(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ろ過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 24/02 20060101AFI20230712BHJP
B01D 24/46 20060101ALI20230712BHJP
B01D 29/62 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B01D23/10 Z
B01D23/24 Z
(21)【出願番号】P 2019127041
(22)【出願日】2019-07-08
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】竹内 乃保留
【審査官】柴田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-156368(JP,U)
【文献】特開2001-269510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 23/00- 37/08
C02F 3/02- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過塔と、
前記ろ過塔内に充填される支持材からなる支持層と、
前記ろ過塔内の前記支持層上に充填されるろ材からなるろ過層と、
前記支持層とろ過層とを浸漬する水と、
前記支持層側から流体を導入して前記ろ過層のろ材に旋回流を生じさせて洗浄するろ材洗浄装置と、
を有するろ過装置であって、
前記ろ材は、前記水に浸漬されて沈む比重を有し、且つ前記支持材の耐摩耗性よりも低い耐摩耗性を有する粒状のろ材であり、
前記ろ過塔の内壁には、前記旋回流によって生じる当該内壁に沿う下降流と共に下降してきたろ材の一部を衝突させる
ように前記支持層と前記ろ過層を仕切る境界部の位置に、当該衝突によってろ材の流れを内向きに変更させるろ材摩耗抑制部材を設置したことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
請求項1に記載のろ過装置であって、
前記ろ材は、アンスラサイトまたは活性炭または木炭または石灰または砂であることを特徴とするろ過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の懸濁物質などを除去するろ過装置に関し、特にろ過装置内部のろ材の減少を抑制するのに用いて好適なろ過装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中の懸濁物質などを分離除去する水処理機器として、ろ過装置が使用されている。この種のろ過装置は、ろ過塔内に支持層(支持砂利層)とろ過層(ろ材層)とを積層して構成され、例えば、上水処理や下水処理の分野で使用される。ろ過装置によるろ過方法には、ろ過方向によって、下向流式や上向流式がある。即ち、ろ過層側から原水を供給して支持層の下側から処理水を取り出す方法や、支持層側から原水を供給してろ過層側から処理水を取り出す方法などである。
【0003】
一方、この種のろ過装置には、ろ材などに付着した懸濁物質などを除去するためのろ材洗浄装置が設置されている。ろ材洗浄装置は、例えば、前記支持層側からろ過層内をばっ気する空気供給手段や、ろ材を洗浄(逆洗浄)する洗浄水供給手段などを設置し、これら手段から供給される空気や洗浄水によって前記ろ材を流動化させて洗浄し、洗浄後の洗浄水を例えばろ過塔上部から排水するように構成していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-235106号公報
【文献】実用新案登録第3090407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のろ過装置においては、上記ろ過処理及び洗浄処理を繰り返し行っているうちに、ろ材が減少し、このためろ材の補充費用がかさんでしまうという問題があったが、その原因が不明であった。また上記特許文献1,2においても、ろ材の減少についての記載はない。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、ろ材の減少を効果的に抑制することができるろ過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、当初、ろ材が減少する理由は、ろ材の一部が、洗浄後の処理排水と共に外部に流出してしまうためであると考えた。しかしそれだけの理由では、説明できない量のろ材の減少が生じていることを見出した。本願発明者は、その理由をさらに検討し、ろ材減少の別の原因(もう1つの原因)を突き止めた。以下、その理由を
図7,
図8を用いて説明する。
【0008】
図7は、従来のろ過装置100の概略側断面図である。なお同図は、ろ材洗浄時の状態を示している。同図に示すように、ろ過装置100は、ろ過塔101内に、支持層103とろ過層105とを設け、ろ過塔101の下部に空気導入配管107と洗浄水導入配管109と処理水取出配管111とを接続し、ろ過塔101の上部に原水導入配管113と洗浄排水配管115とを接続して構成されている。そして、ろ過工程においては、原水導入配管113からろ過塔101内に原水を導入し、ろ過層105と支持層103を通過させることで懸濁物質などを除去し、懸濁物質除去後の処理水を、処理水取出配管111から排出する。一方、洗浄工程においては、空気導入配管107から空気を導入してばっ気したり、洗浄水導入配管109から洗浄水を導入したりすることで、
図7に示す矢印のように、ろ材を流動化して浮遊させ、これによってろ材に付着した懸濁物質などをはく離し、はく離した懸濁物質などを洗浄排水配管115から排出する。
【0009】
そして上記洗浄工程においては、
図7に矢印で示すように、ろ過層105内において旋回流が生じる。この旋回流は、中央付近のろ材を上昇させ、半径方向外方に移動した後、ろ過塔101の内壁101aに沿うように下降する流れとなる。このときろ過塔101の内壁101aに沿う下降流の流速は速い。このため、
図8に示すように、ろ過塔101の内壁101aに沿う下降流と共に下降してきたろ材Rの一部は、流体が支持層103の表面において流れの方向を約90°変更する際に、支持層103の表面に衝突し、支持層103内に入り込む。一般に、ろ材Rはアンスラサイト等の軟らかい物質であるのに対し、支持層103を構成する支持材は砂利などの堅くて粗い物質なので、支持層103に衝突してその中に入り込んだろ材Rはその表面が摩滅して小さくなってゆき、やがて消失することを本願発明者は発見した。この現象は、好気性生物膜ろ過を行う際の散気で生じる旋回流によっても同様に生じるものと考えられる。そこで、本願発明者は、以下に記載するろ過装置を創作した。
【0010】
即ち、本発明にかかるろ過装置は、ろ過塔と、前記ろ過塔内に充填される支持材からなる支持層と、前記ろ過塔内の前記支持層上に充填されるろ材からなるろ過層と、前記支持層とろ過層とを浸漬する水と、前記支持層側から流体を導入して前記ろ過層のろ材に旋回流を生じさせて洗浄するろ材洗浄装置と、を有するろ過装置であって、前記ろ材は、前記水に浸漬されて沈む比重を有し、且つ前記支持材の耐摩耗性よりも低い耐摩耗性を有する粒状のろ材であり、前記ろ過塔の内壁には、前記旋回流によって生じる当該内壁に沿う下降流と共に下降してきたろ材の一部を衝突させるように前記支持層と前記ろ過層を仕切る境界部の位置に、当該衝突によってろ材の流れを内向きに変更させるろ材摩耗抑制部材を設置したことを特徴としている。
本発明によれば、ろ過塔の内壁に沿って下降してきたろ材は、ろ材摩耗抑制部材によってその流れが内向き(中心方向)に変更させられる。これによって、ろ材が支持層を構成する支持材内に混入することで摩滅することを抑制できる。つまり、ろ材の減少を効果的に抑制できる。
またろ過塔の内壁に沿って下降してきたろ材の流れが、ろ材摩耗抑制部材によって内向きに変更されるので、ろ過層内でのろ材の旋回流が起き易くなり、洗浄効果が高められる。
またろ材摩耗抑制部材によって流路が若干狭まるが、これによって、洗浄時の洗浄水の流速が上がり、この点からもろ材の洗浄効果を高めることができる。逆に言えば、洗浄時の洗浄水量や空気量を減らすことが期待できる。
ろ材摩耗抑制部材の設置位置は、支持層とろ過層の境界線近傍位置(または境界部、支持層の表層)が好ましい。この境界線近傍位置に設置すれば、ろ過塔内壁に沿って下降するろ材の支持材への衝突、潜り込みを確実に防止することができる。一方、ろ材摩耗抑制部材は、支持層とろ過層の境界線近傍位置よりも上方のろ過層内に設置しても良い。これによっても、支持層表面よりも上方の位置でろ材の下降する方向を内向きに変更でき、ろ材の支持材への衝突力を弱めることができる。
ろ材摩耗抑制部材の形状は問わないが、要は、ろ過塔の内壁に沿って下降してきたろ材の流れを内向きに変更させることができる形状であればよい。例えば板状、棒状、メッシュ状、テーパ状などの種々の形状・構造で良い。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記ろ材は、アンスラサイトまたは活性炭または木炭または石灰または砂であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ろ材の減少を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】ろ過システム1の一例を示す概略構成図である。
【
図2】
図2(a)はろ過塔11の平面図、
図2(b)はろ過装置10の概略側断面図である。
【
図3】洗浄工程または好気性生物膜ろ過工程の際のろ材Rの流動状態を示す図である。
【
図4】本発明の作用説明図(
図3のろ材摩耗抑制部材19近傍部分Bの拡大概略図)である。
【
図7】従来のろ過装置100の概略側断面図である。
【
図8】従来の問題点説明図(
図7のB部分の拡大概略図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は本発明の一実施形態にかかるろ過装置10を用いて構成したろ過システム1の一例を示す概略構成図である。このろ過装置10は、好気性生物膜ろ過法を用いたろ過装置である。同図に示すように、ろ過システム1は、ろ過装置10と、ろ過装置10の上部に原水を供給する原水供給手段30と、ろ過装置10の上部から洗浄排水を排出する洗浄水排水手段40と、ろ過装置10の下部に空気を供給する空気供給手段50と、ろ過装置10の下部から処理水を排出又は洗浄水を供給する給排水手段60とを具備して構成されている。
【0016】
図2(a)はろ過装置10を構成するろ過塔11の平面図、
図2(b)はろ過装置10の概略側断面図である。同図に示すように、ろ過装置10は、四角筒形状のろ過塔11内に、下から支持層13とろ過層(ろ材層)15とをこの順番で設け、且つこれら支持層13とろ過層15を水17内に浸漬して構成されている。
【0017】
支持層13としてこの実施形態では、砂利からなる支持材Sを敷き詰めた支持砂利層を用いている。ろ過層15としてこの実施形態では、粒状のアンスラサイトに好気性の微生物を担持させたろ材Rを敷き詰めたろ過層を用いている。即ち、ろ材Rの耐摩耗性は、支持材Sの耐摩耗性よりもかなり低い。
【0018】
ろ過塔11は、有底四角柱形状の筒体であり、その内壁11aの前記支持層13とろ過層15を仕切る位置に、ろ材摩耗抑制部材19を設置して構成されている。ろ材摩耗抑制部材19は、内壁11aの全周から内側に向けて垂直に板体を同一幅で突出して構成されている。
【0019】
図1に戻って、原水供給手段30は、原水を貯留する原水槽31と、原水槽31とろ過塔11の上部間を接続する原水導入配管33と、原水導入配管33の途中に設置される原水ポンプ35及び逆止弁37及び開閉弁39とを具備して構成されている。
【0020】
洗浄水排水手段40は、ろ過塔11の上部に接続される洗浄排水配管41を具備して構成されている。
【0021】
空気供給手段50は、エアポンプ51と、一端が当該エアポンプ51の吐出口側に接続され且つ他端が2つに分岐した分岐管53a,53bとなってろ過塔11の下部(支持層13内)に接続される空気導入配管53と、分岐管53a,53bの途中にそれぞれ接続される開閉弁55a,55bとを具備して構成されている。
【0022】
給排水手段60は、一端がろ過塔11の下部(支持層13内)に接続され他端側が2つに分岐する分岐管61a,61bとなる給排水管61と、両分岐管61a,61bの他端を接続する処理水槽63と、一方の分岐管61aの途中に接続される開閉弁65と、もう一方の分岐管61bの途中に接続される開閉弁67及び逆止弁69及び逆洗用ポンプ71と、を具備して構成されている。なお詳しくは下記するが、給排水管61は、洗浄水導入配管と処理水取出配管とを兼用する配管である。
【0023】
次に、ろ過システム1の動作を、(A)一般的なろ過法と、(B)好気性生物膜ろ過法と、(C)両ろ過法共通の洗浄方法とに分けて説明する。なお、上記
図1,
図2に示すろ過装置10は、好気性生物膜ろ過法を用いたろ過装置を示しているが、一般的なろ過法の場合は、開閉弁55a及び分岐管53aは不要であり、またろ材Rとしては、好気性の微生物を担持させたろ材を用いる必要はなく、一般的なろ材を用いる。
【0024】
(A)一般的なろ過法
一般的なろ過を行う場合は、まず、開閉弁39と、開閉弁65とを開き、一方、開閉弁67と開閉弁55bを閉じる。なおこの例の場合、上述のように、開閉弁55a及び分岐管53aは設置していない。
【0025】
そして、原水ポンプ35を起動すると、原水槽31内の原水が原水導入配管33を介してろ過装置10内の上部に導入される。
【0026】
これによって、ろ過装置10内に導入された原水は、重力によって、ろ過層15と支持層13を通過し、その際にろ過されて懸濁物質などが除かれ、処理水(処理済み水)として給排水管61の分岐管61aを通して処理水槽63に排出され貯留される。このとき給排水管61は、処理水取出配管として機能する。
【0027】
(B)好気性生物膜ろ過法
好気性生物膜ろ過を行う場合は、まず、開閉弁39と、開閉弁55aと、開閉弁65とを開き、一方、開閉弁67と開閉弁55bを閉じる。
【0028】
そして、原水ポンプ35を起動すると、原水槽31内の原水が原水導入配管33を介してろ過装置10内の上部に導入される。このとき同時に、エアポンプ51を起動して、ろ過装置10の支持層13内に空気を導入し散気することで槽内を好気状態に保ち、好気性微生物に好適な環境とする。
【0029】
これによって、ろ過装置10内に導入された原水は、重力によって、ろ過層15と支持層13を通過し、その際にろ過されて懸濁物質などが除かれ、処理水(処理済み水)として給排水管61の分岐管61aを通して処理水槽63に排出され貯留される。このとき給排水管61は、処理水取出配管として機能する。
【0030】
この装置の場合、物理的ろ過処理と同時に生物処理も行えるため、SS(浮遊物質)だけでなく、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)、臭気、色度、大腸菌群数も低減できる。
【0031】
(C)洗浄方法
ろ過装置10の洗浄(逆洗浄)を行う場合は、まず、開閉弁39と、開閉弁65と、開閉弁67とを閉じ、一方、開閉弁55bを開く。上記好気性生物膜ろ過法の場合は、さらに開閉弁55aを開いておいても良い。
【0032】
そして、エアポンプ51を起動して、ろ過装置10の支持層13内に空気を導入し、ろ過層15をばっ気する。これによって、ろ過層15内のろ材Rをほぐす。次に、当該ばっ気を行いながら開閉弁67を開き、逆洗用ポンプ71を起動する。これによって、処理水槽63内の処理水(この場合、洗浄水となる)が給排水管61の分岐管61bを通してろ過装置10内の支持層13内に導入される。このとき給排水管61は、洗浄水導入配管として機能する。これによって、ろ過層15を構成するろ材Rは、支持層13側から処理水と空気が導入されることで、
図3に示すような流動状態となり、ろ材Rに付着した懸濁物質などが引き剥がされ、引き剥がされた懸濁物質などは、処理水(洗浄水)と共に
図1に示す洗浄排水配管41から排出される。次に、前記エアポンプ51を停止し、開いていた開閉弁55b(及び開いていた場合の開閉弁55a)を閉じ、前記逆洗ポンプ71から供給される処理水のみによって、前記流動状態を継続する。このときも、ろ材に付着した懸濁物質などが引き剥がされ、引き剥がされた懸濁物質などは、処理水(洗浄水)と共に洗浄排水配管41から排出される。以上によって、ろ材の洗浄が行われる。洗浄が終了すると、逆洗用ポンプ71を停止し、開閉弁67を閉じる。なお、空気と洗浄水の供給の順番や供給の有無は、必要に応じて種々の変更が可能である。
【0033】
ところで上述のように、洗浄工程または好気性生物膜ろ過工程の際、前記エアポンプ51からのばっ気または散気によって、
図3に矢印で示すようなろ材Rの流れが生じる。即ち、ろ過塔11内の中央部分においては上昇流が生じ、周囲部分においては下向流が生じる。下向流はろ過塔11の内壁11aに沿うように生じる。このとき上述のように、内壁11aに沿う下降流の流れは速い。このため
図4に示すように、ろ過塔11の内壁11aに沿う下降流と共に下降してきたろ材Rの一部は、流体が支持層13の表面において流れの方向を約90°変更する際に、ろ材摩耗抑制部材19の表面に衝突する。言い換えれば、ろ材Rが支持層13を構成する支持材S内に入る込むことを確実に阻止できる。これによって、軟らかい材質からなるろ材Rが硬い材質からなる支持材Sによって摩滅することを効果的に抑制できる。なお、ろ材摩耗抑制部材19は金属製であってその表面を容易に滑らかな面に構成できるので、この面に衝突してもろ材Rが摩耗することはなく、流体の流れに乗って、ろ過塔11の内側(中心方向)に向けて移動していく。
【0034】
またろ過塔11の内壁11aに沿って下降してきたろ材Rの流れは、ろ材摩耗抑制部材19によって内向きに変更されるので、ろ過層15内でろ材Rの旋回流が起き易くなり、ろ材Rの洗浄効果が高められるという作用も生じる。
【0035】
またろ材摩耗抑制部材19によって流路が若干狭められているので、処理水や空気の流速が上がり、これによってろ材Rの洗浄効果が高められるという作用も生じる。逆に言えば、逆洗時の洗浄水量や空気量を減らすことが期待できる。
【0036】
なお、上記洗浄方法からわかるように、前記洗浄水排水手段40と、ばっ気に用いる空気を供給する空気供給手段50と、洗浄水を供給する給排水手段60とが、支持層13側から処理水(洗浄水)と空気を導入してろ過層15のろ材Rに旋回流を生じさせて洗浄するろ材洗浄装置を構成している。
【0037】
以上説明したように、上記ろ過装置10によれば、ろ材Rの旋回の際に、ろ過塔11の内壁11aに沿って下降するろ材Rの流れを内向きに変更させるろ材摩耗抑制部材19を設置したので、ろ材Rの減少を効果的に抑制することができる。
【0038】
ところで、上記実施形態に示すろ材摩耗抑制部材19を真上から見た際の面積は、ろ過層15を真上から見たときの面積に対して15%以下とすることが好ましい。何故なら、ろ材摩耗抑制部材19を真上から見た際の面積を広くすれば、ろ材Rの流れを変更させてろ材Rの摩耗を防止する効果は大きくなるが、逆に、このろ過塔11を用いて行うろ過の効果は、実質的なろ過層15の面積が小さくなるので、その分小さくなる虞がある。本願発明者が考察したところ、ろ材摩耗抑制部材19の面積を5%としてもろ材Rの摩滅防止効果が確認された。一方で、15%以上とすると、通水抵抗が増加し、ろ過効果に支障を生じる虞があることが分かった。従って、ろ過装置10本来のろ過効果と、ろ過装置10洗浄時のろ材Rの減少防止効果の何れの効果も好適に発揮させるためには、ろ材摩耗抑制部材19の面積は15%以下にすることがより好ましい。
【0039】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の他の実施形態に係るろ過塔11-2の平面図である。同図において、前記
図1~4図に示すろ過塔11と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-2」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1~
図4に示す実施形態と同じである。同図に示すように、ろ過塔11―2は、四角筒形状に限らず、円筒形状に形成しても良い。このように構成しても上記ろ過装置10と同様の作用効果を生じる。さらに図示はしないが、ろ過塔の形状を、多角筒形状やその他の各種筒形状に形成しても良い。
【0040】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明のさらに他の実施形態に係るろ過装置10-3の概略側断面図である。同図は、前記
図3に相当する状態を示している。同図において、前記
図1~
図4に示すろ過装置10と同一又は相当部分には同一符号を付す(但し、各符号には添え字「-3」を付す)。なお以下で説明する事項以外の事項については、前記
図1~
図4に示す実施形態と同じである。同図に示すろ過装置10-3において、上記ろ過装置10と相違する点は、ろ材摩耗抑制部材19-3の設置位置と幅寸法のみである。
【0041】
即ちこのろ過装置10-3においては、ろ材摩耗抑制部材19-3を、支持層13-3とろ過層15-3の境界線近傍位置よりも上方のろ過層15-3内に設置している。これによって、支持層13-3表面よりも上方の位置でろ材R-3の下降する方向を内向きに変更でき、ろ材R-3の支持層13-3(支持材S-3)への衝突力を弱めることができ、ろ材R-3の支持材S-3内への混入・摩滅を抑制することができる。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内においてさらに種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記各実施形態では、ろ材摩耗抑制部材となる平板を所定寸法ろ過塔の内壁から垂直に内側に突出する構成としたが、必ずしも垂直に突出する構成でなくても良く、内側に向かって斜め下方又は斜め上方に傾斜するように突出させても良い。斜め下方に傾斜するように突出させた場合は、ろ材の旋回流をよりスムーズに起こし易くすることができる。またろ材摩耗抑制部材の外周は必ずしも内壁に密着していなくても良く、両者間に所定の隙間があっても良い。またろ材摩耗抑制部材は平板状に限定されず、棒状、メッシュ状など、種々の形状・構造で構成しても良い。要は、ろ過塔の内壁に沿って下降してきたろ材の流れを内向きに変更させることができる形状であればよい。
【0043】
また上記各実施形態では、ろ過装置として一般的なろ過装置と好気性生物膜ろ過装置の例を示したが、本発明は、他の各種ろ過装置にも同様に適用することができる。また上記実施形態では、ろ材として、アンスラサイトを用いたが、ろ過する原水や処理の工程などに応じて、例えば、活性炭、木炭、石灰、砂、発泡ポリスチレン樹脂製の浮上性ろ材、アクリル系長繊維ろ材、ポリエステル系扁平楕円形繊維ろ材、ポリ塩化ビニリデン球形繊維ろ材、下水汚泥焼却灰を造粒・焼成した計量細粒ろ材など、他の各種材質のろ材を用いても良い。また支持材の材質も同様に、砂利以外の各種材質のものを用いても良い。
【0044】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 ろ過システム
10 ろ過装置
11 ろ過塔
11a 内壁
13 支持層
S 支持材
15 ろ過層
R ろ材
19 ろ材摩耗抑制部材
30 原水供給手段
40 洗浄水排水手段(ろ材洗浄装置)
50 空気供給手段(ろ材洗浄装置)
60 給排水手段(ろ材洗浄装置)