(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】シートパッドおよびその製造方法、成形型
(51)【国際特許分類】
A47C 27/15 20060101AFI20230712BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20230712BHJP
B68G 15/00 20060101ALI20230712BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20230712BHJP
【FI】
A47C27/15 A
A47C7/18
B68G15/00
B60N2/90
(21)【出願番号】P 2019169757
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-04-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-000263(JP,A)
【文献】特開2018-175483(JP,A)
【文献】実開昭63-116311(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/15
A47C 7/18
B68G 15/00
B60N 2/00-90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズ発泡体の成形品である補助材と、
前記補助材と異なる発泡体からなる成形品であり、前記補助材を覆うように配置されて、シートパッドにおける使用者側の支持面を構成するパッド本体と、
前記パッド本体の前記支持面から前記補助材の内部まで達するように形成された凹部と、を備え
、
前記凹部における深さ方向と直交する方向の寸法が、前記補助材内において、前記パッド本体との境界面から前記凹部の底側に向かうにつれて小さくなる
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項2】
ビーズ発泡体の成形品である補助材と、
前記補助材と異なる発泡体からなる成形品であり、前記補助材を覆うように配置されて、シートパッドにおける使用者側の支持面を構成するパッド本体と、
前記パッド本体の前記支持面から前記補助材の内部まで達するように形成された凹部と、を備え、
前記凹部は、前記パッド本体の前記支持面にあく開口が、
スリット形状または複数のスリット形状が交差するように組み合わせた形状に形成されている
ことを特徴とするシートパッド。
【請求項3】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットし、
前記上型と下型とを型閉じして、該下型から立ち上がる支持部の先端を前記補助材に突き刺すことで前記補助材に凹部を形成し、前記凹部に突き刺した前記支持部で前記補助材を支持し、
前記上型と前記下型との間に画成されたキャビティにおいて発泡体原料を発泡成形することで、前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を、該補助材と一体的に形成する
ことを特徴とするシートパッド
の製造方法。
【請求項4】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットし、
前記上型と下型とを型閉じして、前記下型から立ち上がる支持部の先端を前記補助材に突き刺して、該支持部で前記補助材を支持し、
前記上型と前記下型との間に画成されたキャビティにおいて発泡体原料を発泡成形することで、前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を、該補助材と一体的に形成する工程を備え、
前記支持部で前記補助材を支持する工程では、前記パッド本体の一面から前記補助材の内部まで達する凹部を、前記補助材内において、前記パッド本体との境界面から前記凹部の底側に向かうにつれて小さくなるように形成する
ことを特徴とするシートパッド
の製造方法。
【請求項5】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットし、
前記上型と下型とを型閉じして、該下型から立ち上がる支持部の先端を前記補助材に突き刺して、該支持部で
前記補助材を支持し、
前記上型と前記下型との間に画成されたキャビティにおいて発泡体原料を発泡成形することで、前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を、該補助材と一体的に形成する
工程を備え、
前記パッド本体を形成する工程では、前記支持部によって該パッド本体にあく開口を、スリット形状または複数のスリット形状が交差するように組み合わせた形状に形成する
ことを特徴とするシートパッドの製造方法。
【請求項6】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットした状態で、該上型および下型の間に画成されるキャビティで前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を成形する成形型であって、
前記下型は、型閉じした際に前記上型にセットされた前記補助材から離れると共にシートパッドにおける使用者側の支持面を成形する型面から、該補助材に向けて立ち上がる支持部を備え、
前記支持部は、型閉じした際に、前記上型にセットされた前記補助材に先端が突き刺さって、該補助材を支持するように構成され、
前記支持部は、前記型面に連なる根元が、板状片または複数の板状片が交差するように組み合わせられた形状に形成されている
ことを特徴とする成形型。
【請求項7】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットした状態で、該上型および下型の間に画成されるキャビティで前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を成形する成形型であって、
前記下型は、型閉じした際に前記上型にセットされた前記補助材から離れると共にシートパッドにおける使用者側の支持面を成形する型面から、該補助材に向けて立ち上がる支持部を備え、
前記支持部は、型閉じした際に、前記上型にセットされた前記補助材に先端が突き刺さって、該補助材を支持するように構成され、
前記支持部における前記型面からの立ち上がり方向と直交する方向の寸法が、前記支持部の先端に向かうにつれて小さくなる
ことを特徴とする成形型。
【請求項8】
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットした状態で、該上型および下型の間に画成されるキャビティで前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を成形する成形型であって、
前記下型は、型閉じした際に前記上型にセットされた前記補助材から離れると共にシートパッドにおける使用者側の支持面を成形する型面から、該補助材に向けて立ち上がる支持部を備え、
前記支持部は、型閉じした際に、前記上型にセットされた前記補助材に先端が突き刺さって、該補助材を支持するように構成され、
前記支持部の前記先端に、前記下型の型面側から前記支持部の先端側へ向かうにつれてテーパ状に拡大してからテーパ状に縮小する部位を有する
ことを特徴とする成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の発泡体を組み合わせて構成されるシートパッド、このシートパッドの製造方法およびシートパッドを成形するための成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の座席などの芯材として用いられるシートパッドとしては、座面側の上層をポリウレタン発泡体で形成すると共に、下層をポリスチロール発泡体で形成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のように、シートパッドの一部を、ポリスチロール発泡体などの発泡ビーズ成形により得られるビーズ発泡体で構成することで、シートパッドの軽量化を図ることができる利点がある。
【0003】
特許文献1のようなシートパッドは、別に成形して得られるポリスチロール発泡体を取り付けた上型と下型との間に画成されるキャビティで、ポリウレタン発泡体を発泡成形することで、上下の層を接合している。この際に、凹凸のある外形のポリスチロール発泡体を、該ポリスチロール発泡体の外形に合わせて凹凸する上型の型面に嵌め合わせることで、ポリスチロール発泡体を上型に取り付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したポリスチロール発泡体などのビーズ発泡体は、発泡体であるが故に、寸法のばらつきが発生し、また季節によっても寸法精度に変化がある。このため、上型とビーズ発泡体との凹凸の嵌め合いによって、ビーズ発泡体を上型に取り付ける方法であると、所定寸法よりも小さいビーズ発泡体は、上型から脱落してズレてしまうことがある。そして、ビーズ発泡体が上型からズレると、ポリウレタン発泡体が余分な箇所に付着したり、規定通りの形状のシートパッドが得られないなど、シートパッドの見栄えが悪化してしまう。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、見栄えのよいシートパッド、その製造方法およびシートパッドを得るための成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るシートパッドは、
ビーズ発泡体の成形品である補助材と、
前記補助材と異なる発泡体からなる成形品であり、前記補助材を覆うように配置されて、シートパッドにおける使用者側の支持面を構成するパッド本体と、
前記パッド本体の前記支持面から前記補助材の内部まで達するように形成された凹部と、を備えていることを要旨とする。
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係るシートパッドの製造方法は、
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットし、
前記上型と下型とを型閉じして、該下型から立ち上がる支持部の先端を前記補助材に突き刺して、該支持部で補助材を支持し、
前記上型と前記下型との間に画成されたキャビティにおいて発泡体原料を発泡成形することで、前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を、該補助材と一体的に形成することを要旨とする。
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る成形型は、
別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材を上型にセットした状態で、該上型および下型の間に画成されるキャビティで前記補助材と異なる発泡体からなるパッド本体を成形する成形型であって、
前記下型は、型閉じした際に前記上型にセットされた前記補助材から離れると共にシートパッドにおける使用者側の支持面を成形する型面から、該補助材に向けて立ち上がる支持部を備え、
前記支持部は、型閉じした際に、前記上型にセットされた前記補助材に先端が突き刺さって、該補助材を支持するように構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るシートパッドによれば、見栄えを向上できる。
本発明に係るシートパッドの製造方法によれば、見栄えのよいシートパッドを得ることができる。
本発明に係る成形型によれば、見栄えのよいシートパッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例に係るシートパッドを、斜め上側から見た概略斜視図である。
【
図2】実施例のシートパッドを、斜め下側から見た概略斜視図である。
【
図5】実施例の凹部の開口形状を示す正面図である。
【
図6】凹部の開口形状の変更例を示す正面図である。
【
図7】実施例のシートパッドの製造工程を示す説明図である。
【
図8】実施例のシートパッドの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るシートパッド、このシートパッドの製造方法およびシートパッドを成形するための成形型につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0013】
図1および
図2に示すように、実施例のシートパッド10は、車両の後部座席において使用者の下半身を支持する座部を構成するものである。
図3および
図4に示すように、シートパッド10は、該シートパッド10の下部を主に構成する補助材12と、補助材12に積層されて、該シートパッド10の上部を主に構成するパッド本体14とを備えている。シートパッド10は、補助材12を覆うように配置されたパッド本体14が、シートパッド10における使用者側の支持面10aを構成している。実施例のシートパッド10は、該シートパッド10の外面における上面および側面がパッド本体14で構成され、該シートパッド10の外面における下面の大部分が補助材12で構成されている。シートパッド10は、補助材12と接するように成形されるパッド本体14の接着力によって、補助材12とパッド本体14とが一体化されている。
【0014】
補助材12は、発泡剤を含んだ発泡ビーズを蒸気等で加熱して発泡および成形することで得られるポリプロピレン発泡体(EPP)やポリスチロール発泡体(EPS)などの弾性を有するビーズ発泡体で構成されている。なお、補助材12は、パッド本体14を構成する素材よりも軽量な素材が用いられる。補助材12は、シートパッド10において車体に面する下面を構成しており、車体への座席の取付部に応じて、下面が凹凸するように形成されている(
図2参照)。実施例の補助材12の下面には、下方へ突出する凸状部16が、シートパッド10の長手方向に離れて2箇所設けられている。
【0015】
パッド本体14は、重合反応によって生じるガスや発泡剤などの化学反応を利用する方法(化学反応ガス活用法)や、機械的に攪拌して気体を吹き込むなど、空気を混入させる方法(機械的混入法)等で得られる発泡体が用いられる。パッド本体14は、補助材12をなすビーズ発泡体と異なる発泡体が用いられ、例えばポリウレタン発泡体が採用される。また、パッド本体14は、座席に座った使用者側となることから、補助材12よりも柔軟性がある軟質発泡体が用いられている。
【0016】
図3および
図4に示すように、シートパッド10は、パッド本体14の支持面10aから補助材12の内部まで達するように形成された凹部18を備えている。なお、凹部18は、パッド本体14を成形する際に補助材12を支持する支持部30に由来する穴(凹み)である。凹部18は、補助材12の配置箇所に合わせて、複数箇所に設けられている。凹部18は、支持面10aからパッド本体14を貫通して、補助材12を貫通しない程度に補助材12の内部までに亘って形成されている。
【0017】
図3および
図4に示すように、凹部18は、該凹部18における深さ方向と直交する方向(以下、開口面方向という。)の寸法が最も大きい部位から凹部18の底側に向かうにつれて寸法が小さくなるように形成されている。なお、凹部18における開口面方向の寸法は、深さ方向の任意の位置で開口面方向に通る平面において凹部18を見た際に、凹部18の開口寸法の中で最も長いものをいう。ここで、実施例の凹部18は、支持面10aにあく開口18aにおいて、開口面方向の寸法が最も大きくなっている。そして、実施例の凹部18は、開口18a側から底側に向かうにつれて幅が狭くなるように形成され、底側の幅が開口18a側と比べて狭くなっている。
【0018】
図5に示すように、凹部18は、パッド本体10の支持面10aにあく開口18aが、凹部18における深さ方向と直交する平面で最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも開口面積が小さくなるように形成されている。実施例の凹部18は、支持面10aにあく開口18aにおいて開口面方向の寸法が最も大きくなっているので、凹部18は、パッド本体14の支持面10aにあく開口18aが、該開口18aにおける最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも開口面積が小さくなっている。実施例の支持面10aにあく凹部18の開口18aは、スリット形状または複数のスリット形状が交差するように組み合わせた形状に形成される。
図1および
図5に示すように、実施例の開口18aは、2本のスリット形状を十字状に交差するように組み合わせた形状である。
【0019】
凹部18は、支持面10aにあく開口18aが、1条のスリット形状であってもよい。また、凹部18は、支持面10aにあく開口18aを、間隔をあけて並べた2本のスリット形状の間を別のスリット形状で繋ぐように組み合わせた「I」または「H」形状(
図6(a)参照)、複数のスリット形状同士を交差するように組み合わせた井桁形状(
図6(b)参照)など、その他の形状であってもよい。開口18aの形状が、1条のスリット形状あるいは複数のスリット形状をどのように組み合わせたものであっても、開口18aが、凹部18における最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも開口面積が小さくなるように形成される。
【0020】
次に、実施例に係るパッド本体14の成形に用いる成形型20について説明する。
図7(c)に示すように、成形型20は、補助材12が取り付けられる上型22と、パッド本体14の外面を規定する下型24とを備え、上型22と下型24とが相対的に開閉可能になっている。成形型20は、補助材12を取り付けた上型22と下型24とを型閉じした際に、パッド本体14の形状に合わせたキャビティ26を画成する(
図8(a)および(b)参照)。成形型20は、キャビティ26においてパッド本体14をなす発泡体原料Hを発泡・硬化させて、シートパッド10を上下反転させた状態でパッド本体14を成形する。
【0021】
図7(b)に示すように、上型22は、シートパッド10の下面をなす補助材12の下面形状の凹凸の少なくとも一部と嵌め合い可能な型面を有し、下方に向く型面に、補助材12の凸状部16に応じて下方へ開口する凹状部28が形成されている。実施例では、上型22の型面の形状が、補助材12の設計形状に合わせて形成され、補助材12の下面形状に応じて該型面が凹凸している。成形型20は、別に成形されたビーズ発泡体の成形品である補助材12を上型22にセットした状態で、キャビティ26でビーズ発泡体と異なる発泡体からなるパッド本体14を成形するようになっている。
【0022】
図7(c)および
図8に示すように、下型24は、型閉じした際に上型22にセットされた補助材12から離れると共にパッド本体14の支持面10aを成形する下型面(型面)24aから、補助材12に向けて立ち上がる支持部30を備えている。支持部30は、成形型20を型閉じした際に、上型22にセットされた補助材12に先端が突き刺さって、補助材12を支持するように構成されている。支持部30は、下型面24aとこの下型面24aに面する補助材12との間隔よりも、下型面24aからの立ち上がり寸法が大きく設定されている。ここで、支持部30の立ち上がり寸法を補助材12の寸法公差よりも大きく設定しておけば、支持部30の先端部を確実に補助材12の内部にまで突き刺すことが可能となる。また、支持部30の先端は、先細り形状や板状など、補助材12に刺さり易い形状になっている。
【0023】
図8(a)に示すように、支持部30は、下型面24aからの立ち上がり方向と直交する方向(以下、平面方向という。)の寸法が最も大きくなる部位から、補助材12に突き刺さる先端に向かうにつれて前記寸法が小さくなるように形成されている。なお、支持部30の平面方向の寸法は、立ち上がり方向の任意の位置で平面方向に通る平面において支持部30を見た際に、支持部30の形状の中で最も長いものをいう。ここで、実施例の支持部30は、下型面24aに連なる根元において、平面方向の寸法が最も大きくなっている。実施例の支持部30は、根元側から先端側に向かうにつれて該支持部30を構成する板状片の幅が小さくなるように形成されており、先端側の幅が根元側と比べて小さくなっている。このように、支持部30は、補助材12に突き刺さる先端部が尖っている。
【0024】
図9に示すように、支持部30は、下型面24aからの立ち上がり方向と直交する平面で最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも、下型面24aに連なる根元の断面が小さくなるように形成されている。ここで、実施例の支持部30は、根元が最も長尺な部位になっているので、支持部30は、下型面24aに連なる根元の断面における最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも、根元の断面積が小さくなるように形成されている。
図9に示すように、支持部30は、下型面24aに連なる根元が、板状片または複数の板状片が交差するように組み合わせられた形状に形成されている。実施例の支持部30は、2本の板状片を十字状に交差するように組み合わせた形状である。
【0025】
次に、前述した成形型20を用いたシートパッド10の製造方法について説明する。まず、ビーズ発泡法によって所要形状に成形して得られた補助材12を用意する(
図7(a)参照)。凸状部16を上型22の凹状部28に嵌め込んで、補助材12を上型22に取り付ける(
図7(b)参照)。次に、下型24にパッド本体14をなす発泡体原料Hを供給する(
図7(c)参照)。そして、上型22と下型24とを型閉じする。上型22と下型24とを型閉じすると、下型24に設けられた支持部30が、上型22にセットされた補助材12に突き刺さる。これにより、補助材12が、支持部30によって上型22に向けて押し上げられて、上型22の型面に押し付けるように下方から支持される。上型22、上型22に取り付けられた補助材12および下型24で画成されるキャビティ26において、所定の条件で温調等することで、発泡体原料Hを発泡させる(
図8(a)参照)。上型22に取り付けられた補助材12がキャビティ26に臨んでいるので、発泡した発泡体原料Hが補助材12に接すると共に、この状態で発泡体原料Hが硬化する。これにより、パッド本体14自身の接着力によって、上型22に取り付けられた補助材12とキャビティ26で成形されたパッド本体14とが接合して一体化することで、シートパッド10が得られる(
図8(b)参照)。そして、成形型20を開いて、得られたシートパッド10を取り出す(
図8(c)参照)。
【0026】
前述した製造方法では、上型22と下型24とを型閉じして、下型24から立ち上がる支持部30の先端を補助材12に突き刺して支持部30で補助材12を支持したもとで、補助材12と異なる発泡体からなるパッド本体14を、補助材12と一体的に形成している。そして、パッド本体14の成形時に、支持部30によってパッド本体14における使用者側となる支持面10aにあく開口18aを、実施例ではスリット形状または複数のスリット形状が交差するように組み合わせた形状に形成している。実施例の支持部30に由来する凹部18の形状は、前述した通りである。
【0027】
このように支持部30によって補助材12を支持することで、シートパッド10の成形時に補助材12が上型22から脱落したり、位置ズレしたりすることを防止できる。これにより、パッド本体14をなす発泡体が余分な箇所に形成されることを防いで、設計通りで見栄えのよいシートパッド10を得ることができる。また、支持部30で補助材12を支持するので、補助材12の寸法誤差や季節による寸法精度の変化に合わせて、上型22の補修などをする手間や時間を省くことができ、見栄えのよいシートパッド10を効率よく得ることができる。
【0028】
支持部30は、補助材12に突き刺さるので、支持部30と補助材12との干渉によって、型閉じした上型22および下型24に対して型開き方向に力が加わることを回避できる。従って、上型22と下型24との間からパッド本体14をなす発泡体が漏れ出すことを抑え、バリの発生を少なくできる。前述したポリスチロール発泡体などのビーズ発泡体は、発泡体であるが故に、寸法のばらつきが発生し、また季節によっても寸法精度に変化がある。特に、支持部30を補助材12に突き刺す設定であるので、補助材12が設計寸法よりも大きいまたは小さい場合であっても、支持部30の補助材12の突き刺し量が変化することによって、寸法誤差を吸収して補助材12を適切な位置にすることができる。ここで、支持部30の先端部を先端側から根元側に向けて幅が広くなるように形成することで、先端部を補助材12に突き刺し易くできると共に、先端部で突き刺した補助材12が、先端部の傾斜面によって下方へ落ち難くすることができる。
【0029】
例えば、従来のように支持部を円形状や正多角形状などの平面方向の形状とした場合、支持部によって支持面に形成される開口の凹み部分が大きく目立つため、シートパッド10の溝部分等、支持部を設定可能な部位が限られる。前述したように、パッド本体14の成形時に、支持部30によってパッド本体14における使用者側となる支持面10aにあく開口18aを、スリット形状または複数のスリット形状(実施例)が交差するように組み合わせた形状に形成している。このようにすることで、支持面10aにあく開口18aの開口面積を、円形や正多角形状等で形成するよりも小さくすることができる。そして、開口18aの開口面積が小さくなると、シートパッド10を覆う表皮材を介して開口18aの凹み部分(影(ハイライト))が目立つことを防止できる。従って、支持面10aにおける開口18aを目立たなくすることで、開口18a(凹部18)および開口18aを形成する支持部30を設定する箇所の自由度が高くなり、パッド本体14の成形時に支持部30で補助材12を適切に位置決めした状態で支持することができる。これにより、設計通りで見栄えのよいシートパッド10を得ることができる。
【0030】
前述したように、パッド本体14の成形時に、支持部30によってパッド本体14における使用者側となる支持面10aにあく開口18aを、凹部18における最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも開口面積が小さくなるように形成する。このように、開口18aの開口面積が小さいと、シートパッド10を覆う表皮材を介して開口18aの凹み部分(影(ハイライト))が目立つことを防止できる。従って、開口18aを目立たなくすることで、開口18a(凹部18)および開口18aを形成する支持部30を設定する箇所の自由度が高くなり、パッド本体14の成形時に支持部30で補助材12を適切に位置決めした状態で支持することができる。これにより、設計通りで見栄えのよいシートパッド10を得ることができる。
【0031】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
(1)支持部および支持部に由来する凹部の形状は、前述の構成に限らない。例えば、
図10に示すように、支持部30を根元側から先端側まで同じ幅とし、これに由来して凹部18が開口18a側から底側まで同じ開口幅で形成してもよい。また、支持部の先端部のみ先細り形状としてもよい。
(2)実施例では、支持部を根元側から先端側まで板状片で構成したが、これに限らず、複数の形状を組み合わせて構成してもよい。
図11に示すように、支持部30は、下型面24aに連なる根元部分30aを、例えば円柱形状や四角柱などの多角柱形状で形成すると共に、根元部分30aの先端に、先が尖った頭部分30bを設けた形状であってもよい。根元部分30aとしては、丸ネジなどの汎用品を用いることができる。また、頭部分30bとしては、平面方向の断面形状が菱形であると共に側面視が菱形である形状(
図11(a)参照)や、平面方向の断面形状が矩形状であると共に側面視が菱形である形状(
図11(b)参照)や、平面方向の断面形状が円形であると共に側面視が涙滴形である形状(
図11(c)参照)や、弾丸形状や、四角錐等の多角錘形状など、その他の形状を採用することができる。特に、頭部分30bは、上下方向(型面からの立ち上がり方向)の途中に形成した太い部位(最も長尺な部位)から先端および根元部分30a側に向かうにつれて細くなる
図11に示すような形状が好ましい。頭部分30bは、補助材12に突き刺さる形状であれば、機械要素として用いられる汎用品を用いてもよい。これらの形状であっても、支持部30は、該支持部30の下型面24aからの立ち上がり方向と直交する平面で最も長尺な部位を直径とする仮想円Fよりも、下型面24aに連なる根元の断面が小さくなるように形成するとよい。なお、
図11の支持部30は、別体で作製した丸ネジからなる根元部分30aと頭部分30bと一体化することで形成される。このように、根元部分30aを丸ネジで形成することで、頭部分30bの根元部分30aへのねじ込み量または根元部分30aの下型24へのねじ込み量を変更することで、支持部30の下型面24aからの突出量を簡単に調節可能である。なお、支持部は、
図9や
図10などに示す板状片と
図11に示すような頭部分30bとを組み合わせてよい。
(3)支持部は、下型面からの立ち上がり方向と直交する平面で最も長尺な部位が根元であることに限らず、例えば
図11に示すように、支持部30の根元と先端との途中が、前記最も長尺な部位になっていてもよい。このように構成することで、パッド10を成形型20から脱型する際に、支持部30の最も太くなった(長尺な)途中部位がパッド本体14を押し広げた後に該途中部位よりも細い先端側がパッド本体14から取り出されるので、支持部30の先端がパッド本体14に引っ掛かってパッド本体14が破れる等の不具合を防止することができる。この場合、支持部30における最も長尺な部位から支持部30の根元側に向かうにつれてテーパ状に縮小すると共に、支持部30における最も長尺な部位から先端側に向かうにつれてテーパ状に縮小するように形成すると、脱型時に支持部30をパッド本体14からスムーズに抜き出すことができるので好ましい。
(4)支持部は、下型面からの立ち上がり方向と直交する方向の寸法が最も大きくなる部位から、補助材に突き刺さる先端および/または下型面に連なる根元に向かうにつれて前記寸法が小さくなるように形成してもよい。すなわち、支持部は、根元と先端との間の途中部位の平面方向の寸法が最も長尺になるように形成し、該途中部位から根元側へ向かうにつれて平面方向の寸法を小さくして、途中部位から根元側に向けて幅狭にしたり、該途中部位から先端側へ向かうにつれて平面方向の寸法を小さくして、途中部位から先端側に向けて幅狭にしたりすることが可能である。なお、支持部は、途中部位から先端側および根元側の何れか一方を幅狭に形成しても、途中部位から先端側および根元側の両方を幅狭に形成しても、何れであってもよい。
【0032】
(5)凹部は、実施例のように開口から底まで同じ開口形状であってもよいが、開口形状が変化するように形成してもよい。例えば、
図11(a)に示す支持部30に由来する凹部であれば、パッド本体にあく開口が円形であるが、凹部の途中から開口形状が菱形になり、
図11(b)に示す支持部30に由来する凹部であれば、パッド本体にあく開口が円形であるが、凹部の途中から開口形状が矩形状になる。
(6)凹部は、深さ方向と直交する開口面方向に最も長尺な部位が、パッド本体の支持面にあく開口であることに限らず、凹部の底から開口の間の途中部位が、前記最も長尺な部位になっていてもよい。このように構成することで、パッド10を成形型20から脱型する際に、支持部の最も太くなった(長尺な)途中部位がパッド本体を押し広げた後に該途中部位よりも細い先端側がパッド本体から取り出されるので、支持部の先端がパッド本体に引っ掛かってパッド本体が破れる等の不具合を防止することができ、見栄えのよいシートパッドを得られる。特に、凹部における最も長尺な部位から開口側に向かうにつれてテーパ状に縮小すると共に、凹部における最も長尺な部位から底側に向かうにつれてテーパ状に縮小するように形成すると、凹部を形成する支持部をパッド本体からスムーズに抜き出すことができるので好ましい。なお、変更例の形状であっても、凹部は、パッド本体の支持面にあく開口が、該凹部における深さ方向と直交する平面で最も長尺な部位を直径とする仮想円よりも開口面積が小さくなるように形成するとよい。
(7)凹部は、該凹部における深さ方向と直交する方向の寸法が最も大きい部位から該凹部の底側および/または該凹部の開口側に向かうにつれて前記寸法が小さくなるように形成するとよい。すなわち、凹部は、開口と底との間の途中部位の開口面方向の寸法が最も長尺になるように形成し、該途中部位から開口側へ向かうにつれて開口面方向の寸法を小さくして、途中部位から開口側に向けて幅狭にしたり、該途中部位から底側へ向かうにつれて開口面方向の寸法を小さくして、途中部位から底側に向けて幅狭にしたりすることが可能である。なお、凹部は、途中部位から開口側および底側の何れか一方を幅狭に形成しても、途中部位から開口側および底側の両方を幅狭に形成しても、何れであってもよい。
【0033】
(8)車両の座席の座部を構成するシートパッドを例示したが、これに限らず、例えば、座席の背もたれ部を構成するシートパッドに本開示を適用可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 シートパッド,10a 支持面,12 補助材,14 パッド本体,18 凹部,
18a 開口,20 成形型,22 上型,24 下型,24a 下型面(型面),
26 キャビティ,30 支持部,F 仮想円