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  • 特許-供給ロッドの進出位置検知構造部 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】供給ロッドの進出位置検知構造部
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/24 20060101AFI20230712BHJP
   B23K 11/14 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B23K11/24 335
B23K11/14 310
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019205819
(22)【出願日】2019-10-24
(65)【公開番号】P2021065932
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-162828(JP,U)
【文献】特開2018-119596(JP,A)
【文献】特開2003-236672(JP,A)
【文献】特開2002-172470(JP,A)
【文献】特開2017-060988(JP,A)
【文献】特開平10-006023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/24
B23K 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される部品は、電気抵抗溶接によって鋼板部品に溶接されるプロジェクションナットであり、
前記部品を保持して目的箇所に部品供給を行う進退作動式の供給ロッドがガイド管に収容され、
供給ロッドの進退作動とともに移動する被検知部材が、供給ロッドの一部に取り付けられ、
被検知部材の寸法は、ガイド管に設けた長孔内または長孔に沿って移動できるように設定され、
長孔の所定の位置において被検知部材を検知するセンサーが長孔を封鎖する蓋部材に取り付けられ、蓋部材は、鋼材や合成樹脂で作られた平板状の厚板を細長く成型したもので、ガイド管の外周部を削り取って形成した平面部に密着させてあり、センサーの一部が蓋部材に埋め込んであることを特徴とする供給ロッドの進出位置検知構造部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品供給用のロッドの進出位置を検知する、構造部に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2002-172470号公報には、ナットを供給ロッドに保持して目的箇所へ供給すること、供給ロッドが所定の位置に進出したら、その位置を検知信号として制御装置に通信すること、ガイド管に収容された供給ロッドに被検知部材が取り付けられそれが長孔内を移動すること、被検知部材を検知するセンサーがガイド管に取り付けられていることなどが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-172470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されている技術は、ガイド管の長孔形成箇所にセンサーを配置することについての配慮がなされていない。また、長孔からガイド管内に侵入する鉄屑などの不純物についての配慮もなされていない。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、ガイド管に形成した長孔の箇所に、簡単な取り付け構造でガイド管への不純物侵入を防止するとともに、確実な動作がえられるように、センサーを設置することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
供給される部品は、電気抵抗溶接によって鋼板部品に溶接されるプロジェクションナットであり、
前記部品を保持して目的箇所に部品供給を行う進退作動式の供給ロッドがガイド管に収容され、
供給ロッドの進退作動とともに移動する被検知部材が、供給ロッドの一部に取り付けられ、
被検知部材の寸法は、ガイド管に設けた長孔内または長孔に沿って移動できるように設定され、
長孔の所定の位置において被検知部材を検知するセンサーが長孔を封鎖する蓋部材に取り付けられ、蓋部材は、鋼材や合成樹脂で作られた平板状の厚板を細長く成型したもので、ガイド管の外周部を削り取って形成した平面部に密着させてあり、センサーの一部が蓋部材に埋め込んであることを特徴とする供給ロッドの進出位置検知構造部である。
【発明の効果】
【0007】
ガイド管に設けられた長孔内または長孔に沿って、供給ロッドの進退作動とともに移動する被検知部材が移動し、所定の位置における被検知部材を検知するセンサーが、長孔を封鎖する蓋部材に取り付けられている。
【0008】
したがって、蓋部材によって長孔が完全に閉じられているので、鉄屑のような不純物がガイド管内に入ることがなく、供給ロッドの摺動動作に支障が発生しない。また、一つの部材である蓋部材が、長孔を封鎖する機能とセンサーを保持する機能を果たすので、構造の簡素化にとって有効である。
【0009】
被検知部材が長孔に入り込んだ状態で移動するときには、被検知部材の所定位置におけるセンサーとの間隔を狭くすることができ、検知反応性を高めることができ、動作信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】供給ユニットの断面図と各部の図である。
図2】供給装置を示す断面図である。
図3】供給ロッドの進出動作を示す断面図である。
図4】供給ロッドの進出動作を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
つぎに、本発明の供給ロッドの進出位置検知構造部を実施するための形態を説明する。
【実施例
【0012】
図1図4は、本発明の実施例を示す。
【0013】
最初に、供給ロッドの進出位置検知構造部が組み込まれた部品供給装置について説明する。
【0014】
供給ロッドの形態としては、1本の細長い軸部材で構成されたタイプのものや、供給ロッドがインナ軸とインナ軸が挿入された中空軸からなる2重構造タイプのものなど、種々なものがある。本実施例は、後者の2重構造タイプであり、供給する部品はプロジェクションナットである。以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0015】
最初に、プロジェクションナットについて説明する。
【0016】
プロジェクションナット1は、正方形のナット本体1aの中央部にねじ孔1bが開けられ、ナット本体1aの四隅に溶着用突起1cが形成してある。上記のナット各部は、図1に分かりやすく図示してある。
【0017】
つぎに、ナット供給装置の全体構造を説明する。
【0018】
固定電極50と可動電極51が同軸上に配置され、固定電極50上に鋼板部品3が載置してあり、その上に置かれたナット1を可動電極51で加圧して、電気抵抗溶接が行われる。
【0019】
供給ロッド6の作動ユニットは、符号5で全体的に示されている。作動ユニット5は、主として供給ロッド6とそれを案内するガイド管7と、パーツフィーダ(図示していない)に接続されている部品供給管8および磁石9から成っている。部品供給管8の断面形状は、ナット1の形状に適した矩形である。なお、符号2は、固定電極50のガイドピンである。
【0020】
部品供給管8は、ガイド管7の下端部に溶接してあり、部品供給管8とガイド管7が交差している箇所に仮止室11が構成され、その下側は出口開口12とされている。仮止室11の端部を閉塞するような形で、ガイド板13がガイド管7に固定され、このガイド板13の一部に磁石9が埋め込んである。
【0021】
ガイド管7の外周部に支持片14が溶接され、この支持片14にねじ込んだ固定ボルト15で、ガイド板13をガイド管7に押し付けてある。この押し付けを安定させるために、ガイド管7の外周面の一部を削り取って平面を形成し、この平面にガイド板13を押し付けることが望ましい。
【0022】
部品供給管8を通過してきたナット1は、仮止室11内において磁石9で吸引されることによって、一時係止がなされる。
【0023】
つぎに、供給ロッドについて説明する。
【0024】
なお、図1は、作動ユニット5の断面図であり、制御回路や空気通路も合わせて図示してある。
【0025】
供給ロッド6は、大径のパイプ状の中空ロッド16と摺動ロッド10が主たる部材として構成されている。摺動ロッド10は、ナットのねじ孔1bに進入する小径のガイドロッド17と、ガイドロッド17よりも大径の摺動部18が一体的になって構成され、摺動部18が中空ロッド16内を摺動できる状態で挿入してある。
【0026】
供給ロッド6は、エアシリンダ19によって進退するもので、そのピストンロッド20と同軸の状態でピストンロッド20に結合してある。ピストンロッド20の端部にボルト部21が形成され、それを中空ロッド16の端部にねじ込み、ロックナット22で締め付けてある。なお、符号23はピストン、符号24、25は空気ホースである。また、エアシリンダ19とガイド管7とはねじ部26で一体化されており、ガイド管7がブラケット27を介して機枠などの静止部材28に固定されている。
【0027】
供給ロッド6は、ガイド管7内を摺動自在な状態で挿入されている。中空ロッド16の一部に軸方向に伸びる長孔29が開けられ、摺動部18に固定した鉄製の突起30が長孔29を貫通している。突起30は、L字型の部材をボルト31で摺動部18に固定してある。
【0028】
突起30は、後述の作動から明らかなように、供給ロッド6の進出で所定の位置に到達したら、センサーで検知される部材である。したがって、突起30は、「被検知部材」として存在している。
【0029】
中空ロッド16内に挿入した圧縮コイルスプリング32で、摺動部18とガイドロッド17に押出し方向の弾力が作用させてあり、突起30が長孔29の下端に当たることによって、供給ロッド6全体の長さが設定されている。
【0030】
つぎに、検知構造について説明する。
【0031】
ガイド管7にも軸線方向の長孔33が開けられ、突起30の一部がここに入り込んでいる。長孔33の長さは、供給ロッド6の最長進出長さを確保できるように設定してある。長孔33を封鎖する蓋部材52は、鋼材や合成樹脂で作られた厚板を細長く成型したもので、図1(F)に示すように、ガイド管7の外周部を削り取って平面部53を形成し、そこに蓋部材52を密着してある。蓋部材52は、取り付けボルト54でガイド管7に結合してある。
【0032】
供給ロッド6が進出して、被検知部材である突起30が所定の位置に到達すると、突起30の進出位置を検知する。そのために、蓋部材52にセンサー34が取り付けられている。このセンサー34としては光電式など種々なものが採用できるが、ここでは近接スイッチ式のものである。センサー34はその一部を蓋部材52に埋め込んだ状態にし、他方、平面部53にも凹溝55を形成して、そのスペースを活用して、センサー34の配置空間をコンパクト化している。
【0033】
被検知部材である突起30の一部がガイド管7の長孔33内に入り込んでいるが、この入り込みを止めて長孔33の空間の間近を通過させるようにしてもよい。つまり、被検知部材である突起30の寸法を加減して、ガイド管7に設けた長孔33内または長孔33に入り込まずに長孔33に沿って移動できるようにする。
【0034】
図3に示すように、エアシリンダ19の動作で供給ロッド6が進出し、ガイドロッド17がねじ孔1bを串刺し状に貫通して、固定電極50のガイドピン2の直前で停止する。このときに、ガイドロッド17を滑降してきたナット1は、ガイドピン2側へ落下してガイドピン2がねじ孔1bに入り込む。このような進出とともに被検知部材である突起30も供給ロッドの進出長さだけ進出し、センサー34と向かい合った位置で停止する。このとき、突起30がセンサー34で検知されて、その検知信号がトリガー信号となって、可動電極51の進出がなされる。
【0035】
つぎに、別の検知例を説明する。
【0036】
図4に示すように、供給ロッド6の進出中に作業者の指がガイドロッド17とガイドピン2の間に挟まれたときには、ガイドロッド17が指に当たって停止するのに対し、中空ロッド16は所定位置まで進出する。このため、圧縮コイルスプリング32が圧縮されて、突起30は長孔29内を相対的に移動してセンサー34の手前で停止し、センサー34と突起30との合致による検知信号は発信されないこととなる。後述のように、センサー34と突起30との合致による検知信号が発信されないことをトリガー信号にし、タイマーを作動させて、可動電極51の進出を禁止する。なお、圧縮コイルスプリング32が縮小するので、挟まれた指を怪我することはない。
【0037】
つぎに、装置の動作系統について説明する。
【0038】
供給ロッド6のストローク状態を検出するストロークセンサーは、符号39で示されている。このストロークセンサー39は、エアシリンダ19の外周部に固定した近接スイッチ式のものであり、ピストン23の全ストロークの中央付近に設置してある。センサー34からの信号線38と、ストロークセンサー39からの信号線40が、制御装置41に接続されている。制御装置41は、簡単なコンピュータ装置やシーケンス回路で機能させることができる。
【0039】
エアシリンダ19を進退させるために、空気切換弁48が配置され、制御装置41から信号線49を経て、空気切換弁48の作動信号が通信される。
【0040】
制御装置41においては、図3に示すように、センサー34に突起30が合致したときにセンサー34から伝えられる信号を処理して、可動電極51の進出がなされる。センサー34からの信号は制御装置41を経由し、信号線42で空気切換弁43に伝えられ、可動電極51の駆動エアシリンダ44が出力する。符号45、46は、空気切換弁43と駆動エアシリンダ44をつなぐ空気ホースである。
【0041】
作業者の指がガイドロッド17とガイドピン2の間に挟まれたときには、図4に示すように、センサー34と突起30が合致しないので、センサー34からの信号は発信されない、その代わりストロークセンサー39からの信号で制御装置41内のタイマー装置を動作させて、一定時間経過後に発信される信号で駆動エアシリンダ44の進出動作を禁止する。
【0042】
なお、図3および図4に2点鎖線で示す位置にセンサー34を配置して、図3の正常な場合に前述のようなタイマーを用いた信号発信を行い、図4の異常な場合に前述のような信号発信を行うようにすることも可能である。
【0043】
なお、上記各種のエアシリンダに換えて、進退出力をする電動モータを採用することもできる。
【0044】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0045】
ガイド管7に設けられた長孔33内または長孔33に沿って、供給ロッド6の進退作動とともに移動する被検知部材30が移動し、所定の位置における被検知部材30を検知するセンサー34が、長孔33を封鎖する蓋部材52に取り付けられている。
【0046】
したがって、蓋部材52によって長孔33が完全に閉じられているので、鉄屑のような不純物がガイド管7内に入ることがなく、供給ロッド6の摺動動作に支障が発生しない。つまり、長孔33から入った不純物が長孔29を通過して摺動部18の摺動箇所に入ることがない。また、一つの部材である蓋部材52が、長孔33を封鎖する機能とセンサー34を保持する機能を果たすので、構造の簡素化にとって有効である。
【0047】
被検知部材30が長孔33に入り込んだ状態で移動するときには、被検知部材30の所定位置におけるセンサー34との間隔を狭くすることができ、検知応当性を高めることができ、動作信頼性が向上する。
【0048】
ガイド管7の外側面に平面部53を形成し、そこに平板状の蓋部材52を密着させる構造であるから、良好な密封性が確保できる。
【0049】
ガイド管7の外側面に設けた平面部53に切欠き状の凹溝55を設け、そこにセンサー34を収容するので、センサー34を狭い箇所に配置する点で有効である。
【0050】
蓋部材52はボルト付けなどでガイド管7に固定されるので、蓋部材52と長孔33の相対位置は常に正確に維持できる。また、センサー34はその一部を蓋部材52に埋め込んだ状態、例えば、蓋部材52にセンサー34をはめ込む窪み形状部を設けておくことにより、センサー34と蓋部材52の相対位置が正確に維持できる。これらの取付け関係によって、供給ロッド6のストローク方向で見たセンサー34の取付け箇所が常に正確に設定され、検知精度向上に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
上述のように、本発明の進出位置検知構造部によれば、ガイド管に形成した長孔の箇所に、簡単な取り付け構造でガイド管への不純物侵入を防止するとともに、確実な動作がえられるように、センサーを設置する。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 プロジェクションナット
2 ガイドピン
5 作動ユニット
6 供給ロッド
7 ガイド管
8 部品供給管
10 摺動ロッド
11 仮止室
16 中空ロッド
17 ガイドロッド
18 摺動部
29 長孔
30 突起、被検知部材
33 長孔
52 蓋部材
53 平面部
54 取付けボルト
55 凹溝
図1
図2
図3
図4