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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ゴム材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20230712BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230712BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230712BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20230712BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230712BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230712BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L7/00
C08L9/00
C08K5/3445
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 A
B60C1/00 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019146231
(22)【出願日】2019-08-08
(65)【公開番号】P2021024995
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 慎也
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-189911(JP,A)
【文献】特開昭53-036539(JP,A)
【文献】特開昭50-155549(JP,A)
【文献】特開2010-174127(JP,A)
【文献】特開2009-138046(JP,A)
【文献】米国特許第06605658(US,B1)
【文献】Pigment & Resin Technology, 2011, Vol.40, p.399-409
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに該化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種を、ゴム成分に含ませて得られ
カーボンブラック及び無機充填材を含まない、ゴム材料。
【化1】
[式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【化2】
[式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、Rが水素原子、炭素数1~18の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよく、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい化合物であるか、又は、前記一般式(2)において、Rが水素原子であり、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい化合物である、請求項1に記載の材料。
【請求項3】
前記ゴム成分がジエン系ゴムである、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項4】
前記ゴム成分が天然ゴムである、請求項1又は2に記載の材料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の材料を含む、マスターバッチ。
【請求項6】
請求項1~4の何れか1項に記載の材料又は請求項5に記載のマスターバッチに、カーボンブラック及び/又は無機充填材を加えて得られるゴム組成物。
【請求項7】
前記無機充填材がシリカである、請求項6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のゴム組成物により作製されたタイヤ、ホース、又は防振ゴム。
【請求項9】
下記一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに該化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種を、ゴム成分に含ませることを特徴とする、請求項1に記載のゴム材料の製造方法。
【化3】
[式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【化4】
[式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に二酸化炭素排出規制が厳しくなる中、自動車の低燃費化への要求が高まっている。
【0003】
自動車の低燃費化には、エンジン等の駆動系及び伝達系の寄与が大きい。一方で、タイヤの転がり抵抗を低下させることも、自動車の低燃費化において重要である。
【0004】
タイヤの転がり抵抗を低下させる方法として、低発熱性の高い材料を使用し、タイヤを製造することが提案されている。
【0005】
例えば、本出願人は、特願2018-160997号に記載されるとおり、ピラゾロン系の化合物をゴム材料に添加することにより、ゴム材料の低発熱性を顕著に向上させることを新たに見出した。一方で、ゴム材料の機能性向上を目的として化合物を添加する場合、ゴム材料の加工性は低下することが一般的である。
【0006】
このように、低燃費性と加工性とは、いわばトレードオフの関係にあり、双方の性能に優れたゴム材料が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するゴム材料を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的の一つは、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するカーボンブラック及び/又は無機充填材含有ゴム組成物を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的の一つは、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するタイヤを提供することに有る。
【0010】
本発明の他の目的の一つは、加工性に優れたホース及び防振ゴムを提供することに有る。
【0011】
本発明の他の目的の一つは、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するゴム材料の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ゴム成分に所定の構造を有する化合物を含ませて得られるゴム材料は、充分な加工性を有するだけでなく、優れた低発熱性をも有することを見出した。本発明者は、かかる知見に基づき、更に検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すゴム材料、マスターバッチ、ゴム組成物、タイヤ、ホース、防振ゴム、及び前記ゴム材料の製造方法を提供する。
項1.
下記一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに該化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種を、ゴム成分に含ませて得られるゴム材料。
【化1】
[式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【化2】
[式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
項2.
前記一般式(1)において、R、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、Rが水素原子、炭素数1~18の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよく、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい化合物であるか、又は、前記一般式(2)において、Rが水素原子であり、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい化合物である、項1に記載の材料。
項3.
前記ゴム成分がジエン系ゴムである、項1又は2に記載の材料。
項4.
前記ゴム成分が天然ゴムである、項1又は2に記載の材料。
項5.
項1~4のいずれかに記載の材料を含む、マスターバッチ。
項6.
項1~4の何れかに記載の材料又は項5に記載のマスターバッチに、カーボンブラック及び/又は無機充填材を加えて得られるゴム組成物。
項7.
前記無機充填材がシリカである、項6に記載のゴム組成物。
項8.
項6又は7に記載のゴム組成物により作製されたタイヤ、ホース、又は防振ゴム。
項9.
下記一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに該化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種を、ゴム成分に含ませることを特徴とする、ゴム材料の製造方法。
【化3】
[式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【化4】
[式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するゴム材料を提供することにある。
【0015】
本発明によれば、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するカーボンブラック及び/又は無機充填材含有ゴム組成物を提供することができる。
【0016】
本発明によれば、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するタイヤを提供することができる。
【0017】
本発明によれば、加工性に優れたホース及び防振ゴムを提供することができる。
【0018】
本発明によれば、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ、優れた低発熱性をも有するゴム材料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0020】
(ゴム材料)
本発明のゴム材料は、後述する式(1)で表される化合物もしくはその塩(以下、「化合物(1)」ともいう。)、及び同じく後述する式(2)で表される化合物もしくはその塩(以下、「化合物(2)」ともいう。)からなる群より選択される少なくとも一種を、ゴム成分に含ませて得ることができる。換言すると、本発明のゴム材料は、化合物(1)及び/又は化合物(2)を、ゴム成分に含ませて得ることができる。一般的に、化合物(1)及び化合物(2)は共に、ゴム材料に低発熱性を付与することができる添加剤として使用される。尚、化合物(1)及び/又は化合物(2)をゴム成分に含ませる際には、化合物(1)及び/又は化合物(2)をゴム成分中に均一に含ませることが好ましい。
【0021】
一般的に、ゴム材料において機能性向上を目的として化合物を含有させると、ゴム材料の加工性が低下する。このため、通常であれば、上記化合物(1)又は(2)についても、ゴム成分に配合することにより、ゴム成分の加工性が悪化するものと推測される。しかしながら、本発明者は、予めゴム成分に化合物(1)及び/又は化合物(2)を含ませてゴム材料を調製し、該ゴム材料を含むゴム組成物とすることにより、該ゴム組成物の充分な加工性を確保できることを見出した。更に、驚くべきことに、該ゴム組成物に極めて良好な低発熱性が得られることを見出した。
【0022】
ゴム成分に上記化合物を含ませて両者を共存させることにより、具体的に如何なる現象及び/又は反応が誘導されるのか、現時点では不明であるが、上記化合物がゴム成分に結合し、何らかの反応物が生成すると推測される。
【0023】
その結果、本発明のゴム材料を含むゴム組成物は充分な加工性を有するのみならず、極めて良好な低発熱性を有する。
【0024】
(化合物(1)又は化合物(2))
化合物(1)及び化合物(2)における一般式は、下記の通りである。
【0025】
【化5】
[式(1)中、R、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。RとRとは一緒になってアルキリデン基を形成してもよく、R、R及びRのいずれか2つが一緒になってアルキレン基を形成してもよい。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【0026】
【化6】
[式(2)中、R、R及びRは同一又は異なって、水素原子、アミノ基、アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示し、Rはアルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基を示す。これら各基は、それぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。]
【0027】
本明細書において、「アルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、1-エチルプロピル等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、更に、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシル、3-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、5-プロピルノニル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等を加えた炭素数1~18の直鎖状又は分岐状アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の炭素数3~8の環状アルキル基等が挙げられる。
【0028】
本明細書において、「アラルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ベンジル、フェネチル、トリチル、1-ナフチルメチル、2-(1-ナフチル)エチル、2-(2-ナフチル)エチル基等が挙げられる。
【0029】
本明細書において、「アリール基」としては、特に限定はなく、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ジヒドロインデニル、9H-フルオレニル基等が挙げられる。
【0030】
本明細書において、「アミノ基」としては、-NHで表されるアミノ基だけでなく、例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、n-プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミノ、イソブチルアミノ、s-ブチルアミノ、t-ブチルアミノ、1-エチルプロピルアミノ、n-ペンチルアミノ、ネオペンチルアミノ、n-ヘキシルアミノ、イソヘキシルアミノ、3-メチルペンチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のモノアルキルアミノ基;ジメチルアミノ、エチルメチルアミノ、ジエチルアミノ基等の直鎖状又は分岐状のアルキル基を2つ有するジアルキルアミノ基等の置換アミノ基も含まれる。
【0031】
本明細書において、「複素環基」としては、特に限定はなく、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピラジニル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ピリミジル、3-ピリダジル、4-ピリダジル、4-(1,2,3-トリアジル)、5-(1,2,3-トリアジル)、2-(1,3,5-トリアジル)、3-(1,2,4-トリアジル)、5-(1,2,4-トリアジル)、6-(1,2,4-トリアジル)、2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、6-キノリル、7-キノリル、8-キノリル、1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル、6-イソキノリル、7-イソキノリル、8-イソキノリル、2-キノキサリル、3-キノキサリル、5-キノキサリル、6-キノキサリル、7-キノキサリル、8-キノキサリル、3-シンノリル、4-シンノリル、5-シンノリル、6-シンノリル、7-シンノリル、8-シンノリル、2-キナゾリル、4-キナゾリル、5-キナゾリル、6-キナゾリル、7-キナゾリル、8-キナゾリル、1-フタラジル、4-フタラジル、5-フタラジル、6-フタラジル、7-フタラジル、8-フタラジル、1-テトラヒドロキノリル、2-テトラヒドロキノリル、3-テトラヒドロキノリル、4-テトラヒドロキノリル、5-テトラヒドロキノリル、6-テトラヒドロキノリル、7-テトラヒドロキノリル、8-テトラヒドロキノリル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、5-イミダゾリル、1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル、4-(1,2,3-チアジアゾリル)、5-(1,2,3-チアジアゾリル)、3-(1,2,5-チアジアゾリル)、2-(1,3,4-チアジアゾリル)、4-(1,2,3-オキサジアゾリル)、5-(1,2,3-オキサジアゾリル)、3-(1,2,4-オキサジアゾリル)、5-(1,2,4-オキサジアゾリル)、3-(1,2,5-オキサジアゾリル)、2-(1,3,4-オキサジアゾリル)、1-(1,2,3-トリアゾリル)、4-(1,2,3-トリアゾリル)、5-(1,2,3-トリアゾリル)、1-(1,2,4-トリアゾリル)、3-(1,2,4-トリアゾリル)、5-(1,2,4-トリアゾリル)、1-テトラゾリル、5-テトラゾリル、1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル、4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、7-インドリル、1-イソインドリル、2-イソインドリル、3-イソインドリル、4-イソインドリル、5-イソインドリル、6-イソインドリル、7-イソインドリル、1-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾイミダゾリル、4-ベンゾイミダゾリル、5-ベンゾイミダゾリル、6-ベンゾイミダゾリル、7-ベンゾイミダゾリル、2-ベンゾフラニル、3-ベンゾフラニル、4-ベンゾフラニル、5-ベンゾフラニル、6-ベンゾフラニル、7-ベンゾフラニル、1-イソベンゾフラニル、3-イソベンゾフラニル、4-イソベンゾフラニル、5-イソベンゾフラニル、6-イソベンゾフラニル、7-イソベンゾフニル、2-ベンゾチエニル、3-ベンゾチエニル、4-ベンゾチエニル、5-ベンゾチエニル、6-ベンゾチエニル、7-ベンゾチエニル、2-ベンゾオキサゾリル、4-ベンゾオキサゾリル、5-ベンゾオキサゾリル、6-ベンゾオキサゾリル、7-ベンゾオキサゾリル、2-ベンゾチアゾリル、4-ベンゾチアゾリル、5-ベンゾチアゾリル、6-ベンゾチアゾリル、7-ベンゾチアゾリル、1-インダゾリル、3-インダゾリル、4-インダゾリル、5-インダゾリル、6-インダゾリル、7-インダゾリル、2-モルホリル、3-モルホリル、4-モルホリル、1-ピペラジル、2-ピペラジル、1-ピペリジル、2-ピペリジル、3-ピペリジル、4-ピペリジル、2-テトラヒドロピラニル、3-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、2-テトラヒドロチオピラニル、3-テトラヒドロチオピラニル、4-テトラヒドロチオピラニル、1-ピロリジル、2-ピロリジル、3-ピロリジル、フラニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、5-メチル-3-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾール-4-イル基等が挙げられる。
【0032】
本明細書において、「アルキリデン基」としては、特に限定はなく、例えば、メチリデン、エチリデン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチリデン基等が挙げられる。
【0033】
本明細書において、「アルキレン基」としては、特に限定はなく、例えば、 エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基等を挙げることができる。これらアルキレン基は、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含んでいてもよく、フェニレン基を介していてもよい。このようなアルキレン基としては、例えば、-CHNHCH-、-CHNHCHCH-、-CHNHNHCH-、-CHCHNHCHCH-、-CHNHNHCHCH-、-CHNHCHNHCH-、-CHCHCHNHCHCHCH-、-CHOCHCH-、-CHCHOCHCH-、-CHSCHCH-、-CHCHSCHCH-、
【0034】
【化7】
等が挙げられる。
【0035】
これらアルキル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、アルキリデン基、及びアルキレン基の各基は、置換可能な任意の位置にそれぞれ1個以上の置換基を有していてもよい。該「置換基」としては、特に限定はなく、例えば、ハロゲン原子、アミノ基、アミノアルキル基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、カルボキシル基、カルボキシアルキル基、ホルミル基、ニトリル基、ニトロ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、複素環基、チオール基、アルキルチオ基、アリールチオ基等が挙げられる。該置換基は、好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個有していてもよい。
本明細書において、「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子である。
【0036】
本明細書において、「アミノアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、アミノメチル、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジメチルアミノメチル、エチルメチルアミノメチル、ジエチルアミノメチル、2-アミノエチル、2-(メチルアミノ)エチル、2-(エチルアミノ)エチル、2-(ジメチルアミノ)エチル、2-(エチルメチルアミノ)エチル、2-(ジエチルアミノ)エチル、3-アミノプロピル、3-(メチルアミノ)プロピル、3-(エチルアミノ)プロピル、3-(ジメチルアミノ)プロピル、3-(エチルメチルアミノ)プロピル、3-(ジエチルアミノ)プロピル基等のアミノアルキル基、モノアルキル置換アミノアルキル基又はジアルキル置換アミノアルキル基等が挙げられる。
【0037】
本明細書において、「アルコキシカルボニル基」としては、特に限定はなく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0038】
本明細書において、「アシル基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチル、プロピオニル、ピバロイル基等の炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状アルキルカルボニル基が挙げられる。
【0039】
本明細書において、「アシルオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、n-ブチリルオキシ基等が挙げられる。
【0040】
本明細書において、「アミド基」としては、特に限定はなく、例えば、アセトアミド、ベンズアミド基等のカルボン酸アミド基;チオアセトアミド、チオベンズアミド基等のチオアミド基;N-メチルアセトアミド、N-ベンジルアセトアミド基等のN-置換アミド基;等が挙げられる。
【0041】
本明細書において、「カルボキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、カルボキシメチル、カルボキシエチル、カルボキシ-n-プロピル、カルボキシ-n-ブチル、カルボキシ-n-ペンチル、カルボキシ-n-ヘキシル基等のカルボキシアルキル基が挙げられる。
【0042】
本明細書において、「ヒドロキシアルキル基」としては、特に限定はなく、例えば、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシ-n-プロピル、ヒドロキシ-n-ブチル基等のヒドロキシ-アルキル基が挙げられる。
【0043】
本明細書において、「アルコキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、直鎖状、分岐状又は環状のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、n-ヘキシルオキシ基の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基;シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ基等の環状アルコキシ基等が挙げられる。
【0044】
本明細書において、「アリールオキシ基」としては、特に限定はなく、例えば、フェノキシ、ビフェニルオキシ、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0045】
化合物(1)の中でも、R、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である化合物が好ましい。
化合物(1)の中でも、Rが水素原子である化合物が好ましい。
化合物(1)の中でも、Rが、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基である化合物が好ましく、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、ベンジル基、フェニル基、ナフチル基、又はフリル基である化合物がより好ましく、水素原子、又は炭素数1~4の直鎖状アルキル基である化合物が特に好ましい。
化合物(1)の中でも、R及びRの少なくとも一方が水素原子である化合物が好ましく、R及びRが共に水素原子である化合物がより好ましい。
化合物(1)の中でも、Rが水素原子であり、Rが水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、R及びRが共に水素原子である化合物、及び、Rが水素原子であり、Rが水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、又は複素環基であり、RとRとが一緒になってアルキリデン基を形成している化合物がさらに好ましく、Rが水素原子であり、Rが水素原子又は炭素数1~4の直鎖状アルキル基であり、R及びRが共に水素原子である化合物が特に好ましい。
【0046】
化合物(2)の中でも、Rは水素原子であり、Rは炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基であり、R及びRは同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状及び分岐状アルキル基、アラルキル基、アリール基、アミノ基又は複素環基である化合物が好ましい。
【0047】
化合物(2)の中でも、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、アラルキル基、又はアリール基である化合物が好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基である化合物がより好ましい。
【0048】
化合物(2)の中でも、R及びRが同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
【0049】
化合物(2)の中でも、Rは水素原子であり、Rが炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアリール基であり、R及びRが同一又は異なって、水素原子、炭素数1~4の直鎖状アルキル基、又はアミノ基である化合物が好ましい。
【0050】
化合物(1)及び化合物(2)の中でも、化合物(1)が特に好ましい。
【0051】
具体的に、化合物(1)又は(2)としては、例えば、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-ウンデシル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-ベンジル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)オン、4,4’-(フェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、4-[(ジメチルアミノ)メチリデン]-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4-メチル-2,3-ジアゾスピロ[4.4]ノン-3エン-1-オン、5-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、5-メチル-2-フェニル-2,4-ジヒドロ-3H-ピラゾール-3-オン、1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4,5,6,7-テトラヒドロ-2H-インダゾール-3(3aH)-オン、4-{[4-ジメチルアミノ]フェニル}メチリデン}-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、1-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン、4,4’-(4-ヒドロキシフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、1,3-ジフェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、4,4’-(4-ニトロフェニルメチレン)ビス(5-メチル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン)、及び、4-アミノ-1,5-ジメチル-2-フェニル-1H-ピラゾール-3(2H)-オン等が挙げられる。
【0052】
中でも、好ましい化合物は、化合物(1)であり、その中でも、5-ピラゾロン、3-メチル-5-ピラゾロン、3-(ナフタレン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-(フラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、3-フェニル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン、及び3-プロピル-1H-ピラゾール-5(4H)-オンがより好ましい。
【0053】
本発明のゴム材料は、これら化合物を一種単独で、又は二種以上を混合して含んでもよい。
【0054】
化合物(1)又は(2)の中には、互変異性体を生じるものがある。互変異性化が可能である(例えば、溶液中である)場合に、互変異性体の化学平衡に達し得る。化合物(1)又は(2)は、例えば、式(3)~(9)で表されるような互変異性体として存在することができる。
【0055】
前記式(1)において、R及びRが水素原子である化合物(化合物(1)-A)には、以下の式(3)~(5)で表される互変異性体が存在する。
【化8】
[式中、R及びRは、前記に同じ。]
【0056】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-B)には、以下の式(6)~(7)で表される互変異性体が存在する。
【0057】
【化9】
[式中、R、R及びRは、前記に同じ。]
【0058】
前記式(1)において、Rが水素原子である化合物(化合物(1)-C)には、以下の式(8)で表される互変異性体が存在する。
【0059】
【化10】
[式中、R、R及びRは、前記に同じ。]
【0060】
前記式(2)において、Rが水素原子である合物(化合物(2)-A)には、以下の式(9)で表される互変異性体が存在する。
【0061】
【化11】
[式中、R、R及びRは、前記に同じ。]
【0062】
上記式(3)~(9)で表されるような互変異性体と、化合物(1)又は(2)とは、どちらの異性体も共存する平衡状態に達している。よって、別段の記載がない限り、本明細書において、化合物(1)又は(2)のすべての互変異性体の形態は、本発明の範囲内である。
【0063】
よって、本明細書において、化合物(1)又は(2)としては、その互変異性体も包含されるものと定義する。
【0064】
また、式(1)又は(2)で表される化合物の塩としては、特に限定はなく、あらゆる種類の塩が含まれる。このような塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩;ジメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。
【0065】
本発明のゴム材料は、化合物(1)又は化合物(2)が任意の割合で含まれる混合物を含んでもよい。
【0066】
(ゴム成分)
本発明のゴム材料において使用するゴム成分としては、特に制限はなく、例えば、天然ゴム(NR)、合成ジエン系ゴム、及び天然ゴムと合成ジエン系ゴムとの混合物といったジエン系ゴム、並びにこれら以外の非ジエン系ゴムが挙げられる。中でも、ジエン系ゴムを使用することが好ましく、天然ゴムを使用することがさらに好ましい。
【0067】
天然ゴムとしては天然ゴムラテックス、技術的格付けゴム(TSR)、スモークドシート(RSS)、ガタパーチャ、杜仲由来天然ゴム、グアユール由来天然ゴム、ロシアンタンポポ由来天然ゴムなどが挙げられ、さらにこれら天然ゴムを変性した、エポキシ化天然ゴム、メタクリル酸変性天然ゴム、スチレン変性天然ゴムなどの変性天然ゴムなども、本発明の天然ゴムに含まれる。
【0068】
合成ジエン系ゴムとしては、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム(EPDM)、スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(SBS)等、及びこれらの変性合成ジエン系ゴムが挙げられる。変性合成ジエン系ゴムには、主鎖変性、片末端変性、両末端変性などの変性手法によるジエン系ゴムが包含される。ここで、変性合成ジエン系ゴムの変性官能基としては、エポキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、水酸基などの各種官能基が挙げられ、これら官能基は1種又は2種以上が変性合成ジエン系ゴムに含まれていてもよい。
【0069】
合成ジエン系ゴムの製造方法は、特に制限はなく、乳化重合、溶液重合、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などが挙げられる。また、合成ジエン系ゴムのガラス転移点においても、特に制限はない。
【0070】
また、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムの二重結合部のシス/トランス/ビニルの比率については、特に制限はなく、いずれの比率においても好適に用いることができる。また、ジエン系ゴムの数平均分子量および分子量分布は、特に制限はないが、数平均分子量500~3000000、分子量分布1.5~15が好ましい。
【0071】
非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0072】
ゴム成分は、1種単独で、又は2種以上を混合(ブレンド)して用いることができる。中でも、好ましいゴム成分としては、天然ゴム、IR、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物であり、より好ましくは天然ゴム、SBR、BR又はこれらから選ばれる2種以上の混合物である。
【0073】
上記化合物(1)又は化合物(2)の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.1~20質量部であることがより好ましく、0.2~10質量部であることがさらに好ましい。
【0074】
(マスターバッチ)
本発明は、上記した一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに該化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種と、ゴム成分とを含むマスターバッチに関する発明を包含する。
【0075】
本発明のマスターバッチは、上記した本発明のゴム材料それ自体であってもよいし、老化防止剤、シランカップリング剤、亜鉛華及び加硫促進剤といったその他の成分を含んでもよいが、シリカを含有しないことが好ましい。
【0076】
(ゴム組成物)
本発明は、上記したゴム材料と、カーボンブラック及び/又は無機充填材とを含有するゴム組成物に関する発明を包含する。さらに本発明は、上記した本発明のマスターバッチと、カーボンブラック及び/又は無機充填材とを含有するゴム組成物に関する発明を包含する。
【0077】
本発明のゴム組成物において、本発明のゴム材料又はマスターバッチを配合することにより、ゴム組成物の充分な加工性を確保できることに加えて、ゴム組成物の低発熱性を著しく改良することができる。
【0078】
本発明のゴム組成物は、必要に応じて、更なるゴム成分を配合してもよい。該ゴム成分としては、本発明の目的を害しない範囲内であれば、特に制限はなく、前記ジエン系ゴムのほか、非ジエン系ゴムであってもよい。非ジエン系ゴムとしては、公知のものを広く使用することができる。
【0079】
カーボンブラックは、通常ゴムの補強性を向上させるために用いられる。なお、本明細書においては、無機充填材にカーボンブラックは含まれないものとする。
【0080】
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、市販品のカーボンブラック、Carbon-Silica Dual phase filler等が挙げられる。ゴム成分にカーボンブラックを含有することにより、ゴムの電気抵抗を下げて、帯電を抑止する効果、さらにゴムの強度を向上させる効果を享受できる。
【0081】
具体的に、カーボンブラックとしては、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N110、N134、N220、N234、N330、N339、N375、N550、HAF、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック等が挙げられる。中でも、好ましいカーボンブラックとしては、SAF、ISAF、IISAF、N134、N234、N330、N339、N375、HAF、又はFEFグレードのカーボンブラックである。
【0082】
カーボンブラックのDBP吸収量としては、特に制限はなく、好ましくは60~200cm/100g、より好ましくは70~180cm/100g以上、特に好ましくは80~160cm/100gである。
【0083】
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA、JISK6217-2:2001に準拠して測定する)は、好ましくは30~200m/g、より好ましくは40~180m/g、特に好ましくは50~160m/gである。
【0084】
カーボンブラックが配合されたゴム組成物では、化合物(1)が、又はゴム成分と化合物(1)との反応物が、カーボンブラックと強く相互作用をすることが考えられる。したがって、本発明のゴム組成物によれば、特にカーボンブラックの分散性が大幅に向上し、ゴム組成物の低発熱性が著しく改良できる。
【0085】
無機充填材としては、ゴム工業界において、通常使用される無機化合物であれば、特に制限はない。使用できる無機化合物としては、例えば、シリカ、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al・HO);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)];炭酸アルミニウム[Al(CO]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、タルク(3MgO・4SiO・HO)、アタパルジャイ(5MgO・8SiO・9HO)、チタン白(TiO)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al)、クレー(Al・2SiO)、カオリン(Al・2SiO・2HO)、パイロフィライト(Al・4SiO・HO)、ベントナイト(Al・4SiO・2HO)、ケイ酸アルミニウム(AlSiO、Al・3SiO・5HO等)、ケイ酸マグネシウム(MgSiO、MgSiO等)、ケイ酸カルシウム(Ca・SiO等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al・CaO・2SiO等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)・nHO]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO]、アクリル酸亜鉛、メタクリル酸亜鉛、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等が挙げられる。これらの無機充填材は、ゴム成分との親和性を向上させるために、該無機充填材の表面が有機処理されていてもよい。
【0086】
無機充填材としては、ゴム強度を付与する観点からシリカが好ましく、より好ましくはシリカ単独で、又はシリカとゴム工業界で通常使用される無機化合物の1種以上とを併用することができる。無機充填材として、シリカ及びシリカ以外の上記無機化合物を併用する場合には、無機充填材の全成分の合計量が上記範囲となるように適宜調整すればよい。シリカは、ゴム強度を付与することができるため添加することが好ましい。
【0087】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用できる。中でも、好ましいシリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ、又はコロイダルシリカであり、より好ましくは湿式シリカである。これらのシリカは、ゴム成分との親和性を向上させるために、シリカの表面が有機処理されていてもよい。
【0088】
シリカのBET比表面積としては、特に制限はなく、例えば、40~350m/gの範囲が挙げられる。BET比表面積がこの範囲であるシリカは、ゴム補強性及びゴム成分中への分散性を両立できるという利点がある。該BET比表面積は、ISO5794/1に準拠して測定される。
【0089】
この観点から、好ましいシリカとしては、BET比表面積が80~300m/gの範囲にあるシリカであり、より好ましくは、BET比表面積100~270m/gであるシリカであり、特に好ましくは、BET比表面積110~270m/gの範囲にあるシリカである。
【0090】
このようなシリカの市販品としては、Quechen Silicon Chemical Co.,Ltd.製の商品名「HD165MP」(BET比表面積=165m/g)、「HD115MP」(BET比表面積=115m/g)、「HD200MP」(BET比表面積=200m/g)、「HD250MP」(BET比表面積=250m/g)、東ソー・シリカ株式会社製の商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、「ニップシールKQ」(BET比表面積=240m/g)、デグッサ社製の商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等が挙げられる。
【0091】
シリカの配合量としては、ゴム成分100質量部に対して、2~1200質量部とすることが好ましく、30~130質量部とすることがより好ましく、35~130質量部とすることがさらに好ましい。
【0092】
特に、ゴム成分100質量部に対して、シリカの配合量を20~200質量部、より好ましくは30~130質量部、さらに好ましくは35~130質量部とすることにより、本発明のゴム組成物を使用して作製されるタイヤの運動性能と低燃費性能の両立を図ることができる。
【0093】
カーボンブラック及び/又は無機充填材の配合量は、特に限定はなく、目的とする性質に応じて適宜設定すればよい。
【0094】
(その他配合剤)
上記に加えて、本発明のゴム組成物には、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、オゾン防止剤、軟化剤、加工助剤、ワックス、樹脂、発泡剤、オイル、ステアリン酸、酸化亜鉛(ZnO)、加硫促進剤、加硫遅延剤、加硫剤(硫黄)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0095】
また、ゴム組成物の補強性を高める目的、又はゴム組成物の引裂き強度と共に耐摩耗性を高める目的で、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤を配合してもよい。
【0096】
かかるシランカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなシランカップリング剤として、例えばスルフィド系、ポリスルフィド系、チオエステル系、チオール系、オレフィン系、エポキシ系、アミノ系、アルキル系のシランカップリング剤が挙げられる。
【0097】
スルフィド系のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノエトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-モノメトキシジメチルシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)トリスルフィド、ビス(2-モノエトキシジメチルシリルエチル)ジスルフィド等が挙げられる。これらの内、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが特に好ましい。
【0098】
チオエステル系のシランカップリング剤としては、例えば、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
【0099】
チオール系のシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール等を挙げることができる。
【0100】
オレフィン系のシランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシメチルビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルエトキシビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-(メトキシジメトキシジメチルシリル)プロピルアクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[ジメトキシ(メチル)シリル]プロピルメタクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピルメタクリレート、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0101】
エポキシ系のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)メチルシラン、トリエトキシ(3-グリシジルオキシプロピル)シラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0102】
アミノ系のシランカップリング剤としては、例えば、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-エトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、3-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0103】
アルキル系のシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの内、メチルトリエトキシシランが好ましい。
【0104】
これらシランカップリング剤の中でも、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを特に好ましく使用することができる。
【0105】
チタネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなチタネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のチタネートカップリング剤が挙げられる。
【0106】
アルコキシド系のチタネートカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラステアリルチタネート等を挙げることができる。これらの内、テトライソプロピルチタネートが好ましい。
【0107】
キレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、ドデシルベンゼンスルホン酸チタン化合物、リン酸チタン化合物、チタンオクチレングリコレート、チタンエチルアセトアセテート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンラクテート、チタンエタノールアミネート、チタンオクチレングリコレート、チタンアミノエチルアミノエタノレート等を挙げることができる。これらの内、チタンアセチルアセトネートが好ましい。
【0108】
アシレート系のチタネートカップリング剤としては、例えば、チタンイソステアレート等を挙げることができる。
【0109】
アルミネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなアルミネートカップリング剤として、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムセカンダリーブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート等が挙げることができる。これらの内、9-オクタデセニルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレートが好ましい。
【0110】
ジルコネートカップリング剤としては特に制限されず、市販品を好適に使用することができる。このようなジルコネートカップリング剤として、例えばアルコキシド系、キレート系、アシレート系のジルコネートカップリング剤が挙げられる。
【0111】
アルコキシド系のジルコニウム系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ノルマルブチルジルコネート等を挙げることができる。この内、ノルマルブチルジルコネートが好ましい。
【0112】
キレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムエチルアセトアセテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩等を挙げることができる。この内、ジルコニウムテトラアセチルアセトネートが好ましい。
【0113】
アシレート系のジルコネートカップリング剤としては、例えば、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム等を挙げることができる。この内、ステアリン酸ジルコニウムが好ましい。
【0114】
本発明においては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ジルコネートカップリング剤は一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
シランカップリング剤の配合量は、シリカ、カーボンブラック及び無機充填材の総量100質量部に対して、0.1~20質量部とすることが好ましく、3~15質量部とすることが特に好ましい。0.1質量部以上であれば、ゴム組成物の引裂き強度向上の効果をより好適に発現することができ、20質量部以下であれば、ゴム組成物のコストが低減し、経済性が向上する。
【0116】
(タイヤ、ホース及び防振ゴム)
本発明のタイヤ、ホース、及び防振ゴムは、上記本発明のゴム材料、マスターバッチ、又はゴム組成物を用いて作製される。
【0117】
本発明のタイヤとしては、例えば、空気入りタイヤ(ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ等)、ソリッドタイヤ等が挙げられる。
【0118】
タイヤの用途としては、特に制限はなく、例えば、乗用車用タイヤ、高荷重用タイヤ、モーターサイクル(自動二輪車)用タイヤ、スタッドレスタイヤ等が挙げられ、中でも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【0119】
本発明のタイヤの形状、構造、大きさ及び材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0120】
本発明のタイヤにおいて、上記ゴム組成物は、特にトレッド部、サイドウォール部、ビードエリア部、ベルト部、カーカス部及びショルダー部から選ばれる少なくとも一つの部材に用いられる。
【0121】
中でも、空気入りタイヤのタイヤトレッド部、又はサイドウォール部を当該ゴム組成物で形成するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0122】
トレッド部とは、トレッドパターンを有し、路面と直接接する部分で、カーカスを保護するとともに摩耗及び外傷を防ぐタイヤの外皮部分であり、タイヤの接地部を構成するキャップトレッド及び/又はキャップトレッドの内側に配設されるベーストレッドをいう。
【0123】
サイドウォール部とは、例えば、空気入りラジアルタイヤにおけるショルダー部の下側からビード部に至るまでの部分であり、カーカスを保護するとともに、走行する際に最も屈曲の激しい部分である。
【0124】
ビードエリア部とは、カーカスコードの両端を固定し、同時にタイヤをリムに固定させる役目を負っている部分である。ビードとは高炭素鋼を束ねた構造である。
【0125】
ベルト部とは、ラジアル構造のトレッドとカーカスとの間に円周方向に張られた補強帯である。カーカスを桶のたがの様に強く締付けトレッドの剛性を高めている。
【0126】
カーカス部とは、タイヤの骨格を形成するコード層の部分であり、タイヤの受ける荷重、衝撃、及び充填空気圧に耐える役割を果たしている。
【0127】
ショルダー部とは、タイヤの肩の部分で、カーカスを保護する役目を果たす。
【0128】
本発明のタイヤは、常法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を調整した空気;窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0129】
本発明のタイヤは、低発熱性を有し、タイヤの転がり抵抗が小さくなることから、自動車の低燃費化を図ることができる。また、カーボンブラック及び/又は無機充填材が高充填されたゴム組成物においても高い低発熱性を示すことから、高い運動性能を有する低燃費タイヤを提供することができる。
【0130】
そのほか、本発明のゴム材料、マスターバッチ、又はゴム組成物は、ホース、ベルト(コンベアベルト)、防振ゴム、及び免震ゴム等の製造に使用することが可能である。当該ホース、ベルト(コンベアベルト)、防振ゴム及び免震ゴムは、常法により作製することが可能である。
【0131】
(ゴム材料の製造方法)
本発明のゴム材料は、上記したゴム成分に、化合物(1)及び/又は化合物(2)を含ませることにより、得ることができる。より具体的には、ゴム成分並びに、化合物(1)及び/又は化合物(2)を混合(混練)し、得ることができる。
【0132】
ゴム成分並びに化合物(1)及び/又は化合物(2)を混合する際には、それぞれの全量を一度に混合してもよいし、粘度調整等の目的に応じ、それぞれの成分を分割投入した上で混合することも好ましい。
【0133】
混合する際の温度は特に限定はない。具体的には、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることがさらに好ましい。該混合温度を60℃以上に設定することにより、混合する際の作業性が向上し、また、190℃以下に設定することにより、ゴム成分の劣化を防止することが可能となる。
【0134】
ゴム成分、並びに化合物(1)及び/又は化合物(2)を混合する時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。混合時間を10秒以上に設定することにより、ゴム成分、並びに化合物(1)及び/又は化合物(2)を均一に混合することができる。また、当該時間を20分以下にすることにより、生産性の低下を防ぐことが可能となる。
【0135】
本発明のマスターバッチも、上記した本発明のゴム材料と同様の方法により製造することが可能である。
【0136】
(ゴム組成物の製造方法)
本発明のゴム組成物の製造方法は、ゴム成分と上記化合物(1)及び/又は化合物(2)とを混合(混練)した後、カーボンブラック及び/又は無機充填材を投入して混合することが好ましい。具体的には、ゴム成分と上記化合物(1)及び/又は化合物(2)とを混合(混練)する工程(A)、並びに工程(A)で得られた混合物とカーボンブラック及び/又は無機充填材を含む原料成分とを混合(混練)する工程(B)を含む二段階の製造方法も挙げることができる。
【0137】
工程(A)におけるゴム成分と上記化合物(1)及び/又は化合物(2)とを混合する際の温度としては、60~190℃であることが好ましく、70~160℃であることがより好ましく、80~150℃であることがさらに好ましい。該混合温度を60℃以上とすることにより、均一な混合が可能となり、また、190℃以下とすることにより、ゴムの劣化を防ぐことが可能となる。
【0138】
工程(A)における混合時間としては、10秒間~20分間が望ましく、30秒間~10分間であることがより好ましく、60秒間~7分間であることがさらに好ましい。該混合時間を10秒以上とすることにより均一な混合が可能となり、20分間以下とすることにより、生産低の低下を防ぐことができる。
【0139】
工程(B)において、工程(A)で得られた混合物とカーボンブラック及び/又は無機充填材とを混合する際の温度は、特に制限はなく、例えば、混合物の温度の上限が100~190℃であることが好ましく、130~175℃であることがより好ましく、110~170℃であることがさらに好ましい。
【0140】
工程(B)における混合時間としては、特に制限はなく、例えば、10秒間から20分間であることが好ましく、30秒間から10分間であることがより好ましく、1分間から8分間であることがさらに好ましい。
【0141】
上記化合物(1)及び/又は化合物(2)の配合量としては、特に制限はなく、例えば、ゴム成分100質量部に対して、0.1~50質量部であり、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.2~10質量部である。
【0142】
その他の配合剤の添加
本発明のゴム組成物の製造方法において、通常、ゴム組成物に配合されるステアリン酸、酸化亜鉛、老化防止剤等の各種配合剤を、必要に応じて、工程(A)又は工程(B)において添加することができる。
【0143】
その他の配合剤は、工程(A)又は工程(B)のどちらか一方で添加してもよいし、あるいは工程(A)及び工程(B)に分けて添加してもよい。
【0144】
ゴム組成物の成形方法
本発明におけるゴム組成物は、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、ニーダー、単軸押出機、二軸押出機等を用いて混合又は混練りされることが好ましい。その後、押出工程において押出して加工され、例えば、タイヤ、ホース、又は防振ゴムとして成形される。
【0145】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例
【0146】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0147】
製造例1:ゴム材料の混練製造
表1に記載のゴム成分及び化合物をその割合(質量部)で、バンバリーミキサーを用い混練した。混合物の温度が150℃に達した時点から、その温度を維持するように調整しながら約1分間混練し、その後ロールミルで冷却してゴム材料Aを製造した。
【0148】
下記表2に示す実施例1、比較例1、及び参考例1のゴム組成物について、粘弾性測定装置(Metravib社製)を使用し、温度25℃、動歪5%、周波数15Hzでtanδ値を測定した。比較例1のtanδ値の逆数を100とし、下記式から低発熱性の指数を算出した。この値が小さいほど、低発熱性に優れている。
式:低発熱性指数=(実施例1、比較例1、又は参考例1のゴム組成物のtanδ)/(参考例1のtanδ)×100
【0149】
ムーニー粘度測定(加工性)
JIS K6300-1(ムーニー粘度計による粘度及びスコーチタイムの求め方;ML1+4,100℃)に準じて測定し、参考例1のムーニー粘度値の逆数を100とし、下記式から加工性指数を算出した。この値が大きいほど、加工性に優れている。
式:加工性指数=(参考例1のムーニー粘度値)/(実施例1、比較例1又は参考例1のゴム組成物のムーニー粘度値)×100
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
※1:天然ゴム;CHUPAN Rubber Company Limited社製、RSS3
※2:化合物A;大塚化学株式会社製、3-メチル-5-ピラゾロン
※3:ゴム材料A;製造例1で製造した天然ゴムマスターバッチ
※4:シリカ;QueChen Silicon Chemical Co.,Ltd.社製、HD165MP
※5:シランカップリング剤;エボニック社製、Si69
※6:老化防止剤;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、6-PPD
※7:ワックス;Rhein Chemie Rheinau社製、Antilux 111
※8:ステアリン酸;Sichuan Tianyu Grease社製
※9:酸化亜鉛;Dalian Zinc Oxide Co.,Ltd社製
※10:加硫促進剤A;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、CBS
※11:加硫促進剤B;Kemai Chemical Co.,Ltd社製、DPG
※12:硫黄;Shanghai Jinghai Chemical Co.,Ltd社製
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明のゴム材料は、予め化合物(1)及び/又は化合物(2)をゴム成分に含ませてゴム材料を調製し、該ゴム材料を含むゴム組成物とすることにより、添加剤を含むにも関わらず、充分な加工性を有し、且つ優れた低発熱性をも有することから、タイヤ、ホース又は防振ゴムの材料として好適に活用できる。