IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電線工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-成形型 図1
  • 特許-成形型 図2A
  • 特許-成形型 図2B
  • 特許-成形型 図3
  • 特許-成形型 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】成形型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/42 20060101AFI20230712BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
B29C33/42
B29C45/17
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020213890
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099855
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】豊森 佑夏
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-188836(JP,A)
【文献】特開平11-077715(JP,A)
【文献】特開2016-150572(JP,A)
【文献】特開平10-318263(JP,A)
【文献】実開昭59-107223(JP,U)
【文献】実開昭59-169928(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2型を備えた環状のエラストマー成形品の成形型であって、
前記第1及び第2型は、型合わせされたとき、前記エラストマー成形品の形状に対応し且つ内壁面に、各々、周方向に延びる環状の外周型分割ライン及び内周型分割ラインを有するキャビティと、前記外周型分割ラインの一部分が開口した食い切り口を介して前記キャビティに連通した食い切りと、前記内周型分割ラインの一部分が開口したゲートを介して前記キャビティに連通したランナーとが構成され、
前記食い切り口は、周方向に間隔をおいて複数設けられており、
前記ゲートは、前記複数の食い切り口のそれぞれから周方向に半周オフセットした位置に位置付けられるように、前記複数の食い切り口と同数が周方向に間隔をおいて設けられている成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー成形品を製造するのに用いる成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム成形品の成形金型に食い切りを設けることにより、ゴム成形品に形成されるバリの除去を容易にする技術が知られている。例えば、特許文献1には、ガスケットの成形金型であって、環状のキャビティの内側及び外側のそれぞれの全周に食い切りが設けられたものが開示されている。特許文献2には、無端状ゴム製品の成形金型であって、キャビティの内側の全周に食い切りが設けられたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-141220号公報
【文献】特開2014-69387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばOリングの成形金型のキャビティの内側及び/又は外側の全周に食い切りが設けられていると、製造されるOリングには、その全周にバリ切除痕が形成される。その場合、Oリングの製品検査の寸法測定において、測定位置にバリ切除痕が形成されていると、そこを平滑にする処理を行わなければ、正確な寸法測定を行うことができず、そのため、円滑に製品検査を実施できないという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、円滑に製品検査を実施することができるエラストマー成形品を製造するのに用いる成形型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1及び第2型を備えた環状のエラストマー成形品の成形型であって、前記第1及び第2型は、型合わせされたとき、前記エラストマー成形品の形状に対応し且つ内壁面に、各々、周方向に延びる環状の外周型分割ライン及び内周型分割ラインを有するキャビティと、前記外周型分割ラインの一部分が開口した食い切り口を介して前記キャビティに連通した食い切りと、前記内周型分割ラインの一部分が開口したゲートを介して前記キャビティに連通したランナーとが構成され、前記食い切り口は、周方向に間隔をおいて複数設けられており、記ゲートは、前記複数の食い切り口のそれぞれから周方向に半周オフセットした位置に位置付けられるように、前記複数の食い切り口と同数が周方向に間隔をおいて設けられている
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エラストマー成形品の表面に形成された環状の型分割ライン痕の一部分がバリ切除痕であるので、バリ切除痕を外して寸法測定を行うことにより、円滑に製品検査を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るシール材の斜視図である。
図2A】成形金型の平面図である。
図2B図2AにおけるIIB-IIB断面図である。
図3】実施形態に係るシール材の製造方法の第1の説明図である。
図4】実施形態に係るシール材の製造方法の第2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、実施形態に係るシール材10(エラストマー成形品)を示す。このシール材10は、液体や気体などの流体の流出や流入を防ぐために用いられる環状のゴム部品のOリングである。シール材10を形成するゴム材料や寸法構成等は、JIS B2401-1:2012に記載されているものが挙げられる。
【0012】
実施形態に係るシール材10は、断面が円形に形成されている。シール材10の平面視における外周及び内周の表面には、それぞれの全周に環状の外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12が形成されている。外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12の幅は、例えば0.01mm以上0.5mm以下である。
【0013】
そして、外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12は、それぞれの一部分が外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121、つまり、成形後の成形物からバリを切除した痕で構成されている。実施形態に係るシール材10によれば、その表面に形成された環状の外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12のそれぞれの一部分が外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121であるので、それらを平滑にする時間やコストを費やす必要なく、外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121を外して寸法測定を行うことにより、円滑に製品検査を実施することができる。また、測定位置を事前に登録しておいて自動測定を行うこともできる。
【0014】
外周側バリ切除痕111は、外周側型分割ライン痕11の周方向に間隔をおいて複数設けられている。同様に、内周側バリ切除痕121は、内周側型分割ライン痕12の周方向に間隔をおいて複数設けられている。外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121は、同数が設けられている。外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121は、周方向にオフセットして設けられている。なお、外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121は、同数でなくてもよく、また、いずれか一方だけであってもよい。
【0015】
外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121は、細長矩形状に形成されている。外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121の幅は、成形時にゴム材料の高い流動性を得るとともにバリの除去を容易にする観点から、好ましくは0.003mm以上0.3mm以下、より好ましくは0.003mm以上0.1mm以下である。外周側バリ切除痕111の長さは、シール材10の外径の寸法測定を行う観点から、外周側型分割ライン痕11の周長に対して50%未満であることが好ましい。同様に、内周側バリ切除痕121の長さは、シール材10の内径の寸法測定を行う観点から、内周側型分割ライン痕12の周長に対して50%未満であることが好ましい。外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121の長さは、成形時にゴム材料の高い流動性を得るとともにバリの除去を容易にする観点から、それぞれ外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12の周長に対して、好ましくは0.1%以上50%未満、より好ましくは1%以上30%以下である。
【0016】
次に、実施形態に係るシール材10の製造方法について説明する。
【0017】
図2A及びBは、シール材10を製造するのに用いる成形金型20を示す。成形金型20は、上下に積層された第1及び第2型21,22を備える。
【0018】
第1及び第2型21,22のそれぞれの型合わせ面には、断面半円の環状溝が形成されている。成形金型20は、第1及び第2型21,22が型合わせされたとき、第1及び第2型21,22の環状溝が向かい合わされてシール材10の形状に対応したキャビティ23が構成される。
【0019】
第2型22の型合わせ面における環状溝の外側には、環状溝に隣接するとともに環状溝に沿った平面視が弧状のV溝が周方向に間隔をおいて複数形成されている。成形金型20は、第1及び第2型21,22が型合わせされたとき、この第2型22の各V溝が第1型21の型合わせ面で覆われて食い切り24が構成される。食い切り24は、外周型分割ラインの一部分がスリット状に開口した食い切り口25を介してキャビティ23に連通している。食い切り口25の形状は、外周側バリ切除痕111の形状に対応する。
【0020】
第2型22の型合わせ面における環状溝の内側には、環状溝に隣接するとともに環状溝に向かって拡がった平面視が三角形状の凹部が周方向に間隔をおいて複数形成されている。成形金型20は、第1及び第2型21,22が型合わせされたとき、この第2型22の各凹部が第1型21の型合わせ面で覆われてランナー26が構成される。ランナー26は、内周型分割ラインの一部分がスリット状に開口したゲート27を介してキャビティ23に連通している。ゲート27の形状は、内周側バリ切除痕121の形状に対応する。第1型21には、上面のゴム注入部28から分岐して複数のランナー26のそれぞれに連通するようにスプール29が形成されている。
【0021】
実施形態に係るシール材10の製造において、まず、この成形金型20を成形機に取り付けて予熱する。なお、ここで用いることができる成形機としては、例えば、トランスファー成形機、射出成形機、プレス成形機を挙げることができる。
【0022】
次いで、図3に示すように、ポットから未架橋ゴム材料Rを成形金型20のゴム注入部28に供給する。このとき、未架橋ゴム材料Rが、スプール29及びランナー26を経由してゲート27を介してキャビティ23に流入する。キャビティ23が充填されると、未架橋ゴム材料Rは、食い切り口25を介して食い切り24に流入する。
【0023】
続いて、この状態を所定時間保持して未架橋ゴム材料Rを架橋させた後、図4に示すように、成形金型20を第1型21と第2型22とに型開きして成形物30を取り出す。このとき、成形物30として、製品のシール材10と、食い切り24において未架橋ゴム材料Rが架橋して形成された外周側バリ31と、スプール29の一部及びランナー26において未架橋ゴム材料Rが架橋して形成された内周側バリ32とが一体化したものが得られる。シール材10には、成形金型20の外周型分割ライン及び内周型分割ラインに対応して、その表面にそれぞれ外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12が形成される。また、併せて、第1型21からは、スプール29の残りの部分において未架橋ゴム材料Rが架橋して形成された架橋物を除去する。なお、第1型21は、このスプール29の架橋物を除去することができるように分解可能に構成されている。
【0024】
そして、成形物30から外周側バリ31及び内周側バリ32を切除することにより、外周側型分割ライン痕11及び内周側型分割ライン痕12が、それぞれの一部分が外周側バリ切除痕111及び内周側バリ切除痕121で構成されることとなって、実施形態に係るシール材10を得ることができる。
【0025】
なお、上記実施形態では、Oリングのシール材10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、ピストンパッキンやUパッキン等であってもよい。
【0026】
上記実施形態では、エラストマー成形品として環状のゴム部品のシール材10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えばダイヤフラムなどの盤状部材等であってもよい。また、エラストマー成形品は、樹脂成形品であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、エラストマー成形品を製造するのに用いる成形型の技術分野について有用である。
【符号の説明】
【0028】
10 シール材(エラストマー成形品)
11 外周側型分割ライン痕
111 外周側バリ切除痕
12 内周側型分割ライン痕
121 内周側バリ切除痕
20 成形金型
21 第1型
22 第2型
23 キャビティ
24 食い切り
25 食い切り口
26 ランナー
27 ゲート
28 ゴム注入部
29 スプール
30 成形物
31 外周側バリ
32 内周側バリ
R 未架橋ゴム材料
図1
図2A
図2B
図3
図4