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特許7311854踏切制御子の制御区間長測定装置および制御区間長測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】踏切制御子の制御区間長測定装置および制御区間長測定システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/00 20060101AFI20230712BHJP
   B61L 1/18 20060101ALI20230712BHJP
   B61L 29/16 20060101ALI20230712BHJP
   B61L 29/28 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B61L29/00 Z
B61L1/18 Z
B61L29/16
B61L29/28 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019217881
(22)【出願日】2019-12-02
(65)【公開番号】P2021088209
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000221904
【氏名又は名称】東邦電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小室 隆之
(72)【発明者】
【氏名】藤掛 泰
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰彦
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192922(JP,A)
【文献】特開2019-108059(JP,A)
【文献】特開2011-073645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 29/00
B61L 1/18
B61L 29/16
B61L 29/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切制御子からレールへ流される電流値を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段の電流測定値に基づいて前記踏切制御子の制御区間の長さを算出する演算処理手段と、を備えた制御区間長測定装置であって、
前記演算処理手段は、
前記電流測定手段によって測定された電流値の極値点を抽出する極値点抽出手段と、
抽出された極値点の情報に基づいて、前記踏切制御子の制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間と、第1の極値点から第2の極値点までの時間と、最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間とを算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段により算出された第1の極値点から第2の極値点までの時間と前記制御区間を通過する車両の車軸間距離とから前記制御区間への列車進入速度Vaを算出するとともに最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間と前記車軸間距離とから前記制御区間からの列車進出速度Vbを算出する列車速度算出部と、
算出された列車進入速度Vaと制御区間の始点から前記第1の極値点までの所要時間Taおよび列車進出速度Vbと前記最後の極値点から制御区間の終点までの所要時間Tbから、
Lx=Va×Ta+Vb×Tb
なる式を用いて前記制御区間の長さLxを算出する制御区間長算出部と、を備えていることを特徴とする踏切制御子の制御区間長測定装置。
【請求項2】
前記演算処理手段には、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧に関する情報が入力され、
前記通過時間算出手段は、前記リレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を前記制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、前記制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出することを特徴とする請求項1に記載の踏切制御子の制御区間長測定装置。
【請求項3】
前記演算処理手段は、前記極値点抽出手段により抽出された極値点の数から前記制御区間を走行する列車を構成する車両の編成を判定する車両判定部と、複数の編成の車両の車軸間距離を記憶する記憶手段と、を備え、
前記列車速度算出部は、前記車両判定部により判定された車両の編成に対応する軸間距離を前記記憶手段より読み出して、前記制御区間への列車進入速度と前記制御区間からの列車進出速度を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の踏切制御子の制御区間長測定装置。
【請求項4】
踏切制御子からレールへ流される電流値を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段により測定した電流値を送信可能な通信手段とを有する測定装置と、
前記電流測定手段の電流測定値に基づいて前記踏切制御子の制御区間の長さを算出する演算処理手段と、前記通信手段により送信された電流測定値を受信可能な受信手段とを有する制御区間長算出装置と、を備えた制御区間長測定システムであって、
前記演算処理手段は、
前記電流測定手段によって測定された電流値の極値点を抽出する極値点抽出手段と、
抽出された極値点の情報に基づいて、前記踏切制御子の制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間と、第1の極値点から第2の極値点までの時間と、最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間とを算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段により算出された第1の極値点から第2の極値点までの時間と前記制御区間を通過する車両の車軸間距離とから前記制御区間への列車進入速度Vaを算出するとともに最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間と前記車軸間距離とから前記制御区間からの列車進出速度Vbを算出する列車速度算出部と、
算出された列車進入速度Vaと制御区間の始点から前記第1の極値点までの所要時間Taおよび列車進出速度Vbと前記最後の極値点から制御区間の終点までの所要時間Tbから、
Lx=Va×Ta+Vb×Tb
なる式を用いて前記制御区間の長さLxを算出する制御区間長算出部と、を備えていることを特徴とする踏切制御子の制御区間長測定システム。
【請求項5】
前記測定装置は、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧を取得して該リレー作動電圧に関する情報を前記通信手段により前記演算処理手段へ送信する機能を備え、
前記演算処理手段は、前記測定装置より送信された前記リレー作動電圧の情報を前記受信手段により受信し、
前記通過時間算出手段は、受信した前記リレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を前記制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、前記制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出することを特徴とする請求項4に記載の踏切制御子の制御区間長測定システム。
【請求項6】
前記演算処理手段は、前記極値点抽出手段により抽出された極値点の数から前記制御区間を走行する列車を構成する車両の種別を判定する車両判定部と、複数の種類の車両の車軸間距離を記憶する記憶手段と、を備え、
前記列車速度算出部は、前記車両判定部により判定された車両の種類に対応する軸間距離を前記記憶手段より読み出して、前記制御区間への列車進入速度と前記制御区間からの列車進出速度を算出することを特徴とする請求項4または5に記載の踏切制御子の制御区間長測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切制御子の制御区間長の測定に使用する装置およびシステムに関し、特に電気検測車やレール短絡器を使用しないで測定が可能な踏切制御子の制御区間長測定装置および制御区間長測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
列車が踏切を通過する際に踏切遮断機や踏切警報機などの踏切機器を操作する踏切制御装置としては、例えば、踏切を挟んだ所定の区間の両端に配設された踏切制御子が列車を検知したときに出力される電圧または電流の変化に応じて踏切機器の制御を行うものがある。
上記踏切制御子には、列車検知が可能な範囲(制御区間)があり、踏切制御子の列車検知範囲に列車が進入したときに踏切制御子が出力する電圧または電流の変化によって踏切の近傍に設置されている制御子反応リレーを作動させて踏切制御装置の踏切警報を開始し、踏切制御子の列車検知範囲から列車が進出したときに出力される電圧が元に戻り、リレーが作動を終えて踏切警報を終了するという制御を行なっている。
【0003】
列車の進入または進出を検知する踏切制御子は、軌道回路の一種であり、列車が所定区間の始点に配設された閉電路式踏切制御子(HC形)の列車検知範囲(制御区間)内への列車の進入を検知すると、始動点反応リレーを動作(リレー接点を落下)させる。また、列車が所定区間の終点に配設された開電路式踏切制御子(HO形)の列車検知範囲内への列車の進入を検知すると、終止点反応リレーを逆の状態に動作(リレー接点を扛上)させるように構成されている。
【0004】
上記のような制御子を用いた踏切制御装置では、列車検知範囲の幅(以下、「制御区間長」という)について、所定の距離(例えば30m)が規定されており、踏切制御子の性能が落ちてくると、その制御区間長が短くなり列車を検知しにくくなってくる。そのため、踏切制御子による列車の検知性能の低下に伴う踏切制御装置の誤動作を防止するために、踏切制御子の制御区間長を定期的に測定する点検作業が実施されている。かかる点検は、一般に電気検測車によって行われているが、電気検測車が走行しない路線ではレール短絡器を使用して人手で行われている。
【0005】
従来、人手による制御区間長の測定においては、2本のレール間を短絡することによって軌道回路を短絡する軌道短絡器を用いて、列車の車軸が踏切制御子の軌道回路を短絡させている状態と同じ状態を作り、2本のレール間を短絡する場所を移動させながら踏切警報機を鳴動させることで踏切制御子の動作を確認することによって、踏切制御子の制御区間長を測定していた。このような制御区間長の測定方法では、短絡器を操作する要員、踏切制御子の出力電圧変化を確認する要員、制御子の出力電圧変化で作動した踏切警報機の鳴動を停止させる要員、交通整理を行う要員など、多くの要員が必要であるという課題がある。
【0006】
そこで、踏切制御子による列車の検出状態を検出する動作検出手段と、動作検出手段によって検出された検出結果に基づいて踏切制御子が列車を検出している時間を計測する時間計測手段と、列車の走行速度を計測する速度計測手段と、時間計測手段によって計測された時間および速度計測手段によって計測された列車の走行速度に基づいて、制御区間長を算出する制御区間長算出手段とを備える踏切制御区間長測定システムに関する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
また、列車検知状態検出部と、列車検知時間測定部と、極値点検出部と、極値点間隔測定部と、列車速度算出部と、制御区間長算出部とを備え、列車検知時間測定部が列車検知状態検出部による検出結果に基づいて踏切制御子が列車を検知している時間を測定し、極値点間隔測定部が極値点検出部によって検出された軌道送信電圧の極値点間の時間間隔を測定し、列車速度算出部が極値点間隔測定部によって測定された極値点間隔に基づいて列車の速度を算出して、制御区間長算出部が列車検知時間測定部によって測定された列車検知時間と列車速度算出部によって算出された列車速度に基づいて制御区間長を算出するようにした踏切制御区間長測定装置に関する発明も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-73645号公報
【文献】特開2018-192922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の発明は、制御区間長の算出に使用する列車速度を、スピードガンのような速度計測器を使用して測定するようにしているため、速度計測器を軌道の近傍に設置したり撤去したりする作業が必要であり、制御区間長の測定に要する人手を充分に減らすことができない。また、速度計測器を常設の装置にすると、システムが大掛かりとなりコストアップを招くという課題がある。
【0010】
また、特許文献2の発明は、踏切制御子が出力する軌道送信電圧を測定して電圧波形の極大値の時間間隔から平均速度を算出するようにしているため、速度計測器が不要であり人手を減らすことができるという利点を有するものの、測定対象列車が制御区間内において加速または減速している場合には、算出した速度と列車検知時間とから算出される制御区間長の精度が低くなる。また、測定したい踏切を走行する列車には編成を構成する車両の種類が異なるものがあるが、特許文献2の発明は制御区間長の算出に使用する列車の車両の長さを20mに統一しており、異なる種類の車両が走行することを考慮していないため、種類の異なる車両が走行した場合に精度の高い制御区間長の算出が行えないという課題がある。
【0011】
本発明は、上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、測定作業に要する人手を減らすことができる踏切制御子の制御区間長測定装置および制御区間長測定システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、測定対象列車が制御区間内において加速または減速している場合や異なる種類の車両からなる列車が走行している場合にも精度の高い制御区間長の算出を行うことができる踏切制御子の制御区間長測定装置および制御区間長測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明は、
踏切制御子からレールへ流される電流値を測定する電流測定手段と、
前記電流測定手段の電流測定値に基づいて前記踏切制御子の制御区間の長さを算出する演算処理手段と、を備えた制御区間長測定装置であって、
前記演算処理手段は、
前記電流測定手段によって測定された電流値の極値点を抽出する極値点抽出手段と、
抽出された極値点の情報に基づいて、前記踏切制御子の制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間と、第1の極値点から第2の極値点までの時間と、最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間とを算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段により算出された第1の極値点から第2の極値点までの時間と前記制御区間を通過する車両の車軸間距離とから前記制御区間への列車進入速度Vaを算出するとともに最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間と前記車軸間距離とから前記制御区間からの列車進出速度Vbを算出する列車速度算出部と、
算出された列車進入速度Vaと制御区間の始点から前記第1の極値点までの所要時間Taおよび列車進出速度Vbと前記最後の極値点から制御区間の終点までの所要時間Tbから、
Lx=Va×Ta+Vb×Tb
なる式を用いて前記制御区間の長さLxを算出する制御区間長算出部と、を備えるように構成したものである。
【0013】
上記のように構成された制御区間長測定装置によれば、踏切制御子からレールへ流される電流値の波形に基づいて制御区間への列車進入速度と制御区間からの列車進出速度を算出するとともに、算出された列車進入速度と列車進出速度とから制御区間の長さを算出するため、測定作業に要する人手を減らすことができるとともに、測定対象列車が制御区間内において加速または減速している場合にも精度の高い制御区間長の算出を行うことができる。
【0014】
ここで、望ましくは、前記演算処理手段には、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧に関する情報が入力され、
前記通過時間算出手段は、前記リレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を前記制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、前記制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出するように構成する。
【0015】
上記のような構成によれば、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧に関する情報が演算処理手段へ入力されるため、演算処理手段はリレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、踏切制御装置が検知する制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出することができる。そのため、踏切に設置されている踏切制御子の特性が測定対象の踏切ごとに異なっている場合にも、正確な進入、進出のタイミングを決定することができ、それによって精度の高い制御区間長の算出を行うことができる。
【0016】
また、望ましくは、前記演算処理手段は、前記極値点抽出手段により抽出された極値点の数から前記制御区間を走行する列車を構成する車両の編成を判定する車両判定部と、複数の編成の車両の車軸間距離を記憶する記憶手段と、を備え、
前記列車速度算出部は、前記車両判定部により判定された車両の編成に対応する軸間距離を前記記憶手段より読み出して、前記制御区間への列車進入速度と前記制御区間からの列車進出速度を算出するように構成する。
かかる構成によれば、測定対象の踏切を走行する複数の列車を構成する車両の車軸間距離がそれぞれ異なる場合にも、車両の車軸間距離に応じて進入速度と進出速度を算出するため、精度の高い制御区間長の算出を行うことができる。
【0017】
また、本出願の他の発明は、
踏切制御子からレールへ流される電流値を測定する電流測定手段と、前記電流測定手段により測定した電流値を送信可能な通信手段とを有する測定装置と、
前記電流測定手段の電流測定値に基づいて前記踏切制御子の制御区間の長さを算出する演算処理手段と、前記通信手段により送信された電流測定値を受信可能な受信手段とを有する制御区間長算出装置と、を備えた制御区間長測定システムであって、
前記演算処理手段は、
前記電流測定手段によって測定された電流値の極値点を抽出する極値点抽出手段と、
抽出された極値点の情報に基づいて、前記踏切制御子の制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間と、第1の極値点から第2の極値点までの時間と、最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間とを算出する通過時間算出手段と、
前記通過時間算出手段により算出された第1の極値点から第2の極値点までの時間と前記制御区間を通過する車両の車軸間距離とから前記制御区間への列車進入速度Vaを算出するとともに最後の極値点からその一つ手前の極値点までの時間と前記車軸間距離とから前記制御区間からの列車進出速度Vbを算出する列車速度算出部と、
算出された列車進入速度Vaと制御区間の始点から前記第1の極値点までの所要時間Taおよび列車進出速度Vbと前記最後の極値点から制御区間の終点までの所要時間Tbから、
Lx=Va×Ta+Vb×Tb
なる式を用いて前記制御区間の長さLxを算出する制御区間長算出部と、を備えるように構成したものである。
【0018】
上記のような構成を有する制御区間長測定システムによれば、測定対象の踏切ごとに制御区間長算出装置を設置したり、測定対象の踏切が変わるたびに制御区間長算出装置を現地に持ち込んで設置したりする必要がないので、コストアップを抑えるとともに測定作業に要する人手を減らすことができる。
【0019】
ここで、望ましくは、前記測定装置は、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧を取得して該リレー作動電圧に関する情報を前記通信手段により前記演算処理手段へ送信する機能を備え、
前記演算処理手段は、前記測定装置より送信された前記リレー作動電圧の情報を前記受信手段により受信し、
前記通過時間算出手段は、受信した前記リレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を前記制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、前記制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出するように構成する。
【0020】
かかる構成によれば、踏切制御装置から出力されるリレー作動電圧に関する情報が測定装置から制御区間長算出装置へ入力されるため、制御区間長算出装置の演算処理装置はリレー作動電圧の立ち上がり時点と立ち下がり時点を制御区間の列車進入と列車進出のタイミングとして、踏切制御装置が検知する制御区間の始点および終点からそれぞれ最も近い極値点までの時間を算出することができるので、精度の高い制御区間長の算出を行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る踏切制御子の制御区間長測定装置によれば、測定作業に要する人手を減らすことができる。また、測定対象列車が制御区間内において加速または減速している場合や異なる種類の車両からなる列車が走行している場合にも精度の高い制御区間長の算出を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る制御区間長測定装置が適用される踏切制御システムの構成を示した概略図である。
図2】本発明の実施形態の制御区間長測定装置を構成する踏切制御子の制御区間長算出装置の構成を示した機能ブロック図である。
図3】列車が踏切制御子の制御区間を通過する際の制御子送信電流およびリレー作動電圧の変化の様子を示す図である。
図4】列車位置の変化に伴う制御子送信電流の変化の様子を説明するための図(極大点P1検出時)である。
図5】制御子送信電流の極値点と列車の位置との対応関係を説明するための図(極大点P2検出時)である。
図6】制御子送信電流の極値点と列車の位置との対応関係を説明するための図(極大点P4検出時)である。
図7】制御子送信電流の極値点と列車の位置との対応関係を説明するための図(極大点P3検出時)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る制御区間長測定装置が適用される踏切制御システムは、図1に示すように、踏切の近傍に設置され遮断機や警報器を制御する踏切制御装置11と、踏切を挟んで踏切からそれぞれ所定距離を置いて配設されているHC形踏切制御子12AおよびHO形踏切制御子12Bを備え、HC形踏切制御子12AとHO形踏切制御子12Bのリレー出力は、ケーブル13A,13Bを介して踏切制御装置11へ伝達され、内部のリレーが落下または扛上動作される。
【0024】
図1において、矢印Aは列車が進行する方向であり、踏切の上流側数100m~数kmの位置に閉電路式のHC形踏切制御子12Aが配設され、踏切の下流側数10mの位置に開電路式のHO形踏切制御子12Bが配設されている。
HC形踏切制御子12Aは、一対のケーブルを介して交流信号をレールRへ送信し、少し離れた部位に接続された一対のケーブルを介して受信することで、列車の在線の有無を検知するもので、列車が在線すると交流信号を受信することができなくなり列車の通過を検知する。一方、HO形踏切制御子12Bは、一対のケーブルを介して交流信号をレールRに送信し、列車が在線すると車軸を通して電流が流れて閉回路が形成され、それを検出することで列車の通過を検知する。
【0025】
電圧検出方式のHC形踏切制御子12Aを動作させるため、踏切近傍に配設されている電源装置14からケーブル15Aを介してHC形踏切制御子12Aへは交流電源電圧(AC)が供給され、電流検出方式のHO形踏切制御子12Bへはケーブル15Bを介して直流電源電圧(DC)が供給される。
本実施形態の踏切制御システムにおいては、HO形踏切制御子12Bの近傍に、HO形踏切制御子12BからレールRへ流される電流を測定する電流測定器21が設けられている。電流測定器21は通信手段を備えており、電流測定器21により測定された電流値および踏切制御子12Bのリレー作動電圧の情報が、通信ネットワーク16を介して制御区間長算出装置22へ送信され、制御区間長算出装置22によって制御区間長が算出されるように構成されている。
【0026】
図示しないが、電流測定器21にも電源装置14からケーブルを介して直流電源電圧(DC)が供給される。また、HC形踏切制御子12A側にもレールRへ流される電流を測定する電流測定器が設けられ、測定された電流値が通信ネットワーク16を介して制御区間長算出装置22へ送信され、制御区間長算出装置22によって制御区間長が算出されるように構成されている。
なお、本実施例では、電流測定器21と制御区間長算出装置22とによって、制御区間長測定システムが構成されているが、制御区間長算出装置22を踏切近傍の器具箱に配設して、電流測定器21と制御区間長算出装置22を直接ケーブル等で接続して制御区間長測定装置として構成しても良い。
また、電流測定器21は電圧測定器として構成しても良い。
【0027】
図2には、上記制御区間長算出装置22の機能ブロック図が示されている。
本実施形態の制御区間長算出装置22は、図2に示すように、通信ネットワーク16を介して電流測定器21より電流測定値を受信する電流測定値受信部23と、マイクロコンピュータなどからなる演算処理部24と、制御区間長の算出に必要なデータを記憶する記憶部(データベース)25と、演算結果を表示するLCD(液晶表示パネル)のようなモニタもしくはプリンタなどからなる出力部26を備える。記憶部25には、測定対象の踏切が存在する路線を走行する列車(編成)の車両数と車両の車軸間距離との関係を示すテーブルデータなどが記憶されている。
【0028】
上記演算処理部24は、電流測定値受信部23により受信した電流値の波形(図3参照)から極値点(極大値もしくは極小値)を抽出する極値点抽出部41と、抽出された極値点から列車(正確には車軸)の通過時間を算出する通過時間算出部42と、抽出された極値点の数など波形の特徴から列車(編成)を構成する車両の種別を判定する車両判定部43と、判定された車両の種別に応じて記憶部25内から車軸間距離Lsを読み出す軸間距離取得部44と、取得した車軸間距離と算出された通過時間とから列車の速度を算出する列車速度算出部45と、算出された列車速度および通過時間から制御区間長を算出する制御区間長算出部46を備える。記憶部25に実施ダイヤ情報と列車(編成)の情報を記憶しておいて、車両判定部43が、実施ダイヤを参照して列車の通過時刻から車両の種別を判定するようにしても良い。
【0029】
次に、上記制御区間長算出装置22による制御区間長の具体的な算出方法について、図3図7を用いて説明する。
図3に、制御区間を列車が走行した際に電流測定器21により測定した踏切制御子送出電流Isの変化と踏切制御装置11において生成されるリレー作動電圧Vrの変化を示す。図3の電流値Isは、2両編成の列車を走行させた場合のもので、各車両は前後にそれぞれ台車を備え、各台車には両端に車輪を有する2本の車軸が設けられている。図3において、横軸は時間であり、t1は前車両の先頭側の車軸が制御区間に進入したタイミングを、またt2は後車両の最後尾の車軸が制御区間から進出したタイミングを表わしている。
【0030】
送出電流Isの波形の極大点(ピーク)P1,P2,P3,P4は、それぞれレールへ電流を送出するケーブルの打設点すなわち電流送出点を各車軸が通過したタイミングに出現する。例えばP1は、図4に示すように、前車両の先頭側の車軸が電流送出点を通過したタイミングである。従って、Taは先頭側の車軸が制御区間に進入してから電流送出点に到達するまでの所要時間に相当する。また、P2は、図5に示すように、前車両の後側の台車の車軸が電流送出点を通過したタイミングである。
【0031】
従って、T1は前車両の先頭側の車軸が電流送出点を通過してから前車両の後側の台車の車軸が電流送出点を通過するまでの所要時間である。よって、車軸間距離Lsが分かれば、前車両が電流送出点を通過している際の車両速度Vaは、Va=Ls÷T1なる式によって算出できる。
さらに、前車両が電流送出点を通過している際の車両速度Vaが分かれば、この速度Vaと先頭側の車軸が制御区間に進入してから電流送出点に到達するまでの所要時間Taとから、Va×Taなる式より、制御区間の始点から電流送出点までの距離Laを算出することができる。
【0032】
同様に、P4は、図6に示すように、後車両の最後尾の車軸が電流送出点を通過したタイミングであり、Tbは最後尾の車軸が電流送出点を通過してから制御区間より進出するまでの所要時間に相当する。また、P3は、図7に示すように、後車両の前側の台車の車軸が電流送出点を通過したタイミングである。
従って、T2は後車両の前側の台車の車軸が電流送出点を通過してから後車両の最後尾の車軸が電流送出点を通過するまでの所要時間である。よって、車軸間距離Lsを用いて、後車両が電流送出点を通過している際の車両速度Vbは、Vb=Ls÷T2なる式によって算出できる。
【0033】
さらに、後車両が電流送出点を通過している際の車両速度Vbが分かれば、この速度Vbと後車両の最後尾の車軸が電流送出点を通過してから制御区間より進出するまでの所要時間Tbとから、Vb×Tbなる式より、電流送出点から制御区間の終点までの距離Lbを算出することができる。そして、HO形踏切制御子12Bの制御区間長Lxは、Lx=La+Lbなる式によって算出することができる。
なお、上記計算方法は、列車が2両編成である場合を例にとって説明したが、列車が3両以上の編成である場合も、先頭車両と最後尾の車両について上記と同様な計算を行うことで制御区間長Lxを、Lx=La+Lbなる式によって算出することができる
【0034】
また、上記実施例においては、車軸が電流送出点を通過するタイミングを基準にして車両速度および制御区間長Lxを算出する場合について説明したが、図3に示されているように、制御子送出電流Isの波形は、極大点(ピーク)P1,P2,P3,P4の近傍において上下にぶれているのは、各台車に2本の車軸があるためであり、走行する車両によっては極大点P1,P2,P3,P4に2つの山が出るものある。そのような車両の場合には、2つの山の中間すなわち台車の中心が電流送出点を通過するタイミングを基準にして車両速度および制御区間長Lxを算出するようにしても良い。
【0035】
また、踏切の上流側に設けられる交流検出方式のHC形踏切制御子12Aにおいては、送出電流よりも送出電圧の方が、測定値の波形に車軸に応じたピークが現れ易いので、送出電圧を測定して、電圧波形の極値点を抽出して車軸通過タイミングを判定し、通過所要時間Ta,T1から列車進入時の速度Vaおよび電圧送出点からの距離Laを算出、および通過所要時間Tb,T2から列車進出時の速度Vbおよび電圧送出点からの距離Lbを算出して、La+Lbより制御区間長Lxを算出するようにするのが望ましい。
【0036】
さらに、上記実施例では、1回の列車の走行による踏切制御子の制御区間長の算出方法について説明したが、当該測定対象の踏切を走行する複数の列車について制御区間長の算出を行い、制御区間長の平均値に基づいてメンテナンスの要否の判定を行うようにしても良い。
以上説明したように、上記実施例においては、列車が踏切制御子の制御区間へ進入する際の車両速度と制御区間から進出する際の車両速度を算出して制御区間長の算出を行うようにしているため、制御区間内で列車が加速したり減速したりした場合にも精度の高い制御区間長の算出を行うことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、電流測定器21が測定した踏切制御子送出電流Isと共に踏切制御子において生成されるリレー作動電圧Vrの情報を制御区間長算出装置22へ送信するようにしているが、リレー作動電圧の情報の送信はせず、制御区間長算出装置22が電流測定値に基づく制御区間進入点と進出点の判定のためのしきい値を有し、そのしきい値に基づいて所要時間を算出して制御区間長を算出するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0038】
11 踏切制御装置
12A HC形踏切制御子
12B HO形踏切制御子
21 電流測定器
22 制御区間長算出装置
23 電流測定値受信部
24 演算処理部
25 記憶部
26 出力部
41 極値点抽出部
42 通過時間算出部
43 車両判定部
44 軸間距離取得部
45 列車速度算出部
46 制御区間長算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7