(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】マスク製造方法及びマスク製造装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20230712BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230712BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230712BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
C23C14/24 G
(21)【出願番号】P 2019089005
(22)【出願日】2019-05-09
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】510281944
【氏名又は名称】新東エスプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】畠山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】川本 晃裕
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-527748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
H05B 33/10
H10K 50/10
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状のメタルマスクシートを枠状のメタルマスクフレームに溶接することによりメタルマスクを製造するマスク製造方法であって、
前記メタルマスクフレームをテーブルに載置した状態で、前記メタルマスクフレームの側部を前記メタルマスクフレームに形成されている開口部に向けて押圧することにより、前記メタルマスクフレームを変形させる押圧工程と、
前記側部を押圧した状態で、前記テーブルに形成された気体孔から供給される気体を前記メタルマスクフレームの下面に噴射する噴射工程と、
前記噴射工程による前記気体の噴射を停止する停止工程と、
前記メタルマスクフレームの変形量を計測する計測工程と、
前記変形量が所定範囲内であるか否かを判定する判定工程と、
前記判定工程において前記変形量が前記所定範囲内であると判定された場合、前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する溶接工程と、
を含むことを特徴とするマスク製造方法。
【請求項2】
前記噴射工程は、前記気体孔から供給された前記気体を前記テーブル上に形成された流路溝を介して前記メタルマスクフレームの下面に噴射することを特徴とする請求項1記載のマスク製造方法。
【請求項3】
前記判定工程において前記変形量が前記所定範囲内でないと判定された場合、前記判定工程による判定結果に基づいて前記押圧工程による押圧力を調整する調整工程を含み、
前記調整工程により調整された前記押圧力で前記押圧工程、前記噴射工程、前記停止工程及び前記計測工程を再度行なうことを特徴とする請求項1または請求項2記載のマスク製造方法。
【請求項4】
前記メタルマスクは、複数の前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接することにより製造され、
前記押圧工程、前記噴射工程、前記停止工程及び前記計測工程は、前記溶接工程において前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する度に行なうことを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載のマスク製造方法。
【請求項5】
帯状のメタルマスクシートを枠状のメタルマスクフレームに溶接してメタルマスクを製造するマスク製造装置であって、
前記メタルマスクフレームを載置するテーブルと、
前記メタルマスクフレームの側部を前記メタルマスクフレームに形成されている開口部に向けて押圧することにより、前記メタルマスクフレームを変形させる押圧部と、
前記テーブルに形成された気体孔から前記テーブル上に形成された流路溝を介して、気体を前記押圧部により変形された前記メタルマスクフレームの下面に噴射する噴射部と、
前記噴射部による前記気体の噴射を停止した後に前記メタルマスクフレームの変形量を計測する計測部と、
前記変形量が所定範囲内であるか否かを判定する判定部と、
前記判定部において前記変形量が前記所定範囲内であると判定された場合、前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する溶接部と、
を備えることを特徴とするマスク製造装置。
【請求項6】
前記判定部において前記変形量が前記所定範囲内でないと判定された場合、前記押圧部は前記メタルマスクフレームの側部を、調整変更された押圧力で再度押圧し、前記噴射部は前記気体を前記メタルマスクフレームの下面に再度噴射し、前記計測部は前記変形量を再度計測することを特徴とすることを特徴とする請求項5記載のマスク製造装置。
【請求項7】
前記メタルマスクは、複数の前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接することにより製造され、
前記溶接部において前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する度に、前記押圧部は前記メタルマスクフレームの側部を押圧し、前記噴射部は前記気体を前記メタルマスクフレームの下面に噴射し、前記計測部は前記変形量を計測し、前記
判定部は前記変形量が前記所定範囲内であるか否かを判定することを特徴とする請求項5または請求項6記載のマスク製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタルマスクを製造するためのマスク製造方法及びマスク製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子の製造工程において有機発光層を真空蒸着する際に使用されるメタルマスクを製造する際に、張力装置で帯状のメタルマスクシートに一定の張力を付与することにより歪みや弛みのない状態でメタルマスクシートを枠状のメタルマスクフレームに貼り付けるマスク製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のマスク製造装置においては、メタルマスクシートをメタルマスクフレームに貼り付ける際、貼付の前後におけるメタルマスクフレームの変形を防止するために、予めメタルマスクフレームの両側部をメタルマスクフレームの開口部に向けて押圧することによりメタルマスクフレームを変形させる。このとき、メタルマスクフレームをテーブル上に載置した状態で、メタルマスクフレームを押圧し変形させているため、メタルマスクフレームとテーブルとの間の摩擦力やメタルマスクフレームの摩擦力に対する応力等によりメタルマスクフレームが所望の形状とならず、メタルマスクを設計通りに製造することができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、メタルマスクの寸法精度を向上させることができるマスク製造方法及びマスク製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマスク製造方法は、帯状のメタルマスクシートを枠状のメタルマスクフレームに溶接することによりメタルマスクを製造するマスク製造方法であって、前記メタルマスクフレームをテーブルに載置した状態で、前記メタルマスクフレームの側部を前記メタルマスクフレームに形成されている開口部に向けて押圧することにより、前記メタルマスクフレームを変形させる押圧工程と、前記側部を押圧した状態で、前記テーブルに形成された気体孔から供給される気体を前記メタルマスクフレームの下面に噴射する噴射工程と、前記噴射工程による前記気体の噴射を停止する停止工程と、前記メタルマスクフレームの変形量を計測する計測工程と、前記変形量が所定範囲内であるか否かを判定する判定工程と、前記判定工程において前記変形量が前記所定範囲内であると判定された場合、前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する溶接工程と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明のマスク製造方法は、前記噴射工程が前記気体孔から供給された前記気体を前記テーブル上に形成された流路溝を介して前記メタルマスクフレームの下面に噴射することを特徴とする。
【0008】
また、本発明のマスク製造方法は、前記判定工程において前記変形量が前記所定範囲内でないと判定された場合、前記判定工程による判定結果に基づいて前記押圧工程による押圧力を調整する調整工程を含み、前記調整工程により調整された前記押圧力で前記押圧工程、前記噴射工程、前記停止工程及び前記計測工程を再度行なうことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のマスク製造方法は、前記メタルマスクが複数の前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接することにより製造され、前記押圧工程、前記噴射工程、前記停止工程及び前記計測工程は、前記溶接工程において前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する度に行なうことを特徴とする。
【0010】
また、本発明のマスク製造装置は、帯状のメタルマスクシートを枠状のメタルマスクフレームに溶接してメタルマスクを製造するマスク製造装置であって、前記メタルマスクフレームを載置するテーブルと、前記メタルマスクフレームの側部を前記メタルマスクフレームに形成されている開口部に向けて押圧することにより、前記メタルマスクフレームを変形させる押圧部と、前記テーブルに形成された気体孔から前記テーブル上に形成された流路溝を介して、気体を前記押圧部により変形された前記メタルマスクフレームの下面に噴射する噴射部と、前記噴射部による前記気体の噴射を停止した後に前記メタルマスクフレームの変形量を計測する計測部と、前記変形量が所定範囲内であるか否かを判定する判定部と、前記判定部において前記変形量が前記所定範囲内であると判定された場合、前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する溶接部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のマスク製造装置は、前記判定部において前記変形量が前記所定範囲内でないと判定された場合、前記押圧部は前記メタルマスクフレームの側部を、調整変更された押圧力で再度押圧し、前記噴射部は前記気体を前記メタルマスクフレームの下面に再度噴射し、前記計測部は前記変形量を再度計測することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のマスク製造装置は、前記メタルマスクが複数の前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接することにより製造され、前記溶接部において前記メタルマスクシートを前記メタルマスクフレームに溶接する度に、前記押圧部は前記メタルマスクフレームの側部を押圧し、前記噴射部は前記気体を前記メタルマスクフレームの下面に噴射し、前記計測部は前記変形量を計測し、前記判定部は前記変形量が前記所定範囲内であるか否かを判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のマスク製造方法及びマスク製造装置によれば、メタルマスクの寸法精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係るマスク製造装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るメタルマスクの構成を説明するための図である。
【
図3】実施の形態に係るテーブルの構成を示す平面図である。
【
図4】実施の形態に係る噴射部の構成を説明するための図である。
【
図5】実施の形態に係る押圧部の構成を説明するための図である。
【
図6】実施の形態に係るマスク製造装置のシステム構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態に係るマスク製造方法について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るマスク製造装置について、有機EL素子の製造工程において有機発光層を真空蒸着する際に使用されるメタルマスクを製造するメタルマスク製造装置を例に挙げて説明する。
図1は、この実施の形態に係るメタルマスク製造装置の概略構成を示す斜視図である。なお、以下の説明においては、
図1に示すXYZ直交座標系を設定し、この直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係等について説明する。ZX平面は、メタルマスク製造装置を載置する水平面に平行な面に設定されており、Y軸は、鉛直方向に設定されている。
【0016】
メタルマスク製造装置2は、帯状のメタルマスクシート18(
図2参照)を枠状のメタルマスクフレーム20(
図2参照)に溶接することによりメタルマスク16(
図2参照)を製造するための装置であって、
図1に示すように、テーブル4、押圧部5a~5f、張力部6、計測部9、溶接部10、及び基台14を備えている。
図2は、実施の形態に係るメタルマスク製造装置2により製造されるメタルマスク16を示す図である。
図2に示すように、メタルマスク16は、複数のメタルマスクシート18の両端部をメタルマスクフレーム20の対向する二辺に順次溶接することにより製造され、有機EL素子の製造工程において有機材の真空蒸着を行う際に使用される。メタルマスクシート18には、複数の正方形状、円形状、長方形状等の開口パターンがエッチングなどにより形成されている。
【0017】
図3はメタルマスク製造装置2のテーブル4の構成を示す平面図である。テーブル4は、メタルマスクフレーム20を載置するためのテーブルであって、
図3に示すように、矩形状のガラステーブル22及びメタルマスクフレーム20を載置するセラミック製のフレーム24を備えている。フレーム24の中央部には矩形状の開口部が形成されており、開口部にはガラステーブル22が配置される。フレーム24には、エアーを噴射する噴射部26(
図6参照)が設けられている。噴射部26は、複数のバルブ28a~28d、複数の気体孔30a~30d、及び複数の流路溝32a~32dを備えている。噴射部26は、メタルマスクシート20をテーブル4(フレーム24)に載置した状態で、気体孔30a~30dから流路溝32a~32dを介して、エアーを押圧部5a~5fにより変形されたメタルマスクフレーム20の下面に噴射する。
【0018】
エアーはバルブ28a~28dから供給され、2個のバルブ28aはフレーム24の+Z方向側の側面に、2個のバルブ28bはフレーム24の-Z方向側の側面に、2個のバルブ28cはフレーム24の+X方向側の側面に、2個のバルブ28dはフレーム24の-X方向側の側面にそれぞれ設けられている。
【0019】
また、気体孔30a~30dは、バルブ28a~28dから供給されたエアーをフレーム24の表面(+Y方向側の面)へと導く流路である。6個の気体孔30aはフレーム24の+Z方向側に、6個の気体孔30bはフレーム24の-Z方向側に、8個の気体孔30cはフレーム24の+X方向側に、8個の気体孔30dはフレーム24の-X方向側にそれぞれ設けられている。
【0020】
また、流路溝32a~32dは、気体孔30a~30dを経たエアーをフレーム24の表面内において流す溝である。6個の流路溝32aはフレーム24の+Z方向側の表面に、6個の流路溝32bはフレーム24の-Z方向側の表面に、8個の流路溝32cはフレーム24の+X方向側の表面に、8個の流路溝32dはフレーム24の-X方向側の表面にそれぞれ設けられている。
【0021】
なお、この実施の形態においては、8個のバルブ28a~28dを備えているが7個以下9個以上であってもよい。同様に、28個の気体孔30a~30dを備えているが27個以下29個以上であってもよく、28個の流路溝32a~32dを備えているが27個以下29個以上であってもよい。
【0022】
図4は、噴射部26(バルブ28a、気体孔30a及び流路溝32a)の構成について説明するための拡大図である。バルブ28aから供給されたエアーは、気体孔30aを介してフレーム24の表面から排出され、フレーム24の表面に形成されている流路溝32aを流れ、流路溝32aから+Y方向に向けて噴射する。即ち、エアーは、フレーム24の表面からフレーム24上に載置されるメタルマスクフレーム20の下面に噴射される。メタルマスクフレーム20は、その下面にエアーが噴射されることによりテーブル4(フレーム24)から押し上げられる。なお、流路溝32aは、フレーム24の表面に設けられているネジ穴等を回避する領域且つ機械加工可能な領域に設けられ、流路溝32aの面積(流路溝32aの幅)及び流路溝32aの深さは、メタルマスクフレーム20を適度に押し上げることができるように、製造されるメタルマスク16毎に設計される。また、この実施の形態においては、噴射部26がエアー(空気)を噴射する場合を例に挙げて説明したが、エアー以外の気体を噴射する構成であってもよい。
【0023】
押圧部5a~5fは、メタルマスクフレーム20の側部をメタルマスクフレーム20に形成されている開口部に向けて押圧することにより、メタルマスクフレーム20を変形させる。具体的には、押圧部5a~5cは、メタルマスクフレーム20の+X方向側の側部を-X方向側に向けて押圧し、メタルマスクフレーム20の+X方向側の側部を-X方向側に撓ませる。押圧部5d~5fは、メタルマスクフレーム20の-X方向側の側部を+X方向側に向けて押圧し、メタルマスクフレーム20の-X方向側の側部を+X方向側に撓ませる。
【0024】
図5は、押圧部5aの構成を説明するための図である。押圧部5aは、
図5に示すように、モーター34、ローラーユニット36及び押付ユニット38を備えている。ローラーユニット36は、モーター34が駆動することにより±Y方向に移動する。ローラーユニット36は押付ユニット38と接する部分(-X方向側)にくさび形状部を有し、押付ユニット38はローラーユニット36と接する部分(+X方向側)にくさび形状部を有する。したがって、ローラーユニット36が+Y方向に移動すると押付ユニット38は-X方向に移動する。また、押付ユニット38はメタルマスクフレーム20と接する部分(-X方向側)にL字形状部を有する。したがって、押付ユニット38は-X方向に移動すると、押付ユニット38のL字形状部に載置されたメタルマスクフレーム20が押付ユニット38により-X方向に押圧される。押付ユニット38のメタルマスクフレーム20を押圧する面にはロードセル40が設けられている。ロードセル40は、押付ユニット38によりメタスマスクフレーム20を押圧する押圧力を制御する。なお、押圧部5b及び5cの構成は、押圧部5aの構成と同一である。また、押圧部5d~5fの構成は、テーブル4のZ軸方向の中心線を線対称として押圧部5aの構成と同一である。
【0025】
張力部6は、メタルマスクシート18の両端部を互いに離間させる方向(±X方向)に移動させることによりメタルマスクシート18に所定の張力を付与する。張力部6は、±Z方向にスライド可能に構成されており、メタルマスクシート18がメタルマスクフレーム2に溶接される際に溶接箇所までスライド移動する。
【0026】
計測部9は、メタルマスクフレーム20の変形量、即ち押圧部5a~5fにより押圧されたメタルマスクフレーム20側部の撓み量を計測する。溶接部10は、メタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接する。計測部9及び溶接部10は、±X方向及び±Z方向にスライド可能に構成されており、計測部9が計測する際には計測箇所まで、溶接部10が溶接する際には溶接箇所までスライド移動する。
【0027】
図6は、マスク製造装置2のシステム構成を示すブロック図である。マスク製造装置2は、
図6に示すように、マスク製造装置2の各部を統括的に制御する制御部50を備えている。制御部50には、押圧部5a~5f、噴射部26、張力部6、計測部9及び溶接部10がそれぞれ接続されている。
【0028】
制御部50は、メタルマスクフレーム20がテーブル4に載置されると、押圧部5a~5f(ロードセル40)に対してメタルマスクフレーム20の側部をメタルマスクフレーム20に形成されている開口部に向けて押圧するよう指示する制御信号を出力する。制御部50は、1枚目(n枚目:nは自然数)のメタルマスクシート18がメタルマスクフレーム20に溶接された後であって、2枚目(n+1枚目)のメタルマスクシート18がメタルマスクフレーム20に溶接される前においても、押圧部5a~5fに対してメタルマスクフレーム20の側部を押圧するよう指示する制御信号を出力する。制御部50は、メタルマスクシート18がメタルマスクフレーム20に溶接される箇所によって、押圧部5a~5fそれぞれの押圧力を調整する。例えば、メタルマスクシート18の溶接箇所がメタルマスクフレーム20の中央部である場合には押圧部5b及び5eの押圧力を押圧部5a,5c,5d,5fの押圧力より強くし、メタルマスクシート18の溶接箇所がメタルマスクフレーム20の+Z方向側である場合には押圧部5a及び5dの押圧力を押圧部5b,5c,5e,5fの押圧力より強くする。
【0029】
また、制御部50は、メタルマスクフレーム20を変形させた後、噴射部26に対してエアーを噴射するよう指示する制御信号を出力する。制御部50は、メタルマスクフレーム20が押圧部5a~5fにより押圧される毎に、噴射部26に対してエアーを噴射するよう指示する制御信号を出力する。また、制御部50は、噴射部26により噴射されるエアーの流量及び圧力等を調整する。また、制御部50は、噴射部26によるエアー噴射の停止を制御する。
【0030】
また、制御部50は、噴射部26によるエアーの噴射を停止した後、計測部9に対してメタルマスクフレーム20の変形量を計測するよう指示する制御信号を出力する。また、制御部50は、計測部9による計測結果を取得し、計測部9により計測されたメタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であるか否かを判定する。所定範囲は、製造されるメタルマスク16毎に予め設定されている。
【0031】
また、制御部50は、メタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であると判定された場合、張力部6に対してメタルマスクシート18に所定の張力を付与するよう指示する制御信号を出力する。そして、制御部50は、溶接部10に対してメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接するよう指示する制御信号を出力する。
【0032】
次に、図面を参照して、この実施の形態に係るメタルマスク製造装置2において、メタルマスク16を製造するメタルマスク製造方法について説明する。
図7は、メタルマスク製造装置2においてメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接する際の処理について説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、制御部50は、メタルマスクフレーム20をテーブル4(フレーム24)に載置する(ステップS10)。次に、制御部50は、メタルマスクフレーム20をテーブル4に載置した状態で、押圧部5a~5fを用いてメタルマスクフレーム20の±X方向の両側部をメタルマスクフレーム20に形成されている開口部に向けて(±X方向に)押圧することにより、メタルマスクフレーム20を変形させる(ステップS11)。具体的には、制御部50は、押圧部5a~5fそれぞれに対して所定の押圧力で押圧するよう指示する制御信号を出力する。所定の押圧力は、メタルマスクシート18が溶接される箇所に基づいて、押圧力5a~5fそれぞれに対して個別に設定されている。各押圧部5a~5fは、メタルマスクフレーム20の側部を各々設定された押圧力で押圧する。
【0034】
次に、制御部50は、噴射部26を用いて、メタルマスクフレーム20の±X方向の両側部を押圧した状態で、気体孔30a~30d及び流路溝32a~32dから供給されるエアーをメタルマスクフレーム20の下面に噴射する(ステップS12)。具体的には、制御部50は、噴射部26に対してエアーを噴射するよう指示する制御信号を出力する。噴射部26は、バルブ28a~28dから気体孔30a~30dを通過して流路溝32a~32dを介して供給されるエアーをメタルマスクフレーム20の下面に噴射する。エアーはフレーム24表面の広範囲に形成された流路溝32a~32dから噴射されるため、メタルマスクフレーム20は、下面の略全域にエアーを噴射され、テーブル4(フレーム24)から押し上げられる。メタルマスクフレーム20がテーブル4(フレーム24)から押し上げられることにより、メタルマスクフレーム20の下面とフレーム24の表面との間の摩擦力やメタルマスクフレーム20の摩擦力に対する応力が除去される。
【0035】
次に、制御部50は、摩擦力や摩擦力に対する応力が除去されるのに十分な時間が経過した後、噴射部26によるエアーの噴射を停止する(ステップS13)。具体的には、制御部50は、噴射部26に対してエアーの噴射を停止するよう指示する制御信号を出力する。噴射部26は、バルブ28a~28dによるエアーの供給を停止する。
【0036】
次に、制御部50は、計測部9を用いて、メタルマスクフレーム20の変形量を計測する(ステップS14)。具体的には、制御部50は、計測部9に対してメタルマスクフレーム20の変形量を計測するよう指示する制御信号を出力する。計測部9は、計測箇所までスライド移動し、メタルマスクフレーム20の変形量を計測し、計測結果を制御部50に対して出力する。
【0037】
次に、制御部50は、計測部9より取得した計測結果に基づいて、メタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15においてメタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内でないと判定された場合には(ステップS15,No)、制御部50は、ステップS15における判定結果(計測部9による計測結果)に基づいて、押圧部5a~5fによるメタルマスクフレーム20の両側部への押圧力を調整する(ステップS16)。即ち、制御部50は、メタルマスクフレーム20が所望の形状となるように、押圧部5a~5fそれぞれの押圧力を調整する。そして、制御部50は、ステップS11の処理に戻り、ステップS11~S16の処理を再度実行する。即ち、制御部50は、ステップS16において調整変更された押圧力でメタルマスクフレーム20の両側部を押圧し(ステップS11)、メタルマスクフレーム20の下面にエアーを噴射し(ステップS12)、エアー噴射を停止し(ステップS13)、メタルマスクフレーム20の変形量を計測し(ステップS14)、メタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であるか否かを判定する(ステップS15)。制御部50は、ステップS16においてメタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であると判定されるまで、ステップS11~S16の処理を繰り返す。
【0038】
一方、ステップS15においてメタルマスクフレーム20の変形量が所定範囲内であると判定された場合には(ステップS15,Yes)、制御部50は、張力部6及び溶接部10を用いて、メタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20の所定の位置に溶接する(ステップS17)。具体的には、制御部50は、張力部6に対してメタルマスクシート18に所定の張力を付与するよう指示する制御信号を出力する。張力部6は、メタルマスクシート18に所定の張力を付与し、溶接箇所までスライド移動する。更に、制御部50は、溶接部10に対してメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接するよう指示する制御信号を出力する。溶接部10は、溶接箇所までスライド移動し、メタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20の所定の箇所に溶接する。
【0039】
次に、制御部50は、すべてのメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接し終えたか否かを判定する(ステップS18)。すべてのメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接し終えてないと判定した場合には(ステップS18、No)、制御部50は、ステップS11の処理に戻り、すべてのメタルマスクシート18をメタルマスクフレーム20に溶接し終えたと判定されるまで(ステップS18、Yes)、ステップS11~S17の処理を繰り返す。すべてのメタルマスクシート18がメタルマスクフレーム20に溶接されることにより、
図2に示すようなメタルマスク16が製造される。
【0040】
この実施の形態に係るメタルマスク製造装置2及びメタルマスク製造方法によれば、噴射部26を備えているため、メタルマスクフレーム20の側部を押圧してメタルマスクフレーム20を変形させた後、メタルマスクフレーム20をテーブル4から押し上げることができる。したがって、メタルマスクフレーム20とテーブル4との間の摩擦力やメタルマスクフレーム20の摩擦力に対する応力を取り除くことができるため、摩擦力や応力の影響によりメタルマスク16を設計通りに製造することができないという問題を解消することができ、メタルマスク16の寸法精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
2…メタルマスク製造装置、4…テーブル、5a~5f…押圧部、6…張力部、9…計測部、10…溶接部、14…基台、16…メタルマスク、18…メタルマスクシート、20…メタルマスクフレーム、22…ガラステーブル、24…フレーム、26…噴射部、28a~28d…バルブ、30a~30d…気体孔、32a~32d…流路溝、34…モーター、36…ローラーユニット、38…押付ユニット、40…ロードセル、50…制御部。