(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】クラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白プロセスX/D-Z-P(X/Z-D-P)
(51)【国際特許分類】
D21C 9/10 20060101AFI20230712BHJP
D21C 9/14 20060101ALI20230712BHJP
D21C 9/153 20060101ALI20230712BHJP
D21C 9/16 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
D21C9/10 A
D21C9/10 Z
D21C9/14
D21C9/153
D21C9/16
(21)【出願番号】P 2022517240
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 CN2021110189
(87)【国際公開番号】W WO2022028385
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】202010789553.5
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520063990
【氏名又は名称】斉魯工業大学
【氏名又は名称原語表記】QILU UNIVERSITY OF TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】No.3501, Daxue Road, ChangQing District,Jinan City, Shandong Province 250353 China
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楊 桂花
(72)【発明者】
【氏名】張 凱
(72)【発明者】
【氏名】田 中建
(72)【発明者】
【氏名】吉 興香
(72)【発明者】
【氏名】陳 嘉川
(72)【発明者】
【氏名】王 強
(72)【発明者】
【氏名】高 其超
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-219767(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104695265(CN,A)
【文献】特開2004-068219(JP,A)
【文献】特開平02-293486(JP,A)
【文献】特開2004-137653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 1/00 - 11/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白方法X/D-Z-PまたはX/Z-D-Pであって、酸素脱リグニン処理後のパルプをX/D-Z-PまたはX/Z-D-P漂白し、
そのうち、X/D-Z-P漂白プロセス中、X漂白段階とD漂白段階の間でパルプ洗浄が実行されず、
X/Z-D-P漂白プロセス中、X漂白段階とZ漂白段階の間でパルプ洗浄が実行されないことを特徴とする漂白方法。
【請求項2】
Xでは、キシラナーゼの使用量が5~20U/gパルプ、パルプ濃度が10~15%、pH値が5~9、漂白温度が50~80℃、漂白時間が60~120分であることを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【請求項3】
Dでは、ClO2の使用量が0.5~1.0%、パルプ濃度が10~15%、pH値が2~4、漂白温度が50~80℃、漂白時間が30~180分であることを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【請求項4】
Zでは、パルプ濃度が10~15%、pH値が2~4、漂白温度が50~80℃、漂白時間が0.5~5分、エチレングリコール使用量が1~3%、オゾン使用量が0.2~1.5%であることを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【請求項5】
Pでは、H2O2の使用量が1~3%、パルプ濃度が10~15%、pH値が11~12、温度が80~90℃、漂白時間が90~120分であることを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【請求項6】
ECF漂白の前に、木材チップをクラフト法で蒸して煮た後に洗浄およびスクリーニングして未漂白パルプを取得し、次に、未漂白パルプを酸素脱リグニン処理してパルプを得ることをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【請求項7】
X/D-Z-P漂白プロセス中、X/D段階、Z段階、P段階間にパルプ洗浄が実行されることを特徴とする請求項1に記載の漂白方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は2020年8月7日に中国特許庁に提出され、出願番号202010789553.5、発明の名称「クラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白プロセスX/D-Z-P(X/Z-D-P)」の中国特許出願の優先権を要求し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、パルプ化および製紙の技術分野、特にクラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白方法X/D-Z-P(又はX/Z-D-P)に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記述は、本発明に関連する背景情報を提供するだけであり、必ずしも先行技術を構成するものではない。
【0004】
パルプ化および製紙産業は、国民経済の基本的な原材料産業の1つであり、世界の工業製造業において常に重要な位置を占めてきた。紙と紙板の生産と消費のレベルは、国の経済発展と社会の進歩の重要な指標になっている。中国では、パルプ化と製紙の原料は、主に木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプの3つのカテゴリーに分けられる。パルプ化および製紙産業で使用される木材パルプは、主に早生ポプラや早生ユーカリなどの広葉樹であり、それらは、急速な成長、強い適応性、緩い材料、良好な薬液吸収、高いセルロースおよびヘミセルロース含有量などの特徴を有する。それらは、化学パルプ、半化学パルプ、機械パルプ等の種類のパルプの製造に使用できる。
【0005】
現在、中国は紙製品の生産と消費において世界一の国になっているが、製紙業界が直面する資源、エネルギー、環境の制約はますます顕著になっている。リサイクル、低炭素、グリーン経済は新たな開発テーマになった。パルプ化プロセスの改善、製造コストの抑制、紙の品質の向上、製造工程における汚染負荷の低減等は、早急に解決しなければならない問題であり、科学技術者の研究のホットスポットにもなっている。無塩素漂白、完全無塩素漂白、生物学的漂白技術は、エネルギー節約、排出削減、グリーンおよび低炭素開発モデルの要件を満たすため、従来の漂白技術に代わる高強度、高白色度パルプの製造用漂白技術になった。
【0006】
しかしながら、既存のECF漂白プロセスには、漂白のための高い水消費量や廃水には有毒な塩化物が含まれるなどの問題があり、漂白効率を改善する必要もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の問題を克服するために、本発明は、クラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白方法X/D-Z-P(またはX/Z-D-P)を提供する。クラフト漂白パルプからなる紙の物理的強度を確保することを前提として、パルプの白色度を効果的に改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の技術的解決手段により実現される。以下に関与するパルプの濃度は、特に明記されていない限り、すべて質量パーセントである。特に明記されていない限り、関与する試薬および薬物の投与量は、すべて絶対乾燥パルプを基準にしている。
【0009】
上記の技術的目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
【0010】
本発明の第1の態様は、酸素脱リグニン処理後のパルプをX/D-Z-PまたはX/Z-D-P漂白し、
そのうち、X/D-Z-P漂白プロセス中、X漂白段階とD漂白段階の間でパルプ洗浄が実行されず、
X/Z-D-P漂白プロセス中、X漂白段階とZ漂白段階の間でパルプ洗浄は実行されないクラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白方法X/D-Z-P(またはX/Z-D-P)を提供する。
【0011】
従来のD-Eo-D-D漂白手順と比較して、本発明のX/D-Z-P(又はX/Z-D-P)漂白手順は、4つの漂白段階から3つの漂白段階に減少し、オゾンおよび過酸化水素グリーン漂白剤を使用し、二酸化塩素漂白段階が1つだけである。したがって、本発明によって提供される漂白方法の漂白水の消費量および廃水の毒性は、大幅に低減される。従来のD-Eo-D-D漂白手順と比較して、最終白色度が同じである場合、二酸化塩素の消費量は50%以上削減され、水の消費量は20%以上削減される。
【0012】
本発明の第2の態様は、上記の漂白方法によって調製された紙ベース材料を提供する。
【0013】
本発明により調製されたパルプは、優れた白色度および強度性能を有し、クラフト漂白パルプからなる紙の物理的強度を確保することを前提として、パルプの白色度を効果的に改善する。本発明において、前記白色度と強度性能は、パルプから調製された紙の白色度と強度性能を指す。
【0014】
本発明の第3の態様は、紙製品の製造における上記の紙ベース材料の適用を提供する。
【0015】
本出願で調製されたパルプは、優れた白色度と強度性能を備えているため、漂白水の消費量と廃水の毒性が大幅に低減され、紙製品の製造に広く使用されることが期待される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
(1)従来のD-Eo-D-D漂白手順と比較して、本発明のX/D-Z-P(又はX/Z-D-P)漂白手順は、4つの漂白段階から3つの漂白段階に減少し、オゾンおよび過酸化水素グリーン漂白剤を使用し、二酸化塩素漂白段階が1つだけである。したがって、本発明の漂白方法は、漂白水の消費量および廃水の毒性を大幅に低減し、最終白色度が同じである場合、二酸化塩素の消費量は50%以上削減され、水の消費量は20%以上削減される。
(2)本発明により調製されたパルプは、優れた白色度および強度性能を有し、クラフト漂白パルプからなる紙の物理的強度を確保することを前提として、パルプの白色度を効果的に改善する。
(3)本発明の方法は、単純であり、低コストであり、実用性に強く、普及しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明はすべて例示的なものであり、本発明のさらなる説明を提供することを意図していることに留意されたい。特に明記しない限り、本発明で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0018】
ここで使用される用語は、発明を実施するための形態を説明するためだけのものであり、本発明に係る例示的な実施形態を限定することを意図するものではないことに留意されたい。本明細書で使用されるように、文脈が明らかに他のことを指示しない限り、単数形はまた、複数形を含むことを意図している。さらに、「包含」及び/又は「含む」という用語が本明細書で使用される場合、それらは、特徴、ステップ、操作、デバイス、コンポーネント、及び/又はそれらの組み合わせがあることを示すことも理解されたい。
【0019】
本発明において、X/D-Z-P(またはX/Z-D-P)のDは二酸化塩素漂白、Zはオゾン漂白、Xはキシラナーゼ漂白、Pは過酸化水素漂白を指す。
【0020】
クラフト木材パルプ用の短手順のECF漂白方法X/D-Z-P(またはX/Z-D-P)であって、そのステップは次のとおりである。
(1)パルプの準備:木材チップをクラフト法で蒸して煮た後、洗浄してふるいにかけ、未漂白パルプを得て、次に、未漂白パルプに対して酸素脱リグニンを実行してパルプを得る。
(2)ECF漂白:上記パルプの漂白手順はX/D-Z-P漂白処理である。そのうち、X/Dは順次漂白、XとD漂白の間でパルプ洗浄は行われず、X/D段階、Z段階、およびP段階の間でパルプ洗浄は行われ、上記の漂白手順では、DとZを位置交換することができ、すなわち、プロセスをX/D-Z-PからX/Z-D-Pに変更し、X/Zは順次漂白であり、XとZの漂白の間でパルプ洗浄は行われず、DとZの交換は、最終的な漂白結果には影響しない。
【0021】
本発明の研究により、本発明の漂白方法は、中間での洗浄がないため、通常のX-Z-D-PまたはX-D-Z-P漂白パルプよりも優れた強度性能指標を有することが見出された。
【0022】
最良の漂白効果を得るために、本発明は漂白方法の条件を最適化する。いくつかの実施例では、漂白方法の条件は次のとおりである。X/D漂白段階:X中のキシラナーゼ使用量は5~20U/gパルプ、パルプ濃度は10~15%、pH値は5~9、漂白温度は50~80℃、漂白時間は60~120分であり、D中のClO2使用量は0.5~1.0%、パルプ濃度は10~15%、pH値は2~4、漂白温度は50~80℃、漂白時間は30~180分である。Z漂白段階:パルプ濃度は10~15%、pH値は2~4、漂白温度は50~80℃、漂白時間は0.5~5分、エチレングリコールの使用量は1~3%、オゾンの使用量は0.2~1.5%である。P漂白段階:H2O2の使用量は1~3%、パルプ濃度は10~15%、pH値は11~12、温度は80~90℃、漂白時間は90~120分である。上記のプロセス条件を使用することにより、クラフト漂白パルプの紙への物理的強度を確保することを前提として、パルプの白色度を効果的に改善することができる。
【0023】
さらに、前記Xの具体的な方法は以下のとおりである。パルプ濃度を10~15%に調整し、pH値を5~9に調整し、パルプ温度を50~80℃に保ち、キシラナーゼ5~20U/gパルプを加え、60~120分間保持して、キシラナーゼを使用して、パルプ繊維の表面に堆積したキシランとパルプにおけるリグニン-炭水化物複合体構造を分解する。Xの後、洗浄せずに直接ZまたはDに進むことは、漂白剤の浸透とリグニンの溶出に有益であり、漂白剤の漂白効率を改善し、パルプの漂白効果を改善する。
【0024】
二酸化塩素の使用量を減らし、漂白のコストを減らすために、本発明は、Dのプロセス条件を制限する。いくつかの実施例では、前記Dの具体的な方法は以下のとおりである。pH値を2.0~4.0に調整し、パルプ濃度を10~15%に保ち、50~80℃の温度の条件で、Dを行い、ClO2の使用量は0.5~1.0%、漂白時間は30~180分であり、より多くの二酸化塩素を漂白プロセスに参加させ、二酸化塩素の使用量を節約する。
【0025】
本発明は、オゾン使用量からクラフト木材パルプの白色度、硬度、および粘度への影響を研究する。したがって、いくつかの実施例では、前記Zの具体的な方法は以下のとおりである。pH値を2.0~4.0に調整し、パルプ濃度を10~15%に保ち、1~3%のエチレングリコールを加え、漂白温度は50~80℃であり、均一に混合し、Zを実行し、オゾン使用量は0.3~1.5%、漂白時間は0.5~5分で高強度・高白色度パルプを得る。
【0026】
研究により、pH値、温度、濃度、および時間は、Pの効果により大きな影響を与えることがわかっている。したがって、いくつかの実施例では、前記Pの具体的な方法は以下のとおりである。ZまたはDの後にパルプを洗浄し、pH値を11~12に調整し、パルプ濃度が10~15%、温度が80~90℃の条件下で1~3%の過酸化水素を添加し、漂白時間は90~120分で、パルプの白色度をよりよく改善し、製造コストを削減し、経済的利益を改善する。
【0027】
本発明において、パルプに対してXを行った後にDを行い、次にDから得られたパルプに対してZを行い、Zから得られたパルプに対してPを行うかまたはパルプに対してXを行った後にZを行い、次にZから得られたパルプに対してDを行い、Dから得られたパルプに対してPを行う。
【0028】
さらに、上記の漂白処理後のパルプを使用して紙をすく。
【0029】
本開示の別の実施形態は、上記の漂白方法によって得られた漂白パルプから調製された紙ベース材料を提供する。該漂白パルプ紙ベース材料は、より優れた物理的強度性能を有するだけでなく、より高い白色度も有する。
【0030】
本発明はまた、紙製品の製造における上記の紙ベース材料の適用を提供する。
【0031】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。前記具体的な実施例は、本発明を限定するものではなく、説明であることに留意されたい。
【0032】
白色度の測定:パルプは繊維分解機で分解された後、オーストリア製のカイザー法手すき機で紙をすき、その後にYQ-Z-48B白色度計で測定する。
耐折回数:中国製のMIT耐折性試験機で測定する。
比破裂強さ:スウェーデンの企業であるL&W製破裂試験機で測定する。
比引張強さ:中国製のXLWA(B)インテリジェント電子引張試験機で測定する。
詳細に説明されていない残りの実験方法はすべて、本分野での従来の試験方法である。
【0033】
本発明は、キシラナーゼ漂白、二酸化塩素とオゾンおよび過酸化水素の組み合わせを使用して、パルプに対してX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白手順の漂白処理を実施して、より高い白色度および強度を有するパルプを得る。具体的には以下のとおりである。
【0034】
比較例1:
ステップは以下のとおりである。
(1)ユーカリの蒸煮条件は以下のとおりである。アルカリ使用量は21%、液比は1:5、加硫度は25%、蒸煮温度は170℃、105℃で小さな排気を行い、加熱時間は100分、温度保持時間は90分であり、蒸煮後、洗浄とスクリーニングを行って無漂白クラフトパルプを得た。
(2)酸素脱リグニン条件は以下のとおりである。未漂白クラフトパルプの濃度を10%、NaOHの使用量を3%、MgSO4の使用量を0.6%、酸素圧を0.6Mpa、温度を100℃、温度保持時間を60分に調整し、次に洗浄して酸素脱リグニンパルプを得た。
(3)ECF漂白:酸素脱リグニンパルプに対してD-Eo-D-Dという4段階漂白手順の漂白を実行した。D漂白段階のプロセス条件は以下のとおりである。パルプ濃度は10%、3つの段階のClO2の総使用量は1.5~2.0%、pH値は2.0、漂白温度は60℃、漂白時間は30~60分であった。スラリーを洗浄した後、EO漂白段階の処理を実行し、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10~15%、pH値は11~12、酸素圧は0.4Mpa、温度は80~90℃、アルカリ処理時間は30~60分であった。漂白が終了した後、パルプを洗浄した。
(4)紙をすいた:ユーカリクラフト法蒸煮後の未漂白パルプ、酸素脱リグニンパルプ、D-Eo-D-D漂白パルプをそれぞれ35°SRまで叩解し、次にそれぞれ繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させ、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(5)得られたユーカリクラフト法蒸煮後の未漂白パルプ、酸素脱リグニンパルプ、D-Eo-D-D漂白パルプの性能指標を表1に示す。
【0035】
【0036】
実施例1:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの漂白段階漂白手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、キシラナーゼ使用量は15U/gパルプ、pH値は5、漂白温度は60℃、漂白時間は60分である。パルプは洗浄されず、Dを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、ClO2使用量は0.3%、pH値は2.0、漂白温度は60℃、漂白時間は30分である。洗浄後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、pH値は2、漂白温度は60℃、漂白時間は2分、オゾン使用量は0.3%、エチレングリコール使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は3%、パルプ濃度は10%、pH値は11.0、温度は85℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。
または、漂白パラメータを変更せずに、DとZの位置を交換して漂白した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表2に示すように、対照群は、酸素脱リグニンパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白手順を行った漂白パルプであり、実施例1は、酸素脱リグニンパルプがX15/D0.3-Z-P3という3段階漂白手順を行った漂白パルプであった。
【0037】
【0038】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプはX15/D0.3-Z-P3で漂白された後のパルプ性能指標は白色度88.9%ISO、比引張強さ45.19N・m/g、比破裂強さ3.59kPa・m2・g-1、耐折回数23回、カッパ値0.95である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X15/D0.3-Z-P3漂白後、パルプの白色度は44.08%増加し、カッパ値は82.16%減少した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、同様の白色度に漂白すると、X15/D0.3-Z-P3漂白プロセスの二酸化塩素使用量は85.0%減少し、強度性能指標に明らかな変化はなかった。
【0039】
実施例2:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの漂白段階漂白手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は12%、キシラナーゼ使用量は15U/gパルプ、pH値は6、漂白温度は60℃、漂白時間は60分である。パルプは洗浄されず、次にDを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は12%、ClO2使用量は0.5%、pH値は2.0、漂白温度は60℃、漂白時間は30分である。パルプを洗浄した後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は12%、pH値は2、漂白温度は60℃、漂白時間は30分、オゾン使用量は0.9%、エチレングリコールの使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は1.5%、パルプ濃度は10%、pH値は11.0、温度は90℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。
または、漂白パラメータを変更せずに、DとZの位置を交換して漂白した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表3に示すように、対照群は、酸素脱リグニン後のパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白を行ったパルプであり、実施例2は、酸素脱リグニン後のパルプがX15/D0.5-Z-P1.5という3段階漂白手順を行って漂白したパルプであった。
【0040】
【0041】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプがX15/D0.5-Z-P1.5漂白を行ったパルプの性能指標は白色度87.8%ISO、比引張強さ51.66N・m/g、比破裂強さ3.908kPa・m2・g-1、耐折回数25回、カッパ値1.23である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X15/D0.5-Z-P1.5漂白後、パルプの白色度は42.30%増加し、カッパ値は76.67%減少した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、同様の白色度に漂白すると、X15/D0.5-Z-P1.5漂白プロセスの二酸化塩素使用量は75.0%減少し、強度性能指標がある程度改善された。
【0042】
実施例3:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの漂白段階手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、キシラナーゼ使用量は10U/gパルプ、pH値は7、漂白温度は70℃、漂白時間は60分である。パルプは洗浄されず、Dを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、ClO2使用量は0.5%、pH値は2.0、漂白温度は70℃、漂白時間は30分である。パルプを洗浄した後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、pH値は2、漂白温度は70℃、漂白時間は5分、オゾン使用量は0.9%、エチレングリコールの使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は2%、パルプ濃度は10%、pH値は11.0、温度は85℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。
または、漂白パラメータを変更せずに、DとZの位置を交換して漂白した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表4に示すように、対照群は、酸素脱リグニン後のパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白を行ったパルプであり、実施例3は、酸素脱リグニン後のパルプがX10/D0.5-Z-P2という3段階漂白手順を行って漂白したパルプであった。
【0043】
【0044】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプがX10/D0.5-Z-P2漂白を行ったパルプの性能指標は白色度88.4%ISO、比引張強さ46.76N・m/g、比破裂強さ3.607kPa・m2・g-1、耐折回数24回、カッパ値1.04である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X10/D0.5-Z-P2漂白後、パルプの白色度は43.27%増加し、カッパ値は80.26%減少した。対照群のD1.0-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、同様の白色度に漂白すると、X10/D0.5-Z-P2漂白プロセスの二酸化塩素使用量は75.0%減少し、強度性能指標はある程度改善された。
【0045】
実施例4:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニン後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの段階の漂白手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、キシラナーゼ使用量は10U/g、pH値は9、漂白温度は70℃、漂白時間は90分である。パルプは洗浄されず、Dを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、ClO2使用量は0.5%、pH値は4.0、漂白温度は70℃、漂白時間は30分である。パルプを洗浄した後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は10%、pH値は3、漂白温度は70℃、漂白時間は4分、オゾン使用量は0.9%、エチレングリコールの使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は3%、パルプ濃度は10%、pH値は11.0、温度は85℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。または、漂白パラメータを変更せずに、DとZの位置を交換して漂白した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表5に示すように、対照群は、酸素脱リグニン後のパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白後のパルプであり、実施例4は、酸素脱リグニン後のパルプがX10/D0.5-Z-P3という3段階漂白手順を行って漂白したパルプであった。
【0046】
【0047】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプをX10/D0.5-Z-P3で漂白した後、パルプ性能指標は、白色度88.6%ISO、比引張強さ44.48N・m/g、比破裂強さ3.21kPa・m2・g-1、耐折回数24回、カッパ値1.01である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X10/D0.5-Z-P3漂白後、パルプの白色度は43.60%増加し、カッパ値は80.83%減少した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、X10/D0.5-Z-P3漂白後、パルプの白色度は1.4度増加し、二酸化塩素の使用量は66.67%減少し、強度性能指標はわずかに減少した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、同様の白色度に漂白すると、X10/D0.5-Z-P3漂白プロセスの二酸化塩素使用量は75.0%減少し、強度性能指標に明らかな変化はなかった。
【0048】
実施例5:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニン後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの漂白段階漂白手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、キシラナーゼ使用量は10U/gパルプ、pH値は8、漂白温度は80℃、漂白時間は60分である。パルプは洗浄されず、Dを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、ClO2使用量は0.7%、pH値は3.5、漂白温度は80℃、漂白時間は30分である。パルプを洗浄した後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は15%、pH値は3.5、漂白温度は80℃、漂白時間は5分、オゾン使用量は0.9%、エチレングリコールの使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は3%、パルプ濃度は10%、pH値は11.0、温度は85℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。または、漂白パラメータを変更せずに、DとZの位置を交換して漂白した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表6に示すように、対照群は、酸素脱リグニン後のパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白のパルプであり、実施例5は、酸素脱リグニン後のパルプがX10/D0.7-Z-P3という3段階漂白手順を行って漂白して得られたパルプであった。
【0049】
【0050】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプをX/D-Z-Pで漂白した後のパルプ性能指標は、白色度89.0%ISO、比引張強さ44.21N・m/g、比破裂強さ3.12kPa・m2・g-1、耐折回数24回、カッパ値1.12である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X10/D0.7-Z-P3漂白後、パルプの白色度は44.25%増加し、カッパ値は77.42%減少した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、X10/D0.7-Z-P3漂白後、パルプの白色度が1.8度上昇し、二酸化塩素の使用量が53.3%減少し、強度性能指標がわずかに低下した。対照群のD0.5-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、同様の白色度に漂白した場合、X10/D0.7-Z-P3漂白プロセスでの二酸化塩素の使用量は65.0%減少し、強度性能指標はわずかに下がった。
【0051】
実施例6:
ステップは以下のとおりである。
(1)ECF漂白:酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプ(比較例のステップ1)、2)と同じ調製方法)に対して、X/D-Z-Pという3つの段階の漂白手順の漂白を行った。まずX/D段階の漂白を実行し、Xのプロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は12%、キシラナーゼ使用量は10U/gパルプ、pH値は5、漂白温度は75℃、漂白時間は60分である。パルプは洗浄されず、Dを行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は13%、ClO2使用量は1.0%、pH値は2.5、漂白温度は75℃、漂白時間は30分である。パルプを洗浄した後、Z段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。パルプ濃度は13%、pH値は2.5、漂白温度は75℃、漂白時間は3分、オゾン使用量は0.9%、エチレングリコールの使用量は2%である。パルプを洗浄した後、P段階を行い、プロセス条件は次のとおりである。H2O2使用量は3%、パルプ濃度は15%、pH値は11.0、温度は85℃、漂白時間は120分であり、漂白が終了した後、パルプを洗浄した。
(2)紙をすいた:上記の漂白パルプを35°SRまで叩解した後、繊維分解機でパルプ繊維を分解して均一に分散させた後、手すき機で坪量60g/m2の紙をすいた。
(3)得られたX/D-Z-P(またはX/Z-D-P)漂白パルプの性能指標を表7に示すように、対照群は、酸素脱リグニン後のパルプおよびD-Eo-D-Dという4段階漂白を行ったパルプであり、実施例6は、酸素脱リグニン後のパルプがX10/D1.0-Z-P3という3段階漂白手順を行って漂白して得られたパルプであった。
【0052】
【0053】
結果:検出後、酸素脱リグニンを行った後のユーカリクラフトパルプをX10/D1.0-Z-P3で漂白した後、パルプ性能指標は、白色度89.8%ISO、カッパ値0.94である。対照群の酸素脱リグニンパルプと比較して、X10/D1.0-Z-P3漂白後、パルプの白色度は45.54%増加し、カッパ値は72.90%減少した。対照群のD1.0-Eo-D0.5-D0.5漂白パルプと比較して、X10/D1.0-Z-P3漂白後、パルプの白色度は1.4度増加し、二酸化塩素の使用量は50.0%減少し、強度性能指標はある程度減少した。
【0054】
最後に、上記の説明は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではないことに留意されたい。本発明は前述の実施例を参照して詳細に説明されているが、当業者にとって、それらは、前述の実施例に記載された技術的解決手段を依然として修正することができるか、またはそれらの一部を同等に置き換えることができる。本発明の精神および原則の範囲内で行われたいかなる修正、同等の交換、改善などは、すべて本発明の保護範囲に含まれるべきである。上記は本発明の発明を実施するための形態を説明したが、本発明の保護の範囲を限定するものではないが、当業者は、本発明の技術的解決手段に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって行うことができる様々な修正または変形が依然として本発明の保護範囲内にあることを理解すべきである。