(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】細胞傷害抑制剤、及びHO-1遺伝子の発現増加剤
(51)【国際特許分類】
A61K 35/644 20150101AFI20230712BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20230712BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230712BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20230712BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230712BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230712BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20230712BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230712BHJP
A23L 21/25 20160101ALI20230712BHJP
【FI】
A61K35/644 ZNA
A61P1/02
A61P43/00 105
A61K36/45
A61K8/98
A61K8/9789
A61Q11/00
A23L33/10
A23L21/25
(21)【出願番号】P 2019030895
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100201710
【氏名又は名称】田中 佑佳
(72)【発明者】
【氏名】服部 徳子
(72)【発明者】
【氏名】成田 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】市原 賢二
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107432877(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103409265(CN,A)
【文献】Food Chemistry,2012年,Vol.133,pp.329-336
【文献】J Periodontol,2012年,Vol.83, No.9,pp.1116-1121
【文献】J Food Sci Technol,2018年,Vol.55, No.2,pp.586-597
【文献】Aliment Pharmacol Ther,2003年,Vol.18,pp.853-874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A23L 33/00-33/29
A23L 21/00-21/25
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブルーベリー蜂蜜を有効成分とし、前記ブルーベリー蜂蜜がHO(hemeoxygenase)-1遺伝子の発現量を増加させ
、口腔内細胞の傷害を抑制することを特徴とする、細胞傷害抑制
剤。
【請求項2】
ブルーベリー蜂蜜を有効成分とする、
口腔内細胞のHO(heme oxygenase)-1遺伝子の発現量増加
剤。
【請求項3】
濃度0.6%(w/v)以上で用いられる
、請求項
1に記載の細胞傷害抑制剤、又は請求項
2に記載の発現量増加剤。
【請求項4】
前記ブルーベリー蜂蜜はカナダ産である
、請求項
1に記載の細胞傷害抑制剤、又は請求項
2に記載の発現量増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物、飲食品組成物、及び細胞傷害抑制剤に関する。より詳しくは、優れた細胞傷害抑制効果を持ち、かつ、安全な組成物及び細胞傷害抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内は、歯を除いて、口腔粘膜と呼ばれる粘膜の一種で覆われている。口腔粘膜に発生する疾患として、健常者においても広く症状が現れるアフタ性口内炎や、カタル性口内炎、潰瘍性口内炎等が知られている。
【0003】
例えば、アフタ性口内炎は、口腔粘膜に直径数mm程度の灰白色斑をつくり、痛みを伴い、悪化すると灰白色斑から滲み出るように出血する。摂食時には食べ物による刺激によって、強い痛みを伴うことがあり、重度の場合には摂食不能となる場合もある。このアフタ性口内炎は、最も多いとされる口内炎の種類であり、その発症に酸化ストレスの増加が関与していることが知られている。
【0004】
また、口内炎は、抗がん剤による化学療法や放射線治療を受ける患者の口に発生する副作用の中で最も頻度が高いと言われている。抗がん剤はその作用メカニズムの一つとして、活性酸素を出し、癌細胞を死滅させる働きがある。しかし、抗がん剤は癌細胞以外にも作用してしまうため、正常な細胞も活性酸素によってダメージを受けてしまい、それが口内炎として現れる。また、放射線治療においては、放射線を口腔内に照射すると、その部分で放射線が水分と反応して活性酸素を発生させる。このように、抗がん剤による化学療法や放射線治療では、活性酸素と口内炎との関連性があることが知られており、これを予防するために活性酸素を抑制することが望ましいとされている。
【0005】
従来、口内炎の治療には、抗生物質、安息香酸エチル、キシロカイン、副腎皮質ホルモン剤等の薬剤が投与されてきた。また、近年では、ラフチジン及び/又はその塩を有効成分として含有する薬剤等も開発されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来、口内炎の治療に用いられている薬剤は、乱用すると副作用があるため、医師の指導下で慎重に使わなければならなかった。また、予防的にこれらの薬剤を連用することもほとんどできなかった。そのため、効果が高くて副作用も少なく、連用しても安全な新たな組成物の開発が望まれているという実情がある。
【0008】
そこで、本発明では、優れた細胞傷害抑制効果を持ち、かつ、安全な組成物及び細胞傷害抑制剤を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、ブルーベリー蜂蜜を有効成分とし、前記ブルーベリー蜂蜜がHO(heme oxygenase)-1遺伝子の発現量を増加させ、口腔内細胞の傷害を抑制することを特徴とする、細胞傷害抑制剤を提供する。
また、本発明では、ブルーベリー蜂蜜を有効成分とする、口腔内細胞のHO(heme oxygenase)-1遺伝子の発現量増加剤も提供する。
本発明に係る細胞傷害剤、又は本発明に係る発現量増加剤は、濃度0.6%(w/v)以上で用いられてもよい。
また、前記ブルーベリー蜂蜜はカナダ産であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた細胞傷害抑制効果を持ち、かつ、安全な組成物及び細胞傷害抑制剤を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】A及びBは、ブルーベリー蜂蜜と他の蜂蜜の細胞傷害抑制効果を比較した図面代用グラフである。
【
図2】A及びBは、ブルーベリー蜂蜜と他の蜂蜜の細胞傷害抑制効果を比較した図面代用グラフである。
【
図3】ブルーベリー蜂蜜の各濃度における細胞傷害抑制効果の評価結果を示した図面代用グラフである。
【
図4】ブルーベリー蜂蜜を事前添加した際の細胞傷害抑制効果の評価結果を示した図面代用グラフである。
【
図5】作用機序の検討結果を示した図面代用グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。
以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0015】
1.口腔用組成物
本発明に係る口腔用組成物は、ブルーベリー蜂蜜を有効成分とすることを特徴とする。
【0016】
本発明において、ブルーベリー蜂蜜は、ブルーベリー(Blueberry)を蜜源植物とするものであればよく、ブルーベリーの種類や品種は特に限定されない。また、その産地も特に限定されず、例えば、カナダ産とすることができ、より具体的には、ケベック州やブリティッシュコロンビア州で採蜜されたものとすることができる。
【0017】
本発明に係る口腔用組成物におけるブルーベリー蜂蜜の配合量は特に制限されず、適宜選定することができる。
【0018】
本発明に係る口腔用組成物の用途は特に限定されず、その優れた細胞傷害抑制効果に基づき口腔部に生じる各種疾患の予防及び/又は治療に用いることができるが、口内炎の予防及び/又は治療に用いられることが好ましい。なお、本明細書において「口内炎」とは、基本的には口腔粘膜に発生する炎症を意味するが、口腔の外側近傍に起こる炎症である「口唇炎」、「口角炎」と称される疾患をも含む広い概念である。
【0019】
また、本発明では、口内炎の中でも、酸化ストレスや活性酸素と関連があるとされている口内炎の予防及び/又は治療に用いられることがより好ましい。具体的には、アフタ性口内炎や抗がん剤による化学療法或いは放射線治療を受ける患者の口に発生する口内炎の予防及び/又は治療に用いられることが挙げられる。
【0020】
本発明に係る口腔用組成物は、従来公知の方法により製造することができ、例えば、液体、液状、ゲル状、ペースト状、ガム状、固形物等とすることができる。具体的には、例えば、歯磨(例えば、練歯磨、潤性歯磨、液状歯磨、液体歯磨、マウスウォッシュ等)、ペースト状組成物(例えば、口腔用パスタ、歯肉マッサージクリーム等)、口腔清涼剤(例えば、タブレット、チューインガム、トローチ、キャンディー、可食性フィルム、スプレ-等)等とすることができる。
【0021】
本発明に係る口腔用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、公知の任意成分を適宜配合することができる。具体的には、研磨剤、粘結剤、粘稠剤(湿潤剤)、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、各種有効成分、溶剤、pH調整剤等を配合し得る。
【0022】
以下、任意成分の具体例を示すが、本発明に係る口腔用組成物に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。
【0023】
研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
粘結剤としては、例えば、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
粘稠剤(湿潤剤)としては、例えば、ソルビトール、アラビトール等の糖アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を用いることができる。具体的には、例えば、N-アシルアミノ酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩等のアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミドなどのノニオン界面活性剤等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
甘味剤としては、例えば、砂糖、果糖、オリゴ糖、麦芽糖等の糖類、サッカリンナトリウム、アスパラテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチンアセスルファムカリウム、スクラロース、ソーマチン、グリチルリチン酸ニナトリウム、ステビア抽出物、甘草抽出物、タウマチン、D-キシロース、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0028】
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウム等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0029】
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及びこれら天然香料の加工処理(例えば、前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、l-メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる従来公知の香料素材を組み合わせて用いることができる。
【0030】
各種有効成分としては、例えば、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩等の抗炎症剤、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素剤、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤等が挙げられる。
【0031】
溶剤としては、例えば、エタノール、水等を配合することができる。
【0032】
pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の酸やアルカリ、緩衝剤等が挙げられる。
【0033】
2.飲食品組成物
本発明では、ブルーベリー蜂蜜を含む、口内炎の予防及び/又は治療に用いられる、飲食品組成物も提供する。
【0034】
本発明に係る飲食品組成物は、その優れた口内炎の予防及び/又は治療効果を利用して、ヒト若しくは動物用の、口内炎の予防及び/又は治療等の用途をコンセプトとする健康食品、機能性食品、病者用食品、経腸栄養食品、特別用途食品、保健機能食品、及び前述した用途等が表示された特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等の有効成分として、これらに配合して使用することが可能である。
【0035】
本発明に係る飲食品組成物を用いて提供される飲食品は、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態は問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等の他、例えば、小麦粉製品、即席食品類、農産加工品、水産加工品、畜産加工品、乳・乳製品、油脂類、基礎調味料、複合調味料・食品類、冷凍食品、菓子類、飲料類、これら以外の市販食品等にすることができる。
【0036】
乳製品としては、例えば、発酵乳、乳飲料、乳酸菌飲料、加糖れん乳、脱脂粉乳、加糖粉乳、調整粉乳、クリーム、チーズ、バター、アイスクリーム類等が挙げられる。小麦粉製品としては、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等が挙げられる。即席食品類としては、例えば、即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰め、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰め、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食等が挙げられる。農産加工品としては、例えば、農産缶詰め、果実缶詰め、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等が挙げられる。水産加工品としては、例えば、水産缶詰め、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等が挙げられる。畜産加工品としては、例えば、畜産缶詰め・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等が挙げられる。油脂類としては、例えば、バター、マーガリン類、植物油等が挙げられる。基礎調味料としては、例えば、しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢等が挙げられる。複合調味料・食品類としては、例えば、調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等が挙げられる。冷凍食品としては、例えば、素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等が挙げられる。
【0037】
菓子類としては、例えば、キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子等が挙げられる。飲料類としては、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等が挙げられる。前記以外の市販食品としては、例えば、ふりかけ、お茶潰けのり等が挙げられる。
【0038】
3.細胞傷害抑制剤
本発明では、ブルーベリー蜂蜜を有効成分とする、細胞傷害抑制剤も提供する。
【0039】
本発明に係る細胞傷害抑制剤は、その優れた細胞傷害抑制効果を利用して、細胞傷害に関連する各種疾患の予防及び/又は治療に有用である。また、本発明に係る細胞傷害抑制剤は、その用途に基づく医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態で用いることができる。
【0040】
本発明に係る細胞傷害抑制剤によって抑制される細胞傷害は特に限定されないが、活性酸素に基づくものであることが好ましく、過酸化水素に基づくものであることがより好ましい。
【0041】
また、本発明に係る細胞傷害抑制剤にとって保護される細胞は特に限定されないが、口腔内細胞であることが好ましく、頬粘膜由来細胞であることがより好ましい。
【0042】
本発明に係る細胞傷害抑制剤は、従来公知の医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等に添加して調製することもできるし、その原料中に該細胞傷害抑制剤を混合して新たな医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等を製造することもできる。本発明に係る細胞傷害抑制剤を、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等として用いる際には、そのまま、又は濃縮してから、或いは固体状、顆粒状又は粉末状に加工してから用いてもよい。また、本発明に係る細胞傷害抑制剤は、従来公知の又は将来的に見出される細胞傷害抑制効果を有する化合物等と併用することも可能である。
【実施例】
【0043】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0044】
<<実験例1:細胞傷害抑制評価>>
実験例1では、各種蜂蜜の細胞傷害抑制効果を評価した。なお、過酸化水素により細胞傷害を誘発したヒト頬粘膜扁平上皮癌由来細胞株(HO-1-N-1細胞)は、口内炎モデル細胞として知られている(Jpn. J. Pharm. Health Care Sci., 35(4), pp.247-253, 2009)。
【0045】
〔実験材料〕
・HO-1-N-1細胞(細胞番号JCRB0831):ヒト頬粘膜扁平上皮癌由来細胞株(Proc. Jpn. Cancer Assoc., 45, pp.242-242, 1986)、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 JCRB細胞バンクより購入
・ダルベッコ変法イーグル培地/F12[1:1]培地:DMEM/F12[1:1](富士フイルム和光純薬株式会社)
・ウシ胎児血清:FETALBOVINE SERUM(PAN Biotech、以下「FBS」と略記)
・Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline (-):(富士フイルム和光純薬株式会社、以下「D-PBS (-)」と略記)
・抗生物質:penicillin(10,000U/mL)/streptomycin(10,000μg/mL)混合液(ナカライテスク株式会社)
・過酸化水素:(ナカライテスク株式会社、以下「H2O2」と略記)
・ブルーベリー蜂蜜
・マヌカ蜂蜜
・百花蜂蜜
・クローバー蜂蜜
・アカシア蜂蜜
・モミの木蜂蜜
・サクランボ蜂蜜
・ジャラ蜂蜜
・クリ蜂蜜
・Cell Counting Kit-8(以下「CCK-8」と略記)(株式会社同仁化学研究所)
・96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
・フィルター(ポアサイズ0.45μm、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社)
【0046】
〔各試薬の調製〕
・非働化FBS:凍結保存されたFBSを室温にて融解し、56℃、30分間処理した後、分注して、-20℃で凍結保存されたものを使用した。
・基本培地:DMEM/F12[1:1] 40mLに、非働化したFBS 4mL(終濃度9%)と、抗生物質0.2mL(終濃度50IU/mLペニシリン-50μg/mLストレプトマイシン)を混和した。
・H2O2:H2O2をD-PBS (-)で希釈し、20mMのH2O2溶液を調製した(用時調製)。
・各蜂蜜に基本培地を混和して25%(w/v)希釈液を調製し、0.45μmフィルターでろ過した。25%(w/v)希釈液をさらに基本培地で希釈し、蜂蜜0.16%~5.00%(w/v)の希釈液を調製した。
【0047】
〔細胞傷害抑制効果の評価方法〕
96ウェルプレートに7500cells /100μL /ウェルでHO-1-N-1細胞を播種し、37℃、5%CO2インキュベーター内で培養した。約24時間培養後、各ウェルから培地を除去し、コントロールのウェルにはH2O2を含む培地を添加した(終濃度1mM)。同様に、被験試料のウェルには0.63、1.25及び2.50%(w/v)の蜂蜜希釈液95μL(終濃度0.60%、1.19%及び2.38%)(ブルーベリー蜂蜜のみ、これに加えて0.16及び0.32%(w/v)の蜂蜜希釈液95μL(終濃度0.15%及び0.30%))と20mMのH2O2を5μL(終濃度1mM)添加した。なお、H2O2及び被験試料を添加していないウェルを無処理群、細胞を含まない培地のみのウェルをブランクとした。各プレートにおいて3ウェルを同じ処理とした(n=3)。なお、コントロールのみ6ウェルとした。H2O2添加3時間後の細胞生存率をCCK-8 assay法で測定した。
【0048】
〔CCK-8assay法〕
96ウェルプレートの各ウェルから培養液を除去し、D-PBS (-)で2回洗浄した後、全ウェルに9%CCK-8液(91%は基本培地)各110μLを添加した。37℃、5%CO2インキュベーター内で90分間反応させた後、450nmの吸光度をプレートリーダー(Powerscan HT、DSファーマバイオメディカル株式会社)で測定した。
【0049】
各サンプルの細胞生存率(%)は、下記の式により算出した。
細胞生存率(%)=[(As-Ab)/(Ac-Ab)]×100
As:被験試料群の吸光度(細胞、被験試料及びH2O2を含むウェル)
Ac:無処理群の吸光度(細胞を含み、被験試料及びH2O2を含まないウェル)
Ab:ブランクの吸光度(細胞を含まず、培地のみのウェル)
【0050】
〔統計解析〕
Bartlett検定により各群の分散が等分散であることを確認したのち、Dunnettの多重比較検定を実施した。なお、各濃度の蜂蜜の細胞傷害抑制効果について、蜂蜜を添加せずに1mMのH2O2を処理した群を対照とした。有意水準5%未満(p<0.05)の場合に統計学的に有意であると判定した。
【0051】
<試験結果>
図1及び2に、ブルーベリー蜂蜜(終濃度1.19%)と他の蜂蜜の細胞傷害抑制効果を比較した結果を示す。また、
図3に、ブルーベリー蜂蜜の各濃度における細胞傷害抑制効果の評価結果を示す。
【0052】
<考察>
9種類の蜂蜜を評価したところ、ブルーベリー蜂蜜は約1%の添加により、過酸化水素誘発細胞傷害に対して保護作用を示した。一方で、高い抗菌活性が知られているマヌカ蜂蜜、及び高い抗酸化作用が知られているクリ蜂蜜は(J Food Biochem., 41(3), pp.1-12, 2017)、過酸化水素誘発細胞傷害に対して保護作用を示さなかった。
【0053】
また、ブルーベリー蜂蜜の濃度と細胞傷害抑制効果についても検討したところ、ブルーベリー蜂蜜は、0.6%という低濃度の添加においても、有意な細胞傷害抑制効果を示すことが判明した。
【0054】
更に、本願発明者らは、ブルーベリー蜂蜜のロットや産地を変更して、その細胞傷害抑制効果についても検討したが、いずれのブルーベリー蜂蜜もほぼ同等の細胞傷害抑制効果を示すことが分かった。
【0055】
<<実験例2:ブルーベリー蜂蜜の事前添加による細胞傷害抑制評価>>
実験例2では、ブルーベリー蜂蜜を事前添加した際の細胞傷害抑制効果を評価した。
【0056】
実験材料、各試薬の調製、CCK-8assay法、及び統計解析については、前述した実験例1に準じた。
【0057】
〔細胞傷害抑制効果の評価方法〕
HO-1-N-1細胞の播種数及び培養条件は実験例1に準じた。各ウェルから培地を除去し、0.31%~2.50%(w/v)のブルーベリー蜂蜜希釈液100μLを添加した。24時間培養後、D-PBS(-)で2回洗浄し、基本培地95 μLと20 mMのH2O2を5μL(終濃度1mM)添加した。コントロールのウェルには蜂蜜の代わりに培地を用いて同様の処理を行った。H2O2添加3時間後の細胞生存率をCCK-8 assay法で測定した。
【0058】
<試験結果>
図4に、ブルーベリー蜂蜜を事前添加した際の細胞傷害抑制効果の評価結果を示す。
【0059】
<考察>
ブルーベリー蜂蜜を事前添加した場合においても、有意な細胞傷害抑制効果が確認された。そのため、ブルーベリー蜂蜜を予防的に用いても十分な効果が発揮されることが示唆された。また、ブルーベリー蜂蜜は安全性が高く、予防等を目的として、長期間使用したとしても副作用等の心配がないと考えられる。
【0060】
<<実験例3:作用機序に対する検討>>
実験例3では、ブルーベリー蜂蜜の細胞傷害抑制効果の作用機序について検討を行った。
【0061】
〔実験材料〕
・Isogen II(株式会社ニッポンジーン)
・SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCR(インビトロジェン株式会社)
・Platinum(登録商標) SYBR(登録商標) Green qPCR SuperMix-UDG(インビトロジェン株式会社)
・定量PCR用96ウェルプレート(BIO-BIK、株式会社イナ・オプティカ)
・PCRプライマー
[1]定量PCR用ヒトheme oxygenase 1(HO-1)遺伝子プライマー
・h HO-1 forward primer;AAGACTGCGTTCCTGCTCAA(配列番号1)
・h HO-1 reverse primer;GGCAGAATCTTGCACTTTGTTG(配列番号2)
[2]定量PCR用ヒトglyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH、内部標準)遺伝子プライマー
・h GAPDH forward primer;AAGGTGAAGGTCGGAG(配列番号3)
・h GAPDH reverse primer;GGGGTCATTGATGGCA(配列番号4)
【0062】
〔細胞試験〕
HO-1-N-1細胞の播種数及び培養条件は実験例1に準じた。各ウェルから培地を除去し、コントロールのウェルにはH2O2(終濃度1mM)を含む培地を添加した。同様に、被験試料のウェルには1.25%(w/v)のブルーベリー蜂蜜或いはアカシア蜂蜜の希釈液95μL(終濃度はともに1.19%(w/v))と20mMのH2O2を5μL(終濃度1mM)添加した。なお、H2O2の代わりにD-PBS(-)を添加したウェルにおいて、各被験試料単独での影響についても評価した。以後の実験に必要なRNA量を確保するため、各プレートにおいて16ウェルを同じ処理とした。H2O2添加3時間後、全ウェルから培地を除去し、Isogen IIを各50μL添加した。16ウェル分をまとめて回収し、以後の実験に使用した。なお、継代回数60、62及び64の細胞を用いて同様の試験を3回実施した。
【0063】
〔Total RNA抽出〕
細胞からのRNA抽出は、Isogen IIのプロトコルに従って実施した。すなわち、Isogen IIで回収した細胞溶解液(800μL)をボルテックスし、0.4倍量の滅菌済ミリQ水を加えた。15秒間ボルテックスし、室温で15分間静置した。12000rpmで15分間遠心分離し、上清800μLを新しいチューブに移した。等量(800μL)のイソプロパノールを添加し、転倒混和した後、室温で10分間静置した。12000rpmで10分間遠心分離し、上清を除去した。沈殿に75%エタノールを1mL添加し、11000rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した。室温で10分間乾燥させた後、12μL滅菌済ミリQ水を加え、ボルテックスし、沈殿を溶解させた。各サンプルの吸光度からRNA濃度を算出し、全て0.05μg /μLに希釈した。なお、アガロース電気泳動における28S及び18S rRNA比から、RNAの分解がないことを確認した。
【0064】
〔逆転写PCR〕
SuperScript(登録商標) III First-Strand Synthesis SuperMix for qRT-PCRを用いて、total RNAからcDNAを合成した。すなわち、total RNA 4 μL(0.2 μg)を2×RT Reaction Mix 5μL及びRT Enzyme Mix 1μLと混合し、PCR用8連チューブに入れて、定量PCR装置(7300 Real Time PCR system、Applied Biosystems)にセットした。25℃ 10分間、50℃ 30分間、85℃ 5分間反応させ、4℃で静置した。氷上で各チューブにRNaseH 0.5 μLを加え、再び定量PCR装置にセットし、37℃ 20分間反応させcDNAを合成した。cDNA溶液の一部を合一して、検量線用とした。個別チューブに滅菌済ミリQ水を加え、5倍希釈cDNA溶液とした。使用時まで-20℃で保存した。
【0065】
〔定量PCR〕
Platinum(登録商標) SYBR(登録商標) Green qPCR SuperMix-UDGを用いて、定量PCR解析を実施した。すなわち、5倍希釈cDNA溶液にSuper Mix、ROX、プライマー(濃度HO-1:200nM、GAPDH:300 nMで使用)及び滅菌済ミリQ水を混合した後、定量PCR(7300 Real Time PCR system、Applied Biosystems)を実施した。PCR条件は、50℃ 2分間、95℃ 2分間に続き、〈95℃ 15秒間、60℃ 1分間〉を40サイクルとした。検量線用cDNA混合物を段階希釈(2.5倍、5倍及び10倍)して、遺伝子毎の検量線を作成した。データ解析は、検量線の直線性が得られるThresholdを設定し、各サンプルのCt値から相対定量値を求めた(Qty)。これをGAPDHの相対定量値で補正し、コントロール群の平均値を1とした相対発現量を計算した(ratio)。定量PCRは1遺伝子1回実施した。
【0066】
〔統計解析〕
各群の分散をBartlett検定により等分散であることを確認したのち、Dunnettの多重比較検定を実施した。被験試料単独の影響を評価するために、コントロール群を対照として蜂蜜添加群を比較した。H2O2添加時における蜂蜜の影響を評価するため、H2O2添加群を対照としてH2O2+蜂蜜群を比較した。有意水準5%未満(p<0.05)の場合に統計学的に有意であると判定した。
【0067】
【0068】
<考察>
HO(ヘムオキシゲネース)-1は、有害な遊離ヘムを分解することに加え、抗炎症作用を持つ一酸化炭素(CO)及び抗酸化物質として働くビリルビンを産生することにより、細胞を酸化ストレスから防御していると考えられている。遺伝子発現解析の結果、ブルーベリー蜂蜜のみの処理でHO-1遺伝子発現量が有意に増加し、また、H2O2との同時処理によってHO-1遺伝子発現量が有意に増加することが分かった。一方で、細胞傷害抑制効果が認められなかったアカシア蜂蜜では、アカシア蜂蜜のみ処理及びH2O2との同時処理のいずれの場合においてもHO-1遺伝子発現量の増加は認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る組成物及び細胞傷害抑制剤は、優れた細胞傷害抑制効果を有する。また、その有効成分がブルーベリー蜂蜜であることから、高い安全性を有しており、長期間使用したとしても副作用等の心配がなく、細胞傷害に関連する各種疾患の予防及び/又は治療など、幅広い分野で有用である。
【配列表】