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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20230712BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230712BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H02M3/00 Y
H05K7/20 P
H01L23/46 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019210757
(22)【出願日】2019-11-21
(65)【公開番号】P2021083261
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】市橋 克弘
(72)【発明者】
【氏名】倉内 修司
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-018940(JP,A)
【文献】特開2013-051274(JP,A)
【文献】特開2005-259748(JP,A)
【文献】特開2016-136574(JP,A)
【文献】特開2015-079819(JP,A)
【文献】特開平04-002156(JP,A)
【文献】特開2003-273302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00~ 7/98
H01L23/34~23/473
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材(60)及び第2部材(70)を有する基体(100a)と、前記基体に取り付けられている装置回路(100b)とを有し、前記第1部材及び前記第2部材の間に流路(80)が形成されており、
入力された電力を前記装置回路により変圧して出力し、前記流路に流される冷媒により前記装置回路を冷却する、電力変換装置(100)において、
前記第1部材における前記流路を挟んで前記第2部材に対向する面である第1対向面(67)に、突条状の第1フィン(68)が少なくとも1本形成され、前記第2部材における前記流路を挟んで前記第1部材に対向する面である第2対向面(76)に、前記第1フィンと並んで延びる突条状の第2フィン(78)が少なくとも1本形成されることにより、前記第1フィン及び前記第2フィンの各フィンを境に前記流路が複数本の分割流路(84)に区分けされており、各前記分割流路に沿って前記冷媒が流れ、
前記第1部材は、所定の肉厚方向(D5,D6)に肉厚(T)を持つ肉厚部(63a)を有し、前記肉厚部における前記肉厚方向の一方(D6)の面が前記第1対向面であり、
前記第1対向面に、前記肉厚方向に凹み前記流路に開口する流入用凹部(83)が形成されると共に、前記第1部材の外面から前記肉厚方向に直交する方向(D1)に延びて前記流入用凹部に連通する流入孔(82)が形成されており、前記流入孔に流入配管(81)が挿入された状態で固定されている、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1部材は、所定の肉厚方向(D5,D6)に肉厚(T)を持つ肉厚部(63a)を有し、前記肉厚部における前記肉厚方向の一方(D6)の面が前記第1対向面であり、
前記第1対向面に、前記肉厚方向に凹み前記流路に開口する流出用凹部(87)が形成されると共に、前記第1部材の外面から前記肉厚方向に直交する方向(D1)に延びて前記流出用凹部に連通する流出孔(88)が形成されており、前記流出孔に流出配管(89)が挿入された状態で固定されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
第1部材(60)及び第2部材(70)を有する基体(100a)と、前記基体に取り付けられている装置回路(100b)とを有し、前記第1部材及び前記第2部材の間に流路(80)が形成されており、
入力された電力を前記装置回路により変圧して出力し、前記流路に流される冷媒により前記装置回路を冷却する、電力変換装置(100)において、
前記第1部材における前記流路を挟んで前記第2部材に対向する面である第1対向面(67)に、突条状の第1フィン(68)が少なくとも1本形成され、前記第2部材における前記流路を挟んで前記第1部材に対向する面である第2対向面(76)に、前記第1フィンと並んで延びる突条状の第2フィン(78)が少なくとも1本形成されることにより、前記第1フィン及び前記第2フィンの各フィンを境に前記流路が複数本の分割流路(84)に区分けされており、各前記分割流路に沿って前記冷媒が流れ、
前記第1部材は、所定の肉厚方向(D5,D6)に肉厚(T)を持つ肉厚部(63a)を有し、前記肉厚部における前記肉厚方向の一方(D6)の面が前記第1対向面であり、
前記第1対向面に、前記肉厚方向に凹み前記流路に開口する流出用凹部(87)が形成されると共に、前記第1部材の外面から前記肉厚方向に直交する方向(D1)に延びて前記流出用凹部に連通する流出孔(88)が形成されており、前記流出孔に流出配管(89)が挿入された状態で固定されている、
電力変換装置。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材のうちの一方を所定部材とし、前記第1対向面及び前記第2対向面のうち前記所定部材に形成されている方を所定対向面として、前記所定部材における前記所定対向面の裏面に、磁気結合を介して前記変圧を行うトランス(50)が取り付けられており、
前記所定対向面に直交する方向を法線方向(D5,D6)として、前記法線方向に見た平面視で、前記所定対向面における前記トランスと重なる部位に、前記流路内に突出する凸部(75)が設けられており、
前記第1フィン及び前記第2フィンのうち前記所定部材に形成されている方を所定フィン(78)として、前記所定対向面における前記凸部を含む部位に、前記所定フィンが形成されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
第1部材(60)及び第2部材(70)を有する基体(100a)と、前記基体に取り付けられている装置回路(100b)とを有し、前記第1部材及び前記第2部材の間に流路(80)が形成されており、
入力された電力を前記装置回路により変圧して出力し、前記流路に流される冷媒により前記装置回路を冷却する、電力変換装置(100)において、
前記第1部材における前記流路を挟んで前記第2部材に対向する面である第1対向面(67)に、突条状の第1フィン(68)が少なくとも1本形成され、前記第2部材における前記流路を挟んで前記第1部材に対向する面である第2対向面(76)に、前記第1フィンと並んで延びる突条状の第2フィン(78)が少なくとも1本形成されることにより、前記第1フィン及び前記第2フィンの各フィンを境に前記流路が複数本の分割流路(84)に区分けされており、各前記分割流路に沿って前記冷媒が流れ、
前記第1部材及び前記第2部材のうちの一方を所定部材とし、前記第1対向面及び前記第2対向面のうち前記所定部材に形成されている方を所定対向面として、前記所定部材における前記所定対向面の裏面に、磁気結合を介して前記変圧を行うトランス(50)が取り付けられており、
前記所定対向面に直交する方向を法線方向(D5,D6)として、前記法線方向に見た平面視で、前記所定対向面における前記トランスと重なる部位に、前記流路内に突出する凸部(75)が設けられており、
前記第1フィン及び前記第2フィンのうち前記所定部材に形成されている方を所定フィン(78)として、前記所定対向面における前記凸部を含む部位に、前記所定フィンが形成されている、
電力変換装置。
【請求項6】
前記第1フィン及び前記第2フィンは、それぞれ複数本ずつあり、
前記第1フィンと前記第2フィンとがそれらの並設方向に交互に配置されることにより、前記第1フィンどうしの間に前記第2フィンが配置され、前記第2フィンどうしの間に前記第1フィンが配置されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材のうち、自身に取り付けられている全回路による単位時間あたりの最大総発熱量が大きい方を大発熱部材とし、小さい方を小発熱部材として、
前記大発熱部材に形成されている全ての前記第1フィン及び前記第2フィンの前記各フィンの表面積の合計の方が、前記小発熱部材に形成されている全ての前記第1フィン及び前記第2フィンの前記各フィンの表面積の合計よりも大きい、請求項1~6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1フィン及び前記第2フィンの前記各フィンの突出長(L)は、前記流路内の当該フィンがある位置における、当該フィンを省いた場合の前記第1対向面と前記第2対向面との間隔(G)の、8割以上かつ当該間隔未満である、請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第1フィンと前記第2対向面との間、及び前記第2フィンと前記第1対向面との間に、弾性部材(E)が介装されている、請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記冷媒は、前記流路内において、所定の第1方向(D1)側に流れてから、前記第1方向に直交する方向である第2方向(D2)側に流れ、その後、前記第1方向の反対方向である第3方向(D3)側に流れ、
前記流路内における前記冷媒が前記第1方向側に流れる領域を第1領域(R1)とし、前記流路内における前記冷媒が前記第2方向側に流れる領域を第2領域(R2)とし、前記流路内における前記冷媒が前記第3方向側に流れる領域を第3領域(R3)として、
前記第1フィン及び前記第2フィンの前記各フィンは、前記第1領域から前記第2領域を通って前記第3領域に至るまで、途切れることなく一続きに延びる、請求項1~のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第1フィン及び前記第2フィンの前記各フィンの上端よりも上方に流出通路(89a)が形成されており、前記冷媒は、液体であり、前記流路内から前記流出通路を通じて前記基体の外部に流出する、請求項1~10のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
各前記分割流路の幅(w)は、少なくとも所定の部位において等しくなっている、請求項1~11のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された電力を変圧して出力する電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器の中には、次のように構成されたものがある。すなわち、電気機器は、ケーシングと、それに取り付けられたベースとを有する。そして、ベースに電気回路が搭載され、ケーシングとベースとの間に、電気回路を冷やす冷却水を流す水路が形成されている。そして、水路内における電気回路の発熱素子の付近には、ケーシング側を遮って、冷却水の流れをベース側に集中させるための遮断部が設けられている。
【0003】
この遮断部により、冷却水の流れが局所的にベース側に、すなわち発熱素子側に寄せられると共に、水路が狭くなって冷却水の流れが局所的に速くなる。それにより、この部分で、局所的に冷却性能が向上する。そして、そのような技術を示す文献としては、次の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-188326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の技術には、次に示す課題があることに、本発明者は着目した。すなわち、上記の技術を、例えば、マルチポート等の、発熱素子が数多く存在する電力変換装置に採用した場合、それらの数多く存在する各発熱素子に対して、上記の遮断部を設置しなければならない。しかし、その場合、遮断部が多くなり過ぎることにより、水路全体において圧損が大きくなり過ぎてしまうおそれがある。
【0006】
また、冷却性能を高く確保できる部位が遮断部の付近に限定されることにより、各発熱素子の配置自由度が下がり、電力変換装置全体として、体格を小さくまとめることが難しくなるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電力変換装置内における広い範囲で、高い冷却性能を確保できるようにすることを、主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電力変換装置は、第1部材及び第2部材を有する基体と、前記基体に取り付けられている装置回路とを有し、前記第1部材及び前記第2部材の間に流路が形成されている。前記電力変換装置は、入力された電力を前記装置回路により変圧して出力し、前記流路に流される冷媒により前記装置回路を冷却する。
【0009】
前記第1部材における前記流路を挟んで前記第2部材に対向する面である第1対向面に、突条状の第1フィンが少なくとも1本形成されている。また、前記第2部材における前記流路を挟んで前記第1部材に対向する面である第2対向面に、前記第1フィンと並んで延びる突条状の第2フィンが少なくとも1本形成されている。以上により、前記第1フィン及び前記第2フィンの各フィンを境に前記流路が複数本の分割流路に区分けされており、各前記分割流路に沿って前記冷媒が流れる。
【0010】
本発明によれば、各フィンを境に流路が複数本の分割流路に区分けされており、各分割流路に沿って冷媒が流れる。そのため、流路が複数本の分割流路に区分けされていない状態なら、流路内における圧損の少ない箇所を冷媒が短い経路で流れようとすることにより一部に集中する流れを、分割流路の並設方向に分散させることができる。それにより、流路が複数本の分割流路に区分けされていない場合に比べて、電力変換装置内の広い範囲で、高い冷却性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の電力変換装置を示す正面断面図
図2図1に示すII-II線の断面を示す平面断面図
図3図1の一部を拡大した正面断面図
図4図2に示すIV-IV線の断面を示す側面断面図
図5図2に示すV-V線の断面を示す側面断面図
図6】フィンが無い場合の比較例において冷媒の流れを示す平面断面図
図7】フィンがある本実施形態において冷媒の流れを示す平面断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。ただし、本発明は実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の電力変換装置100を示す正面断面図であり、詳しくは、図2に示すI-I線の断面図である。電力変換装置100は、車両に搭載されている。電力変換装置100は、基体100aと装置回路100bとを有する。基体100aは、第1部材60と第2部材70とを有する。装置回路100bは、第1~第4の各ポート10,20,30,40と、第1~第4の各変換回路13,23,33,43と、トランス50とを有する。第1部材60と第2部材70との間には、流路80が形成されており、その流路80には、装置回路100bを冷却する冷媒としての冷却水が流される。
【0014】
まず、基体100aについて説明する。第1部材60は、上下中間部に水平方向に延びる中間壁部63を有する。その中間壁部63を底部として、第1部材60における中間壁部63よりも上側に、上方D5に開口した上側凹部61が形成されている。また、その中間壁部63を天井部として、第1部材60における中間壁部63よりも下側に、下方D6に開口した下側凹部69が形成されている。さらに、その下側凹部69の天井面である中間壁部63の下面には、上方に凹んだ流路用凹部63bが形成されている。その中間壁部63の下端部に、流路用凹部63bを塞ぐ形で第2部材70が取り付けられている。第1部材60の上端部には、上蓋(図示略)が取り付けられ、第1部材60の下端部には、下蓋(図示略)が取り付けられる。基体100aは、これら上蓋及び下蓋を取り付けられた状態において、略直方体の形状をしている。
【0015】
次に、装置回路100bについて説明する。第1~第4の各ポート10,20,30,40は、第1部材60の側面に設置されている。それら第1~第4の各ポート10,20,30,40には、それぞれ外部回路が接続される。
【0016】
第1部材60の中間壁部63の上面には、第1変換回路13と第2変換回路23とが取り付けられ、第2部材70の下面には、第3変換回路33と第4変換回路43とトランス50とが取り付けられている。
【0017】
第1変換回路13は、第1ポート10と、トランス50の一部である第1コイル(図示略)とに電気的に接続されている。第1変換回路13は、第1ポート10に接続される外部回路の電流態様(直流又は交流)と、所定周波数の交流との間で、変換を行う。具体的には、第1ポート10に直流の外部回路が接続される仕様である場合は、第1変換回路13は、当該直流と所定周波数の交流との間で変換を行う回路とする。また、第1ポート10に交流の外部回路が接続される仕様である場合は、第1変換回路13は、当該交流と所定周波数の交流との間で変換を行う回路とする。
【0018】
この第1変換回路13のより具体的な態様としては、例えば、外部回路の電流態様と所定周波数の交流との間で、双方向に変換を行う態様が挙げられる。ただし、例えば、外部回路から第1ポート10へ電力が専ら入力される場合には、第1変換回路13は、外部回路の電流態様を所定周波数の交流へ一方向的に変換する入力専用の回路であってもよい。また例えば、第1ポート10から外部回路に電力が専ら出力される場合には、第1変換回路13は、所定周波数の交流を外部回路の電流態様へ一方向的に変換する出力専用の回路であってもよい。この第1変換回路13は、半導体スイッチ等の発熱素子を有する。
【0019】
第2変換回路23の説明は、上記の第1変換回路13の説明と、「第1」を「第2」に読み替えると共に符号を該当するものに読み替えて、同様である。第3変換回路33の説明は、上記の第1変換回路13の説明と、「第1」を「第3」に読み替えると共に符号を該当するものに読み替えて、同様である。第4変換回路43の説明は、上記の第1変換回路13の説明と、「第1」を「第4」に読み替えると共に符号を該当するものに読み替えて、同様である。
【0020】
トランス50は、トランスコアと、それに巻回された上記の第1~第4の各コイルとを有する。そして、いずれかのコイルに上記の所定周波数の交流電流が流れると、その交流電流によりトランスコアに磁束が発生すると共に、その磁束変化により、各コイルに誘導起電圧が発生する。このようにして、第1~第4のコイルどうしの間で、磁気結合により交流電力を伝達する。その伝達に伴い、交流電力が、コイルの巻き数比や磁気結合度等に応じて変圧される。
【0021】
以上のとおり、第1部材60には、第1変換回路13、第2変換回路23等が取り付けられており、第2部材70には、第3変換回路33、第4変換回路43、トランス50等が取り付けられている。そして、第1部材60に取り付けられている全回路(13,23)による単位時間あたりの最大総発熱量よりも、第2部材70に取り付けられている全回路(33,43,50)による単位時間あたりの最大総発熱量の方が大きい。
【0022】
次に、流路80及びその周辺について説明する。中間壁部63の流路用凹部63bが第2部材70により塞がれることにより、流路用凹部63bの天井面及び内側面と第2部材70の上面とにより囲まれた空間である流路80が形成されている。中間壁部63の下面における流路用凹部63bの周辺部分と第2部材70の上面との間には、シール部材(図示略)等が介装されており、流路80内の冷却水が外部に漏れないようになっている。
【0023】
中間壁部63における流路用凹部63bよりも上側部分は、上下方向D5,D6に肉厚Tを持つ肉厚部63aを構成している。その肉厚部63aの下面である流路用凹部63bの天井面は、第1対向面67を構成している。第1対向面67は、第1部材60における流路80を挟んで第2部材70と対向する面である。そして、第2部材70の上面は、第2対向面76を構成している。第2対向面76は、第2部材70における流路80を挟んで第1部材60と対向する面である。
【0024】
そして、第1対向面67に、突条状の第1フィン68が複数本形成され、第2対向面76に、第1フィン68と並んで延びる突条状の第2フィン78が複数本形成されている。詳しくは、第1フィン68と第2フィン78とは、それらの並設方向に交互に配置されている。それにより、第1フィン68どうしの間に第2フィン78が配置され、第2フィン78どうしの間に第1フィン68が配置されている。
【0025】
第2対向面76及び第2フィン78について、より詳しくは、下方D6に見た平面視で、第2対向面76におけるトランス50と重なる部位に、流路80内に突出する凸部75が設けられている。そして、第2対向面76における凸部75を含む部位に、第2フィン78が形成されている。
【0026】
図2は、図1に示すII-II線の断面図である。以下では、図に合わせて、一水平方向及びその反対方向を、「後方D1」及び「前方D3」とし、それらに直交する一水平方向及びその反対方向を「右方D2」及び「左方D4」として説明する。ただし、以下でいう左右を反転させて設計することや、以下でいう前後を左右にして設置すること等は、任意である。
【0027】
流路80は、水平方向に広がる空間である。第1部材60の第1対向面67における左右中間部には、流路80の前壁部から後方D1に延びて流路80の前後方向中間部にまで至る突条状の仕切部66が形成されている。そして、仕切部66よりも左方D4における流路80の前部の天井面、すなわち第1対向面67には、上方D5に凹む流入用凹部83が設けられている。その流入用凹部83の前方D3には、第1部材60の前面から流入用凹部83に連通する流入配管81が設置されている。また、仕切部66よりも右方D2における流路80の前部の天井面、すなわち第1対向面67には、上方D5に凹む流出用凹部87が設けられている。その流出用凹部87の前方D3には、第1部材60の前面から流出用凹部87に連通する流出配管89が設置されている。これら、流入用凹部83、流入配管81、流出用凹部87、流出配管89の詳細については、後述する。
【0028】
流路80内において、各フィン68,78は、まず、仕切部66よりも左方D4において、仕切部66の後端よりも前方D3から、仕切部66の後端よりも後方D1にまで延びている。次に、そこから、各フィン68,78は、仕切部66の後端よりも後方D1において、仕切部66よりも左方D4から、仕切部66よりも右方D2にまで延びている。次に、そこから、各フィン68,78は、仕切部66よりも右方D2において、仕切部66の後端よりも後方D1から、仕切部66の後端よりも前方D3にまで延びている。それらの各フィン68,78を境に、流路80が複数本の分割流路84に区分けされている。
【0029】
その分割流路84に沿って、冷却水が流れる。よって、冷却水は、流路80内において、まず後方D1側に流れてから、次に右方D2側に流れ、その後、前方D3側に流れる。以下では、流路80内において、冷却水が後方D1側に流れる領域を「第1領域R1」といい、冷却水が右方D2側に流れる領域を「第2領域R2」といい、冷却水が前方D3側に流れる領域を「第3領域R3」という。
【0030】
各フィン68,78は、第1領域R1から第2領域R2を通って第3領域R3に至るまで、途切れることなく一続きに延びている。そして、各分割流路84の幅wは、少なくとも複数の所定部位において等しくなっている。
【0031】
そして、全ての第1フィン68の表面積の合計よりも、全ての第2フィン78の表面積の合計の方が大きい。このような構成は、例えば、図2に示すように、第1フィン68よりも第2フィン78を長くすることや、第1フィン68よりも第2フィン78の本数を多くすることにより実現できる。またそれ以外にも、例えば、第1フィン68よりも第2フィン78の突出長を大きくすること等によっても実現できる。
【0032】
図3(a)は、図1の一部を拡大した図である。各フィン68,78の突出長Lは、流路80内の当該フィン68,78がある位置における、当該フィン68,78を省いた場合の第1対向面67と第2対向面76との間隔Gを超えない範囲内において、極力大きいことが好ましい。分割流路84からその隣の分割流路84へ冷却水が流れるのを、より小さく抑えることができるからである。しかしながら、万が一、寸法精度のずれで、フィン68,78の突出長Lが上記の間隔Gを超えた場合、そのフィン68,78が干渉をして、第1部材60と第2部材70とによる流路80のシールに隙間ができてしまうおそれがある。そのため、当該寸法精度のずれによっても、フィン68,78の突出長Lが当該間隔Gを超えることのない範囲内で、フィン68,78の突出長Lを極力大きくすることが好ましい。よって、本実施形態では、各フィン68,78の突出長Lは、当該間隔Gの8割以上かつ当該間隔G未満になっている。
【0033】
また、このようにフィン68,78の突出長Lを極力大きくする代わりに、または極力大きくするのに加えて、図3(b)に示すように、第1フィン68と第2対向面76との間、及び第2フィン78と第1対向面67との間に、ゴム材等の弾性部材Eを介装してもよい。
【0034】
図4は、図2に示すIV-IV線の断面図、すなわち電力変換装置100の左寄り部分の断面図である。第1対向面67の左寄り部分の前端部には、上方D5に凹み下端が流路80に開口する流入用凹部83が形成されている。その流入用凹部83の前方D3に、第1部材60の前面から後方D1に延びて流入用凹部83に連通する流入孔82が形成されている。その流入孔82に流入配管81が圧入されている。その流入配管81の内側は、冷却水を基体100aの外部から流路80内に流入させるための流入通路81aを構成している。その流入通路81aは、各フィン68,78の上端よりも上方D5に、すなわち、第1フィン68の付け根よりも上方D5に位置している。
【0035】
図5は、図2に示すV-V線の断面図、すなわち電力変換装置100の右寄り部分の断面図である。第1対向面67の右寄り部分の前端部には、上方D5に凹み下端が流路80に開口する流出用凹部87が形成されている。その流出用凹部87の前方D3に、第1部材60の前面から後方D1に延びて流出用凹部87に連通する流出孔88が形成されている。その流出孔88に流出配管89が圧入されている。その流出配管89の内側は、流路80内の冷却水を基体100aの外部に流出させるための流出通路89aを構成している。その流出通路89aは、各フィン68,78の上端よりも上方D5に、すなわち、第1フィン68の付け根よりも上方D5に位置している。
【0036】
本実施形態によれば、次の効果が得られる。各フィン68,78を境に流路80が複数本の分割流路84に区分けされており、各分割流路84に沿って冷却水が流れる。そのため、図6に示すように流路80が複数本の分割流路84に区分けされていない状態なら、流路80内における圧損の少ない箇所を冷却水が短い経路で慣性に従って流れようとすることにより一部に集中する流れを、図7に示すように、分割流路84の並設方向に分散させることができる。それにより、流路80が複数本の分割流路84に区分けされていない場合に比べて、電力変換装置100内の広い範囲で、高い冷却性能を確保することができる。また、冷却水の流れが分割流路84の並設方向に分散されて、流路80が分割流路84の並設方向に有効利用されることにより、圧損の低下に繋がる。
【0037】
また、第1フィン68と第2フィン78とがそれらの並設方向に交互に配置されることにより、第1フィン68どうしの間に第2フィン78が配され、第2フィン78どうしの間に第1フィン68が配されている。そのため、第1部材60及び第2部材70のうちの一方の部材にのみフィンを設けて同じ幅の分割流路84を形成する場合に比べて、当該一方の部材に設けるフィン68,78どうしの間隔を大きく設定することができる。そのため、当該一方の部材の製造難度を下げることができる。
【0038】
また、第1部材60に取り付けられている全回路(13,23)による単位時間あたりの最大総発熱量よりも、第2部材70に取り付けられている全回路(33,43,50)による単位時間あたりの最大総発熱量の方が大きい。そして、全ての第1フィン68の表面積の合計よりも、全ての第2フィン78の表面積の合計の方が大きい。そのため、最大総発熱量が大きい第2部材70をより重点的に冷却することができ、それにより装置回路100b全体を、バランスよく冷却することができる。
【0039】
また各フィン68,78の突出長Lは、流路80内の当該フィン68,78がある位置における、当該フィン68,78を省いた場合の第1対向面67と第2対向面76との間隔Gの、8割以上であるので、各分割流路84を隣の分割流路84から十分に区分けすることができる。また、各フィン68,78の突出長Lは、上記の間隔G以下なので、流路80を第1部材60と第2部材70とでシールすることが、フィン68,78が干渉することにより、できなくなってしまうこともない。
【0040】
また、第1フィン68と第2対向面76との間、及び第2フィン78と第1対向面67との間に、弾性部材Eが介装されるようにすると、各分割流路84を隣の分割流路84からより強固に区分けすることができる。またこの場合、弾性部材Eを介装するため、弾性部材Eの厚さがフィン68,78と対向面76,67との隙間よりも多少大きくても、弾性部材Eが弾性変形することにより吸収できる。そのため、要求される寸法精度を抑えることができる。またこの場合、第1フィン68が弾性部材Eを介して第2対向面76に当接することや、第2フィン78が弾性部材Eを介して第1対向面67に当接することにより、第1部材60及び第2部材70のうちの温度の高い方から低い方に熱が伝わり易くなり、電力変換装置100全体をバランスよく冷却し易くなる。
【0041】
また、各フィン68,78は、冷却水を後方D1側に流す第1領域R1から、冷却水を右方D2側に流す第2領域R2を通って、冷却水を前方D3側に流す第3領域R3に至るまで、途切れることなく一続きに延びる。そのため、各フィン68,78は、このように略U字形の流路80において、冷却水を第1領域R1から第3領域R3にまで効率的に導くことができる。また、このような略U字形の流路80にすることにより、このように流入配管81及び流出配管89を基体100aの同じ面(前面)に設置することができるようになり、それらに接続する配管を設置し易くなる。
【0042】
また、次の効果も得られる。もし仮に、流路80の真横に、基体100aの外部から流路80にまで連通する流入孔82が形成されると共に、その流入孔82に流入配管81が圧入された場合、その圧入圧により、流路80の内壁を構成する部分が変形してしまうおそれがある。その点、ここでは、肉厚部63aに、その肉厚方向である上方D5に凹む流入用凹部83が形成されると共に、その流入用凹部83の前方D3に、第1部材60の外面から肉厚方向に直交する方向である後方D1に延びて流入用凹部83に連通する流入孔82が形成されている。その流入孔82に流入配管81が圧入されている。そのため、圧入圧は肉厚部63aに対してその肉厚方向に直交する方向である後方D1に加わることとなり、圧入圧に耐え易い構造を実現できる。また、流出側についても、同様に構成されているため、同様の効果が得られる。
【0043】
また、各フィン68,78の上端よりも上方に流出通路89aが形成されているため、分割流路84に気泡が入り込んでも、その気泡は流出通路89aから排出され易くなる。そのため、分割流路84に気泡が溜まるのを抑制して、分割流路84に流れる冷却水による冷却性能を高く保持することができる。
【0044】
また、次の効果も得られる。トランス50は、複雑な構成をしているため、熱が外部に伝わり難いことが多い。具体的には、例えば、トランスコアと第1~第4の各コイルとからなる磁気部材については、通常は、熱伝導率が低いフェライトから成るトランスコアが、トランスカバーと接触しているため冷却し難い。そのため、トランス50は、重点的に冷却することが好ましい。その点、ここでは、第2対向面76における、下方D6に見た平面視でトランス50と重なる部位に、流路80内に突出する凸部75が設けられている。その凸部75が設けられている箇所では、第1対向面67と第2対向面76との間隔が狭くなるため、冷却水の流れが速くなる。そのため、冷却性能が上がる。そのため、トランス50を重点的に冷却することができる。
【0045】
また、各分割流路84の幅wは、少なくとも所定部位において等しくなっているため、冷却水の流れを分割流路84の並設方向に均等に分割しやすい。
【0046】
[他の実施形態]
以上の実施形態は、次のように変更して実施できる。例えば、電力変換装置100を、車両以外の乗り物や固定物に搭載してもよい。また例えば、図では、第1フィン68は2本であるが、1本のみでも、3本以上であってもよい。また、図では、第2フィン78は、3本であるが、1本又は2本でも、4本以上であってもよい。
【0047】
また例えば、第1フィン68と第2フィン78とは、上記のとおり製造難度を抑えることができる点で、並列方向に交互に配置されていることが好ましいが、製造難度が問題とならない場合等には、交互でない態様で実施してもよい。また例えば、流路80は略U字形ではなく、直線状であってもよい。
【0048】
また例えば、流路80に、冷媒として冷却水を流す代わりに、その他の液体や、空気等の気体を流すようにしてもよい。また例えば、実施形態でいう「上」を「下」にして、電力変換装置100を設置しても、実施形態でいう「上」「下」を水平方向にして、電力変換装置100を設置してもよい。
【0049】
また例えば、各フィン68,78は、図では、後方D1に直線状に延びてから右方D2に直線状に延び、その後前方D3に直線状に延びているが、例えば、後方D1側に屈曲しながら曲線状に延びてから、右方D2側に屈曲しながら曲線状に延び、その後前方D3側に屈曲しながら曲線状に延びるようにしてもよい。
【0050】
また例えば、実施形態とは反対に、第1部材60に取り付けられている全回路による単位時間あたりの最大総発熱量の方が、第2部材70に取り付けられている全回路による単位時間あたりの最大総発熱量よりも大きくなるように設計してもよい。その場合、実施形態とは反対に、全ての第1フィン68の表面積の合計の方が、全ての第2フィン78の表面積の合計よりも大きくなるように設計することが好ましい。
【0051】
また例えば、トランス50が取り付けられる第2部材70側に、すなわち第2対向面76に、冷却水の流れを速くするための凸部75を設けるのに代えて、トランス50が取り付けられない第1部材60側に、すなわち第1対向面67に、当該凸部75を設けるようにしてもよい。
【0052】
また例えば、流入孔82に流入配管81を圧入する代わりに、流入孔82に流入配管81を締結や溶接により固定してもよい。また同様に、流出孔88に流出配管89を圧入する代わりに、流出孔88に流出配管89を締結や溶接により固定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
50…トランス、60…第1部材、67…第1対向面、68…第1フィン、70…第2部材、76…第2対向面、78…第2フィン、80…流路、84…分割流路、100…電力変換装置、100a…基体、100b…装置回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7