(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/60 20060101AFI20230712BHJP
F04D 11/00 20060101ALI20230712BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
F04D29/60 D
F04D11/00 101
F04D13/00 A
(21)【出願番号】P 2020088978
(22)【出願日】2020-05-21
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】半田 康雄
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-297591(JP,A)
【文献】特開昭62-183812(JP,A)
【文献】実開平03-025889(JP,U)
【文献】特開昭60-159400(JP,A)
【文献】特開平11-351181(JP,A)
【文献】特開2007-045392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/60
F04D 11/00
F04D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚水管、及び前記揚水管の上方開口部に接続される吐出しエルボを含むポンプケーシングと、
前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記揚水管内に配置される羽根車を有する回転軸と、
前記回転軸を介して前記羽根車を回転させる駆動手段と、
を備えたポンプ装置であって、
前記ポンプケーシングに接続され、前記駆動手段を駆動して前記回転軸を介して前記羽根車を回転させた際に発生する脈動を抑制しつつ、前記ポンプケーシング内の流体が流入することにより空気を送り出す空気発生装置と、
前記空気発生装置に接続されて効果音を発生させる音響発生部と、
をさらに備えるポンプ装置。
【請求項2】
前記空気発生装置は、一端部を吐出しエルボに接続された圧力管と、前記圧力管の他端部が下端部に接続された空気発生部とを備え、
前記空気発生部は、上端部が注入管を介して前記音響発生部に接続されている、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記空気発生部は、上端部に外気に連通する通気管を接続され、下端部にドレン管を接続され、
前記圧力管はストップ弁、前記通気管は開閉弁、ドレン管はドレン弁をそれぞれ有し、
前記ストップ弁を開放し、前記開閉弁及び前記ドレン弁を閉鎖する第1処理と、前記ストップ弁を閉鎖し、前記開閉弁及び前記ドレン弁を開放する第2処理を繰り返す制御装置をさらに備える、請求項2に記載のポンプ装置。
【請求項4】
前記音響発生部は音響管である、請求項1から3のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【請求項5】
前記音響管は、固有振動数が前記駆動手段の駆動により発生する圧力脈動の周波数と合致するように構成されている、請求項4に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出管に共鳴室を接続し、この共鳴室の容積をポンプの回転数に基づく振動周波数に共鳴するように調節する調節機構を備えたポンプ装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記従来のポンプ装置は、ポンプの駆動に伴って発生する脈動を抑制する機能はあるが、効果音を発生させる機能までは備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポンプの運転による流体の圧力を利用して音響管から効果音を出力させて、ポンプの駆動状態を監視することができるようにしたポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、揚水及び前記揚水管の上方開口部に接続される吐出しエルボを含むポンプケーシングと、前記吐出しエルボを貫通して上下方向に延び、下端部に前記揚水管内に配置される羽根車を有する回転軸と、前記回転軸を介して前記羽根車を回転させる駆動手段と、を備えた立軸ポンプであって、前記ポンプケーシングに接続され、前記駆動手段を駆動して前記回転軸を介して前記羽根車を回転させた際に発生する脈動を抑制しつつ、前記ポンプケーシング内の流体が流入することにより空気を送り出す空気発生装置と、前記空気発生装置に接続されて効果音を発生させる音響発生部と、をさらに備えるポンプ装置を提供する。
【0007】
この構成によれば、空気発生装置によってポンプの脈動を抑制しつつ、空気発生装置から音響発生部に送り出された空気が気泡となって上昇して効果音を発生させ、ポンプが駆動していることを報知することができる。
【0008】
前記空気発生装置は、一端部を吐出しエルボに接続された圧力管と、前記圧力管の他端部が下端部に接続された空気発生部とを備え、前記空気発生部は、上端部が注入管を介して前記音響発生部に接続されているのが好ましい。
【0009】
この構成によれば、ポンプケーシングから圧力管を介して空気発生部内に流体が流入し、ポンプの駆動により発生する圧力脈動を減衰させることができる。
【0010】
前記空気発生部は、上端部に外気に連通する通気管を接続され、下端部にドレン管を接続され、前記圧力管はストップ弁、前記通気管は開閉弁、ドレン管はドレン弁をそれぞれ有し、前記ストップ弁を開放し、前記開閉弁及び前記ドレン弁を閉鎖する第1処理と、前記ストップ弁を閉鎖し、前記開閉弁及び前記ドレン弁を開放する第2処理を繰り返す制御装置をさらに備えるのが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第1処理により、吐出しエルボから空気発生部内へと流体を導いて圧力脈動を減衰させることができる。このとき、音響発生部により効果音を発生させてポンプの駆動状態を知らせることができる。また、第2処理により、空気発生部内に流入した流体を排出して次の第1処理に備えることができる。
【0012】
前記空気発生部は、前記駆動手段で発生する脈動を抑制する共鳴管である。
【0013】
前記音響発生部は音響管であるのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、共鳴管に音響管を接続するだけで効果音を発生させる構成を得ることができる。
【0015】
前記音響管は、固有振動数が前記駆動手段の駆動により発生する圧力脈動の周波数と合致するように構成されているのが好ましい。
【0016】
この構成によれば、圧力脈動の周波数を音響管で共鳴させて効果音を増大させることができる。また、圧力脈動とは異なる周波数の効果音が発生したときは、音色が異なるので、異常の検知が可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ポンプケーシングに接続した空気発生装置によってポンプの駆動により発生する圧力脈動を減衰させて騒音の発生を抑制することができる。また、空気発生装置に接続した音響管によって効果音を発生させて、ポンプの駆動状態を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る共鳴管及び音響管を備えた立軸ポンプの概略図。
【
図2】本実施形態に係る立軸ポンプの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0020】
図1は、本実施形態に係るポンプ装置を示す。このポンプ装置は、立軸ポンプ1に空気発生装置2と音響管3を順次接続したものである。
【0021】
立軸ポンプ1は、ポンプケーシング4を備える。ポンプケーシング4は、揚水管5と、その上方開口部に接続される吐出しエルボ6とを有する。また立軸ポンプ1は、吐出しエルボ6を貫通して上下方向に延びる回転軸7を備える。回転軸7の下端部には、前記揚水管5内に配置される羽根車8が設けられている。羽根車8は、モータ等の駆動手段である駆動機9によって回転軸7を介して回転駆動する。
【0022】
空気発生装置2は、圧力管10と共鳴管(空気発生部)11を備える。圧力管10は、水平方向に延び、その一端部が吐出しエルボ6に接続されている。圧力管10の他端部は共鳴管11の下方部に接続されている。共鳴管11は、その軸心が鉛直方向に延びる筒状である。圧力管10にはストップ弁12が設けられ、吐出しエルボ6から共鳴管11に流入する流体量を調整可能となっている。
【0023】
ところで、駆動手段で発生する圧力脈動がポンプケーシング4を伝搬して振動を発生させ、この振動が騒音の原因となる。本実施形態では、共鳴管11を、その固有振動数f1が圧力脈動周波数NZと等しくなるように構成することで、圧力脈動を抑制している。具体的に、共鳴管11の構成は以下のように決定している。
【0024】
駆動手段の圧力脈動周波数NZは、次式で表される。
NZ=f1=α1・100/2π(A1/L1・V1)0.5 (1)
α1:共鳴管11内での圧力波の伝搬速度
A1:圧力管10の断面積
L1:圧力管10の長さ
V1:共鳴管11の内容積
【0025】
また、共鳴管11内での圧力波の伝搬速度α1は、次式で表される。
α1=√(Kg/γ)/√(1+(K/E)(d/e) (2)
K:共鳴管11を流動する流体の体積弾性係数
g:重力の加速度
E:共鳴管11を構成する材料の弾性係数
d:共鳴管11の内径
e:共鳴管11の厚さ
【0026】
ここでは、共鳴管11にはステンレス鋼を使用し、流体は水としている。そして、前記式(1)及び(2)に従って、流動する流体に応じて、空気発生装置2(圧力管10及び共鳴管11)の構成(サイズ)を決定している。
【0027】
また、共鳴管11の下端部にはドレン管13が接続されている。ドレン管13の途中にはドレン弁14が設けられ、開放することにより共鳴管11内に貯留された流体を排出できるようになっている。共鳴管11の上端部には通気管15が接続されている。また、通気管15の途中には開閉弁16が設けられている。開閉弁16を開放することにより、共鳴管11内に外気を取り込むことができるようになっている。
【0028】
音響管3は、その軸心が上下方向に延びる筒状で、内部には液体として水が収容されている。音響管3の下方部と共鳴管11の上方部とは注入管17によって接続されている。注入管17には逆止弁18が設けられ、音響管3から共鳴管11への流体の逆流が防止されている。これにより、共鳴管11から音響管3にのみ気体(空気)が流入可能となっている。
【0029】
音響管3では、圧力脈動の定在波を形成して効果音を出力できるように、音響管3の固有振動数f2が圧力脈動周波数NZと等しくなるように設定されている。
NZ=f2=α2・100/2π(A2/L2・V2)0.5 (3)
α2:音響管3内での圧力波の伝搬速度
A2:注入管17の断面積
L2:注入管17の長さ
V2:音響管3の内容積
【0030】
そして、音響管3内での圧力波の伝搬速度α2は次式で表される。
α2=√(K/ρ) (4)
K=Kw/(1+(Va・V)(Kw/Ka-1))
ρ=ρa(Va/V)+ρw(Vw/V)
K:音響管3内の流体の体積弾性係数
Ka:音響管3内の空気の体積弾性係数
Kw:音響管3内の水の体積弾性係数
V:音響管3の内容積
Va:音響管3内での気体の容積
Vw:音響管3内での液体の容積
ρ:音響管3内での流体の密度
ρa:音響管3内での気体の密度
ρw:音響管3内での液体の密度
【0031】
これらの数式から音響管3の内容積Vを決定している。なお、音響管3内を占める水量に比べて空気量が十分に大きいため、Va/Vの値は十分に大きく(ほぼ1に近い)、流体の密度はほぼ空気の密度に近い。したがって、音響管3内での圧力波の伝搬速度α2はほぼ空気中の圧力波の伝搬速度と等しい。また、音響管3の高さHaは、Ha=α/2f2である。
【0032】
駆動機9の駆動は、制御装置19からの制御信号によって行われる。また制御装置19は、内蔵するタイマーでの計時時間に基づいてストップ弁12、開閉弁16及びドレン弁14の開閉を制御する。
【0033】
次に、前記構成からなる立軸ポンプ1の共鳴管11及び音響管3の動作について、
図2のフローチャートに従って説明する。
【0034】
まず、ポンプの駆動を開始し(ステップS1)、ドレン弁14及び開閉弁16を閉鎖すると共に(ステップS2、S3)、ストップ弁12を開放する(ステップS4)。これにより、ポンプケーシング4と共鳴管11とが圧力管10を介して連通する(第1処理)。さらに、ストップ弁12の開放からタイマーによるカウントを開始する(ステップS5)。
【0035】
共鳴管11は、その固有振動数fが圧力脈動周波数NZと等しくなるように構成されている。したがって、ポンプの駆動により発生した圧力脈動が減衰され、騒音が低減される。また、ポンプケーシング4内を流動する流体が圧力管10を介して共鳴管11内へと流入する。これにより、内部の空気が加圧され、注入管17を介して音響管3へと流出する。
【0036】
音響管3では、共鳴管11から流入した空気が気泡となって上方へと移動する。この気泡により音響管3内で音響が発生する。さらに音響管3は、固有振動数が圧力脈動周波数NZと等しくなるように構成されている。このため、音響管3が共鳴し、圧力脈動に基づく定常波を形成して効果音を発生させる。これにより、ポンプの駆動状態を聴覚によって認識することができる。また、圧力脈動周波数NZとは異なる周波数の音が発生した場合には、効果音の音色が相違し、異常診断が可能となる。
【0037】
この間、タイマーによりストップ弁12の開放から第1設定時間経過したか否かを判断する(ステップS6)。共鳴管11の内容積及びポンプケーシング4内の流体の圧力が分かっている。このため、ストップ弁12の開放からの経過時間に基づいて共鳴管11内に所定量以上の流体が流入したことが分かる。そこで、ストップ弁12の開放からの経過時間が共鳴管11内に所定量の流体が流入したと判断される第1設定時間となれば、タイマーをリセットし(ステップS7)、ストップ弁12を閉鎖する(ステップS8)。そして、ドレン弁14及び開閉弁16を開放し(ステップS9、S10)、共鳴管11内の流体をドレン弁14から排出する(第2処理)。このとき、再びタイマーによるカウントを開始し(ステップS11)、共鳴管11内の流体が全て排出されたと判断される第2設定時間となったか否かを判断する(ステップS12)。第2処理の開始からの経過時間が第2設定時間となれば、ステップS2に戻る。
【0038】
以下、前記第1処理と前記第2処理を繰り返すことによりポンプケーシング4内の流体の共鳴管11内への流入、共鳴管11から音響管3への空気の排出、共鳴管11からの流体の排出を行う。
【0039】
前記実施形態に係る立軸ポンプ1によれば、次のような効果が得られる。
(1)ポンプケーシング4に圧力管10を介して共鳴管11を接続するようにしたので、ポンプの駆動により発生する圧力脈動を低減して騒音の発生を抑制することができる。
(2)共鳴管11に音響管3を接続して効果音を発生させるようにしたので、ポンプの駆動状態を聴覚により報知することができる。また、異常が発生した場合には効果音の音色の違いから簡単に判断することができる。
(3)ポンプケーシング4に共鳴管11を接続し、共鳴管11に音響管3を接続するだけの簡単な構成で、騒音の抑制とポンプの駆動状態の報知とを同時に実現することができる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0041】
前記実施形態では、音響管3を構成する材料については特に言及しなかったが、透光性を有する材料で構成することにより、気泡の上昇具合を観察することができ、効果音と共にポンプの駆動状態を視覚によっても把握することが可能となる。この場合、音響管3に収容する液体を色つきにしたり、音響管3をライトアップして視覚効果を高めたりするのが好ましい。
【0042】
前記実施形態では、音響管3から圧力脈動に基づく定常波の形成により効果音を発生させるようにしたが、単に音響管3に供給される空気を排出する位置にノズル(笛)のような音を発生させる構造を配置した構成としてもよい。
【0043】
前記実施形態では、制御装置19に内蔵するタイマーによって弁の開閉時期を決定するようにしたが、共鳴管11に水位センサを設け、検出される水位が予め設定した水位に到達することにより、前記同様にして各弁を開閉制御するようにしてもよい。
【0044】
前記実施形態では、共鳴管11に供給した流体は、ドレン管13から排出するだけとしたが、共鳴管11の内部をダイヤフラム構造として、再びポンプケーシング4側に戻すように構成することも可能である。これによれば、ポンプケーシング4からの漏洩が望ましくない流体の場合に有効である。
【0045】
前記実施形態では、音響管3を鉛直方向に向かう縦向きとしたが、水平方向や斜め上方に向かう横向きとしてもよい。
【0046】
前記実施形態では、共鳴管11及び音響管3を立軸ポンプ1に採用する場合について説明したが、横軸ポンプであっても同様に採用することができる。但し、共鳴管11に接続する条件は、音響管3の水頭高さよりも高くする必要がある。したがって、この条件を満足していれば、羽根車8の上流(吸込)側に接続することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…立軸ポンプ
2…空気発生装置
3…音響管(音響発生部)
4…ポンプケーシング
5…揚水管
6…吐出しエルボ
7…回転軸
8…羽根車
9…駆動機(駆動手段)
10…圧力管
11…共鳴管(空気発生部)
12…ストップ弁
13…ドレン管
14…ドレン弁
15…通気管
16…開閉弁
17…注入管
18…逆止弁
19…制御装置