合原料を切り出す。
パレット39は、焼結機長手方向に隙間なく複数配置され、容器を形成する。パレット39は、2枚の側壁および底部からなる台車であり、上部および進行方向前後が開口されている。また、底部には、パレット進行方向に沿って延びるスリット状の開口が複数形成されている。
【0023】
パレット39は、駆動輪41、遊動輪42に巻回される無端ベルトとして構成されている。そして、駆動輪41を動力源により回転させると、連結された複数のパレット39が所定の速度でトラックガイド40上を進行する。給鉱側にあるパレット39は、駆動輪41によって排鉱部に至り、そこで遊動輪42とトラックガイド40とに誘導されて反転し、下側のトラックガイド40に沿って給鉱側に戻る。
点火器32は、複数のパレット39のうち、進行方向上流のパレット39上の原料充填層内の炭材に上部から点火する装置である。点火器32は、例えば、パレット39の上部を覆う箱状体(フード)と、その内部に配置される複数の点火用のバーナーとを備えている点火炉である。
風箱44は、パレット39の下に配置され、ダクト43を介してブロア(図示省略)に接続されている。ブロアの作動により、風箱44からパレット39の下方空間の空気が吸い出される。これに伴い、パレット39の上方から冷却された空気が原料充填層内に導入され、点火器32によって点火された配合原料の燃焼を維持するとともに、燃焼後の焼結鉱を冷却する。
【0024】
次に、一般的な焼結鉱の製造方法および製造工程について、図2および図3を参照して説明する。なお、図3において、太い矢印は焼結原料の流れを示し、細い矢印は返鉱のみの流れを示す。
図3に示すように、原料槽10に貯蔵された各焼結原料である鉄鉱石、石灰石や橄欖岩などの副原料、スケールなどの含鉄雑原料(以上を総括して新原料という)、粉コークス等の凝結材、および返鉱を所定の割合(比率)で配合して配合原料とし、それを造粒機20で一括して造粒する。造粒された配合原料は、焼結機30でシンターケーキに焼成される。具体的には、図2に示すように、造粒された配合原料は、ホッパ37に投入され、下部排出口からDL式焼結機30のパレット39(図1参照)上に、所定量が切り出されて、原料充填層31を形成する。上述したように、パレット39は駆動輪41(図1参照)の駆動により連続的に移動しており、原料充填層31は、パレット39の移動により下流側に配置された点火器32(点火炉)の下方に進行する。点火器32のバーナーにより、原料充填層31の上部(表面層)の炭材が点火される。点火により原料充填層31の上部の炭材が燃焼して燃焼帯35を形成し、下方からの吸引による空気(酸素)の供給により燃焼が維持されつつ原料充填層31の下層へと進行する。そして、焼結完了層36(焼成した原料充填層)は、下方からの吸引により上方から導気される空気により冷却される。パレット39が遊動輪42(図1参照)上を下方に移動する際に焼結完了層36が破断されて落下し、DL式焼結機30から排鉱される。排鉱された焼結鉱は、図3に示すように、破砕機51、熱間篩(ホットスクリーン)52、冷却機53、冷間篩(コールドスクリーン)54で順に処理される過程で所望の粒度に整粒されて焼結鉱(成品)となり、高炉60へ送られる。
【0025】
ここで、返鉱は、熱間篩52および冷間篩54の篩下として回収される焼結鉱である。つまり、焼結鉱のうち、高炉60使用に適さない粒度(通常5mm未満)のものが、返鉱として、原料槽10へ戻される。なお、熱間篩52から回収される返鉱をホットリターン、冷間篩54から回収されるものをコールドリターンと区別して呼ぶ。これは、後者が常温であるのに対して、前者は焼成時の熱を有して数十度の温度であることによる。最近では熱間篩52のない、すなわちホットリターンを回収しない焼結鉱製造工程もある。
【0026】
(返鉱バイパス添加焼結法)
次に、返鉱バイパス添加焼結法について、図4を参照して説明する。図4は、返鉱バイパス添加焼結法の工程の一例を説明する概要図である。なお、以下の説明において、「造粒返鉱」は、配合原料として配合される返鉱のうち、造粒前に他の焼結原料に配合されて造粒される返鉱を意味し、「バイパス返鉱」は、配合原料として配合される返鉱のうち、造粒後の原料(他の焼結原料を造粒した造粒物、または造粒返鉱および他の焼結原料を造粒した造粒物)に添加される返鉱を意味する。配合原料として配合する返鉱の全配合量が「バイパス返鉱」であってもよい。また、「造粒後原料」はバイパス返鉱を除いた焼結原料に水分を添加して造粒した造粒物を、「添加後配合原料」は造粒後原料にバイパス返鉱を添加した配合原料を、それぞれ意味する。
【0027】
返鉱バイパス添加焼結法は図3に示した一般的な製造方法とは異なり、図4に示すように、一部または全部の返鉱をバイパス返鉱として、通常の経路から分岐する経路(バイパス)により、造粒機20と焼結機30の間、すなわち、造粒機20による造粒工程後、かつ焼結機30による焼結工程前の焼結原料(造粒後原料)へと戻す焼結法である。造粒機20には、返鉱以外の焼結原料と造粒返鉱(バイパス返鉱分を除いた返鉱)とを投入して水分を添加して造粒を完了し、その後、造粒した焼結原料(造粒後原料)に返鉱(バイパス返鉱)を添加し、これにより得られた混合物(添加後配合原料)を原料充填層に装入する配合原料として用いる。なお、配合原料として配合される返鉱の全配合量をバイパス返鉱とし、造粒返鉱の配合量をゼロとしてもよい。
【0028】
バイパス返鉱比率は、バイパス返鉱量と造粒返鉱量との配分比で調整可能である。返鉱量が所望のバイパス返鉱量に満たない場合は、熱間篩52あるいは冷間篩54の篩目を拡大して返鉱の回収量を増やすこともできる。
【0029】
なお、原料充填層の通気を最適にする好適な水分値は、焼成時の燃焼進行速度(FFS)を最適にする水分値より1%程度高いとされている。返鉱バイパス添加焼結法によれば、造粒促進を図るために水分含有率が高い状態で造粒した後に、乾燥したバイパス返鉱を添加して水分含有率を焼成に好ましい水分値に低下させることができる。焼結層の通気性を向上させることができ、生産率の向上が可能となる。
【0030】
(フレーム加熱法)
続いて、図5および図6を参照して、本発明の特徴的な構成であるフレーム加熱法について説明する。フレーム加熱法は、DL式焼結機を使用する焼結鉱の製造方法である。なお、ここでの説明は、フレーム加熱法を用いた場合のみの説明であり、返鉱バイパス添加焼結法と組み合わせた際の説明は、後述する本発明の実施形態において説明する。
【0031】
フレーム加熱法を実施する焼結機には、以下の2点の特徴がある。1つ目は、原料充填層31の上面をフレーム加熱するフレーム加熱装置34を設けることである。フレーム加熱装置34は、点火器32の下流側に、点火器32と所定の間隔で離間して設けられる。2つ目は、点火器32とフレーム加熱装置34との間に、大気吸引領域33を設けることである。なお、図5および図6に示された燃焼帯35は模式的なものであり、実際に燃焼帯35が原料充填層31に対して占める割合や燃焼帯35の形状は、図示されたものとは異なりうる。
【0032】
ここで、「フレーム加熱」とは、フレーム(火炎)を用いて加熱することである。フレーム加熱は、加熱対象物である焼結層最上面に火炎を吹き付けて、外部から加熱するものである。燃料を原料充填層31内に吹き込んで燃焼させるなど、原料充填層31を内部から加熱するものではない。なお、フレーム加熱は、上面からの火炎バーナー等の燃焼加熱であり、火炎が焼結層表面に直接接している状態で加熱することが望ましい。
【0033】
また、「大気吸引領域33」とは、点火器32とフレーム加熱装置34との間の区間(領域)であり、下方吸引により大気が吸引されるものの、上面からバーナー等の火炎による加熱が行われない焼結工程における一領域のことをいう。点火器32での点火により、原料充填層31には燃焼帯35が形成されるが、引き続きすぐにバーナー加熱を行っても、点火器32での点火により原料充填層31上方空間の酸素濃度が低下しているため、焼結反応は進行しない。フレーム加熱法では、点火器32とフレーム加熱装置34との間に大気吸引領域33を設けることにより、燃焼帯35に十分に酸素が供給される。よって、この大気吸引領域33での原料充填層31内上層部において炭材の燃焼が促進されて、下層への焼結反応が進行し、燃焼帯35が拡大する。
【0034】
フレーム加熱法においては、フレーム(火炎)が原料充填層31の上面に直接噴射されるため、原料充填層31上面を十分に加熱できるとともに、原料充填層31の上部空間の空気をも加熱できる。原料充填層31の上部空間の空気を加熱することによって、低温の空気が吸引されることによる原料充填層31の上層の温度低下を防止できる。なお、フレーム加熱装置34による再点火により、点火器32で点火できなかった燃え残りの炭材を余さず燃焼させることができ、原料充填層31に含まれる炭材の燃焼効率を高めることもできる。
【0035】
図6を参照して、フレーム加熱法における焼結の進行について、詳細に説明する。
ホッパ37から装入された原料充填層31の上面(表面)の炭材に、点火器32により点火する。点火により、原料充填層31に含まれる炭材が燃焼する。点火器32の配置箇所(図6のX1に対応する箇所)においては、大気を下方吸引する場合もしない場合もありうるが、いずれの場合も、ここでの炭材の燃焼による焼結は、下層方向に進行せず停滞する。これは、点火器32による点火が完了するまでは、着火はするものの、点火バーナー加熱により原料充填層31の上方の酸素濃度が薄くなるためである。
【0036】
着火が完了し、点火器32から下流方向にパレット39(図5および図6において原料充填層31は長手方向に連続して図示されているが、実際は、原料充填層31は、図1に示す各箱型のパレット39中に載置されている。)が移動することにより、原料充填層31は大気吸引領域33(図6のd1に対応する箇所)に移動する。大気吸引領域33では、下方吸引により燃焼帯35が降下し、下層方向に焼結が進行する。このとき、原料充填層31中の厚さ方向に含まれるすべての炭材が一度に燃焼を開始するものではない。最初は、表面の炭材のみが燃焼し、表面の炭材の燃焼が終了すると、順次、火面(燃焼前線)が下部方向に移動する。すなわち、焼結中において、原料充填層31中で炭材が燃焼している部分(燃焼帯35)は、炭材が燃焼し終わった焼結完了層36と、炭材がこれから燃焼する原料充填層31との間にあり、深さ方向にある程度の厚さを有する。
【0037】
原料充填層31は、更なるパレット39の移動により、大気吸引領域33からフレーム加熱装置34の配置箇所(図6のX2に対応する箇所)に移動する。フレーム加熱装置34で加熱されている最中は、下方吸引しても、しなくても、燃焼前線(燃焼帯下面)は進行せず停滞する。これは、点火器32での加熱中と同様に、フレーム加熱中は原料充填層31の上方の酸素濃度が薄くなり、燃焼に必要な酸素の供給が制限されるからである。なお、「燃焼前線(燃焼帯下面)」とは、炭材が赤熱燃焼している燃焼帯35の最下部で、燃焼が開始する境界面をいう。
【0038】
フレーム加熱を開始するタイミングは、例えば以下のような点を考慮して決定される。
フレーム加熱を開始するタイミングが遅れると、焼結層上面部が、大気吸引により冷却されて温度が下がり切ってしまう。改めて加熱しても、燃焼帯35において炭材の燃焼に必要な熱量が得られず、フレーム加熱による歩留向上の効果が低下してしまう。
一方、フレーム加熱を開始するタイミングが早いと、十分な長さの大気吸引領域33が確保できず、燃焼帯35の上下方向の長さが短くなる。点火に引き続き連続して加熱した場合、あるいは、必要十分な長さd1の大気吸引領域33を設けない場合などは、十分な大気吸引が行われないことから、原料充填層31内部の炭材に供給される酸素が不足する。そのため、原料充填層31上部(上層部)に、焼結に必要な時点での熱量を供給することができず、焼結を進行させるに十分な温度である1100℃以上の高温保持時間が十分に確保できない。
【0039】
フレーム加熱を開始するタイミングは、燃焼前線(燃焼帯下面)の深さ位置hに基づいて決めることが望ましいが、燃焼前線の深さ位置hは測定困難な指標である。そこで、燃焼前線の深さ位置hと一定の比例関係にある、点火器32とフレーム加熱装置34の離間距離(大気吸引領域33の長さd1に等しい、以下、長さd1として説明する)を用いて、好ましいタイミングを特定した。以下、図6を参照して、長さd1を特定する方法について、詳細に説明する。
【0040】
長さd1の範囲は、機長L2(風箱44の全長(点火器32の始点(点火器の最上流点)から、風箱44の終端である焼結終了点までの長さ)、図1参照)、風箱44の開始端から点火器32の開始端までの距離X3、点火器32の長さX1、フレーム加熱装置34の長さX2、フレーム加熱開始時の燃焼前線深さh、原料充填層31の厚さH、およびFFPにより、特定することができる。ここでいうFFP(燃焼前線到達点:Flame front point)とは、燃焼前線が機長L2の始点(焼結層が形成された地点)から充填層の最下層(最下部)に到達する位置までの距離を、風箱44の全長(機長L2)で除した値である。図6に示すように、燃焼帯35の中で、燃焼最高温度位置は、燃焼前線位置より遅れて充填層の最下部に到達する。すなわち、燃焼前線が充填層の最下層に到達した後も、燃焼が最高温度に到達して焼結が完全に完了し、排鉱できるまでにするには、さらに時間あるいは距離が必要となる。FFPは、その距離を規定する値であり、燃焼前線が充填層の最下部まで到達した地点と燃焼が完了する地点との距離は、機長L2との積で表され、L2×(1-FFP)である。
【0041】
パレット39は、上述したように、駆動輪41によって所定の速度で移動する。すなわち、原料充填層31は、装入されてから、風箱44(図1参照、図6では図示略)の終端である焼結終了点まで、一定の速度で移動する。一方、燃焼前線は、下方に向けて進行する箇所と進行しない箇所とがある。具体的には、大気吸引領域33を通過する間(図6中に示される長さd1の区間)、および、フレーム加熱装置34での加熱後から風箱44の終点まで移動する間(図6中に示される距離d2の区間)においては、燃焼前線は一定の速度で下方に進行する。また、点火器32で点火されている間(点火器32の機長方向の長さX1の区間)、および、フレーム加熱されている間(フレーム加熱装置34の機長方向の長さX2の区間)においては、上述したように、酸素濃度不足により、燃焼前線は進行しない。最終的に、燃焼前線は、原料充填層31の層厚H分だけ移動する。
【0042】
ここで、大気吸引領域33の間に燃焼前線深さはhまで進行する。hと総充填層厚さHとの比h/Hは、長さd1(点火器32およびフレーム加熱装置34の離間距離)と、燃焼前面が実質的に下方に進行する機長方向の距離(有効機長)L1との比に等しい。すなわち、h=d1×H/L1となる。
【0043】
例えば、フレーム加熱法のみを行う場合(返鉱バイパス添加焼結法を組み合わせない場合)、そのタイミングは、燃焼前線(燃焼帯下面)が焼結層最上面より深さ13mm以上86mm以下にある時点が好ましい。この場合、hの範囲は、13~86mmとなり、ゆえに、d1の好ましい範囲は、下記の式(1)となる。
13×L1/H≦d1≦86×L1/H ・・・(1)
【0044】
なお、有効機長L1は、図6で示すように、L2、X1、X2、X3およびFFPを用いて以下の式(2)で求められる。
L1=L2-(X1+X2+X3)―(1-FFP)×L2
=L2×FFP-(X1+X2+X3)・・・(2)
【0045】
また、通常、FFPは0.7~0.9の範囲で、Hは500~700mmの範囲で焼結操業が行なわれる。層厚の代表値であるH=600mmでは、式(1)は、
0.02≦d1/L1≦0.14
となる。すなわち、焼結機の機長L2、X1、X2、X3、FFPから計算される有効機長L1に対する比率として、d1は、その2%から14%の間に相当する。よって、長さd1(mm)は、有効機長L1に対し2%から14%の長さが好ましい。
【0046】
フレーム加熱を開始するタイミングは、深さ方向の燃焼前線(燃焼帯下面)降下速度V(mm/min)によって、フレーム加熱開始時刻として決定することもできる。
点火器32による点火完了までは、燃焼帯35は下方に進行しないので、点火器32の点火完了時刻0(出口時点)までは、燃焼帯35は表面から動かず、燃焼前線の深さは0である。深さ方向の燃焼前線(燃焼帯下面)降下速度がVであるならば、点火器32による点火完了時刻を基準0minとすると、燃焼前線深さhが13mm~86mmnの間にある時刻tは、深さhを燃焼前線(燃焼帯下面)降下速度Vで割れば経過時間が算出できるので、点火完了時刻から、13/V~86/V(min)後となる。例えば、燃焼前線(燃焼帯下面)降下速度Vを29mm/min程度とした代表的な実機の操業(燃料散布焼結法を用いない場合)においては、13/V~86/V(min)後とは、点火器32による点火完了後、約30秒以上3分以内に相当する。
【0047】
点火器32は、従来に用いられるものと同様のものが使用できる。効率的な原料充填層表面への着火を図るために、燃焼量:25MJ/原料t程度となるようなバーナーで構成するのが好ましい。この燃焼熱量は、現行の実機レベルである。なお、空燃比はガスの種類(LPG、COG等)に応じて燃焼に適正な条件で調整する。
フレーム加熱装置34も、燃料ガスに着火して火炎を形成させるので、点火器32と同一の構成、すなわち、同一仕様・規模の点火器を併設するものでもよい(図5、6)。既存の点火器、点火炉をそのまま利用できるので、焼結機設置の際のコストダウンを図ることができる。燃焼量は、25MJ/原料t程度とすることができる。
【0048】
大気吸引領域33は、例えば、図5および図6に示したように、点火器32とフレーム加熱装置34とを独立して設け、それぞれを焼結機のパレット進行方向に離して設けることで実現できる。また、図示は省略するが、点火器32とフレーム加熱装置34とを同一フード内に敷設してもよい。このとき、例えば、大気吸引ゾーンと両点火ゾーンとを仕切る壁などをフード内に設けるなどして、大気吸引領域33を形成する。大気吸引領域33において、大気(酸素含有ガス)を供給しつつ、点火器32およびフレーム加熱装置34により加熱された高温ガスの顕熱を利用して、焼結層内温度を高めるように構成することが好ましい。
【0049】
フレーム加熱装置34は、例えば、パレット39の走行方向に直行する幅方向に配列される複数のバーナーを有し、フレーム加熱装置34により原料充填層31の幅方向全体がフレーム加熱されることが好ましい。幅方向全体を加熱することにより、上面の幅方向表面全体において、歩留、冷間強度が改善される。
【0050】
(本発明の実施形態)
図7は、本発明の実施形態の一例を説明する説明概要図である。
図7に示すように、本発明は、フレーム加熱法と上述の返鉱バイパス添加焼結法とを同時に実施する方法である。本発明では、図7に示すように、返鉱以外の焼結原料および造粒返鉱(または、返鉱以外の焼結原料のみ)を造粒した造粒後原料に、バイパス返鉱を添加した添加後配合原料を、原料充填層用の配合原料として用いる。また、点火器32の下流側に、大気吸引領域33およびフレーム加熱装置34を設けて、フレーム加熱を行う。
【0051】
上述のように、返鉱バイパス添加焼結法によれば、添加後配合原料の造粒状態が保たれて原料充填層の通気性が向上し、生産性が向上するが、歩留の低下が課題となる。この返鉱バイパス添加焼結法に、歩留改善効果のあるフレーム加熱法を組み合わせることにより、歩留向上効果を伴う大幅な生産率効果が得られる。フレーム加熱法によれば、フレーム加熱装置34でのフレーム加熱により、燃焼帯35に高温ガスを供給することができる。また、フレーム加熱法では、点火からフレーム加熱までの大気吸引領域33における空塔風速上昇により、燃焼帯35がより下部まで進行し、燃焼帯35の厚みが拡大する。よって、燃焼帯35の高温保持時間を確保し焼結反応を進行させることができ、成品歩留の向上が達成できる。
【0052】
フレーム加熱法と返鉱バイパス添加焼結法を同時に実施する本発明においては、フレーム加熱を開始するタイミングは、有効機長L1の距離に対して、点火器32による点火終了点からフレーム加熱装置34によるフレーム加熱開始点の間の距離である長さd1を、2%から10%の長さとするのがよい。この範囲とすることにより、歩留と生産性が同時に向上する。
【0053】
造粒後に後から添加するバイパス返鉱の比率は、先に造粒した造粒物(造粒後原料)に含まれる新原料、すなわち、炭材、および返鉱を除いた全焼結用原料に対して、5質量%以上15質量%以下が好ましい。実施例(図9)で示すように、この範囲でフレーム加熱法と返鉱バイパス添加焼結法の生産率に関する相乗効果が発現するからである。
【0054】
(変形例)
返鉱バイパス添加焼結法において、バイパス返鉱に比較的高温の返鉱を使用すると、さらに歩留向上の効果が大きくなる。図8は、本発明の実施形態の変形例である焼結工程の一例を説明する概要図である。
図8に一点鎖線で示す経路を用いて、高温の返鉱(ホットリターン)をバイパス返鉱として造粒機20の焼結機30の間に戻す一方、常温の返鉱(コールドリターン)を原料槽10に戻すことで実現できる。バイパス返鉱の量をさらに増やしたい場合には、図8の破線で示すように、コールドリターンの一部をホットリターンと合わせて造粒機20と焼結機30の間に戻してもよい。
ホットリターンを造粒機20と焼結機30の間に戻す方が、原料槽10に戻す場合と比較して、ホットリターンの顕熱により、焼結機30に装入される配合原料の温度を高めることできる。これによって、後述する実施例に示すように、焼結鉱の製造の生産性を向上できる。また、バイパス返鉱が高温状態の場合、造粒状態を維持するのに不要な、造粒物表面部分の水分を気化できる。その結果、フレーム加熱時の昇温効果が増大でき、さらに歩留が向上する。
【実施例
【0055】
本発明の効果を実証する実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
発明者らは、DL式焼結機を模擬した条件で焼結を行う鍋試験により、本発明の効果を確認した。DL式焼結機のようにパレット39による原料充填層31の移動こそないが、下方吸引できる所定の大きさの容器に燃料を含む配合原料を装入し、上面から着火し、下方吸引させて焼結を進行させる試験である。後述する表2に示すように、9つの実験(比較例1~5、実施例1~4)を行った。
【0057】
(実験条件)
表1は、配合原料(添加後配合原料)の各焼結原料の配合割合を示す。各焼結原料の配合比率は、試験ケースによらず、すべての試験ケースにおいて同一である。粉コークスと返鉱は、新原料(鉄鉱石、石灰石、橄欖石、および生石灰)を100質量%として、それぞれ外数で4.5質量%、20.0質量%とした。但し、返鉱については、後述する表2に示すように、配合方法(造粒返鉱とバイパス返鉱の配合割合)や、バイパス返鉱の温度を変更した。
【0058】
【表1】
【0059】
表2は、各試験ケースの試験条件および試験結果を示す。
表2に示すように、フレーム加熱法も返鉱バイパス添加焼結法も用いない通常の焼結を行った試験ケースを比較例1とし、返鉱バイパス添加焼結法とフレーム加熱法のどちらか一方のみを用いた試験ケースを比較例2~比較例5とし、フレーム加熱法と返鉱バイパス添加焼結法の両方を用いた試験ケースを実施例1~実施例4とした。なお、実施例4は、実施例2と、造粒返鉱とバイパス返鉱の割合が同一であるが、実施例4のバイパス返鉱には、予め熱風乾燥器を用いて80℃に加熱した高温の返鉱および常温(20℃)の返鉱の等量の混合物(その平均温度は、計算上40℃である。)を用いた。高温の返鉱は、乾燥機から取り出されて直ちに、常温の返鉱とともに造粒後原料へ添加した。
【0060】
表2に示す返鉱のうち、造粒返鉱は造粒する際に供される返鉱であり、バイパス返鉱は造粒後に添加される返鉱である。比較例2~比較例4および実施例1~実施例3では、造粒返鉱とバイパス返鉱を異なる割合とした。また、表2に示す水分のうち、造粒後(造粒後水分)はバイパス返鉱添加前の水分であり、装入時(装入時水分)はバイパス返鉱添加前の水分である。造粒後水分は、造粒に影響するパラメーターであり、装入時水分は焼成に影響するパラメーターである。
【0061】
【表2】
【0062】
造粒は、以下のように実施した。
返鉱バイパス添加焼結法を用いなかった試験ケース(比較例1および比較例5)では、配合原料(全焼結原料)を造粒機(ドラムミキサー)に投入し、これらを4分間混合した。ついで、造粒後水分が目標の水分値(7.5質量%)となるように水を添加し、さらにこれらを4分間混合した。なお、比較例1および比較例5では、バイパス返鉱を添加しないので、造粒後水分と装入後水分と同じ値となっている。
【0063】
一方、返鉱バイパス添加焼結法を用いた試験ケース(比較例2~比較例4、発明例1~発明例4)では、返鉱(造粒返鉱およびバイパス返鉱)を除いた焼結原料(新原料および粉コークス)を表2に示す各目標水分値(造粒後水分)となるように造粒した。造粒で得られた造粒物(造粒後原料)はバイパス返鉱を添加してスコップで軽く混合した。その際、配合原料(添加後配合原料)の目標水分値(装入時水分)は、返鉱バイパス添加焼結法を用いなかった試験ケース(比較例1および比較例5)と同値(7.5質量%)とした。但し、実施例4のケースでは、高温返鉱を配合しため、添加後の添加後配合原料において、水分の気化が促進されるので、他のケースより装入時水分が低い値となっていたと考えられる。
【0064】
鍋試験装置は直径300mm、高さ500mmの寸法のものを使用した。
点火およびフレーム加熱条件は、すべての試験において一定とし、以下の条件で行った。点火は、1分間(熱量25MJ/原料t)とした。点火完了から0.5分後を、フレーム加熱開始時刻とした。点火完了からフレーム加熱開始までの時間である0.5分間は、実機における距離に換算するとL1の2%の長さとなる。フレーム加熱時間は、1分間(熱量25MJ/原料t)とした。
焼成時の吸引負圧は、鍋下における計測値で1300mmAq(12.75kPa)一定となるように、送風機吸引側のバルブ開度で調整した。鍋下で計測した排ガス温度ピーク3分後に送風機の吸引を停止した。
【0065】
焼成後、得られた焼結ケーキを2mの高さから4回落下して破砕した。破砕後、5mmの篩で分級して、篩上(焼結成品)および篩下(返鉱)を回収・秤量した。
成品歩留は「100×(焼結成品重量―床敷重量)/シンターケーキ重量」で定義した。また、点火開始から排ガス温度がピークに到達するまでに要した時間を焼結時間として、燃焼前線降下速度(FFS)は「層厚(=鍋高さ)/焼結時間」で、生産性(生産率)は「(焼結成品重量―床敷重量)/(焼結時間×鍋底面積)」で算出した。
【0066】
表2の下段に試験結果(燃焼前線降下速度(FFS)、成品歩留、および生産率)を示す。また、図9に、新原料に対するバイパス返鉱比率(質量%)と生産率(t/d/m)の関係を図示した。
【0067】
(返鉱バイパス添加の効果:比較例1~比較例4)
まず、フレーム加熱を実施しない比較例1~比較例4における返鉱バイパス添加の効果を述べる。
燃焼前線降下速度(FFS)は、返鉱バイパス添加したケースで向上した。その結果、生産率は向上した。これは、造粒時の添加水分の増加により、造粒が強化され、焼結層の通気性が向上したことを反映している。但し、バイパス返鉱を20%まで上昇させると、造粒時の添加水分が過剰になり造粒効果が得られず、その結果、生産率はバイパス返鉱比率15%よりは低下した。
【0068】
(フレーム加熱の効果:比較例5と比較例1、実施例1と比較例2、実施例2と比較例3、実施例3と比較例4)
次に、フレーム加熱の効果について述べる。返鉱バイパス比率が同一条件同士でフレーム加熱有無を比較する。
返鉱バイパス添加しない条件(比較例5と比較例1)では、成品歩留の向上が1.9%であったが、返鉱バイパス添加する条件(実施例1と比較例2、実施例2と比較例3、実施例3と比較例4)では成品歩留の向上が2.5%以上へと増加した。成品歩留の向上により、生産率の向上の度合も増大した。すなわち、返鉱バイパス添加とフレーム加熱との相乗効果が確認された。また、高温の返鉱を配合した実施例4では最も生産率が高くなった。
【0069】
以上のように、返鉱バイパス添加焼結法とフレーム加熱法を組み合わせることにより、成品歩留の向上および大幅な生産性向上効果が得られた。特に、高温返鉱を造粒後に添加するのが有効であることが確認された。
【0070】
なお、本実施例では、点火時間およびフレーム加熱時間を共に1分で実施したが、本発明はこの例に限定されるものではない。理由は、実施例における点火時間は、鍋試験におけるヒートロスを考慮して設定されているためである。実機(商用)焼結機において、例えば点火時間が30秒であれば、この点火時間を1分とする必要は全くなく、実操業の点火時間を維持して、フレーム加熱を行えばよい。また、フレーム加熱時間についても、実機で1分間である必要はない。
【0071】
焼結鉱の製造方法において、バイパス返鉱を添加した配合原料を焼結機に装入し、点火器による点火後、大気吸引領域となる区間を設け、フレーム加熱装置により再加熱を行うことにより、焼結鉱の成品歩留を向上させる焼結鉱の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0072】
10…原料槽、20…造粒機、30…焼結機、31…原料充填層、32…点火器、33…大気吸引領域、34…フレーム加熱装置、35…燃焼帯、36…焼結完了層、37…ホッパ、39…パレット、40…トラックガイド、41…駆動輪、42…遊動輪、43…ダクト、44…風箱、45…造粒機、51…破砕機、52…熱間篩、53…冷却機、54…冷間篩、60…高炉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9