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特許7311862汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤
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  • 特許-汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20230712BHJP
   A62D 3/33 20070101ALI20230712BHJP
   A62D 101/43 20070101ALN20230712BHJP
   A62D 101/49 20070101ALN20230712BHJP
【FI】
B09C1/08 ZAB
A62D3/33
A62D101:43
A62D101:49
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019235442
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2020104109
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2018244561
(32)【優先日】2018-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507234438
【氏名又は名称】広島県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】000195971
【氏名又は名称】西松建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】三苫 好治
(72)【発明者】
【氏名】石渡 寛之
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-081442(JP,A)
【文献】特開2016-150317(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/064522(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098269(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0125616(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染物質を含有する土壌に薬剤を添加、混合し、前記汚染物質を不溶化させる汚染物質不溶化方法であって、
前記薬剤が、少なくとも一部がナノサイズの大きさの金属カルシウムが酸化カルシウム中に分散した金属カルシウム分散体と、リン酸カルシウムとを含み、
前記汚染物質が、ヒ素、フッ素、セレン、重金属のいずれか一種以上であることを特徴とする汚染物質不溶化方法。
【請求項2】
前記金属カルシウム分散体は、金属カルシウムと酸化カルシウムとの混合物を、金属カルシウムの少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の汚染物質不溶化方法。
【請求項3】
前記リン酸カルシウムが、リン酸三カルシウムCa(POであることを特徴とする請求項1又は2に記載の汚染物質不溶化方法。
【請求項4】
ヒ素、フッ素、セレン、重金属のいずれか一種以上を汚染物質とする汚染物質含有土壌に添加、混合し、前記汚染物質を不溶化させる不溶化剤であって、
少なくとも一部がナノサイズの大きさの金属カルシウムが酸化カルシウム中に分散した金属カルシウム分散体と、リン酸カルシウムとを含む汚染物質不溶化剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌に含まれるヒ素などの汚染物質を不溶化させる汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒ素Asを含有する土壌の処理方法としては、セメント固化、ガラス固化、土壌洗浄等が知られている。薬剤を用いてヒ素Asを不溶化させる方法としては、鉄系薬剤による固化、石膏粉を添加することで石膏粉から溶け出したカルシウムイオンCa2+によりヒ酸イオンの土壌粒子表面への吸着を促進する方法、フッ素を含む石膏を添加することで固化する方法等がある。
【0003】
薬剤を使用し乾式でヒ素Asを不溶化処理する方法としては、ナノサイズの金属カルシウムCa(以下、ナノカルシウムnCaと記す)を不溶化剤とした方法もある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法は、ナノカルシウムnCaを不溶化剤とし、これをヒ素、その他重金属(Cd、Cr、Pb)を含む土壌に10重量%程度添加、混合することでヒ素、重金属等を不溶化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5752387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネル掘削作業によって発生した建設残土から環境基準値(溶出濃度0.01ppm)の数倍のヒ素Asが検出されるなどヒ素Asに汚染された土壌の発生量は非常に多い。このような大量に発生するヒ素Asを含有する土壌を湿式処理法で処理すると、大量の排水が発生し排水の後処理が大変である。この点において乾式処理法が好ましいといえる。乾式処理法には、加熱処理法もあるが処理コストが高くなる。
【0006】
以上のことから薬剤を使用し安価に処理できる方法が期待される。さらに処理後の土壌を再利用できることが望ましい。また土壌にはヒ素Asの他、カドミウムCd、クロムCr、鉛Pbなどの重金属が含まれる場合もあり、これら汚染物質も不溶化できることが好ましい。これらの点において特許文献1に記載の汚染土壌処理方法は、優れた方法といえる。
【0007】
しかしながら特許文献1のナノカルシウムnCaを不溶化剤とした方法は、汚染土壌に対して不溶化剤を10重量%程度添加する必要があるため薬剤費が高額となる。このため少ない薬剤の添加量で効果的にヒ素As、カドミウムCd、クロムCr、鉛Pbなどの重金属を含む土壌を処理できる技術の開発が待たれている。
【0008】
本発明の目的は、土壌に含まれるヒ素As、フッ素F、セレンSe、又はカドミウムCd、クロムCr、鉛Pbなどの重金属を簡便にまた効果的に不溶化させることができる汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、汚染物質を含有する土壌に薬剤を添加、混合し、前記汚染物質を不溶化させる汚染物質不溶化方法であって、前記薬剤が、少なくとも一部がナノサイズの大きさの金属カルシウムが酸化カルシウム中に分散した金属カルシウム分散体と、リン酸カルシウムとを含み、前記汚染物質が、ヒ素、フッ素、セレン、重金属のいずれか一種以上であることを特徴とする汚染物質不溶化方法である。
【0010】
本発明の汚染物質不溶化方法において、前記金属カルシウム分散体は、金属カルシウムと酸化カルシウムとの混合物を、金属カルシウムの少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得られたものであることを特徴とする。
【0011】
本発明の汚染物質不溶化方法において、前記リン酸カルシウムが、リン酸三カルシウムCa(POであることを特徴とする。
【0012】
本発明は、ヒ素、フッ素、セレン、重金属のいずれか一種以上を汚染物質とする汚染物質含有土壌に添加、混合し、前記汚染物質を不溶化させる不溶化剤であって、少なくとも一部がナノサイズの大きさの金属カルシウムが酸化カルシウム中に分散した金属カルシウム分散体と、リン酸カルシウムとを含む汚染物質不溶化剤である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、土壌に含まれるヒ素As、フッ素F、セレンSe、又はカドミウムCd、クロムCr、鉛Pbなどの重金属を簡便にまた効果的に不溶化させることができる汚染物質不溶化方法及び汚染物質不溶化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例の実験結果である。
図2】本発明の実施例のXRD分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る汚染物質不溶化方法は、汚染物質を含有する土壌(以下、汚染土壌と記す)に薬剤を添加、混合し、汚染物質を不溶化させる。
【0016】
ここで汚染物質は、ヒ素As、フッ素F、セレンSe、重金属である。重金属としては、カドミウムd、クロムCr、鉛Pbが挙げられる。
【0017】
汚染土壌は、特に限定されるものではなく、焼却灰などが含まれていてもよい。また汚染土壌に含まれる汚染物質の濃度も特に限定されるものではない。
【0018】
本発明に係る汚染物質不溶化方法で使用する薬剤(不溶化剤)は、少なくとも一部がナノサイズの大きさの金属カルシウムCaが酸化カルシウムCaO中に分散した金属カルシウム分散体(金属Ca分散体)と、リン酸カルシウムとを含む。
【0019】
金属カルシウム分散体は、金属カルシウムCaと酸化カルシウムCaOとの混合物を、金属カルシウムCaの少なくとも一部がナノサイズとなるまで粉砕し得ることができる。ここでナノサイズとは、粒径が数nm~サブミクロンの大きさをいう。金属カルシウムCaと酸化カルシウムCaOとの混合割合は、重量比で1:1~1:10が好ましいがこの割合に限定されるものではなく、重量比で1:20~1:1000、さらに金属カルシウムCaの混合割合を少なくしてもよい。
【0020】
金属カルシウム分散体において、ナノサイズの金属カルシウムCaの表面は酸化カルシウムCaOでコーティングされている。一般的に金属をナノサイズまで微細化すると、環境中では酸化し失活するが、金属カルシウム分散体においては、ナノサイズの金属カルシウムCa粒子の表面を覆う酸化カルシウムCaOが、金属カルシウムCa粒子の大部分が酸素、二酸化炭素又は水と直接接触することを阻止するので、ナノサイズの金属カルシウムCa粒子は、大気中においても高い活性を維持することができる。
【0021】
金属カルシウム分散体において、酸化カルシウムCaOは、汚染土壌に含まれる水分を吸着する水分調整剤として機能すると共に吸着した水を脱着させる。この水は水素源として作用する。
【0022】
リン酸カルシウムは、金属カルシウム分散体と協働して土壌中の汚染物資を不溶化させる。本発明において、リン酸カルシウムは、リン酸三カルシウムCa(POが好ましい。
【0023】
金属カルシウム分散体に対するリン酸三カルシウムCa(POの重量割合は、1:0.2~0.8が好ましい。薬剤(不溶化剤)中の金属カルシウムCa含有量とリン含有量との比は、モル比で1:1が好ましい。薬剤(不溶化剤)の汚染土壌に対する添加割合は、汚染土壌に対して0.5~3.6重量%でよい。
【0024】
汚染土壌と薬剤との混合操作は、汚染土壌中の汚染物質と薬剤との接触機会を高めるために行う操作であるから撹拌強度は小さくてもよい。汚染物質と薬剤との接触機会を高めるためには汚染土壌の表面を更新しながら汚染土壌と薬剤とを撹拌混合することが好ましい。このため粉砕機能を備えるミルは、撹拌混合機として好ましい。混合時間は、後述の実施例2では10minであり、迅速に不溶化が進行することが分かる。
【0025】
メカノケミカル処理法の場合、反応に必要なエネルギーをミルを通じて与える必要があるが、本方法において、撹拌混合操作は、汚染土壌と薬剤との接触機会を高めることができればよく、汚染物質の不溶化に必要なエネルギーを撹拌混合操作を通じて与えなくてもよい。
【0026】
後述の実施例に示すように本発明に係る薬剤(不溶化剤)を汚染土壌に添加、混合すると汚染土壌表面に炭酸アパタイトCa10(POCO(OH)、ヒドロキシアパタイトCa(PO(OH)が形成されることが分かった。
【0027】
以上のように本発明に係る汚染物質不溶化方法は、ヒ素As、フッ素F、セレンSe、重金属などの汚染物質を含有する土壌に薬剤を添加、混合するだけでよく操作も簡単である。さらに薬剤添加量も少ないので、処理コストを抑えることができる。さらに薬剤添加量も少ないので、汚染土壌を処理した後の量が、処理前の汚染土壌の量と比較しほとんど増加しない。さらに本発明に係る汚染物質不溶化方法を用いれば処理後の汚染土壌を再利用できる。このような特徴を有する汚染物質不溶化方法は、掘削工事などで大量に排出される汚染土壌の処理に好適に使用することができる。
【実施例
【0028】
実施例1
模擬汚染土壌の調製
1000ppmのヒ素標準液(三酸化二ヒ素:0.13%含量,As and NaOH in water pH5.0 with HCl,Wako)を10倍希釈し、100ppmのヒ素As溶液を調製した。調製したヒ素As溶液10mLをプラスチック製の容器に入れ、10gの真砂土(粒径2mm以下)を加えて薬さじで撹拌し、大気中で6日間乾燥した。模擬汚染土壌は、溶出試験毎に10gずつ調製した。
【0029】
検量線の作成
1000ppmのヒ素標準溶液を10倍希釈したものを母液とし、これを200倍と100倍に希釈して0.5ppm,1ppmのヒ素As溶液を調製した。Blankと調製したそれぞれのヒ素As溶液に硝酸(硝酸含量:61%,有害金属測定用,Wako,原液)を2、3滴加えて酸性にし、ICP発光分光分析装置(iCAP6300 DuoView, Thermo scientific社製, 波長:As189.042 nm)を用いてヒ素As濃度を測定し、検量線を作成した。
【0030】
金属カルシウム分散体(金属Ca分散体)の調製
乾燥した酸化カルシウムCaO(850℃,2hで焼成)20gと金属カルシウムCa8g(重量比でCaO:金属Ca=5:2)とを、遊星ボールミルを用いて室温下、アルゴンガス雰囲気下で粉砕(400rpm,60min,Φ=20×5個)し、その後、ふるい(目開き710μm)で粉砕物と未粉砕物とに分けた。粉砕物を金属カルシウム分散体(金属Ca分散体)とした。水と反応させたときに発生した水素ガスの体積から金属カルシウム分散体中に含まれる金属カルシウムCa量(mmol)を求めた。このときCa+2HO→Ca(OH)+Hの関係式を利用した。
【0031】
不溶化試験及び溶出試験
模擬汚染土壌(As含有濃度:6.5×10-2ppm)5gに表1に示す各種薬剤を添加し、窒素雰囲気下、マグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌し、不溶化処理を行った(第1ステップ)。第1ステップで得られた模擬汚染土壌1gに水10mLを加え、振とう機(200往復/min,6h)で振とう後、メンブレンフィルター(0.45μm)で吸引ろ過し土壌を取り除いた(第2ステップ)。第2ステップで得られたろ液に対して、2、3滴の硝酸(硝酸含量:61%,有害金属測定用,Wako,原液)を加えてろ液を酸性にした後、メスフラスコを用いて25mLに定容した。これをヒ素As溶出濃度測定時のサンプルとした。
【0032】
サンプルのヒ素As濃度測定は、ICP発光分光分析装置(iCAP6300 DuoView,Thermo scientific社製,波長:As189.042nm)を用いて行った。土壌の含水率および添加薬剤の重量を考慮し、測定値を土壌単独重量1gあたりに換算した値をヒ素As溶出濃度とした。
【0033】
結果を表1及び図1に示した。表1及び図1に示す薬剤無添加の場合も窒素雰囲気下でマグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌操作を実施した。リン酸三カルシウムCa(POは、850℃で2時間焼成したものを使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
表1及び図1に示すように模擬汚染土壌に金属カルシウム分散体とリン酸三カルシウムCa(POとを添加、混合した場合、ヒ素As溶出濃度は、0.045ppm(mg/L)であった(実施例1)。このときの模擬汚染土壌に対する薬剤添加量は、0.72重量%、金属カルシウムCa含有量及びリン含有量はそれぞれ0.100mmolである。薬剤無添加の場合、ヒ素As溶出濃度は0.561ppm(mg/L)であり(比較例1)、金属カルシウム分散体とリン酸三カルシウムCa(POとを添加、混合することでヒ素As溶出濃度は、92%低減した。
【0036】
実施例1に示すように金属カルシウム分散体とリン酸三カルシウムCa(POとを添加、混合することで汚染土壌に含まれるヒ素Asを十分に不溶化させることができるが、金属カルシウム分散体又はリン酸三カルシウムCa(POのいずれか一方を添加した場合には、ヒ素Asを不溶化させる効果は小さかった(比較例3、比較例4)。
【0037】
金属カルシウム分散体のみを添加、混合した場合、ヒ素As溶出濃度は0.417ppmであり(比較例3)、その濃度は薬剤無添加の場合の約74%であった。またリン酸三カルシウムCa(POのみを添加、混合した場合、ヒ素As溶出濃度は0.394ppmであり(比較例4)、その濃度は薬剤無添加の場合の約70%であった。
【0038】
また酸化カルシウムCaO又はヒドロキシアパタイトHApを添加、混合したときのヒ素As溶出濃度は、前者で0.706ppm、後者で0.749ppmであり(比較例2、比較例5)、ヒ素Asを不溶化させる効果は見られなかった。
【0039】
XRD分析結果
実施例1で使用した模擬汚染土壌と同様に調製した模擬汚染土壌5gに、上記金属カルシウム分散体及びリン酸三カルシウムCa(POをそれぞれ、金属カルシウム含有量(M-Ca含有量)及びリン含有量(P含有量)が20mmolとなるように添加し、Arガス雰囲気下、マグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌した。得られた混合物をXRD分析した。
【0040】
結果を図2に示した。図2中、(A)のnCa/Ca(PO添加土壌は、模擬汚染土壌に薬剤を添加した直後の状態を示し、(B)のnCa/Ca(PO混合物は、模擬汚染土壌に薬剤を添加し、マグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌した後の状態(不溶化処理後)を示す写真である。図2の(A)と(B)との写真から、不溶化処理することで模擬汚染土壌の外観が変化し、色彩もよりグレーになっていることが分かる。図2中、(C)のチャートは、XRD分析結果であり、模擬汚染土壌の表面に炭酸アパタイトCa10(POCO(OH)及びヒドロキシアパタイトCa(PO(OH)が形成されていた。
【0041】
実施例2
土壌にトチクレー粘土/砂を用い、実施例1と同じ要領で500ppmAs模擬汚染土壌0.50gを調製した。これにトチクレー粘土/砂4.50gを加えたものを供試土壌とした。金属カルシウム分散体(金属Ca分散体)は、実施例1と同じ要領で調製したものを使用し、リン酸三カルシウムCa(POは、850℃で2時間焼成したものを使用した。
【0042】
不溶化試験及び溶出試験
供試土壌5gに金属カルシウム分散体(金属Ca分散体)を0.10g、リン酸三カルシウムCa(POを0.080g加え、アルゴンガス雰囲気下、マグネット乳鉢スターラー150rpmで10min間撹拌し、不溶化処理を行った(第1ステップ)。第1ステップで得られた不溶化処理土壌1gに蒸留水10mLを加え、振とう機(200往復/min,6h,25℃)で振とう後、メンブレンフィルター(0.45μm)で吸引ろ過し土壌を取り除いた(第2ステップ)。第2ステップで得られたろ液10mLに対して、2、3滴の硝酸(硝酸含量:61%,有害金属測定用,Wako,原液)を加えてろ液を酸性にした後、メスフラスコを用いて50mLに定容した。これをヒ素As溶出濃度測定時のサンプルとし、ICPで分析を行った。
【0043】
また実施例2と同じ要領で調製した供試土壌、実施例2と同じ要領で調製した供試土壌に薬剤を添加することなくアルゴンガス雰囲気下、マグネット乳鉢スターラー150rpmで10min間撹拌したものを比較例6、7とし、それぞれ溶出試験を行った。各条件で各々2回実施した。
【0044】
結果を表2に示した。表2に示すように供試土壌に金属カルシウム分散体とリン酸三カルシウムCa(POとを添加、混合した場合、ヒ素As溶出濃度は、定量検出下限以下であった。このときの模擬汚染土壌に対する薬剤添加量は、3.6重量%、金属カルシウムCa含有量及びリン含有量はそれぞれ0.500mmolである。一方、供試土壌を処理することなく溶出試験を行った場合(比較例6)、ヒ素As溶出濃度は、0.308~1.05ppm、平均値で0.680ppm、供試土壌に薬剤を添加することなく撹拌し溶出試験を行った場合(比較例7)、ヒ素As溶出濃度は、平均値で0.179ppmであった。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例3
模擬汚染土壌の調製
土壌(粘土)50gに二酸化セレン70mgを含むセレン水溶液50mLを加え、撹拌した後、数日間風乾させセレンSe濃度1000ppmの模擬汚染土壌を得た。
【0047】
不溶化試験及び溶出試験
模擬汚染土壌(セレンSe濃度1000ppm)5gに表3に示す各種薬剤を添加し、窒素雰囲気下、マグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌した後、1日間室内で放置した(第1ステップ)。第1ステップで得られた模擬汚染土壌1gに純水10mLを加え、振とう機(200往復/min,6h)で振とう後、メンブレンフィルター(0.45μm)で吸引ろ過し土壌を取り除いた(第2ステップ)。第2ステップで得られたろ液に0.1Mの硝酸を加え、20mLに定容し、ICP発光分光分析装置(波長:196.026nm)で分析した。金属カルシウム分散体は、実施例1と同じ要領で調製したものを使用した。各条件で各々2回実施した。
【0048】
結果を表3に示した。表3に示す薬剤無添加の場合(比較例8)も窒素雰囲気下でマグネット乳鉢スターラー150rpmで1時間撹拌操作を実施した。模擬汚染土壌の含水率は4重量%である。リン酸三カルシウムCa(POは、850℃で2時間焼成したものを使用した。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すように模擬汚染土壌に金属カルシウム分散体とリン酸三カルシウムCa(POとを添加、混合した場合、セレンSe溶出濃度は、定量検出下限以下であった(実施例3)。このときの模擬汚染土壌に対する薬剤添加量は、0.72重量%、金属カルシウムCa含有量及びリン含有量はそれぞれ0.100mmolである。薬剤無添加の場合、セレンSe溶出濃度は0.003~0.036(ppm)であった(比較例8)。金属カルシウム分散体のみを添加、混合した場合、セレンSe溶出濃度は0.471~0.529ppmであった(比較例9)。
図1
図2