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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】土壌の解泥方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/28 20060101AFI20230712BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
G21F9/28 Z
G21F9/30 531J
G21F9/30 531M
G21F9/30 531Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020087990
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181949
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100167597
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一彦
(72)【発明者】
【氏名】辻本 宏
(72)【発明者】
【氏名】河野 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】日下 英史
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064690(JP,A)
【文献】特開2019-101039(JP,A)
【文献】特開2021-012115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/28
G21F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花崗岩由来の砂礫を含む土壌をペブルとともに湿式ミルで撹拌し、
前記砂礫は、放射性セシウムを含有する雲母類鉱物又はイオン交換態が固着しており、
前記ペブルの粒径は、2mm~18mmである、土壌の解泥方法。
【請求項2】
前記湿式ミルでの撹拌後、前記土壌を分級し、粒径が20μm以上の土壌を含む分画を再度前記湿式ミルで撹拌する、請求項1記載の土壌の解泥方法。
【請求項3】
前記ペブルは、砂又は礫である、請求項1又は2記載の土壌の解泥方法。
【請求項4】
前記湿式ミルで撹拌する前に、前記湿式ミルで撹拌する内容物のpH調整を行う、請求項1~3のいずれか一項記載の土壌の解泥方法。
【請求項5】
前記湿式ミルで撹拌した後、内容物を分級し、粒径が20μm以上の粒子を含む分画を再度前記湿式ミルで前記ペブルとともに撹拌する、請求項1~4のいずれか一項記載の土壌の解泥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の解泥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性物質で汚染された土壌から放射性物質を除去する方法が知られている。例えば特許文献1では、放射性セシウムが雲母のような微粒子成分と結合していることに鑑み、円筒状容器内で、水流の力を利用して粒径が大きな粒子と微粒子成分とを遠心力によって分離している。ここでは、石英や長石等の粒径が大きな成分は水流によって粉砕されにくいが、雲母の粒子が大きい場合は水流で粉砕されて微粒子となる。放射性セシウムを多く含む微粒子成分を分離した粒径の大きな分画は、その後、資材として再利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-38009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粒径が大きな粒子に雲母等が固着している場合、水流を利用する方法では必ずしも雲母等が剥がれきらず、粒径が大きな粒子との分離が不十分となる場合がある。したがってこの場合、粒径が大きな分画は放射能濃度が想定よりも高くなる。そこで本発明は、雲母等が固着している花崗岩由来の砂礫を含む土壌から放射性セシウムを十分に分離することができる、土壌の解泥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、花崗岩由来の砂礫を含む土壌をペブルとともに湿式ミルで撹拌し、砂礫は、放射性セシウムを含有する雲母類鉱物又はイオン交換態が固着しており、ペブルの粒径は、2mm~18mmである、土壌の解泥方法を提供する。
【0006】
花崗岩由来の砂礫には一般に雲母類鉱物又はイオン交換態が固着しており、この雲母類鉱物又はイオン交換態には放射性セシウムが多く結合している場合がある。当該砂礫を含む土壌を粒径が2mm~18mmであるペブルを用いて湿式ミルで撹拌することにより、これと同程度の大きさの砂礫の表面を磨砕(衝突及び剪断)することが容易となる。これによれば、砂礫の表面に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態を容易に剥がすことができ、その後の分級で得られる粒径が大きな分画の放射能濃度を従来の想定以上に低減することができる。
【0007】
ここで、湿式ミルでの撹拌後、土壌を分級し、粒径が20μm以上の土壌を含む分画を再度湿式ミルで撹拌することが好ましい。分級によって粒径が20μm以下の土壌を除くことで、二回目の湿式ミルでの撹拌では砂礫から雲母類鉱物又はイオン交換態を剥がす効率が高くなる。
【0008】
ペブルは、砂又は礫であってもよい。粒径が大きな分画を資材として再利用する場合にペブル又はその破片が混入していたとしても特別な問題が生じにくい。
【0009】
また、湿式ミルで撹拌する前に、湿式ミルで撹拌する内容物のpH調整を行うことが好ましい。pH調整により、土粒子の凝集・分散を制御することができる。
【0010】
また、湿式ミルで撹拌した後、内容物を分級し、粒径が20μm以上の粒子を含む分画を再度湿式ミルでペブルとともに撹拌することが好ましい。湿式ミルでの撹拌を複数回行うことにより、初回の撹拌及びその後の分級によってある程度粒径が揃っていること、及び、植物等に由来する有機物がある程度取り除かれていることから、二回目以降の撹拌による解泥効率が高くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、雲母類鉱物又はイオン交換態が固着している花崗岩由来の砂礫を含む土壌から放射性セシウムを十分に分離することができる、土壌の解泥方法を提供することができる。これにより、その後の分級で得られる粒径が大きな分画の放射能濃度は従来の想定以上に低減しているので、資材として再利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態の土壌の解泥方法では、花崗岩由来の砂礫を含む土壌を対象とし、これを湿式ミル内で撹拌する。この砂礫は主に粒径が75μm以上の風化花崗岩土であり、マサ土とも呼ばれるものである。この土壌は、粒径が75μm以上のものが重量基準で全体の5%~100%含まれていてもよく、30%~70%含まれていてもよい。
【0013】
なお、本明細書では、粒径について「75μm~2mm」、「20μm~75μm」、「0μm~20μm」との表現を用いている。端点の値が重複しているが、これは、分級の結果として、端点の値の粒径を有する粒子がいずれの分画にも属しうることを意味している。例えば、端点の値を用いて「20μm以上」と表現している部分は、実態としては「20μm以上」である場合もあり、「20μmを超え」である場合もある。
【0014】
花崗岩由来の砂礫は、元々その内部及び表面に黒雲母及び2:1粘土鉱物等の雲母類鉱物や、ゼオライト等の天然に存在するあるいは外来のイオン交換態が存在する。雲母類鉱物又はイオン交換態はセシウムイオンとの親和性が高く、砂礫の表面に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態には外来の放射性セシウムが結合し蓄積している場合がある。砂礫の表面に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態を剥がすことを本明細書では特に「表面解泥」と呼ぶ。また、対象土壌の一部が団粒となっている場合、団粒状態を解消することを「解泥」と呼ぶ。これらの解泥は、本実施形態の方法では湿式ミル内での土壌の撹拌時に生じるものである。
【0015】
本実施形態の解泥方法では、始めに対象土壌の様子を観察し、必要に応じて土壌改質材を添加してもよい。土壌改質材は例えば無機鉱物、吸水性樹脂、高分子凝集剤(例えばポリアクリルアミド)を含んでなるものであり、これを添加することで高含水高粘性土壌の見た目含水比を下げ、大きな団粒を細粒化することができるため、草木根などの有機物を篩(φ20mm)によって土壌と有機物に選別することが可能となる。無機鉱物としては、例えば、グリーンタフ、ゼオライト、炭酸カルシウム、石膏、ペーパースラッジ、ベントナイト、酸化マグネシウム等が挙げられる。土壌改質材の添加量は、対象土壌の重量を基準として0.1%~10%としてもよく、0.5%~7%としてもよく、1%~5%としてもよい。ここで対象土壌は、採取した土壌そのままの水分を含有しているときの重量である(以下この状態の対象土壌を「原土」と呼ぶ場合がある)。
【0016】
ペブルと、対象土壌と、土壌改質材(任意)とを湿式ミルの容器に投入して混合する。ペブルの混合量は、粒径が75μm以上の粒子の存在割合によって好適な量が変わるが、対象土壌の重量を基準として0.1倍~100倍であってもよく、3倍~12倍であってもよく、5倍~8倍であってもよい。十分に混合したら、これに水と消石灰等のpH調整剤(下記の解泥補助剤)とを添加して混合する。水の添加量は、例えば対象土壌1kgあたり0.5L~3Lとしてもよく、0.8L~2.5Lとしてもよく、1L~2Lとしてもよい。
【0017】
湿式ミル内には解泥補助剤として消石灰(水酸化カルシウム)を添加してもよい。液性をアルカリ性にすることで解泥が促進される。消石灰を添加する場合、その添加量は対象土壌の重量を基準として0.1%~10%としてもよく、0.5%~8%としてもよく、3%~7%としてもよい。解泥補助剤は、例えば水酸化ナトリウムその他の物質であってもよい。ここでのpHは7~14であってもよく、9~13であってもよい。
【0018】
ペブルとしては、対象土壌中の砂礫を磨砕し、表面の雲母類鉱物又はイオン交換態を剥がすことができるものを使用する。形状は、球状でないことが好ましく、多面体や平板のように、角が立っている形状であることが好ましい。ここで「角が立っている形状」とは、少なくとも三つの面の端部が集合している部分を有することをいう。材質としては、金属、合金、金属酸化物又は金属複合酸化物であってもよく、またペブルからの汚染物がないことから砂礫であってもよい。砂礫は、対象土壌とは別の土壌から分級して得た砂礫であってもよく、対象土壌を分級して得た砂礫であってもよい。砂礫は対象土壌中の砂礫と比重が近いことから、湿式ミル内での撹拌効率が高いので好ましい。
【0019】
ペブルの粒径は、2mm~18mmであるものを用いる。当該粒径は、3mm~14mmであることが好ましく、4mm~12mmであることがより好ましい。対象土壌の砂礫はこれらの範囲内である場合が多いので、ペブルの粒径がこれらの範囲内であると、対象土壌中の砂礫の表面を磨砕する効率が高い。ここで、用いるペブルは粒状の集合物であるので、例えば「粒径2mm~18mm」とは、ペブルの全体重量の80%以上がこの数値範囲に入ることをいう。ペブルの粒径の測定方法は、篩い分け法による。
【0020】
湿式ミルを稼働させ、回転により内容物を撹拌する。このとき、湿式ミルの外周移動距離(すなわち外周速度に解泥時間又は滞留時間を乗じた数値)は、解泥を十分なものとする観点から10m以上であることが好ましく、250m以上であることがより好ましく、500m以上であることが更に好ましい。遠心加速度として、0.1~0.6Gでもよく、0.4~0.5Gでもよい。
【0021】
湿式ミルで対象土壌とペブルとを撹拌すると、解泥や粉砕が進み、対象土壌の粒度分布が粒径の小さなほうへ偏っていく。撹拌時間を長くすると、砂礫に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態を剥離する機会が増大して粒径の大きな分画の放射能濃度を一層低下させることができるが、その一方でペブルによって雲母類鉱物又はイオン交換態が固着した砂礫自体が粉砕される機会も増大し、粒径が大きな分画の回収率が低下する傾向がある。反対に、撹拌時間を短くすれば、砂礫に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態を剥離する機会が減少して粒径の大きな分画の放射能濃度の低下度合いが小さくなるが、その一方でペブルによって雲母類鉱物又はイオン交換態が固着した砂礫自体が粉砕される機会が減少し、粒径が大きな分画の回収率が向上する傾向がある。対象土壌の初期放射能濃度や粒度分布に応じて、対象土壌とペブルとの量比や撹拌速度等を適宜調整することで、適切な撹拌時間を割り出すことができる。撹拌時間は例えば10秒~60分であってもよく、1分~30分であってもよい。
【0022】
撹拌終了後、湿式ミルから内容物全体(泥水)を取り出し、これを篩にかける。篩の目は、粒径が2mm以上の粒子、すなわちペブルや対象土壌に元々含まれていた粗大粒子を取り除くことができるものとする。篩は二段階に分けて行ってもよく、例えば一段目は目開き6mmの篩で、大きなペブル、植物屑、ゴミ、礫、瓦礫等の粗大物を取り除き、二段目で目開き2mmの篩で2mm~6mmの粒径を有する粒子(小さなペブルを含む)を取り除いてもよい。
【0023】
篩を通過した泥水を、その後、泥水のまま分級する。分級機としては例えばサイクロンセパレータを用いて、粒径が20μm以下の粒子を泥水として分離する。粒径が20μm以上の粒子を含む泥水は、その後の処理に移す。
【0024】
上記の篩による粗大粒子の分離、及び、サイクロンセパレータによる分級は、複数回繰り返してもよい。そのとき、泥水の流動性を考慮して必要に応じて加水してもよい。複数回のサイクロンセパレータの適用によってそれぞれ分離した「粒径が20μm以下の粒子を含む泥水」は全て混合し、濃縮し、脱水する。乾燥後、放射能濃度を分析する。他方、粒径が20μm以上の粒子を含む泥水は、最終回のサイクロンセパレータによる処理を経た後に、濃縮し、脱水してもよい。乾燥後、放射能濃度を分析する。
【0025】
他方、粒径が20μm以上の粒子を含む泥水は、最終回のサイクロンセパレータによる処理を経た後にすぐに濃縮するのではなく、再度湿式ミルにて撹拌し、更なる分級をしてもよい。以下、これについて説明する。
【0026】
新規のペブル又は上記の篩で分離回収したペブルと、粒径が20μm以上の粒子を含む泥水を湿式ミルの容器に再投入して混合する。ここでは、水や消石灰の添加は任意であり、泥水の流動性が低下しすぎている場合は水を添加してもよく、液性がアルカリ性でない場合は消石灰を添加してもよい。
【0027】
湿式ミルによる各種の撹拌条件は初回の撹拌時と同様でよい。
【0028】
湿式ミルによる撹拌を終えたら、湿式ミルから内容物全体(泥水)を取り出し、これを篩にかける。初回の篩によって粗大物は取り除かれているので、ここでは目開き2mmの篩を用いて2mm以上の粒径を有する粒子を取り除く。取り除かれるのは主にペブルであり、このペブルは再利用可能である。
【0029】
篩を通過した泥水を、その後、泥水のまま分級する。このとき、状況に応じて水を添加してもよい。分級機としては例えばサイクロンセパレータを用いて、粒径が20μm以下の粒子を泥水として分離する。その後、濃縮し脱水する。そして、乾燥後に放射能濃度を分析する。
【0030】
粒径が20μm以上の粒子を含む泥水をサイクロンセパレータから取り出し、これを例えば水簸-傾斜分級によって粒径が20μm~75μmの細砂を含む泥水と、粒径が75μm~2mmの砂を含む泥水とに分離し、それぞれ脱水する。そして、それぞれ乾燥後に放射能濃度を分析する。
【0031】
以上に説明した方法によれば、湿式ミルで対象土壌とペブルが撹拌されることにより、対象土壌中の砂礫の表面が磨砕され、固着している雲母類鉱物又はイオン交換態が剥離する(表面解泥)。雲母類鉱物又はイオン交換態は放射性セシウムが多く結合しており、且つ、分級によって粒径が小さい分画へ移行するので、放射性セシウムが粒径が小さい分画に濃縮される。他方、粒径が大きな分画は放射性セシウムの濃度が低下するので、資材としての再利用に供することができる。従来、粒径が大きな分画(2mm以上、又は75μm以上)の粒子は放射性セシウムの濃度が低いことが知られていたが、本実施形態の解泥方法によれば、雲母類鉱物又はイオン交換態が固着している花崗岩由来の砂礫を含む土壌から放射性セシウムを十分に分離することができるので、その後の分級で得られる粒径が大きな分画の放射能濃度を、従来知られていた程度以上に低減することができる。
【0032】
特に、湿式ミルでの撹拌を二回行う場合は、初回の撹拌及びその後の篩や分級によって2mm以上の粒子や20μm以下の粒子がある程度分離されていること、及び、植物等に由来する有機物がある程度取り除かれていることから、二回目の撹拌による解泥効率が高くなる。
【0033】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、上記実施形態では対象土壌を始めから湿式ミルの容器に投入しているが、対象土壌に植物の屑やゴミが多く含まれていることが明らかな場合は、湿式ミルの前工程として、予備解泥機や篩を用いてそれらを取り除いてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では湿式ミルでの解泥を一回又は二回行う態様を示したが、湿式ミルでの解泥は三回以上行ってもよい。
【実施例
【0035】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0036】
使用した土壌、湿式ミル、土壌改質材は以下のとおりである。
<対象土壌>
花崗岩由来の砂礫を含む土壌として、以下の四種類を準備した。
・A除去土壌…実際の除去土壌(ただし除去場所不明)の土壌である。
・F除去土壌…実際の除去土壌(ただし除去場所不明)の土壌である。
・S汚染土壌…高放射線量の避難指示区域で採集した農地土壌の土壌である。
・N汚染土壌…高放射線量の避難指示区域で採集した農地土壌の土壌である。
<湿式ミル>
・容器…市販の900mL容器の磁性ポッドミル(外径130mm)
・ペブル…福島県伊達産の山砂、粒径4mm(測定方法:篩い分け法)、比重2.6t/m
<土壌改質材>
・土壌改質材A…商品名「泥DRY」(クニミネ工業株式会社製、主成分無機鉱物(グリーンタフ))を用いた。
・土壌改質材B…商品名「超吸水性樹脂」(ケニス株式会社製)
【0037】
(比較例1)
湿式ミルの容器にA除去土壌4kg、水7Lを投入して混合し泥水とした。泥水のpHは7.9であった。湿式ミルで37.9rpm(外周速度116cm/秒)で11分21秒間撹拌した。その後、泥水を容器から取り出し、目開き2mmの篩を持つ湿式振動スクリーンで篩分けした。篩を通過した泥水のpHは8.3であった。これをサイクロンセパレータで分級した。この分級では、粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した(これを分画Dとする)。分画Dを濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0038】
サイクロンセパレータで粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した残りの泥水を再度湿式ミルの容器に投入し、37.9rpm(相対遠心加速度0.47G、外周速度116cm/秒)で22分42秒間撹拌した。その後、泥水を容器から取り出し、目開き2mmの湿式振動スクリーンで篩分けした。篩を通過した泥水に対して加水した。加水後の泥水のpHは8.7であった。この泥水を再度サイクロンセパレータで分級し、粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した。この分離した泥水(これを分画Cとする。)を濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0039】
二度目のサイクロンセパレータで粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した残りの泥水を分級点75μmで水簸-傾斜分級した。粒径が小さい粒子を含む分画(これを分画Bとする。)と、粒径が大きい粒子を含む分画(これを分画Aとする。)とをそれぞれ濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0040】
分画A、B、C、Dはそれぞれ、粒径75μm~2mm(砂)、粒径20μm~75μm(細砂)、粒径0μm~20μm(細粒分)、粒径0μm~20μm(細粒分)の粒子を含んでいる。分画Dは、分画Cと粒径は同一であるが、湿式ミルでの撹拌が一回である場合の効果を確認するために、分画Cとは分けて分析した。それぞれの分画について、重量、重量割合、放射性セシウムの放射能濃度、放射性セシウムの重量分布、乾土基準低減率を求めた。
【0041】
これらの結果を表1に示す。表1中、放射性セシウムの放射能濃度はGe半導体検出器によるガンマ線スペクトロスコピーにより求めた。乾土基準低減率が負の値となっている部分は放射能が濃縮されたことを意味している。「合計(投入原土の計算値(乾土基準))」の項目は、各分画の値を合計して求めたものであり、特に重量については、投入原土に含まれていた水分を除いた重量に相当するものである。
【0042】
(実施例1)
湿式ミルの容器にA除去土壌4kg、水7L、ペブル33kg、消石灰0.28kg(原土の重量に対して7%)を投入して混合し泥水とした。泥水のpHは13.1であった。湿式ミルで37.9rpm(外周速度116cm/秒)で11分21秒間撹拌した。その後、泥水を容器から取り出し、目開き2mmの篩を持つ湿式振動スクリーンで篩分けした(ペブルはここで除去した)。篩を通過した泥水のpHは12.6であった。これをサイクロンセパレータで分級した。この分級では、粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した(これを分画Dとする)。分画Dを濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0043】
サイクロンセパレータで粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した残りの泥水を再度湿式ミルの容器に投入し、新規に追加したペブル33kgとともに37.9rpm(相対遠心加速度0.47G、外周速度116cm/秒)で22分42秒間撹拌した。その後、泥水を容器から取り出し、目開き2mmの湿式振動スクリーンで篩分けした(ペブルはここで除去された)。篩を通過した泥水に対して加水した。加水後の泥水のpHは11.7であった。この泥水を再度サイクロンセパレータで分級し、粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した。この分離した泥水(これを分画Cとする。)を濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0044】
二度目のサイクロンセパレータで粒径20μm以下の粒子を含む泥水を分離した残りの泥水を分級点75μmで水簸-傾斜分級した。粒径が小さい粒子を含む分画(これを分画Bとする。)と、粒径が大きい粒子を含む分画(これを分画Aとする。)とをそれぞれ濃縮し、脱水した。乾燥後、放射能濃度を分析した。
【0045】
分画A、B、C、Dはそれぞれ、粒径75μm~2mm(砂)、粒径20μm~75μm(細砂)、粒径0μm~20μm(細粒分)、粒径0μm~20μm(細粒分)の粒子を含んでいる。分画Dは、分画Cと粒径は同一であるが、湿式ミルでの撹拌が一回である場合の効果を確認するために、分画Cとは分けて分析した。それぞれの分画について、重量、重量割合、放射性セシウムの放射能濃度、放射性セシウムの重量分布、乾土基準低減率を求めた。
【0046】
これらの結果を表1に示す。表1中、放射性セシウムの放射能濃度はGe半導体検出器によるガンマ線スペクトロスコピーにより求めた。乾土基準低減率が負の値となっている部分は放射能が濃縮されたことを意味している。「合計(投入原土の計算値(乾土基準))」の項目は、各分画の値を合計して求めたものであり、特に重量については、投入原土に含まれていた水分を除いた重量に相当するものである。
【0047】
(実施例2)
一回目の湿式ミルによる撹拌時に土壌改質材Aを16g(原土の重量に対して0.4%)混合したこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。結果を表1に示す。
【0048】
(実施例3)
一回目の湿式ミルによる撹拌時に土壌改質材Aを160g(原土の重量に対して4%)混合したこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。結果を表2に示す。
【0049】
(実施例4)
対象土壌としてF除去土壌を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。結果を表2に示す。
【0050】
(実施例5)
一回目の湿式ミルによる撹拌時に土壌改質材Aを160g(原土の重量に対して4%)混合したこと以外は実施例4と同様にして、実験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
(実施例6)
二回目の湿式ミルによる撹拌時間を45分24秒に変更したこと以外は実施例5と同様にして、実験を行った。結果を表3に示す。
【0052】
(実施例7)
消石灰の添加量を0.12kg(原土の重量に対して3%)としたこと、及び、二回目の湿式ミルによる撹拌時間を45分24秒に変更したこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。結果を表3に示す。
【0053】
(実施例8)
一回目の湿式ミルによる撹拌時に土壌改質材Aを160g(原土の重量に対して4%)混合したこと、及び、二回目の湿式ミルによる撹拌時に土壌改質材Bを5g混合したこと以外は実施例1と同様にして、実験を行った。結果を表3に示す。
【0054】
(実施例9)
対象土壌としてS汚染土壌を用いたこと以外は実施例5と同様にして、実験を行った。結果を表4に示す。
【0055】
(実施例10)
対象土壌としてN汚染土壌を用いたこと以外は実施例5と同様にして、実験を行った。結果を表4に示す。
【0056】
(実施例11)
土壌改質材Aの添加量を80g(原土の重量に対して2%)としたこと以外は実施例10と同様にして、実験を行った。結果を表4に示す。
【0057】
(実施例12)
消石灰の添加量を消石灰0.12kg(原土の重量に対して3%)としたこと以外は実施例11と同様にして、実験を行った。結果を表5に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
比較例1では、分画A(粒径75μm~2mm)及び分画B(粒径20μm~75μm)の放射能濃度が、環境基準の8000Bq/kgよりも低い値となっている。このことは、分級して生じた粒径が大きな分画には放射性セシウムが比較的含まれていないという従来の知見と一致することである。実施例1~12では、分画Aの放射能濃度が比較例1の分画Aの放射能濃度よりもさらに低くなっている。また、実施例1~9では、分画Bの放射能濃度も比較例1の分画Bの放射能濃度よりも低くなっている。これらのことから、ペブルを用いた撹拌(実施例1~12)では、ペブルを用いない撹拌(比較例1)と比べて、粒径の大きな砂礫から放射性セシウムをより一層分離することができているといえる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、花崗岩由来の砂礫に固着している雲母類鉱物又はイオン交換態を剥がすことに利用することができる。雲母類鉱物又はイオン交換態には放射性セシウムが多く吸着している場合があるので、当該砂礫を含む土壌に対して本発明を適用し、分級した場合に、粒径の大きな分画の砂は放射性セシウムの濃度が一層低減されているので、再生資材として用いることができる。