(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ヒアルロン酸ナノ粒子を合成する方法及びその方法で製造されたヒアルロン酸ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
C08B 37/08 20060101AFI20230712BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230712BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230712BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230712BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20230712BHJP
A61P 17/18 20060101ALI20230712BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230712BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20230712BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20230712BHJP
A61K 47/61 20170101ALI20230712BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230712BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230712BHJP
A61K 51/12 20060101ALI20230712BHJP
A61K 51/06 20060101ALI20230712BHJP
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A61K 8/49 20060101ALI20230712BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230712BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20230712BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20230712BHJP
C08J 3/28 20060101ALI20230712BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08B37/08 Z
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
A61P39/06
A61P17/18
A61P17/00
A61K31/375
A61K47/69
A61K47/61
A61K9/16
A61P35/00
A61K51/12 200
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A61K49/12
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A61K8/73
A23L33/10
A23L33/15
C08J3/28 CEP
C08J3/12 Z
(21)【出願番号】P 2021531576
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 KR2020000612
(87)【国際公開番号】W WO2020145790
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0003966
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517354917
【氏名又は名称】キョンブク ナショナル ユニバーシティ インダストリー-アカデミック コーオペレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウォンチョル
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/126939(WO,A1)
【文献】特開2000-239303(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0361268(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0036728(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107550750(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0135313(KR,A)
【文献】特開2004-043645(JP,A)
【文献】国際公開第2000/049084(WO,A1)
【文献】Carbohydrate Polymers,2014年,112,412-415
【文献】Conjugation of hyaluronic acid with ascorbic acid and evaluation of its in vitro activity on MC3T3-E1,Dept. of Medical Science, thesis,2009年,1-47
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B 37/08
A61Q 19/00
A61Q 19/02
A61Q 19/08
A61P 39/06
A61P 17/18
A61P 17/00
A61K 31/375
A61K 47/69
A61K 47/61
A61K 9/16
A61P 35/00
A61K 51/12
A61K 51/06
A61K 49/12
A61K 49/18
A61K 49/22
A61K 47/22
A61K 51/04
A61K 8/49
A61K 8/73
A23L 33/10
A23L 33/15
C08J 3/28
C08J 3/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸水溶液に電子ビームを照射し、ヒアルロン酸の分子間又は分子内の架橋結合を形成することを含む、架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法であって、
前記ヒアルロン酸水溶液は、酸性であり、
前記水溶液のpHを調節して、前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを制御することを特徴と
し、
前記ヒアルロン酸ナノ粒子が、100nm以下の直径を有する、前記方法。
【請求項2】
前記ヒアルロン酸水溶液は、pH1乃至6であることを特徴とする、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項3】
前記ヒアルロン酸
水溶液が、HClO
4を追加で含む、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項4】
前記電子ビームの照射線量を変更して、前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを制御することを特徴とする、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項5】
前記電子ビームの照射線量を増やして、前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを小さくすることを特徴とする、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項6】
前記ヒアルロン酸水溶液は、0.05~7%(w/v)の濃度であることを特徴とする、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項7】
前記電子ビームは、0.5~300kGyの照射量で照射されることを特徴とする、請求項1記載の架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法。
【請求項8】
前記ヒアルロン酸ナノ粒子が、腫瘍選択性を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法で
ヒアルロン酸ナノ粒子を製造する工程と、製造したヒアルロン酸ナノ粒子を、放射性同位元素、有機蛍光物質、無機物質である量子ドット、磁気共鳴映像法用造影剤、コンピュータ断層撮影用造影剤、陽電子断層撮影用造影剤、超音波造影剤、蛍光造影剤、及びアップコンバージョン物質からなる群から選択される少なくとも1つの標識物質で標識する工程を含む、造影剤組成物を製造する方法。
【請求項10】
前記造影剤組成物が、
前記ナノ粒子に接合されたリガンド化合物;及び
前記リガンド化合物に配位結合された放射性同位元素を含む、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記リガンド化合物が、NODA-GA-NH
2、DOTA-GA、DOTA、TETA、及びNOTAからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項
10記載の方法。
【請求項12】
前記放射性同位元素が、
11C、
13N、
15O、
18F、
38K、
62Cu、
64Cu、
68Ga、
82Rb、
124I、
89Zr、
99mTc、
123I、
111In、
67Ga、
177Lu、
201Tl、
117mSn、
125I、
131I、
166Ho、
188Re、
67Cu、
89Sr、
90Y、
225Ac、
213Bi、及び
211Atからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項
9記載の方法。
【請求項13】
下記式(2)で示されることを特徴とする、アスコルビン酸とヒアルロン酸ナノゲルとの接合体。
【化1】
前記式において、mは1乃至5である。
【請求項14】
前記接合体は、アスコルビン酸の保管安定性が向上されたことを特徴とする、請求項
13記載の接合体。
【請求項15】
請求項
13に記載の接合体を有効成分として含む、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる化粧料組成物。
【請求項16】
請求項
13に記載の接合体を有効成分として含む、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる食品組成物。
【請求項17】
抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる製剤を製造するための請求項
13に記載の接合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年1月11日に出願された韓国特許出願第10-2019-0003966号に基づく優先権を主張し、前記明細書全体は参照により本出願に援用する。
【0002】
本発明は架橋剤なしで、生体適合性を有し、純粋なヒアルロン酸架橋剤であるナノ粒子を製造する方法及びそのように製造されたナノ粒子、そして、このようなナノ粒子の活用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ヒアルロン酸は、エラスチン、コラーゲンと共に皮膚細胞を構成する成分であり、1g当たり1000mlの水分を含むことができ、通常水分貯蔵庫とも呼ばれ、化粧品材料として広く活用されている。
【0004】
生体での使用が可能であり、生体適合性で純粋なヒアルロン酸の水和ゲルのようなナノ粒子は、これの造影剤としての使用及び生体内での使用に必須であると考えられるが、ヒアルロン酸に架橋結合をしてナノ粒子の形態に転換し、活用する研究は、未だに初期段階であり、さらに架橋剤を活用せずにナノ粒子を合成する研究はほぼ報告されていない。
【0005】
一方、ヒアルロン酸水溶液に電子ビームを照射することでナノ粒子を製造する方法が提供されたことがあるが(特許文献1)、ナノ粒子の製造条件におけるヒアルロン酸の濃度が高いことから経済的ではなく、直径100nmを超えるナノ粒子のみが製造されるため、様々な分野に活用されるには限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[発明の詳細説明]
[技術的課題]
ここで、本発明は、前記従来の問題点及び必要性を認識し、生体適合性で純粋なヒアルロン酸ナノ粒子又はナノゲルを製造する新しい方法を提供する。
【0008】
本発明の方法は、別途の架橋剤を含まず、非有機溶媒の水溶液中でヒアルロン酸架橋ナノ粒子が形成できる方法を提供し、又は、ナノ粒子のサイズを制御することができる方法を提供する。
【0009】
[技術的解決方法]
一態様としての本発明は、ヒアルロン酸水溶液に電子ビームを照射してヒアルロン酸の分子間又は分子内の架橋結合を形成することを含む、架橋されたヒアルロン酸ナノ粒子を製造する方法を提供する。
【0010】
本発明の前記ナノ粒子とは、サイズが数乃至数百ナノメートル(nm、10億分の1メートルの物質)である粒子を意味する。本発明の前記ナノ粒子は、粒子のサイズが1~100nmであることを特徴とすることができるが、これに制限されるものではない。本発明の前記ナノ粒子とは、ナノゲル又はナノハイドロゲルも含む概念であり、以下において、ナノ粒子、ナノゲル又はナノハイドロゲルは、全て本発明に係るナノ粒子を意味するものとして使われる。
【0011】
前記ヒアルロン酸水溶液は、酸性であることを特徴とし、酸性水溶液のために前記ヒアルロン酸含有溶液にHClO4を追加で含むことができる。以下で詳しく説明し、立証するとおり、ヒアルロン酸水溶液を酸性にする場合やヒアルロン酸水溶液に酸が添加される場合は、そうでない場合に比べて、高いナノ粒子の合成効率がさらに増大することを新たに提供する。また、pHの調節及び酸化合物の添加濃度を調節することで、ナノ粒子のサイズを予想外に制御可能なことを提供する。
【0012】
本発明の前記ヒアルロン酸(hyaluronic acid)は、結合組織内の細胞間質に広く分布し、生理条件下で粘着性と弾力性を有する溶液を形成することにより、虹彩、網膜などの組織、血管内皮細胞、上皮細胞などを機械的に保護し、緩衝の役割を提供することとして知られた細胞外マトリックスの主要成分である。本発明で前記ヒアルロン酸は、物性、形状、サイズ等に制限がなく、無菌処理したものが好ましい。また、前記ヒアルロン酸は、5~5000kDaの重量平均分子量、好ましくは5~3000kDaの重量平均分子量を有してもよい。また、前記ヒアルロン酸は、薬剤学的に許容可能な塩の形態で使用することができるが、前記薬剤学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩などを含み、好ましくはナトリウム塩を含む。また、ヒアルロン酸の誘導体も使用することができるが、この誘導体は、具体的に、架橋結合、硫化、エステル化又はアミノ酸結合によって化学的に修飾されたヒアルロン酸であってもよい。
【0013】
本発明において、前記ヒアルロン酸水溶液は、pH1~6であり、より好ましくはpH1~5、さらに好ましくはpH1~4、最も好ましくはpH1.5~3.5であってもよい。
【0014】
本発明が提供するヒアルロン酸ナノ粒子の製造方法において、前記ヒアルロン酸水溶液の濃度は0.05~7%(w/v)であり、好ましくは0.1~5%(w/v)であってもよい。
【0015】
前記水溶液は、架橋剤と有機溶媒を含まないことを特徴とする。
【0016】
前記電子ビームを照射した後、透析及び凍結乾燥段階を追加的に含む。
【0017】
前記電子ビームの照射線量を変更してヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを制御することを特徴とし、前記電子ビームの照射線量を増やして前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを小さくすることを特徴とする。
【0018】
本発明が提供するヒアルロン酸ナノ粒子の製造方法で照射される電子ビームは、0.5~300kGyの照射量で照射することができ、好ましくは1~250kGy、最も好ましくは1~200kGyの照射量で照射することができる。
【0019】
本発明において、前記電子ビームの総照射エネルギー強度は、0.1MeV乃至5Mevであることを特徴とすることができる。好ましくは、電子ビームの総照射エネルギー強度は0.5MeV乃至3MeV、最も好ましくは1.0MeV乃至2.5MeVであってもよい。
【0020】
前記水溶液のpHを調節し、前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを制御することを特徴とし、前記水溶液のpHを下げて前記ヒアルロン酸ナノ粒子のサイズを増加させることを特徴とする。
【0021】
本発明が提供するヒアルロン酸ナノ粒子の製造方法は、100nm以下の直径を有するヒアルロン酸ナノ粒子の製造方法であり、好ましくは50nm以下の直径を有するヒアルロン酸ナノ粒子、最も好ましくは30nm以下の直径を有するヒアルロン酸ナノ粒子の製造方法であってもよい。
【0022】
一方、本発明は、前記方法によって製造された、ヒアルロン酸の分子間又は分子内で架橋結合されたナノ粒子を提供する。
【0023】
前記ナノ粒子は、膨潤特性を有するハイドロゲルであることを特徴とする。
【0024】
前記ナノ粒子は、腫瘍選択性を有することを特徴とする。特に、前記ナノ粒子は、大腸癌又はメラノーマ選択性を有することを特徴とする。
【0025】
前記ナノ粒子は、大腸癌の腫瘍に対して、8倍以上の腫瘍対筋肉比、及び1.5倍以上の腫瘍対血液比を有することを特徴とする。前記ナノ粒子は、メラノーマに対して14倍以上の腫瘍対筋肉比、及び3倍以上の腫瘍対血液比を有することを特徴とする。
【0026】
一方、本発明は、放射性同位元素、有機蛍光物質、無機物質である量子ドット、磁気共鳴映像法用造影剤、コンピュータ断層撮影用造影剤、陽電子断層撮影用造影剤、超音波造影剤、蛍光造影剤、及びアップコンバージョン物質からなる群から選択される少なくとも1つの標識物質で標識された前記ヒアルロン酸ナノ粒子を含む造影剤を提供する。
【0027】
前記ナノ粒子に接合されたリガンド化合物及び前記リガンド化合物に配位結合された放射性同位元素を含む。
【0028】
前記リガンド化合物は、NODA-GA-NH2、DOTA-GA、DOTA、TETA、及びNOTAからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
【0029】
前記放射性同位元素は、11C、13N、15O、18F、38K、62Cu、64Cu、68Ga、82Rb、124I、89Zr、99mTc、123I、111In、67Ga、177Lu、201Tl、117mSn、125I、131I、166Ho、188Re、67Cu、89Sr、90Y、225Ac、213Bi、及び211Atからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする。
【0030】
一方、本発明は、アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体を提供する。
【0031】
本発明において、前記「接合体(conjugate)」とは、複数の化合物が互いに連結された化合物を意味する。前記連結は、非共有結合又は共有結合によって達成することができる。つまり、本発明の前記接合体は、アスコルビン酸とヒアルロン酸とが直接的又は間接的に非共有結合又は共有結合されていることを意味する。好ましくは、本発明の接合体は、ヒアルロン酸のカルボキシル酸基に、アスコルビン酸のヒドロキシ基が、C1~C5のアルキル基を介して結合を形成することにより、強固に共有結合的に接続されたものであってもよい。
【0032】
本発明において、前記「アスコルビン酸(ascorbic acid)」とは、下記化学式1で表示される、抗酸化作用を有する物質であり、水溶性ビタミン、ビタミンCともいうが、薬学製剤、飼料、メラニン色素の蓄積抑制、医療薬品、化粧品を含むさまざまな産業的応用に用いられている。しかし、前記アスコルビン酸は、極めて不安定な化合物であり、酸化条件と熱条件で不安定で、製造過程において、熱、空気、光に晒されると活性を失い、流通過程でその活性が消失されて活用に大きな制限を有する。
【0033】
【0034】
本発明において、前記「ヒアルロン酸ナノゲル」という語は、特に記載がない限り、架橋結合を含む様々な化学的修飾を有することのみならず、様々な鎖長及び電荷状態を有するヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩(hyaluronate)又はヒアルロナン(hyaluronan)のすべての変形体(variant)、及び変形体が架橋結合を形成してナノメートルサイズのハイドロゲル(hydrogel)を形成したことを意味する。つまり、前記ヒアルロン酸ナノゲルは、ヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronate)と同様に様々な対イオンを有する、ヒアルロン酸の様々なヒアルロン酸塩由来のナノゲルを包括する。例えば、-CH2OH基の-CHO及び/又は-COOHへの酸化と同様である、酸化;例えば、-CHOの-CH2OHへの還元又はアミンとの結合でイミンを形成し、2次アミンへの還元を伴う還元と同様である、選択的に還元を伴う、隣接なヒドロキシル基の過ヨウ素酸塩酸化(periodate oxidation);硫酸塩化(sulphation);選択的脱アミノ化(deamination);新しい酸と共にアミドの形成を伴う、脱アミド化(deamidation);エステル化(esterification);架橋結合;タンパク質、ペプチド、及び活性医薬成分のような様々な分子とヒアルロン酸の結合を含む、例えば、架橋結合剤(crosslinking agent)又はカルボジイミド(carbodiimide)の助けによる結合を利用した、様々な化合物との置換;及び脱アセチル化(deacetylation)のようなヒアルロン酸の様々な誘導体由来のナノゲルも前記語により包括される。
【0035】
本発明の前記ヒアルロン酸ナノゲルは、ヒアルロン酸分子を基本単位にして形成されたナノメートルサイズのハイドロゲルであれば、その製造方法は特に制限されない。当業界でナノメートルサイズのヒアルロン酸ハイドロゲルを製造する方法はよく公知されており、例えば、架橋剤を利用した製造方法、電子ビームを利用した製造方法などが参考になることができるが、最も好ましくは、前記ヒアルロン酸ナノゲルは、前述したヒアルロン酸の酸性水溶液に電子ビームを照射して製造されたものでもある。
【0036】
本発明で前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲルの接合体は、下記化学式2で表示されることを特徴とすることができる:
【0037】
【0038】
前記式において、mは1乃至5である。
【0039】
本発明が提供する前記接合体は、ヒアルロン酸分子のカルボン酸基:アスコルビン酸分子の割合が1乃至5:1で、好ましくは1乃至4:1、さらに好ましくは2乃至4:1、最も好ましくは2乃至3:1であってもよい。
【0040】
本発明において、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体は、下記の反応式1~3に従って順次製造されることを特徴とすることができる:
【化3】
【0041】
前記式において、mは1乃至5である。
本発明の前記反応式2及び3において、ヒアルロン酸は、反応式2及び3を経た後に、架橋結合が誘導されてナノゲルを形成してもよく、公知された方法又は本願発明が提供するヒアルロン酸ナノゲルの製造方法に基づいてナノゲルの形態に製造した後に前記反応式2及び3を適用してもよい。
【0042】
好ましくは、本発明の前記反応式2及び3において、ヒアルロン酸は公知の方法又は本願発明が提供するヒアルロン酸ナノゲルの製造方法に基づいてナノゲルの形態に製造した後に前記反応式2及び3を適用することを特徴とすることができる。
【0043】
本発明の一実施例によると、前記接合体に含まれるアスコルビン酸は、安定性が著しく向上され、極めて過酷な条件で放置した後にも、アスコルビン酸の生理活性が同じく発揮されることが確認できた。従って、本発明が提供する前記接合体は、アスコルビン酸の保管安定性が向上されることを特徴とすることができる。
【0044】
一方、本発明は、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲルを有効成分として含む、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる化粧料組成物を提供する。
【0045】
また、本発明は、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲルを有効成分として(本質的に)構成される、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる化粧料組成物を提供する。
【0046】
本発明の化粧料組成物に含まれる成分は、有効成分として、前記有効成分以外に、化粧品組成物に通常に利用される成分を含み、例えば、抗酸化剤、安定化剤、溶解剤、ビタミン、顔料及び香料のような通常の補助剤、そして担体を含む。
【0047】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常に製造されるいかなる剤型でも製造することができる。例えば、溶液、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、クリーム、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、及びスプレーなどに剤形化することができるが、これに限定するものではない。より具体的には、柔軟化粧水(スキン)、栄養化粧水(ミルクローション)、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、又はパウダーの剤形に製造することができる。
【0048】
好ましくは、本発明の化粧料組成物は、W/Oクリーム、O/Wクリーム、O/Wエッセンス、及びハイドロゲル剤形であることを特徴とすることができ、最も好ましくはハイドロゲル剤形であるが、これに制限するものではない。
【0049】
本発明の剤形が、ペースト、クリーム、又はゲルの場合には、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、又は酸化亜鉛などが利用できる。
【0050】
本発明の剤形が、パウダー又はスプレーである場合には、担体成分として、ラクトース、タルク、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、又はポリアミドパウダーが利用でき、特にスプレーの場合、追加的にクロロフルオロハイドロカーボン、プロパン/ブタン、又はジメチルエーテルのような噴射剤を含むことができる。
【0051】
本発明の剤形が、溶液又は乳濁液である場合には、担体成分として、溶媒、溶解剤、又はエマルションが使用される。例えば、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイル、グリセロールの脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又はソルビタン脂肪酸エステルがある。
【0052】
本発明の剤形が、懸濁液である場合には、担体成分として、水、エタノール、もしくはプロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁剤、微小結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー、又はトラガカントなどが利用できる。
【0053】
本発明の剤形が、界面活性剤含有クレンジングである場合、担体成分として、脂肪族アルコール硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテル硫酸塩、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性油、ラノリン誘導体、又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが利用できる。
【0054】
本発明において、前記組成物は、抗酸化活性を有することを特徴とするものであってもよい。前記抗酸化は、酸化を抑制する作用を意味するものであり、人体では酸化促進物質(prooxidant)と酸化抑制物質(antioxidant)が均衡しているが、様々な要因によってこのような均衡状態が崩れることになり、酸化促進の方に偏ると、酸化的ストレス(oxidative stress)が誘発されて、潜在的な細胞損傷及び病理的疾患を起こすことになる。
【0055】
本発明の一実施例で、前記組成物が優れたDPPHフリーラジカル消去活性を示すことを確認した。
【0056】
本発明で使用される用語である「美白」とは、皮膚を白くすることを意味し、メラニンの合成を阻害してメラニンの皮膚沈着を抑制したり防止したりするすべての作用を意味する。本発明において、前記組成物は、チロシナーゼ(tyrosinase)の活性を阻害することを特徴とするものであってもよい。前記チロシナーゼは、活性部位に一対の銅イオンを含有している金属含有タンパク質であり、メラニンの生成経路において、L-チロシンがヒドロキシル化反応を経て3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)に転換され、これがまたフェニルアラニン-3,4-キノン(ドーパキノン)に酸化された後、ドーパクロム(dopachrome)、インドール-5,6-キノンなどの様々な中間体を経てメラニンに合成される段階に関与する酵素を意味する。
【0057】
本発明の一実施例において、前記組成物が、濃度依存的にチロシナーゼ阻害活性を示すことを確認し、美白活性を有することが確認できた。
【0058】
本発明において、前記組成物は、メラニンの生成を抑制することを特徴とするものであってもよい。前記メラニンは、黒褐色粒の色素であり、メラニン細胞内のメラノソームという細胞小器官によって作られる。メラニンは、皮膚、毛、目などに存在し、メラニンの量に応じて皮膚の色が決定されるが、メラニンの量が多いほど、黒肌色を帯びる。
【0059】
本発明の一実施例において、前記組成物が、濃度依存的にメラニン生成抑制効果を示すことを確認し、美白活性を有することが確認できた。
【0060】
本発明で使用される用語である「シワ」とは、皮膚が老けて生じた細かい線を意味するものであり、遺伝子による原因、皮膚真皮に存在するコラーゲンの減少、外部環境等によって誘発され得る。本発明において、前記組成物は、コラーゲンの生合成を促進することを特徴とすることができる。前記コラーゲンは、骨、軟骨、皮膚、腱などの結合組織に存在する。皮膚が紫外線などの外部刺激に継続的に晒される場合、皮膚弾力性に関与するコラーゲン線維が損傷されて肌老化が進行する。
【0061】
本発明の一実施例において、前記組成物が、濃度依存的にコラーゲンの生合成を増加させ、シワの改善に効果を奏することができることが確認できた。
【0062】
本発明で使用される用語である「肌老化」とは、皮膚弾力性の減少、ツヤの減少、シワの生成、再生力の弱化、又は重度の乾燥などの症状が現れることであり、時間の経過又は外部環境などによって誘発され得る。
【0063】
本発明の一実施例において、前記組成物が、線維芽細胞の増殖を促進し、損傷した皮膚の再生と弾力の改善が可能であることが確認できた。
【0064】
一方、本発明は、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体を有効成分として含む、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止用の食品組成物を提供する。
【0065】
また、本発明は、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体を有効成分として(本質的に)構成される、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止用の食品組成物を提供する。
【0066】
本発明に係る食品組成物は、機能性食品、栄養補助剤、健康食品、及び食品添加剤などのすべての形態を含む。前記類型は、当業界に公知された通常の方法によって様々な形で製造することができる。
【0067】
例えば、健康食品としては、本発明の食品用組成物自体を、茶、ジュース、及びドリンクの形態で製造し飲用するようにしたり、顆粒化、カプセル化、及び粉末化して摂取したりすることができる。また、本発明の食品用組成物は、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止の効果があると知られている公知の物質又は活性成分と一緒に混合して、組成物の形態で製造することができる。
【0068】
また、機能性食品としては、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例えば、果物缶詰、瓶詰、ジャム、マーマレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例えば、ハム、ソーセージ、コンビーフ等)、パン類、麺類(例えば、うどん、そば、ラーメン、スパゲッティ、マカロニ等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例えば、バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、並びに各種調味料(例えば、味噌、醤油、ソース等)等に本発明の食品用組成物を添加して製造することができる。
【0069】
本発明に係る食品組成物の好ましい含有量は、これに限定されないが、好ましくは、最終的に製造された食品の総重量のうち、0.01~50重量%である。本発明の食品用組成物を食品添加物の形態で使用するために、粉末又は濃縮液の形で製造し使用することができる。
【0070】
また、本発明は、抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止に用いられる製剤を製造するための、前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体の使用を提供する。
【0071】
また、本発明は前記アスコルビン酸及びヒアルロン酸ナノゲル接合体を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む抗酸化、美白、シワ改善、又は肌老化防止の方法を提供する。
【0072】
本発明の前記「有効量」とは、個体に投与した時、抗酸化、美白、シワ、もしくは肌老化に関連する疾患の改善、治療、予防、検出、診断、又は抗酸化、美白、シワ、もしくは肌老化に関連する疾患の抑制又は減少効果を示す量を意味し、前記「個体」とは、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトを含む動物であってもよく、動物に由来する細胞、組織、器官等であってもよい。前記個体は、前記効果が必要な患者であってもよい。
【0073】
本発明の前記「治療」とは、抗酸化、美白、シワ、もしくは肌老化に関連する疾患、又は抗酸化、美白、シワ、もしくは肌老化に関連する疾患の症状を改善させることを包括的に指し、これは前記疾患の治癒、実質的予防、又は状態の改善を含むことができ、前記疾患から始まる一つの症状又はほとんどの症状を緩和させたり、癒したり、予防したりすることを含むが、これに制限されるものではない。
【0074】
本発明において、用語「~を含む(comprising)」とは、「含有する」又は「特徴とする」と同じく使用され、組成物又は方法において、記載されていない追加的成分要素又は方法の段階を排除しない。用語「~からなる(consisting of)」とは、「~で構成される」と同じく使用され、別途に記載されていない追加的要素、段階、又は成分などを除外することを意味する。用語「本質的に~からなる(essentially consisting of)」又は「本質的に構成される」とは、組成物又は方法の範囲において、記載された成分要素又は段階と共に、これの基本的な特性に実質的な影響を及ぼさない成分要素又は段階などを含むことを意味する。
【発明の効果】
【0075】
本発明は、純粋なヒアルロン酸ナノ粒子を、架橋剤及び有機溶媒なしで、水溶液中で製造をすることができる方法を提供する。本発明は、最適化された電子ビームの条件下で、再現性を有するように、様々なナノメートルサイズのヒアルロン酸ナノ粒子を均一に合成することができ、合成されたヒアルロン酸ナノ粒子の、蛍光標識を通じた皮膚透過度の確認並びに放射性標識を通じた腫瘍診断造影剤及び治療剤としての使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図1は、ヒアルロン酸ポリマーが電子ビームによって架橋され、ヒアルロン酸の粒子が形成されることを示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1のヒアルロン酸のサイズ分布を示すグラフである。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1のヒアルロン酸のサイズ分布を示すグラフである。
【
図4】
図4は、100kDaのヒアルロン酸(HA3)の0.5%(w/v)水溶液(pH2.0乃至2.4)に電子ビームを照射した際の、電子ビームの照射線量に応じたナノゲルの粒子サイズを棒グラフで示したものである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1のサンプルのうち1つのヒアルロン酸ナノ粒子のDLS分析結果である。
【
図6】
図6は、ヒアルロン酸ナノ粒子を大量に合成して、凍結乾燥プロセスの後に粉末形のサンプルを得た写真である。
【
図7】
図7は、本発明の実施例1に基づいて製造されたヒアルロン酸ナノ粒子のTEM写真である。
【
図8】
図8は、本発明の実施例1に基づいて製造されたヒアルロン酸ナノ粒子のハイドロゲルの特性を示す実験結果の写真である。
【
図9】
図9は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子に、二重機能性キレートであるNODA-GA-NH
2を接合してキレート化合物を製造する過程を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子を、Cu-64で放射性標識する過程を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子にCu-64の放射性標識がされたキレート化合物の放射化学的純度の結果を示す。
【
図12】
図12は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子にCu-64の放射性標識がされたキレート化合物のPBS(Phosphate Buffer Saline)と血清(Fetal Bovine Serum)での安定性を、時間別radio-TLCで分析した結果である。
【
図13】
図13は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子にCu-64の放射性標識がされたキレート化合物の、正常マウスでの生体分布確認実験の結果である。
【
図14】
図14は、一般的に最終的サンプルを得る凍結乾燥過程ではなく、合成されたHAナノゲルを有機溶媒で沈殿させる方法にて得られたHAナノゲルに対する生体分布確認実験の結果である。
【
図15】
図15は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子の、大腸癌腫瘍細胞(CT26)を利用した腫瘍モデルにおける生体分布確認実験の結果である。
【
図16】
図16は、本発明の実施例2のヒアルロン酸ナノ粒子の、皮膚癌細胞(メラノーマ/B16F10)を利用した腫瘍モデルにおける生体分布確認実験の結果である。
【
図17】
図17は、放射性同位元素のCu-64で標識されたヒアルロン酸ナノゲルを利用した、腫瘍モデルに関する核医学イメージングの画像である。
【
図18】
図18は、アセタール形態に保護されたアスコルビン酸の3番OH基に1-クロロ-3-ヨードプロパンを結合させた後、クロロ基(Cl)をヨウ素基(I)に置換させ、保護基であるアセタール基を除去してアスコルビン酸誘導体を合成する過程を示した図である。
【
図19】
図19は、ヒアルロン酸ナノゲルのカルボン酸基をTBA(tetrabutyl ammonium)基に置換する過程を示した図である。
【
図20】
図20は、ヨウ素基に置換されたアスコルビン酸誘導体を、TBA形態で得られたヒアルロン酸ナノゲルとDMSO溶媒下で約12時間程度攪拌させ、反応溶液にアセトンを添加して、アスコルビン酸が結合された粉末状のヒアルロン酸ナノゲル誘導体を合成する過程を示した図である。
【
図21a】
図21aは、アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノゲル誘導体の製造の有無をNMR(
図21a)で確認した図である。
【
図21b】
図21bは、アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノゲル誘導体の製造の有無をHPLCクロマトグラム(
図21b)で確認した図である。
【
図22】
図22は、アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノゲル誘導体(HA-VitC)及びアスコルビン酸(AA)水溶液をそれぞれ50℃で48時間放置した後、HPLCを用いて分析し、安定性を評価した結果である。
【
図23a】
図23aは、各実験材料のメラニン生成抑制能とチロシナーゼ活性の抑制能を評価した結果である。
【
図23b】
図23bは、各実験材料のメラニン生成抑制能とチロシナーゼ活性の抑制能を評価した結果である。
【
図24a】
図24aは、各実験材料の活性酸素消去能をDPPHアッセイで評価した図である(
図24a)。
【
図24b】
図24bは、各実験材料の活性酸素消去能をDPPHアッセイで評価し、これを定量化してグラフに示した図である(
図24b)。
【
図25a】
図25aは、各実験材料のチロシナーゼ抑制能を評価した結果である。
【
図25b】
図25bは、各実験材料のチロシナーゼ抑制能を評価した結果である。
【
図26】
図26は、各実験材料の線維芽細胞増殖促進能を評価した結果である。
【
図27】
図27は、各実験材料がコラーゲンの生合成に及ぼす影響を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を図面に例示し、本文に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術の範囲に含まれるすべての変更、均等物、乃至代替物を含むものとして理解されるべきである。各図面を説明する際に類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。
【0078】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は文脈的に明らかに違う意味を有しない限り、複数の表現を含む。本出願において、「含む」又は「有する」などの語は、明細書に記載された特徴、段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものが存在することを指すためのことであるのみであって、一つ又はそれ以上の他の特徴や段階、動作、構成要素、部分品、又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加的可能性を予め排除しないものとして理解するべきである。
【0079】
別様に定義されない限り、技術的又は科学的な用語を含めてここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一な意味を持っている。一般的に使用される事前に定義されているような用語は、関連技術の文脈的意味と一致する意味を有するものとして解釈されるべきであり、本出願で明らかに定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されない。
【0080】
実施例1:ヒアルロン酸の分子量サイズ、電子ビーム条件と酸の濃度に応じたナノ粒子の合成分析
ヒアルロン酸を用いた電子ビーム照射実験には、下記のように、3種類の相異な分子量のヒアルロン酸を使用し、酸性水溶液の条件で実験を行った。
【0081】
【0082】
因みに、本発明者は、先行研究(韓国登録特許第1893549号)を使用して、10kDaのヒアルロン酸1%(w/v)水溶液に50kGyの電子ビームを照射した時に380nmのナノゲル、及びヒアルロン酸5%(w/v)水溶液に200kGyの電子ビームを照射した時に108nmのナノゲルが生成されることを確認したが、それ以外の条件ではナノゲルが形成されず、前記条件で製造されたナノ粒子の場合にもサイズが比較的に大きかったので、産業的活用度に限界があることを発見した。
【0083】
これにおいて、本発明者は、先行研究と同様の分子量(8kDa)のヒアルロン酸(HA1)を利用しながら、より低い濃度のヒアルロン酸水溶液の条件で経済的なコストで製造が可能である他にも、粒子のサイズが極めて小さいナノゲルを提供するために、酸性条件のヒアルロン酸水溶液に電子ビームを照射する方法を試みた。
【0084】
具体的に、下記表2に示した濃度(w/v%)のHA1水溶液にHClO4を添加してpHを1.6乃至2.1に調節した後、電子ビームを下記の表2に示した照射線量(kGy)で、1MeVのエネルギーを用いて照射した。
これに関する結果を下記表2に示した。
【0085】
下記の表2に示したように、様々な電子ビーム照射エネルギーで様々な濃度のヒアルロン酸(HA1)を活用し、追加的に酸を添加した際に、多分散指数(Polydispersity index)が低い3~4nmのサイズの小さなナノ粒子を合成することができる条件を確認した。
【0086】
【0087】
その次に、HA2の場合、酸(Acid A、HClO4)を添加して水溶液のpHを1.8乃至2.2に下げて電子ビーム照射を行った際、ナノ粒子がよく作られることを確認することができ、添加された酸の濃度が増加するにつれて、粒子のサイズが増加する傾向を確認した。
【0088】
【0089】
その次に、HA3を活用した実験でも、酸を添加した際、ナノ粒子が作られることを確認することができた。これに関する結果を
図4に示した。また、概ね添加される酸の濃度が増加するにつれて、粒子のサイズが増加する傾向を確認することができ、電子ビーム照射線量が増加するにつれて、粒子のサイズが小さくなる傾向を確認した。
【0090】
実施例1で合成したサンプルのうち1つの粒子は、
図5で確認された通り、8.1nmのサイズであることを、DLSを通じて確認することができた。
【0091】
このような結果を示すヒアルロン酸ナノ粒子を大量に合成し、
図6の写真のように、凍結乾燥過程後の粉末形でサンプルを得ることができた。
【0092】
以下の実験では、pH2.0、1%(w/v)HA3水溶液に100kGyの電子ビームを照射して(照射エネルギー2.5MeV)製造されたナノ粒子を利用した。
【0093】
(1)ナノ粒子の構造分析
合成されたヒアルロン酸ナノ粒子について、DLSを通じてナノ粒子のサイズを測定する他にも、透過電子顕微鏡(TEM)を通じて実際に合成されたナノ粒子の形態学的模様を、直接的に確認することを試みる研究を行った。
【0094】
ナノ粒子を、炭素がコーティングされた銅のグリッド(Grid)の上に2~3滴程度落とし、酢酸ウラニルを用いた染色過程を経た後、十分な時間を置いて水分を完全に乾燥した後に、
図7のようにTEMを利用し分析した。
【0095】
DLSでの結果と同様に、約10nm以下の小さいサイズを示すことを確認することができ、粒子の形状は明確ではないが、概ね円形を維持していることを確認することができた。
【0096】
(2)ハイドロゲルの特性分析
合成されたナノ粒子が実質的に水をよく含む(Swelling)ハイドロゲルの特徴を有するかどうかを確認する実験を行って、対照群としては純粋な水と電子ビームを照射しなかったヒアルロン酸とを用いて実験を行った。
【0097】
同一な量のヒアルロン酸ナノ粒子と対照群を、それぞれ500μLの水に溶かした後、分離膜を有する遠心フィルターを使用して遠心分離を行い、それぞれのチューブの底に落ちた水の量を確認し、その差を見やすくするためにチューブの下に落ちた水を緑色のインクで染色した後、写真を撮った。
図8に示した。
【0098】
その結果を確認した時、電子ビームを照射して得られたナノ粒子のサンプルにおいて、遠心分離過程の後にチューブの底に落ちる水の量がより少なく、上澄み液の部分により多くの溶液が残っていることを確認することができた。このような結果を通じて、電子ビーム照射を介して合成されたヒアルロン酸ナノ粒子が、対照群よりも水をよく含み、ハイドロゲルとしての特徴を有していることを確認することができた。
【0099】
実施例2:ヒアルロン酸ナノゲルの活用
(1)造影剤と接合されたヒアルロン酸ナノゲルの安定性評価
図9の概略図のように、NODA-GA-NH
2を用いてヒアルロン酸ナノゲルに接合する実験を行っており、ヒアルロン酸ナノゲルをピリジンに溶かした後、トシルクロリドを1滴ずつゆっくりと落としながら夜通し反応を行った。この後、NODA-GA-NH
2を追加した後、高熱を加えながら一日程度反応を行った後、NODA-GA-NH
2との接合反応が成されたヒアルロン酸ナノゲルを遠心分離器で分離した。凍結乾燥過程を通じて純粋な白粉末形態のNODA-GAが接合されたヒアルロン酸ナノゲルを得た。
【0100】
図10の概略図のように、Cu-64を用いた放射性標識を行っており、pHが6.8であるバッファにNODA-GA-ヒアルロン酸ナノゲルを入れて適切な温度及び時間で
64CuCl
2と反応した後、遠心分離器を通じてCu-64が標識されたヒアルロン酸ナノゲルを精製して得る過程を経た後、Radio-TLCを使用して放射化学的純度を確認した。
【0101】
その結果、
図11で確認した通り、放射化学的純度がほぼ100%であり、極めて高くCu-64と優秀な標識反応が行われるのが確認できた。
【0102】
放射標識されたナノ粒子の安定性の場合、放射線分解(Radiolysis)を確認する方法で実験を行っており、PBSや血清を利用して、時間別にradio-TLCで分析し、ナノ粒子の安定性の確認を試みた。
【0103】
その結果、
図12の結果のように、1時間と4時間までの安定性を示すことが確認でき、24時間の結果でも同じく95%以上の優れる安定性を示したので、マウスでも十分にその安定性を維持することが可能だと予測することができる。
【0104】
(2)正常マウスにおける生体分布確認実験
Cu-64で標識されたヒアルロン酸(HA)ナノゲルを用いて、正常マウスに対する生体分布確認実験を行い、臓器に対する分布及び体外への排出経路を確認するための研究を行った。
【0105】
以後合成されたナノ粒子をナノゲルベースの腫瘍造影剤の開発研究に活用する予定であるので、ナノゲルが十分に腫瘍をターゲット可能な時間をおいての実験を企画しており、それに従ってナノゲルを注射した後、24時間後に各臓器に対する分布を確認する方法にて実験した。
【0106】
その結果を確認したところ、
図13のように、合成されたHAナノゲルの場合の中で肝臓が一番高い摂取量を示した。
【0107】
その次に、電子ビームを利用してHAナノゲルを合成する過程において、ビーム照射サンプルに特定のAcid(HClO
4)を追加してpHを変化させた後、合成されたHAを使用して正常マウスに対して生体分布確認実験を行っており(
図14)、前の結果と比較した場合よりも、全体的に体内に残っている程度がより多く減少する傾向を確認することができた。
【0108】
また、一般的に最終的なサンプルを得る凍結乾燥過程ではなく、合成されたHAナノゲルを有機溶媒で沈殿させる方法で得られたHAナノゲルに対しても生体分布確認実験を行っており、
図14で確認されたとおり、他の臓器に対する摂取の程度は同様である。
【0109】
Cu-64と、標識反応が行われたナノ粒子を使用して、腫瘍モデルに対して生体分布確認実験を行っており、注射してから24時間後に各臓器に対する分布を確認して、腫瘍の摂取の程度を確認した。
【0110】
まず、大腸癌腫瘍細胞(CT26)を利用して腫瘍モデルを用意し、6-8mmの適切なサイズに腫瘍が成長した時点で、腫瘍モデルに対する生体分布確認実験を行っており、その結果、
図15で確認されたとおり、肝臓に対して4.5%ID/gで一番高い摂取を示し、次いでに腎臓(1.6%ID/g)、脾臓(1.2%ID/g)に対する摂取が高かった。しかし、腫瘍にも1.0%ID/gの摂取によって他の臓器に比べて高い摂取を示しており、腫瘍対筋肉比(Tumor to muscle ratio)は8.4倍、腫瘍対血液比(Tumor to blood ratio)は1.9倍で、腫瘍の診断に優れ得ることを確認した。
【0111】
また、皮膚癌細胞(メラノーマ/B16F10)を利用して腫瘍モデルを用意し、適切なサイズにまで腫瘍が育った時点で、同様にして24時間後に生体分布確認実験を行った。
図16で確認されたとおり、肝臓や腎臓や脾臓に高い摂取を見せ、ナノゲルが肝臓と腎臓を通して体外に排出されるが、腎臓より肝臓を通して排出される傾向がより高いことを確認することができ、ナノ粒子の特性により脾臓にも高い摂取になり得ることを確認した。その次に、腫瘍(0.62%ID/g)とリンパ節(0.89%ID/g)から高い摂取になり得ることを確認することができたが、腫瘍対筋肉比は14.2倍、腫瘍対血液比は3.2倍であり、腫瘍の優れる診断をすることができることを確認した。
【0112】
放射性同位元素、Cu-64で標識されたヒアルロン酸ナノゲルを利用して、腫瘍モデルの核医学画像研究を進め、先に行った生体分布確認実験で確認すらできなかった細かい臓器に対する摂取及び臓器に対する分布及び排出、又は腫瘍に対するターゲット能力を確認した。
【0113】
核医学画像実験では、大腸癌腫瘍細胞(CT26)を使用した。
図17で確認されたとおり、ヒアルロン酸ナノゲルに関する5時間のPET画像から、生体分布確認実験と同様に肝臓に一番高いシグナルが示されることを確認することができ、その次に腸と腫瘍の順に高い摂取が行われることを確認した。
【0114】
実施例3:ビタミンCが結合されたヒアルロン酸ナノ粒子の合成及びその効能の評価
(1)アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノ粒子の合成
1)アスコルビン酸誘導体の合成
ヒアルロン酸とアスコルビン酸とを効果的に結合させるための方法として、ヒアルロン酸のカルボキシル酸基に、アスコルビン酸誘導体をエステル結合で合成するための戦略を立てた。
【0115】
アセタール形態で保護されたアスコルビン酸の3番ヒドロキシ基に位置選択的に結合することができるアルキル化条件(1-クロロ-3-ヨードプロパン、NaHCO
3、DMSO)を探して保護基を除去し、ヒアルロン酸と結合することができる形態のアスコルビン酸誘導体を合成した(
図18)。
【0116】
具体的には、アセタール形態で保護されたアスコルビン酸の3番OH基に1-クロロ-3-ヨードプロパンを結合させた後、クロロ基(Cl)をヨード基(I)に置換させ、保護基であるアセタール基を除去してアスコルビン酸誘導体を合成した(
図18)。
【0117】
2)アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノ粒子の合成
前記実施例1で製造したヒアルロン酸ナノ粒子に前記製造したアスコルビン酸誘導体を結合した。
【0118】
カルボン酸基を有しているヒアルロン酸ナノ粒子は、反応溶媒であるDMSOに溶けないので、TBA(Tetrabutylammonium)基に置換させる方法を利用した。具体的には、カルボン酸基を含むヒアルロン酸ナノ粒子を水に溶かした後、TBAOHを少しずつ添加してpH=9~10に合わせた後に凍結乾燥し、TBA形態のヒアルロン酸ナノゲルを製造した(
図19)。
【0119】
その後、前記製造されたヨードに置換されたアスコルビン酸誘導体を、TBA形態で得られたヒアルロン酸ナノゲルと共にDMSO溶媒下で約12時間程度攪拌させ、反応溶液にアセトンを添加して、粉末状のアスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノゲル誘導体を収得した(
図20)。
【0120】
アスコルビン酸が結合されたヒアルロン酸ナノゲル誘導体の製造の程度をNMR及びHPLCクロマトグラムで確認し、これを
図21a及び
図21bに示した。
図21に示したように、4.9ppmでアスコルビン酸の1プロトンピーク(proton peak)及び2.1ppmでプロピルリンカーのCH
2ピークが確認されたことにより、アスコルビン酸とヒアルロン酸のエステル結合が行われたことが確認されており(
図21a)、HPLCクロマトグラムでもアスコルビン酸に該当するピークを確認した(
図21b)。
【0121】
NMR分析結果によると、ヒアルロン酸分子のカルボン酸:アスコルビン酸分子の割合は2.5:1で確認された。つまり、ヒアルロン酸分子のカルボン酸基2.5個当たりアスコルビン酸1個が結合していることが確認された。
【0122】
(2)ヒアルロン酸-アスコルビン酸ナノ粒子(HA-VitC)の安定性及び有効性の評価
熱安定性評価は、アスコルビン酸(AA、100μM)と前記製造されたヒアルロン酸-アスコルビン酸ナノゲル(HA-VitC、0.5mg/mL)水溶液をそれぞれ50℃で48時間放置した後、HPLCを用いて分析した。
【0123】
【0124】
図22に示したように、アスコルビン酸(AA)は、時間経過に応じて酸化されてなくなり、一方、HA-VitCはそれに比べて安定であることを確認した(50%以上の安定性改善)。
【0125】
(3)ヒアルロン酸-アスコルビン酸ナノ粒子(HA-VitC)の美白、抗酸化、及びシワ改善の効能評価
美白効能評価は、B16F10マウスメラノーマ細胞株に各試験材料を処理して48時間インキュベーションした後、メラニン含有量アッセイ(Melanin contents assay)法及び細胞性チロシナーゼ活性アッセイ(cellular tyrosinase activity assay)法で測定した。対照群として、アスコルビン酸とアスコルビン酸-2-グルコシド(AA2G)及び前記実施例2で使用したHA1(Oligo-HA)を使用した。
【0126】
試験に使用された材料はすべて-20℃又は50℃で24時間放置した後、実験に使用した。
【0127】
【0128】
図23a及び
図23bに示したように、アスコルビン酸、AA2G、HA-VitC、Oligo-HA(オリゴヒアルロン酸)をそれぞれ50℃で24時間置いた後、-20℃で保存した試料と効能を比較した結果、アスコルビン酸は50℃での保管時、美白効果がなくなったが、HA-VitCの場合には依然として濃度依存的にメラニン生成とチロシナーゼ活性を強く抑制することが確認された。
【0129】
その次に、DPPHアッセイを利用してHA-VitCの活性酸素消去能を評価した。具体的には、アスコルビン酸、Oligo-HA、HA-VitCを
図24に示した濃度で処理した後、従来の公知された方法に基づいて活性酸素消去能を評価し(
図24a)、これを定量化してグラフで示した(
図24b)。
【0130】
図24a及び
図24bを参考すると、ヒアルロン酸(Oligo-HA)の場合、活性酸素消去能が皆無だったことから、HA-VitCの活性酸素消去能は、HA-VitCにおいてHAナノゲルと結合しているVitC(ビタミンC)によって示されたものと判断した。
【0131】
特にビタミンCは、空気に晒された後に酸化に極めて脆弱であって、すぐに分解を受けることを考えると、本発明に係るHA-VitCの場合には、ビタミンCの保管安定性を向上させることができる上に、VitCの効果をそのまま保有しているという点で、活用度が極めて高いと判断される。
【0132】
その次に、HA-VitCの細胞性チロシナーゼの抑制活性を公知された方法に基づいて評価した:
細胞株:B16F10マウスメラノーマ(パサージュ10)、6ウェルプレート、4x10
5細胞/ウェル
評価方法:細胞性チロシナーゼ活性アッセイ
実験材料の処理時間:48時間
実験材料の処理濃度:
図25を参照
これに関する結果を
図25に示した。
【0133】
図25a及び
図25bに示すように、HA-VitCは、濃度依存的に細胞性チロシナーゼを強く抑制することを確認した。
【0134】
その次に、線維芽細胞の増殖効果を従来の公知された方法に基づいて評価した。
【0135】
簡単な実験条件は下記の通りであり、実験材料の種類及び各材料の処理濃度は
図26に示した通りである:
細胞株:HDF-neo、ヒト初代皮膚線維芽細胞(新生児)(Human primary dermal fibroblast-neonatal)(パサージュ15)、24ウェルプレート、1x10
4細胞/ウェル
評価方法:WST-8アッセイ(Ez-cytox)及びプロコラーゲンELISA(Takara#MK101)
実験材料の処理時間:3日、1日断食、無血清状態
これに関する結果を
図26に示した。
【0136】
図26に示したように、アスコルビン酸、AA2G(AG)、及びAPPSの場合、線維芽細胞の増殖促進効果があまりなかったが、HA-VitCの場合、濃度依存的に線維芽細胞の増殖を促進することが確認できた。
【0137】
その次に、HA-VitCがコラーゲンの生合成に及ぼす影響を、従来の公知された方法に基づいて評価した。簡単な実験条件は下記の通りであり、実験材料の種類及び各材料の処理濃度は
図27に示した通りである:
細胞株:HDF-neo、ヒト初代皮膚線維芽細胞(新生児)(パサージュ11)、96ウェルプレート、3x10
3細胞/ウェル
評価方法:プロコラーゲンELISA(Takara#MK101)
実験材料の処理時間:3日、1日断食、無血清状態
これに関する結果を
図27に示した。
【0138】
図27に示したように、HA-VitC処理群で一番高いコラーゲンの生合成が誘導されたことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、純粋なヒアルロン酸ナノ粒子を架橋剤及び有機溶媒なしで、水溶液中で製造することができる方法を提供する。本発明は、最適化された電子ビームの条件下で再現性を有するように、様々なナノメートルサイズのヒアルロン酸ナノ粒子を均一に合成することができ、合成されたヒアルロン酸ナノ粒子の蛍光標識を通じた皮膚透過度の確認及び放射性標識を通じた腫瘍診断のための造影剤及び治療剤の開発に極めて有用に使用することができるので、産業上の利用可能性に極めて優れる。