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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20230712BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20230712BHJP
   F16K 11/044 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K1/44 A
F16K11/044 Z
F16K31/06 305M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020044326
(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公開番号】P2021143747
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】兼子 史聖
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌弘
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-038728(JP,U)
【文献】特開2003-287152(JP,A)
【文献】特開2015-045360(JP,A)
【文献】特表2017-521614(JP,A)
【文献】特開2004-257288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 - 1/54
F16K 11/00 - 11/24
F16K 31/06 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に励磁するコイルと、
このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内にこのコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
このプランジャを前記コアから離れる方向に押圧するノーマルクローズ圧縮バネと、
を備える電磁部と、
作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、前記流入通路とこの流出通路との間に形成され弁体が当接するノーマルクローズ弁座とを有するバルブボディと、
前記弁体と、
前記弁体を前記ノーマルクローズ弁座から離れる方向に押圧するノーマルオープン圧縮バネと、
を備える流路部とからなり、
この流路部と前記電磁部とは、間にシール部材を介在させて機械的に固定され、
前記弁体は、前記ノーマルクローズ弁座との当接面及び前記プランジャとの当接面が球面形状であり、
前記弁体は、前記プランジャと前記ノーマルオープン圧縮バネとによって挟持され、
前記プランジャは前記弁体の球面中心部に離脱可能に当接し、前記ノーマルオープン圧縮バネは前記弁体の周辺部に離脱可能に当接して、
前記弁体は前記プランジャと共に移動し、
前記弁体は赤道部分に円環状のバネ受けを形成し、
前記プランジャは前記弁体の中心軸位置に当接し、
前記ノーマルオープン圧縮バネは前記弁体の前記バネ受けに当接する
ことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記バルブボディは、アッパボディとロアボディとの2部材からなり、
前記流入通路と前記流出通路を開閉するノーマルオープン弁座が前記アッパボディに形成され、
前記ノーマルクローズ弁座が前記ロアボディに形成される
ことを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記ノーマルクローズ弁座と前記ノーマルオープン弁座とは対向配置され、
共に前記弁体の球状に対応したテーパ状である
ことを特徴とする請求項に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記流出通路は、ノーマルオープン流出通路であり、
前記アッパボディにこのノーマルオープン流出通路が形成される
ことを特徴とする請求項若しくは記載の電磁弁。
【請求項5】
前記流出通路は、ノーマルクローズ流出通路であり、
前記ロアボディにこのノーマルクローズ流出通路が形成される
ことを特徴とする請求項若しくは記載の電磁弁。
【請求項6】
前記流出通路は、ノーマルクローズ流出通路とノーマルオープン流出通路との二つであり、
前記アッパボディに前記ノーマルオープン流出通路が形成され
前記ロアボディに前記ノーマルクローズ流出通路が形成される
ことを特徴とする請求項若しくは記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作動流体の流路を開閉する電磁弁に関し、例えば、ウォッシャー液の流路の制御に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁弁を用いてウォッシャー液の流路を切り替え、電磁弁に通電されない状態ではウィンドガラスに流れるようにし、通電時にはリアカメラに流れるようにする技術が開示されている。
【0003】
ただ、特許文献1の電磁弁は、リアカメラに繋がる第2吐出ポートの周囲にコイルやヨークが配置されるので、コイルやヨークを含む電磁部の体積が大きくなってしまった。かつ、電磁部に作動流体の流れる通路(第2吐出ポート)が形成されるので、作動流体の取出し方向も限定されていた。
【0004】
更に、電磁部の中心に作動流体通路(第2吐出ポート)が位置する結果、弁体を弁座側に付勢するプランジャは円筒状とせざるを得ず、また、プランジャと弁体が一体に固定されているため、プランジャが傾くと弁体の弁座への着座不良による液漏れが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-66309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、作動流体の取出し方向の自由度を高めると共に、電磁部の体格を小型化し、弁体がプランジャの傾きによらず、弁座に確実に着座できる電磁弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1は、電磁弁を電磁部と流路部とで構成し、電磁部と流路部とは、間にシール部材を介在させて機械的に固定している。電磁部と流路部とを分離したため、流路部への作動流体の流入方向、流路部からの作動流体の流出方向が自由に設定でき、取出し方向の自由度が上がる。かつ、電磁部に作動流体の流路がないので、電磁部を小型化することができる。
【0008】
そして、電磁部に、通電時に励磁するコイルと、このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、このコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、このプランジャをコアから離れる方向に押圧するノーマルクローズ圧縮バネとを備える。また、流路部は、作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、流入通路と流出通路との間に形成され弁体が当接するノーマルクローズ弁座とを有するバルブボディと、弁体と、弁体をノーマルクローズ弁座から離れる方向に押圧するノーマルオープン圧縮バネとを備える。
【0009】
第1の開示は、弁体の弁座当接部を球面形状とし、プランジャとノーマルオープン圧縮バネとで弁体挟持すると共に、プランジャが弁体の球面中心部に、ノーマルオープン圧縮バネも弁体の周辺部に当接するので、結果、弁体はプランジャと共に移動する。そして、プランジャが多少傾いても、弁体は確実に弁座に着座する。
【0010】
の開示は、弁体を赤道部分に円環状のバネ受けを形成する。これにより、組付けにおいてノーマルオープン圧縮バネ内径及び弁体球面の寸法ばらつきによる弁体との接触位置を安定させることができ、バネのたわみのバラツキを抑え、ノーマルオープン圧縮バネ荷重を安定させることができる。これにより、ノーマルオープン弁座着座時の弁体への押圧荷重が安定し、押圧荷重不足による液漏れ懸念を防止できる。
【0011】
より、具体的には、ノーマルオープン圧縮バネが弁体の球面形状部分に当接したのでは、ノーマルオープン圧縮バネの径の公差内の大きさの変動で、弁体との当接位置にばらつきが生じてしまう。ノーマルオープン圧縮バネの径が小さい時は弁体のより中心軸側に当接し、径が大きい時は弁体のより外周側に当接する。それに対し、第の開示のように、赤道部分に円環状のバネ受けを設ければ、ノーマルオープン圧縮バネの径のバラツキをバネ受けで吸収することができる。結果、ノーマルオープン圧縮バネのバネ長さを一定に保つことができ、圧縮力も一定に保たれる。
【0012】
の開示は、バルブボディを、アッパボディとロアボディとの2部材としている。特に、流出通路とノーマルオープン弁座をアッパボディに形成するとともに、ノーマルクローズ弁座をロアボディに形成して流路部の構成を簡潔にしている。
【0013】
本開示の第は、ノーマルクローズ弁座とノーマルオープン弁座とを対向配置し、共に弁体の球状に対応したテーパ状としている。テーパ状部分で弁体をガイドすることで、シール性能を向上させることができる。
【0014】
の開示は、アッパボディにノーマルオープン流出通路を形成している。本開示の電磁弁をノーマルオープンオンオフの二方弁として使用できる。
【0015】
の開示は、ロアボディにノーマルクローズ流出通路を形成している。本開示の電磁弁をノーマルクローズオンオフの二方弁として使用できる。
【0016】
の開示は、流出通路を、ノーマルクローズ流出通路とノーマルオープン流出通路との二つとしている。ノーマルオープン流出通路をアッパボディに形成するとともに、ノーマルクローズ流出通路をロアボディに形成する。本開示の電磁弁を三方弁として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電磁弁の配管構成を説明する図である。
図2】第1実施形態の電磁弁の断面図である。
図3図2図示電磁弁の斜視図である。
図4図2のA―A線に沿う断面図である。
図5図2図示弁体の斜視図である。
図6図2図示弁体の上面図である。
図7図2図示圧力逃がし弁体の斜視図である。
図8図2図示圧力逃がし弁体の上面図である。
図9】第2実施形態の電磁弁の断面図である。
図10】電磁弁の他の配管構成を説明する図である。
図11】第3実施形態の電磁弁の断面図である。
図12】第4実施形態の電磁弁の断面図である。
図13】弁体の他の形状を示す斜視図である。
図14図13図示弁体の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
第1実施形態は、図1に示すような配管102の配置であり、電磁弁200として流路の切り替えを行う三方弁を用いている。ノーマルクローズ配管102aのノズル100はリアウィンドガラス130対向し、ウォッシャー液をリアウィンドガラス130に噴出する。ノーマルオープン配管102bのノズルは、ウォッシャー液をカメラ131に噴出する。特許文献1と異なり、本開示では、電磁弁200の非通電時には、ポンプ120からのウォッシャー液がカメラ131に吹き付けられる。これは、使用頻度がカメラ131の方がリアウィンドガラス130より多いためである。
【0019】
図2ないし図4に示すように、電磁弁200は樹脂製のコイルボビン204の周囲に銅線からなるコイル205が多数回巻装されている。コイルボビン204の内周にはスリーブ210を介してステータ211が配置される。なお、スリーブ210は非磁性材で、例えばSUS304が用いられる。一方、ステータ211は磁性材で、例えばSUS430が用いられる。
【0020】
また、コイルボビン204の外周は樹脂製の外郭220によって覆われている。外殻220は、コネクタ202と一体に形成されている。コネクタ202内には一対の端子221が埋込成形されており、一対の端子221はコイル205のプラス側及びマイナス側にそれぞれ接続している。
【0021】
コイルボビン204の内側には、磁性材製のコア206が配置されている。コア206は上端が閉じた円筒形状をしており、開口端部はテーパ形状をしている。
【0022】
このコア206のテーパ形状部と対向してプランジャ209が配置されている。プランジャ209は円柱形状で、上端はコア206のテーパ形状に対応するテーパ形状となっている。プランジャ209はテーパ形状の上端に連続して肩部209aを有しており、この肩部209aにワッシャ208が係合している。ワッシャ208は、例えばSUS304等の非磁性材料で、磁性材製のコア206とプランジャ209が通電終了後の残留磁力によって吸引したままとなるのを防止する。なお、プランジャ209はステータ211の円筒状部211aによってガイドされ、図2の上下方向に移動する。
【0023】
コア206内には、プランジャ209をコア206から引き離す方向に付勢するノーマルクローズ圧縮バネ207が配置される。コイルボビン204の外郭220の更に外周に、ヨーク201が配置される。ヨーク201は磁性材の鋼製で、コイル205通電時に、このヨーク201とコア206、プランジャ209及びステータ211によって磁気回路が形成される。
【0024】
以上の構成によって、電磁部230が構成される。この電磁部230はOリング213を介して流路部240と結合する。流路部240は、バルブボディを備え、バルブボディは、アッパボディ212とロアボディ219とに分かれる。
【0025】
アッパボディ212には、ポンプ120からの高圧のウォッシャー液が流入する流入通路222と、カメラ131に向かうノーマルオープン配管102bと接続されるノーマルオープン流出通路223が形成されている。流入通路222及びノーマルオープン流出通路223の端部の外周は、配管102の接続が容易になるようテーパ形状となっている。テーパ形状の端部には肩部224が形成され、配管102の抜け止めを図っている。
【0026】
アッパボディ212には弁室225が形成されており、弁室225は連通穴226を介して流入通路222と連通している。弁室225は、また、ノーマルオープン弁座227を介してノーマルオープン流出通路223と連通している。
【0027】
アッパボディ212の上部には、電磁部230との接続部241が形成されている。接続部241は円管形状で、内部にプランジャ209が配置される。また、接続部241の上部は広がって、Oリング213を受ける面242を形成すると共に、ヨーク201と係止する肩部243を形成する。
【0028】
ロアボディ219には、リアウィンドガラス130に向かうノーマルクローズ配管102aと接続されるノーマルクローズ流出通路228が形成されている。端部がテーパ形状となり、肩部224が形成されるのは、上述の流入通路222と同様である。このノーマルクローズ流出通路228と、流入通路222及びノーマルオープン流出通路223は共に内径が3ミリメートル程度の大きさである。
【0029】
ロアボディ219には、弁室225に突出する円筒状のノーマルクローズ弁座229が形成されている。ノーマルオープン弁座227とノーマルクローズ弁座229との間の弁室225に球状の弁体214が配置される。なお、ノーマルオープン弁座227とノーマルクローズ弁座229とはテーパ形状であり、ともに内径は5ミリメートル弱である。
【0030】
弁体214は、図5及び図6に示すように、直径が7ミリメートル強の球状であり、赤道部分に円環状のバネ受け214aが1ミリメートル弱突出している。弁体214は、バネ受け214aと共に耐水性ゴムにより一体成形され、表面にコーティングがされている。このゴム材料は、Oリング213と同様である。コーティング材料は、フッ素やモリブデンといったゴムの表面融解防止や弁体と相手弁座の着座性を向上させる物質である。
【0031】
円筒状のノーマルクローズ弁座229の外周には、ノーマルオープン圧縮バネ231が配置されている。このノーマルオープン圧縮バネ231の内径はノーマルクローズ弁座229の外径より多少大きく、ノーマルクローズ弁座229によって保持されている。そして、このノーマルオープン圧縮バネ231は、弁体214のバネ受け214aに係合して、弁体214をノーマルオープン弁座227側に付勢する。
【0032】
この結果、弁体214には、プランジャ209を介して受けるノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力とノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力の双方が加わることとなる。ここで、ノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力に比して、ノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力は充分に大きいので、コイル205の非通電時には、弁体214はノーマルクローズ弁座229に押し付けられ、ノーマルクローズ流出通路228を閉じる。
【0033】
ロアボディ219には、ノーマルクローズ弁座229をバイパスして流入通路222とノーマルクローズ流出通路228とを結ぶ圧力逃がし通路232が形成されている。また、アッパボディ212にも、圧力逃がし通路232が形成されている。圧力逃がし通路232の内径は2ミリメートル程度である。
【0034】
アッパボディ212には、この圧力逃がし通路232を開閉する圧力逃がし弁233が配置されている。圧力逃がし弁233は、圧力逃がし弁座218と、圧力逃がし弁体217と、圧力逃がしバネ216からなる。圧力逃がし弁座218は、弁体214と同様の表面にフッ素コーティングしたゴム材料製で、アッパボディ212とロアボディ219とで挟持される。
【0035】
圧力逃がし弁体217は樹脂製で、円柱形状をしており、アッパボディ212に形成された圧力逃がしガイド234に沿って移動可能である。圧力逃がし弁体217の外径も、圧力逃がしガイド234の内径も共に5ミリメートル強である。
【0036】
圧力逃がし弁体217の外周には、図7及び図8に示すように、圧力逃がし溝217aが3か所形成されている。圧力逃がし溝217aは半径0.3ミリメートル程度の半円形である。圧力逃がし弁体217の上面には、圧力逃がしバネ216を受ける圧力逃がしバネ受け217bが、円柱状に突出形成されている。
【0037】
従って、圧力逃がしバネ216は、この圧力逃がしバネ受け217bとアッパボディ212の圧力逃がし通路232の下端に形成されたバネ受けによって挟持され、圧力逃がし弁体217を圧力逃がし弁座218側に押圧する。この圧力逃がしバネ216の設定圧力(逃がし圧力)は、5キロパスカル程度で、ストップ弁101の設定圧力(解放圧力)の半分程度である。
【0038】
次に、上記構造の電磁弁200の組み立て方法を説明する。
【0039】
まず、電磁部230を説明する。コイルボビン204の外周にコイル205を多数回巻装し、一対の端子221をコイル205の両端に接続し、その状態で、外殻220とコネクタ202とを樹脂でモールド成形する。樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイトを用いる。次いで、コイルボビン204の内周にスリーブ210を介してコア206とステータ211とを配設する。その後、外殻220の外周にヨーク201を配置する。
【0040】
アッパボディ212の上面242にOリング213を配置し、コア206内部にノーマルクローズ圧縮バネ207を配置し、ステータ211内径にプランジャ209を配置した後、ヨーク201の下端をアッパボディ212の肩部243に向けてカシメる。カシメの状態を図4に示すが、コネクタ202が位置する部分を除いてヨーク201の全周でカシメを行う。
【0041】
このヨーク201のカシメによって、アッパボディ212の上端がステータ211の下端と当接し、Oリング213はステータ211の下端とアッパボディ212の上面242によって圧縮されて変形する。
【0042】
流路部240は、アッパボディ212の圧力逃がしガイド234に圧力逃がしバネ216と圧力逃がし弁体217を配置する。その後、圧力逃がしガイド234の開口部に圧力逃がし弁座218を配置する。また、ノーマルオープン弁座227上に弁体214を配置し、ノーマルオープン圧縮バネ231をバネ受け214aに当たるように配置する。
【0043】
その状態で、アッパボディ212のフランジ212aとロアボディ219のフランジ219aとを当接させて、両者間を溶着する。
【0044】
本開示によれば、電磁部230を組み立てた後に流路部240を組み立てているので、アッパボディ212以降の部品形状を選択でき、電磁部230の共通化を図ることができる。第2実施形態以降で説明するが、流路部240は、流入通路222やノーマルオープン流出通路223、ノーマルクローズ流出通路228の方向を変更する場合がある。更には、ノーマルオープン流出通路223又はノーマルクローズ流出通路228を廃止して2方弁とする場合もある。このように流路部240が変更されても、電磁部230は同一のものを共通使用することが可能である。
【0045】
本開示によれば、プランジャ209と弁体214とを分離し、プランジャ209は電磁部230に配置し、弁体214を流路部240に配置している。そのため、上記のように電磁部230を組み立てた後に流路部240の組み立てが可能となり、組み立て性も向上する。
【0046】
次に、本開示の電磁弁200の作動を説明する。
【0047】
ノズル100からカメラ131に向けてウォッシャー液を噴出する際には、電磁弁200には通電しない。そのため、弁体214はノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力をプランジャ209を介して受けて、ノーマルクローズ弁座229を閉じている。
【0048】
ポンプ120の運転を開始すると、配管102を介して高圧のウォッシャー液が電磁弁200に送られる。送られたウォッシャー液は流入通路222に流入し、次いで、連通穴226、弁室225、ノーマルオープン弁座227を介してノーマルオープン流出通路223より流出する。
【0049】
この間、弁体214はノーマルクローズ圧縮バネの押圧力とウォッシャー液の圧力を受けてノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。ここで、弁体214の位置に多少のずれが生じたとしても、弁体214のノーマルクローズ弁座229との当接面は球面形状であり、ノーマルクローズ弁座229はテーパ形状であるので、常に中心軸が一致する方向にガイドされる。そのため、弁体214は、ノーマルクローズ弁座229に確実に当接して、十分なシール性能を発揮する。
【0050】
電磁弁200のウォッシャー液はノーマルオープン配管102b介してノズル100より噴射される。ウォッシャー液の圧力は400キロパスカル程度まで上がるので、ストップ弁101の解放圧力(10キロパスカル程度)はほとんど問題とならない。
【0051】
カメラ131の洗浄が終了すると、ポンプ120を停止させる。ポンプ停止に伴い配管102内の圧力は大気圧となるので、配管102はストップ弁101によって閉じられる。ストップ弁101が閉じることで、噴射終了の液切れを良くすることができる。かつ、配管102内にウォッシャー液を貯めることができ、次回作動時の応答性を良くすることができる。
【0052】
リアウィンドガラス130にウォッシャー液を噴射する際には、電磁弁200に通電する。通電によりコイル205が励磁し、ヨーク201、コア206、プランジャ209、ステータ211に磁気回路が形成される。コア206のテーパ形状部とプランジャ209のテーパ形状部との間の磁気間隙が磁力によって狭まり、プランジャ209はノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に反してコア206側に移動する。
【0053】
プランジャ209の移動に伴い、弁体214はノーマルオープン圧縮バネ231によって押し上げられて、ノーマルオープン弁座227を閉じる。なお、電磁弁200の以上の動作は、ポンプ120の運転開始前に行われる。そのため、弁体214にはポンプ120からの高圧ウォッシャー液圧力は加わっておらず、弁体214の移動が妨げられることはない。
【0054】
ここで、プランジャ209は弁体214の球面形状部に離脱可能に当接する構造であるので、弁体214はプランジャ209の移動時に多少ずれる可能性がある。換言すれば、本開示は弁体214の多少のずれを許容する構成である。しかしながら、弁体214は球状をしており、ノーマルオープン弁座227も弁体214に対応したテーパ形状であるので、ノーマルオープン圧縮バネ231の伸長に伴い多少ずれたとしても、ノーマルオープン弁座227を確実にシールすることができる。特に、弁体214はゴム製であるので、自身の弾力性でノーマルオープン弁座227に密着でき、シール性を一層高めることができる。
【0055】
また、ノーマルオープン圧縮バネ231は、弁体214赤道部の円環状のバネ受け214aに当接しているので、常に所定の押圧力を維持することができる。即ち、ノーマルオープン圧縮バネ231が弁体214の球面形状部分に当接したのでは、ノーマルオープン圧縮バネ231の径のばらつきにより弁体214の中心部分に当接した方が周辺部分に当接した場合よりより多く圧縮されることとなる。それに対し、本例では円環状部分にノーマルオープン圧縮バネ231が当接するため、径のばらつきに拘わらず、装着状態でのノーマルオープン圧縮バネ231の長さを一定に保つことができる。
【0056】
電磁弁200に通電して流路の切替を行った後に、ポンプ120の運転を開始する。ポンプ120からの高圧のウォッシャー液は流入通路222に流入し、次いで、連通穴226、弁室225、ノーマルクローズ弁座229を介してノーマルクローズ流出通路228より流出する。流出したウォッシャー液は、ノーマルクローズ配管102aからストップ弁101を介してノズル100よりリアウィンドガラス130に噴射される。
【0057】
この間、弁体214はウォッシャー液の高圧を受けてノーマルオープン弁座227に押し付けられる。上述のように、弁体214の球面形状部がノーマルオープン弁座227のテーパ形状に当接するので、軸心が一致する方向にガイドされ、弁体214はノーマルオープン弁座227に確実に当接して、十分なシール性能を発揮する。
【0058】
リアウィンドガラス130の洗浄が終了すると、ポンプ120の運転を停止し、ノーマルクローズ配管102aの圧力がストップ弁101の解放圧力以下に下がるとストップ弁101も閉じる。かつ、電磁弁200への通電も終了する。コア206とプランジャ209との間に非磁性材製のワッシャ208が介在しているので、通電終了と共に、ノーマルクローズ圧縮バネ207によりプランジャ209は押し下げられる。
【0059】
ノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力の方がノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力より大きいので、弁体214はノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。ノーマルクローズ弁座229も弁体214の球面形状に対応したテーパ形状であるので、上記の通り、確実にシールすることができる。
【0060】
このように、本開示によれば、弁体214をプランジャ209と離脱可能に当接させるとともに、弁体214を球状にし、ノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229のテーパ形状内に収まるように配置しているので、弁体214用のガイドを設ける必要がなく、弁体214の組付けが容易となる。即ち、ノーマルオープン圧縮バネ231やウォッシャー液流れの影響で弁体214の軸芯が多少ずれたとしても、弁体214のずれはノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229の範囲内であるので、ノーマルクローズ圧縮バネ207やウォッシャー液圧力によってノーマルオープン弁座227若しくはノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。そして、ノーマルオープン弁座227及びノーマルクローズ弁座229は共にテーパ形状しているので、テーパ形状によって案内されて、弁体214はその全周でノーマルオープン弁座227若しくはノーマルクローズ弁座229と当接することとなる。
【0061】
ポンプ120の運転が終了した状態で周囲温度が上昇すると、配管102内のウォッシャー液や空気が膨張する。ノーマルオープン配管102bはストップ弁101によって閉じられていても、ノーマルオープン弁座227が開いているため、圧力はポンプ120側に解放されて高くなることはない。しかし、ノーマルクローズ配管102aは、ノーマルクローズ弁座229とストップ弁101の双方が閉じているため、ノーマルクローズ配管102a内にウォッシャー液が閉じ込められることとなる。そのため、ウォッシャー液や空気の膨張によりノーマルクローズ配管102a内の圧力が上昇する恐れがある。
【0062】
圧力がストップ弁101の解放圧力以上となれば、ノーマルクローズ配管102a内のウォッシャー液がノズル100からリアウィンドガラス130に垂れ出る恐れもある。しかしながら、本開示では、圧力逃がし弁233が開いて圧力を解放するので、ウォッシャー液の漏洩は確実に阻止できる。
【0063】
ノーマルクローズ配管102a内の圧力が逃がし圧力より高くなれば、圧力逃がしバネ216の付勢力に打ち勝って圧力逃がし弁体217を持ち上げる。その結果、圧力逃がし弁座218が開き、圧力逃がし通路232が開かれる。ノーマルクローズ流出通路228は、圧力逃がし弁体217の圧力逃がし溝217a、圧力逃がしガイド234を介して、流入通路222と連通する。
【0064】
そして、圧力逃がし弁233の逃がし圧力は、ストップ弁101の解放圧力の半分程度であるので、ストップ弁101が開く前に、圧力逃がし弁233が開いて、ノーマルクローズ配管102a内の圧力上昇を抑えることができる。
【0065】
ここで、圧力逃がし通路232は、閉じ込められたウォッシャー液の圧力を解放するものであるので、圧力逃がし通路232内をウォッシャー液が多量に流れるものではない。従って、圧力逃がし溝217aのように流路断面積が小さい部分があっても、作動に不良は生じない。図7図8では圧力逃がし溝217aを3か所形成したが、これは軸芯周りに対称形状としてバランスを図ったものであり、流路断面積では圧力逃がし溝217aの数は1つでよい。
【0066】
また、圧力逃がし弁体217はガイド234によって保持されているので、圧力逃がしバネ216の設定圧が小さくても、圧力逃がし弁座218との間のシールは確実になされる。
【0067】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、流入通路222をアッパボディ212に形成していたが、第2実施形態は、図9に示すように、流入通路222をロアボディ219に形成している。そのため、圧力逃がし通路232も全てロアボディ219で形成される。252は、圧力逃がし通路232を閉じる密栓である。
【0068】
第2実施形態では、ガイド234が水平方向に形成され、圧力逃がし弁座218はロアボディ219のノーマルクローズ流出通路228の周囲に形成される。ガイド234に圧力逃がし弁体217及び圧力逃がしバネ216が挿入された後、ガイド234はバネ受けを兼ねたストッパ251で閉じられる。
【0069】
(第3実施形態)
上述の実施形態は、流出通路としてノーマルクローズ流出通路228とノーマルオープン流出通路223とを備える三方弁であったが、第3実施形態は流出通路がノーマルクローズ流出通路228のみのオンオフ二方弁である。図11に第3実施形態を示すが、ノーマルオープン流出通路223を省いた点を除き、電磁弁200の構造は第1実施形態と同様である。
【0070】
二方弁は、図10に示すように、ノーマルクローズ配管102aが複数ある場合に効果的である。ウォッシャー液で洗浄すべきセンサが複数存在するような事例である。なお、図10では、一つの配管102をノーマルオープン配管102bとして、ポンプ120の作動時にはウォッシャー液が常時ノズル100に流れるようにしているが、このノーマルオープン配管102bを廃止してもよい。逆に、ノーマルオープン配管102bを複数としてもよい。
【0071】
また、図10ではノーマルクローズ配管102aを4本としているが、この本数は用途に応じて増減し、1本とすることも可能である。
【0072】
(第4実施形態)
第3実施形態は流出通路がノーマルクローズ流出通路228のみのオンオフ二方弁であったが、第4実施形態は流出通路がノーマルオープン流出通路223のみのオンオフ二方弁としている。
【0073】
図12に示すように、ロアボディ219にはノーマルクローズ弁座229のみ形成している。第4実施形態では、上述の実施例で説明した圧力逃がし通路232や圧力逃がし弁233も設けていない。
【0074】
(他の実施形態)
以上の実施形態では、アッパボディ212とロアボディ219とを溶着したが、ボルト固定やクリップ止め等他の固定方法を用いても良い。
【0075】
また、アッパボディ212とロアボディ219との接合にフランジ212a及び219aを用いることは効果的であるが、フランジがなくても両者の結合は可能である。
【0076】
上述の実施形態では、流入通路222とノーマルオープン流出通路223とを直線状に配置したが、直交させてもよく、他の角度で交差するようにしてもよい。
【0077】
流入通路222とノーマルクローズ流出通路228との関係も同様である。直交させずに並行配置とすることも可能であり、他の角度で交差させてもよい。
【0078】
上述の実施形態では弁体214を球状としたが、図13及び図14に示すように、ノーマルオープン弁座227と当接する上面214b、及びノーマルクローズ弁座229と当接する下面214cを共に半球状とし、間に円筒部214dを備える形状としてもよい。かつ、間に円筒部214dを形成する実施形態では、円筒部にバネ受け214aを形成しても良い。
【0079】
また、ノーマルクローズ弁座229やノーマルオープン弁座227の形状もテーパ状に限らず、弁体214をガイド可能な円弧形状としてもよい。
【0080】
また、作動流体としてウォッシャー液を用いたが、水やオイル等他の液体を作動粒体としてもよい。
【0081】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。
【符号の説明】
【0082】
205・・・コイル
206・・・コア
207・・・・ノーマルクローズ圧縮バネ
209・・・プランジャ
214・・・弁体
222・・・流入通路
223・・・ノーマルオープン流出通路
227・・・ノーマルオープン弁座
228・・・ノーマルクローズ流出通路
229・・・ノーマルクローズ弁座
231・・・ノーマルオープン圧縮バネ
図1
図2
図3
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図5
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