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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】振動発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
H02N2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019139988
(22)【出願日】2019-07-30
(65)【公開番号】P2021023075
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】593040391
【氏名又は名称】エミック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(72)【発明者】
【氏名】栗熊 甫
(72)【発明者】
【氏名】日比野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大坪 繁宏
(72)【発明者】
【氏名】竹内 敬治
(72)【発明者】
【氏名】三屋 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 崇倫
(72)【発明者】
【氏名】矢内 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】千阪 二郎
(72)【発明者】
【氏名】花澤 理宏
(72)【発明者】
【氏名】井下 芳雄
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2015/087956(JP,A1)
【文献】特開2014-011843(JP,A)
【文献】特開2014-239595(JP,A)
【文献】中国実用新案第208479491(CN,U)
【文献】特開2017-139890(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源から入力される振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部と、
該振動発電部を支持する質量部材と、
該質量部材と該振動源を弾性連結する粘弾性体と
を、有しており、
該質量部材を該振動源に取り付ける取付部が該粘弾性体によって構成されており、該粘弾性体の粘着力で該取付部が該振動源に取り付けられるようになっていると共に、
該粘弾性体によって構成された該取付部が該振動源に対して係止される係止部を有しており、
該係止部には、開口部が互いに対向する両側の係止溝が形成されており、該両側の係止溝に対して該振動源の対辺部分がそれぞれ嵌め入れられることによって係止されて該振動源に取付けられるようになっている振動発電装置。
【請求項2】
前記粘弾性体の前記係止部は、前記振動源の裏面側の粘着部分の厚さよりも、前記係止溝の底壁部を構成して、該裏面側の粘着部分を前記質量部材に対向する表面側の粘着部分へつなぐ接続部分の厚さが肉厚とされている請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に取り付けられた状態で弾性変形可能とされている請求項1又は2に記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に粘着される粘着面を含んで構成されている請求項1~3の何れか一項に記載の振動発電装置。
【請求項5】
前記粘弾性体が気泡を有する構造とされている請求項1~の何れか一項に記載の振動発電装置。
【請求項6】
前記粘弾性体が複数の積層構造とされている請求項1~の何れか一項に記載の振動発電装置。
【請求項7】
複数の前記粘弾性体が相互に独立して設けられている請求項1~の何れか一項に記載の振動発電装置。
【請求項8】
前記質量部材が、前記振動発電部側の第一の分割体と前記粘弾性体側の第二の分割体とを相互に着脱可能に連結した分割構造とされている請求項1~の何れか一項に記載の振動発電装置。
【請求項9】
前記粘弾性体の前記取付部を前記振動源に押し付ける付勢手段が設けられている請求項1~の何れか一項に記載の振動発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動源から伝わる振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、振動源から伝わる振動エネルギーを電気エネルギーに変換して取り出す振動発電装置が知られている。振動発電装置は、例えば、圧電素子や磁歪素子などのエネルギー変換素子を備えた振動発電部を備えており、振動発電部に入力される振動エネルギーが電気エネルギーに変換される。
【0003】
ところで、振動発電装置は、振動源の振動エネルギーから効率的に発電するために、例えば、国際公開第2012/137695号公報(特許文献1)などに示されているように、振動源と振動発電部の間に振動を増幅するための共振系が設けられる場合がある。即ち、特許文献1の圧電発電装置は、このような共振系として、第1錘部材がばね手段を介して支持された共振器を備えている。そして、ばね手段がベース部材を介して振動源に取り付けられることにより、共振器によって増幅された振動エネルギーが、第1錘部材に固定された振動板の変形によって、振動板の主面に貼り付けられた発電素子に入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2012/137695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1は、圧電発電装置そのものを開示するに過ぎず、振動源への取付構造については検討されていない。
【0006】
硬質のベース部材を振動源に取り付けるためには、ボルト固定や磁力による固定、溶接による固定などが考えられる。しかしながら、ボルトによって固定する場合には、振動源にベース部材と対応するボルト孔を形成する必要がある。また、磁力又は溶接による固定は、振動源の材質や表面形状等によっては採用することが難しい場合もある。
【0007】
本発明の解決課題は、振動源に対する新規な取付構造を備えた振動発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明を把握するための好ましい態様について記載するが、以下に記載の各態様は、例示的に記載したものであって、適宜に互いに組み合わせて採用され得るだけでなく、各態様に記載の複数の構成要素についても、可能な限り独立して認識及び採用することができ、適宜に別の態様に記載の何れかの構成要素と組み合わせて採用することもできる。それによって、本発明では、以下に記載の態様に限定されることなく、種々の別態様が実現され得る。
【0009】
第一の態様は、振動発電装置であって、振動源から入力される振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部と、該振動発電部を支持する質量部材と、該質量部材と該振動源を弾性連結する粘弾性体とを、有しており、該質量部材を該振動源に取り付ける取付部が該粘弾性体によって構成されており、該粘弾性体の粘着力で該取付部が該振動源に取り付けられるようになっていると共に、該粘弾性体によって構成された該取付部が該振動源に対して係止される係止部を有しており、該係止部には、開口部が互いに対向する両側の係止溝が形成されており、該両側の係止溝に対して該振動源の対辺部分がそれぞれ嵌め入れられることによって係止されて該振動源に取付けられるようになっているものである。
【0010】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、振動発電部を支持する質量部材が、振動源に対して、粘弾性体に設けられた取付部によって取り付けられる。それ故、質量部材を振動源に取り付けるための特別な金具などが必須ではなく、部品点数の少ない簡単な構造によって振動発電装置を振動源に取り付けることが可能になる。
【0011】
取付部が粘弾性体に設けられていることから、粘弾性体が取付部において振動源に取り付けられることで、質量部材が振動源に対して弾性連結される。このように、取付部を備える部材が粘弾性体であることにより、振動源への取付けによって質量部材と振動源が相互に固定されるのではなく相互に弾性連結される。これにより、マス-バネ共振系が構成されることから、マス-バネ共振系の共振による振動エネルギーの増幅によって優れた発電効率が実現される。
【0012】
粘弾性体が取付部において振動源に直接取り付けられることから、例えば振動源の表面に塗装ムラによる凹凸などが存在していても、粘弾性体に設けられた取付部が振動源の凹凸に追従して変形する。これにより、振動発電装置を振動源に問題なく取り付けることができる。
また、第二の態様は、第一の態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体の前記係止部は、前記振動源の裏面側の粘着部分の厚さよりも、前記係止溝の底壁部を構成して、該裏面側の粘着部分を前記質量部材に対向する表面側の粘着部分へつなぐ接続部分の厚さが肉厚とされているものである。
【0013】
の態様は、第一又は第二の態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に取り付けられた状態で弾性変形可能とされているものである。
【0014】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、粘弾性体の取付部が振動源に固定状態で拘束されることなく弾性変形可能とされていることから、例えば振動入力によって粘弾性体が弾性変形する際に、取付部の弾性変形による応力の分散化が図られる。これにより、粘弾性体の耐久性の向上や、目的とする弾性支持特性の安定した発現などが実現され得る。
【0015】
の態様は、第一~第三の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に粘着される粘着面を含んで構成されているものである。
【0016】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、取付部を構成する粘着面が振動源に粘着されることによって、粘弾性体が振動源に対して簡単に取り付けられる。
【0017】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体が気泡を有する構造とされているものである。
【0018】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、粘弾性体が気泡を有することによって変形し易くなり、粘弾性体のばねが柔らかくなる。これにより、例えば粘弾性体が薄肉であっても、粘弾性体をばねとする振動発電装置の共振系において、共振周波数がより低周波にチューニング可能とされる。
【0019】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体が複数の積層構造とされているものである。
【0020】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、粘弾性体の積層数や各層の特性などが調節されることで、粘弾性体の弾性や粘性(減衰)が容易に調節される。それ故、振動発電装置のマス-バネ共振系の共振周波数が、振動源からの入力振動の周波数に合わせて簡単に調節可能とされる。
【0021】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、複数の前記粘弾性体が相互に独立して設けられているものである。
【0022】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、質量部材が複数の粘弾性体によって複数箇所で支持される。これにより、粘弾性体による質量部材の支持面積が必要以上に大きくなることなく、質量部材が粘弾性体によってより安定して支持される。これにより、発電に寄与する方向の振動が効率的に増幅されて、発電効率の向上が図られる。
【0023】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、前記質量部材が、前記振動発電部側の第一の分割体と前記粘弾性体側の第二の分割体とを相互に着脱可能に連結した分割構造とされているものである。
【0024】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、粘弾性体側の第二の分割体を振動源への取付状態にしたままで、振動発電部側の第一の分割体を第二の分割体から取り外すことで、振動発電部が振動源から取外し可能とされる。これにより、例えば、必要とされる発電量の変化に応じて振動発電部を別のものに取り替えたり、振動発電部の故障時に新しい振動発電部と交換するなどの作業が、簡単になる。
【0025】
振動発電部を交換などする際に、粘弾性体を振動源から取り外す必要がなくなることから、例えば、粘弾性体が振動源に対して強い粘着力で取り付けられている場合に、粘弾性体が振動源からの取り外しによって損傷するのを防ぐことができる。
【0026】
の態様は、第一~第の何れか1つの態様に記載された振動発電装置において、前記粘弾性体の前記取付部を前記振動源に押し付ける付勢手段が設けられているものである。
【0027】
本態様に従う構造とされた振動発電装置によれば、粘弾性体の取付部が付勢手段によって振動源に押し付けられることで、取付部における粘弾性体の振動源への取付強度がより大きくされ得る。なお、付勢手段としては、例えば、金属ばねや磁石などが採用される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、振動源に対する新規な取付構造を備えた振動発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第一の実施形態としての振動発電装置を示す断面図であって、図2のI-I断面に相当する図
図2図1に示す振動発電装置の蓋体を取り外した状態の平面図
図3図1に示す振動発電装置のモデル図
図4図1に示す振動発電装置における発電量の周波数特性を示すグラフ
図5】本発明の第二の実施形態としての振動発電装置を示す断面図
図6】本発明の第三の実施形態としての振動発電装置を示す断面図
図7】本発明の第四の実施形態としての振動発電装置を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1,2には、本発明の第一の実施形態としての振動発電装置10が示されている。振動発電装置10は、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部12を備えている。以下の説明において、上下方向とは、原則として図1中の上下方向を言う。
【0034】
振動発電部12は、矩形ブロック状の支持部材14によって板ばね16が片持ち状に支持されていると共に、板ばね16の自由端の両面にマス部材18がそれぞれ取り付けられた構造を有している。そして、マス部材18,18をマスとし、板ばね16をばねとするマス-バネ共振系である発電部共振系20が構成されている。発電部共振系20の共振周波数は、後述する振動源42から振動発電装置10に入力される上下方向の主たる振動の周波数に合わせて設定されている。本実施形態では、板ばね16の上下両面にそれぞれマス部材18が取り付けられているが、何れか一方のマス部材18だけが設けられていても良い。
【0035】
板ばね16には、発電素子22が重ね合わされて固定されている。発電素子22は、圧電素子のような機械的な応力が加えられることで電荷を生じるものなどが、好適に採用される。尤も、例えば磁歪素子を採用して、機械的な応力の作用に対する磁場の変化に基づいて、電力を取り出すことも可能である。
【0036】
そして、上下方向の振動入力によってマス部材18が支持部材14に対して相対的に上下方向へ変位して、板ばね16が厚さ方向で弾性的に撓むことにより、板ばね16に重ね合わされた発電素子22に機械的な応力が及ぼされる。これにより、発電素子22において振動エネルギーが電気エネルギーに変換されて、振動発電部12に入力される振動に基づいた発電が行われる。
【0037】
なお、発電素子22には、図示しない配線が接続されており、その配線を通じて発電された電力が外部に取り出される。配線は、例えば、図示しない蓄電池に接続されて、発電された電力が蓄電池に蓄えられる。また、配線が電力を要するデバイスに接続されて、発電された電力が当該デバイスに供給されるようにもできる。
【0038】
振動発電部12は、質量部材としてのハウジング24に収容状態で支持されている。ハウジング24は、矩形の中空箱状とされている。ハウジング24は、上方に開口を有するハウジング本体26と、ハウジング本体26の開口を覆う矩形板状の蓋体28とによって構成されている。
【0039】
ハウジング本体26は、底壁部が上下に分割された分割構造とされている。ハウジング本体26における分割部分よりも上側が、振動発電部12側となる第一の分割体30とされていると共に、分割部分よりも下側が、後述する粘着シート38側となる第二の分割体32とされている。第一の分割体30の底壁部を貫通する連結ボルト34が第二の分割体32の図示しないねじ穴に螺着されることにより、第一の分割体30と第二の分割体32が相互に連結されている。第一の分割体30と第二の分割体32は、連結ボルト34を取り外すことで分離させることが可能であり、着脱自在に連結されている。なお、第一の分割体30と第二の分割体32の連結構造は、着脱自在であれば良く、例えば、第一の分割体30と第二の分割体32に相互に係合する係合部を設けることにより、機械的な係合によって連結構造を構成することもできる。
【0040】
振動発電部12は、第一の分割体30の周壁部の内側に配されており、支持部材14が第一の分割体30の底壁部に固定されることで、ハウジング本体26によって収容状態で支持されている。支持部材14の第一の分割体30に対する固定方法は特に限定されるものではなく、例えば、接着や溶接、ボルト固定、凹凸嵌合などが何れも採用され得る。
【0041】
ハウジング本体26の第二の分割体32の下面36には、粘弾性体としての粘着シート38が貼り付けられている。粘着シート38は、矩形シート状であって、上下両面がそれぞれ粘着性を有する両面粘着シートとされている。粘着シート38は、上面が粘着面40aとされていると共に、下面が取付部としての粘着面40bとされている。
【0042】
粘着シート38の構造や材質、製法などは、特に限定されるものではない。即ち、粘着シート38は、例えば樹脂系やゴム系の弾性体又はそれらの発泡体からなる弾性体層の表面に、公知の各種の粘着剤層を設けることによって構成され得る。かかる粘着剤層としては、例えばゴム系,アクリル系,ウレタン系、シリコーン系等の粘着剤や、ホットメルト型の粘着剤なども、各種条件に応じて採用され得る。
【0043】
具体的には、例えば本実施形態の粘着シート38は、発泡ウレタンシートの弾性体からなる基材の両面に、ウレタン樹脂を主原料とする粘着剤層を設けた構造とされている。本実施形態では、粘着シート38の基材が発泡体とされて気泡を有しているが、それに代えて或いはそれに加えて、粘着剤層が気泡を有していても良い。なお、本実施形態の粘着シート38は、剥離シートを取り除いた使用状態において、上述のように発泡体シートの両面に粘着剤層がそれぞれ形成された3層構造とされているが、図1では、見易さのために、粘着シート38が単層で示されている。
【0044】
粘着シート38の厚さは、シート材質や大きさ等の他、振動源の振動条件、ハウジング24やマス部材18の質量やサイズなどにもよるが、振動系を構成するための変形特性の確保や製造のし易さなどを考慮すると、一般に0.2mm~1mmとされることが望ましい。尤も、後述するように、粘着シート38の複数枚を積層して用いることも可能であることから、厚さ寸法の実質的な上限は限定されるものでない。粘着シート38の25%圧縮硬さは、好適には0.01~1.5MPa、より好適には0.05~1.0MPa、更に好適には0.07~0.8MPaとされる。粘着シート38の基材の発泡倍率は、1.05~5.00倍とされることが望ましい。
【0045】
そして、粘着シート38は、粘着剤層の上面である上側の粘着面40aが第二の分割体32の下面36に貼り付けられることで、第二の分割体32に取り付けられる。本実施形態では、図2に破線で示すように、相互に独立した4枚の粘着シート38,38,38,38が、第二の分割体32の下面36の四隅に固着されている。
【0046】
本実施形態では、粘着シート38が両面に粘着面40a,40bを備えており、粘着シート38が第二の分割体32の下面36に対して粘着面40aによって取り付けられている。しかし、例えば、片面に粘着面40bだけを備える粘着シートが粘弾性体として採用されて、当該粘着シートの粘着面40bではない表面が、接着剤によって第二の分割体32に固定されていても良い。要するに、粘着シート38のハウジング24への取付方法は、特に限定されず、例えば、取付面の弾性変形がハウジング24によって拘束されるように固定されても良い。
【0047】
第二の分割体32に貼り付けられた粘着シート38は、粘着剤層の下面である下側の粘着面40bが振動源42の上面に貼り付けられることで、振動源42に取り付けられる。各粘着シート38が振動源42に貼り付けられることにより、ハウジング24が振動源42に取り付けられる。これにより、振動発電装置10は、振動源42によって支持されている。振動源42は、特に限定されるものではなく、例えば工業用設備や自動車、家電など、使用時に振動を生じるものであれば良い。
【0048】
ハウジング24及びハウジング24に収容された振動発電部12は、粘着シート38を介して振動源42に弾性支持されている。これにより、ハウジング24及び振動発電部12で構成されたマスと、粘着シート38で構成されたばねとによって、増幅共振系44が構成されている。これにより、振動発電装置10は、図3にモデルを示すように、増幅共振系44と発電部共振系20の2つの共振系が、直列的に設けられた構造を有している。なお、図3には、粘着シート38のばね定数がk1、粘着シート38の減衰がc1、ハウジング24の質量がm1、発電素子22が貼り合わされた板ばね16のばね定数がk2、発電素子22が貼り合わされた板ばね16の減衰がc2、マス部材18,18の質量がm2と記載されている。増幅共振系44の共振周波数は、振動源42の上下方向の主たる振動の周波数と略同じとされており、発電部共振系20の共振周波数と増幅共振系44の共振周波数が互いに略同じとされている。
【0049】
ハウジング24と振動源42を弾性連結する粘弾性体が、粘着シート38によって構成されており、粘着シート38が振動源42に対して粘着面40bの粘着力で取り付けられている。このように、振動源42に対する取付機構を構成する取付部が、粘着シート38の粘着面40bによって構成されており、粘弾性体が取付部を備えている。それ故、粘弾性体を振動源42に取り付けるための金具などが不要になって、粘弾性体である粘着シート38を振動源42に直接的に取り付けることができる。
【0050】
粘着シート38は、粘着剤層が振動源42に粘着(感圧接着)されることによって、粘着剤層の表面である粘着面40bが、振動源42に取り付けられた状態で弾性変形を許容されている。それ故、振動源42からの振動入力に際して、粘着シート38の粘着面40bの弾性変形による応力の分散化が図られる。これにより、粘着シート38の耐久性の向上が図られると共に、粘着シート38で構成される増幅共振系44のばねにおいて特性の安定化が実現される。
【0051】
しかも、粘着シート38は、例えば、接着剤のような使用時に経時的な硬化反応を伴うものでなく、予め反応が概ね完了した状態で使用される。それ故、振動発電装置10を振動源42に装着した当初から、所期の固着力が安定して発揮され得て、振動発電装置10が目的とする発電性能を発揮し得る。この場合には、設置後の発電性能の確認や測定などを速やかに実施することが可能となる。
【0052】
また、粘着シート38による振動源42やハウジング24への固着面は、粘着によって固着されていることから、粘着剤そのものが有する粘性乃至は弾性によって振動源42等の表面に対して面に沿ったズレ方向で相対的に微小な変位を、硬化接着剤による接着構造に比して容易に許容された状態とされる。それ故、粘着シート38の粘弾性の特性ひいては振動発電装置10の特性に関し、装着対象物である振動源42の固着面の性状による影響を軽減して、安定した発電性能や取付強度乃至は耐久性を得ることが可能となる。
【0053】
振動源42に取り付けられた振動発電装置10は、振動源42から入力される上下方向の振動に対して、振動発電部12において電力を生じるようになっている。即ち、振動源42から上下方向の主たる振動が振動発電装置10に入力されると、先ず、増幅共振系44においてマス-バネ共振が生じて、ハウジング24の振動が増幅される。これにより、振動源42の振動の振幅に比して増幅されたより大きな振幅の振動が、ハウジング24から振動発電部12へ入力される。
【0054】
さらに、振動発電部12の発電部共振系20においてマス-バネ共振が生じて、マス部材18の振動が増幅される。これにより、板ばね16の撓み変形量が大きくなって、板ばね16に固着された発電素子22がより大きな歪を生じることから、発電素子22においてより大きな電力が発生する。
【0055】
このようにして、振動発電装置10では、振動源42の振動エネルギーが2つの共振系20,44の共振によって増幅されることで、振動エネルギーから変換される電気エネルギーを効率的に得ることができる。
【0056】
粘着シート38は、基材がシート状の発泡体とされている。これにより、粘着シート38の厚さ方向の伸縮変形が許容され易くなって、粘着シート38の厚さ方向の弾性が調節されている。なお、粘着シート38の基材は、連続気泡の発泡体であっても良いし、独立気泡の発泡体であっても良い。連続気泡の場合には、基材の軟質化によって弾性が調節される。独立気泡の場合には、気泡の空気ばねによって弾性が調節される。
【0057】
図3に示すように、増幅共振系44のばねを構成する粘着シート38が粘性(減衰)を有していることから、増幅共振系44の共振周波数とその前後の周波数帯の振動が、増幅共振系44によって有効に増幅される。このように、増幅共振系44において共振周波数のブロード化が図られており、例えば、温度変化によって入力振動の周波数の変化や増幅共振系44の共振周波数の変化が生じたとしても、発電効率の著しい低下を防いで、目的とする発電量を得ることができる。
【0058】
増幅共振系44のばねを構成する粘着シート38が、上下両面に粘着面40a,40bを有している。そして、粘着シート38の上側の粘着面40aがハウジング24の下面36に粘着されると共に、粘着シート38の下側の粘着面40bが振動源42の上面に粘着されることによって、ハウジング24が振動源42に対して取り付けられる。このように、増幅共振系44のばねが粘着シート38とされることで、振動発電装置10の振動源42への取付構造を簡略にすることができる。要するに、増幅共振系44のばねである粘着シート38を振動源42に直接取り付けることができて、振動源42と増幅共振系44のばねとの間に取付用の金具などを設ける必要がない。
【0059】
粘着シート38による振動発電装置10の振動源42への取付けによれば、振動源42に振動発電装置10を取り付けるための特別な構造を設ける必要がない。これにより、振動発電装置10の振動源42への取付位置を大きな自由度で設定することができる。更に、振動発電装置10の振動源42への取付位置を、取付現場において調節することも可能になる。
【0060】
粘着シート38は、相互に独立した4枚が、ハウジング24の四隅に設けられている。これにより、ハウジング24が四隅において安定的に支持されて、上下方向の振動入力に際して、ハウジング24においてこじり変位などが生じ難く、ハウジング24が上下方向において振動する。これにより、上下方向の振動入力によって発電する振動発電部12において、発電効率の向上が図られる。
【0061】
さらに、複数の独立した粘着シート38によってハウジング24が部分的に支持されていることにより、粘着シート38のばね特性を調節することも容易になる。即ち、各粘着シート38による支持面積を調節することが容易であることから、各粘着シート38のばね定数、ひいては、全ての粘着シート38によって構成される増幅共振系44のばねの特性を、簡単に調節することができる。
【0062】
本実施形態に従う構造とされた振動発電装置10によって、振動エネルギーが有効に増幅されて、効率的な発電が可能であることは、実験によっても確認されている。即ち、本実施形態に従う構造の振動発電装置10を用いた実施例と、粘着シート38に代えて弾性を持たない粘着フィルムによってハウジング24と振動源42を連結した比較例とについて、発電電力の周波数特性を測定した結果が図4に示されている。
【0063】
図4は、80Hz~120Hzの周波数帯のsin波振動を1oct/minの周波数変化で入力して発電電力を測定した測定結果のグラフである。図4によれば、実線で示す実施例において、破線で示す比較例よりも発電電力が大きい。特に、振動発電装置10の各共振系20,44の共振周波数である104Hz前後の振動入力に対して、より大きな発電電力を得られることが、実験結果からも確認できた。
【0064】
なお、上記の実験では、以下のような粘着シート38が採用された。即ち、無色透明で固形分50%、粘度4000cps、数平均分子量20000、重量平均分子量80000のウレタン樹脂溶液に、硬化剤及び酸化剤が配合されたものが、撹拌混合されることにより、粘着剤組成物塗液が生成される。この粘着剤組成物塗液が、ウレタンの発泡体などで形成された基材としての発泡体シートの両面に配されて、粘着剤組成物塗液が粘着剤層を形成することにより、両面に粘着面40a,40bを有する粘着シート38が形成される。
【0065】
図5には、本発明の第二の実施形態としての振動発電装置50が示されている。振動発電装置50は、ハウジング24と粘着シート38の間に付勢手段としての永久磁石52が配されている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材及び部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
【0066】
永久磁石52は、粘着シート38に略対応する矩形板状とされており、厚さ方向である上下方向に磁化されている。本実施形態では、ハウジング24の第二の分割体32と振動源42とが、何れも強磁性体とされている。
【0067】
そして、永久磁石52が第二の分割体32の下面36に磁力によって取り付けられている。また、永久磁石52の下面に粘着シート38の上側の粘着面40aが貼り付けられると共に、粘着シート38の下側の粘着面40bが振動源42に貼り付けられる。これにより、ハウジング24が粘着シート38及び永久磁石52を介して振動源42に取り付けられる。永久磁石52は、粘着シート38よりもハウジング24側に設けられていることから、増幅共振系44のマスの一部を構成する。
【0068】
永久磁石52と振動源42の間には、磁力による吸引力が作用しており、粘着シート38が永久磁石52と振動源42に押し付けられている。これにより、粘着シート38と永久磁石52及び振動源42との間に作用する粘着力が高められて、粘着シート38による振動発電装置50の振動源42への強固な取付けが実現される。
【0069】
なお、永久磁石52が粘着シート38から外れた位置、具体的には、第二の分割体32の下面36の中央などに設けられていても良い。これによれば、永久磁石52と振動源42の間に作用する磁気的な吸引力によって、粘着シート38が振動源42及び第二の分割体32に押し付けられて、粘着シート38と第二の分割体32の間及び粘着シート38と振動源42の間に作用する粘着力が高められる。
【0070】
また、粘着シート38を振動源42に押し付ける付勢力は、永久磁石52の磁力による力に限定されず、例えば、ハウジング24を振動源42に向けて付勢する金属ばねの弾性によって得ることもできる。
【0071】
図6には、本発明の第三の実施形態としての振動発電装置60が示されている。振動発電装置60の粘弾性体62は、複数の粘着シート38が上下方向に積層されることによって構成されている。本実施形態の粘弾性体62は、3枚の粘着シート38,38,38が積層されて構成されているが、粘弾性体62を構成する粘着シート38の積層数は、特に限定されるものではない。また、積層される複数の粘着シート38は、必ずしも同一のものに限定されず、例えば、厚さや面積、弾性率などが異なる複数種類が組み合わされ得る。
【0072】
そして、上端に位置する粘着シート38の上側の粘着面40aが第二の分割体32の下面36に貼り付けられると共に、下端に位置する粘着シート38の下側の粘着面40bが振動源42に貼り付けられることにより、振動発電装置60が振動源42に取り付けられる。振動発電装置60が振動源42に取り付けられた状態において、ハウジング24の四隅がそれぞれ粘弾性体62を介して振動源42に弾性支持されており、それら複数の粘弾性体62が増幅共振系44のばねを構成している。
【0073】
このような本実施形態に従う構造とされた振動発電装置60によれば、粘弾性体62を構成する粘着シート38の積層数によって、増幅共振系44の共振周波数や粘弾性体62の減衰特性などを簡単に変更することができる。従って、振動源42から入力される振動の周波数などに応じて、粘着シート38の積層数を調節することにより、増幅共振系44による振動増幅作用を効率的に得ることができる。
【0074】
さらに、粘着シート38の種類や組み合わせを変更することによっても、増幅共振系44の共振周波数や減衰性能を調節することができる。従って、増幅共振系44における振動の増幅性能を大きな自由度で調節することができる。また、振動源42の取付面が平坦でなく凹凸差があるような場合に、各粘弾性体62の取付部位に応じて粘着シート38の積層枚数を適宜に調節することで、振動源42の取付面の凹凸に対応しつつ、粘弾性体62による取付強度の確保や、発電部共振系20の振動方向の設定などを実現することも可能となる。
【0075】
図7には、本発明の第四の実施形態としての振動発電装置70が示されている。振動発電装置70は、第二の分割体32の下面36に粘弾性体72が固着された構造を有している。
【0076】
粘弾性体72は、ゴム弾性体や樹脂エラストマで形成されている。粘弾性体72は、矩形板状とされた第二の分割体32の1組の対辺部分にそれぞれ設けられている。粘弾性体72は、上記対辺部分の全長に亘って連続している。粘弾性体72は、上記対辺部分の対向方向の内側に向けて開口する係止部としての係止溝74を備えており、略一定の溝形断面で延びている。
【0077】
そして、一対の粘弾性体72,72の係止溝74,74に対して、板状の振動源42の両端部が差し入れられる。これにより、粘弾性体72が振動源42に対して上下方向で機械的に係止されて、粘弾性体72,72を含む振動発電装置70が振動源42に取り付けられる。振動発電装置70の振動源42への取付状態において、ハウジング24が振動源42に対して粘弾性体72,72を介して弾性連結されている。これにより、ハウジング24及び振動発電部12によるマスと、粘弾性体72,72によるばねとを有する増幅共振系44が構成される。
【0078】
このような本実施形態に従う構造とされた振動発電装置70によれば、それぞれ係止溝74を備える粘弾性体72,72が、振動源42に対して係止されることで、振動発電装置70が振動源42に簡単に取り付けられる。また、振動発電装置70の振動源42からの取外しも容易に実現できる。
【0079】
このように、粘弾性体は、粘着によって振動源42に取り付けられるものに限定されず、係止などの機械的な作用によって振動源42に取り付けられるものなども採用され得る。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、粘弾性体の数や配置、形状は、何れも特に限定されない。例えば、粘弾性体は、ハウジング24の下面36の全体を覆う1つだけとされ得るし、ハウジング24の下面36の四隅に加えて中央にも設けることで安定性の向上を図ることもできる。
【0081】
また、粘弾性体は、上述の如き弾性体からなる基材の両面に粘着剤層を設けたものに限定されず、例えば粘着剤の単一層から構成することも可能であり、粘着剤を必要に応じて部分的に発泡させて弾性等を調節することも可能である。更にまた、粘弾性体は、振動源42に対する取付部を備えていれば良く、例えば粘弾性体のハウジング24側への取付部については、接着や機械的固着による固定構造を採用することも可能である。
【0082】
質量部材としてのハウジング24が第一の分割体30と第二の分割体32を着脱可能に連結した構造とされていることは、必須ではない。また、例えば、振動発電部12が露出していても良い場合などには、蓋体28は必須ではない。質量部材は、振動発電部12を収容可能な中空形状のハウジング24に限定されるものではなく、例えば、板状とされた質量部材の上に振動発電部12が露出した状態で設けられていても良い。
【0083】
前記実施形態に示した振動発電部12の構成は、一例であって、振動発電部の構造や発電原理は限定されない。例えば、特開2016-149914号公報に開示されているようなエレクトレット素子を用いて、振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電を行うこともできる。また、例えば、振動入力時の電磁誘導によって生じる誘導起電力を発電電力として取り出すこともできる。
【0084】
振動源42から振動発電部12への振動入力方向は、必ずしも振動発電装置10が取り付けられる振動源42の取付面と直交する方向に限定されない。例えば、振動源42の取付面と平行な方向や傾斜した方向の振動の入力によって、振動発電部12が発電を行うようにもできる。なお、主たる振動入力方向に対して発電部共振系20に生ぜしめられる主振動方向乃至はマス部材18の主たる変位方向が略一致するように、振動源42によるハウジング24の支持方向とハウジング24による発電部共振系20の支持方向とを異ならせて、発電部共振系20の支持方向を設定することが望ましい。
また、本発明は、もともと以下(i)~(ix)に記載の各発明を何れも含むものであり、その構成および作用効果に関して、付記しておく。
本発明は、
(i) 振動源から入力される振動エネルギーを電気エネルギーに変換する振動発電部と、該振動発電部を支持する質量部材と、該質量部材と該振動源を弾性連結する粘弾性体とを、有しており、該質量部材を該振動源に取り付ける取付部が該粘弾性体によって構成されている振動発電装置、
(ii) 前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に取り付けられた状態で弾性変形可能とされている(i)に記載の振動発電装置、
(iii) 前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に粘着される粘着面を含んで構成されている(i)又は(ii)に記載の振動発電装置、
(iv) 前記粘弾性体が気泡を有する構造とされている(i)~(iii)の何れか一項に記載の振動発電装置、
(v) 前記粘弾性体が複数の積層構造とされている(i)~(iv)の何れか一項に記載の振動発電装置、
(vi) 複数の前記粘弾性体が相互に独立して設けられている(i)~(v)の何れか一項に記載の振動発電装置、
(vii) 前記質量部材が、前記振動発電部側の第一の分割体と前記粘弾性体側の第二の分割体とを相互に着脱可能に連結した分割構造とされている(i)~(vi)の何れか一項に記載の振動発電装置、
(viii) 前記粘弾性体の前記取付部を前記振動源に押し付ける付勢手段が設けられている(i)~(vii)の何れか一項に記載の振動発電装置、
(ix) 前記粘弾性体の前記取付部が前記振動源に対して係止される係止部を有している(i)~(viii)の何れか一項に記載の振動発電装置、
に関する発明を含む。
上記(i)に記載の発明では、振動発電部を支持する質量部材が、振動源に対して、粘弾性体に設けられた取付部によって取り付けられる。それ故、質量部材を振動源に取り付けるための特別な金具などが必須ではなく、部品点数の少ない簡単な構造によって振動発電装置を振動源に取り付けることが可能になる。
取付部が粘弾性体に設けられていることから、粘弾性体が取付部において振動源に取り付けられることで、質量部材が振動源に対して弾性連結される。このように、取付部を備える部材が粘弾性体であることにより、振動源への取付けによって質量部材と振動源が相互に固定されるのではなく相互に弾性連結される。これにより、マス-バネ共振系が構成されることから、マス-バネ共振系の共振による振動エネルギーの増幅によって優れた発電効率が実現される。
粘弾性体が取付部において振動源に直接取り付けられることから、例えば振動源の表面に塗装ムラによる凹凸などが存在していても、粘弾性体に設けられた取付部が振動源の凹凸に追従して変形する。これにより、振動発電装置を振動源に問題なく取り付けることができる。
上記(ii)に記載の発明では、粘弾性体の取付部が振動源に固定状態で拘束されることなく弾性変形可能とされていることから、例えば振動入力によって粘弾性体が弾性変形する際に、取付部の弾性変形による応力の分散化が図られる。これにより、粘弾性体の耐久性の向上や、目的とする弾性支持特性の安定した発現などが実現され得る。
上記(iii)に記載の発明では、取付部を構成する粘着面が振動源に粘着されることによって、粘弾性体が振動源に対して簡単に取り付けられる。
上記(iv)に記載の発明では、粘弾性体が気泡を有することによって変形し易くなり、粘弾性体のばねが柔らかくなる。これにより、例えば粘弾性体が薄肉であっても、粘弾性体をばねとする振動発電装置の共振系において、共振周波数がより低周波にチューニング可能とされる。
上記(v)に記載の発明では、粘弾性体の積層数や各層の特性などが調節されることで、粘弾性体の弾性や粘性(減衰)が容易に調節される。それ故、振動発電装置のマス-バネ共振系の共振周波数が、振動源からの入力振動の周波数に合わせて簡単に調節可能とされる。
上記(vi)に記載の発明では、質量部材が複数の粘弾性体によって複数箇所で支持される。これにより、粘弾性体による質量部材の支持面積が必要以上に大きくなることなく、質量部材が粘弾性体によってより安定して支持される。これにより、発電に寄与する方向の振動が効率的に増幅されて、発電効率の向上が図られる。
上記(vii)に記載の発明では、粘弾性体側の第二の分割体を振動源への取付状態にしたままで、振動発電部側の第一の分割体を第二の分割体から取り外すことで、振動発電部が振動源から取外し可能とされる。これにより、例えば、必要とされる発電量の変化に応じて振動発電部を別のものに取り替えたり、振動発電部の故障時に新しい振動発電部と交換するなどの作業が、簡単になる。
振動発電部を交換などする際に、粘弾性体を振動源から取り外す必要がなくなることから、例えば、粘弾性体が振動源に対して強い粘着力で取り付けられている場合に、粘弾性体が振動源からの取り外しによって損傷するのを防ぐことができる。
上記(viii)に記載の発明では、粘弾性体の取付部が付勢手段によって振動源に押し付けられることで、取付部における粘弾性体の振動源への取付強度がより大きくされ得る。なお、付勢手段としては、例えば、金属ばねや磁石などが採用される。
上記(ix)に記載の発明では、係止部が振動源に対して機械的に係止されることで、粘弾性体が振動源に簡単に取り付けられる。また、係止部による振動源への取付構造を採用することで、粘弾性体の振動源からの取外しも容易になる。
【符号の説明】
【0085】
10,60,70:振動発電装置、12:振動発電部、24:ハウジング(質量部材)、30:第一の分割体、32:第二の分割体、38:粘着シート(粘弾性体)、40b:粘着面(取付部)、42:振動源、52:永久磁石(付勢手段)、62,72:粘弾性体、74:係止溝(係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7