(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】心臓弁輪形成及びペーシング処置、関連する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/362 20060101AFI20230712BHJP
A61M 25/02 20060101ALI20230712BHJP
A61F 2/24 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
A61N1/362
A61M25/02 500
A61F2/24
(21)【出願番号】P 2020532869
(86)(22)【出願日】2018-08-27
(86)【国際出願番号】 US2018048172
(87)【国際公開番号】W WO2019046205
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-23
(32)【優先日】2018-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518373829
【氏名又は名称】トランスミューラル システムズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Transmural Systems LLC
【住所又は居所原語表記】4 Dundee Park Drive,Suite 101,Andover,MA 01810 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラフィー,ナッサー
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ラフィー,クーシャ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-527267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0085039(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0172034(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0055089(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/362 - 1/372
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能なペーシングシステムにおいて、
a)長尺状の内側テザーを備え、これは、近位端と遠位端とを有し
、これは、冠静脈洞の少なくとも一部分のなかを通り抜けて心腔を囲む経路に沿ってループ状に配置されるよう構成され配列され;
b)外側シー
スを備え、これは、長尺状の前記内側テザーを取り囲み、これは、近位端と遠位端とを有し;
c)少なくとも一つの導電体を備え、これは、長尺状の前記内側テザーと前記外側シースとのうち少なくとも一つに沿ってあるいはそのなかに配置され;
d)心臓ペーシング制御器を備え、これは、動力源と、パルス発生器と、制御回
路とを含み、これは、少なくとも一つの前記導電体に動作可能に結合され;
e)少なくとも一つの心臓ペーシング電極を備え、少なくとも一つの前記心臓ペーシング電極は、少なくとも一つの前記導電体を経由して前記心臓ペーシング制御器に電気結合され;
f)ロックを備え、これは、前記外側シー
スの前記近位端及び遠位端を固定する、
ペーシングシステム。
【請求項2】
請求項1のペーシングシステムにおいて、前記ロックは、前記心臓ペーシング制御器に結合されている、ペーシングシステム。
【請求項3】
請求項2のペーシングシステムにおいて、少なくとも一つの前記導電体は、少なくとも部分的に、長尺状の前記内側テザーのなかに配置されている、ペーシングシステム。
【請求項4】
請求項1のペーシングシステムにおいて、更に、少なくとも一つの管腔を備え、これは、前記外側シースの長さに沿ってあり、これは、ペーシングリードを受容し、前記ペーシングシステムは、前記ペーシングリードに沿って摺動して、冠静脈洞のなかへ入ることができる、ペーシングシステム。
【請求項5】
請求項
4のペーシングシステムにおいて、少なくとも一つの前記管腔は、前記ペーシングリードを方向付けて、前記心臓ペーシング制御器へ向かうようにするよう構成されている、ペーシングシステム。
【請求項6】
請求項1のペーシングシステムにおいて、前記システムは、保護ブリッジを含み、これは、中隔壁の近くの冠静脈洞のなかにあるとき、LCx動脈
を跨ぐことによりLCx動脈が潰れるのを防ぐ、ペーシングシステム。
【請求項7】
請求項1のペーシングシステムにおいて、前記心臓ペーシング制御器の少なくとも一部分は、前記外側シースのなかに配置されている、ペーシングシステム。
【請求項8】
請求項1のペーシングシステムにおいて、更に、電池を備え、これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置されている、ペーシングシステム。
【請求項9】
請求項1のペーシングシステムにおいて、更に、回路板を備え、これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置されている、ペーシングシステム。
【請求項10】
請求項1のペーシングシステムにおいて、更に、通信回路を備え、これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置されている、ペーシングシステム。
【請求項11】
請求項1のペーシングシステムにおいて、更に、少なくとも一つのセンサモジュールを備え、これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置され、少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つのセンサを含み、これは、少なくとも一つの生物学的パラメータを感知する、ペーシングシステム。
【請求項12】
請求項
11のペーシングシステムにおいて、少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つの圧力センサを含み、これは、血圧を検出する、ペーシングシステム。
【請求項13】
請求項
11のペーシングシステムにおいて、少なくとも一つの前記センサモジュールは、化学センサと、距離センサと、電気生理学的データを検出する回路を有するセンサと、移動センサと、位置センサとのうち、少なくとも一つを含む、ペーシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国特許出願第15/796,344号(2017年10月27日出願)と、米国仮特許出願第62/663,903号(2018年4月27日出願)と、米国仮特許出願第62/550,583号(2017年8月26日出願)と、米国仮特許出願第62/615,309号(2018年1月9日出願)とに関連し、その優先権の利益を主張する。
本特許出願は、国際出願第PCT/US2017/031543号(2017年5月8日出願)と、米国仮特許出願第62/332,754号(2016年5月6日出願)とに関連する。
上述した特許出願それぞれの開示は、参照によりこのなかにすべての目的のため、明示的に組み入れられる。
【0002】
本開示の分野
本開示は、弁輪形成技術及び装置に関する。ここでは、緊張要素(例えば、テザー)を冠静脈洞のなかに留置する。これにより、僧帽弁弁輪形成術を実行し、僧帽弁逆流を治療する。
【背景技術】
【0003】
背景
従来の僧帽弁弁輪形成術では、胸骨切開又は開胸を伴う開心術と、心停止及び心肺バイパスとが必要である。
例えば、弁輪形成処置は、外科的切開のなかを通り抜けて実行される。ここでは、人工弁輪形成リングを僧帽弁輪の左心房側に取り付けることにより、弁輪の有効サイズを減少させる。
硬性の及び柔軟性のある様々な弁輪形成リングが、この目的のために開発されてきた(米国特許第4,917,698号;第5,041,130号;第5,061,277号;第5,064,431号;第5,104,407号;第5,201,880号;第5,350,420号に示されるものなど)。
非常に有効ではあるが、この開心処置は、相当な合併症と、回復期の長期化とを伴う。
その結果、この処置が、多くの場合、手術のリスク及び合併症を正当化するには症状が不十分な患者に対して、又は、進行した疾患に苦しむ患者に対して、又は、相当な合併症を伴う患者に対して、提案されない。
【0004】
僧帽弁修復の経皮的アプローチが開発されてきた。これにより、開心処置の臨床的不利益が減少する。
しかし、これらの処置は、様々な欠点を抱えている。
国際出願第PCT/US2017/031543号(2017年5月8日出願)は、本開示に関連し、その先行技術の状況を上回る相当な改善を提示している。
いくつかの態様において、本開示は、前記先行技術をまた更に上回る改善を提供する。
【0005】
他の態様において、本開示は、ペーシングの領域における改善を提供する。
ペースメーカーがファーマンとロビンソンとによって1958年に最初に導入されて以来、ペースメーカーは、徐脈性不整脈を伴う患者を治療するための重要な装置として使用されてきた。
ペースメーカーは、通常、完全房室ブロック、高度房室ブロック、症状を伴う洞結節機能不全などの不整脈の治療に使用される。
ペースメーカーを使用する治療は、電気刺激が正常に心臓に伝達されないときや、誤った刺激が心臓に伝達されるときに、人為的に電気刺激を提供する方法である。
【0006】
図1A~1Cは、ヒト心臓の伝導系の図である。
図1Aは、伝導系における流れを示す。
図1Bは、心電図における波形を示す。
図1Cは、伝導過程と波形との関係を例示する。
米国特許出願第15/328,046号(2015年6月16日出願)(これは、参照によりこのなかに全体としていかなるすべての目的のために組み入れられる。)で議論されたとおり、電気刺激は、洞房(SA)結節、心房内の房室(AV)結節のなかを通り抜け、その後、ヒス束及び心室のなかの脚のなかを通り抜けたのち、伝導経路のなかを通り抜けて心室全体に伝達される。
【0007】
心電図において、心室筋の脱分極過程によってQRS波が発生する。
P波に続く下向きの最初の波は、Q波と呼ばれる。上向きの最初の波は、R波と呼ばれる。そして、R波に続く下向きの波は、S波と呼ばれる。
QRSの幅は、電気が心室全体にわたって伝導されるのに要する時間を示す。
QRSの幅は、一般に、正常状態において(約90msを中心に)約0.12秒以内である。しかし、0.12秒以上である場合は、心室間伝導欠損の存在を示す。
ペースメーカーは、一般に、発生器と、リードとからなる。
前記発生器は、動力を供給する。そして、制御器を含む。これは、処理回絡とともに検出回路を伴う。これは、心臓の動作的態様を検出する。
前記ペースメーカーは、一般に、心臓の動作状態に応じて、動力を供給し又は動力を一時停止する。
動力は、心臓に、前記リードを経由して選択的に印加される。これは、電極で終端する。
【0008】
ペースメーカーは、一般に、双極的なやり方で動作する。つまり、前記リードは、実際には二つの電極(一つは電子を届けるため(陽極)、一つは電子を吸収するため(陰極))である。
しかし、前記陰極は、慣例上、熱いリードであると一般に考えられている。
前記陽極が破損し又は機能しなくなった場合、前記ペースメーカー制御器は、これを検出する。その後、前記装置を単極装置として動作させる。陽極は、ケースになり、「熱い」リードは、陰極として作用し続ける。
【0009】
現在ペースメーカーによって実行される一般的な治療によれば、ペースメーカーのリードの先端を、心室のうち右心室の心尖部(RV心尖部)のなかに挿入して固定し、その後、電気刺激を与える。
これは、右心室心尖ペーシング(RVAP)と呼ばれる。
RVAPにおいて、RV心尖部における電気刺激は、心室における電気刺激を速やかに伝達する心臓の伝導系のなかを通り抜けて伝達されない。
その代わり、心室の心肋細胞のなかを通り抜けて伝達される。これは、電気刺激を比較的ゆっくりと伝達する。
その結果、電気刺激が心室全体にわたって広がるのに、比較的長い時間がかかり得る。
これは、QRS幅の増加をもたらすと予想され得る(そして、一般にもたらす)。これにより、心室の同期がずれ、心臓のポンプ効率が低下する。
理想的には、心室を同時に収縮させる。これにより、効率がもっと高くなる。
【0010】
これに対処するため、ペースメーカーリードの前記電極を、右心室基底中隔に位置付けて、心室収縮を誘発する神経束のまわりに電気刺激を印加しようという試みがなされてきた。
これを、右心室中隔ペーシング(RVSP)という。
RVSPは、右心室流出路(RVOT)の心室中隔で、最も普通に使用される。
RVSPは、理論的には、RVAPの欠点を補う。しかし、実際の動作では、ペースメーカーのリードを、RVOTの周りの心室中隔に正確に位置付けることは難しい。そして、リードが離れたり移動したりすることがある。このため、動作自体が難しく、したがって、一般には使用されない。
RVSPには、もう一つの特徴がある。これは、リード先端を心室中隔に位置付ける。しかし、心室中隔の内部ではなく外側を刺激する。そして、RVSPは、心内膜又は心室中隔の中心を刺激する方法よりも効果が低いことが知られている。
【0011】
心室不全を伴う心不全患者が心電図において広いQRS幅を有する場合は、QRSをもっと狭くするもう一つの方法が適用される。
この方法は、二つのリードを使用する。一つのリードをRV心尖部に位置付けて、電気刺激を印加する。そして、もう一つのリードを左支静脈に位置付けて、電気刺激を左心室の側部に印加する。
この治療は、電気刺激をRV心尖部と左心室の側部とに同時に印加することにより、QRSをもっと狭くすることを目指している。
これを、「心臓再同期療法(CRT)」という。
CRTは、心不全患者がLBBB(左脚ブロック)を有する場合、非常に有効な治療である。
しかし、CRTには欠点がある。これは、QRSをもっと狭くするため、心室を刺激する二つのリードを使用する必要があるというものである。
【0012】
心室中隔に直接電気刺激を印加できる中隔内ペーシングが試みられてきた。
例えば、ペースメーカーのリードを、右心室から左心室のなかを通り抜けて心室中隔のなかへ直接強制的に位置付けることによる方法が、US2010/0298841及びUS2013/0231728に開示されている。
これらの方法は、深達度が高い。これにより、左右心室の間の心室中隔に人為的な損害を与える。そして、手術中に周囲組織を断裂させる可能性が高い。そして、空気や血餅による塞栓を起こす可能性が高い。
更に、これらの方法には、多くの危険及び限界がある。例えば、好ましい基部ではなく、心室の中央部分又は心尖部に局所的に接近するかもしれない。
米国15/328,046は、本技術分野の状況の改善を試みている。これは、前述のアプローチにおける欠陥に対処することを意図した更なるアプローチによる。
本開示は、この技術の状況を越える追加的な改善を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の概要
ヒトの大多数において、冠静脈は、左回旋(「LCx」)動脈の上を乗り越えて交差している。これは、冠静脈洞弁輪形成術の有用性を制限してきた。
これに対処するためのいくつかの技術が、例えば、米国特許第9,271,833号及び米国特許出願第15/056,599号(2016年2月29日出願)に記載されている。これらのそれぞれは、参照によりこのなかにその全体としていかなるすべての目的のために組み入れられる。
更なる改良が、米国特許出願第15/796,344号に詳述されている。
本開示は、そのような技術及び関連装置における、また更なる改良を提供する。これにより、縫縮処置の信頼性及び有効性を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
具体的な実施形態において、本開示は、インプラントの実装を提供する。これは、ブリッジを含む。これは、近位端と、遠位端と、アーチ状部分とを有する。これは、前記ブリッジの前記近位端と前記遠位端との間に画定される。
前記ブリッジは、上方へ向けて面した表面を、前記ブリッジの前記近位端から前記遠位端まで画定する。
前記インプラントは、更に、長尺状の内側テザーを含む。これは、上方へ向けて面した前記表面の上に、前記ブリッジの前記近位端から前記遠位端まで配置されている。
長尺状の前記内側テザーは、前記ブリッジに結合している。これにより、長尺状の前記内側テザーの前記ブリッジに対する相対的な位置を維持する。
前記インプラントは、更に、外側シース材料を含む。これは、前記ブリッジと長尺状の内側テザーとを取り囲み、包み込む。
【0015】
望むなら、長尺状の前記内側テザーと前記外側シース材料とのうち少なくとも一つは、その長さに沿って放射線不透過性材料を含んでもよい。
長尺状の前記内側テザーのなかの前記放射線不透過性材料は、放射線不透過性ワイヤを含んでもよい。これは、熱収縮性高分子管の長さのなかに配置される。これは、長尺状の前記内側テザーの中空コアのなかに存在する。
長尺状の前記内側テザーは、前記ブリッジに、高分子管によって結合されてもよい。これは、前記ブリッジと長尺状の前記内側テザーとのまわりで収縮し、かつ、それらと直接物理的に接触する。前記高分子管は、前記ブリッジの前記近位端及び前記遠位端を越えた先まで、軸方向に延びている。
前記外側シース材料は、中空の縫合材料を含んでもよい。これは、近位及び遠位へ向けて前記高分子管を越えた先まで延びている。
前記高分子管の一部分は、前記ブリッジの前記近位端及び前記遠位端を越えた先まで延びてもよい。これは、ストレインリリーフとして作用する。これにより、前記インプラントの剛性が、前記ブリッジから前記外側シース材料まで遷移する。
前記外側シース材料は、中空の縫合材料を含んでもよい。これは、近位及び遠位へ向けて前記ブリッジを越えた先まで延びている。
望むなら、前記インプラントは、更に、ストレインリリーフ管を含んでもよい。これは、前記ブリッジの前記近位及び遠位端のまわりで収縮されている。前記ストレインリリーフ管は、前記内側テザーを、前記ブリッジに対してその場に保持する。
【0016】
様々な実装において、前記ブリッジは、形状記憶材料から形成してもよい。そして、ブリッジのアーチ部分が垂直方向に容易に圧縮できるようにするよう構成されてもよい。これにより、前記ブリッジの外形を第一の高さからもっと低い第二の高さまで低くする。これにより、前記ブリッジを経皮送達システムのなかへ容易に導入できるようになる。前記ブリッジの前記アーチ部分は、前記送達システムから展開されたのち、前記第一の高さまで自己拡張するよう構成される。
例えば、前記形状記憶材料は、フラットワイヤの形状であってもよい。
【0017】
望むなら、前記インプラントは、更に、選択的に取り去り可能な近位送達管を含んでもよい。これは、前記外側シース材料の上を覆って配置される。前記近位送達管の遠位端は、前記ブリッジの近位端領域の近くに当接する。そして、選択的に取り去り可能な遠位送達管を含んでもよい。これは、前記外側シース材料の上を覆って配置される。前記遠位送達管の近位端は、前記ブリッジの遠位端領域の近くに当接する。
前記インプラントは、更に、インプラントロックを含んでもよい。前記外側シース材料の両端は、前記インプラントロックのなかを通り抜けるよう方向付けられる。更に、前記インプラントロックは、心臓のなかに設置されたとき、前記外側シース材料の長さを維持するよう構成されている。
前記インプラントロックは、少なくとも一つの遠位開口を、そのなかに画定してもよい。
少なくとも一つの前記遠位開口は、遠位へ向けて延びた二つの管状肢部に連結してもよい。これは、そのなかを貫いて、前記外側シース材料を誘導する。
前記管状肢部のうち第一のものは、三尖弁を横断するよう構成してもよい。そして、非外傷性の遠位先端がその上に形成されてもよい。これは、三尖弁を横断したのち、軸方向に印加される応力を、生来の中隔の表面全体に分布させる。
第一の前記管状肢部は、前記外側シース材料がそのなかを通り抜けられるよう構成してもよい。
前記管状肢部のうち第二のものは、冠静脈洞を横断するよう構成してもよい。そして、前記外側シース材料がそのなかを通り抜けられるよう構成する。
第一及び第二の前記管状肢部は、高分子管であってもよい。これは、それぞれ、その長さに沿って約90度湾曲してあらかじめ形成される。これにより、それが横断する血管の解剖学的構造に接近する。これにより、それに印加されるを低減する。
前記肢部のうち少なくとも一つは、調節可能肢部であってもよい。これは、長さが調節可能である。少なくとも一つの前記調節可能肢部の長さは、生来の解剖学的構造に対して推し当てられている間に調節することができる。
望むなら、前記管状肢部のうち少なくとも一つは、取り外し可能部分を含んでもよい。これは、異なる長さの異なる取り外し可能部分で置き換えることができる。
いくつかの実施形態において 前記外側シース材料の遠位領域を、前記遠位送達管の遠位端に、圧着部によって圧着してもよい。これは、前記遠位送達管を、前記外側シース材料に対して圧接する。
【0018】
本開示は、更に、このなかに記載したインプラントを移植する方法を提供する。ここでは、誘導ワイヤの遠位端を方向付けて、少なくとも部分的に心臓の冠静脈洞のなかを通り抜け、冠動脈の上を乗り越えて、右心室又は右心房のなかへ入るようにする。そして、前記誘導ワイヤの前記遠位端を、患者から引き出す。これにより、前記誘導ワイヤの前記近位及び遠位端が患者の外部にあり、かつ、前記誘導ワイヤが、冠静脈洞を経由して心臓のなかを通り抜けるループ形状の経路を横断し、これにより、生来の僧帽弁を取り囲むようにする。そして、このなかに記載したインプラントの前記圧着部を、前記誘導ワイヤの近位端に圧着する。
前記方法では、更に、前記インプラントを前進させてもよい。これを、前記インプラントの前記ブリッジの前記アーチ状部分がLCx動脈を跨ぐまで行う。これは、前記送達管を操作することによる。そして、前記送達管を、前記外側シース材料から引き出す。
前記インプラントをその場に固着する。これにより、前記シースの長さを維持する。これは、再固定可能なロックを前記外側シース材料の両端に沿って前進させ、前記患者の血管系のなかを通り抜けて、前記患者の心臓のなかへ入れることによる。前記ロックは、前記患者の心臓のなかで固定される。そして、前記ロックの近位部分のなかを通り抜ける余分な外側シース材料を切断する。
【0019】
望むなら、前記方法では、更に、経カテーテル人工僧帽弁を、生来の僧帽弁領域のなかに移植してもよい。前記人工僧帽弁は、外側へ向けて拡張する力を、冠動脈の下にある心筋に印加する。更に、前記ブリッジは、圧縮圧を冠動脈に前記人工僧帽弁が印加するのを妨げる。
前記方法では、更に、前記インプラントをインプラント装填器のなかへ装填してもよい。これにより、ブリッジの外形を減少させる。そして、その後、前記インプラントを前記患者のなかへ導入するのに先立って、前記インプラントを送達システムのなかへ導入する。
前記方法では、更に、前記送達システムの遠位シースを引き出してもよい。これにより、前記インプラントの前記ブリッジが拡張できるようになる。
【0020】
本開示は、更に、インプラントを提供する。これは、長尺状の内側テザーを含む。これは、近位端と、遠位端とを有する。そして、外側シース材料を含む。これは、長尺状の前記内側テザーを取り囲む。そして、選択的に取り去り可能な近位送達管を含む。これは、前記外側シース材料の上を覆って又はそのなかに配置される。そして、長尺状の前記内側テザーの近位部分を取り囲む。前記近位送達管の遠位端は、前記外側シースの中心領域のなかにある。そして、選択的に取り去り可能な遠位送達管を含む。これは、前記外側シース材料の上を覆って又はそのなかに配置される。そして、長尺状の前記内側テザーの遠位部分を取り囲む。前記遠位送達管の近位端は、前記外側シースの中心領域のなかにある。
【0021】
望むなら、前記方法では、更に、経カテーテル人工僧帽弁を、生来の僧帽弁領域のなかに移植してもよい。前記人工僧帽弁は、冠動脈の下にある心筋に外側へ向かう拡張力を印加する。そして、更に、前記ブリッジ(など、前記インプラントの硬い部分)は、前記人工僧帽弁が冠動脈に圧縮圧を印加するのを妨げる。
前記方法では、前記インプラントの前記シース材料における張力を解放してもよい。そして、前記インプラントを位置変更してもよい。そして、張力を前記シース材料に再び印加してもよい。
適当な量の張力を、望ましい結果をもたらすために、前記インプラントに印加してもよい。
【0022】
本開示は、また更に、スネアカテーテルの実施形態を提供する。これは、長尺状のコア部材を含む。これは、近位端と、遠位端とを有する。そして、長尺状の中間管状部材を含む。これは、近位端、遠位端を有し、そのなかを貫く長尺状の管腔を画定する。これは、そのなかに長尺状の前記コア部材を摺動可能に受容する。そして、穿孔された折り畳み可能な管状本体を含む。これは、平行で径方向内側へ向けて折り畳み可能な長尺状の複数の部材から形成されている。これは、その近位端で、長尺状の前記中間管状部材の前記遠位端に取り付けられる。そして、その遠位端で、長尺状の前記コア部材の前記遠位端に取り付けられる。長尺状の前記中間管状部材の前記遠位端が長尺状の前記コア部材の前記遠位端へ向けて相対的に軸方向に変位することにより、長尺状の前記部材が径方向外側へ向けて拡張し、かつ、相互に分離する。長尺状の前記中間管状部材の前記遠位端が長尺状の前記コア部材の前記遠位端から離れて相対的に軸方向に変位することにより、長尺状の前記部材が、径方向内側へ向けて折り畳まれ、かつ、一緒に折り畳まれる。
前記スネアカテーテルは、更に、標的ワイヤを含んでもよい。これは、折り畳み可能な長尺状の前記部材の中心領域のなかに配置される。これは、長尺状の前記コア部材に沿って延びている。そして、近位端を有する。これは、長尺状の前記中間管状部材に取り付けられる。そして、遠位端を有する。これは、長尺状の前記コア部材に取り付けられる。
前記標的ワイヤは、折り畳み可能な長尺状の前記部材が径方向内側へ向けて折り畳まれたとき、概して真っすぐな第一の構成をとるよう構成されてもよい。そして、折り畳み可能な長尺状の前記部材が径方向外側へ向けて拡張されたとき、実質的に非線形の第二の構成をとるよう構成されてもよい。
前記スネアカテーテルは、更に、長手方向に変位可能な長尺状の管状シースを含んでもよい。これは、近位端、遠位端を有する。そして、そのなかを貫く長尺状の管腔を画定する。これは、折り畳み可能な長尺状の前記部材が概して径方向に折り畳み状態にあるとき、長尺状の前記コア部材と、長尺状の中間管状部材と、折り畳み可能な長尺状の部材と、標的ワイヤとを、そのなかに摺動可能に受容する。
【0023】
望むなら、前記スネアカテーテルの長尺状の前記コア部材は、管状部材であってもよい。これは、そのなかを貫く誘導ワイヤ管腔を画定する。
前記スネアカテーテルには、非外傷性の遠位先端を設けてもよい。これは、従順な材料から形成される。これは、長尺状の前記コア部材の前記遠位端に取り付けられる。
前記スネアカテーテル(又は、このなかに記載されたいずれかの装置)は、更に、放射線不透過性マーカーバンドを含んでもよい。これは、前記カテーテルの前記遠位端と長尺状の前記中間管状部材の前記遠位端との近くに配置される。
望むなら、前記スネアカテーテルは、複数の放射線不透過性マーカーバンドを含んでもよい。これは、前記標的ワイヤの上に形成される。
前記標的ワイヤは、少なくとも部分的に、放射線不透過性材料から形成してもよい。
穿孔された折り畳み可能な前記管状本体は、少なくとも部分的に、放射線不透過性材料から形成してもよい。
【0024】
いくつかの実装において、前記標的ワイヤは、長手方向に収縮したとき、少なくとも一つのループや畝ねりが、そのなかに形成されてもよい。
望むなら、前記標的ワイヤは、長手方向に収縮したとき、複数のループや畝ねりが、そのなかに形成されてもよい。
前記標的ワイヤ及びループ(や畝ねり)は、前記標的ワイヤが長手方向に収縮したとき、前記カテーテルの長手方向軸に平行な単一の平面を実質的に蓄えてもよい。
前記標的ワイヤ及びループや畝ねりは、前記標的ワイヤが長手方向に収縮したとき、三次元的な幾何学形状を画定してもよい。
望むなら、複数の標的ワイヤを設けてもよい。前記標的ワイヤは、長手方向に収縮したとき、一以上のループや畝ねりを有する。
前記標的ワイヤは、複合ワイヤを含んでもよい。これは、第一の材料から作製されたコア部分と、前記第一の材料とは異なる第二の材料から作製された被覆部分とを含むワイヤなどである。
【0025】
本開示は、更に、ロック送達カテーテルを提供する。これは、長尺状の内側管状部材を含む。これは、近位端と遠位端とを有する。そして、長尺状の外側管状部材を含む。これは、近位端、遠位端を有する。そして、そのなかを貫く長尺状の管腔を画定する。これは、長尺状の前記内側管状部材を、そのなかに摺動可能に受容する。そして、展開可能なロックを含む。これは、前記ロック送達カテーテルに取り付けられる。これは、ロック本体とウェッジとを含む。前記ウェッジは、前記ロック本体とウェッジとが一緒に押されたとき、前記ロック本体に対して割り込むよう構成されている。
【0026】
前記ロック本体は、一般に、長尺状の前記外側管状部材の前記遠位端に取り外し可能に取り付けられる。前記ウェッジは、一般に、長尺状の前記内側管状部材の前記遠位端に取り外し可能に取り付けられる。
前記ロック送達カテーテルは、更に、少なくとも一つの誘導縫合材を含んでもよい。これは、前記ロック本体と前記ウェッジとの間に経路付けされる。そして、長尺状の前記内側管状部材のなかを通り抜けて近位へ向けて延びる。
少なくとも一つの前記誘導縫合材は、スネア縫合材であってもよい。これは、その遠位端にループが形成されている。これは、第二の縫合材(例えば、前記インプラントの一端又は両端)に取り付ける。これにより、前記ロック送達カテーテルのなかを通り抜けて前記第二の縫合材を容易に引き出せるようにする。
前記ロック本体は、ピンを含んでもよい。これは、前記ロック本体に架かる。前記ピンは、前記ウェッジの一部分のなかを通り抜けてもよい。これにより、前記ロック本体を前記ウェッジに結合する。
前記ピンは、長手方向溝のなかを通り抜けてもよい。これは、前記ウェッジのなかへ形成されている。これにより、前記ロック本体とウェッジとが、前記長手方向溝に沿って互いに対して摺動できるようにする。
前記ウェッジは、近位部分を含んでもよい。これは、近位開口を画定する。これは、前記近位部分の中心通路のなかへ延びる。これは、二つの通路に分かれる。これらは、二つの遠位開口で終端する。これらは、二つの表面のなかに画定される。これらは、前記ウェッジの長尺状の部分の両側を課す。これは、長手方向スロットを、そのなかに画定する。
二つの前記遠位開口それぞれは、それぞれ、そのなかを通り抜ける縫合材を含んでもよい。これは、長尺状の前記内側管状部材のなかを通り抜けて近位へ向けて延びている。そして、前記ロック本体と前記ウェッジとの間で遠位へ向けて延びている。
前記ロック本体は、遠位開口を画定してもよい。これは、そのなかを通り抜ける少なくとも一つの縫合材を経路付ける。
前記ロック本体の前記遠位開口は、そのなかに、遠位へ向けて延びた少なくとも一つのスリーブが配置されてもよい。これは、そのなかを通り抜ける縫合材を誘導する。
前記ロック本体の前記遠位開口は、そのなかに、遠位へ向けて延びた二つのスリーブが配置されてもよい。これは、そのなかを通り抜ける縫合材を誘導する。
前記スリーブのうち少なくとも一つは、同心状の二つのスリーブを含んでもよい。これらは、協調して、伸縮自在なスリーブを形成する。これは、二以上の長さに調節可能であることができる。
前記スリーブのうち少なくとも一つは、その上に、非外傷性の遠位先端が形成されてもよい。
望むなら、前記スリーブのうち少なくとも一つは、その壁のなかを貫いて開口が形成されてもよい。これは、テザーがそのなかを通り抜けられるよう構成される。これは、前記スリーブの全長を横断する前記テザーを有する代わりである。
【0027】
いくつかの実装において、前記ロック送達カテーテルは、更に、ハンドルを含んでもよい。これは、前記外側管状部材の近位部分に取り付けられる。これに、一以上のアクチュエータを設けてもよい。
前記ロック送達カテーテルに、テザーループを設けてもよい。これは、前記ロック本体の一部分のなかを通り抜けて経路付けられる。そして、テザークランプよりも近位へ向けて延びている。前記テザーループは、前記外側管状部材の遠位端に対して固定された前記ロック本体を保持するよう構成されている。
前記ハンドルには、ばね負荷された少なくとも一つのクランプを設けてもよい。これは、インプラントのテザーなど所望の繊維にかかる張力を選択的に維持するよう構成されている。
いくつかの実装において、前記外側管状部材の前記遠位端は、前記ロック本体と指組み連結するよう構成してもよい。これにより、前記外側管状部材がトルクを前記ロック本体に伝達できるようにする。
望むなら、前記外側管状部材の前記遠位端は、前記ロック本体を前記外側管状部材の前記遠位端のなかへ誘導するよう形作られてもよい。
【0028】
本開示は、更に、切断カテーテルを提供する。これは、長尺状の内側部材を含んでもよい。これは、近位端と遠位端とを有する。これには、遠位へ向けて面した刃が、前記遠位端に装着されている。そして、長尺状の外側管状部材を含んでもよい。これは、近位端、遠位端を有する。そして、そのなかを貫く長尺状の管腔を画定する。これは、長尺状の前記内側管状部材を、そのなかに摺動可能に受容する。長尺状の前記外側管状部材は、そのなかを貫く側方にずれた一対の穴を、前記刃の近くに画定する。これは、そのなかを通り抜ける縫合材料を受容する。長尺状の前記内側部材が長尺状の前記外側管状部材に対して遠位へ向けて前進することにより、前記刃が前記縫合材を通り越す。これにより、前記縫合材を切断する。
望むなら、遠位へ向けて面した前記刃は、長尺状の前記内側部材の概して平面状の遠位領域の上に装着してもよい。これは、長尺状の前記外側管状部材の平らな遠位部分のなかで摺動するよう構成される。
また、スタイレットを設けてもよい。これは、側方にずれた一対の前記穴のなかを通り抜けて供給される。これは、当初、前記縫合材料、前記インプラントの前記端、又はその他のテザーを捕捉する。
【0029】
開示された前記装置は、対象のなかの僧帽弁の機能を改善する方法において使用してもよい。ここでは、弁輪形成要素(例えば、僧帽弁にかかる圧縮緊張改造力を発揮する要素(緊張要素など))を、少なくとも部分的に、僧帽弁のまわりに(例えば、少なくとも部分的に、冠静脈洞のなかを通り抜け、冠動脈の上を乗り越えて)導入する。
前記保護装置は、弁輪形成要素と冠動脈との間に留置する。前記弁輪形成要素は、前記装置の前記ブリッジによって、下にある冠動脈から離される。
補強コア要素を、その後、前記装置から取り去ってもよい。ロックを、前記装置の上を覆って導入し、前記インプラントにかかる張力を維持できる場所まで前進させてもよい。
【0030】
圧縮改造力を、弁輪形成装置が発揮する(例えば、張力を緊張要素に印加して、僧帽弁輪の形状又は構成を変更し、これにより、その外周を減少させることによって)。一方、前記ブリッジの上で前記弁輪形成要素を支持し、これにより、圧力が冠動脈に印加されるのを妨げる。
患者のなかの僧帽弁の機能は、これにより、冠血流量を損なうことはなく改善される。
【0031】
本開示にしたがう方法の一例において、カテーテルを、大心静脈のなかへ導入する。そして、誘導ワイヤなどの貫通装置(針、高周波エネルギー切除装置又はレーザー切除装置など)を、第一中隔冠静脈などの基底血管のなかへ導入する。
そこから、貫通装置は、画像誘導下で、中隔心筋又は線維輪を直接横断し、右心室又は右心房に再び入る。
前記誘導ワイヤを、その後、例えば、このなかで開示されたようなスネアカテーテルを使用して回収する。
前記スネアカテーテルを、その後、折り畳む。これにより、前記誘導ワイヤを、前記標的カテーテル本体のなかへ引き入れる。そして、前記誘導ワイヤを、患者から経皮的に引き出す。これにより、前記誘導ワイヤの両端が露出する。
前記インプラントの前記遠位端を、その後、前記誘導ワイヤの前記近位端の上へ圧着する。そして、前記インプラントを身体のなかへ前進させる。これを、前記インプラントの前記ブリッジ部分が、冠動脈(左回旋(「LCx」)動脈など)を跨ぐまで行う。
前記LCx動脈の場所を、例えば、放射線血管造影によって、若しくは、前もって計算された断層撮影血管造影と生のX線との融合によって、又は、血管内超音波を使用して、識別してもよい。
代わりのアプローチにおいて、冠静脈に、右心房又は右心室から、画像誘導下で反対方向に入り、冠静脈洞の枝のなかへ入る。
【0032】
この時点において、前記誘導ワイヤの前記近位端と、前記誘導ワイヤを前記インプラントの前記遠位端に取り付けている前記圧着部とは、好ましくは、前記インプラントの前記近位端とともに、患者の身体に対して外在している。
前記遠位及び近位送達管を、その後、好ましくは取り去り、前記インプラントを置き去りにする。前記シース材料は、十分長く、これにより、患者から外に延び出すことができる。
ロックを、その後、前記インプラントの近位及び遠位シース部分の両方の上を覆って糸通ししてもよい。これらは、それぞれ、ロック送達カテーテルを使用して前記ブリッジ部分に接触する。前記ロックを、患者の心臓のなかへ前進させてもよい。
張力を、前記インプラントの前記シースにかけてもよい。これにより、所望の解剖学的変化を達成する。
張力を、好ましくは、近位及び遠位シース部分に画像誘導下で印加する。これを、僧帽弁輪外周が望ましい程度に減少するまで、又は、僧帽弁逆流が減少するまで、又は、僧帽弁流入閉塞などの有害なエンドポイントが達成されるまで、行う。
前記ロックを、前記ロック送達カテーテルを操作することにより、係止してもよい。これを、その後、今度は取り去ってもよい。そして、切断カテーテルを、前記インプラントの前記近位及び遠位シース部分の上を覆って前進させてもよい。
前記シース部分は、好ましくは、前記ロック及びロックカテーテルの内部にある。
余分なシースを、このなかで開示したような切断カテーテルを使用して、取り去ってもよい。そして、前記切断カテーテルを、両方とも、患者から取り去ってもよい。そして、処置を完了する。
【0033】
更なる態様にしたがって、本開示は、移植可能なペーシングシステムを提供する。これは、心臓のなかのループ経路を周航するよう構成され配列されている。
前記システムは、長尺状の内側テザーを含む。これは、近位端と遠位端とを有する。そして、外側シース材料を含む。これは、前記長尺状の内側テザーを取り囲む。これは、近位端と遠位端とを有する。そして、少なくとも一つの導電体を含む。これは、長尺状の前記内側テザーと前記外側シースとのうち少なくとも一つに沿って又はそのなかに配置される。そして、心臓ペーシング制御器を含む。これは、動力源と、パルス発生器と、少なくとも一つの導電体に動作可能に結合された制御回絡とを含む。そして、少なくとも一つの心臓ペーシング電極を含む。これは、心臓組織のなかに移植されるよう構成され配列される。少なくとも一つの前記心臓ペーシング電極は、少なくとも一つの前記導電体を経由して前記心臓ペーシング制御器に電気結合される。そして、ロックを含む。これは、前記外側シース材料の前記近位端及び遠位端をしっかり固定する。
【0034】
いくつかの実装において、前記ロックは、前記心臓ペーシング制御器に結合されてもよい。
少なくとも一つの前記導電体は、少なくとも部分的に、長尺状の前記内側テザーのなかに配置されている。
望むなら、前記ロックは、心臓ペーシングリードがそのなかを通り抜けるよう経路付けられてもよい。
電気通信を、前記心臓ペーシングリードと確立してもよい。これは、前記ロックの一部分を係合することによる。
いくつかの実装において、前記ペーシングシステムは、更に、少なくとも一つの管腔を含んでもよい。これは、前記外側シースの長さに沿っている。これは、ペーシングリードを受容する。前記ペーシングシステムは、前記ペーシングリードに沿って摺動して、冠静脈洞のなかへ入ることができる。
少なくとも一つの前記管腔は、前記ペーシングリードを方向付けて、前記心臓ペーシング制御器へ向かうようにするよう構成されてもよい。
いくつかの実施形態において、前記システムは、保護ブリッジを含んでもよい。これは、前記中隔壁の近くの冠静脈洞のなかにあるとき、前記LCx動脈に架かる。これは、このなかの他の箇所に記載されたとおりである。
いくつかの実施形態において、前記心臓ペーシング制御器の少なくとも一部分は、前記外側シースのなかに配置されてもよい。
【0035】
前記ペーシングシステムは、更に、電池を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、回路板を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、通信回路を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
【0036】
望むなら、前記ペーシングシステムは、更に、少なくとも一つのセンサ回路を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。少なくとも一つの前記センサモジュールは、少なくとも一つのセンサ(例えば、感知回路)を含む。これは、少なくとも一つの生物学的パラメータを感知する。
例えば、少なくとも一つの前記センサ回路/モジュールは、少なくとも一つの圧力センサを含んでもよい。これは、血圧を検出する。あるいは、化学センサと、距離センサと、電気生理学的データを検出する回路を有するセンサと、移動センサと、位置センサとのうち、少なくとも一つを含んでもよい。
【0037】
いくつかの実装において、少なくとも一つの前記導電体は、前記ロックで終端してもよい。
望むなら、前記システムは、更に、少なくとも一つのペーシングリード(や電気センサ。これは、心臓電気信号を感知する。)を含んでもよい。これは、前記外側シースの表面のなかに形成される。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、右心房とインターフェースするよう構成され配列されてもよい。
望むなら、更なるペーシングリードが、右心室、又は、中隔静脈などの心静脈とインターフェースするよう構成され配列されてもよい。
望むなら、前記制御器は、ペーシングと、除細動と、測定と、制御とのうち少なくとも一つを提供するよう構成され配列されてもよい。
【0038】
前記ペーシングシステムのいくつかの実装において、長尺状の前記内側テザーは、ループアンテナを含んでもよい。これは、信号を前記制御器へかつそこから伝導する。
更なる実装において、前記ペーシングシステム(などのシステム)は、更に、貯蔵器を含んでもよい。これは、有益薬剤を含有する。これは、分注器に結合される。これは、前記制御器によって制御される。
例えば、前記有益薬剤は、医薬や、遺伝子治療材料や、生細胞を含んでもよい。これは、損傷した前記心臓の少なくとも一つの場所に播種するためのものである。
【0039】
理解されるべきは、前述の一般的な説明と以下の詳細な説明とは、ともに、例示的であり、このなかで開示された実施形態の更なる説明を提供することを意図していることである。
【0040】
添付の図面は、この明細書に組み入れられ、その一部を構成する。これが含まれるのは、本開示の方法及びシステムを例示し、その更なる理解を提供するためである。
説明とともに、図面は、開示された実施形態の原理を説明するのに役立つ。
【0041】
図面の簡単な説明
例示的な実施形態の前述したもの及び他の対象、態様、特徴及び利点は、以下の記載を添付図面と併せて参照することによって、もっと明白になるであろうし、もっとよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1A-1C】本開示にしたがう心臓ペーシングの態様を例示する。
【
図2】例示的な冠動脈保護装置を示す概略図。これは、縫縮弁輪形成処置をしている間の位置にある。
【
図3A-3D】経洞冠動脈弁輪形成術に関与する心臓の領域を示す一組の図。保護装置を使用して、これにより、張力を縫縮緊張装置に印加したとき、冠動脈を締めつけるのを防ぐところを例示する。
【
図3A】心臓の左側方外観斜視図。上行大動脈から分岐する側方の冠動脈と、側方の回旋動脈の枝と、大心静脈とを示す。
【
図3B】動脈の断面の拡大図。大心静脈のレベルで左冠動脈回旋枝よりも表在して交差する冠静脈洞を示す。
【
図3C】
図3Bと同様の図。弁輪形成術をしている間に、保護装置をその場に留置することなく、結紮材(例えば(限定ではない)ワイヤ又は縫合材)を留置するところを示す。弁輪形成処置をしている間に、結紮材を締めると、圧力が冠動脈の枝の上に発揮され、血流と心筋灌流とを制限する。
【
図3D】この同じ構造の拡大図。は、冠動脈よりも表在した冠静脈洞のなかで結紮材の上を覆って保護装置を留置したところを示す。
【
図4A】本開示にしたがうインプラントの一部分の概略図。
【
図4B】本開示にしたがう例示的な保護要素の側面図。
【
図4C】本開示にしたがう例示的なインプラントの断面概略図。
【
図4D】
図4Cの前記インプラントにおいて使用するのに適した内側テザーの図。
【
図4E-4F】本開示にしたがうインプラントの更なる実施形態の図。
【
図5A-5E】本開示にしたがう圧着部の様々な態様を例示する。これを使用して、例示的なインプラントの遠位端を、患者の血管系のなかを通り抜けるよう方向付けられた誘導ワイヤの近位端に連結する。
【
図6A】本開示にしたがうスネアカテーテルの実施形態の模式図。
【
図6A-6B】
図6Aの前記スネアカテーテルとともに使用する標的ワイヤの例示。
【
図7A】ヒト心臓の概略平面図。房室弁の高さで切り取られている。破線において、僧帽弁のまわりにおける縫縮弁輪形成結紮の代替的な二つの軌跡を示す。
【
図7B】心臓の正面斜視図。心筋壁の一部分を破断して取り除いている。
図7Aの縫縮弁輪形成の前記軌跡を示す。
【
図8】心臓の背面斜視図。冠静脈洞縫縮弁輪形成術の傾斜した平面を示す。本図面は、僧帽弁輪平面の上を覆う小さいほうの従来の外科的な僧帽弁弁輪形成リングと、左心室流出路を包囲するように僧帽弁平面に対して傾斜した平面における大きいほうの冠動脈縫縮とを概略的に例示する。
【
図9】心臓の僧帽弁領域の概略断面図。人工心臓弁を僧帽弁領域のなかに位置付ける。そして、外側へ向けて拡張する力を印加する。本開示にしたがう僧帽弁縫縮インプラントを、僧帽弁領域のまわりに位置付ける。そして、内側へ向いた力を印加する。本開示にしたがう冠動脈保護装置を僧帽弁縫縮装置に沿って位置付ける。これにより、冠動脈が圧縮されないよう保護する。
【
図10】心臓の断面図。僧帽弁縫縮装置が、冠静脈洞のなかを通り抜け、僧帽弁のまわりに送達されている。
【
図11A-11B】本開示にしたがうロック送達システムの態様を例示する。
【
図12A-12D】長さが調節可能な肢部の第一の実施形態の態様を例示する。これは、本開示にしたがうロック及びロック送達システムに取り付ける。
【
図12E-12H】長さが調節可能な肢部の第一の実施形態の態様を例示する。これは、本開示にしたがうロック及びロック送達システムに取り付ける。
【
図13A-13C】前記ロックを、動物における例示的な縫縮装置の上に展開したところを例示する。
【
図14A-14I】本開示にしたがう切断器具の態様を例示する。
【
図15A-15E】本開示にしたがうロック及びロック送達システムの更なる実施形態の態様を例示する。
【
図16A-16D】本開示にしたがうロックの特定の実施形態を例示する。
【
図17】本開示にしたがうロックの更なる実施形態を例示する。これは、少なくとも一つの肢部を有する。これは、異なる長さの交換可能な端部を伴う。前記端部もまた、長さが調節可能である。
【
図18】本開示にしたがう心臓ペーシングや有益薬剤を送達するシステムの実施形態を例示する。
【
図19】本開示にしたがう直線化し又は縺れを解いたカテーテルを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
例示的な実施形態の詳細な説明
I.用語の説明
それと異なる記載がない限り、専門用語は、従来の用法にしたがって使用する。
本開示の様々な実施形態を容易にレビューをするため、用語の以下の説明を提供する。
【0044】
「弁輪形成要素」とは、心臓の弁輪の再形成を誘導し、これにより、弁閉鎖不全を修復する装置をいう。
このような装置は、冠静脈洞のなかに留置され、弁輪にかかる圧縮力によってその作用を発揮するものを含む。例えば、弾力性のある弁輪形成要素が拡張することによる。あるいは、縫縮弁輪形成術におけるように、弁輪形成要素を緊張下で留置することによる。
【0045】
用語「備える」は、「限定なく含む」を意味する。したがって、「誘導カテーテルと、誘導ワイヤとを備える」は、追加的な要素を除外することなく、「誘導カテーテルと、誘導ワイヤとを含む」を意味する。
【0046】
用語「誘導ワイヤ」とは、単純な誘導ワイヤ、硬化した誘導ワイヤ、又は、操縦可能な誘導ワイヤカテーテルをいう。これは、組織を穿刺したり貫通したりできる。
前記誘導ワイヤは、また、エネルギーを送達してもよい。これにより、組織を貫通する能力を増大する。これは、例えば、穿刺し、高周波切除エネルギーを送達することによる。あるいは、レーザー切除エネルギーを送達することによる。
【0047】
これらは、「貫通装置」の例である。これは、心臓組織(心筋など)を貫通することができる装置である。
【0048】
このなかで使用するとおり、用語「結紮材」は、任意の適当な緊張材料を包含して意味し、縫合材料のみに限定されない。
用語「緊張材料」又は「結紮材」は、縫合材及び弁輪形成ワイヤを含む。
【0049】
「僧帽弁縫縮弁輪形成術」とは、緊張要素を、冠静脈洞の少なくとも一部分(好ましくは、全部)のなかを貫いて留置する弁輪形成処置をいう。これにより、周方向に向かう張力が僧帽弁輪のまわりに送達されるようにし、かつ、緊張要素を選択的な程度の張力の下に留置できるようにし、これにより、弁輪形成術を実行する。
縫縮弁輪形成術の一例は、同時係属中の先行出願11/127,112(米国特許公開第2005/0216039号)に開示されている。その技術の記載の開示は、このなかに参照によりいかなるすべての目的のために組み入れられる。
しかし、僧帽弁縫縮弁輪形成技術は、また、他の縫縮軌跡(このなかに開示されたものなど)を含む。これは、近位にある冠静脈中隔穿通枝と、心筋又は線維輪とを通り抜ける軌跡を含む。これは、その静脈と、右心室又は右心房との間に介在する。これにより、周方向に向かう縫縮弁輪形成張力を作り出す。
【0050】
このなかに開示された保護的(又は保護)装置は、「MRI適合」材料で作製してもよい。
このような材料は、身体の磁気共鳴撮像をしている間、身体のなかで使用しても安全である。そして、MRIの画像品質に実質的に影響しない。
「MRI安全」材料は、MR環境の磁場のなかに留置しても、ヒトや設備に対する実質的なリスクを増加させないものである。
MRI適合材料の例は、非鉄材料(セラミック、プラスチック、非磁性複合材料など)である。
オーステナイト系ステンレス鋼(の300系)は、強磁性でも常磁性でもなく、したがって、MRI適合である。
チタン及びアルミは、理想的な常磁性ではないものの、MRI適合である。
特に開示された、前記保護装置を作製し得るMRI適合材料は、ニチノールと、MP35Nと、コバルトクロム合金とを含む。
【0051】
「緊張材料」は、冠静脈洞僧帽弁縫縮弁輪形成術を実行するのに適した任意の材料である。ここでは、包囲材料を緊張下で留置する。これにより、僧帽弁輪を改造する。
適当な緊張材料の例は、好ましくは、(例えば、高分子織り材料から作製された)シース材料である。これは、このなかに記載されたとおりである。
【0052】
それと異なる説明がない限り、このなかで使用されるすべての専門及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
単数形の用語「a」「an」及び「the」は、文脈が明らかにそれと異なるものを指示していない限り、複数の指示対象を含む。
用語「又は」は、文脈が明らかにそれと異なることを指示していない限り、言及された代替的な要素のうちの単一の要素、又は、二以上の要素の組み合わせをいう。
例えば、語句「rtMRI又は心エコー検査」は、リアルタイムMRI(rtMRI)、無線エコー検査、又は、rtMRI及び心エコー検査の両方をいう。
このなかで記載されたものと同様又は同等の方法及び材料を、本開示の実践又は試験において使用してもよいが、適当な方法及び材料を以下に記載する。
矛盾する場合は、本明細書(用語を含む。)が制御する。
更に、材料、方法及び例は、単に例示的なものであって、限定を意図するものではない。
【0053】
II.冠動脈を保護するための保護装置
冠静脈洞僧帽弁縫縮弁輪形成術は、経皮的な僧帽弁修復処置の一例である。このために、開示された保護装置を使用できる。
前記装置及びその使用方法は、冠静脈洞のなかに留置されたいかなる人工弁輪形成要素にも広く適用可能であるが、前記方法を、縫縮弁輪形成術の特定の例に関連して、記載する。
この具体例は、縫縮弁輪形成術で使用する処置を限定するものと解釈すべきではなく、特定の実施形態におけるその使用を例示するに過ぎない。
【0054】
縫縮弁輪形成術による経皮的な修復は、従来の僧帽弁手術よりもリスク又は合併症が低い。したがって、弁機能不全がそれほど重度ではなく、又は、もっと重度な患者において使用できる。
縫縮テザー(又は結紮材)を、少なくとも部分的に、冠静脈洞のなかを貫いて留置することにより、冠静脈洞が僧帽弁輪のすぐそばにあることと、カテーテルが冠静脈洞及び支流静脈にすぐにアクセスできることとによる利益を得られる。
しかし、これらのアプローチは、また、限定的な欠点を有する。これは、近くの冠動脈枝を圧迫することが、ヒト対象の大多数における深刻なリスクであるという点である。
冠静脈洞は、通常、大心静脈の近くの回旋冠動脈及びその縁枝よりも表在して走っている。したがって、経洞弁輪形成術は、冠動脈又はその枝を締め付け又は塞ぐのに十分な圧力を伝達し得る。
この冠動脈の圧迫を防ぐ装置及び方法(このなかで開示されたものなど)は、経洞僧帽弁縫縮弁輪形成術の安全性及び有効性を劇的に増加させることができる。
【0055】
例示的な経カテーテル僧帽弁縫縮弁輪形成術は、緊張材料又は装置を僧帽弁輪のまわりに導入することを伴う。これには、誘導カテーテル及び二次カテーテルを使用する。これは、同軸誘導ワイヤを方向付ける操縦可能なマイクロカテーテル、疎通カテーテルなどである。
僧帽弁輪のまわりの範囲へのアクセスは、様々な経皮的アプローチを使用して達成できる。これは、冠静脈洞から及びそのなかを通り抜けるアクセスを含む。
具体的な実施形態において、インプラントの一部分を構成する緊張材料を、僧帽弁輪のまわりに、ある実施形態では非解剖学的な部分を含む経路に沿って適用する。
例えば(限定ではなく)、前記緊張材料は、冠静脈洞の最も前壁底部分と冠静脈洞口との間の領域を横断してもよい。
別の非限定的な例として、このような緊張材料を、僧帽弁の心房側を横切って、冠静脈洞の後側面側から前側まで適用してもよい。あるいは、僧帽弁輪の中隔側から側面側まで適用してもよい。
この処置により、僧帽弁輪の断面積と中隔側壁の分離とが減少する。これにより、僧帽弁の接合線が回復する。
【0056】
冠静脈洞を介した僧帽弁弁輪形成術は、意図せず、下にある冠動脈を締め付け又は塞ぐのに十分な圧力を伝達すると認められてきたので、このなかで開示した装置が開発された。これにより、処置の安全性及び有効性が増加する。
開示され改良された前記装置及び関連する方法は、僧帽弁弁輪形成術をしている間に、下にある血管を圧迫しないように保護する。ここでは、縫縮結紮材が、少なくとも部分的に、冠動脈の上を乗り越えている冠静脈洞のなかを通り抜けて延びる。
米国特許出願第15/056,599号(2016年2月29日出願)において議論されたとおり、冠動脈保護要素は、縫縮装置とともに使用するために開示される。
しかし、現在開示している実施形態は、その開示を上回る顕著な改善を提供する。
【0057】
図2は、僧帽弁縫縮弁輪形成処置において、保護装置420を用いたインプラント400の使用を概略的に例示する。
図2は、シース材料450を描写する。これは、緊張要素(好ましい実施形態では、編組した縫合材料)として使用される。これは、冠静脈洞250の一部分のなかを通り抜け、冠動脈回旋枝252の上を乗り越えて延びている。
図2は、冠静脈洞250なかに位置付けられたインプラント400を示す。保護要素420が冠動脈252の上を乗り越えて延びている。近位及び遠位部分428,429が冠動脈252の両側にある。
インプラント400のテザー部分450に張力がかかると、前記近位及び遠位部分428,429は、その場で冠動脈252の両側に保持され、下にある冠動脈(LCx)252の上ではなく、冠静脈洞250の壁に圧縮力を伝達する。
【0058】
図3A,3B,3C,3Dは、縫縮弁輪形成保護装置400の機能の代替的な図を提供する。
【0059】
図3Aは、心臓の外部の解剖学的構造を示す。冠静脈洞250が、左冠動脈254の回旋枝252の上を乗り越えて延びている。
図3Bは、冠静脈洞250が冠動脈252に重なっている関係の拡大図を示す。
図3Cは、縫縮弁輪形成術の間に、緊張下にある中空のテザー450を例示する。これは、下にある冠動脈252を圧迫し、心筋灌流を邪魔している。
図3Dは、保護装置420のなかを通り抜けて延びる中空のテザー450を示す。これは、圧迫力が冠動脈252に印加されるのを妨げている。これは、したがって、開存したままであり、心筋組織を正常に灌流できる。
【0060】
理解されるであろうことは、前記ブリッジ/保護装置(例えば、400)が、様々な形状及び構成をとり得ることである。これは、中空のテザー材料450を、下にある冠動脈(例えば、LCx)から離して支持する。
前記保護装置/ブリッジ420は、所望の構成にあらかじめ形作ってもよい。あるいは、記憶合金材料で作製してもよい。これは、血管系のなかを通り抜けて前進しているときは、概して直線であり、完全に展開されると、所望の保護装置形状をとる。
前記ブリッジ420は、必要に応じて、三次元的に湾曲を有してもよい。これにより、個体に固有の解剖学的構造に一致する。
【0061】
図4A~4Dは、インプラント400の実施形態を例示する。これは、保護ブリッジ420を含む。
前記インプラント400の遠位端は、圧着部570に連結している。これにより、以下に記載するとおり、それを容易に送達できる。
遠位送達管440は、シース450の遠位部分の上を覆って滑る。これは、前記インプラント400の様々な構成要素を収容する。
前記圧着部570は、その近位端において、前記シースの前記遠位端と、前記インプラント400の前記遠位端において前記シースの内部にある構成要素とのまわりで圧着される。
【0062】
図4A~4Dで例示したとおり、前記インプラント400はアーチ形状の保護要素420を含む。
中空のテザー410(直径が小さい編組したポリエステル縫合材など)を、保護アーチ420の上部の上に置く。そして、その場でしっかり固定する。これは、例えば、縫合ループ(不図示)による。あるいは、一個以上の収縮チューブ(不図示)による。
一つの実装において、一個の収縮チューブを、テザー410及び保護アーチ420の上に覆せて摺動させる。そして、その場で収縮させる。テザー410を、その場で、前記アーチ420の上側表面の上に端から端まで保持する。
望むなら、この収縮チューブは、前記保護要素400の両端を越えた先まで延びてもよい。これにより、ストレインリリーフとして作用し、前記要素420の両端において、剛性がもっと穏やかに遷移する。
また、望むなら、追加の又は代わりのストレインリリーフ430を、また、前記保護要素420の両端に設けてもよい。これは、また、前記テザー410を取り囲む。
シース450(直径がもっと大きい編組した縫合材など)を、その後、例えば、要素410,420,430の組立体の上を覆って嵌合する。
シース450は、前記保護要素420が存在しない領域で、狭くなる。
遠位送達管440を、前記シース450の前記遠位領域の上を覆って摺動する。そして、近位送達管470を、前記シース450の前記近位領域の上を覆って摺動する。そして、望むなら、前記インプラントの前記遠位及び近位端で、それぞれその場で圧着する。
【0063】
図4Bは、保護装置420(又はアーチ)の実施形態を例示する。これは、顕著に長くなった近位部分428を有する。これは、冠静脈洞のなかに移植されたとき、「着地帯」又は硬くて安定した構造を形成する。
この着地帯は、その後、経カテーテル弁輪形成処置が完了したのち、置換弁を移植する場所として役立ててもよい。
具体的には、長くなった近位部分428によって作り出された前記着地帯によって提供される心臓のなかに比較的硬い表面を有することにより、このような置換弁を生来の組織に容易に定着できる。
前記近位部分428は、提供されるなら、例えば3~80mmの間の任意の適当な長さで、かつ、その間で1mmの任意の所望の刻み幅であってもよい。
前記遠位部分429は、提供されるなら、.5mm~約10mmの間の任意の適当な長さで、かつ、その間で.5mmの任意の所望の刻み幅であってもよい。
【0064】
前記保護要素420は、巻き取られたワイヤから作製してもよい。これは、放射線不透過性(.020インチ×.070インチのNiTi合金形状記憶ワイヤなど)である。しかし、理解されるであろうことは、他の材料を、同様の又は異なる寸法で使用してもよいことである。
形状記憶材料から作製されることにより、前記ブリッジ420が(例えば、直線構成に向けて)変形できるようになる。これは、血管系のなかを通り抜けて導入するのに適応できる。
しかし、前記形状記憶材料は、前記装置が展開されたのち、図面に示すアーチ状構成に戻る。
【0065】
前記アーチ420は、丸い断面又は長方形断面を有してもよい。これは、直径又は高さ及び幅それぞれが、約0.010インチ~約.080インチの間で、かつ、これらの値の間で.001インチの任意の所望の刻み幅である。
例示したとおり、前記保護要素420の前記両端は、好ましくは、丸くする。これにより、前進するとき、外傷を冠静脈洞の壁に生じないようにする。
前記保護装置420は、好ましくは、弓状又は半円形状を有する。これは、下にある冠動脈(例えば、LCx)の上を近接して乗り越えて延びるのに十分な半径である。これにより、圧迫力が前記緊張要素から下にある動脈に伝達するのを妨げる。
前記圧迫力は、その代わり、前記保護装置の上及びそれに沿って分布する。これにより、心筋灌流を損なう圧迫から動脈を保護する。
保護要素端部分428,429は、効果的に「足」を形成する。これは、冠動脈に跨がりつつ、冠静脈洞の壁に当たって留まることができる。これにより、左回旋動脈の上を覆う位置に保護装置420を保持する。そして、前記送達管440,470を取り去ったのち、緊張下に前記あるとき、前記シース450によって印加される圧迫力に耐え、それを分布させる。
【0066】
図4Cの実施形態は、好ましくは、中心アーチを有する。これが架橋する基部における直線距離は、約0.4インチ~約0.7インチで、例えば、その間で.01インチの任意の所望の刻み幅である。
例示した中心アーチは、高さhが、約0.10インチ~約0.20インチで、例えば、その間で、.01インチの任意の所望の刻み幅である。
【0067】
前記外部シース及び前記送達管440,470の前記近位及び遠位部分は、好ましくは、潤滑性の疎水性又は親水性の材料で被覆される。例えば、PTFE、PVDFなどの適当なフッ素樹脂又はPVPなどである。
【0068】
図4Dに例示したとおり、前記内側テザー410は、複数の下位構成要素からなってもよい。
内側テザー410の例示した実施形態は、最も内側の金属製の放射線不透過性ワイヤ410a(例えば、白金)からなってもよい。これを、熱収縮チューブ410b(例えば、PTFE、PET)が取り囲んでいる。
これらの入れ子状の構成要素は、その後、適宜、編組した縫合材410cのなかに収容してもよい。
好ましくは、構成要素410a,410b,410cの長さは、シース450と同じ範囲に広がる。そして、前記インプラント400の前記近位及び遠位端で、シース450に圧着される。
【0069】
好ましくは、前記内側テザーは410、その全長に沿って放射線不透過性である。これにより、設置している間及びその後におけるその可視化が向上する。
内側テザー410の放射線不透過性は、金属(例えば、白金)ワイヤの存在によって向上できる。一方、前記ワイヤ(又は繊維)は、タングステン装填高分子、タンタル装填高分子から形成してもよいし、編組した前記縫合材料410cを使用してもよい。これには、色々なやり方で(例えば、下にある高分子のなかへ又は織り材料のなかへ組み入れることにより)、ビスマス、タングステン、タンタル、硫酸バリウムなどのうちの一以上を含浸する。
【0070】
前記送達管440,470は、前記シース450の上を覆って配置される。そして、前記保護ブリッジ420の前記近位及び遠位端に当接し又はその近くにあってもよい。
取り去り可能な前記送達管は、連続した前記外側テザー450の上を両側で覆って組み立てられる。これは、前記保護ブリッジから交換圧着部(
図4Aに例示したとおり)まで走っている。これにより、前記縫縮インプラントのために前記誘導ワイヤを交換するの補助する。
その代わり、前記外側シース450の下に経路付けてもよい。
取り去り可能な前記送達管は、所望に応じて、例えば、高分子材料(PEEK、HDPEなど)から作製してもよい。
前記インプラントがその場にあるとき、取り去り可能な前記送達管を引き出すことにより取り去ってもよい。
前記構造を取り囲む前記シース50は、今度は、その長さの少なくとも一部分又はその長さのすべてに沿って、潤滑性被覆を含んでもよい。これは、疎水性被覆(例えば、PTFE、PVDF)又は親水性被覆(例えば、PVP)などである。
これは、例えば、追加的な一以上の層、又は、PTFE収縮チューブの近接したり重なったりする管の形態で提供してもよい。
前記重なり領域は、ストレインリリーフとして作用してもよい。これは、剛性が遷移する領域を提供するのを助ける。
前記収縮チューブは、このなかの他の箇所に記載されたような多層共押し出しであってもよい。これは、高分子又は金属製の材料から形成された中間編組層を含んでもよい。そして、放射線不透過性材料を含んでもよい。
【0071】
いくつかの実装において、シース450は、DSM、ダイニーマ又はテレフレックス製の1~2mm超高分子量ポリエチレン(「UHMWPE」)コアレス円形編組から作製してもよい。
いくつかの実施形態において、前記テザー/シース450は、重量比で少なくとも20%のビスマスを装填してもよい。これにより、放射線不透過性が向上する。
例えば、前記シースは、約20~約70%の間のビスマス又は硫酸バリウムで、又は、約1重量%の増分でその間の任意の程度に装填してもよい。
追加的に又はその代わりに、追加的な又は代わりの放射線不透過性材料を、前記シース材料に組み入れてもよい。これは、タングステン、タンタル、硫酸バリウムなどである。
これらの材料を、例えば、引きぬき金属(例えば、白金などの放射線不透過性材料)ワイヤとして組み入れてもよい。これは、編組のなかへ組み入れられる。これは、例えば、織り込むことによる。あるいは、引きぬきワイヤを、前記テザーのなかに画定された中心チャネルに沿って方向付けることによる。
【0072】
図5A~5Eは、圧着部570の様々な図を描く。これは、誘導ワイヤの近位端502から前記インプラント400の遠位端まで遷移する領域を提供する。
前記インプラント400の前記近位端にある第二の圧着部が、提供されれば、前記シース450の前記近位端を前記内側テザー410の近位端に付着するための代わりの又は追加的な構造的取り付け場所を提供できる。
例示したとおり、前記圧着部570は、概して円錐状の先細りした外部近位表面と、概して円錐状の先細りした外部遠位表面と、円錐状の先細りした二つの外部中間表面とを含む。
前記圧着部の前記遠位端は、直径が、前記圧着部570の前記近位端よりも小さい。これにより、比較的大きな近位孔を画定する。これは、シース450の遠位端のなかに収容されかつそれを含む前記インプラント400の前記遠位端を受容する。そして、比較的狭く交差する遠位孔を画定する。これは、誘導ワイヤの前記近位端502を受容するよう寸法決めされている。
前記圧着部570は、好ましくは、変形可能な金属材料から作られる。これは、当初、前記インプラント400の前記遠位端に付着する。
前記誘導ワイヤを導入し、心臓のなかを通り抜けて適切に経路付け、身体の外に出す(以下で更に詳細に議論する。)と、インプラント400の前記圧着部570を、その後、前記誘導ワイヤの上に圧着する(これには、例えば、手持式圧着具を使う)。そして、前記インプラント400(前記近位及び遠位送達管と、保護要素420と、シース450とを含む。)を、前記保護要素がLCx動脈に跨がるまで、血管系のなかを通り抜けて前進させる。
理解されるであろうことは、アーチ状保護要素を必要としない解剖学的構造を有する患者について、前記保護要素420を、インプラントから省略し、例えば、比較的真っ直ぐな構造要素で置き換え(あるいは、硬い要素を全くなくして)もよいことである。
【0073】
図4E及び4Fは、本開示にしたがうインプラント400’の更なる実施形態を例示する。
図4Eは、インプラント400’の遠位及び中心部分を例示する。
インプラント400’は、最も内側の(例えば白金製の)コアワイヤ410a’を含む。これは、好ましくは、長尺状のペバックス管410b’のなかに収容される。
構成要素410a’、410b’の組立体を、その後、管状(例えば、5mm)の編組した縫合材410c’のなかへ導入する。
この構成要素の集合体を、その後、もっと短い管480’のなかへ導入する。これも、好ましくは、ペバックスなどの適当な熱可塑性材料製である。
管480’は、好ましくは、たった数インチの長さであり、保護ブリッジ420’の全長にわたるのに十分である。
構成要素410a’,410b’,410c’,480’を、その後、加熱作業において熱収縮する。
前記加熱作業により、前記ペバックス材料を、編組した前記縫合材410’の繊維の間に溶け込ませる。そして、前記保護ブリッジ420’の前記領域において、その剛性を向上させる。
構成要素410a’,410b’,410c’,480’が熱融合した組立体をブリッジ420’の上側表面の上を覆って置く。その後、更なる(例えば、直径1mmの)編組した高分子縫合材450’のなかへ導入する。
前記縫合材450は、構成要素410a’,410b’,410c’,480’の前記組立体を、ブリッジ420’の上側表面で、その場に保持する。
次に、ペバックスなどの適当な熱可塑性材料製の外側管状層490’を、前記ブリッジ420’を跨ぐ前記外側シース450’の前記部分の上を覆って嵌合する。
この構成要素の集合体を、その後、再び熱収縮する。これにより、構成要素480’,490’の前記高分子材料を、が編組したシース450’の前記繊維のなかへ融合する。そして、剛性を更に高める。また、前記インプラント400’の長さに沿って、応力遷移態様が優れた滑らかな表面を提供する。
内側放射線不透過性ワイヤ410a’は、好ましくは、前記インプラントの全長を横断しない。その代わり、好ましくは、中心領域を占める。これは、ブリッジ420’の両側の上の長さにほぼ等しい約100cm~200cmの長さ(例えば、約170cmの長さ)である。
【0074】
図4Eに更に例示したとおり、遠位送達管440’を、また、提示する。これも、好ましくは、ペバックスなどの熱可塑性高分子(好ましくは、熱可塑性エラストマー「TPE」)から作製される。
例示したとおり、送達管440’は、裾広がりの近位端を含む。これは、ブリッジ420’の前記遠位端に当接し、又は部分的に重なり合いさえするのに適している。
近位送達管470’(具体的には例示していない)には、同様に、遠位裾広がりを設けてもよい。これは、同様に、前記ブリッジ420’の前記近位端に当接し、又は重なり合う。
【0075】
図4Fは、インプラント400’の遠位領域を示す。これは、断面において、どのように遠位圧着部570’に付着されるかを示す。
遠位圧着部570’は、遠位通路を含む。これは、誘導ワイヤ(不図示)を受容する。そして、近位通路を含む。これは、入れ子状の複数の管状構成要素を受容する。
図4Fに例示した最も内側の前記構成要素は、ペバックス管410b’を含む。これは、編組した縫合材410c’の内部に入れ子状になっている。
コアワイヤ410a’は、この実施形態において、前記圧着部まで完全に延びてはいない。しかし、望むなら、そうしてもよい。
構成要素410c’は、外側シース(又は、編組した縫合材450’)のなかに配置される。
縫合材450’の遠位端は、今度は、高分子管(ペバックスなど)の短い(例えば、2~3cm)区域572’のなかに配置される。
官572’の前記遠位端は、圧着部570’の前記近位面のなかの円筒状開口のなかへ嵌入される。
外側送達管440を、その後、圧着部570’の外部近位部分の上を覆って摺動させる。これは、凹んでいてもよい。
圧着部570’の近位部分は、そのなかを貫いて形成された複数の穴(又は窓574’)を含む。
前記構成要素を組み立てたら、前記組立体を熱収縮する。これにより、送達管440’の前記遠位先端のなかの前記高分子が、窓574’のなかを通り抜けて管572’と融合する。これにより、圧着部570’がインプラント400’に付着する。
管440’の前記遠位端は、当初、外側へ向かう裾広がりであってもよい。これにより、当初、構成要素を圧着部570’のなか又はその上に嵌合するのを手伝う。
図示していないが、前記インプラント400’の前記近位端を、同様に構築し、圧着部なしで融合してもよい。これは、例えば、前記近位送達管470’の前記近位端を前記内部構成要素に熱収縮させることによる。
【0076】
本開示は、また、ある種のインプラント400’を提供する。これは、保護ブリッジを含まない。
この実施形態構築は、インプラント400’と同じである。ただし、前記ブリッジ420’があるはずの中心領域において、前記ブリッジ420’が存在せず、管480’を含まない点を除く。
その代わりに、構成要素410a’,410b’,410c’の前記組立体を熱融合して、外側シース450’のなかへ導入する。
前記インプラント400’の中心の場所を示すため、マーカーバンドを、シース450’の上を覆ってその場所まで摺動させる。そして、その場に保持する。これは、別の高分子管(好ましくは、ペバックス製)を、前記マーカーの上を覆って摺動させ、その場のなかへ熱収縮させることによる。
望むなら、熱収縮チューブの更なる断片を、前記マーカーの上を覆って収縮させてもよい。これも、また、少なくとも一部が放射線不透過性であってもよい。これにより、放射線不透過性が向上し、また、前記インプラントの中心で厚さが増加する。これにより、移植している間の安全な特徴として、前記ロックのなかを通して引き抜かれるのを防ぐ。
【0077】
III.経皮的僧帽弁縫縮弁輪形成術
A.僧帽弁逆流
僧帽弁又は三尖弁の逆流(漏出)は、多くの異なる原因によって起こる。これは、虚血性心疾患、心筋梗塞、後天性又は遺伝性の心筋症、先天性欠損症、外傷性損傷、感染症、及び、様々な形態の心疾患などである。
原発性心臓筋疾患は、拡張を介して弁逆流を生じ得る。その結果、弁輪が拡張し、弁尖の接合異常を生じる。これは、乳頭筋装置の伸張過大、変性又は破裂による。あるいは、乳頭筋の機能不全又は位置異常による。
この逆流は、心房細動などの心調律異常を生じ得る。これは、それ自体が、心臓筋機能の容認できない悪化を生じ得る。
このような悪化は、機能障害、うっ血性心不全及び重大な疼痛、苦痛、生活の質の低下、又は早期死亡とさえも、関連付けられ得る。
【0078】
それほど危険でない低侵襲の処置(経皮的弁輪形成術など)により、もっと多くの患者が、弁逆流の機械的治療を受けられるようになる。
【0079】
B.経皮的縫縮弁輪形成術
手術のリスクと合併症が(開心術と比較して)減少するので、カテーテルベースの心臓弁処置は、もっと広範な患者集団に適している。
このなかには、改良された装置及び方法が開示されている。これは、カテーテルベースの弁修復のために用いられる。これを使用して、損傷し又は機能不全である心臓弁を修復してもよい。これは、例えば、経皮的縫縮弁輪形成術(欠損した心臓弁のリング又は弁輪の再建又は増大)によって弁尖を再並置することによる。
いくつかの例において、経皮的縫縮弁輪形成術を使用して、周方向又は径方向の緊張装置を送達する。
これらの処置のうちいくつかの例は、WO2004/045378及びUS2005/0216039に詳細に記載されている。これらは、このなかに参照により全体としていかなるすべての目的のために組み入れられる。
【0080】
一般に、弁輪形成処置を実施するために使用される前記システムは、誘導カテーテル(GC)を含んでもよい。これは、あらかじめ形成された経頸静脈バルーン先端誘導カテーテルなどである。これは、冠(静脈)洞のなかへ導入される。
逆行性冠動脈放射線静脈造影は、大心静脈及び中隔穿通枝静脈を加圧して可視化する。
冠動脈再疎通のために設計された高性能誘導ワイヤを、偏向可能なマイクロカテーテルを使用して操縦してもよい。これにより、例えば、大心静脈のなかへ入り、その後、基底中隔穿通枝静脈のなかへ入る。
【0081】
一般に、弁輪形成処置では、また、撮像システムを使用して、治療対象の内部体組織、器官、構造、空洞、及び空間を撮像してもよい。
例えば、送信又は受信コイルを使用して、撮像システム(磁気共鳴撮像(MRI)など)を使用した能動装置ナビゲーションを容易にしてもよい。
この撮像は、一般に、任意の又は所定の平面に沿って行なってもよい。これには、X線技術、X線透視、MRI、電磁陽電子ナビゲーション、ビデオ技術(内視鏡、関節鏡など)、超音波、及び他のそのような技術に基づく様々な撮像方法を使用する。
いくつかの実施形態において、リアルタイムMRI(rtMRI)、心臓内超音波又は電磁的な誘導を採用する。
縫縮弁輪形成術における特に有用な補助手段は、XFMである。これは、X線をMRIとともに使用して、心筋構造を標的とする。これにより、例えば、心臓の構造のなかを通り抜けるその軌跡において弁輪形成ワイヤを誘導するのを助ける。
前記XFM技術は、例えば、デ・シルバ他「Circulation」114号、2342~2350頁(2006年)に開示されている。
前記誘導カテーテルにより、対象の身体のなかへ経皮的にアクセスできる。例えば、心臓(心腔など)に、腕、首又は脚の静脈のなかを通り抜けて経皮的にアクセスする。
いくつかの実施形態において、前記誘導カテーテルは、心臓の心室や心房にアクセスするよう設計する。
前記誘導カテーテルにより、一以上の二次カテーテルを導入できるようになる。これは、例えば、弁操作カテーテル又はマイクロカテーテル又は疎通針カテーテルを含む。
前記二次カテーテル(又はカテーテル)を使用して、対象の身体のなかの目的の器官、組織又は構造(心臓又は心臓のなかの特定の構造など)を治療し、それに影響を与え、又はそれを操作する。
前記誘導カテーテルを使用して心臓に経皮的に(又は他のやり方で)アクセスする場合、前記誘導カテーテルにより、一以上の二次カテーテル(弁操作カテーテルなど)を、止血を維持しつつ、心臓のなかへ導入できるようになる。
前記二次カテーテルは、互いに同軸であってもよいし、近接していてもよい。あるいは、身体の外部の複数のアクセスポイントから導入してもよい。
【0082】
誘導カテーテルは、僧帽弁修復処置の適切な構成要素に適合する異なる形状で利用可能である。
例えば、誘導カテーテルの形状を、異なる曲率半径を有する異なる冠静脈洞に適合するよう提供してもよい。あるいは、異なる冠静脈、経大動脈及び経中隔アクセス経路に適合してもよい。あるいは、異なる内径の心房及び心室に適合してもよい。
このような形状は、すべて、適切な一次、二次及び三次曲線に収容してもよい。
経皮経血管僧帽弁弁輪形成術を実行するのに適したカテーテル構成の例は、本技術分野で公知である。そして、米国特許公報第2005/0216039号において詳細に記載されている。これは、参照によりこのなかに全体としてあらゆるすべての目的のために組み入れられる。
【0083】
冠静脈洞への利用可能ないずれのアプローチを使用してもよいが、静脈アプローチが好ましい。これは、例えば頸静脈のなかを通り抜ける。
また別の例として、前記誘導カテーテルを、静脈(大腿又は頸静脈など)のなかへ導入してもよい。そして、下又は上大静脈のなかを通り抜けて、心臓の右心室のなかへ誘導する。
縫縮弁輪形成術の軌跡の二つの例を、
図7A及び
図7Bに示す。
第一の前記軌跡(「単純」又は「RV」軌跡と表示)は、弁輪形成ワイヤが、上大静脈のなかを通り抜けて右心房に入り、その後、冠動脈口のなかを通り抜けて冠静脈洞のなかへ導入されるものである。
前記ワイヤが、大心静脈のなかを通り抜けて前進し、基底血管(基底中隔穿通枝静脈など)のなかへ入る。
前記ワイヤが、その後、中隔穿通枝静脈から外に出て、心筋間質のなかを通り抜け、右心室になかへ入る。そして、中隔三尖弁交連に沿って(前尖と中隔尖の交点で)右心房に再び入る。
【0084】
前記誘導ワイヤを、その後、例えば血管スネアを使用して、回収する。
任意の適当な器具を使用して、前記誘導ワイヤの前記遠位端を捕捉してもよい。そして、血管系のなかを通り抜けて、身体の外部に露出するまで引き出す。
誘導ワイヤを容易に回収できるようにする例示的な好ましい改良されたスネアシステムを、また、更にこのなかに
図6A~6Cで記載する。
【0085】
限定ではなく、例示の目的のため、
図6Aは、例示的なスネアカテーテル600を例示する。これは、本開示にしたがって、誘導ワイヤを捕捉する。
図6Aに例示したとおり、前記スネアカテーテル600は、長尺状の外側管状部材(又はシース)601によって画定される。これは、そのなかにその長さに沿って中間管状部材602を摺動可能に受容する。
前記中間管状部材602は、今度は、そのなかにその長さに沿って、更なる長尺状の内側管状部材604(ハイポチューブなど)が摺動可能に配置されている。
管状部材602,604が相対的に軸方向に変位することにより、ワイヤスネアバスケット606(例えば、折り畳み可能な本体)が拡張し又は折り畳まれる。
スネアバスケット606は、あらかじめ形作られた複数のワイヤによって画定される。そして、近位端610を有する。これは、中間管状部材602の前記遠位端に取り付けられる。そして、遠位端612を有する。これは、内側管状部材604の前記遠位端に取り付けられる。
そのように、前記端612,610が、管状部材602を管状部材604よりも遠位へ向けて摺動することにより互いから引き離されたとき、前記バスケット606のあらかじめ形作られた前記ワイヤが長くなり、径方向内側へ向けて折り畳まれる。これにより、前記バスケット606を、その後、外側管状部材又はシース601よりも近位に向けて引くことができるようになる。
内側管状部材604は、好ましくは、金属部材(ステンレス鋼又はニッケルチタン合金ハイポチューブなど)である。これは、その長さに沿って更なる管腔を画定する。これは、そのなかを通り抜けて誘導ワイヤを収容できる。
非外傷性の円錐状に先細りした非外傷性遠位先端605を、好ましくは、前記内側管状部材604の前記遠位端と、前記スネアバスケット606の前記遠位端部分612との上を覆って形成する。
【0086】
前記スネアバスケット606を備える前記ワイヤそれぞれは、前記スネアバスケット106が概して拡張した状態にあるとき、径方向外側へ向けて拡張するようあらかじめ形作ってもよい。
例えば、
図6Aに例示したとおり、あらかじめ形作られた前記ワイヤそれぞれは、長尺状の前記コア部材604の長手方向軸に平行な平面に沿って延びる。そして、拡張された状態にある長尺状の前記コア部材604に直交する方向に、径方向外側へ向けて延びる。
前記スネアバスケット606が拡張された状態にあるとき、それぞれのワイヤが長尺状の前記コア部材604から径方向外側へ向けて延びる距離は、均一であり、あらかじめ形作られたワイヤの幾何学的な形状によって画定される。
長尺状の前記中間管状部材602の前記遠位端が長尺状の前記コア部材の前記遠位端へ向けて更に軸方向に変位することにより、スネアバスケット606の幾何学的な形状が変化する。これは、それぞれあらかじめ形作られたワイヤそれぞれの形状に変化することによる。
例えば、中間管状部材602が先端605へ向けて変位することにより、あらかじめ形作られた複数のワイヤそれぞれが、長尺状の前記コア部材に平行な平面に直交する方向に湾曲する(例えば、径方向外側へ向けて湾曲する)。
反対に、中間管状部材602が先端605とは反対の方向に変位することにより、あらかじめ形作られた複数のワイヤそれぞれが、長尺状のコア部材604へ向けて径方向内側へ向けて収縮する。
【0087】
したがって、前記スネアカテーテル600は、長尺状の外側管状部材(又はシース)を含んでもよい。これは、そのなかにその長さに沿って中間管状部材を摺動可能に受容する。
前記中間管状部材には、今度は、更なる長尺状の内側管状部材(ハイポチューブなど)が、そのなかにその長さに沿って摺動可能に配置されている。
管状部材が相対的に軸方向に変位することにより、前記スネアバスケット繊維が拡張し又は折り畳まれる。
例示したような前記スネア「バスケット」は、
図6Aに例示したとおりあらかじめ形作られたワイヤから形成される。
図6Aに関して記載したとおり、前記スネアバスケットのあらかじめ形作られた前記ワイヤそれぞれは、近位端を有する。これは、中間管状部材の前記遠位端に取り付けられる。そして、遠位端を有する。これは、内側管状部材の遠位端に取り付けられる。
そのように、前記内側及び中間管状部材の端が、相対的に摺動して直線的に変位することにより互いから引き離されたとき、前記バスケットのあらかじめ形作られた前記ワイヤが長くなり、径方向内側へ向けて折り畳まれる。これにより、前記バスケットを、その後、前記外側管状部材又はシースよりも近位に向けて引き、前記シースの前記遠位端のなかに引き入れることができるようになる。
前記内側管状部材は、好ましくは、金属部材(ステンレス鋼又はニッケルチタン合金ハイポチューブなど)である。これは、その長さに沿って更なる管腔を画定する。これは、そのなかを通り抜けて誘導ワイヤを収容できる。
非外傷性の円錐状に先細りした非外傷性遠位先端を、好ましくは、前記内側管状部材の前記遠位端(
図6A)と、前記スネアバスケットの前記遠位端部分との上を覆って形成する。
前記遠位先端を、前述の構成要素の上を覆ってオーバーモールドしてもよい。あるいは、あらかじめ形成して前記システムに接着してもよい。これには、UV活性化接着剤などを使うなどする。
【0088】
好ましくは、前記遠位先端は、そのなかを通り抜ける遠位開口を画定する。これにより、誘導ワイヤが、内側管状部材の内部に画定された前記管腔を横断したのち、そのなかを通り抜けられるようになる。
前記装置600の前記遠位先端は、ペバックス高分子、35Dナイロン材料など適当な非外傷性材料などの高分子材料から作製してもよいし、他の材料から作製してもよい。このなかの他の箇所に記載されたような潤滑性疎水性又は親水性の被覆(例えば、PVP)を設けてもよい。
非外傷性材料から作製された前記遠位先端を有することにより、スネアカテーテル600が、鋭い方向転換を含む曲がりくねった血管系のなかを容易に通り抜けられるようになる。これにより、右心室のなかに、肺動脈弁の直近で到着する。これにより、誘導ワイヤが、冠静脈洞の壁のなかを通り抜け、又は、前記誘導ワイヤを標的の中隔穿通枝静脈と右心室流出路(RVOT)との間に通したのち、中隔壁のなかを通り抜けないよう遮断する。
前記内側管状部材は、前記装置600の前記遠位先端の実質的に全長を横断してもよい。しかし、好ましくは、先端の前記遠位端の手前で止まる。これにより、前記先端が、血管系のなかを通り抜けるとき、曲がることができるようになる。
【0089】
マーカーバンドは、好ましくは、前記内側、中間及び外側管状部材の遠位端部分に、それぞれ形成する。
また、
図6B~6Cに例示したとおり、望むなら、内側標的繊維(又はワイヤ640,650)を設けてもよい。これは、二次元(
図6B)又は三次元(
図6C)のループ状幾何学形状を有する。これにより、中隔の壁のなかを通り抜けて前記肺動脈弁の近くで右心室の領域のなかへ入る誘導ワイヤの遠位端を容易に捕捉できるようになる。
それぞれの標的ワイヤ640,650は、近位端を有する。これは、前記中間管状部材の前記遠位端に取り付けられる。そして、遠位端を有する。これは、カテーテル600の前記内側管状部材の前記遠位端に取り付けられる。
前記標的ワイヤ640,650は、更に、そのなかに一以上のワイヤループを画定する。これは、一以上の平面を蓄える。
前記バスケットが、前記中間及び内側管状部材の相対的な長手方向運動の前記遠位端を長手方向に変位させることによって長くなったとき、前記標的ワイヤ640,650は、同様に長くなり、前記ループが折り畳まれる。
【0090】
図6Bは、単一のループを有する標的ワイヤ640を例示する。
いずれの場合においても、前記ワイヤ640は、基本的に、単一の平面のなかにある。
図6Cは、前記ワイヤ650の変形を例示する。ループのような三つの畝ねりを提供する。これは、
図6Bにおける前記ワイヤ640の前記ループを擬態するが、単一の繊維を使用して二以上の平面のなかに形成されている。
描かれたとおり、前記畝ねりのうち二つは、同一平面を蓄える。そして、第三の畝ねりによって分離されている。これは、第二の平面のなかにある。これは、他の二つの畝ねりの平面に対して約九十度ずれている。
前記ワイヤ640,650は、様々な材料(ニチノールなどの材料など)から作製してもよい。そして、複数のマーカーバンド642,652を設けてもよい。
一実施形態において、ワイヤ640,650を、複合ワイヤから形成される。これは、フォートウェインメタルズ社から入手可能なDFT(登録商標)ワイヤなどである。
【0091】
前記誘導ワイヤを捕獲して、その遠位端を患者から取り去ったのち、前記インプラント(例えば、400)を、前記誘導ワイヤに交換する。これは、前記インプラントを前記誘導ワイヤの前記近位端に、圧着部(例えば、570)を介して圧着することによる。
前記インプラント(例えば、400)を、その後、前記誘導ワイヤが患者から引き出されるにつれて、前記誘導ワイヤの経路に沿って前進させてもよい。これを、前記保護装置又はブリッジ(例えば、420)の前記遠位端(例えば、249)が中隔壁の直近にあり前記ブリッジがLCx動脈を横断するまで行う。
危険にさらされる冠動脈の場所は、例えば放射線血管造影によって確認する。
代わりのアプローチにおいて、冠静脈に、右心房又は右心室から、画像誘導下で反対方向に入り、冠静脈洞の枝のなかへ入る。
【0092】
図7A及び7Bに示す代わりの又は「複雑な」右心房縫縮軌跡は、更に後ろに延びて、基底中隔心筋のなかを通り抜け、冠静脈洞の近くで右心房のなかへ入る。
前記ワイヤは、中隔の深部組織を横断して、後方向に移動する。そして、冠静脈洞の開口の上方に出る。
得られた縫縮弁輪形成術の平面を、
図8Cに示す。これは、冠静脈洞の平面860と関連し、かつ、そのなかにある。これにより、冠静脈洞が僧帽弁弁輪形成術から離れていても、弁輪形成術を独自に実行できる状態を維持するようにする。
図が示すとおり、縫縮の平面860は、冠静脈洞が僧帽弁輪から幾何学的に離れているときでも、僧帽弁接合を向上する。なぜなら、左心室流出路に向けて「傾斜している」からである。
前記縫縮平面860と僧帽弁輪の平面862との間の例示した角度αは、それゆえ有利である。
更に、例示した縫縮弁輪形成術の軌跡は、心室収縮期に、相反性僧帽弁接合及び左心室流出路弛緩を誘発する。
【0093】
前記誘導ワイヤは、前記誘導カテーテルとともに動作するよう寸法付けられている。そして、通常、前記誘導カテーテルより長い。
例えば、長さが約100~約250センチメートルで、直径が約0.1~約2mmの誘導ワイヤを、上述した前記誘導カテーテルとともに使用してもよい。
二次カテーテル(緊張送達カテーテルなど)を前記誘導カテーテルとともに使用するつもりなら、その二次カテーテルも、前記誘導カテーテルとともに動作するよう寸法付けられる。そして、通常、前記誘導カテーテルより長い。
【0094】
前記誘導カテーテルは、任意の適当な材料又は材料の組合せで作製してもよい。これは、外力(屈曲し又はねじれている間にかかる力など)による折り畳みに抵抗するのに適した強度と柔軟性との両方を提供する。
例示的な材料は、これに限定されないが、高分子(ポリエチレン又はポリウレタンなど);炭素繊維;セラミック;又は、金属(ニチノール、白金、チタン、タンタル、タングステン、ステンレス鋼、銅、金、コバルト-クロム合金、又はニッケルなど)を含む。
前記誘導カテーテルは、任意に、金属繊維、炭素繊維、ガラス、繊維ガラス、硬質高分子などの高強度材料からなってもよいし、それで補強してもよい。
特定の実施形態において、前記誘導カテーテル材料は、MRIに適合する。例えば、編組したニチノール、白金、タングステン、金、又は、炭素繊維などである。
【0095】
追加的に、前記誘導カテーテルの外部表面を、疎水性材料又は物質(テフロン(登録商標)など)などの潤滑性材料で被覆してもよい。これは、前記誘導カテーテルを対象の身体のなかへ挿入するのを補助したり、前記誘導カテーテルが対象の身体のなかを通り抜けて移動するのを補助したりする親水性材料(例えば、PVP)などである。
追加的に、前記誘導カテーテルは、偏向可能先端を含んでもよい。これは、単一の軸自由度を有する単純な偏向可能先端などである。
例示的な(非限定的な)固定支点及び可動支点の偏向可能先端カテーテルが、市販されている。これは、米国特許第5,397,321号;第5,487,757号;第5,944,689号;第5,928,191号;第6,074,351号;第6,198,974号;第6,346,099号に記載された偏向可能先端カテーテルなどである。これらそれぞれは、参照によりこのなかに全体としてあらゆるすべての目的のために組み入れられる。
したがって、任意の適当な固定支点又は可動支点の偏向可能先端カテーテルを、このなかに開示される誘導カテーテルとして使用するために適合させることができる。
前記誘導カテーテルは、また、前記カテーテルがその長手方向軸のまわりで回転できるよう補助する構造又は機構を含んでもよい。
【0096】
前記誘導カテーテルは、誘導襟部、ハンドグリップ、ハンドルなどの構造又は装置を、その近位端に含んでもよい。これは、前記誘導カテーテルの動作を補助する。
様々な制御機構(これは、電気的、光学的又は機械的な制御機構を含む。)を、誘導襟部を介して前記カテーテルに取り付けてもよい。
例えば、誘導ワイヤを、機械的制御機構として含んでもよい。
前記誘導襟部は、追加的な動作的特徴を含んでもよい。これは、前記誘導カテーテルの手動制御を補助するためのグリップ、前記誘導カテーテル管腔又は細分化された管腔の向きを示すマーカー、誘導カテーテルが前進した深さを計量するためのマーカー、誘導カテーテルの動作又は対象の生理学的徴候を測定するための器具(例えば、体温計又は圧力モニター)、又は、誘導カテーテル管腔に結合された注入器制御機構などである。これは、少なく正確な量の注入物を送達する。
いくつかの実施形態において、前記誘導襟部は、器具類を含む。これは、誘導カテーテルのなかで金属製の編組に電気的に結合されている。その結果、前記誘導カテーテルが、同時に、MRIのための受信コイルとして使用できるようになる。
【0097】
前記誘導カテーテルを対象の身体のなかへかつそのなかを通り抜けて誘導する前記システムとともに使用される誘導ワイヤは、任意の適当な材料又は材料からなってもよい。これは、前記誘導カテーテルに関連して上述した材料を含む。
例示的な(非限定的な)誘導ワイヤは、前記装置とともに使用するのに適した強度と柔軟性とを有する材料からなる。これは、金属(例えば、外科用ステンレス鋼、ニチノール、白金、チタン、タングステン、銅、ニッケルなど)製の撚り糸、炭素繊維、高分子(編組したナイロンなど)などである。
特定の(非限定的な)誘導ワイヤは、ニチノールなどの柔軟でねじれにくい材料の撚り糸からなる。
前記誘導カテーテル又は誘導ワイヤは、画像を増強する特徴、構造、材料又は装置(放射線不透過性マーカー(例えば、誘導ワイヤの外周のまわりにある白金又はタンタルのバンド)など)を、その遠位端に近接して含んでもよい。
別の例として、前記誘導ワイヤは、エッチング又はノッチを含んでもよい。あるいは、音響反射性材料で被覆してもよい。これにより、血管内、心臓内、経食道などの超音波撮像方法を介して得られる画像を増強する。
別の例として、前記誘導ワイヤを、T1短縮剤又はT2短縮剤で被覆してもよい。これにより、MRIを使用して容易に受動的可視化をできるようにする。
更に別の例として、光ファイバ二次カテーテルを、前記誘導カテーテルの二次カテーテル管腔のなかへかつそのなかを通り抜けて挿入してもよい。これにより、誘導ワイヤが前記遠位誘導ワイヤ管腔ポートのなかを通り抜けて展開されたとき、前記誘導ワイヤの対象のなかでの位置を可視化するのを助ける。
いくつかの実施形態において、前記誘導ワイヤや誘導カテーテルは、貫通組織(心筋骨格、筋肉、結合組織など)に有用な構造、装置又はデバイスを、その遠位先端に含む。
例えば、前記誘導ワイヤの前記遠位先端を鋭利にして尖らせてもよい。これは、組織を貫いて穿刺する。あるいは、芯ぬき機構又は鉗子をその遠位先端に有する二次カテーテルを、誘導カテーテルと併用して使用してもよい。
代わりの実施形態において、前記誘導ワイヤは、高周波又はレーザー切除エネルギーを送達しいてもよい。これにより、組織の横断を補助する。
しかし、代わりの実施形態において、前記誘導ワイヤの前記遠位端を屈曲して、J字形状又は豚の尻尾形状の先端を提供する。これにより、操作している間に、誘導ワイヤが組織を穿孔しないよう保護する。
更に別の代わりの実施形態において、前記誘導ワイヤそれ自体が、偏向可能な先端を有する。これにより、自然の組織平面とは無関係に組織を容易に横断できるようにする。
一以上の二次カテーテルを、前記誘導カテーテルの前記管腔のなかに展開してもよい。
前記誘導カテーテルと同様、それぞれの二次カテーテルは、近位端と遠位端とを有する。しかし、すべての二次カテーテルが管腔を有するわけではない。
例えば、非管腔二次カテーテルは、種々のプローブを含んでもよい。これは、温度プローブ、高周波又は低温切除プローブ、中実針などである。
【0098】
例示的な非限定的な二次カテーテルは、疎通針カテーテルである。これは、前記誘導カテーテルのなかを通り抜けて、心腔のなかへ展開されてもよい。これにより、縫縮弁輪形成結紮材を、冠静脈洞のなかを通り抜けて、僧帽弁のまわりに留置する。
疎通針カテーテルは、二次カテーテルの一種である。これを使用して、縫合材を、目的の体組織、器官又は構造に適用してもよい。
【0099】
C.張力の印加
張力を、弁輪形成縫縮を介して、前記シース材料(例えば、450)のなかを通り抜けて印加する。これは、好ましくは、上述したような中空の編組した縫合材料である。
張力を、前記シース(例えば、450)の両端に印加してもよい。なぜなら、血管アクセスの時点で、ロック送達カテーテルと協調して外在化されているからである。これは、以下に更に詳細に記載されるとおりである。これは、前記縫合材の両端を方向付けて、前記ロック送達カテーテルの前記端に装着されたロックのなかを通り抜けるようにする。
【0100】
いくつかの処置において、前記テザー450の両端(外在化された前記インプラントの両端)が、互いのまわりでねじれる可能性がある。
これにより、前記テザーの両端の上を覆う前記ロックの送達が複雑になり得る。
これに対する安全のため、前記テザー450の両端が(例えば、頸静脈などのアクセスポイントを介して)外在化したのち、
図19に記載したような直線化又は縺れ解除カテーテル1900を使用して、前記テザーの両端を分離してもよい。これにより、それらを平行にし、ねじれないようにする。これにより、前記ロックを、前記テザー450の両端の上を覆って、心臓のなかへ送達することを、大幅に単純化する。
カテーテル1900は、複数のスネア1901を含む。
使用において、テザー450の端それぞれを、遠位ループで終端する前記スネアの一つのなかへ供給する。
それぞれのスネアは、例えば、ステンレス鋼ワイヤ又はハイポチューブから作製された本体を有する。
それぞれのスネアの前記近位端は、対応するスネアハブ1907,1908に取り付けられている。
スネア1901は、二重管腔シャフト1902のなかを通り抜けて摺動可能に配置される。これは、例えばペバックス材料から作製される。
ガスケット1903を伴う二重止血弁を、また、シャフト1902の近位端に設ける。そして、一以上のマーカーバンド1904(例えば、白金イリジウム)を、カテーテル1900の前記遠位端の場所を可視化するのを助けるために、設ける(これは、ペバックスで作製された熱収縮カバー1905によってその場に保持される)。
ストレインリリーフ1906も、また、設けられる。これは、シャフト1902の前記近位端のまわりに熱収縮される。
様々な構成要素を、適当な接着剤によりその場に保持してもよい。
前記テザー450を前記カテーテルに装填したのち、前記ハブ1907,1908を、近位へ向けて引いてもよい。これにより、二重管腔シャフト1902が、身体のなかへ前進し、前記ロックが送達されるべき心臓のなかの場所に至る。
術者は、前記処置を透視下で可視化できる。そして、前記テザー450が放射線不透過性であり、あるいは、放射線不透過性繊維(このなかの別の箇所に記載した白金ワイヤなど)を含むかぎり、前記テザーがねじれている場所を視覚的に検出できる。
【0101】
前記テザー450を外在化して解いたら、張力を、画像誘導のもと、前記テザーに、前記ロック送達カテーテルの遠位端にある前記ロックを介して印加してもよい。これを、僧帽弁輪の外周が所望の程度減少するまで行う。あるいは、僧帽弁逆流が減少するまで行う。あるいは、僧帽弁流入閉塞など他の有害なエンドポイントが達成されるまで行う。
前記シース(例えば、450)における張力を、その後、しっかり固定してもよい。これは、同時係属中の米国特許出願第14/074,517号(2013年11月7日出願)に記載されたものなどのロック送達カテーテル、又は、後述するロック送達カテーテルのロックを係止することによる。
その代わりとして、結び目を、誘導カテーテルのなかを通り抜けて結んで押してもよい。
前記ロック又は結び目を、所望に応じて、二つの縫縮軌跡が交差する右心房又は右心室に置いてもよい。あるいは、血管のアクセスポイント又はその二つの中間に置いてもよい。
したがって、望むなら、例えば送達カテーテルを介して印加される前記固着装置に対する対圧により、張力を送達してもよい。
固着する前に、張力を解放し又は減少させてもよい。これにより、例えば、前記保護装置を位置変更し、あるいは、僧帽弁輪外周の減少度合いを下げる。
【0102】
張力を印加するとき、弁逆流を、好ましくは、適切な撮像技術により反復的かつ非侵襲的に評価する。
このような撮像技術は、X線血管造影、電磁位置検出、MRI、外部又は腔内又は血管内超音波、X線断層撮影、左心房又は肺静脈又は肺動脈など罹患したチャンバにおける圧力トランスデューサー、又は上記のいずれかの「融合」又は組合せを含む。
弁逆流が減少して(又は解消すらして)所望の張力が達成されたのち、前記張力を固定する。これには、前述したようなロック又は結び目送達システムを使用する。そして、前記ロック又は結び目よりも近位にある余分なシース材料を、任意の所望のやり方で、切断して取り去ってもよい。
本開示の一態様にしたがって、切断器具を、このなかの
図14A~14Iを参照して以下に更に記載されるように使用してもよい。
【0103】
得られた前記外周シース(例えば、450)を結び付けて、閉じたループを形成する場合、前記シース450は、本質的には縫縮縫合材となる。
更なる苦労をせず、当業者は、この説明を使用して、本発見を最大限に利用できると考えられる。
【0104】
保護装置(例えば、420)を伴う前記インプラントの使用法は、縫縮弁輪形成技術における使用法のために開示されている。
しかし、開示された前記インプラントを、任意の他の弁輪形成装置とともに使用してもよい。これは、下にある冠動脈を横切る領域において、部分的にさえ、冠静脈洞のなかを通り抜けて延びる。
例えば、前記保護装置(例えば、420)を使用して、任意の冠静脈洞弁輪形成装置が冠動脈を圧迫しないよう保護してもよい。これは、米国特許第7,090,695号における冠静脈洞装置、又は米国特許第10/787,574号(米国特許公報第2004/0254600号)で示された膨張可能な冠静脈洞装置などである。
これらの装置は血管内送達のために設計されている。しかし、このなかで開示した前記保護装置は、カテーテルベースのアプローチではなく開胸外科的修復を使用して移植される弁輪形成装置とともに使用してもよい。
冠動脈圧迫の問題には、また、これらの装置でも遭遇する。そして、このなかに開示された前記保護装置を使用して、その問題を回避してもよい。
したがって、現在開示されている実施形態は、縫縮弁輪形成術とともに使用する保護装置に限定されない。そして、カテーテルベースの送達技術を有する装置の使用にも限定されない。
【0105】
任意の種類の冠静脈洞弁輪形成術インプラントとともに使用する場合、前記保護装置(例えば、420)を、前記インプラント(例えば、400)の一体的な部品として提供してもよい。あるいは、前記インプラントと下にある保護すべき冠動脈との間の置くのに適した別個の装置として提供してもよい。
前記インプラントの一体的な部品として提供された場合、前記インプラントを、冠静脈洞のなかに位置付ける。これにより、前記支持体の前記アーチが、下にある冠動脈の上を乗り越えて延びるようにする。
代わりの実施形態において、前記保護装置は、別個の装置として提供してもよい。これは、カテーテルシステムのなかを通り抜けて前進する。これを、保護すべき冠動脈の上を覆って位置付けられるまで行う。
【0106】
僧帽弁縫縮弁輪形成装置は、このなかに記載したとおり、心臓組織を径方向内側へ向けて押し込んでもよい。そして、心臓のなかへ突出した保持構造を、生来の僧帽弁領域の近くに作り出す。これにより、人工経カテーテル僧帽弁(TMV)を移植してしっかり固定できるようになる。
このなかで使用したとおり、用語「人工僧帽弁」「経カテーテル僧帽弁」「TMV」「人工僧帽弁装置」「人工僧帽弁インプラント」などは、生来の僧帽弁領域のなかに又はそれに近接して移植可能な任意の人工装置を含む。これは、弁付き装置を含むとともに、弁構成要素(例えば、フレーム、ステント、リング、ファスナー、テザー、弁付き装置の部分など)を含まない装置を含む。
いくつかの実施形態において、縫縮弁輪形成術は、内部隆起、着地帯(このなかに上記したとおり)、固着平面など(このなかでは一般的に「保持構造」と呼ばれる)を作り出すことができる。これは、TMVがしっかり固定されるべきものである。
【0107】
心臓のなかの前記保持構造にしっかり固定された前記TMVは、径方向へ向けて圧縮可能であり径方向へ向けて拡張可能な人工装置を備えてもよい。これは、例えば、経カテーテル、経血管送達アプローチを使用して、径方向へ向けて圧縮された状態で、心臓のなかへ送達される。
心臓の内部に入ると、前記TMVは、拡張してもよい。これには、印加された拡張力(例えば、膨張可能なバルーン)を使用する。あるいは、固有の自己拡張材料(例えば、ニチノール)を使用する。これにより、送達している間に印加される圧縮力を取り去ると、TMVが自己拡張する。
【0108】
拡張すると、前記TMVは、僧帽弁縫縮弁輪形成装置によって作り出された保持構造にしっかり固定されてもよい。これにより、前記TMVが心臓のなかの位置から外れるのを妨げる。
例えば、前記TMVは、管状フレームを備えてもよい。これは、前記保持構造の両側のまわりで拡張したり、前記保持構造の上へクランプしたりする。
拡張すると、移植された前記TMVは、径方向外側へ向かう力を心臓組織に印加してもよい。
この径方向外側へ向かう力は、心臓組織のなかの血管を不必要に圧迫し得る。これにより、収縮及び血流低下を生じる。
同時に、前記僧帽弁縫縮弁輪形成装置によって印加される径方向内側へ向かう力も、また、心臓組織のなかの血管を外部から不必要に圧迫し得る。
心臓血管に対するこの二重の圧迫は、虚血、心臓発作などの合併症のリスクを悪化させる可能性がある。
特に懸念されるのは、大心静脈の近くにある冠動脈回旋枝とその辺縁枝である。これは、移植された前記TMVと周りの僧帽弁縫縮弁輪形成装置との間にあり得る。
したがって、このなかに開示されたような保護装置は、外部から中へ(僧帽弁縫縮弁輪形成装置を介して)のものと、内部から外へ(TMVを介して)のものとの両方からの圧迫から、そのような血管を保護するのを助けてもよい。
【0109】
図9は、心臓の僧帽弁領域の概略断面図である。これは、例示的なインプラントシステム900を示す。これは、移植されたTMV912を含む。これは、心臓壁902のなかに位置付けられている。そして、僧帽弁縫縮弁輪形成装置910を含む。これは、心臓壁のまわりに位置付けられている。
前記装置910は、アーチ状保護装置420を含む。これは、冠動脈252の上を覆って架かる。これにより、外部から前記装置910の両方によって印加された圧迫と、前記TMV912によって心臓壁902の内部に印加された外側へ向けて拡張する力914とから動脈を保護する。
例示的な前記保護装置420は、アーチ状部分を含む。これは、平らで概して同一平面上にある二つの近位及び遠位区域428,429の間に延びている。
ブリッジ又は保護装置420は、他の例示的な保護装置に関してこのなかで記載された特徴及び寸法の任意の組合せを有してもよい。
【0110】
図10は、緊張している縫合材(例えば450)を示す。これは、部分的に前記僧帽弁のまわりで、前記冠静脈洞250のなかを通り抜けて延びている。開示された保護装置は、含まれていない。
その結果、回旋冠動脈252が前記緊張縫合材の下に閉じ込められる。これは、冠静脈洞が動脈と重なっているからである。これにより、動脈に望ましくない圧迫が印加される。
TMVを、また、僧帽弁のなかに移植したとき、内部から外への追加的な圧迫力を動脈252に印加し得る。
前記保護装置がなければ、前記動脈252は、逆向きの力によって折り畳まれたり締めつけられたりし得る。
【0111】
図11A及び11Bは、本開示にしたがうロック送達システムの態様を例示する。
限定ではなく、例示の目的のため、前記ロック送達システム1110は、送達カテーテルを含む。これは、近位端と、遠位端とを有する。これは、その遠位端にロックが取り付けられている。
より具体的には、ロック送達システム1110は、外側管状部材を含む。これは、内側管状部材が、そのなかに配置されている。
【0112】
前記内側管状部材は、任意の適当な材料から作製してもよい。好ましくは、PEEKなどの高分子材料である。
前記外側管状部材は、好ましくは、編組したカテーテル材料として提供される。これは、編組した層を含む高分子共押し出しなどである。
ファスナー部分と内側管状部材との間をねじ連結することにより、二つの前記構成要素を互いに取り付けることができる。これにより、前記ロックを遠隔で開閉できる。更に、前記ロックを完全に展開したのちであっても、望むなら、前記ロックを取り去って回収することができる。
描かれたとおり、ロック送達システムのこの実施形態は、近位収容部を含む。これは、止血送達装置ハブに連結されている。これは、フラッシュポートを伴う。これは、遠位外側管状部材に連結されている。これは、その遠位端で前記ロック本体のための収容部に連結されている。
前記収容部は、前記ロック送達システムに対して回転的な登録で前記ロック本体を維持するよう構成され適合されている。これにより、前記送達システムを回転させると、前記ロック本体がそれに伴って回転するようになる。
装置1110は、更に、回転可能な解放ノブ(又はレバー)1154を含む。
係止位置にあるとき、装置1110の前記遠位端のまわりに経路付けられたテザーは、摩擦力によりその場にしっかりと保持され係止される。これにより、前記ロックを、前記装置1110の前記遠位端に対してその場に保持する。
前記ノブ又はレバー1154が、前記収容部のなかの回転軸のまわりで所定量(90度など)回転したとき、前記テザーが移動可能になる。望むなら、テザーに張力を印加してもよい。あるいは、テザーを装置から引き出してもよい。
【0113】
前記ロック送達システムの例示した実施形態は、更に、ばね負荷された追加的な一以上の押しボタン(又は張力制御)を含む。これは、前記インプラントの前記外側シース(例えば、450)の両端の把持を制御する。
前記ボタンが押し下げられていない既定の位置において、前記押しボタンに関連付けられた捕捉機構のなかを通り抜ける前記テザーは、前記インプラントテザー(例えば、このなかの別の箇所に記載したシース450)を握り、緊張下で維持する。
それぞれの押しボタンを(個別に又は両方とも)押し下げたとき、前記インプラントに関連付けられた一方又は両方のテザーを解放できる。
理解されるであろうことは、単純化のため、前記テザーの両端を、同じ制御ボタンのなかを通り抜けて経路付けてもよいことである。
【0114】
図12A~12Dに記載したとおり、本開示にしたがうロック本体に取り付けるための肢部の更なる実施形態を提示する。これは、長さが調節可能である。
図12Dは、インプラント(例えば、テザー450)の断面図を提示する。これは、長さが調節可能な肢部のなかを通り抜けている。これは、近位端でロック本体1212に取り付けられる。
前記肢部は、外側管状部材1260を含む。これは、ベル形状の非外傷性遠位先端1266を含んでもよい。これは、好ましくは、そこに一体的である。これは、中隔壁に当接する。
外側管状部材1260は、また、好ましくは、内側管状部材の遠位区域1265に取り付けられる。これは、前記遠位先端1266から近位方向に沿って、圧縮ばね1264が前記外側管状部材1260の下方に配置されている場所まで延びる。
ばねの前記遠位端は、前記遠位区域1265の前記近位端に当接する。
近位内側管状部材1262は、管状部材1260の近位区域のなかに摺動可能に配置されている。
近位内側管状部材1262の近位端は、前記ロック本体1212に取り付けられている。そして、前記近位内側管状部材1262の遠位端は、前記ばね1264の近位端に当接する。
したがって、ばね1264は、外側管状部材1260の内側円筒状表面、管状部材1265の前記近位端と、管状部材1262の前記遠位端とによって画定される区画のなかに含有される。
ばね1264は、その長さに沿って内部管腔を画定して取り囲む。これにより、シース450が通過できるようになる。
【0115】
動作において、前記遠位先端1266が中隔壁に当接したとき、前記肢部の全長を減少させてもよい。これは、前記ロック本体を遠位へ向けて押し進めることによる。これは、今度は、近位内側管状部材1262に押し当たる。これは、今度は、前記外側管状部材1260のなかで(かつ、それよりも)遠位へ向けて摺動し、前記ばね1264を圧迫する。
外側管状部材1260に取り囲まれていない内側管状部材1262の前記近位部分は、前記ばねが圧縮できる量を画定する。これは、所望に応じて配列できる。
前記ばねは、完全に圧縮するよう構成してもよいし、部分的にだけであってもよい。
理解されるであろうことは、
図12Dが代表的な断面であり、寸法的に一定の縮尺であることを意図していないことである。
この実施形態を更に例示するため、
図12Aは、肢部を例示する。これは、長くなった状態にあり、前記ばね1264が圧縮されていない、
図12Bは、部分的に圧縮されたばねを示す。
図12Cは、完全に圧縮されたばねを示す。
【0116】
図12E~12Hに記載されたとおり、長さが調節可能な肢部の更なる実施形態を提示する。
図12Hは、インプラント(例えば、テザー450)の断面図(寸法的に一定の縮尺ではない)を提示する。これは、長さが調節可能な肢部のなかを通り抜けている。これは、近位端でロック本体1212に取り付けられる。
前記肢部は、外側管状部材1270を含む。これは、ベル形状の非外傷性遠位先端1276を含んでもよい。これは、好ましくは、そこに一体的である。これは、中隔壁に当接する。
外側管状部材1270は、遠位区域と、近位区域とを含む。これは、圧縮区域1272によって分離されている。
【0117】
圧縮区域1272は、平行な複数の切り込みによって画定される。これは、前記外側管状部材の外側表面から前記外側管状部材の内側表面まで通っている。
前記切り込みは、前記肢部の中心長手方向軸に平行に配列されている。そして、前記外側管状部材1270の外周のまわりに周方向に(好ましくは、一様に)分布している。
前記切り込みは、好ましくは、長さが均一であり、縦に整列している(しかし、所望に応じて、変化してもよい)。
任意の適当な数のこのような切り込みを、前記管状部材1270のまわりに作成してもよい。
前記外側管状部材の前記近位区域は、ロック1212に直接取り付けてもよい。
例示したとおり、管状部材1270の前記近位区域は、内側管状部材1274の近位区域に取り付けられている。管状部材1274の前記近位端は、ロック1212のなかに受容され、そこに取り付けられている。
管状部材1274は、前記圧縮区域1272より遠位にある管状部材1270の区域には取り付けられていない。これにより、その区域において、前記管状部材1270,1274が、相対的に摺動接触できる。
動作において、
図12E~12Gを参照して、
図12Eは、全長状態にある肢部を例示する。前記圧迫区域1272において前記切り込みの間に画定される脚は、前記外側管状部材1270が短くなるにつれて、互いから分離し始め、径方向外側へ向けて曲がる。
図12Fは、管状部材1270が短縮し続けるにつれて、更に外側へ向けて曲がる脚を示す。
図12Gは、長さが最も短い状態にある部材1270を示す。前記「ばね」又は圧縮区域1272の弾力性の脚が完全に圧縮され、前記肢部の外周に花弁配列を形成している。
【0118】
図13A~3Cは、例示したロックを、動物のなかの例示的な縫縮装置の上で展開したところを例示する。
図13Aは、前記ロック送達カテーテル1110の画像を例示する。これは、前記ロック送達システムのなかを通って近位へ向けて引き抜き前記ロックを係止して張力を維持することにより前記縫合材(例えば450)に張力がかかり得る場所に送達されている。
図13Bにおいて、前記外側管状部材を、前記外側ロック部分から解放して引き出す。
図13Cにおいて、前記内側管状部材は、前記ロックの前記内側部分から取り付けられ、展開された前記ロックをその場に残して、前記縫縮インプラントを緊張させる。
【0119】
図14A~14Iは、本開示にしたがう切断器具1400の一部分を例示する。これは、ロックが展開されたのち、テザー/シース材料を切断する。
前記切断器具1400は、内側組立体を含む。これは、刃を伴う。これは、外側組立体のなかに摺動可能に配置されている。これは、縫合誘導部を有する。これは、縫合材/シース材料を所定の位置に保持するよう構成される。これにより、心臓などの体内の場所の内部にある間、それを容易に切断できるようにする。
図14Aは、前記切断器具の前記内側組立体の遠位部分を例示する。これは、長尺状のコアシャフト部材(近位端で押しハブに取り付けられる)を遠位端で切断刃ホルダーに含む。
【0120】
図14Aに例示したとおり、外側収容部1460は、丸い非外傷性端1466を含む。そして、そのなかを貫いて、軸方向に間隔を空けた二つの穴を画定する。前記遠位穴1464は、入口ポイント又は入口穴として、シース又は縫合材(例えば、450)を、そのなかに受け入れる。そして、前記近位穴1462は、縫合材/シースの出口を提供する。
使用において、前記切断器具1400は、ロック送達カテーテルが取り去られた後、穴1462,1464のなかを通り抜けて、このようにして前記インプラントのテザーそれぞれの上を覆って糸通しされる。そして、前記シース材料(例えば、450)は、患者の外部にあるなどして、容易にアクセス可能である。
前記切断器具を、その後、心臓のなかへ入れて、既にその場にある前記ロックの近くの場所まで送達する。
前記切断機構の前記内側組立体を、その後、前記切断機構の前記外側組立体よりも遠位へ向けて前進させる。これを、前記刃1432が、両方の穴1462,1464を通り越して前進し、
図14Bに例示したとおり前記テザー(例えば450)を切断するまで行う。
図14Cに例示したとおり、前記切断器具1400の平らな遠位外形は、前記器具の外形を減少させるとともに、優れた整列と滑らかな切断動作とを提供する。
図14Dは、前記切断器具の前記遠位端の破断図を提供する。これは、前記内側組立体が完全に遠位へ向けて延びて前記切断動作を達成したのちの、前記内側及び外側組立体の相対的な位置関係を示す。
【0121】
図14E~14Iは、装填スネア1480の使用を例示する。
図22Eに例示したとおり、前記カテーテル1400は、遠位端と、内部機構とを含む。これは、上述したとおりである。そして、近位ハンドルを含む。これは、ばね負荷された押しボタントリガーを有する。前記ボタンは、前記ばね(不図示)によって近位方向に付勢される。
前記ボタンは、前記切断カテーテルの前記内側可動シャフトに、前記シャフトの前記近位端で連結される。これは、今度は、その遠位端で前記切断刃に連結される。
前記ボタンが使用者によって押し下げられたとき、前記刃が開口1462,1464を通り越して遠位へ向けて前進する。これにより、前記切断カテーテル1400のなかを通り抜けて前記開口に架かる任意のテザーを切断する。
前記スネアは、当初、前記スネアの長尺状の前記ループ部分を、開口1462,1464を経由して、カテーテル1400の前記遠位部分のなかを斜めに通り抜けさせることによって利用される。
図14G-14Iに例示したとおり、スネア1480の前記ループをカテーテル1400のなかを通り抜けて位置決めしたのち、ループテザー/シース450の両端を、前記スネア1480のなかを通り抜けさせる。そして、前記スネアを、カテーテル1400のなかを通して引き抜く。これにより、それとともにテザー450を運び、前記切断カテーテルにループテザー/シース450を糸通しする。
【0122】
理解されるであろうことは、他の構造を、
図14A~14Iの前記切断カテーテルを使用して切断し、あるいは、切り離してもよいことである。
例えば、更なる実装において、開示されたような前記切断カテーテルを使用して、前記ペースメーカーに前もって取り付けられた心臓リードを切断してもよい。
心臓リードの取り去りは、一般に、危険である。しかし、現在開示されている実施形態は、前記心臓リードを、例えば、左心室などの心臓の場所に沿って糸通しできる。
前記リードを、その後、定着点又はその近くで切断してもよい。そして、前記定着部をその場に残して、前記ワイヤを取り去る。
【0123】
図15A~15Eは、ロック送達カテーテル1500の更なる実施形態を例示する。これは、以前の実施形態と同様のハンドル1502を含む。
カテーテル1500は、ハンドル1502を含む。これは、
図11A~11Bを参照して上述したような緊張テザー制御を有する以前の実施形態と同じ機能を有する。
カテーテル1500は、ロック解放ノブを含む。これは、前記ロック機構を、前記ハンドル1502よりも近位へ向けて又は遠位へ向けて前進させる。また、前記ロック本体を(例えば、ねじ連結を介して)解放可能に係合する。これは、上述したとおりである。
カテーテル1500は、更に、取り去り可能なシース1510を含む。これは、前記ロック本体1530、前記冠静脈洞肢部1540、前記三尖弁肢部1550を取り囲む。これは、バンパー1552(これは、中隔壁に印加される軸方向の力を広げる。)を含んでもよい。そして、導管を提供してもよい。これは、前記テザー装填スネアの留置を誘導する。
前記シース1510を含む前記カテーテルを、前記送達管(又は、実施形態に応じてコアワイヤ)を取り去ったのち、患者の血管系に、インプラントの外側シース(例えば450)の上を覆って導入することができる。
前記シースを、例えば、プルワイヤ(不図示)を介して近位へ向けて引き出してもよい。これは、ハンドル1502のなかを通り抜けて経路付けられる。あるいは、適当な時期(前記シースの前記遠位端が患者の心臓の近くにあるときなど)に、剥離し、破裂させるなどしてもよい。
肢部を、その後、露出させる。これを方向付けて、心臓の血管系のなかへ入るようにし、所望のところに留置してもよい。
前記シース(例えば450)を、その後、前記ロック本体1530の内部に係止してもよい。そして、前記ロック本体1530から近位へ向けて延びた余分な前記シースを、このなかで開示した前記切断カテーテルの実施形態を使用して切り離してもよい。
図15Cは、設置されたインプラントと、肢部を有するロック本体との概略図を示す。これは、(望むなら)冠動脈保護要素1580を含んでもよい。これは、シース1570によって取り囲まれている。これは、上述したように放射線不透過性であってもよい。
また例示したのは、前記バンパー1552を伴う前記三尖弁肢部1550と、冠静脈洞肢部1540とである。
図15Dは、ロック送達システム1500の等角図を提示する。これは、前記ロック本体を展開(解放)する前である。一方、
図15Eは、前記ロック及びインプラントの斜視図を例示する。これは、展開したあとである。
例示したとおり、前記肢部は、平面的ではなく、その代わり、三次元的な湾曲を有するものとして提示されている。前記肢部は、前記ロックへ向けて平面から外に湾曲する。
理解されるであろうとおり、前記肢部の前記近位端は、好ましくは、前記ロック本体に取り付けられる。
図16A~16Dは、ロック本体と、突出している肢部との更なる実施形態を例示する。これは、このなかの別の箇所に記載したとおり、移植処置をしている間に、前記インプラント400の上を覆って経路付けされるべきものである。
特に、
図16A~16Dは、この実施形態を構築するために使用される精密な構造を詳述する。
前記肢部は、前記ロック本体に取り付ける近位端と、遠位端とを有する。
【0124】
図16A~16Dに記載したとおり、前記肢部の前記近位端は、同心の内側及び外側高分子管を提供することによって構築されている。金属(例えば、チタン)管の遠位端は、前記管の近位端で、前記管の間に挿入されている。
一以上の窓1610(又は、穴)が、前記管の間に挿入された前記金属管の部分のなかに画定される。
前記組立体を、その後、加熱して形成する。これは、前記管の前記高分子材料を、前記金属管のなかに画定された窓のなかを通り抜けて流れさせるためである。そして、前記内側及び外側管を、前記金属管状部材の前記側壁のなかの前記窓のなかを通り抜けて互いに融合させる。
前記管状部材の反対側の近位端を、その後、前記ロック本体に溶接(例えば、レーザー溶接)する(
図16B)。
この処置を使用して、両方の肢部の前記近位端を形成し、前記ロック本体に取り付ける。
前記金属管及びロック本体は、任意の適当な材料(例えば、チタン、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金など)であってもよい。これは、例えば、ハイポチューブのなかに形成される。
好ましくは、前記ロック本体及び管を、同一の又は同様の材料から作製する。これにより、溶接によって接合できるようになる。
図16Cに例示したとおり、前記高分子肢部を、患者の解剖学的構造のなかで前記装置に期待される位置に近い形状に熱設定してもよい。
前記高分子肢部を、ポリエーテルブロックアミドなどの適当な材料から形成してもよい。
図16Dは、前記ロック及び肢部の例示的な断面を提供する。前記インプラントの前記テザーがそのなかの通り抜けて方向付けられている。
【0125】
図17は、前記ロック及び肢部組立体の更なる実施形態を提示する。前記RVOT肢部を、大きさが異なる血管系に適応するため長さが異なる交換可能な肢部1710を有するものとして例示する。
したがって、様々な長さの肢部を有するキットを提供してもよい。そして、関連する医療専門家が、どのサイズの肢部延長部を使用するかを評価することができる。
肢部1710は、前記構造の残りの部分に取り去り可能に取り付けてもよい。これは、例えば、ねじ連結による。
理解されるであろうことは、前記肢部延長部それ自体に、このなかの他の箇所に記載した特徴を設けて、長さを調節可能にしてもよいことである。
【0126】
更なる態様にしたがって、
図18は、移植可能なペーシングシステムの実装1800を例示する。これは、心臓のなかのループ経路を周航するよう構成され配列されている。
例えば、米国15/328,046は、一つの技術を記載している。これは、中隔静脈を介してペースメーカーリードを移植する。これには、冠静脈洞のなかを通り抜けるアプローチを使用する。これは、本開示にしたがうインプラント装置への経路を作るのと同様のやり方である。
したがって、初期リード(好ましくは、双極リード)を、中隔壁のなかで、それに由来する信号が最低限のQRSを提供できる場所に定着する。
いったん適当に定着すれば、望むなら、前記リード(又はその延長部)の近位端を、患者から外在化してもよい。そして、インプラント400に構造が類似する特別に構成されたインプラントを、心臓リードの上を覆って送達してもよい。これには、前記心臓リードを、少なくとも部分的に送達レールとして使用する。
その代わりに、前記リードを外在化してもよい。そして、前記インプラントを、このなかに開示されたような外在化された誘導ワイヤの近位端に圧着したのち、送達してもよい。そして、前記インプラントを設置してもよい。
前記ロックを設置する時期が来たとき、前記ロックを、心臓リードとともに、前記インプラント(例えば400)の上を覆って糸通ししてもよい。そして、前記ロックがその場に係止されたとき、前記ロックが前記リードとの電気的接触を完成するよう構成してもよい。
例えば、前記ロックは、制御器を含んでもよい。これは、動力供給源と、信号発生器とを有する。
長尺状の前記内側テザーは、また、前記ロックを伴う電気回路を完成させてもよい。そして、適切な制御回絡を、前記ロックのなかに設けてもよい。これは、前記内側テザーのなかの白金などのワイヤのループが、信号を送受信するための、あるいは、前記ペースメーカーを動かすため前記ロックのなかのバッテリーを充電する充電パルスを受け取るためのアンテナとして機能する。
【0127】
しかし、実施形態1800は、また、そのセンサ及び電極のすべて(組み合わせて1820という。)を搭載するよう構成してもよい。
したがって、前記インプラント1800を、送達し、その場で組み立ててもよい。そして、心臓組織を刺激したり、心臓のなかの生物学的条件(例えば、電気機械的及び化学的条件)を感知したりするようプログラムしてもよい。
【0128】
したがって、前記ペーシングシステム1800は、このなかで記載したとおり、長尺状の内側テザーを含んでもよい。これは、近位端と遠位端とを有する。そして、外側シース材料を含んでもよい。これは、長尺状の前記内側テザーを取り囲む。これは、近位端と遠位端とを有する。そして、少なくとも一つの導電体を含んでもよい。これは、長尺状の前記内側テザーと前記外側シースとのうち少なくとも一つに沿って又はそのなかに配置される。そして、心臓ペーシング制御器1810を含んでもよい。これは、前記インプラントの前記ロックのなかに一体化されてもよい。そして、動力源を含んでもよい。そして、パルス発生器を含んでもよい。そして、制御回絡を含んでもよい。これは、少なくとも一つの前記導電体に動作可能に結合される。そして、少なくとも一つの心臓ペーシング電極とを含んでもよい。これは、心臓組織の上部のなか又はその上に移植されるよう構成され配列される。少なくとも一つの前記心臓ペーシング電極は、少なくとも一つの前記導電体を経由して前記心臓ペーシング制御器に電気結合される。そして、ロックを含んでもよい。これは、前記外側シース材料の前記近位端及び前記遠位端をしっかり固定する。
【0129】
いくつかの実装において、前記ロックは、前記心臓ペーシング制御器に結合されてもよい。
少なくとも一つの前記導電体は、少なくとも部分的に、長尺状の前記内側テザーのなかに配置されている。
望むなら、前記ロック/制御器1810は、一以上の心臓ペーシングリードが、そのなかを通り抜けて経路付けられてもよい。これは、電極で終端する。これは、場所1820などの任意の所望の場所示す。
電気通信を、前記心臓ペーシングリードと確立してもよい。これは、前記ロックの一部分を係合することによる。
あるいは、前記ロック/制御器1810を、心臓リード及び電極にあらかじめ連結してもよい。これは、ロック/制御器1810に連結した前記インプラントの湾曲した管状肢部のなかに一体的に形成されている。
望むなら、前記ロック肢部によって受容された前記インプラントの前記部分400にも、センサ820を設けてもよい。
望むなら、電気動力を、このなかの別の箇所に記載されているコア白金ワイヤを介して、インプラント400に直接運んでもよい。
前記部分400のなかへ一体化された構成要素(センサ及び電極など)は、その後、動作するため、前記コアワイヤ(例えば、410a’)の動力を引き出してもよい。
前記動力供給源/ロック1810とペーシング電極1820などのセンサとの間の電気接続は、直接伝導経路であってもよい。伝導体が、前記ロック/制御器1820に取り付けられた前記肢部の内側及び外側管状高分子層の間にある。あるいは、前記インプラント400の前記層のなかに入れ子状になっている。
望むなら、前記センサ又は電極を、前記インプラントロック/肢部及び部分400の表面の上を覆って形成してもよい。そして、その後、熱収縮高分子チューブの追加的な層で覆ってもよい。
望むなら、チューブのその外側層は、窓が、そのなかに形成されてもよい。これは、前記センサ又は電極1820を露出させる。
【0130】
いくつかの実装において、前記ペーシングシステム1800は、更に、少なくとも一つの管腔を含んでもよい。これは、前記外側シースの長さに沿っている。これは、ペーシングリードを受容する。前記ペーシングシステムは、前記ペーシングリードに沿って摺動して、冠静脈洞のなかへ入ることができる。
少なくとも一つの前記管腔は、前記ペーシングリードを方向付けて、前記心臓ペーシング制御器へ向かうようにするよう構成されてもよい。
いくつかの実施形態において、前記システムは、保護ブリッジを含んでもよい。これは、前記中隔壁の近くの冠静脈洞のなかにあるとき、前記LCx動脈に架かる。これは、このなかの他の箇所に記載されたとおりである。
いくつかの実施形態において、前記心臓ペーシング制御器の少なくとも一部分は、前記外側シースのなかに配置されてもよい。
【0131】
前記ペーシングシステムは、更に、電池を含んでもよい。これは、構成要素1810や400のなかに配置される。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、回路板を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
前記ペーシングシステムは、更に、通信回路を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置される。
前記通信回路は、有線であってもよいし、無線(例えば、ブルートゥース通信を介して)であってもよい。
【0132】
望むなら、前記ペーシングシステム1800は、更に、少なくとも一つのセンサ回路を含んでもよい。これは、少なくとも部分的に、前記外側シースのなかに配置されている。少なくとも一つの前記センサモジュール1820は、少なくとも一つのセンサ(例えば、感知回路)を含む。これは、少なくとも一つの生物学的パラメータを感知する。
例えば、少なくとも一つの前記センサ回路/モジュールは、少なくとも一つの圧力センサを含んでもよい。これは、血圧を検出する。あるいは、化学センサと、距離センサと、電気生理学的データを検出する回路を有するセンサと、移動センサと、位置センサとのうち、少なくとも一つを含んでもよい。
【0133】
いくつかの実装において、少なくとも一つの前記導電体は、前記ロック/制御器1810で終端してもよい。
望むなら、前記システムは、更に、少なくとも一つのペーシングリード(や電気センサ。これは、心臓電気信号を感知する。)が、前記外側シースの表面のなかに形成されてもよい。
少なくとも一つの前記ペーシングリードは、右心房とインターフェースするよう構成され配列されてもよい。
望むなら、更なるペーシングリードが、右心室、又は、中隔静脈などの心静脈とインターフェースするよう構成され配列されてもよい。例えば、
図18の円で示される領域のなかにあってもよい。
望むなら、前記制御器1810は、ペーシングと、除細動と、測定と、制御とのうち少なくとも一つを提供するよう構成され配列されてもよい。
【0134】
前記ペーシングシステムのいくつかの実装において、長尺状の前記内側テザーは、ループアンテナを含んでもよい。これは、信号を前記制御器へかつそこから伝導する。
更なる実装において、前記ペーシングシステム(などのシステム)は、更に、貯蔵器を含んでもよい。これは、有益薬剤を含有する。これは、分注器に結合される。これは、前記制御器によって制御される。
例えば、前記有益薬剤は、医薬や、遺伝子治療材料や、生細胞を含んでもよい。これは、損傷した前記心臓の少なくとも一つの場所に播種するためのものである。
【0135】
心臓の固有の電気活動(すなわち、P波又はQRS波)は、小さな電流(数ミリボルト)を、前記ペースメーカーリードのなかを通り抜けて、前記パルス発生器に伝達する。
この電流は、ペースメーカー回路によって登録されてもよいし、感知されてもよい。
前記ペースメーカー感知を使用して、固有心拍に対するペースメーカーの応答を策定してもよい。
P波(又は、心房活動)を、心房リード(存在する場合)のなかを通り抜けて、前記ペースメーカーの心房チャネルに伝達し、心房活動として感知する。
心室活動(QRS波)を、前記心室リードのなかを通り抜けて(存在する場合。中隔静脈を介してなど)前記ペースメーカーの前記心室チャネルに伝達してもよい。そして、これを、心室活動として感知する。
【0136】
電気的活動を心臓からペースメーカーに伝達するためには、閉じた電気回路が存在しなければならない。これは、電気的インパルスが前記ペースメーカーから心臓に伝達される場合とまったく同じである。
したがって、ペーシングとまったく同じように、感知は、単極でもよいし、双極でもよい。
双極感知は、前記リードの前記先端電極と前記リング電極との間で生じる固有の電気活動を検出する。
単極感知は、前記リードの前記先端と前記パルス発生器の金属シェルとの間で生じる電気活動を検出する。
これはずっと大きな範囲なので、他の電気信号(横隔膜の筋肉又は身体の外部の源によって発生し得るような)を検出する可能性が高い(したがって、ペースメーカーによって心拍として誤って解釈される)。
重要なのは、信号がどのチャンバに由来するかを前記ペースメーカーが判定する唯一の方法は、どのリードが前記信号を前記ペースメーカーに伝達するかである点に留意することである。
例えば、前記ペースメーカーは、前記心房リードのなかを通り抜けて心房チャネルに伝達される任意の電気信号を、たとえ前記信号が実際は心房チャネルによって感知されるには振幅が十分な大きいQRS波であったとしても、P波として解釈し得る。
また、注意すべき点は、前記ペースメーカーが心房又は心室信号を感知した時点は、必ずしもP波又はQRSの始まりではないことである。
前記ペースメーカーは、電気活動が実際に前記ペースメーカーリードに到達しなければ、チャンバのなかの活動を感知できない。
【0137】
このなかに開示された前記装置及び方法は、そのままの状態での他の処置に使用してもよい。あるいは、必要に応じて特定の処置に適合するよう改変してもよい。
本開示の原理が適用され得る多くの実施形態の可能性を考慮すると、例示した実施形態は、本開示の好ましい例に過ぎず、本開示の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを認識すべきである。
このなかで参照されたそれぞれ及びすべての特許及び特許出願は、参照によりこのなかに全体としていかなるすべての目的のために明示的に組み入れられる。