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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】生産システム
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/00 20060101AFI20230712BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230712BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20230712BHJP
   B65H 75/48 20060101ALI20230712BHJP
   B65H 75/38 20060101ALI20230712BHJP
   B65H 75/42 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05D1/00 Z
G05D1/02 P
B65H75/48 Z
B65H75/38 K
B65H75/42 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020056164
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158193
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】寺田 和広
【審査官】内田 茉李
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-178861(JP,A)
【文献】特開2017-132002(JP,A)
【文献】特開平9-2253(JP,A)
【文献】特開2011-79625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00
G05D 1/00
G05D 1/02
B65H 75/48
B65H 75/38
B65H 75/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業ステーションと、当該作業ステーションを含む所定のエリア内を自走する自走式ロボットとを含む、生産システムであって、
前記自走式ロボットは、空気圧を動力源として所定の作業を行う作業装置と、前記空気圧の外部供給を受けるための第1ポート部とを備え、
前記作業ステーションは、前記第1ポート部に対して係脱可能に設けられ且つ当該第1ポートとの連結状態において前記自走式ロボットに前記空気圧を供給する第2ポート部とを備え、
前記自走式ロボット又は前記作業ステーションには、前記第1ポート部と前記第2ポート部との連結状態を維持しながら、作業ステーションと自走式ロボットとの相対位置の変更を許容する相対位置可変部材が備えられている、ことを特徴とする生産システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産システムにおいて、
前記相対位置可変部材は、前記自走式ロボット又は前記作業ステーションに設けられた伸縮可能なホース部材を含む、ことを特徴とする生産システム。
【請求項3】
請求項2に記載の生産システムにおいて、
前記相対位置可変部材は、前記ホース部材が巻回されるリールと、このリールをホース巻取り方向に回転付勢する付勢部材とを含み、
前記ホース部材は、前記リールからの引き出し及び前記リールによる巻取りにより伸縮可能となっている、ことを特徴とする生産システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の生産システムにおいて、
前記自走式ロボットは、前記空気圧を蓄える空気圧タンクを備えている、ことを特徴とする生産システム。
【請求項5】
請求項4に記載の生産システムにおいて、
前記自走式ロボットは、前記空気圧を生成するための空気圧生成装置を備えている、ことを特徴とする生産システム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の生産システムにおいて、
前記作業ステーションに対する自走式ロボットの位置を予め定められた範囲内に拘束する拘束部材を備える、ことを特徴とする生産システム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の生産システムにおいて、
前記自走式ロボットの駆動を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記作業ステーションに対する前記自走式ロボットの相対位置が、予め定められた範囲内となるように前記自走式ロボットを駆動制御する、ことを特徴とする生産システム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の生産システムにおいて、
前記作業ステーションは、部品実装基板を生産するための生産設備であり、
前記作業装置は、前記生産設備における部品実装基板の生産に付随する支援作業を行うものである、ことを特徴とする生産システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧を駆動源として作業を行う自走式ロボットを備えた生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の製造設備(作業ステーション)からなる生産ラインに沿って自走しながら、各作業ステーションに対して資材等を搬送するAGV(無人搬送車)を備えた生産システムが知られている。AGVは、自走式ロボットの一例である。
【0003】
この種の生産システムでは、圧縮エア(空気圧)を動力源とする機構、例えば資材の積み下ろし機構がAGVに搭載されることがある。これは、エアを動力源とする機構は、比較的小型で大きな作動力を得ることが出来き、また、防爆の観点からも好ましいというのが主な理由である。
【0004】
しかし、エアは貯蔵できるエネルギー密度が電池等に比べて格段に小さく、そのため、エア補給ステーションに頻繁にAGVを立ち寄らせてエアを補給する必要があった。近年では、このような不都合を解消すべく、例えば特許文献1に開示されているように、各作業ステーションにエアの補給設備を設けておき、作業ステーションでの停止中、AGVがエアの補給を受けながら作業を行えるようにした生産システムも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-132002号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の生産システムでは、AGVは、補給設備の定められた位置に固定された状態でエアの補給を受ける。そのため、エアの補給を受けている間はAGVを移動させることができず、AGVの作業エリアが著しく制限される。これを補うために、AGVに搭載されるロボットアームなどにより広い可動範囲が求められる結果、AGVが大型化するといった課題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、空気圧(正圧又は負圧)を動力源として作業を行う作業装置が搭載された自走式ロボットを備える生産システムにおいて、作業ステーションにおいて空気圧の供給を受けながらも自走式ロボットの作業位置の自由度を高めることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一局面に係る生産システムは、作業ステーションと、当該作業ステーションを含む所定のエリア内を自走する自走式ロボットとを含む、生産システムであって、前記自走式ロボットは、空気圧を動力源として所定の作業を行う作業装置と、前記空気圧の外部供給を受けるための第1ポート部とを備え、前記作業ステーションは、前記第1ポート部に対して係脱可能に設けられ且つ当該第1ポートとの連結状態において前記自走式ロボットに前記空気圧を供給する第2ポート部とを備え、前記自走式ロボット又は前記作業ステーションには、前記第1ポート部と前記第2ポート部との連結状態を維持しながら、作業ステーションと自走式ロボットとの相対位置の変更を許容する相対位置可変部材が備えられているものである。
【0009】
この生産システムによれば、第1ポートと第2ポートを連結させることにより、自走式ロボットは、作業ステーションから空気圧の供給を受けながら作業を実施することが可能となる。しかも、相対位置可変部材が備えられているので、自走式ロボットは、空気圧の供給を受けながらも作業ステーションに対する相対位置を自由に変更することが可能となる。従って、この生産システムによれば、作業ステーションにおいて空気圧の供給を受けながらも自走式ロボットの作業位置の自由度を高めることが可能となる。なお、空気圧とは「正圧」及び「負圧」の双方を含む概念である。
【0010】
上記生産ステムにおいて、前記相対位置可変部材は、前記自走式ロボット又は前記作業ステーションに設けられた伸縮可能なホース部材を含む。
【0011】
この構成によれば、ホース部材が伸縮することにより、作業ステーションと自走式ロボットとの相対位置の変更が許容される。
【0012】
この場合、例えば前記相対位置可変部材は、前記ホース部材が巻回されるリールと、このリールをホース巻取り方向に回転付勢する付勢部材とを含み、前記ホース部材は、前記リールからの引き出し及び前記リールによる巻取りにより伸縮可能となっていてもよい。
【0013】
この構成によれば、作業ステーションと自走式ロボットとを繋ぐホース部材が常に引っ張られてその引き出し長さが可及的に短くなる。そのため、例えば、ホース部材が弛んで自走式ロボットの走行の邪魔になることを回避できる。
【0014】
上記の生産システムにおいて、前記自走式ロボットは、前記空気圧を蓄える空気圧タンクを備えているのが好適である。
【0015】
この構成によれば、自走式ロボット自体にある程度空気圧を溜めておくことが可能となるので、一時的なトラブルにより作業ステーションからの空気圧供給が滞った場合や、自走式ロボットのメンテナンスが作業ステーションとは異なる場所で行われるような場合でも、作業装置を難なく作動させることが可能となる。
【0016】
この場合、前記自走式ロボットは、前記空気圧を生成するための空気圧生成装置を備えているのがより好適である。
【0017】
この構成によれば、作業ステーションから空気圧の供給を受けることなく、自走式ロボット単体で作業装置を作動させることが可能となる。
【0018】
なお、上記の生産システムにおいては、前記作業ステーションに対する自走式ロボットの位置を予め定められた範囲内に拘束する拘束部材を備えるのが好適である。また、上記の生産システムにおいては、前記自走式ロボットの駆動を制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、前記作業ステーションに対する前記自走式ロボットの相対位置が、予め定められた範囲内となるように前記自走式ロボットを駆動制御するものであってもよい。
【0019】
これらの構成によれば、第1ポート部と第2ポート部とを連結した状態で空気圧を供給可能な範囲を超えて自走式ロボットが移動し、正常な空気圧供給が妨げられることを回避することが可能となる。
【0020】
なお、上記生産システムのより具体的な構成として、例えば、前記作業ステーションは、部品実装基板を生産するための生産設備であり、前記作業装置は、前記生産設備における部品実装基板の生産に付随する支援作業を行うものである。
【0021】
この構成によれば、自走式ロボットは、部品実装基板を生産するための生産設備から空気圧の供給を受けながらも、当該生産設備に対する相対位置を自由に変えながら前記支援作業を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、空気圧(正圧又は負圧)を動力源として作業を行う作業装置が搭載された自走式ロボットを備える生産システムにおいて、作業ステーションにおいて空気圧の供給を受けながらも、自走式ロボットの作業位置の自由度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る部品実装システム(生産システムの一例)の構成を概略的に示す図である。
図2】作業管理システムの構成を示すブロック図である。
図3】実装機の構成を示す平面図である。
図4】テープフィーダの構成を概略的に示す側面図(一部断面図)である。
図5】AGVの構成を示す模式図である。
図6】AGVとこれに搭載されたテープ回収装置を示す概略図である。
図7】AGV及び実装機の各ポート部の構造を示す断面図である。
図8】AGV及び実装機のポート部同士の連結状態を示す断面図である。
図9】AGV及び実装機のポート部同士の連結状態を示す断面図である。
図10】テープ回収作業の動作を説明するための実装機及びAGVの平面図である。
図11】変形例に係るAGVを示す模式図である。
図12】変形例に係る実装機及びAGVの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る部品実装システム(本発明の「生産システム」の一例)について図面に基づいて説明する。
【0025】
[部品実装システムの全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る部品実装システムS0の構成を概略的に示す図である。部品実装システムS0は、作業管理システムS1と、実装機1を複数備えた実装ラインS2と、部品を搬送する無人搬送車であるAGV(Automated Guided Vehicle)30とを含む。実装ラインS2は、複数台の実装機1が一列に配列され、所要の部品を基板に搭載して部品実装基板を生産するラインである。作業管理システムS1は、実装ラインS2において、各実装機1に対して部品(後述の部品収納テープ3)の補給や、後記テープフィーダ2で発生する廃棄テープ(カバーテープ3b)の回収など、部品実装基板の生産に付随する作業(支援作業)を管理するシステムである。
【0026】
[実装機1の構成]
まず、図3を参照して実装機1の構成を説明する。図3は、実装機1の構成を示す平面図である。なお、図中には方向関係を明確にするためにXYZ直角座標軸を示している。X方向は水平面と平行な方向であり、Y方向は水平面上でX方向と直交する方向であり、Z方向はX、Y両方向に直交する方向、すなわち上下方向である。
【0027】
実装機1は、プリント配線基板等の基板Pに部品を搭載して部品実装基板を生産する生産設備である。実装機1は、ベース部11、一対のコンベア12、移動フレーム13、ヘッドユニット14、Y軸駆動機構15、X軸駆動機構16、部品供給部20A、20B、20C、20Dを備えている。
【0028】
ベース部11は、実装機1を構成する各部が載置される矩形の基台である。一対のコンベア12は、基板Pを搬送するコンベアであって、ベース部11上にX方向に延びるように配設されている。コンベア12は、基板Pを+X側から実装機1の機内に搬入し、所定の作業位置(図3に示す基板Pの位置)まで-X側へ搬送して一旦停止させる。この作業位置において、部品が基板Pに実装される。実装作業後、コンベア12は基板Pをさらに-X側へ搬送し、実装機1の機外へ搬出する。
【0029】
移動フレーム13は、X方向に延びるフレームであって、Y方向に移動可能にベース部11に支持されている。ヘッドユニット14は、X方向に移動可能に、移動フレーム13に搭載されている。すなわち、ヘッドユニット14は、移動フレーム13の移動に伴ってY方向に移動可能であり、且つ、移動フレーム13に沿ってX方向に移動可能である。ヘッドユニット14は、基板Pに搭載する部品を吸着して保持する複数本のヘッド14Hを備える。ヘッド14Hは、後述する部品取出位置HT(図4)において部品を吸着保持し、基板P上に部品を移動すると共に当該基板Pの所定の搭載位置に前記部品を実装する。
【0030】
Y軸駆動機構15は、ベース部11の+X側及び-X側の端部に一対で配設され、移動フレーム13をY方向に移動させる機構である。Y軸駆動機構15は、例えばY方向に延びるボールねじ軸と、このボールねじ軸を回転駆動する駆動モータと、移動フレーム13に配設されて前記ボールねじ軸と螺合するボールナットと、を含んで構成される。X軸駆動機構16は、移動フレーム13に配設され、ヘッドユニット14を移動フレーム13に沿ってX方向に移動させる機構である。X軸駆動機構16は、Y軸駆動機構15と同様に、例えば、X方向に延びるボールねじ軸、駆動モータ及びボールナットを含んで構成される。
【0031】
部品供給部20A~20Dは、基板Pに実装される部品を供給する。コンベア12を挟んで、ベース部11の-Y側の領域に2つの部品供給部20A、20Bが、+Y側の領域に2つの部品供給部20C、20Dが各々配置されている。図3では、各部品供給部20A~20Dには、X方向に並列に配列された複数のテープフィーダ2が装着されている。
【0032】
図4は、部品供給部20Aに装着されたテープフィーダ2の構成を概略的に示す側面図である。テープフィーダ2は、部品収納テープ3を担体として、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の小片状のチップ部品や集積回路部品(IC)等、この部品収納テープ3に収納されている部品を所定の部品取出位置HTへ供給する。
【0033】
部品収納テープ3は、テープ本体3aとカバーテープ3bとで構成された長尺の媒体である。テープ本体3aには、上部に開口した多数の部品収納凹部がその長手方向に亘って一定間隔で形成されており、各部品収納凹部に部品が収納されている。テープ本体3aの上面には、カバーテープが貼着されており、これにより各部品収納凹部がカバーテープ3bにより閉鎖されている。
【0034】
部品収納テープ3は、図外のリールに巻回された状態で部品供給部20Aの下方に配置されており、このリールからテープフィーダ2に引き出されている。テープフィーダ2には、部品収納テープ3に噛合するスプロケット23が設けられている。このスプロケット23がモータ22で駆動されることにより、部品収納テープ3がフィーダ前端部(同図では+Y側の端部)の部品取出位置HTに送り出される。
【0035】
部品収納テープ3のうち、カバーテープ3bは、部品取出位置HTの手間でテープ本体3aから剥離され、折返し部24で折り返されて一対の引取りギア25a、2bの間に案内されている。これら一対の引取りギア25a、25bは、前記スプロケット23と同期するようにモータ26で駆動される。これにより、リールから部品収納テープ3が繰り出されるとともに、その途中でテープ本体3aからカバーテープ3bが引き剥がされ、各部品収納凹部の部品が、ヘッド14Hによる取り出しが可能な状態で部品取出位置HTに供給される。
【0036】
テープフィーダ2のうち、前記一対の引取りギア25a、25bの後方(図4では-Y側)にはテープ回収部27が設けられている。テープ回収部27は、引取りギア25a、25bにより引き取られたカバーテープ3bを収納する空間である。テープフィーダ2の後端部には、このテープ回収部27に通じる開口部27aが設けられるとともに、当該開口部27aを開閉する扉28が設けられている。この扉28は、モータや電磁ソレノイドなどの図外の小型アクチュエータで駆動され、後述するAGV30によるテープ回収作業の際には、実装機制御部10の制御により開口部27aの開閉が行われる。
【0037】
なお、ヘッド14Hによる部品取出し後のテープ本体3aは、テープフィーダ2の前端からその下方に配置されたテープ本体専用のテープ回収部に細断されながら収容される。
【0038】
[AGVの構成]
次に、図5及び図6を参照してAGV30の構成を説明する。図5は、AGV30の構成を示す概略図であり、図6は、AGV30とこれに搭載されたテープ回収装置40の概略図である。
【0039】
AGV30(自走式ロボットの一例)は、車輪32を備えた車体31と、車輪32を駆動するモータ35と、バッテリ36と、AGV制御部34とを備えた、いわゆる自走式の電動車両である。AGV30には、無線通信モジュール37が搭載されており、作業管理システムS1から送信される後記作業用データD2及びAGV用指示データを受信することにより、AGV制御部34がこれらのデータに基づきモータ35等を制御する。これにより、AGV30が実装ラインS2に対して予め定められた巡回ルートに沿って自走する。この巡回ルートは、例えば図3に矢印で示すように、実装機1に正対した場合に右側から左側に向かってAGV30が走行するように設定されている。従って、実装機1の-Y側においてはAGV30が+X側から-X側に走行し、実装機1の+Y側においては-X側から+X側にAGV30が走行する。AGV30の車輪32の一部は図外のアクチュエータにより方向操作が行われる操舵輪であり、AGV制御部34により制御される。
【0040】
図5及び図6に示すように、AGV30には、テープ回収装置40が搭載されている。テープ回収装置40は、前記テープフィーダ2のテープ回収部27に収容されているカバーテープ3b(以下、廃棄テープ3bという場合がある)を回収する装置である。つまり、AGV30は、巡回ルートに沿って自走しながら、その途中で、各部品供給部20A~20Dのテープフィーダ2から廃棄テープ3bを回収する。なお、テープ回収装置40は、本発明に係る「作業装置」の一例である。
【0041】
テープ回収装置40は、図6に示すように、車体31の上方に突出する作業用ヘッド41を有する。図6は、部品供給部20Aの側方にAGV30が配置された状態を示している。作業用ヘッド41は、車体31のうち、巡回ルートを走行する際に実装機寄りとなる位置に設けられている。作業用ヘッド41の上端には、実装機側(図6では+Y側)に向かって延びるノズル部42と、同方向(+Y方向)に向かって開口する開口部43を備えたテープ吸引部44とが備えられている。ノズル部42は、部品供給部20Aに装着されたテープフィーダ2の後端上部、すなわちテープ回収部27の開口部27aの主に上側の領域に正対し得る高さ位置に配置されており、テープ吸引部44は、ノズル部42の直ぐ下方で開口部27aに正対し得る高さ位置に配置されている。
【0042】
テープ回収装置40は、実装機1から圧縮エア(空気圧)の供給を受けることが可能なAGV側ポート部P1(本発明の「第1ポート部」に相当する)と、エアの回路部50とを含む。AGV側ポート部P1は、実装機1に設けられる後記実装機側ポート部P2に連結されることにより、当該実装機側から供給されるエアを受け入れる。
【0043】
回路部50は、メイン通路51とサブ通路52とを含む。メイン通路51は、AGV側ポート部P1から導入されたエアをノズル部42に案内する回路である。メイン通路51には、逆止弁53と、電磁切換弁からなる第1開閉弁54とがAGV側ポート部P1側から順に介設されている。つまり、第1開閉弁54が開状態のときにはノズル部42からエアが噴射され、第1開閉弁54が閉状態のときは当該エアの噴射が停止される。
【0044】
サブ通路52は、AGV側ポート部P1から導入されたエアを用いて負圧を生成し、この負圧をテープ吸引部44に供給する回路である。サブ通路52は、メイン通路51のうち逆止弁53と第1開閉弁54との間の位置から分岐して、車体31に設けられたテープ収納室45に繋がっている。テープ収納室45は、テープフィーダ2から回収した廃棄テープ3bを収納しておく部分である。サブ通路52には、電磁切換弁からなる第2開閉弁55とエゼクタ56とがメイン通路51側から順に介設されている。つまり、第2開閉弁55が開状態のときには、メイン通路51からエゼクタ56にエアが供給されてここで負圧が生成され、当該負圧がテープ収納室45に供給される。テープ収納室45は、図6に示すようにテープ吸引部44に連通しており、これによりテープ吸引部44に負圧が供給される。第2開閉弁55が閉状態のときには、エゼクタ56へのエアの供給が停止されるため、これによりテープ吸引部44への負圧の供給が停止される。
【0045】
テープ回収装置40による廃棄テープ3bの回収動作は次の通りである。廃棄テープ3bの回収作業の際には、図6に示すように、作業用ヘッド41のノズル部42及びテープ吸引部44が、テープフィーダ2のテープ回収部27に-Y側から正対するように、AGV30が部品供給部20Aに対して配置される。そして、テープ回収部27の開口部27aが開放された状態で、ノズル部42からテープ回収部27内にエアが噴射されると共に、テープ吸引部44によりテープ回収部27内が吸引される。ノズル部42から噴射されたエアは、テープ回収部27の主に天井部に沿ってその奥に吹き込まれる。その圧力でテープ回収部27内に溜まった廃棄テープ3bが開口部27a側に押し出され、この押し出された廃棄テープ3bが開口部43を通じてテープ吸引部44の内部に吸引され、さらに車体31のテープ収納室45に収納される。
【0046】
なお、テープ吸引部44の開口部43の後方には、エア駆動式のカッター46が備えられている。このカッター46が作動することにより、テープ収納室45に収納された廃棄テープ3bがテープフィーダ2から切り離される。図示を省略しているが、回路部50には、メイン通路51から分岐してカッター46に繋がる通路が設けられている。当該通路には、電磁切換弁からなる開閉弁が介設されており、当該開閉弁の切替え制御によりカッター46が作動する。
【0047】
このように、テープ回収装置40は、実装機1から供給される圧縮エアを動力源として作動する作業装置である。
【0048】
[圧縮エアの供給構造]
次に、実装機1からAGV30へエアを供給するための構造について説明する。AGV30には、上述の通り、実装機1からエアを受け入れるためのAGV側ポート部P1が備えられている。AGV側ポート部P1は、図3及び図6に示すように、AGV30の走行方向における車体31の前端部側方に設けられている。
【0049】
一方、実装機1には、AGV30にエアを供給するための実装機側ポート部P2(本発明の「第2ポート部」に相当する)が設けられており、この実装機側ポート部P2にAGV側ポート部P1が連結される。実装機側ポート部P2は、実装機1に正対した場合にその前面の左端に設けられている。つまり、図3に示すように、実装機1の-Y側においては-X側の端部に配置され、実装機1の+Y側においては+X側の端部に配置されている。
【0050】
このように実装機側ポート部P2及びAGV側ポート部P1が設けられることにより、巡回ルートの走行中、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1とがX方向に正対するようにAGV30が移動することで、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結が可能となる。
【0051】
図7は、実装機側ポート部P2及びAGV側ポート部P1の具体的な構造を示す断面図である。なお、図7は、図3に示すように、部品供給部20Aの側方にAGV30が配置された状態における、連結前の各ポート部P1、P2を示している。
【0052】
AGV側ポート部P1は、-X方向に延びるプラグ60を備えている。プラグ60は、基端部61cと、それよりも外径が細い中径部61bと、中径部61bよりもさらに外径が細い先端部61aとを備えた段付きの円筒状プラグである。中径部61bの外周には周溝62が形成されている。
【0053】
一方、実装機側ポート部P2は、ホースHsの先端に装着されたソケット70を備える。ソケット70は、+X方向に指向する状態で、実装機1に設けられたチャック装置80により保持されている。ホースHsは、図外のコンプレッサに接続されており、当例では、図3に示すように、リール85に巻回された状態で実装機1のベース11内部に引き出し可能に収容されている。リール85は、図外のばね部材(付勢部材)によりホース巻取り方向に回転付勢されている。つまり、ソケット70にホース引き出し方向の外力、つまり+X方向の外力を与えるとリール85からホースHsを引き出すことができ、この外力を除去すると、ばね部材の付勢力でホースHsがリール85に自動的に巻き取られる。当例では、当該リール85及びばね部材が本発明の「相対位置可変部材」に相当する。
【0054】
ソケット70は、X方向に延びる筒状のソケット本体71と、このソケット本体71の内側にX方向にスライド自在に内挿されたバルブ74と、このバルブ74を付勢するコイルバネ73と、ソケット本体71の外側にX方向にスライド自在に外嵌されるスリーブ部材75と、スリーブ部材75を付勢するコイルバネ76とを備えて構成されている。前記ホースHsは、ソケット本体71の-X側の端部に接続固定されている。
【0055】
バルブ74は、+X方向に向かって開口した有底筒形の形状を有している。このバルブ74の内側が、前記プラグ60が挿入される部分となっている。バルブ74は、その後方(-X側)に配置されたコイルバネ73の弾発力により前方(+X側)に付勢されている。ソケット本体71の先端近傍の周壁部には、周方向に所定間隔で複数のボール72が転動自在に保持されており、バルブ74は、これらボール72に係合することによってソケット本体71に対して抜け止めされている。
【0056】
ソケット本体71におけるホースHs末端の直ぐ前方(+X側)、すなわちコイルバネ73が配置されている部分は、それ以外の部分に比べて内径が大きく形成されている(拡径部71aという)。他方、バルブ74の周壁には、周方向に所定間隔で複数の孔部74aが形成されている。つまり、コイルバネ76の弾発力によってボール72に係合する位置までバルブ74が押圧されている状態では、孔部74aがソケット本体71の周壁部で塞がれる一方、コイルバネ76の弾発力に抗してバルブ74が一定距離だけ押し戻された状態では、孔部74aが拡径部71aに配置されて当該孔部74aが開放される。以降、このように孔部74aが塞がれるバルブ74の位置をバルブ閉位置と称し、孔部74aが開放されるバルブ74の位置をバルブ開位置という。
【0057】
ソケット本体71には、上記の通りスリーブ部材75がX方向にスライド自在に外嵌されている。ソケット本体71の外周にはコイルバネ76が装着されており、このコイルバネ76の弾発力により、スリーブ部材75がソケット本体71に対して+X方向に付勢されている。スリーブ部材75の先端部分の内面は、前記プラグ60の基端部61cが内嵌される段付き孔75bとされており、この段付き孔75bの末端がボール72に係合することでスリーブ部材75がソケット本体71に対して抜け止めされている。なお、バルブ74がバルブ閉位置に配置された状態では、図7に示すように、当該バルブ74の先端部分が各ボール72の内側に配置され、各ボール72がソケット本体71の径方向内側へ変位することが規制される。これにより、ボール72に対してスリーブ部材75の段付き孔75bの末端が係合した状態が維持されている。なお、図7中の符号75aは、スリーブ部材75の端部に形成された鍔部であり、チャック装置80に対して+X側から当接している。
【0058】
ソケット70は、上記の通り、実装機1に設けられたチャック装置80により保持されている。チャック装置80は、ソケット70を取り囲むように配置されて、各々進退可能に設けられた複数のチャック部材81と、これらチャック部材81を駆動する電磁ソレノイド82とを備えおり、図7に示すように、各チャック部材81によりスリーブ部材75をその外側から掴むことでソケット70を保持する一方、各チャック部材81が後退することでソケット70をリリースする。
【0059】
AGV側ポート部P1と実装機側ポート部P2とを連結するには、図7に示すように、ソケット70とプラグ60とをX方向に正対させ、同図の矢印に示すように、AGV側ポート部P1(AGV30)を実装機側ポート部P2に対して接近させる。
【0060】
AGV側ポート部P1が実装機側ポート部P2に接近すると、図8(a)に示すように、プラグ60の先端部61aがソケット70のバルブ74の内側に挿入される。このプラグ60の挿入が進むと、プラグ60の中径部61bの先端部がバルブ74に突き当たり、バルブ74がコイルバネ73の弾発力に抗して押し戻される。その結果、図8(b)に示すように、バルブ74がバルブ閉位置からバルブ開位置に変位し、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1とが連結状態となる。つまり、バルブ74の孔部74aが開放され、プラグ60がバルブ74の孔部74aを通じてホースHsに連通した状態となる。これにより、実装機1からAGV30へエアが供給される。
【0061】
この状態では、プラグ60の中径部61bがソケット本体71の内側に完全に入り込む。そして、図8(b)に示すように、当該中径部61bの周溝62にボール72が入り込むことにより、段付き孔75bからソケット本体71の内側にボール72が落ち込む。その結果、コイルバネ76の弾発力によってソケット本体71がスリーブ部材75に対して-X方向に変位し、スリーブ部材75の周壁部により各ボール72が外側から拘束される。これにより、プラグ60がボール72を介してソケット70(ソケット本体71)に係合した状態が維持される。すなわち、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結状態が維持される。
【0062】
実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結完了後、チャック装置80によるソケット70の保持状態が解除されると、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結状態が保たれた状態で、図9(a)に示すように、ソケット70がフリーな状態となる。従って、この状態でAGV側ポート部P1、すなわちAGV30を+X方向に移動させると、これに伴い、図9(b)に示すように、ソケット70と共にホースHsが移動しながらリール85から引き出されることとなる。つまり、AGV30は、実装機1からエアの供給を受けながら移動することが可能となる。
【0063】
なお、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結状態を解除する手順は、上述した手順と逆の手順となる。すなわち、図9(b)に示すようにホースHsがリール85から引き出された状態からAGV30を-X方向に移動させる。このようにAGV30を移動させると、自ずとホースHsがリール85に巻き取られ、ソケット70がチャック装置80の内側に引き込まれることとなる。
【0064】
こうしてソケット70のスリーブ部材75(鍔部75a)がチャック装置80の端面に当接する位置までAGV30を移動させた後(図9(a))、チャック装置80を作動させる。これによりソケット70をチャック部材81で保持させ(図8(b))、この状態でAGV30を逆方向(+X方向)に移動させる。このようにチャック装置80でソケット70を保持した状態でAGV30を移動させると、コイルバネ76の弾発力に抗してプラグ60とソケット本体71とが一体にスリーブ部材75に対して相対的に+X方向に移動する。この移動に伴い、プラグ60の周溝62に係合していたボール72がスリーブ部材75の段付き孔75bに入り込み、その結果、ソケット本体71とプラグ60との係合状態が解除され(図8(a))、ソケット70とプラグ60とが分離される。こうして実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結が解除される(図7)。
【0065】
[部品実装システムS0における支援作業の概要]
次に、図1に戻って、部品実装システムS0における、実装ラインS2の実装機1に対する支援作業の概略的な流れについて説明する。ここでは、支援作業の一例として、テープフィーダ2で発生する廃棄テープ3bをAGV30によって回収する作業の流れについて説明する。
【0066】
各実装機1は、当該実装機1の各種の動作を制御する実装機制御部10を備えている。各実装機制御部10は、部品の取り付け情報D1を管理している。取り付け情報D1は、部品供給部20A~20Dの各セット位置の部品残数が記述されたファイルである。例えば取り付け情報D1のファイルでは、ある品種の部品を収納した部品収納テープ3が装着されたテープフィーダ2が、部品供給部20A~20Dのいずれのセット位置に装着されているかが、部品残数と共に管理される。なお、取り付け情報D1は基板の生産に応じて、また、部品の補給作業などの実行に応じて逐次更新される。そして、例えば実装機1において1枚の基板に対する所定の処理が完了して排出するなどのイベント毎に、更新された取り付け情報D1が作業管理システムS1に発送される。
【0067】
作業管理システムS1は、少なくとも各実装機1の部品供給部20A~20Dに装着されたテープフィーダ2の各々に対して、テープフィーダ2で発生する廃棄テープ3bの回収作業を管理する。なお、以下の説明では、この廃棄テープ3bの回収作業を単にテープ回収作業という場合がある。
【0068】
作業管理システムS1は、各種の処理を実行する処理部6を備える。処理部6は、取り付け情報D1から、テープ回収作業が必要なテープフィーダ2を注出した作業用データD2を作成する。この作業用データD2は、テープ回収作業が必要なテープフィーダ2であって、同一のタイミングでテープ回収可能な複数のテープフィーダ2を注出したリストである。なお、作業用データD2は、予め定められた、AGVの巡回ルートを参照して作成される。
【0069】
この作業管理システムS1に対して、作業リクエストが与えられると、作業用データD2は、実装ラインS2を構成する各実装機1に配信されるとともに、作業管理システムS1からAGV30に配信される。この場合、作業用データD2に基づいて作成されたAGV用指示データがAGV30に配信される。AGV用指示データは、AGV30がテープ回収作業を行うべき実装機1及びテープ回収作業を行うべきテープフィーダ2の位置、停止時間、巡回ルートなどが記述されたファイルである。
【0070】
作業管理システムS1からAGV30に作業用データD2及びAGV用指示データが配信されると、AGV30が巡回ルートに沿って走行しながら、作業対象となる実装機1の位置に移動してテープフィーダ2に対してテープ回収作業を実行する。テープ回収作業が完了すると、その都度、実装機1から作業管理システムS1に作業済み情報D3が送信され、作業用データD2が更新される。
【0071】
[作業管理システムS1の構成]
図2は、作業管理システムS1の構成を示すブロック図である。作業管理システムS1は、例えばパーソナルコンピュータで構成され、処理部6と、この処理部6に接続された操作部93、作業用データ記憶部94及びデータ通信部95を含む。
【0072】
操作部93は、作業管理システムS1に対する作業者の操作や各種の設定を受付けるキーボード等の入力装置と、作業管理システムS1に関する各種の情報を表示するディスプレイとを含む。作業用データ記憶部94は、前記作業用データD2を記憶するものである。データ通信部95は、実装機1及びAGV30とのデータ通信を実現させるためのインターフェイス回路である。
【0073】
処理部6は、CPU、制御プログラムを記憶するROM、CPUの作業領域として使用されるRAMなどを含んで構成されている。処理部6は、前記制御プログラムが実行されることにより、機能的に情報管理部90、作業用データ更新部91及び通信制御部92を含むように動作する。
【0074】
情報管理部90は、各実装機1の各部品供給部20A~20Dに各々装着されたテープフィーダ2に対するテープ回収作業を統括的に管理する。具体的には、各実装機1から発送される取り付け情報D1に基づき、現状の部品残数からテープフィーダ2で使用された部品数(消費部品数)を逐次演算し、テープ回収作業が必要なテープフィーダ2を抽出した作業用データD2を作成する。すなわち、情報管理部90は、各テープフィーダ2における前回のテープ回収作業時の部品残数を記憶しており、前回の部品残数と取り付け情報D1に基づく現状の部品残数とから前記消費部品数を演算し、この消費部品数が閾値を超えているテープフィーダ2を、テープ回収作業の対象として抽出する。この場合、同一のタイミングでテープ回収可能な複数のテープフィーダ2を注出した作業用データD2を作成する。また、作業用データD2に基づいて前記AGV用指示データを作成する。
【0075】
通信制御部92は、データ通信部95による実装機1及びAGV30とのデータ通信を制御する。具体的には通信制御部92は、実装機1から取り付け情報D1及び作業済み情報D3等を受け取り、また、所定のタイミングで作業用データ記憶部94に記憶されている作業用データD2を実装機1及びAGV30に送信するとともに、前記AGV用指示データをAGV30に送信する。
【0076】
作業用データ更新部91は、作業用データ記憶部94におけるデータ更新を制御する。具体的には、作業用データD2が作成されると、これを更新的に作業用データ記憶部94に記憶する。
【0077】
[テープ回収動作]
作業管理システムS1に対して、作業リクエストが与えられ、実装機1及びAGV30に対して作業用データD2及びAGV用指示データが配信されると、AGV30が巡回ルートに沿って作業対象となるテープフィーダ2のある実装機1に向かって走行する。なお、以下の説明では、テープ回収作業の対象となるテープフィーダ2を対象フィーダ2、この対象フィーダ2が装着されている実装機1を対象実装機1と称する場合がある。
【0078】
AGV30は、対象実装機1に接近すると、図3に示すように、対象実装機1に近寄って走行し、AGV側ポート部P1を実装機側ポート部P2に連結させる。この際、実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結が完了する位置(図8(b)参照)にAGV30が配置されたことが図外のセンサ等により検知されると、対象実装機1(実装機制御部10)がチャック装置80を作動させてソケット70をリリースする(図9(a))。
【0079】
ソケット70がリリースされると、作業用ヘッド41が対象フィーダ2に正対する位置までAGV30が逆方向(+X)方向に移動する。この場合、作業用データD2に、実装機1の同じ側に位置する複数の対象フィーダ2が含まれている場合には、これらのうち実装機側ポート部P2から最も離れた位置(最も+X側)の対象フィーダ2に正対する位置までAGV30が移動する。例えば図3に示す部品供給部20A、20Bに装着されたテープフィーダ2の中に複数の対象フィーダ2が存在し、最も+X側に位置する対象フィーダ2が部品供給部20Bに装着されている場合に、図10に示すように、AGV30は、部品供給部20Bの当該対象フィーダ2に正対する位置まで移動して停止する。このように、AGV30が移動すると、これに伴いリール85からホースHsが引き出される。
【0080】
この状態で対象フィーダ2に対してテープ回収作業が実行される。具体的には、上述した通り、作業用ヘッド41のノズル部42からテープ回収部27内にエアが噴射されるとともに、テープ吸引部44によりテープ回収部27内が吸引される。これにより廃棄テープ3bが回収される。この場合、テープ回収部27の扉28は、対象実装機1により開閉制御される。
【0081】
最初の対象フィーダ2に対するテープ回収作業が完了すると、次の対象フィーダ2に対応する位置にAGV30が移動する。これにより、当該次の対象フィーダ2に対して、上記と同様にテープ回収作業が実行される。
【0082】
こうしてAGV30が-X方向に移動しながら、部品供給部20A、20Bの全ての対象フィーダ2についてのテープ回収作業が完了すると、実装機側ポート部P2のソケット70が、図9(a)に示すような元の位置に配置される位置までAGV30が移動する。そして、当該位置にAGV30がリセットされたことが図外のセンサ等により検知されると、対象実装機1がチャック装置80を作動させてソケット70を保持する(図8(b))。チャック装置80によりソケット70が保持されると、AGV30が、逆方向(+X方向)に一定距離だけ移動し、これにより実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1の連結が解除される。実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結が解除されると、AGV30が実装機側ポート部P2を避けながら、巡回ルートに沿って次の対象実装機1に向かって移動する。
【0083】
なお、テープ回収作業が終了すると、当該対象実装機1から作業管理システムS1に作業済み情報D3が送信され、作業用データD2が更新される。すなわち、テープ回収作業が終了した対象テープ2が作業用データD2から削除される。
【0084】
[作用効果]
以上のような部品実装システムS0によると、各実装機1から取得される取り付け情報D1に基づき、AGV30が巡回ルートに沿って走行しながら各テープフィーダ2で発生する廃棄テープ3bの回収作業を行う。そのため、各テープフィーダ2の廃棄テープ3bの回収作業を好適に自動化することが可能となる。
【0085】
特に、AGV30に搭載されるテープ回収装置40は、上記の通りエアを動力源として作動するものであって、実装機1からエア供給を受けながら作動するものである。そのため、AGV30にエアタンクを搭載する必要がなく、AGV30を比較コンパクトに構成することができる。また、AGV30を頻繁にエア供給ステーション等に立ち寄らせてエアの補給を受ける必要もないため、継続的に効率良くテープ回収作業を行うことができる。
【0086】
さらに、AGV30は、その移動に伴いリール85からホースHsを引き出すことで、実装機1からエアの供給を受けながら作業位置を自由度に変えることができる。当例では、上記の通り、AGV30は、実装機1の互いに異なる位置の対象フィーダ2に対応する位置まで自由移動してテープ回収作業を行うことができる。従って、この部品実装システムS0によれば、実装機1からエアの供給を受けてテープ回収作業を行いながらも、その作業位置の自由度を高めることができる。
【0087】
また、AGV30を移動させて一つの実装機1内の互い異なる位置の複数のテープフィーダ2のテープ回収作業を行うので、従来(背景技術の特許文献1)のようなロボットアームをAGV30に搭載することなく複数のテープフィーダ2のテープ回収作業を行うことができる。つまり、AGV30が元々備えている走行設備(車輪32やモータ35)を使って、互い異なる位置の複数のテープフィーダ2のテープ回収作業を行える、という合理的な構成が達成される。
【0088】
また、ホースHsはリール85に巻回され、ばね部材によってリール85がホース巻取り方向に付勢されるように構成されている。このような構成によれば、AGV30によるテープ回収作業の位置との関係で、ホースHsは必要最小限の長さだけリール85から引き出されることとなる。そのため、例えば、ホースHsが弛んでAGV30の走行の邪魔になるといった不都合が生じることが抑制される。
【0089】
[変形例等]
以上説明した部品実装システムS0は、本発明に係る生産システムの好ましい実施形態の例示であって、部品実装システムS0の具体的な構成や、当該部品実装システムS0に含まれるAGV30の具体的な構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、以下のような構成も適用可能である。
【0090】
(1)上記実施形態では、AGV30は、エアタンクやコンプレッサを備えていないが、これらの何れか又は双方の設備を備えた構成であってもよい。例えば図11に示すAGV30は、エアタンク57(本発明の「空気圧タンク」に相当する)とコンプレッサ58(本発明の「空気圧生成装置」に相当する)の双方を備えた例である。このAGV30は、回路部50のメイン通路51のうち、サブ通路52の分岐部分と逆止弁53との間にエアタンク57が介設され、さらにこのエアタンク57と逆止弁53との間に逆止弁59を介してコンプレッサ58が接続されている。
【0091】
この構成によると、エアタンク57に圧縮エアを蓄積しておくことが可能となる。また、必要に応じてコンプレッサ58を作動させて圧縮エアを生成することができる。そのため、例えば、故障等で実装機1からのエア供給が滞った場合や、メンテナンスのために実装機1から離れた場所でテープ回収装置40を作動させる必要が生じた場合でも、テープ回収装置40を難なく作動させることが可能となる。
【0092】
(2)実施形態では、リール85に巻回されたホースHsが設けられ、ばね部材によりリール85がホース巻取り方向に回転付勢されることにより、当該ホースHsが伸縮可能に設けられている。しかし、伸縮可能なホース部材の構成はこれに限定されるものではない。例えばホース自体が可撓性のあるコイル状の形態を有するホース部材を適用することにより、ホース部材が伸縮可能となっていてもよい。
【0093】
また、実施形態のように実装機1側にホースHsやリール85を設ける代わりに、AGV側にホースHs等を設けるようにしてもよい。
【0094】
(3)実施形態では言及していないが、作業中の実装機1からAGV30が常に一定範囲内に位置するように、AGV制御部34がAGV30を制御するように構成してもよい。例えば、実装機1に発信器が備えられる一方、この発信器から発信される電波を受信可能な受信器がAGV30に搭載され、AGV制御部34が、前記電波の受信強度に応じてAGV30の位置を制御するようにしてもよい。このような構成によれば、AGV30が前記一定範囲の外側に移動して実装機側ポート部P2とAGV側ポート部P1との連結状態が意図せず解除されたり、若しくはホースHsが破損する等にして、テープ回収作業に支障が生じることを抑制することが可能となる。
【0095】
なお、このように電気制御的に実装機1に対するAGV30の相対位置(可動領域)を規制する以外に、例えば、実装機1とAGV30とをチェーン等(本発明の「拘束部材」に相当する)で係脱可能に連結し、これらの相対位置を機械的に一定範囲内に拘束するようにしてもよい。
【0096】
(4)実施形態では、本発明の「作業装置」として、AGV30にテープ回収装置40が搭載されており、このテープ回収装置40は、AGV30をX方向に移動させることで各テープフィーダ2に対してテープ回収作業を実行する。そのため、実施形態では、AGV側ポート部P1は、AGV30の走行方向における車体31の前端部側方に設けられ、実装機側ポート部P2は、AGV30の走行方向における車体31の前端部側方に設けられている。しかし、「作業装置」として、AGV30にはテープ回収装置40以外の装置が搭載されていてもよい。従って、各ポート部P1、P2の位置も、上記実施形態に限定されるものではなく、「作業装置」の種類など応じて、連結及び連結解除が可能な適切な位置に設けられていればよい。例えば、図12に示すように、AGV30の先端部中央にAGV側ポート部P1が設けられ、実装機1のX方向中央部に実装機側ポート部P2が設けられていてもよい。
【0097】
(5)実施形態では、支援作業やその作業装置の一例として、テープフィーダ2から廃棄テープ3bを回収する作業(テープ回収装置40)を例に、本発明について説明したが、支援作業やその作業装置は、これに限定されるものではなく、これ以外の作業(作業装置)、例えば各テープフィーダ2に部品収納テープ3を補給する作業(テープ補給装置)などであってもよい。また、実施形態では、本発明の生産システムの一例として、部品搭載基板を生産する部品実装システムS0を例に本発明について説明したが、本発明は部品実装システムS0以外の生産システムにも適用可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 実装機(作業ステーション)
2 テープフィーダ
3 部品収納テープ
3a テープ本体
3b カバーテープ/廃棄テープ
30 AGV(自走式ロボット)
40 テープ回収装置(作業装置)
85 リール(相対位置可変部材)
Hs ホース(相対位置可変部材)
P1 AGV側ポート部
P2 実装機側ポート部
S0 部品実装システム(生産システム)
S1 作業管理システム
S2 実装ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12