(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】新しいPDL2化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 14/705 20060101AFI20230712BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20230712BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20230712BHJP
C12N 15/117 20100101ALI20230712BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230712BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230712BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230712BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230712BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230712BHJP
【FI】
C07K14/705 ZNA
C07K7/06
C07K7/08
C12N15/117 Z
A61K39/00 H
A61K39/39
A61P35/00
A61K45/00
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2019522726
(86)(22)【出願日】2017-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2017076179
(87)【国際公開番号】W WO2018077629
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ ハルド
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-512251(JP,A)
【文献】特表2012-500847(JP,A)
【文献】特表2004-502414(JP,A)
【文献】Front.Immunol.,2017,8:292,p.1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のヒトプログラム細胞死リガンド2(PDL2)タンパク質のペプチド断片であって、該断片が配列番号1の
最大30アミノ酸の連続する配列から成り、前記ペプチド断片が配列番号1のアミノ酸1~3を含まず、且つ、前記ペプチド断片が配列番号11、2及び4から選択される1つ以上のアミノ酸配列を含む、前記ペプチド断片;又はその製薬上許容し得る塩。
【請求項2】
前記ペプチド断片が、
10~17アミノ酸又は20~30アミノ酸の範囲の連続する配列から成る、請求項1記載のペプチド断片。
【請求項3】
前記連続する配列が配列番号11を含む、請求項1又は2記載のペプチド断片。
【請求項4】
前記連続する配列が配列番号4を含む、請求項1又は2記載のペプチド断片。
【請求項5】
前記ペプチド断片が、単離された免疫原性ペプチド断片である、
請求項1~4のいずれか1項記載のペプチド断片。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項記載のペプチド断片をコードする核酸。
【請求項7】
請求項6記載の核酸を含むベクター。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項記載のペプチド断片又は
請求項6記載の核酸又は
請求項7記載のベクターを含む組成物。
【請求項9】
製薬上許容し得る添加剤をさらに含む、
請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記製薬上許容し得る添加剤が、担体及び/又はアジュバントを含むか又はそれから成る、
請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記アジュバントが存在し、且つ、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキノリン、モンタニドISAアジュバントから成る群より選択される、
請求項10記載の組成物。
【請求項12】
癌の治療における使用のための、
請求項1~5のいずれか1項において定義されるペプチド断片又は
請求項6において定義される核酸又は
請求項7において定義されるベクター又は
請求項8~11のいずれか1項において定義される組成物。
【請求項13】
前記癌が、メラノーマ、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫及び卵巣癌から選択される、
請求項12記載のペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【請求項14】
前記癌がPDL2の発現を特徴とする、
請求項12又は13記載のペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【請求項15】
前記ペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物が、更なる癌療法と同時的に又は連続的に投与されるべきものである、
請求項12~14のいずれか1項記載のペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【請求項16】
前記更なる癌療法が、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体又は樹状細胞である、
請求項15記載のペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【請求項17】
前記更なる癌療法が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンのうちの1つ以上から選択される、
請求項15又は16記載のペプチド断片、核酸、ベクター又は組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDL2の断片などの新規ペプチド化合物、ならびにこれらのペプチド化合物を含む組成物、使用、およびキット部品に関する。さらに、本発明は、単独で、またはさらなるがん療法と同時的もしくは連続的に投与した場合の、がんの治療または予防のための方法における使用のための、前記ペプチド化合物を発現する核酸、ベクター、および宿主細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
B7-CD28ファミリーの分子は、T細胞の活性化および寛容において重要な役割を果たす。これらの経路は、T細胞活性を持続するための正の共刺激シグナルを提供するのを担うだけでなく、T細胞応答の規模をモジュレートする阻害シグナルにも寄与する。B7/CD28ファミリーの阻害分子は、腫瘍微小環境中での免疫寛容の誘導において鍵となる役割を果たす。プログラム細胞死-1受容体(PD-1、CD279)は、そのリガンドPD-L1(CD274、B7-H1)およびPD-L2(CD273、B7-DC)と共に、1つのそのような阻害経路を構成する。がんにおけるPD-1/PD-L1経路の関連は、広く研究されており、PD-1(例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブ)およびPD-L1(例えば、アベルマブまたはアテゾリズマブ)を標的とする治療手法が開発されており、いくつかの異なるがんの適応において既に認可されている。しかしながら、PD-L2は、それほど注目を集めておらず、腫瘍免疫をモジュレートする際のその役割はあまり明確ではない。PD-L2は、抗原提示細胞によってだけでなく、主にTh2関連サイトカインを介して、誘導的様式で他の免疫細胞および非免疫細胞によって発現される阻害分子であることが知られている。したがって、PD-L1とPD-L2の発現パターンは全く異なる。PD-L1は、様々な免疫細胞および非免疫細胞によって構成的に発現され、多くの正常組織細胞がPD-L1を上方調節することができると考えられる。PD-L2発現は、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞に限定されると最初は考えられていた。しかしながら、近年では、いくつかのグループが、微小環境刺激に応じて様々な他の免疫細胞および非免疫細胞上でPD-L2発現を誘導することができることを示した。重要なことに、PD-L2発現は、がんを有する患者において報告されている。さらに、PD-L2を、PD-L1の非存在下、ヒト腫瘍内で発現させることができる。これは、PD-L1発現の非存在下であっても、抗PD-1療法に対する異なる標的療法の有効性の理解に影響を与え得る。したがって、PD-L2発現は、腎細胞癌、膀胱癌、メラノーマ、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSC)、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、および胃癌などの、いくつかの腫瘍型において記載されている。PD-L2を、PD-L1の非存在下であっても、個々の腫瘍試料中で発現させることができる(http://www.esmo.org/Conferences/Past-Conferences/European-Cancer-Congress-2015/News/Novel-Assay-Developed-to-Determine-PD-L2-Expression-in-Tumour-Samples)。
【0003】
Ohigashiらは、ヒト食道がんにおけるPD-L1およびPD-L2の発現を精査して、術後の患者の予後におけるそれらの臨床的有意性を決定した。RT-qPCRおよび免疫組織化学を用いて、著者らは、PD-L1とPD-L2が両方とも、食道がん患者の凍結組織試料中で発現され、PD-L2陽性患者が、PD-L1の場合と同様、陰性患者よりも予後不良であることを示した。
【0004】
興味深いことに、PD-L2発現と、CD4 TILではなくCD8 TILとの間には有意な逆相関があった。膵がんを有する51人の患者を含む後ろ向き研究において、分析された腫瘍の27%がPD-L2を発現したのに対して、39%がPD-L1を発現していた。
【0005】
また、おそらく腫瘍細胞自体によるPD-L2発現だけでなく、間質細胞によるPD-L2発現も重要であることにここで留意することも重要である。Nazarethおよびその同僚は、ヒト非小細胞肺がんから培養された線維芽細胞中での構成的に高いPD-L1および2発現を見出した。in vitroでの遮断研究により、線維芽細胞がPD-L1および2依存的様式で自己T細胞によるIFNγ産生を阻害することを示されたため、この発現は機能的であると考えられた。このため、将来の研究は、腫瘍細胞によるPD-L発現だけでなく、腫瘍間質によるPD-L発現にも着目すべきである。
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、拡張PDL2(本明細書で配列番号1、参照NCBI受託番号Q9BQ51、バージョンQ9BQ51.2によって同定されるシグナル配列を含むヒトPDL2)に由来する新しい免疫原性エピトープを同定した。いくつかのPD-L2由来ペプチドを、組織型HLA-A2に対する結合親和性に基づいて選択し、これらのペプチドの配列の少なくとも一部は、PD-L2配列のシグナルペプチド中にあるか、またはPD-L2タンパク質配列の膜貫通ドメイン中にあるため、これらのもののうち、小さい方の選択物をELISPOTによってさらに分析した。本発明者らは、IFN ELISPOT分泌アッセイを用いて、PD-L2由来ペプチドに対する特異的T細胞応答の存在について9人のがん患者に由来する末梢血単核細胞(PBMC)を精査した。いくつかのペプチドに対する強力な応答が検出され、特に、1つのペプチドに対する応答が、健康な個体(HD)においてさらに容易に検出可能であった。
【0007】
一態様において、本発明は、配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片であって、その断片が最大100アミノ酸長であり、ペプチド断片が配列番号1の8~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含む、もしくはそれからなる、前記断片;またはその製薬上許容し得る塩に関する。
【0008】
本発明はまた、配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片であって、その断片が最大100アミノ酸長であり、ペプチド断片が配列番号1の8~100アミノ酸の範囲の連続する配列からなる、前記断片;またはその製薬上許容し得る塩にも関する。
【0009】
実施形態において、ペプチド断片は、最大50アミノ酸長、最大40アミノ酸長、または最大30アミノ酸長などの、最大60アミノ酸長である。連続する配列中の対応する範囲上限は、したがって、配列番号1の60、50、40または30アミノ酸である。
【0010】
さらなる実施形態において、ペプチドは、最大21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である。
【0011】
別の実施形態においては、ペプチド断片は、10~17アミノ酸、20~30アミノ酸、30~40アミノ酸、または40~50アミノ酸などの、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか、またはそれからなる。
【0012】
さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、10~17アミノ酸、20~30アミノ酸、30~40アミノ酸、または40~50アミノ酸などの、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。典型的には、10~17アミノ酸または20~100アミノ酸である。
【0013】
別の実施形態においては、ペプチド断片は、配列番号1のアミノ酸1~3、すなわち、MIFを含まない。PDL2の研究は、これらの3個のアミノ酸のいかなる有意な効果も示さなかったため、それらはT細胞の活性化には寄与しない。
【0014】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号2、4、11および12のいずれか1つなどの、配列番号2~12のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。
【0015】
一実施形態においては、連続する配列は、配列番号2と配列番号4の両方を含む。例えば、配列番号12のペプチド断片は、配列番号2と配列番号4の両方を含む。
【0016】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、ペプチド断片が最大21、22、23、24、25、26、27、28、29または30アミノ酸長である、配列番号11から選択される配列を含む。好ましくは、連続する配列は、配列番号11からなる。
【0017】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、ペプチド断片が最大25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号12から選択される配列を含む。
【0018】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、ペプチド断片が最大10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号4から選択される配列を含む。
【0019】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、ペプチド断片が最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号2から選択される配列を含む。
【0020】
さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、CD4およびCD8 T細胞などのT細胞を活性化することができる。典型的には、活性化は、本明細書に記載のELISPOTアッセイなどのELISPOTアッセイによって決定される。
【0021】
C末端アミノ酸は、酸またはアミドの形態にあってもよく、両方とも本発明のペプチド断片の個々の実施形態として企図される。
【0022】
典型的には、ペプチド断片は、単離された、免疫原性ペプチド断片である。
【0023】
さらなる態様において、本発明は、場合により、担体またはアジュバントなどの製薬上許容し得る添加剤と共に、本発明のペプチド断片を含む組成物に関する。
【0024】
アジュバントが存在する場合、そのようなアジュバントは、好ましくは、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタニドISAアジュバントからなる群から選択される。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、PDL2の発現を特徴とするがんなどの、がんの治療における使用のための本発明のペプチド断片に関する。
【0026】
さらなる態様においては、本発明は、患者におけるがんを治療または予防する方法であって、がん患者に、有効量の本発明のペプチド断片を投与することを含む、前記方法に関する。実施形態においては、前記方法は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞などの、さらなるがん療法の同時的または連続的投与をさらに含む。さらなる実施形態においては、さらなるがん療法は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのうちの1つ以上から選択される。
【0027】
さらなる態様において、本発明は、本発明のペプチド断片をコードする、DNAまたはRNAなどの核酸に関する。
【0028】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸を含む、ウイルスベクターなどのベクターに関する。
【0029】
さらなる態様において、本発明は、本発明のベクターを含む、哺乳動物細胞などの宿主細胞に関する。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、
a)本発明の組成物、ならびに
b)インターロイキン、例えば、IL-2および/またはIL-21などの免疫刺激化合物、化学療法剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤から選択される少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を含むキット部品に関する。
【0031】
さらなる実施形態においては、提供される組成物は、同時的または連続的に投与される。
【0032】
さらなる態様において、本発明は、PDL2(配列番号1)の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患している個体に、有効量の本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0033】
さらなる態様において、本発明は、患者におけるがんを治療または予防する方法であって、がん患者に、有効量の本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0034】
さらなる態様において、本発明は、PDL2の発現を特徴とするがんなどのがんの治療または予防のための、組成物またはワクチンなどの医薬の製造のための本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞の使用に関する。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞などの、さらなるがん療法と同時的または連続的に投与した場合の、がんの治療または予防のための方法における使用のための、本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞に関する。
【0036】
実施形態において、さらなるがん療法は、チェックポイント遮断抗体から選択される。
【0037】
さらなる実施形態において、さらなるがん療法は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのうちの1つ以上から選択される。
【0038】
さらなる態様は、以下の通りである。
【0039】
1. 下記:
a)8~272アミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b)配列番号1もしくはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、もしくは95%の同一性を有する機能的相同体、ならびに
c)少なくとも1個のアミノ酸が配列番号1もしくはa)のペプチド断片中で欠失、挿入および/もしくは置換された機能的類似体
から選択され、a)、b)もしくはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸がアミドも含む、PDL2のペプチド化合物、またはその製薬上許容し得る塩。
【0040】
2. C末端アミノ酸がアミドも含む、a)8~272アミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片から選択される態様1に記載のペプチド化合物;またはその製薬上許容し得る塩。
【0041】
3. ペプチド断片が、8~250アミノ酸、8~200アミノ酸、8~150アミノ酸、8~120アミノ酸、例えば、10~100アミノ酸、20~80アミノ酸、30~60アミノ酸、40~50アミノ酸の範囲の連続する配列からなる、態様2に記載のペプチド化合物。
【0042】
4. 配列番号1のペプチド断片が、PDL2(1-25)、PDL2(1-50)、PDL2(200-273)、およびPDL2(210-250)からなる群から選択される、態様2~3のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0043】
5. 連続する配列が、配列番号7から選択される1つの配列または配列番号2および4から選択される2つの配列などの、配列番号2~12のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む、態様2~4のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0044】
6. a)の下のペプチド断片、b)の下の機能的相同体、またはc)の下の機能的類似体が、CD4およびCD8 T細胞などのT細胞を活性化することができる、態様1~5のいずれか1つに記載のペプチド化合物。
【0045】
7. 活性化が本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される、態様6に記載のペプチド化合物。
【0046】
8. 前記態様のいずれか1つに記載のペプチド化合物をコードする、DNAまたはRNAなどの核酸。
【0047】
9. 態様8に記載の核酸を含む、ウイルスベクターなどのベクター。
【0048】
10. 態様9に記載のベクターを含む、哺乳動物細胞などの宿主細胞。
【0049】
11. 必要に応じて、担体またはアジュバントなどの製薬上許容し得る添加剤と共に、態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞を含む組成物。
【0050】
12. 医薬としての使用のための、
a) 態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞;および
b) アジュバント
を含む免疫治療組成物。
【0051】
13. 腫瘍形成性がん疾患などのがんから選択される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法における使用のための態様12に記載の免疫治療組成物。
【0052】
14. アジュバントが細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタニドISAアジュバントからなる群から選択される、態様11~13のいずれか1つに記載の免疫治療組成物。
【0053】
15. 下記:
a) 態様12~14のいずれか1つに記載の免疫治療組成物、ならびに
b) インターロイキン、例えば、IL-2および/またはIL-21などの免疫刺激化合物、化学療法剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤から選択される少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を含むキット部品。
【0054】
16. 提供される組成物が同時的または連続的に投与される、態様15に記載のキット部品。
【0055】
17. 配列番号1のPDL2の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患する個体に、有効量の態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞を投与することを含む、前記方法。
【0056】
18. 患者におけるがんを治療または予防する方法であって、がん患者に、有効量の態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞を投与することを含む、前記方法。
【0057】
19. PDL2の発現を特徴とするがんの治療または予防のための、免疫治療組成物またはワクチンなどの医薬の製造のための態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞の使用。
【0058】
20. サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞などの、さらなるがん療法と同時的または連続的に投与した場合の、がんの治療または予防のための方法における使用のための、態様1~7のいずれか1つに記載のペプチド化合物または態様8に記載の核酸または態様9に記載のベクターまたは態様10に記載の宿主細胞。
【0059】
21. チェックポイント遮断抗体が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンから選択される、態様20に記載のペプチド断片、核酸、ベクターまたは宿主細胞。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】PD-L2に対する天然のT細胞応答を示す図である。(A) PD-L201 (PD-L2(4-12); LLLMLSLEL)およびPD-L205 (PD-L2(16-25); QIAALFTVTV)に応答した、悪性メラノーマ(AAおよびMM)を有する患者から単離されたPBMCに関するELISPOTの結果の例。(B)in vitroでのIFN-γ ELISPOTの結果。がんを有する9人の患者に由来するPBMCを、in vitroで各ペプチドを用いて1回刺激した。次いで、PBMCをペプチドに曝露し、IFN-γ分泌を、ELISPOTを用いて測定した。応答を、5x10
5個のPBMCあたりの、ペプチド特異的スポットの数 - 無関係のペプチド(HIV/HLA-A2; pol476-484; ILKEPVHGV)と反応したスポットの数として算出した。
【
図2】PD-L2が、がんを有する患者に由来するT細胞および健康なドナーに由来するT細胞において応答を惹起したことを示す図である。(A) 悪性メラノーマ(AAおよびMM)を有する患者に由来するPBMC中でのPD-L201 (PD-L2(4-12))およびPD-L205 (PD-L2(16-25))(黒色のバー)または無関係のペプチド(灰色のバー)に対するIFN-γ応答の例。全ての実験を、3回行い、
**はDFRおよびDFRx2に従って有意である。(B)悪性メラノーマ(AAおよびMM)を有する患者に由来するPBMC中でのPD-L201 (PD-L2(4-12))およびPD-L205 (PD-L2(16-25))(黒色のバー)または無関係のペプチド(灰色のバー)に対するTNF-α応答の例、
**DFRおよびDFRx2に従って有意である;
*DFRのみに従って有意である。(C)in vitroでのIFN-γELISPOTの結果。がんを有する9人の患者および9人の健康なドナーに由来するPBMCを、in vitroでPD-L201 (PD-L2(4-12))またはPD-L205 (PD-L2(16-25))を用いて1回刺激した。次いで、PBMCをペプチドに曝露し、IFN-γ分泌を、ELISPOTを用いて測定した。ペプチド特異的スポットの平均数(ペプチドを添加しないスポットの数を減算した後)を、2~5x10
5個のPBMCあたりで算出した。(D)ex vivoでのIFN-γ ELISPOTの結果。PD-L205 (PD-L2(16-25))(黒色のバー)または無関係のペプチド(灰色のバー)は、悪性メラノーマ(AA)を有する2人の患者に由来するPBMCおよび2人の健康なドナー(HD)に由来するPBMCにおいて応答を惹起した。
【
図3】PD-L2配列のシグナルペプチド部分に及ぶ長いPD-L2ペプチドに対する反応性を示す図である。(A)in vitroでのIFN-γ ELISPOTの結果。悪性メラノーマを有する11人の患者および11人の健康なドナーに由来するPBMCを、PD-L2long1 (PD-L2(9-29); SLELQLHQIAALFTVTVPKEL)またはPD-L2long2 (PD-L2(1-25); MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTV)で刺激し、in vitro ELISPOTアッセイにおいてIFNγ放出を測定することにより、IFNγ応答についてスクリーニングした。(B)4人の非ホジキンリンパ腫患者(WM)に由来するPBMCを、in vitro ELISPOTアッセイにおいてPD-L2long2(PD-L2(1-25))に対するIFNγ応答についてスクリーニングした。全てのアッセイを、ウェルあたり3x10
6個の細胞を用いて3回行ったが、但し、そのうちの1つは2回行った(WM-2)。
**は、DFRおよびDFRx2に従う有意を示す;
*は、DFRのみに従う有意を示す。(C)PD-L2long2に応答するWM-5患者に関するELISPOTウェル画像の例。(D)2人のメラノーマ患者(TIL2、黒色のバーおよびTIL6、白色のバー)に由来する腫瘍浸潤性Tリンパ球(TIL)の細胞内サイトカイン染色は、PD-L205 (PD-L2(16-25))、PD-L2long1 (PD-L2(9-29 ))、PD-L2long2 (PD-L2(1-25))および対照HIVペプチド (HIV-1 pol476-484)への曝露の際に、IFN-γのCD4+T細胞放出を示す。
【
図4】PD-L2特異的T細胞がエフェクターT細胞であることを示す図である。(A)PD-L2 T細胞-A(左)およびPD-L2 T細胞-B(右)の培養物中で、無関係の対照ペプチドであるHIVペプチド(HIV-1 pol476-484)またはPD-L205 (PD-L2(16-25))に応答してTNF-αを放出するCD4+およびCD8+T細胞を示す細胞内サイトカイン染色。(B)自己DCを用いる5時間の刺激に応答したPD-L2 T細胞培養物-A (左)およびPD-L2 T細胞培養物-B (右)の細胞内TNF-αおよびIFN-γサイトカイン染色。(C)ELISPOTアッセイによって測定された、PD-L205 (PD-L2(16-25))ペプチド(黒色のバー)および1:5の比で培養した場合の自己DC(灰色のバー)に対するPD-L2 T細胞培養物-A(上)およびPD-L2 T細胞培養物-B(下)によるIFN-γおよびTNF-α分泌。(D)標準的な51Cr放出アッセイにおいてPD-L2 T細胞培養物-A(左)およびPD-L2 T細胞培養物-B(右)によって認識された、PD-L205 (PD-L2(16-25))または対照HIVペプチド(HIV-1 pol476-484)のいずれかをパルスしたT2細胞。
【
図5】DCに対するPD-L2依存的反応性を示す図である。(A)エレクトロポレーションの48時間後の、PD-L2 siRNAまたは陰性対照siRNAをトランスフェクトした自己DC上でのPD-L2表面発現のプロファイルを示すフローサイトメトリー分析。(B)PD-L2 T細胞培養物-A(上)およびPD-L2 T細胞培養物-B(下)を、1:5の比(DC:T細胞)で5時間、PD-L2 siRNAまたは陰性対照siRNAをトランスフェクトした自己DCで刺激した。サイトカインを放出するCD4+T細胞(左)およびCD8+T細胞(右)のパーセンテージを、細胞内サイトカイン染色を用いて測定した。(C)ELISPOTアッセイを用いたエレクトロポレーションの48時間後に測定された、陰性対照siRNA(黒色のバー)またはPD-L2 siRNA(灰色のバー)のいずれかをトランスフェクトした自己DCに応答するPD-L2培養物中のTNF-αを放出するT細胞の数。アッセイを3回行い、
*は、DFRに従う有意を示す。
【
図6】PD-L1特異的T細胞とPD-L2特異的T細胞との交差反応性がないことを示す図である。(A)PD-L1およびPD-L2の最初の30アミノ酸の配列ならびにタンパク質のシグナルペプチド部分中のペプチドPD-L101 (PDL1(15-23); LLNAFTVTV)およびPD-L205 (PD-L2(16-25); QIAALFTVTV)の位置を太字で示す。(B)in vitro IFN-γ ELISPOTの結果は、PD-L101 (PDL1(15-23))およびPD-L205 (PD-L2(16-25))ペプチドに対する、がんを有する5人の患者に由来するT細胞の応答を示す。(C)51Cr放出アッセイの結果は、様々なエフェクター:標的比でPD-L101特異的T細胞(CTL)に曝露した場合の、PD-L101 (PDL1(15-23))、PD-L205 (PD-L2(16-25))、または無関係のHIVペプチド(HIV-1 pol476-484)をパルスしたT2細胞の溶解率(%)を示す。(D)培養されたPD-L101特異的T細胞の細胞内サイトカイン染色は、PD-L101 (PDL1(15-23))、PDL205 (PD-L2(16-25))、または無関係のHIVペプチド(HIV-1 pol476-484)への曝露の際の、TNF-αのCD8+ T細胞放出を示す。(D)PD-L2 T細胞培養物-A(左)またはPD-L2 T細胞培養物B(右)への曝露後の、PDL205 (PD-L2(16-25))、PD-L101ペプチド (PDL1(15-23))、または無関係のHIVペプチド(HIV-1 pol476-484)をパルスしたT2細胞の溶解率(%)。
【発明を実施するための形態】
【0061】
PDL2(配列番号1)由来の新しい免疫原性エピトープ、および新しい免疫原性エピトープに対する強力な免疫応答ならびに配列番号1のいくつかのペプチドに対して検出される頻繁な免疫応答に加えて、本発明者は、T細胞反応性を惹起し得る様々なPD-L2由来エピトープを精査し、健康なドナーと、様々ながんを有する患者との両方に由来する試料中でのPD-L2に対する自発的なT細胞媒介性反応性を試験した。最後に、PD-L2特異的T細胞がPD-L2を発現する標的細胞を認識することができるか否かが決定された。
【0062】
PD-L1およびPD-L2の上方調節などの調節フィードバック機構は、そうでなければ宿主を害し得る免疫応答の強度および規模を制限するために必須である。しかしながら、免疫回避は、がん免疫療法の枠組みでは有害である。
【0063】
一態様において、本発明は、
a) 8~272アミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片、
b) 配列番号1もしくはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、もしくは95%の同一性を有する機能的相同体、および
c) 少なくとも1個のアミノ酸が配列番号1もしくはa)のペプチド断片中で欠失、挿入および/もしくは置換された機能的類似体
から選択され、a)、b)もしくはc)のいずれか1つのC末端アミノ酸がアミドも含む、PDL2のペプチド化合物、またはその製薬上許容し得る塩に関する。
【0064】
上記文脈において、「機能的」とは、「配列番号1を有するPDL2に対する免疫応答を刺激することができる」ことを意味する。
【0065】
別の態様において、本発明は、断片が最大100アミノ酸長であり、ペプチド断片が配列番号1の8~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか、もしくはそれからなる、配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片、またはその製薬上許容し得る塩に関する。
【0066】
実施形態において、ペプチド断片は、10~17アミノ酸、20~30アミノ酸、30~40アミノ酸、または40~50アミノ酸などの、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか、またはそれからなる。
【0067】
別の実施形態においては、ペプチド断片は、10~17アミノ酸、20~30アミノ酸、30~40アミノ酸、または40~50アミノ酸などの、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。実施形態において、ペプチド断片は、最大50アミノ酸長、最大40アミノ酸長、または最大30アミノ酸長などの最大60アミノ酸長である。連続する配列中の対応する範囲上限は、したがって、配列番号1の60、50、40または30アミノ酸である。
【0068】
さらなる実施形態において、ペプチド断片は、最大21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である。
【0069】
さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号2、4、11および12のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号4を含む。さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号4からなる。別の実施形態において、連続する配列は、配列番号11を含む。さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号11からなる。別の実施形態において、連続する配列は、配列番号12を含む。さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号12からなる。さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号2と配列番号4との両方を含む。
【0070】
別の実施形態において、ペプチド断片は、配列番号1のアミノ酸1~3、すなわち、MIFを含まない。かくして、実施形態において、ペプチド断片は、LLLMLSLELQLHQIAALFTVTV(配列番号25)を含むか、またはそれからなる。
【0071】
さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号2、4、11および12のいずれか1つなどの、配列番号2~12のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。
【0072】
さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号2と配列番号4との両方を含む。例えば、配列番号12のペプチド断片は、配列番号2と配列番号4との両方を含む。
【0073】
さらなる実施形態において、連続する配列は、配列番号11から選択される配列を含み、ペプチド断片は、最大21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である。典型的には、21アミノ酸長である。
【0074】
かくして、好ましい態様において、本発明は、配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片であって、ペプチド断片が最大21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30アミノ酸長であり、ペプチド断片が配列番号11から選択される配列を含むか、もしくはそれからなる、前記ペプチド断片;またはその製薬上許容し得る塩に関する。
【0075】
さらなる実施形態において、連続する配列は、ペプチド断片が最大25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号12から選択される配列を含む。
【0076】
さらなる実施形態において、連続する配列は、ペプチド断片が最大10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号4から選択される配列を含む。
【0077】
さらなる実施形態において、連続する配列は、ペプチド断片が最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30アミノ酸長である、配列番号2から選択される配列を含む。
【0078】
実施形態において、ペプチド化合物は、C末端アミノ酸がアミドも含む、b)配列番号1もしくはa)のペプチド断片に対する少なくとも70%、80%、90%、もしくは95%の同一性を有する機能的相同体;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。一実施形態においては、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも80%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも90%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、配列番号1に対する少なくとも95%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも70%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも80%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも90%の同一性を有する。さらなる実施形態において、機能的相同体は、a)のペプチド断片に対する少なくとも95%の同一性を有する。
【0079】
別の実施形態においては、ペプチド化合物は、C末端アミノ酸がアミドも含む、c)少なくとも1つのアミノ酸が配列番号1もしくはa)のペプチド断片中で欠失、挿入、および/もしくは置換された機能的類似体;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。
【0080】
さらなる実施形態において、ペプチド化合物は、a)C末端アミノ酸がアミドも含む、8~272アミノ酸の連続する配列からなる配列番号1のペプチド断片;またはその製薬上許容し得る塩から選択される。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~250アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~200アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~150アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~120アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、20~80アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、30~60アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、40~50アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~30アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、10~25アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。さらなる実施形態においては、ペプチド断片は、8~25アミノ酸の範囲の連続する配列からなる。
【0081】
さらなる実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、PDL2(1-25)、PDL2(1-50)、PDL2(1-150)、PDL2(1-200)、PDL2(50-100)、PDL2(50-150)、PDL2(50-200)、PDL2(60-100)、PDL2(60-150)、PDL2(60-200)、PDL2(70-100)、PDL2(70-150)、PDL2(70-200)、PDL2(200-273)、およびPDL2(210-250)からなる群から選択される。好ましい実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、PDL2(1-25)から選択される。別の好ましい実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、PDL2(1-50)から選択される。さらに好ましい実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、PDL2(200-273)から選択される。好ましい実施形態においては、配列番号1のペプチド断片は、PDL2(210-250)から選択される。
【0082】
さらなる実施形態においては、連続する配列は、配列番号7から選択される1つの配列または配列番号2および4から選択される2つの配列などの、配列番号2~24のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む。好ましい実施形態においては、連続する配列は、配列番号4から選択される。好ましい実施形態においては、連続する配列は、配列番号2から選択される。好ましい実施形態においては、連続する配列は、配列番号7から選択される。
【0083】
ペプチド断片が8~120の範囲の連続する配列からなる場合、それを同時に、例えば、PDL2(1-150)の配列内で選択することができるが、8~272の範囲の連続する配列からなるペプチド断片を、同時に、例えば、PDL2(1-150)の配列内で選択することができないことが理解されるべきであり、これは当業者には公知である。そうでなければ、全ての組合せが本発明の中で企図される。
【0084】
また、PDL2(x-y)(式中、xおよびyは本明細書で用いられるような1~273から選択される整数である)は、xがN末端アミノ酸であり、yがC末端アミノ酸である、本明細書で定義される配列番号1を有するヒト伸長PDL2のペプチド断片を意味し、例えば、PDL2(16-25)は、アミノ酸16がQであり、アミノ酸25がVである、配列番号1のアミノ酸16から配列番号1のアミノ酸25までのペプチド断片を示す。
【0085】
本明細書に記載の任意のペプチド断片において、C末端アミノ酸を、必要に応じて、対応するアミドと置き換えて、溶解度を改善する、および/または製造/単離を補助することができる。同様に、ポリペプチドは、溶解度を改善する、および/または製造/単離を補助するために、Nおよび/またはC末端に、少なくとも1個のさらなる部分を結合していてもよい。好適な部分は、親水性アミノ酸を含む。例えば、アミノ酸KRを、N末端に付加する、および/またはアミノ酸RKを、順にC末端に付加することができる。
【0086】
さらなる態様において、本発明は、配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片であって、断片が最大100アミノ酸長であり、ペプチド断片が配列番号1の8~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか、またはそれからなる、前記ペプチド断片、またはその製薬上許容し得る塩と共に、必要に応じて、担体またはアジュバントなどの、製薬上許容し得る添加剤とを含む組成物に関する。
【0087】
本明細書で用いられる用語「同一性」とは、配列を比較することによって決定される、ポリペプチドなどの、2つ以上のペプチドの配列の間の関係を指す。当業界において、「同一性」はまた、2つ以上のアミノ酸残基のストリング間の一致数によって決定される、タンパク質またはポリペプチド間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」は、特定の数的モデルまたはコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって対処される、ギャップアラインメント(もしあれば)を有する2つ以上の配列の小さい方の間の同一の一致のパーセントを測定する。関連するタンパク質またはペプチドの同一性を、公知の方法によって容易に算出することができる。そのような方法としては、限定されるものではないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Pro-jects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of Sequence Data, Part 1, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Se-quence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987; Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York, 1991; and Carillo et al., SIAM J. Applied Math., 48, 1073, (1988)に記載されたものが挙げられる。
【0088】
同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大の一致を与えるように設計される。同一性を決定するための方法は、公共的に利用可能なコンピュータプログラム中に記載されている、2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュータプログラム法としては、GAP(Devereux et al., Nucl. Acid. Res., 12, 387, (1984); Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA (Altschul et al., J. Mol. Biol., 215, 403-410, (1990))を含む、GCGプログラムパッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information (NCBI)および他の供給源(BLAST Manual, Altschul et al. NCB/NLM/NIH Bethesda, Md. 20894; Altschul et al., supra)から公共的に利用可能である。周知のSmith Watermanのアルゴリズムを用いて、同一性を決定することもできる。
【0089】
例えば、コンピュータアルゴリズムGAP(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, Wis.)を用いて、配列同一性パーセントを決定しようとする2つのタンパク質を、そのそれぞれのアミノ酸の最適な一致(アルゴリズムによって決定される「一致スパン」)のために整列させる。ギャップオープニングペナルティ(平均対角線の3倍として算出される;「平均対角線」は、用いられる比較マトリックスの対角線の平均である;「対角線」は、特定の比較マトリックスによりそれぞれの完全なアミノ酸一致に割り当てられるスコアまたは数である)およびギャップ伸長ペナルティ(通常、ギャップオープニングペナルティの{分数(1/10)}倍である)、ならびにPAM250またはBLOSUM62などの比較マトリックスを、アルゴリズムと共に用いる。標準的な比較マトリックス(PAM250比較マトリックスについてはDayhoff et al., Atlas of Protein Sequence and Structure, vol. 5, supp.3 (1978); BLOSUM62比較マトリックスについてはHenikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA, 89, 10915-10919, (1992)を参照されたい)も、アルゴリズムによって用いられる。タンパク質またはペプチド配列比較のための好ましいパラメータとしては、以下のもの:アルゴリズム:Needleman et al., J. Mol. Biol, 48, 443-453, (1970); 比較マトリックス: Henikoff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89, 10915-10919, (1992)からのBLOSUM62;ギャップペナルティ:12、ギャップ長ペナルティ:4、類似性の閾値:0が挙げられる。GAPプログラムは、上記パラメータに関して有用である。上記パラメータは、GAPアルゴリズムを用いるタンパク質比較のためのデフォルトパラメータ(それと共に、末端ギャップについてはペナルティなし)である。
【0090】
さらなる実施形態においては、a)の下のペプチド断片、b)の下の機能的相同体、またはc)の下の機能的類似体は、CD4およびCD8 T細胞などのT細胞を活性化することができる。典型的には、活性化は、本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定される。
【0091】
さらなる実施形態においては、a)の下のペプチド断片は、本明細書に記載のELISPOTアッセイによって決定された場合、T細胞を活性化することができる。
【0092】
さらなる態様において、本発明は、本発明のペプチド化合物をコードする核酸に関する。本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、核酸は、DNAおよびRNAからなる群から選択される。
【0093】
さらなる態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターに関する。本発明の核酸は、上記実施形態のいずれか1つから選択され、本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、ベクターはウイルスベクターから選択される。
【0094】
さらなる態様において、本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。本発明のベクターは、上記実施形態のいずれか1つから選択され、本発明の核酸は、上記実施形態のいずれか1つから選択され、本発明のペプチド化合物は、上記実施形態のいずれか1つから選択される。一実施形態においては、宿主細胞は、哺乳動物細胞から選択される。
【0095】
さらなる態様において、本発明は、本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞と共に、必要に応じて担体またはアジュバントなどの製薬上許容し得る添加剤を含む組成物に関する。
【0096】
さらなる態様において、本発明は、医薬としての使用のための、a)本発明のペプチド化合物もしくは断片または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞;およびb)アジュバントを含む組成物に関する。
【0097】
実施形態において、本発明の組成物は、がんから選択される疾患、障害または状態の治療または予防のための方法における使用のためのものである。一実施形態においては、がんは、腫瘍を形成するがん疾患である。さらなる実施形態においては、がんは、メラノーマ、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、および卵巣がんのいずれか1つから選択される。さらなる実施形態においては、アジュバントは、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択される。
【0098】
さらなる態様において、本発明は、
a)本発明の組成物、ならびに
b)インターロイキン、例えば、IL-2および/またはIL-21などの免疫刺激化合物、化学療法剤、例えば、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどの抗がん剤から選択される少なくとも1つの第2の活性成分を含む組成物
を含むキット部品に関する。
【0099】
キット部品の実施形態において、提供される組成物は、同時的または連続的に投与される。
【0100】
さらなる態様において、本発明は、配列番号1のPDL2の発現を特徴とする臨床状態を治療する方法であって、前記臨床状態に罹患している個体に、有効量の本発明のペプチド化合物または本発明の核酸または本発明のベクターまたは本発明の宿主細胞を投与することを含む、前記方法に関する。
【0101】
さらなる態様において、本発明は、PDL2の発現を特徴とするがんの治療または予防のための、組成物またはワクチンなどの医薬の製造のための本発明のペプチド化合物、または本発明の核酸、または本発明のベクター、または本発明の宿主細胞の使用に関する。
【0102】
さらなる態様において、本発明は、さらなるがん療法と同時的または連続的に投与した場合、がんの治療または予防のための方法における使用のための、本発明のペプチド化合物、または本発明の核酸、または本発明のベクター、または本発明の宿主細胞に関する。
【0103】
実施形態において、さらなるがん療法は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体および樹状細胞からなる群から選択される。一実施形態においては、さらなるがん療法は、免疫系チェックポイント阻害剤から選択される。特定の実施形態においては、免疫系チェックポイント阻害剤は、チェックポイント遮断抗体である。さらなる実施形態においては、さらなるがん療法は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択される。
【0104】
本明細書で用いられる場合、示される任意のアミノ酸は、C末端アミノ酸でアミド形態(-CONH2)に改変されていてもよく、または酸形態(-COOH)にあってもよく、かくして、これらのいずれか一方が好ましい実施形態であり、I、L、Vなどの任意のC末端アミノ酸が-NH2または-OHによって特定されない限り、アミド形態と酸形態の両方を含むことが意図される。
【0105】
本明細書に開示されるPDL2ペプチド断片は、固相ペプチド合成(SPPS)などの標準的なペプチド合成によって作製される。SPPSは、実験室でペプチドを合成するための標準的な方法である。SPPSにより、細菌中で発現させることが難しい天然ペプチドの合成、非天然アミノ酸、ペプチド/タンパク質骨格改変の組込み、およびD-アミノ酸からなるD-タンパク質の合成が可能になる。小孔ビーズを、ペプチド鎖を構築することができる機能的単位(「リンカー」)で処理する。ペプチドは、無水フッ化水素またはトリフルオロ酢酸などの試薬によってビーズから切断されるまで、ビーズに共有結合したままであろう。ペプチドは、かくして、固相上に「固定」され、濾過プロセス中に保持され得るが、液相試薬および合成の副生成物は洗い流される。SPPSの一般的な原理は、脱保護-洗浄-カップリング-洗浄の反復サイクルの1つである。固相に結合したペプチドの遊離N末端アミンは、単一のN保護されたアミノ酸単位にカップリングされる。次いで、この単位は脱保護され、さらなるアミノ酸を結合することができる新しいN末端アミンを見せる。この技術の優位性は、部分的には、過剰の試薬を除去し、目的の成長するペプチドの全てを不溶性樹脂に共有結合したままにする、各反応後の洗浄サイクルを行う能力にある。2つの主に用いられるSPPSの形態-FmocおよびBocが存在する。リボソームタンパク質合成と違って、固相ペプチド合成は、C末端からN末端に向かう様式で進行する。アミノ酸モノマーのN末端は、これらの2つの基のいずれかによって保護され、脱保護されたアミノ酸鎖上に付加される。両方の技術について自動化合成装置が利用可能であるが、多くの研究グループがSPPSを手動で実行し続けている。さらに、当業者であれば、上記および下記のプロセスにおいて、中間化合物の官能基を保護基によって保護する必要があり得ることを理解するであろう。
【0106】
本明細書に開示されるペプチド化合物、核酸、ベクター、宿主細胞および医薬組成物を上記治療のために用いる場合、治療有効量の少なくとも1つの化合物を、前記治療を必要とする哺乳動物に投与する。
【0107】
本明細書で用いられる場合、アミノ酸は、当業者には公知の1文字または3文字コードによって同定され、便宜のため以下の表に示される:
【0108】
【0109】
本明細書で用いられる用語「免疫原性」とは、ペプチド断片が、少なくとも1の個体において、前記個体に投与した後に、免疫応答、好ましくは、T細胞応答を惹起することができることを意味する。ポリペプチドを、in vitro方法などの、任意の好適な方法を用いて免疫原性であると同定することができる。例えば、ペプチドを、それが以下の特徴:
(i)それが、ELISPOTアッセイによって決定された場合、少なくとも1人のがん患者のPBL集団においてIFN-γ産生細胞を惹起することができる、および/または
(ii)それが、対応するPDL2と反応するCTLの腫瘍組織の試料中、in situ検出を行うことができる;および/または
(iii)それが、特定のT細胞のin vitroでの増殖を誘導することができる、
のうちの少なくとも1つを有する場合、免疫原性であると同定することができる。ポリペプチドが免疫原として活性であるかどうかを決定するのに好適な方法も、以下の実施例のセクションに提供される。
【0110】
本明細書で用いられる用語「治療」および「治療すること」は、疾患または障害などの状態と闘うための患者の管理およびケアを意味する。この用語は、症状もしくは合併症を軽減するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅延させるため、症状および合併症を軽減する、もしくは緩和するため、および/または疾患、障害もしくは状態を治癒させる、もしくは除去するため、ならびに状態を予防するための活性化合物の投与などの、患者が罹患している所与の状態のための完全な範囲の治療を含み、ここで、予防は、疾患、状態、または障害と闘うための患者の管理およびケアと理解されるべきであり、症状または合併症の開始を予防するための活性化合物の投与を含むことが意図される。治療は、急性的または慢性的な方法で実施することができる。治療される患者は、好ましくは、哺乳動物、特に、ヒトであるが、イヌ、ネコ、ウシ、サル、類人猿、ヒツジおよびブタなどの動物を含んでもよい。
【0111】
本発明のペプチド化合物または本明細書に開示されるペプチド断片の「治療有効量」という用語は、本明細書で用いられる場合、所与の疾患およびその合併症の臨床徴候を治癒させる、軽減するまたは部分的に停止させるのに十分な量を意味する。これを達成するのに十分な量は、「治療有効量」と定義される。それぞれの目的のための有効量は、疾患または傷害の重症度ならびに被験体の体重および全身状態に依存するであろう。適切な用量の決定を、値のマトリックスを構築し、マトリックス中の異なる点を試験することによる日常的な実験を用いて達成することができることが理解され、これは全て、訓練された医師または獣医師の通常の知識の範囲内にある。
【0112】
さらなる態様において、本発明は、本発明の、ペプチド断片などのペプチド化合物と、必要に応じて、担体または賦形剤などの製薬上許容し得る添加剤とを含む医薬組成物に関する。
【0113】
本明細書で用いられる場合、「製薬上許容し得る添加剤」は、限定されるものではないが、当業者であれば医薬組成物を作製するために本発明の化合物を製剤化する時に使用することを考慮するであろう、担体、賦形剤、希釈剤、アジュバント、着色料、芳香剤、保存剤などを含むことが意図される。
【0114】
本発明の組成物中で用いることができるアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体は、ペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞および医薬組成物の他の成分と適合するという意味で製薬上許容し得るものでなければならず、また、そのレシピエントにとって有害であってはならない。組成物は、アレルギー反応などの有害な反応を引き起こし得るいかなる材料も含有しないことが好ましい。本発明の医薬組成物中で用いることができるアジュバント、希釈剤、賦形剤および担体は、当業者には周知である。
【0115】
アジュバントは、組成物中への混合が、組成物によって惹起される免疫応答を増大させるか、またはそうでなければ改変する任意の物質である。広く定義されるアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントはまた、好ましくは、それらが投与部位からの活性薬剤の遅延放出および持続放出をももたらす点でデポー効果を有してもよい。アジュバントの一般的な考察は、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (2nd edition, 1986), pages 61-63に提供されている。
【0116】
アジュバントを、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4 (SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3 (PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11687、ノル-MDPとも呼ばれる)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1'2'-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホイルオキシ)-エチルアミン(CGP 19835A、MTP-PEとも呼ばれる)、2%スクアレン/Tween-80.RTMエマルジョン中のRIBI(MPL + TDM + CWS)、リポ多糖およびリピドAなどのその様々な誘導体、Freundの完全アジュバント(FCA)、Freundの不完全アジュバント、Merck Adjuvant 65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、ヒト型結核菌由来ワックスD、コリネバクテリウム・パルバム、ボルデテラ・ペルツシスおよびブルセラ族のメンバーに見出される物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(米国特許第58767号および第5,554,372号)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA-51およびQS-21からなる群から選択することができる。様々なサポニン抽出物も、免疫原性組成物中でのアジュバントとして有用であると提言されている。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をアジュバントとして用いることもできる。
【0117】
本発明と共に用いられる好ましいアジュバントとしては、モンタニドアジュバント(Seppic, Belgiumから入手可能)、好ましくは、モンタニドISA-51などの油/界面活性剤に基づくアジュバントが挙げられる。他の好ましいアジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントなどの細菌DNAに基づくアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ポリI:CなどのウイルスdsRNAに基づくアジュバントである。GM-CSFおよびイミダゾキニリンも、好ましいアジュバントの例である。
【0118】
アジュバントは、最も好ましくは、モンタニドISAアジュバントである。モンタニドISAアジュバントは、好ましくは、モンタニドISA51またはモンタニドISA720である。
【0119】
Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (2nd edition, 1986) pages 61-63では、目的の抗原が低分子量のものであるか、または免疫原性が低い場合、免疫原性担体へのカップリングが推奨されるとも記載されている。本発明の組成物のペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞を、担体にカップリングさせることができる。担体は、アジュバントとは無関係に存在してもよい。担体の機能は、例えば、活性もしくは免疫原性を増大させるため、安定性を付与するため、生物活性を増加させるため、または血清半減期を増加させるために、ペプチド化合物、ペプチド断片、核酸、ベクター、または宿主細胞の分子量を増加させることであってもよい。さらに、担体は、ポリペプチドまたはその断片をT細胞に提示するのを助けることができる。かくして、免疫原性組成物において、ポリペプチドまたはその断片を、以下に記載されるものなどの担体と結合させることができる。
【0120】
担体は、当業者には公知の任意の好適な担体、例えば、タンパク質または樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞であってもよい。担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミンなどの血清タンパク質、免疫グロブリン、またはインスリンもしくはパルミチン酸などのホルモンが挙げられる。あるいは、担体タンパク質は、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドであってもよい。あるいは、担体は、セファロースなどのデキストランであってもよい。担体は、ヒトにとって生理的に許容し得るものであり、安全でなければならない。
【0121】
組成物は、必要に応じて、製薬上許容し得る賦形剤を含んでもよい。賦形剤は、組成物の他の成分と適合するという意味で「許容し得る」ものでなければならず、そのレシピエントにとって有害であってはならない。湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が、賦形剤中に存在してもよい。これらの賦形剤および補助物質は、一般に、組成物を受容する個体において免疫応答を誘導せず、過度の毒性なしに投与することができる薬剤である。製薬上許容し得る賦形剤としては、限定されるものではないが、水、食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノールなどの液体が挙げられる。製薬上許容し得る塩、例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸の塩を、その中に含有させることもできる。製薬上許容し得る賦形剤、ビヒクルおよび補助物質の完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において利用可能である。
【0122】
組成物を、ボーラス投与または連続投与にとって好適な形態で調製、包装、または販売することができる。注射用組成物を、保存剤を含有するアンプルまたは複数用量容器中などの、単位剤形中で調製、包装、または販売することができる。組成物としては、限定されるものではないが、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、エマルジョン、ペースト、および埋込み可能な持続放出性または生分解性製剤が挙げられる。組成物の一実施形態においては、活性成分を、好適なビヒクル(例えば、滅菌された発熱源を含まない水)を用いた再構成のために乾燥(例えば、粉末または顆粒)形態で提供した後、再構成された組成物を投与する。組成物を、滅菌注射用水性または油性懸濁液または溶液の形態で調製、包装、または販売することができる。この懸濁液または溶液を、公知の技術に従って製剤化することができ、それは、活性成分に加えて、本明細書に記載のアジュバント、賦形剤および補助物質などのさらなる成分を含んでもよい。好適な滅菌注射用製剤を、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの、非毒性の非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒を用いて調製することができる。他の許容し得る希釈剤または溶媒としては、限定されるものではないが、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液、および合成モノまたはジグリセリドなどの固定油が挙げられる。
【0123】
有用である他の組成物としては、微結晶形態にある、リポソーム調製物中の、または生分解性ポリマー系の成分として活性成分を含むものが挙げられる。持続放出または埋込みのための組成物は、エマルジョン、イオン交換樹脂、やや溶けにくいポリマー、またはやや溶けにくい塩などの、製薬上許容し得るポリマーまたは疎水性材料を含んでもよい。あるいは、組成物の活性成分を、粒子状担体に封入する、それに吸着させる、またはそれと結合させることができる。好適な粒子状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来するもの、ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド-コ-グリコリド)に由来するPLGマイクロ粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照されたい。他の粒子系およびポリマー、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジン、ならびにこれらの分子のコンジュゲートなどのポリマーを用いることもできる。
【0124】
上記のように、本明細書に開示される組成物、特に、免疫治療組成物は、本明細書に開示される化合物に加えて、少なくとも1種の製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態においては、医薬組成物は、1~99重量%の前記少なくとも1種の製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体と、1~99重量%の本明細書に開示される化合物とを含む。活性成分と、製薬上許容し得るアジュバント、希釈剤、賦形剤および/または担体との合わせた量は、組成物、特に、医薬組成物の100重量%を超えることはできない。
【0125】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示されるただ1つの化合物またはペプチドを、上記で考察された目的のために用いる。
【0126】
いくつかの実施形態においては、本明細書に開示される2つ以上の化合物を、上記で考察された目的のために組み合わせて用いる。
【0127】
本明細書に記載の化合物を含む組成物、特に、免疫治療組成物を、経口、静脈内、局所、腹腔内、経鼻、頬、舌下、もしくは皮下投与のために、または例えば、エアロゾルもしくは空気に懸濁された微細粉末の形態での気道を介する投与のために適合させることができる。したがって、医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、粉末、ナノ粒子、結晶、非定型物質、溶液、経皮パッチまたは坐剤の形態にあってもよい。
【0128】
プロセスのさらなる実施形態は、本明細書の実験セクションに記載され、それぞれ個々のプロセスならびにそれぞれの出発材料は、実施形態の一部を形成し得る実施形態を構成する。
【0129】
上記実施形態は、本明細書に記載の態様(「治療方法」、「組成物」、「医薬としての使用のためのペプチド化合物」または「方法における使用のためのペプチド化合物」のいずれか1つ、ならびに実施形態が本発明のある特定の態様または複数の態様に関することが特定されない限り、本明細書に記載の実施形態のいずれか1つを言うと見るべきである。
【0130】
本明細書に引用される刊行物、特許出願および特許を含む全ての参考文献は、あたかもそれぞれの参考文献が個別的かつ具体的に参照により組み込まれると示され、その全体が本明細書に記載されたのと同程度で参照により本明細書に組み込まれる。
【0131】
全ての見出しおよび小見出しは、便宜上、本明細書で使用されるに過ぎず、いかなる意味でも本発明を限定するものと解釈されるべきではない。
【0132】
その全ての可能な変形における上記要素の任意の組合せが、別途本明細書で指摘されない限り、または別途文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包含される。
【0133】
本発明を説明する文脈で用いられる用語「a」および「an」および「the」および同様の指示対象は、別途本明細書で指摘されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。
【0134】
本明細書における値の範囲の記載は、別途本明細書で指摘されない限り、その範囲内にあるそれぞれ別々の値に個別に言及する簡略化された方法として役立つことが単に意図され、それぞれ別々の値は、あたかもそれが本明細書で個別に記載されたかのように明細書に組み込まれる。別途記述しない限り、本明細書で提供される全ての正確な値は、対応する近似値を代表する(例えば、特定の因子または測定値に関して提供される全ての正確な例示値を、適切な場合、「約」によって修飾される、対応する近似測定値も提供すると考えることができる)。
【0135】
本明細書に記載される全ての方法を、本明細書で別途指摘されない限り、または別途本文によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。
【0136】
本明細書で提供される任意かつ全ての例、または例示的用語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより良好に明らかにし、別途指摘されない限り本発明の範囲に対して制限を課さないことを単に意図するものである。本明細書中の用語は、任意の要素が、同程度に明示的に記述されない限り、本発明の実施にとって必須であることを示すと希釈されるべきではない。
【0137】
本明細書における特許文献の引用および組込みは、便宜上行われるに過ぎず、そのような特許文献の妥当性、特許性および/または法的強制力のいかなる観点も反映しない。
【0138】
ある要素または複数の要素を参照して「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」または「含有する(containing)」などの用語を用いた本発明の任意の態様または実施形態の本明細書における説明は、別途記述されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、その特定の要素または複数の要素「からなる(consists of)」、「本質的にからなる(consists essentially of)」または「実質的に含む(substantially comprises)」本発明の同様の態様または実施形態に対する支援を提供することが意図される(例えば、特定の要素を含むと本明細書で記載される組成物は、別途記述されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、その要素からなる組成物も記載すると解釈されるべきである)。
【0139】
本発明は、適用可能な法律によって許容される最大の程度で、本明細書に提供される態様または特許請求の範囲に記載される主題の全ての改変物および等価物を含む。
以下、本発明の実施形態を示す。
(1)配列番号1のヒトPDL2タンパク質のペプチド断片であって、該断片が最大100アミノ酸長であり、且つ、該ペプチド断片が配列番号1の8~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか又はそれから成る、前記ペプチド断片;又はその製薬上許容し得る塩。
(2)前記ペプチド断片が、10~17アミノ酸、20~30アミノ酸、30~40アミノ酸、又は40~50アミノ酸などの、10~100アミノ酸の範囲の連続する配列を含むか又はそれから成る、(1)記載のペプチド断片。
(3)前記断片が配列番号1のアミノ酸1~3を含まない、(1)又は(2)記載のペプチド断片。
(4)前記連続する配列が、配列番号11、2、4及び12のいずれか1つから選択される1つ以上の配列を含む、(1)~(3)のいずれか1記載のペプチド断片。
(5)前記連続する配列が配列番号11を含む、(1)~(4)のいずれか1記載のペプチド断片。
(6)前記連続する配列が配列番号4を含む、(1)~(4)のいずれか1記載のペプチド断片。
(7)前記ペプチド断片が最大9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30アミノ酸長である、(1)~(6)のいずれか1記載のペプチド断片。
(8)前記ペプチド断片が、単離された免疫原性ペプチド断片である、(1)~(7)のいずれか1記載のペプチド断片。
(9)場合により、担体又はアジュバントなどの製薬上許容し得る添加剤と共に、(1)~(8)のいずれか1記載のペプチド断片を含む組成物。
(10)前記アジュバントが存在し、細菌DNAに基づくアジュバント、油/界面活性剤に基づくアジュバント、ウイルスdsRNAに基づくアジュバント、イミダゾキニリン、モンタニドISAアジュバントから成る群から選択される、(9)記載の組成物。
(11)メラノーマ、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、及び卵巣がんなどのがんの治療における使用のための、(1)~(8)のいずれか1記載のペプチド断片。
(12)前記がんがPDL2の発現を特徴とする、(11)記載のペプチド断片。
(13)がん患者に、有効量の(1)~(8)のいずれか1記載のペプチド断片を投与することを含む、患者におけるがんを治療又は予防する方法。
(14)サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質、遺伝子療法、抗体及び樹状細胞などの、さらなるがん療法の同時的又は連続的投与をさらに含む、(13)記載の方法。
(15)前記さらなるがん療法が、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、ニボルマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペンブロリズマブ、ペメトレキセド、レブリミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンのうちの1つ以上から選択される、(14)記載の方法。
【実施例】
【0140】
本発明を、以下の実施例によってさらに例示するが、これは、保護の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。前記説明および以下の実施例に開示される特徴は、別々に、およびその任意の組合せの両方において、本発明をその多様な形態で実現するための材料であってよい。
【0141】
実験
患者、プロトコール、方法および考察
患者材料
本発明者らは、メラノーマ、腎細胞癌、非ホジキンリンパ腫、および卵巣がんを有する患者に由来する、ならびに健常者に由来する血液試料を収集した。試料を、任意の種類の抗がん療法の終結の少なくとも4週後に収集した。末梢血単核細胞(PMBC)を、Lymphoprep(商標)(Alere AS、カタログ番号1114547)分離を用いて単離し、HLAタイピングし、10%DMSO (Sigma-Aldrich、カタログD5879-100ML)を含むFCS中で凍結した。2人のメラノーマ患者に由来する病変に由来する腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を、高用量のIL-2(6000単位/ml)を用いて拡張した。このプロトコールは、Scientific Ethics Committee for The Capital Region of Denmarkによって認可されたものであり、Declaration of Helsinkiの条項に従って行った。試験への登録の前に、患者からのインフォームドコンセント文書を得た。
【0142】
ペプチド
本発明者らは、オンラインエピトープ予測データベース、SYFPEITHI (www.syfpeithi.de)を用いて、ヒトPD-L2タンパク質中で22個のHLA-A2制限された、9~10アミノ酸長のペプチドを同定した。これらの22個のペプチドのうち、本発明者らは、PD-L2のシグナル配列または膜貫通ドメインに由来する9個を選択し、TAG Copenhagen (Copenhagen、Denmark)によってそれらを合成した。これらのペプチドは、PD-L201 (PD-L2(4-12); LLLMLSLEL)、PD-L204 (PD-L2(231-240); IIAFIFIATV)、PD-L205 (PD-L2(16-25); QIAALFTVTV)、PD-L208 (PD-L2(6-14); LMLSLELQL)、PD-L209 (PD-L2(9-17); SLELQLHQI)、PD-L215 (PD-L2(234-243); FIFIATVIAL)、PD-L216 (PD-L2(11-20); ELQLHQIAAL)、PD-L220 (PD-L2(1-10); MIFLLLMLSL)、およびPD-L222 (PD-L2(226-235); FIPFCIIAFI)であった。本発明者らはまた、21~25アミノ酸を有する2個のペプチド: PD-L2long1 (PD-L2(9-29); SLELQLHQIAALFTVTVPKEL)およびPD-L2long2 (PD-L2(1-25); MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTV)も分析した。HLA-A2高親和性結合エピトープであるHIV-1 pol476-484 (ILKEPVHGV;配列番号26)を、無関係の対照として用いた。PD-L101 (PDL1(15-23); LLNAFTVTV; 配列番号27)と命名された、以前に記載されたPD-L1ペプチドを、交差反応性実験において用いた(1)。全てのペプチドを、DMSOまたは滅菌水に溶解した後、実験を行った。
【0143】
ELISPOTアッセイ
IFN-γおよびTNF-αELISPOT技術を、以前に記載されたように実施した(3)。本発明者らは、がん免疫療法免疫誘導プログラム(CIP; http://cimt.eu/cimt/files/dl/cip_guidelines.pdf)により提供された指針に従ってアッセイを実施した。別途記述しない限り、PBMCを、分析の前にペプチドを用いてin vitroで1回刺激した後、アッセイの感度を拡大させた。T細胞反応性を測定するために、ニトロセルロース底96ウェルプレート(MultiScreen MSIPN4W; Millipore)を、室温で一晩、または4℃で2日間、関連抗体でコーティングした。ウェルを洗浄し、X-vivo培地で2時間ブロックした。PBMCを、3つのウェルに異なる細胞濃度で、PD-L2ペプチドまたは対照ペプチドと共に添加し、一晩インキュベートした。次の日、ウェルを洗浄し、関連するビオチン化二次抗体(Mabtech)を添加した後、アビジン-酵素コンジュゲート(Ap-Avidin; Calbiochem/Invitrogen Life Technologies)を添加した。最後に、本発明者らは、可視化のために酵素基質であるNBT/BCIP(Invitrogen Life Technologies)を添加した。発色させたELISPOTプレート上のスポットを、Immunospotソフトウェア、v5.1を含むCTL ImmunoSpot S6 Ultimate-V分析装置上で分析した。
【0144】
PD-L2特異的T細胞培養物の生成
メラノーマを有する患者に由来するPBMCを、PD-L205 (PD-L2(16-25))ペプチド(PBL:DC比10:1)でパルスした、照射された(30Gy)自己DCを用いて刺激し、IL-7(40U/ml)を添加した(PeproTech、London、UK)。次の日、IL-12(20U/ml)を添加した(PeproTech、London、UK)。週の間隔で、本発明者らは、PDL205 (PD-L2(16-25))をロードした照射された自己DCを用いて、3回の同一の刺激を実施し、次の日にIL-12(20U/ml)を添加した。次いで、週の間隔で、本発明者らはPDL205 (PD-L2(16-25))をロードした照射された自己PBL(培養物:PBL比1:1)で培養物をさらに3回刺激したが、次の日、本発明者らは、IL-2(120U/ml;Proleukin、Novartis)を添加した。
【0145】
抗CD137-PE抗体(BD Biosciences)で染色することにより、またはTNF-α富化および検出抗体を用いることにより(Miltenyi Biotecによる手順に従う)、培養物を特異的T細胞について富化した。次に、本発明者らは、MACマイクロビーズカラムを用いる磁気細胞単離(Miltenyi Biotecによる手順に従う)を実施した。選別された細胞を、0.6μgの抗CD3抗体(eBioscience、クローンOKT3)および高用量のIL-2(Proleukin、Novartis)と共にインキュベートすることにより、急速に拡張させた。
【0146】
細胞内サイトカイン染色
サイトカインを産生した細胞サブ集団を検出するために、本発明者らは、PD-L1特異的T細胞培養物(以前に記載されている(1))およびPD-L2特異的T細胞培養物を、5μg/mlの関連または非関連ペプチドで刺激し、細胞を37℃で5時間、5%CO2と共にインキュベートした。インキュベーションの1時間後、本発明者らは、1:200に希釈されたGolgiPlug (BD)を添加した。4時間後、細部をPBSで2回洗浄し、表面マーカーに特異的な蛍光色素コンジュゲート化抗体(CD3-APC-H7、CD4-PerCP/FITC、CD8-Pacific Blue/PerCP、およびHorizon Fixable Viability Stain 510、全てBDから)で染色した。製造業者の指示書に従って、細胞を洗浄し、固定/透過処理および透過処理バッファー(eBioscience)を用いて、固定し、透過処理した。続いて、細胞を蛍光色素コンジュゲート化抗体で染色して、細胞内サイトカインを可視化した。以下の抗体-蛍光色素の組合せを用いた:IFN-γ-PE-CY7/APC(eBioscience)およびTNFα-APC/BV421(eBioscience)。関連するアイソタイプ対照を用いて、正確な補償を可能にし、抗体特異性を確認した。染色された細胞を、BD FACSCanto IIフローサイトメトリーを用いて分析した。分析を、BD FACSDiva Softwareを用いて実施した。
【0147】
細胞傷害性アッセイ
PD-L1特異的およびPD-L2特異的T細胞媒介性細胞傷害性を、以前に記載された(4)、従来の51クロム放出アッセイを用いて測定した。標的細胞は、HIV-1 pol476-484 (ILKEPVHGV)、PD-L101 (PD-L1(15-23))、またはPD-L205 (PD-L2(16-25))をパルスした、TAP欠損T2細胞であった。
【0148】
DCのsiRNA媒介性PD-L2サイレンシング
PD-L2の標的化されたサイレンシングのための全てのSilencer(登録商標)Select siRNA二本鎖および培地のGC含量のためのSilencer(登録商標)Select siRNA陰性対照二本鎖を、Life TechnologyによるAmbion(登録商標)から取得した。
【0149】
PD-L2 siRNA二本鎖は、3つの転写物: 1. (センス) 5'-CAUCCUAAAGGUUCCAGAAtt-3' (配列番号28)、(アンチセンス) 5'-UU CUGGAACCUUUAGGAUGtg3' (配列番号29) - (siRNA ID#s37285)、2. (センス)5'-CCUAAGGAACUGUACAUAAtt -3' (配列番号30)、(アンチセンス) 5'-UUAUGUACAGUUCCUUAGGga 3' (配列番号31) - (siRNA ID#s37286)および3. (センス) 5'-GAAAACAACUCUGUCAAAAtt-3' (配列番号32)、(アンチセンス) 5'-UUUUGACAGAGUUGUUUUCtt 3' (配列番号33) - (siRNA ID#s37287)からなっていた。siRNA二本鎖を、RNaseを含まない水に溶解して、100μMの最終濃度にした後、-80℃で保存した。
【0150】
自己CD14+単球を、MACS CD14 MicroBeads (Miltenyi Biotech)を用いて富化した。富化された単球を、CellGro (CellGenix)を用いて培養し、GM-CSF(1000U/ml)およびIL-4(250U/ml)(両方ともPeproTech)を添加した。次の日、細胞を収獲し、PD-L2 siRNAまたは陰性対照siRNAをトランスフェクトした。トランスフェクション手順およびエレクトロポレーションパラメータを、以前に記載されたように使用した(13)。エレクトロポレーションのために、細胞を、200μlのOpti-MEM培地(Invitrogen)あたり2x106個の濃度で再懸濁した。細胞を氷上で保持し、0.25nmolの各PD-L2 siRNA二本鎖を添加した。続いて、細胞を2mmのキュベットに移し、BTX 830矩形波エレクトロポレーター(Harvard Apparatus、Holliston MA、USA)を用いて、250ボルトで2ミリ秒にわたる単一パルスを用いてエレクトロポレーションを行った。
【0151】
エレクトロポレーションの直後、単球を、DC成熟カクテル: IL-β(1,000U/mL)、IL-6(1,000U/mL)、TNF-a(1,000U/mL)、およびPGE2(1mg/mL)(全てPeproTechから)を含有する予め加温したCellGro培地に移した。48時間のインキュベーション後、トランスフェクトされた成熟DCを、実験分析のために用いた。PD-L2 siRNAおよび陰性対照siRNAをトランスフェクトされたDC上でのPD-L2の表面発現を、抗ヒトPD-L2-PE (BD biosciences)を用いて分析した。トランスフェクトされた自己DCに対するPD-L2特異的T細胞培養物の機能性を、上記のICSおよびELISPOTアッセイを用いて分析した。ICSのために、T細胞培養物を、PD-L2 siRNAまたは陰性対照をトランスフェクトされたDCを用いて、1:5の比で5時間刺激した。Elispotアッセイにおいては、T細胞培養物を、1:5の比で24時間、DCで刺激した。
【0152】
統計分析
ELISPOT応答を、CIPおよびMoodieら(5)によって提供された指針および推奨に基づいて定義した。ノンパラメトリックな分布形によらない再サンプリング(DFR)およびより保存的なDFRx2統計検定を、抗原刺激ウェルと陰性対照ウェルとの形式比較のために用いた。ELISPOTアッセイを、少なくとも3回行った。
【0153】
結果
PD-L2に対する天然のT細胞反応性
PD-L2タンパク質のアミノ酸配列を、「SYFPEITHI」データベース(15)を用いてスクリーニングして、最良のHLA-A2ペプチドエピトープを予測した。アルゴリズムは、22~29の範囲の予測スコアに基づいて、トップ候補である22個のペプチドを同定した。本発明者らは、PD-L2タンパク質中でのその位置に基づいて、合成およびさらなる試験のために9個のペプチドを選択した。少なくとも一部のペプチドは、シグナルペプチドまたは膜貫通ドメイン中に位置する必要があった。これらの9個のペプチドを、IFN-γ ELISPOT in vitroアッセイと共に用いて、がんを有する異なるHLA-A2+患者に由来するPBMC中での特異的T細胞応答の存在について試験した。本発明者らは、PD-L215 (PD-L2(234-243))、特に、PD-L201 (PD-L2(4-12))およびPD-L205 (PD-L2(16-25))に対する免疫応答を検出した(
図1)。
【0154】
次に、本発明者らは、IFN-γとTNF-αの両方のELISPOTアッセイを用いて、PD-L201 (PD-L2(4-12))およびPD-L205 (PD-L2(16-25))に対する免疫応答について5個の選択されたPBMCを検査した(
図2Aおよび2B)。さらに、IFN-γ応答および1つのTNF-α応答が、DFRx2規則に従って統計的に有意であった(
図2Aおよび2B)。次に、本発明者らは、IFN-γ ELISPOTアッセイを用いて、両方のPD-L2由来エピトープに対する免疫応答について健康なドナーに由来するPBMCを試験した。本発明者らは、健康な個体において、PD-L205 (PD-L2(16-25))に対する強力な免疫応答、およびPD-L201 (PD-L2(4-12))に対するより弱い応答を検出した(
図2C)。一般に、PD-L205 (PD-L2(16-25))は、免疫応答を惹起するための主要なエピトープであると考えられた。次に、本発明者らは、INF-γ ELISPOTアッセイを用いて、PD-L205 (PD-L2(16-25))に対する応答について、ex vivoで直接的に(in vitroでの事前のペプチド刺激なしに)、4人のドナーに由来するPBMCを試験した(
図2D)。これらのドナーの1人に由来するPBMCは、DFR規則に従って、統計的に有意であるex vivoでのIFN-γ応答を示した(
図2D)。
【0155】
最後に、自発的な、PD-L2特異的CD4+ T細胞応答について試験するために、本発明者らは、2個のより長いPD-L2ペプチドを合成した。これらのうちの一方、PD-L2long1 (PD-L2(9-29); SLELQLHQIAALFTVTVPKEL)は、PD-L205 (PD-L2(16-25))エピトープを含んでいた;他方のPD-L2long2 (PD-L2(1-25); MIFLLLMLSLELQLHQIAALFTVTV)は、PD-L201 (PD-L2(4-12))エピトープと、PD-L205 (PD-L2(16-25))エピトープとの両方を含んでいた。本発明者らは、IFN-γ ELISPOTアッセイを用いて、これらの長いペプチドに対するCD4+ T細胞応答の存在について、がんを有する11人の患者および11人の健康なドナーに由来するPBMCを試験した。本発明者らは、頻繁ではあるが、中程度の応答を検出した(
図3A)。次に、本発明者らは、4人の非ホジキンリンパ腫患者からPBMCを単離し、in vitro ELISPOTアッセイにおいて、PD-L2long2 (PD-L2(1-25))に対するIFN-γ応答についてスクリーニングした。4人の患者全てが、DFR規則に従って、統計的に有意である応答を示した(
図3Bおよび3C)。2人のメラノーマ患者に由来する腫瘍浸潤Tリンパ球も、細胞内サイトカイン染色を用いることによって測定した場合、PD-L2long2 (PD-L2(1-25))に対するIFN-γ CD4+ T細胞応答を惹起した(
図3D)。
【0156】
PD-L2特異的T細胞は炎症性サイトカインを放出するエフェクター細胞であった
PD-L2によって惹起される免疫応答を特徴付けるために、本発明者らは、PD-L205特異的T細胞を単離した。簡単に述べると、メラノーマ(AA26)を有する患者から単離されたPBMCを、in vitroで拡張させた。次いで、PBMCを、PD-L205をパルスした照射された自己DCで刺激した。特異的T細胞を、抗CD137抗体(PD-L2 T細胞培養物A)またはTNF-α富化方法(PD-L2 T細胞培養物B)を用いる染色によって単離した。これらの特異的T細胞を培養し、高用量IL-2を用いて拡張した後、細胞内サイトカイン染色(
図4Aおよび4B)、ELISPOT(
図4C)および細胞傷害性アッセイ(
図4D)を用いてPD-L205 (PD-L2(16-25))に対する特異性について分析した。本発明者らは、PD-L2 T細胞培養物Aに由来する、それぞれ、約4.5%および1%のCD4+およびCD8+ T細胞;ならびにPD-L2 T細胞培養物Bに由来する、それぞれ、約7%および2%のCD4+およびCD8+ T細胞において、PD-L205 (PD-L2(16-25))に応答したTNF-α放出を検出した(
図4A)。さらに、本発明者らは、それぞれ、PD-L2 T細胞培養物AおよびBに由来する約3%および2.8%のCD4+ T細胞において、自己DCに応答したTNF-α放出を検出した(
図4B)。さらに、IFN-γおよびTNF-α T細胞応答が、両方のPD-L2特異的培養物においてPD-L205 (PD-L2(16-25))ペプチドおよび自己DCに対して観察された(
図4C)。両方の拡張された培養物はまた、従来の51クロム放出アッセイにおいてPDL205 (PD-L2(16-25))をパルスしたT2細胞を認識し、溶解したが、それらは無関係のHIVペプチド(HIV-1 pol476-484)をパルスしたT2細胞を認識しなかった(
図4D)。
【0157】
PD-L2を発現するDCに応答するPD-L2依存的反応性
PD-L2を、免疫細胞中で誘導することができる。かくして、次の非常により重要なステップとして、本発明者らは、PD-L2を発現するDCがPD-L2反応性T細胞によっても認識されるかどうかの疑問に対処した。この見解を試験するために、本発明者らは、自己DCを生成し、これらにPD-L2 siRNAをトランスフェクトした。本発明者らは最初に、成熟したsiRNAをトランスフェクトされたDC上でのPD-L2タンパク質発現を検査した(
図5A)。PD-L2発現は、エレクトロポレーションの48時間後に、陰性対照siRNAと比較してPD-L2 siRNAをトランスフェクトされたDC上で下方調節された(
図5A)。次に、本発明者らは、細胞内サイトカイン染色(
図5B)およびELISPOTアッセイ(
図5C)を用いて、トランスフェクトされたDCに応答するPD-L2 T細胞培養物の反応性を検査した。両方のPD-L2 T細胞培養物が、陰性対照siRNAと比較してPD-L2 siRNAをトランスフェクトされたDCに対するCD4+およびCD8+ T細胞サイトカイン応答の低下を示した(
図5B)。同様に、両方の培養物において、TNF-αを放出するT細胞の数は、TNF-α ELISPOTアッセイにおいて、陰性対照siRNAと比較してPD-L2 siRNAをトランスフェクトされたDCに応答して有意に少なかった(
図5C)。これらの結果により、標的細胞の反応性がPD-L2発現に依存することが確認された。
【0158】
PD-L1特異的およびPD-L2特異的T細胞は交差反応しなかった
T細胞応答を惹起する際の主要なPD-L2エピトープは、PD-L205 (PD-L2(16-25); QIAALFTVTV)であった。興味深いことに、本発明者らは、強力なT細胞応答を惹起する、PD-L1(PD-L101 (PDL1(15-23)と呼ばれる; LLNAFTVTV) (1)、(2)、(6)中の別のHLA-A2制限エピトープを以前に記載した。これらの2つの主要なT細胞エピトープは、PD-L1とPD-L2タンパク質中でほぼ同じ位置に位置していた(
図6A)。さらに、これらの2つの主要なエピトープは、PD-L1とPD-L2との配列類似性のため、5個のアミノ酸(FTVTV; 配列番号34)を共有していた(
図6A)。かくして、本発明者らは、PD-L205(PD-L2(16-25))特異的T細胞とPD-L101(PDL1(15-23))特異的T細胞との潜在的な交差反応性について試験した。
【0159】
最初に、本発明者らは、PD-L205 (PD-L2(16-25))に応答する、がんを有する患者からPBMCを単離した。本発明者らが、これらのPBMCがPD-L101 (PDL1(15-23))に対する自発的なT細胞応答を示すかどうかを検査した時、本発明者らは、IFN-γ ELISPOT試験を用いていかなる免疫応答も検出しなかった(
図6B)。次に、本発明者らは、PD-L101特異的T細胞培養物の潜在的な交差反応性を検査した(1)。本発明者らは、標的細胞としてTAP欠損T2細胞を用いる標準的な51Cr放出アッセイを用いた。標的細胞に、PD-L101 (PDL1(15-23))、PD-L205 (PD-L2(16-25))、またはHIVに由来する無関係の対照ペプチド (HIV-1 pol476-484)をロードした。
図6Cは、PD-L101特異的T細胞のみが、PD-L101 (PDL1(15-23))をパルスしたT2細胞を溶解し、PD-L205 (PD-L2(15-25))、または無関係のHIVペプチドをパルスしたT2細胞に対する細胞傷害性が観察されなかったことを示す。次に、本発明者らは、細胞内サイトカイン染色アッセイを行って、PD-L101 (PDL1(15-23))、PD-L205 (PD-L2(16-25))、または対照HIVペプチドに応答する、PD-L101特異的CD8+T細胞からのサイトカイン放出(IFN-γおよびTNF-α)を分析した(
図5C)。再度、本発明者らは、PD-L101特異的T細胞が、PD-L101 (PDL1(15-23))に応答してのみサイトカインを放出し、PD-L205(PD-L2(16-25))または無関係のHIVペプチドに応答してサイトカインを放出しないことを見出した(
図6D)。
【0160】
最後に、本発明者らは、PD-L205反応性T細胞は、PD-L101 (PDL1(15-23))ではなく、PD-L205 (PD-L2(16-25))を特異的に認識することができるかどうかを検査した。本発明者らは、標的細胞としてのTAP欠損T2細胞を用いる標準的な51Cr放出アッセイを用いて、2つの確立されたPD-L205反応性T細胞培養物を検査した。標的細胞に、PD-L205 (PD-L2(16-25))、PD-L101 (PDL1(15-23))、または対照HIVペプチド(HIV-1 pol476-484)をロードした。PD-L205特異的T細胞は、実際に、PD-L205 (PD-L2(16-25))をパルスしたT2細胞を認識することができたが、それらは、PD-L101 (PDL1(15-23))、または対照HIVペプチドをパルスしたT2細胞を殺傷しなかった(
図6E)。
【0161】
考察
本研究において、PD-L2を、特異的T細胞のための標的として検査し、PD-L2特異的T細胞がNHLを含む様々ながんを有する患者に自発的に存在することが決定された。一般に、PD-L205ペプチド(配列番号4)によって、最も強力な応答が惹起された。驚くべきことに、本発明者らは、CD8+とCD4+の両方のT細胞が、そのHLA-A2ペプチド結合モチーフについて選択された、PD-L205 (PD-L2(16-25))中の最小エピトープを特異的に認識することを観察した。興味深いことに、PD-L205 (PD-L2(16-25))エピトープは、PD-L1中で以前に同定された主なHLA-A2制限エピトープと類似していた。重要なことに、PD-L1およびPD-L2特異的T細胞は交差反応しなかった;したがって、それらは異なるT細胞抗原と考えるべきである。この結果はさらに、PD-L2特異的T細胞がPD-L2+標的細胞を特異的に認識することを示していた。したがって、PD-L2特異的T細胞は、そのPD-L2発現レベルに応答して標的細胞を認識する。本発明者らはしたがって、PD-L2に対するT細胞応答の誘導/ブースト(例えば、ワクチン接種による)が、NHLなどの、血液悪性腫瘍を治療するための魅力的な戦略であると提言する。これらの知見は、PD-L2に基づくワクチン接種の効能を評価するための臨床試験を正当化する。結果として、出願人は、Herleve Hospital (Denmark)でヒトにおける最初のPD-L2ワクチン研究を現在開始している。その研究では、本研究で記載される長いPD-L2エピトープを第2選択の化学療法後、寛解にあるNHLを有する高リスク患者に投与する。この手法は、PD1/PDL経路を標的とするモノクローナル抗体の使用からの大きな差異である。実際、PD-L2の直接的な免疫調節効果の低下に加えて、これらのPD-L2特異的T細胞はまた、PD-L2+標的細胞によって媒介される免疫抑制の他の経路を阻害することができる(7)。
【0162】
PD-L2特異的T細胞は、IFN-γとTNF-αの両方を放出することが証明された。注目すべきことに、精査により、この抗原の免疫原性のex vivoで直接的に基礎となるPD-L2特異的T細胞応答が見出された(8)。したがって、PD-L2に基づくワクチンを、他の形態の免疫療法と、競合的というよりはむしろ、相補的なものであると見るべきである。例えば、PD-L2ワクチン接種と、チェックポイント遮断剤との組合せは、有効な療法であると考えられる。チェックポイント遮断は、腫瘍部位でのその阻害を防止することによって、ワクチンにより活性化されたPD-L2特異的T細胞をブーストすることができる。同様に、炎症性サイトカインの放出のため、チェックポイント分子のワクチンにより誘導される上方調節も、チェックポイント阻害剤によって遮断される。最後に、T細胞が、PD-L2のシグナルペプチド領域に位置するPD-L2由来エピトープと自発的に反応することが見出された。したがって、T細胞によって認識されるPD-L2エピトープは、抗PDL2遮断抗体によって認識されるいかなるエピトープとも異なる。一般に、がんワクチンは、有意な毒性および二次悪性腫瘍を誘導することなく最小の残留疾患を除去するための方法である。しかしながら、現在まで、それらは患者転帰の有意な改善を示すことには大まかに言って失敗している(9)。この失敗はおそらく、誘導される免疫細胞の機能を抑制する悪性細胞の能力を反映するものである。現在のがんワクチン戦略へのPD-L2エピトープの付加は、非常に有益である可能性があり、実現が容易であろう。さらに、腫瘍細胞と違って、腫瘍微小環境中の間質細胞型は、遺伝的に安定であり、かくして、それらは耐性および腫瘍再発のリスクが低い魅力的な治療標的である。
【0163】
結論として、本研究は、がんを有する患者における天然に存在する、PD-L2特異的T細胞を記載した。かくして、PD-L2は、免疫治療戦略のための非常にアクセスしやすい標的として役立ち得る。
【0164】
【0165】
【配列表】