(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】モータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20230712BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20230712BHJP
F16H 1/22 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H02K7/116
F16H1/16 Z
F16H1/22
(21)【出願番号】P 2019047516
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健太郎
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-096064(JP,U)
【文献】特開2009-149160(JP,A)
【文献】実開昭59-011951(JP,U)
【文献】特開2009-022136(JP,A)
【文献】特開2006-058387(JP,A)
【文献】特開2006-238613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/16
F16H 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在に保持されたシャフトを有する一対のモータと、
前記シャフトにそれぞれ一つずつ固着された一対の動力ギアと、
前記一対の動力ギアと歯合している一対の伝達ギアと、
前記一対の伝達ギアのうち
一方の前記伝達ギアにのみ設けられ、
一方の前記伝達ギアと回転軸を同じにするウォームギアと、
前記ウォームギアと歯合するウォームホイールと、
前記ウォームホイールにより駆動される出力軸と、
これらを収容するケースと、を備え、
前記一対のモータは出力面を同方向に向けるように並列配置されていて、
前記一対の伝達ギアは互いに歯合していて、
前記一対のモータは回転方向が逆であ
り、
一方の前記伝達ギアは一方の前記モータの駆動トルクを直接前記ウォームギアに伝達し、他方の前記伝達ギアは一方の前記伝達ギアを介して他方の前記モータの駆動トルクを前記ウォームギアに伝達することにより、一対の前記モータの駆動トルクが合算された状態で、前記ウォームギアに伝達される、
ことを特徴とする、
モータアクチュエータ。
【請求項2】
前記一対のモータは同特性のものであり、前記一対の動力ギアが同形状であり、前記一対の伝達ギアが同形状であることを特徴とする請求項1に記載のモータアクチュエータ。
【請求項3】
前記モータは、モータヨークの外周の一部を平面形状としたことを特徴とする請求項1および請求項2のいずれか1項に記載のモータアクチュエータ。
【請求項4】
前記動力ギアおよび前記伝達ギアは平歯車、もしくは、はすば歯車であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のモータアクチュエータ。
【請求項5】
前記ウォームギアは、前記伝達ギアから前記モータの反出力方向に向かって形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のモータアクチュエータ。
【請求項6】
前記一対のモータはそれぞれのモータヨークが間隙を介して並列するように配置されており、前記出力軸は
前記間隙に設けられていることを特徴とする請求項5に記載のモータアクチュエータ。
【請求項7】
前記ウォームギアと前記ウォームホイールは並列配置された前記一対のモータの上方に配設されており、前記出力軸は前記一対のモータの上方から下方に向かって前記間隙を通って伸びており、前記ケースの底板から外部に出力していることを特徴とする請求項6に記載のモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば小型マッサージ機を作動させるためのモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のモータアクチュエータは、動力源となる1つのモータの回転を複数のギアによって減速して出力軸を駆動している。このとき、減速比を大きくするためウォームギアとウォームホイールを用いているものがある。
【0003】
従来例でのモータアクチュエータ70の構成を
図7に示す。モータ71は回転自在なシャフト72を備え、シャフト72にはウォームギア73が圧入されていて、このウォームギア73はウォームホイール74と歯合している。ウォームホイール74の回転が出力ギア75を減速されながら伝わり、出力軸76において必要な駆動トルクを発生させる。
【0004】
このような構造のモータアクチュエータにおいて、出力トルクを増やしたい際は、モータの回転力自体を増す方法と、ギア間の減速比を大きくする方法が採られる。しかし、前者の方法ではモータ形状が大きくなり、伴い振動も増えるという欠点がある。また後者の方法では減速比が大きくなった分、モータの回転数を増やす必要があり、騒音の周波数が上がるため使用者の不快感が強くなる欠点がある。
【0005】
そこでモータの大型化を防ぎ、かつ、モータの回転数を増やすことなく出力トルクを増やす方法として、モータを複数台組み合わせて使用する提案がなされている。
【0006】
特許文献1に記載のモータアクチュエータは、複数台のモータと、モータの各出力に設けられた各出力ギアと、この出力ギアと直接または間接的に繋がった最終ギアを有し、各出力ギアによる回転力が、最終ギアに伝わる直前で同方向かつ同一速度になるようにモータを制御している。そのため、最終的に必要な出力トルクを確保しつつも、全体的な薄型や小型化が可能になるとされている。
【0007】
特許文献2に記載のアクチュエータは、最終的な出力(回転軸)となる1個のウォームホイールに2個のモータの各出力軸に設けられたウォームギアを歯合することによって、1個の回転軸を2個のモータで駆動制御するようにしている。そのため、アクチュエータやギアを大型化することなく安定して使用でき、また片方を制動に利用することでブレーキ制御も容易に行えるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4989441号公報
【文献】特開2007-215303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のモータアクチュエータはモータ、出力ギア、出力軸が一直線上に並ぶため、モータアクチュエータ全体として、特にモータの軸方向の形状が大となる。またギアがすべて平歯車で構成されているため、セルフロック機構がなく、被駆動対象を所定の位置に留めたい時はブレーキやクラッチといった機構が必要になるという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に記載されたアクチュエータは、2つのウォームギアを直接、出力軸となるウォームホイールに歯合しているため、モータの近接配置が困難となり、互いに出力軸を挟んで反対方向への設置となるため、モータの軸方向における形状が大となる。また、一般にウォームギアにおける回転力の伝達は低効率であり、かつばらつきが大きいため、2つのウォームギアから1つのウォームホイールへの回転力の伝達に不平衡を生じやすく、これが効率の低下、動作の不安定に繋がる可能性があるという問題点がある。
【0011】
そこで、本発明は、2台のモータを使って出力軸の回転力を大としつつも、モータアクチュエータ全体としての形状や騒音周波数を大きくすることのないモータアクチュエータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施態様は、
回転自在に保持されたシャフトを有する一対のモータと、前記シャフトにそれぞれ一つずつ固着された一対の動力ギアと、前記一対の動力ギアと歯合している一対の伝達ギアと、前記一対の伝達ギアのうち一方の前記伝達ギアにのみ設けられ、一方の前記伝達ギアと回転軸を同じにするウォームギアと、前記ウォームギアと歯合するウォームホイールと、前記ウォームホイールにより駆動される出力軸と、これらを収容するケースと、 を備え、
前記一対のモータは出力面を同方向に向けるように並列配置されていて、
前記一対の伝達ギアは互いに歯合していて、
前記一対のモータは回転方向が逆であり、
一方の前記伝達ギアは一方の前記モータの駆動トルクを直接前記ウォームギアに伝達し、他方の前記伝達ギアは一方の前記伝達ギアを介して他方の前記モータの駆動トルクを前記ウォームギアに伝達することにより、一対の前記モータの駆動トルクが合算された状態で、前記ウォームギアに伝達される、
ことを特徴とするモータアクチュエータである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のモータアクチュエータは、2台のモータの回転力を足し合わせてからウォームギアに伝え、ウォームギアと歯合したウォームホイールにより出力軸を駆動する構造となっているため、二つのモータの回転力を安定して足し合わせることができるとともに、アクチュエータ全体としての小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るモータアクチュエータ1の完成品であって、(a)は上面斜視図であり、(b)は下面斜視図である。
【
図2】(a)は
図1(a)の下ケースとモータと動力ギアのみを示した斜視図であり、(b)は
図2(a)にさらに上ケースを設けた斜視図である。
【
図3】(a)は
図2(b)にさらに伝達ギア、ウォームギア、ウォームホイール、出力軸を設けた斜視図であり、(b)は上面カバーの斜視図である。
【
図4】(a)は
図3(a)における各種ギアの回転方向を示した斜視図であり、(b)は正面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態を図示したものであり、各種ギアを覆っているカバーを除いた上面斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態における他の構成を概略的に示した正面図である。
【
図7】従来のモータアクチュエータの構造を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書では、
図2(a)および
図4(a)において、モータのシャフトが突出する方向を「出力方向」、その反対方向を「反出力方向」と呼び、モータのシャフトが突出する面を「出力面」と呼ぶ。また、
図4(b)において上方向を単に「上方向」、その反対方向を単に「下方向」と呼ぶ。
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を例示的に説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係るモータアクチュエータの構造を
図1から
図3を用いて説明する。モータアクチュエータ1は、一対のモータ10a,10bと、一対の動力ギア11a,11bと、一対の伝達ギア20a,20bと、ウォームギア22と、ウォームホイール30と出力軸31と下ケース41と上ケース43と上部カバー47とを有する。
【0018】
下ケース41は、モータを設置できるように成型された底板41aと、底板41aの周縁から立設された側板41bと、側板41bにより形成された開口端部を有する。底板41aには出力軸31を貫通させるための出力軸貫通孔42が設けられている。
【0019】
一対のモータ10a、10bは、出力面を同一方向に向けた状態で下ケース41内に並列設置されており、それぞれ回転自在なシャフト12a、12bを有している。動力ギア11a、11bがそれぞれシャフト12a、12bに圧入などの方法によって固着されている。動力ギア11aと11bは同形状としている。
【0020】
上ケース43は、上板43aと、上板43aの周縁から下設された側板43bと、側板43bにより形成された開口端部を有する。上ケース43の開口端部が下ケース41の開口端部に組み込みされて所定の内部空間を有するハウジングが形成される。上板43aには出力軸31を貫通させるための出力軸貫通孔46aが設けられている。
【0021】
上ケース43の上面側も部分的に開口しており、一対の伝達ギア20a、20bがそれぞれシャフト21a、21bを回転中心にして収容されている。伝達ギア20aと20bは同形状としている。シャフト21a、21bは、伝達ギア20a、20bに圧入などの方法によって固着されており、それぞれ伝達ギア軸受溝44とウォームギア軸受溝45に保持されている。伝達ギア20a、20bはそれぞれ動力ギア11a、11bと歯合しており、かつ、伝達ギア20aおよび20bも歯合している。
【0022】
一方の伝達ギア20bには、伝達ギア20bからモータ10bの反出力方向に向かって形成されているウォームギア22が設けられており、ともにシャフト21bを回転軸として保持されている。
【0023】
ウォームホイール30が、上ケース43の上板43aに設けられたウォームホイール収容凹部46に収容される。出力軸31がウォームホイール30の中心に圧入され、上ケース43の出力軸貫通孔46aと下ケース41の出力軸貫通孔42に圧入された軸受32(
図2(a),(b)では不図示)を通じて、モータアクチュエータ1の底面より突出される。
【0024】
上面カバー47が上ケース43の開口部に設置される。上面カバー47には伝達ギア軸受凸部48aとウォームギア軸受凸部48bが下設されており、それぞれ伝達ギア軸受溝44とウォームギア軸受溝45に挿入されて、シャフト21a、21bを挟持する。また、ウォームホイール軸受凸部49が下設されており、出力軸31を回転自在に保持する。
【0025】
モータアクチュエータ1の動作について
図4を用いて説明する。二つのモータ10a、10bは同特性のものであり、同回転数にて互いに逆方向に回転させる。従い、動力ギア11aと11bも互いに逆方向に回転する。なお、同特性のモータとは、ほぼ同形状同特性の固定子と回転子を備え、ほぼ同じ出力のモータを意味し、設計上同一規格のものが望ましい。
【0026】
動力ギア11a、11bと歯合する伝達ギア20a、20bも互いに逆方向に回転することになる。このとき、一対の伝達ギア20a、20bは同じ周速度であり、また、伝達ギア20a、20b同士も歯合しているため、ここで二つのモータの回転力が足し合わされることになる。
【0027】
伝達ギア20bに設けられ、回転軸を同じくするウォームギア22から、足し合わされた回転力がウォームホイール30に伝達される。ウォームホイール30から出力軸31を通じて、足し合わされた回転力が出力され、被駆動対象を駆動する。またウォームギアを使用することによりセルフロック機構が得られ、被駆動対象が不要に動作することを防ぐことができる。
【0028】
このように構成することで、一対のモータ10a、10bの回転力が効率よく足し合わされ、より小型のモータを用いて、かつモータ回転数を増やすことなく、すなわち、モータアクチュエータ全体としての形状や騒音周波数を大きくすることなく、モータアクチュエータの駆動力を大きくすることができる。
【0029】
また、上述の実施形態において、一対のモータ10a、10bの上下にはモータヨークの平面部13が設けられているが、このように構成することで略円筒状のモータを用いるよりも少ないスペースでの設置が可能となる。具体的には、各モータの上下面を平面形状とすることにより、一方のモータの上部に配されるウォームギア22の設置スペースを容易に確保できるとともに、アクチュエータ全体の高さを抑えることができる。
【0030】
また、上述の実施形態において、動力ギア11a、11bおよび伝達ギア20a,20bはすべて平歯車とした。このようにすると回転力の伝達および足し合わせが効率よく行え、またモータの出力方向に不要な突出部が生じず、アクチュエータ全体としての小型化に寄与する。また動力ギア11a、11bおよび伝達ギア20a、20bをはすば歯車としたときも同様に小型化の効果を得られ、加えて静寂性やギア耐久力の向上にも寄与する。
【0031】
また、上述の実施形態において、ウォームギア22は伝達ギア20bからモータの反出力方向に向かって形成される構造とした。このようにすると、モータの出力方向に不要な突出部が生じないため、アクチュエータ全体としての小型化に寄与する。
【0032】
また、上述の実施形態において、出力軸31は一対のモータ10a、10bの間を通す構造とした。このようにすると、出力軸の軸受間距離を長くすることができるので、モータアクチュエータ全体としての形状を大きくすることなく、出力軸に過大な応力が加わった際の軸ブレを少なくすることができる。
【0033】
また、上述の実施形態では、ケースはモータ全体を収容するハウジング形状であったが、本発明はこれに限らず、例えば、
図5に示すように全てのギアを収容するギアボックス50にモータを部分的に収容するような構成でもよい。また出力軸をウォームホイールに設けていたが、ウォームホイールと出力軸の間に数段の減速ギアがあってもよい。この場合はさらに減速比を大きくできる。また、各ギアとシャフトは別部材であり圧入により係止されていたが、一体成型されたものであってもかまわない。また、
図6に示すように、モータ、動力ギア、伝達ギアの形状がそれぞれ異なる構成でもよい。この場合は伝達ギア20aと伝達ギア20bの回転方向が逆方向で、かつ、周速度が同じになるように制御すれば、
図4(b)に示したものと同様に回転力を足し合わせることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上述以外にも種々変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 モータアクチュエータ
10a,10b モータ
11a,11b 動力ギア
12a,12b シャフト
13 モータヨークの平面部
20a,20b 伝達ギア
21a,21b シャフト
22 ウォームギア
30 ウォームホイール
31 出力軸
32 軸受
41 下ケース
41a 底板
41b 側板
42 下ケース側出力軸貫通孔
43 上ケース
43a 上板
43b 側板
44 伝達ギア軸受溝
45 ウォームギア軸受溝
46 ウォームホイール収容凹部
46a 上ケース側出力軸貫通孔
47 上面カバー
48a 伝達ギア軸受凸部
48b ウォームギア軸受凸部
49 ウォームホイール軸受凸部
50 ギアボックス
70 従来例のモータアクチュエータ
71 モータ
72 シャフト
73 ウォームギア
74 ウォームホイール
75 出力ギア
76 出力軸