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特許7312059刃具交換装置及びツール形状測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】刃具交換装置及びツール形状測定システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/00 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
B23Q17/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019158341
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021037553
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-04-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 記者会見、平成30年10月26日 JIMTOF2018、平成30年11月1日~同月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000162180
【氏名又は名称】共立精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】名渕 裕之
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-083723(JP,A)
【文献】特開2015-051494(JP,A)
【文献】特開2014-087867(JP,A)
【文献】特開2008-305237(JP,A)
【文献】特開2008-168373(JP,A)
【文献】特開2004-001157(JP,A)
【文献】特開2003-245837(JP,A)
【文献】特開2003-039258(JP,A)
【文献】特開平06-210504(JP,A)
【文献】特開平06-170621(JP,A)
【文献】特開平03-264232(JP,A)
【文献】実開平06-063208(JP,U)
【文献】実開平05-024209(JP,U)
【文献】実開平02-023910(JP,U)
【文献】実開昭61-127948(JP,U)
【文献】登録実用新案第3118962(JP,U)
【文献】米国特許第06149562(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/00-33/00
B23B 35/00-49/06
B23C 1/00-9/00
B23P 19/00-21/00
B23Q 3/00-3/154
B23Q 3/155-3/157
B23Q 17/00-23/00
B24B 41/00-51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、該スピンドルの回転駆動装置と、前記スピンドルの回転軸方向に沿って可動部を変位させる昇降装置と、前記可動部に搭載されていて前記ホルダのナット部を把持する一対のアームと、前記ホルダの参照情報に基づいて前記可動部の位置及び前記回転駆動装置により与えられる前記スピンドルのトルクを制御する制御装置とを有し、前記ホルダの参照情報が前記ナット部の位置及びトルク値を含むことを特徴とする刃具交換装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記一対のアームが前記スピンドルに取り付けられた前記ホルダのナット部を把持した状態を維持できるように前記スピンドルの回転に応じて変位する前記ナット部の位置に合わせて前記可動部の位置を制御することを特徴とする請求項1に記載の刃具交換装置。
【請求項3】
前記一対のアームがそれぞれの先端部に前記ナット部に形成された溝に嵌合する爪部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の刃具交換装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記爪部と前記ナット部との嵌合状態を解除するために前記スピンドルが所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように前記回転駆動装置を制御することを特徴とする請求項3に記載の刃具交換装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の刃具交換装置と、前記ホルダに装着された刃具の形状を測定するツールプリセッタと、前記ツールプリセッタと前記刃具交換装置との間で前記刃具が装着されたホルダを搬送すると共に、前記刃具交換装置と刃具載置台との間で前記刃具を搬送する搬送装置とを備えることを特徴とするツール形状測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃具交換装置及びツール形状測定システムに関し、更に詳しくは、ホルダに装着される刃具の交換作業を自動化することを可能にした刃具交換装置、及び、刃具交換装置を含むツール形状の測定システム全体を自動化することを可能にしたツール形状測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用の切削工具において、ホルダに装着される刃具は使用を重ねると刃先が削れ、加工品質を維持することができなくなるため、定期的に、刃具を交換する或いは刃先を再研磨して使用する必要がある。従来、ホルダから刃具を取り外して別の刃具を取り付ける作業は、部分的に刃具交換装置を用いて行われるものの加工作業者による手作業で行う必要があるため、多大な労力と時間が掛かっていた。このように従来の刃具交換装置において、装置全体を自動化するには至っていない。
【0003】
また、工作機械用の切削工具の形状や寸法を予め調整するために、ツールプリセッタが用いられている(例えば、特許文献1参照)。切削工具のプリセット作業を効率的に進めるために、刃具交換装置及びツールプリセッタを含むツール形状の測定システムとしてシステム全体の自動化が求められている。しかしながら、上述したように刃具の交換作業を自動化できていないことが要因となり、従来の刃具交換装置及びツールプリセッタを含むツール形状測定システムにおいて、システム全体の自動化には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-083723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ホルダに装着される刃具の交換作業を自動化することを可能にした刃具交換装置、及び、刃具交換装置を含むツール形状の測定システム全体を自動化することを可能にしたツール形状測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の刃具交換装置は、刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、該スピンドルの回転駆動装置と、前記スピンドルの回転軸方向に沿って可動部を変位させる昇降装置と、前記可動部に搭載されていて前記ホルダのナット部を把持する一対のアームと、前記ホルダの参照情報に基づいて前記可動部の位置及び前記回転駆動装置により与えられる前記スピンドルのトルクを制御する制御装置とを有し、前記ホルダの参照情報が前記ナット部の位置及びトルク値を含むことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明のツール形状測定システムは、前記刃具交換装置と、前記ホルダに装着された刃具の形状を測定するツールプリセッタと、前記ツールプリセッタと前記刃具交換装置との間で前記刃具が装着されたホルダを搬送すると共に、前記刃具交換装置と刃具載置台との間で前記刃具を搬送する搬送装置とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の刃具交換装置では、刃具が装着されたホルダを着脱自在に保持するスピンドルと、スピンドルの回転駆動装置と、スピンドルの回転軸方向に沿って可動部を変位させる昇降装置と、可動部に搭載されていてホルダのナット部を把持する一対のアームと、ホルダの参照情報に基づいて可動部の位置及び回転駆動装置により与えられるスピンドルのトルクを制御する制御装置とを有しているので、従来、加工作業者による手作業で行われていた刃具の交換作業を自動化することが可能になる。これにより、刃具の交換作業の効率化を図ることができる。
【0009】
また、本発明のツール形状測定システムでは、上述した構成を有する刃具交換装置と、ホルダに装着された刃具の形状を測定するツールプリセッタと、ツールプリセッタと刃具交換装置との間で刃具が装着されたホルダを搬送すると共に、刃具交換装置と刃具載置台との間で刃具を搬送する搬送装置とを備えているので、システム全体を自動化することが可能になる。これにより、マシニング加工における段取り作業、即ち、ツールのセッティング作業及びツール形状の測定作業において無人化を実現することができると共に、段取り作業全体の効率化を図ることができる。
【0010】
本発明の刃具交換装置において、制御装置は、一対のアームがスピンドルに取り付けられたホルダのナット部を把持した状態を維持できるようにスピンドルの回転に応じて変位するナット部の位置に合わせて可動部の位置を制御することが好ましい。これにより、刃具の交換時において、一対のアームがナット部を把持した状態を確実に保つことができる。
【0011】
一対のアームはそれぞれの先端部にナット部に形成された溝に嵌合する爪部を有することが好ましい。これにより、一対のアームはホルダのナット部を強固かつ確実に把持することができる。
【0012】
制御装置は、爪部とナット部との嵌合状態を解除するためにスピンドルが所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように回転駆動装置を制御することが好ましい。これにより、刃具の交換時において、爪部とナット部との嵌合状態を確実に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示す正面図である。
図4】本発明の実施形態からなる刃具交換装置を備えたツール形状測定システムを示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態からなるツール形状測定システムに含まれるツールプリセッタを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1図3は本発明の実施形態からなる刃具交換装置を示すものである。
【0015】
図1図3に示すように、刃具交換装置10の機台10Aには、刃具Cが装着されたホルダ1(ツールT)を着脱自在に保持するスピンドル2と、このスピンドル2の回転駆動装置3と、ホルダ1を把持しながら昇降させるための昇降装置4と、回転駆動装置3及び昇降装置4の動作を制御する制御装置8とが搭載されている。
【0016】
ホルダ1は、図3に示すように、刃具Cを締め付けてホルダ本体に固定する環状のナット部1Aを有している。このナット部1Aの外周面には、ナット部1Aの軸方向に沿って複数本の溝1Bが形成されている。ホルダ1として、例えばコレットホルダやミーリングホルダを用いることができ、ホルダ1の種類や大きさによりナット部1Aの位置(ホルダ1におけるナット部1Aの軸方向高さ)は異なる。また、ホルダ1には、ツール管理を簡便にするためにツールID(例えば、二次元コード)が付与されている。このツールIDは、少なくともホルダ1の識別番号を有しており、その他にホルダ1の直径や長さ等を含んでいてもよい。
【0017】
スピンドル2は、回転軸Eの廻りに正転方向又はそれとは逆方向(逆転方向)に回転自在に構成されている。回転駆動装置3は、刃具交換装置10の内部に配設され、スピンドル2を回転駆動する。回転駆動装置3として、例えばサーボモータなどの電動式のモータを用いることができ、スピンドル2の回転速度を自在に変更することができる。このモータの主軸はスピンドル2の回転軸Eと同軸上に接続されている。
【0018】
昇降装置4には、スピンドル2の回転軸Eの方向に沿って変位する可動部5が配設されている。この可動部5は、ホルダ1のナット部1Aを把持する一対のアーム6を有している。これらアーム6は、可動部5からスピンドル2に向かって突出し、水平方向に開閉可能に構成されている。各アーム6の先端部には、ホルダ1のナット部1Aに形成された溝1Bに嵌合する爪部7が設けられている。爪部7はアーム6の延在方向に対して略直交する方向に突出している。このような爪部7を有することで、一対のアーム6はホルダ1のナット部1Aを強固かつ確実に把持することができる。
【0019】
制御装置8は、刃具交換装置10の内部に搭載されている。制御装置8は、刃具Cの交換の際、ホルダ1の参照情報に基づいて、昇降装置4に配設された可動部5の位置及び回転駆動装置3により与えられるスピンドル2の回転数又はトルクを制御する。ここで、ホルダ1の参照情報とは、外部から制御装置8に入力され、例えば、ナット部1Aの位置及びトルク値を含むホルダ1に関する情報である。刃具交換装置10(制御装置8)を外部のデータベースサーバと通信可能に接続することで、ホルダ1に関する情報を参照することができる。或いはホルダ1の各種情報が記録されたツールIDを読取装置で読み取って参照してもよい。
【0020】
制御装置8は、例えば、刃具Cの交換時において回転駆動装置3を正転方向又は逆転方向に回転させる通常の回転制御や、一対のアーム6がスピンドル2に取り付けられたホルダ1のナット部1Aを把持した状態を維持できるように、スピンドル2の回転に応じて変位するナット部1Aの位置に合わせて可動部5の位置を変位させる位置制御、更には、一対のアーム6の爪部7とホルダ1のナット部1Aとの嵌合状態を解除するために、スピンドル2が所定の回転量で逆転方向へ回転するように回転駆動装置3を回転させる回転制御等を実行するものである。
【0021】
刃具交換装置10には仮置台9が配設されている。仮置台9は、刃具Cを装着したホルダ1を一時的に載置しておくものであり、必要に応じて配設することができる。
【0022】
上述した刃具交換装置10を用いてホルダ1に装着された刃具Cを交換する場合、予め、ホルダ1の参照情報を外部のデータベースサーバに登録し、適宜参照できる状態にしておくと共に、刃具Cが装着されたホルダ1をスピンドル2に取り付けておく。そして、刃具交換装置10が始動すると、可動部5が参照情報に基づいてナット部1Aの位置(溝1Bの位置)に合わせて移動し、一対のアーム6がホルダ1のナット部1Aを把持する。その際、一対のアーム6は、エアーの力により閉じる方向に作用しながらスピンドル2が回転することで自動的にナット部1Aの溝1Bに嵌まるようになっている。このように一対のアーム6の爪部7とナット部1Aの溝1Bとが嵌合した状態でスピンドル2が所定の回転数で逆転方向に回転する。これにより、ホルダ1のナット部1Aが緩まる。その際、ナット部1Aの位置はスピンドル2の回転に応じて徐々に高くなるが、その変位量(上昇量)に応じて可動部5も同じく上昇するので、ナット部1Aを緩めている間、可動部5に配設された一対のアーム6はナット部1Aを把持した状態を保つことができる。このようにしてナット部1Aを緩め、ホルダ1に装着された刃具Cを取り外すことが可能になる。
【0023】
また、新たな刃具Cを装着してナット部1Aを締める際には、スピンドル2が所定のトルクで正転方向に回転する。これにより、ホルダ1のナット部1Aが締まる。その際、ナット部1Aの位置はスピンドル2の回転に応じて徐々に低くなるが、その変位量(下降量)に応じて可動部5も同じく下降するので、ナット部1Aを締めている間、可動部5に配設された一対のアーム6はナット部1Aを把持した状態を保つことができる。そして、ナット部1Aが所定のトルク値に達する(十分に締まる)までスピンドル2は回転し、スピンドル2が停止する。更に、スピンドル2は所定の回転量で逆転方向に回転し、一対のアーム6が開いて爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を解除する。このようにしてナット部1Aを締め、ホルダ1に新たな刃具Cを装着することが可能になる。
【0024】
なお、スピンドル2に対するホルダ1の脱着作業及びホルダ1に装着された刃具Cの交換作業は、作業者による手動又は搬送装置による電動のいずれでも行うことができる。
【0025】
上述した刃具交換装置では、刃具Cが装着されたホルダ1を着脱自在に保持するスピンドル2と、スピンドル2の回転駆動装置3と、スピンドル2の回転軸方向に沿って可動部5を変位させる昇降装置4と、可動部5に搭載されていてホルダ1のナット部1Aを把持する一対のアーム6と、ホルダ1の参照情報に基づいて可動部5の位置及び回転駆動装置3により与えられるスピンドル2の回転数又はトルクを制御する制御装置8とを有しているので、従来、加工作業者による手作業で行われていた刃具Cの交換作業を自動化することが可能になる。これにより、刃具Cの交換作業の効率化を図ることができる。
【0026】
上記刃具交換装置において、制御装置8は、一対のアーム6がスピンドル2に取り付けられたホルダ1のナット部1Aを把持した状態を維持できるようにスピンドル2の回転に応じて変位(上昇又は下降)するナット部1Aの位置に合わせて可動部5の位置を制御するので、刃具Cの交換時において、一対のアーム6がナット部1Aを把持した状態を確実に保つことができる。
【0027】
また、刃具Cの交換の際、一対のアーム6がナット部1Aを把持した状態が長時間続くため、爪部7とナット部1Aの溝1Bとが強く嵌合して、アーム6が開閉し難い状態になっている。これに対して、制御装置8は、爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を解除するためにスピンドル2が所定の回転量で正転方向とは逆方向へ回転するように回転駆動装置3を制御するので、刃具Cの交換時において、爪部7とナット部1Aとの嵌合状態を確実に解除することができる。
【0028】
次に、本発明のツール形状測定システムについて説明する。図4は本発明の実施形態からなる刃具交換装置を備えたツール形状測定システムを示すものであり、図5はそれに含まれるツールプリセッタを示すものである。
【0029】
図4に示すように、ツール形状測定システム100は、上述した構成を有する刃具交換装置10と、刃具Cの形状を測定するツールプリセッタ20と、ホルダ1又は刃具Cやその他器具を搬送する搬送装置30と、交換用の刃具Cを載置しておく刃具載置台41と、刃具Cが装着されたホルダ1(ツールT)の形状の測定時に用いる補助装置50とを備えている。搬送装置30を中心として、その可動範囲に刃具交換装置10、ツールプリセッタ20、刃具載置台41及び補助装置50は隣接して配置されている。これら刃具交換装置10、ツールプリセッタ20及び搬送装置30は、外部のデータベースサーバと通信可能に接続されている。なお、補助装置50は、必要に応じてツール形状測定システム100に付加することができるものである。
【0030】
また、ツール形状測定システム100は、ツールプリセッタ20の操作画面等を表示するためのモニタ42と、システムの操作を行うと共に、ツール情報を保存したデータベースサーバを管理する電子機器43(例えば、パーソナルコンピュータ)を備えている。
【0031】
刃具交換装置10の制御装置8は、刃具Cの交換後において搬送装置30がツールTを把持することができるように回転駆動装置3を制御し、スピンドル2が所定の位相になるようにする。
【0032】
ツールプリセッタ20の機台20Aには、図5に示すように、ツールTを着脱可能に保持すると共に回転可能に構成されたスピンドル21と、このスピンドル21の回転軸Lに対して垂直となる方向に沿って進退可能に構成されたコラム22とが設置されている。なお、図5において、スピンドル21の回転軸Lに対して垂直となる方向をX軸方向とし、スピンドル21の回転軸Lに対して平行となる方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に対して直交する方向をY軸方向とする。
【0033】
コラム22には、ガイド部材23がZ軸方向に沿って昇降可能に設置され、このガイド部材23には、水平方向に延びる一対の支持部材24が配設されている。支持部材24には、ツールTを前方から撮影するためのカメラ25(第一カメラ)が搭載されている。このカメラ25は、ツールTをY軸方向に向かって撮影し、ツールTの高さや外径を測定可能に構成されている。一方、支持部材24には、Y軸方向と平行な回転軸を有する回転駆動装置26と、回転駆動装置26により回転駆動される旋回アーム27が配設され、旋回アーム27にはツールTを側方又は上方から撮影するためのカメラ28(第二カメラ)が搭載されている。このカメラ28は、ツールTをX軸方向又はZ軸方向から撮影可能に構成されている。
【0034】
ツールプリセッタ20の内部にはコンピュータ29が内蔵されている。このコンピュータ29は、コラム22のX軸方向の移動量、ガイド部材23のZ軸方向の移動量、スピンドル21の回転量及び回転駆動装置26の回転量を制御する制御装置として機能すると共に、カメラ25,28から得られた画像によりツールTの各種の寸法を演算する演算装置として機能するように構成されている。
【0035】
上述したツールプリセッタ20によれば、カメラ25,28により得られる画像を使用することにより、形状の異なる様々な工作機械用のツールTに対して、そのツールTの形状(例えば刃先Cの角度や曲率等)や寸法(例えば直径や長さ等)を高精度に測定することができる。ツールTの測定データは、工作機械での加工において補正値として利用される。また、カメラ28は旋回可能に設置されているので、ツールTの欠陥検出にも利用可能である。
【0036】
搬送装置30は、刃具交換装置10とツールプリセッタ20との間でツールTを搬送すると共に、刃具交換装置10と刃具載置台41との間で刃具Cを搬送する。更に、補助装置50を用いる場合、刃具交換装置10、ツールプリセッタ20及び補助装置50の相互間でツールT又はその他器具を搬送する。搬送装置30は、ホルダ1又は刃具Cやその他器具を把持する一対の把持部31を有している。把持部31は段状に形成されており、把持部31の先端部(幅広な部位)ではホルダ1等の幅が広いものを把持することができ、把持部31の根本部(幅狭な部位)では刃具C等の幅が狭いものを把持することができる。搬送装置30として、例えば複数の軸を有する多関節ロボットを用いることができ、ツールTの搬送作業や、刃具Cの脱着作業、ホルダ1とスピンドル21の清掃作業等を実施する。
【0037】
補助装置50は、ホルダ1用のホルダ清掃装置51と、スピンドル21用の清掃器具52を載置する載置台53と、計量器具54と、無人搬送車55とが設置されている。
【0038】
ホルダ清掃装置51は、本体部に対して回転可能に構成された拭き取り部を有しており、工作機械での加工作業によってホルダ1のテーパ部に付着した付着物を除去する。具体的には、回転するホルダ清掃装置51の拭き取り部に、搬送装置30により把持されたホルダ1のテーパ部を接触させることで、ホルダ1のテーパ部に付着した付着物(例えば、切削屑など)を除去することができる。ホルダ清掃装置51を用いることで、ツールプリセッタ20によるツールTの測定精度を安定させることができる。
【0039】
清掃器具52は、搬送装置30により把持されて、回転するツールプリセッタ20のスピンドル21に接触させ、スピンドル21に付着した付着物を除去する。清掃器具52を用いることで、ツールプリセッタ20によるツールTの測定精度を安定させることができる。
【0040】
計量器具54は、刃具Cの交換後にツールTの重量を測定する。これにより、刃具Cの交換時において刃具の取付間違いを防止することができる。また、測定されたツールTの重量は、工作機械での加工においてツールを交換する際に自動工具交換装置(ATC)によるツール毎の速度制御にも利用することができ、ツール交換が短くなることにより加工時間の短縮に寄与する。
【0041】
無人搬送車55は、工作機械と搬送装置30との間で指定された経路に基づいて床面を走行し、ツールTを運搬する。無人搬送車55は、例えば、指定された経路にテープを貼り、センサでテープを検知して走行するようにすることができる。無人搬送車55は、ツール形状の測定後に始動するタイミングを感知するために感知手段56を有している。この感知手段56は、2点間の光軸を有する光電センサ(図4参照)でもよいし、或いは駆動用スイッチでもよい。無人搬送車55は、搬送装置30の把持部31で光軸を遮光する或いは駆動用スイッチを押すことにより始動するように構成される。また、無人搬送車55の停止誤差を補正するために、例えばカメラなどの補正手段57を付加することができる。補正手段57として、無人搬送車55に向かって撮影可能なカメラを配置した場合、例えば無人搬送車55にマーキングされた印を検知するなどして、無人搬送車55の停止誤差に応じて搬送装置30の把持動作を補正し、ピッキング精度を高めることができる。
【0042】
上記ツール形状測定システムを用いてツールTの形状を測定する場合、予めホルダ1の参照情報を電子機器43のデータベースサーバに登録しておく。そして、無人搬送車55により工作機械から運搬されてきたツールTを搬送装置30が把持し、ツール毎に付与されたツールIDをツールプリセッタ20のカメラ28(第二カメラ)により識別し、データベースサーバに登録されたツール情報と照合する。ここで、ツールIDは、カメラ28(第二カメラ)の替わりに、専用のリーダーを用いて読み取ることも可能である。次に、搬送装置30がツールTをツールプリセッタ20から刃具交換装置10に搬送し、刃具交換装置10は使用済みの刃具Cを新たな刃具Cに交換する。回転刃具Cの交換後、刃具交換装置10のスピンドル2は、搬送装置30がツールTを把持可能な所定の位相に回転する。そして、搬送装置30はツールTを把持して刃具交換装置10からホルダ清掃装置51に搬送し、ホルダ清掃装置51はホルダ1のテーパ部を清掃する。ホルダ1の清掃後、搬送装置30はツールTをホルダ清掃装置51からツールプリセッタ20のスピンドル21に取り付け、ツールプリセッタ20はツールTの形状や寸法を測定する。ツールTの形状や寸法の測定後、搬送装置30はツールTをツールプリセッタ20から計量器具54に搬送し、計量器具54はツールTの重量を測定する。その後、搬送装置30はツールTを無人搬送機55に搬送し、無人搬送機55は刃具Cが交換されたツールTを工作機械に搬送する。その後、搬送装置30は載置台53から清掃器具52をツールプリセッタ20のスピンドル21に搬送してスピンドル21の清掃を行う。
【0043】
上述のようにツールプリセッタ20により測定されたツールTの直径及び長さと、計量器具54により測定されたツールTの重量とはツール情報としてデータベースサーバに保存される。
【0044】
上述した本発明のツール形状測定システムでは、刃具交換装置10と、ホルダ1に装着された刃具Cの形状を測定するツールプリセッタ20と、ツールプリセッタ20と刃具交換装置10との間で刃具Cが装着されたホルダ1を搬送すると共に、刃具交換装置10と刃具載置台41との間で刃具を搬送する搬送装置30とを備えているので、システム全体を自動化することが可能になる。これにより、マシニング加工における段取り作業、即ち、ツールのセッティング作業及びツール形状の測定作業において無人化を実現することができると共に、段取り作業全体の効率化を図ることができる。また、補助装置50を備えていることで、ツール形状の測定作業における無人化をより高度に実現できると共に、ツール形状の測定精度を効果的に高めることができる。
【0045】
なお、図4に示す実施形態では補助装置50を備えた例を示したが、これに限定されるものではない。即ち、本発明のツール形状測定システムは、補助装置50を含まずに刃具交換装置10、ツールプリセッタ20及び搬送装置30を備えた構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 ホルダ
1A ナット部
1B 溝
2 スピンドル
3 回転駆動装置
4 昇降装置
5 可動部
6 アーム
7 爪部
8 制御装置
10 刃具交換装置
20 ツールプリセッタ
30 搬送装置
100 ツール形状測定システム
図1
図2
図3
図4
図5