(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】ゲートウェイ装置、車載ネットワークシステム、転送方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/46 20060101AFI20230712BHJP
【FI】
H04L12/46 100C
(21)【出願番号】P 2021077016
(22)【出願日】2021-04-30
(62)【分割の表示】P 2017046311の分割
【原出願日】2017-03-10
【審査請求日】2021-05-31
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 智之
(72)【発明者】
【氏名】前田 学
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇光
(72)【発明者】
【氏名】松島 秀樹
【審査官】鈴木 香苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139093(JP,A)
【文献】特開2005-328292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126584(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0133350(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103812765(CN,A)
【文献】国際公開第2013/183649(WO,A1)
【文献】特開2006-352896(JP,A)
【文献】松村 潤 ほか,車載ネットワークにおけるCAN-Ethernetプロトコル変換アルゴリズム,情報処理学会研究報告 2012(平成24)年度 6 [DVD-ROM] ,日本,一般社団法人情報処理学会,2013年04月15日,pp.1-6
【文献】木谷 光博 ほか,自動運転向け車内ネットワークシステムにおけるデータ伝送方式の開発,情報処理学会 研究報告 グループウェアとネットワークサービス(GN) 2016-GN-097 [online] ,日本,情報処理学会,2016年01月14日,pp.1-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信プロトコルに従って第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されるゲートウェイ装置であって、
第1ネットワーク及び第2ネットワークは車載ネットワークであり、
第1種フレームは、データの内容を表す識別子を含み、
第2通信プロトコルは、前記第1通信プロトコルに対して通信速度の速いプロトコルであり、
前記ゲートウェイ装置は、
前記第1ネットワークから第1種フレームを逐次受信する受信部と、
前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、
前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを
構築するフレーム構築部と、
前記第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備え、
前記
フレーム構築部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、前記複数の第1種フレームのそれぞれに含まれる識別子に基づいて優先順位を決定し、前記優先順位に従った順序で、第2種フレーム内に配置して、第2種フレーム
を構築する
ゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記
フレーム構築部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、前記複数の第1種フレームのそれぞれに含まれる識別子の値の小さい順に第2種フレーム内に配置して、第2種フレーム
を構築する
請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記受信部により受信された第1種フレームの識別子に基づいて、当該第1種フレームの前記データが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する
請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項4】
前記送信部は、時刻の計時により時間に係る所定条件が成立した際に、第2種フレームの前記送信を行う
請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項5】
前記送信部は、前記受信部により受信された第1種フレームの識別子が特定識別子である場合には、前記特定識別子を有する当該第1種フレームの前記データを包含する第2種フレームを第2ネットワークに優先して送信する
請求項1記載のゲートウェイ装置。
【請求項6】
前記特定識別子は、前記受信部により受信された第1種フレームの識別子が前記第1種フレームの前記データが重要であることを示す、
請求項5記載のゲートウェイ装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記特定識別子を有する第1種フレームの前記データを包含する第2種フレームを送信する際に、
前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、前記特定識別子を有さない第1種フレームの前記データを、当該第2種フレーム内に包含して送信する、又は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、前記特定識別子を有さない第1種フレームの前記データを包含する、別の第2種フレームを送信する
請求項5記載のゲートウェイ装置。
【請求項8】
前記特定識別子は、前記第1種フレームのデータが、前記第1ネットワークと前記第2ネットワークとを含む車両ネットワークシステムが搭載された車両の走行制御における異常を通知する内容であることを表す識別子である、
請求項5から7のいずれか一項に記載のゲートウェイ装置。
【請求項9】
前記特定識別子は、前記第1種フレームのデータが、前記第1ネットワークと前記第2ネットワークとを含む車両ネットワークシステムが搭載された車両の走行制御に関する内容であることを表す識別子である、
請求項5から7のいずれか一項に記載のゲートウェイ装置。
【請求項10】
前記ゲートウェイ装置は、第2ネットワークを構成するEthernet(登録商標)ケーブルと接続され、
第1通信プロトコルは、CAN(Controller Area Network)プロトコルであり、
第2通信プロトコルは、Ethernet(登録商標)プロトコルであり、
第1種フレームは、CAN-IDを含み、前記データをデータフィールドに含むデータフレームであり、
第2種フレームは、Ethernet(登録商標)ヘッダとペイロードとを含むEthernet(登録商標)フレームであり、
前記送信部は、第2種フレームの第2ネットワークへの前記送信を、前記ケーブルへの当該第2種フレームの送出により行う、
請求項5から9のいずれか1項に記載のゲートウェイ装置。
【請求項11】
第1通信プロトコルに従って第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとを含む車載ネットワークシステムであって、
第1ネットワーク及び第2ネットワークは車載ネットワークであり、
第1種フレームは、データの内容を表す識別子を含み、
第2通信プロトコルは、前記第1通信プロトコルに対して通信速度の速いプロトコルであり、
前記車載ネットワークシステムは、
前記第1ネットワークに接続された複数の第1種電子制御ユニットと、
第2ネットワークに接続された第2種電子制御ユニットと、
前記第1ネットワークと第2ネットワークに接続されたゲートウェイ装置とを備え、
前記ゲートウェイ装置は、
前記第1ネットワークから第1種フレームを逐次受信する受信部と、
前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、
前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを
構築するフレーム構築部と、
前記第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備え、
前記
フレーム構築部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、前記複数の第1種フレームのそれぞれに含まれる識別子に基づいて優先順位を決定し、前記優先順位に従った順序で、第2種フレーム内に配置して、第2種フレーム
を構築する
車載ネットワークシステム。
【請求項12】
第1通信プロトコルに従って第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されたゲートウェイ装置で用いられる転送方法であって、
第1ネットワーク及び第2ネットワークは車載ネットワークであり、
第1種フレームは、データの内容を表す識別子を含み、
第2通信プロトコルは、前記第1通信プロトコルに対して通信速度の速いプロトコルであり、
前記転送方法は、
前記第1ネットワークから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを
構築するフレーム構築ステップと、
前記第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含み、
前記
フレーム構築ステップは、前記判定ステップにより第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、前記複数の第1種フレームのそれぞれに含まれる識別子に基づいて優先順位を決定し、前記優先順位に従った順序で、第2種フレーム内に配置して、第2種フレーム
を構築する
転送方法。
【請求項13】
第1通信プロトコルに従って第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続される、マイクロプロセッサを含むゲートウェイ装置に所定転送処理を実行させるためのプログラムであって、
第1ネットワーク及び第2ネットワークは車載ネットワークであり、
第1種フレームは、データの内容を表す識別子を含み、
第2通信プロトコルは、前記第1通信プロトコルに対して通信速度の速いプロトコルであり、
前記所定転送処理は、
前記第1ネットワークから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、
前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを
構築するフレーム構築ステップと、
前記第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含み、
前記
フレーム構築ステップは、前記判定ステップにより第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、前記複数の第1種フレームのそれぞれに含まれる識別子に基づいて優先順位を決定し、前記優先順位に従った順序で、第2種フレーム内に配置して、第2種フレーム
を構築する
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ネットワーク等のネットワークで通信する電子制御ユニット間のメッセージの中継のためのメッセージ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の中のシステムには、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)と呼ばれる装置が多数配置されている。これらのECUをつなぐネットワークは車
載ネットワークと呼ばれる。車載ネットワークには、多数の規格が存在する。その中でも最も主流な車載ネットワークの一つに、ISO11898-1で規定されているCAN(Controller Area Network)という規格が存在する。CANでは、有線伝送路(通信路)
であるバスに接続されている各ECU(ノード)が、フレーム(メッセージ)を送受信する。またCANでは、送信先や送信元を指す識別子は存在せず、送信ノードはフレーム毎にID(CAN-ID)を付けて送信し(つまりバスに信号を送出し)、各受信ノードは予め定められたCAN-IDのメッセージのみを受信する(つまりバスから信号を読み取る)。また、より多くの情報を伝送するための規格として、IEEE802.3で規定されているEthernet(登録商標)という規格が存在する。Ethernet(登録商標)のフレーム(メッセージ)は、送信先や送信元を指す情報をヘッダに含む。Ethernet(登録商標)では、1フレームで送信できる最大データ量がCANより大きい。
【0003】
特許文献1には、CANプロトコルに従った機器とEthernet(登録商標)プロトコル等に従った機器との間でメッセージの中継を行うゲートウェイが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Ethernet(登録商標)のネットワークと、CANのネットワークとを含む車載ネットワークシステムにおいて、他の電子制御ユニットと通信する電子制御ユニット(ECU)それぞれは、Ethernet(登録商標)とCANとのうち少なくとも一方のインタフェースを備えることになる。この場合に、Ethernet(登録商標)のインタフェースを有する電子制御ユニットと通信を行い、かつ、CANのバスに接続された電子制御ユニット(つまりCANのインタフェースを有する電子制御ユニット)とも通信を行う必要がある電子制御ユニットそれぞれが、両方のインタフェースを備えることには、コストの増大等といった問題がある。このため、例えばEthernet(登録商標)のインタフェースのみを備える電子制御ユニットが、ゲートウェイ装置等を介して、CANのバスに接続された電子制御ユニットへ情報を伝達できることが望まれる。なお、特許文献1は、ゲートウェイ装置が、CANのバスに接続された電子制御ユニット(以下、「C-ECU」とも称する。)が送信したメッセージを、Ethernet(登録商標)のインタフェースを備える電子制御ユニット(以下、「E-ECU」とも称する。)に中継(転送)する際に、いかなる構成のメッセージを送信すべきかについて示していない。
【0006】
そこで、本発明は、CAN等の第1ネットワークと、Ethernet(登録商標)等の第2ネットワークとを含むネットワークシステムにおいて、第1ネットワークに接続されたECU(例えばC-ECU)から送信されたメッセージのうち、第2ネットワークに接続されたECU(例えばE-ECU)にとって必要なメッセージが効率良く伝送されるように適切に中継を行うゲートウェイ装置を提供する。また、本発明は、そのゲートウェイ装置を含む車載ネットワークシステム並びにそのゲートウェイ装置で用いられる転送方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の一態様に係るゲートウェイ装置は、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されるゲートウェイ装置であって、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信部と、前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備えるゲートウェイ装置である。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明の一態様に係る車載ネットワークシステムは、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとを含む車載ネットワークシステムであって、前記バスに接続された複数の第1種電子制御ユニットと、第2ネットワークに接続された第2種電子制御ユニットと、前記バスと第2ネットワークに接続されたゲートウェイ装置とを備え、前記ゲートウェイ装置は、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信部と、前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備える車載ネットワークシステムである。
【0009】
また、上記課題を解決するために本発明の一態様に係る転送方法は、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されたゲートウェイ装置で用いられる転送方法であって、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含む転送方法である。
【0010】
また、上記課題を解決するために本発明の一態様に係るプログラムは、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続される、マイクロプロセッサを含むゲートウェイ装置に所定転送処理を実行させるためのプログラムであって、前記所定転送処理は、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含むプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに通信プロトコルの異なる第1ネットワーク及び第2ネットワークを含むネットワークシステムにおいて、CAN等の第1ネットワークのバスに接続された電子制御ユニット(第1種電子制御ユニット、例えばC-ECU)からのメッセージが、Ethernet(登録商標)等の第2ネットワークに接続された電子制御ユニット(第2種電子制御ユニット、例えばE-ECU)に効率的に伝送され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る車載ネットワークシステムの全体構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る車載ネットワークの概略構成を示す図である。
【
図3】CANプロトコルで規定されるデータフレーム(「CANフレーム」とも称する。)のフォーマットを示す図である。
【
図4】実施の形態1に係る車載ネットワークの一部で送受信されるEthernet(登録商標)フレーム(「Eフレーム」とも称する。)のフォーマットを示す図である。
【
図5】Eフレームのペイロードの構成の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1に係るゲートウェイ(ゲートウェイ装置)の構成図である。
【
図7】実施の形態1に係るゲートウェイによるフレーム転送の際のフレーム構成の変更の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1に係るゲートウェイで用いられる転送ルール情報の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1に係るゲートウェイで用いられる優先転送リストの一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1に係るゲートウェイの転送処理シーケンスを示す図である(
図11に続く)。
【
図11】実施の形態1に係るゲートウェイの転送処理シーケンスを示す図である(
図10から続く)。
【
図12】実施の形態2に係るゲートウェイによるフレーム転送の際のフレーム構成の変更の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一態様に係るゲートウェイ装置は、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されるゲートウェイ装置であって、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信部と、前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備えるゲートウェイ装置である。このようにゲートウェイ装置は、CAN等の第1ネットワークにおいてECU(第1種電子制御ユニット、例えばC-ECU)が送信した第1種フレームをバスから逐次受信して複数の第1種フレームのデータを包含させた第2種フレームを第2ネットワークに送信するという形態で、互いに異なる通信プロトコルが適用されるネットワーク間でのフレームの転送(中継)を行う。なお、バスから逐次受信した複数の第1種フレームそれぞれのデータは第2種フレームに含められて送信されるまで例えばゲートウェイ装置の内外のバッファ(メモリ等の記憶媒体)に格納され得る。このような転送によれば、第1種フレームのデータを個別にフレームの内容として第2ネットワークに送信するよりも、伝送効率が高まる。即ち、このゲートウェイ装置によれば、第1ネットワークに接続されたECU(例えばC-ECU)からの情報(データ)が、第2ネットワークに接続されたECU(第2種電子制御ユニット、例えばE-ECU)へと効率的に伝送され得る。
【0014】
また、第1ネットワーク及び第2ネットワークは車載ネットワークであり、前記ゲートウェイ装置は、第2ネットワークを構成するEthernet(登録商標)ケーブルと接続され、第1通信プロトコルは、CAN(Controller Area Network)プロトコルであり
、第2通信プロトコルは、Ethernet(登録商標)プロトコルであり、第1種フレームは、CAN-IDを含み、前記データをデータフィールドに含むデータフレームであり、第2種フレームは、Ethernet(登録商標)ヘッダとペイロードとを含むEthernet(登録商標)フレームであり、前記送信部は、第2種フレームの第2ネットワークへの前記送信を、前記ケーブルへの当該第2種フレームの送出により行うこととしても良い。なお、第2種フレーム(Eフレーム)には、複数の各第1種フレーム(CANフレーム)のデータ(データフィールドの内容)の他に例えばCANーID等といった各第1種フレームの各種内容を包含させても良い。このゲートウェイ装置でフレームの中継がなされることにより、例えばEthernet(登録商標)インタフェースしか有さないE-ECUが、バス(CANバス)に接続されたC-ECUが送信した情報(データ)を効率的に取得できるようになり得る。
【0015】
また、前記判定部は、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-IDに基づいて、当該第1種フレームの前記データが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定することとしても良い。これにより、バスで伝送されるCANフレームのうち、例えばE-ECUが受信すべきものとして予め規定されたCAN-IDを含むCANフレームのみが、E-ECUに伝達され得る。このため、例えば、必要のないCANフレームのデータの第2ネットワークへの転送が防止され得る。
【0016】
また、前記判定部は更に、複数の宛先のそれぞれとCAN-IDとを対応付けた基準情報を参照して、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-IDに基づいて、前記複数の宛先のうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべき当該第1種フレームの前記データの宛先として選定し、前記送信部は、前記判定部に選定された、第1種フレームの前記データの宛先が、同一であるところの複数の第1種フレームのそれぞれの前記データを包含する第2種フレームを、第2ネットワークに送信することとしても良い。なお、宛先は、1つのE-ECUであっても良いし、例えば同種の複数のE-ECUであっても良い(これらのE-ECUが接続されたサブネットワーク等であっても良い)。これにより、CANフレームのデータについて、送信すべき宛先が同一であるデータを複数包含させた第2種フレーム(Eフレーム)を構成して送信するので、宛先のE-ECU等に対して、効率良くCANフレームのデータを伝えることが可能となる。
【0017】
また、前記送信部は、前記判定部に選定された、第1種フレームの前記データの宛先が、同一であるところの複数の第1種フレームのそれぞれの前記データを包含する第2種フレームに、当該選定された宛先を表す宛先情報を含ませて、当該第2種フレームの前記送信を行うこととしても良い。これにより、例えばEフレームをブロードキャストしなくても良く、Eフレームは、宛先情報が示す宛先へと効率的に伝送され得る。
【0018】
また、前記基準情報は、複数の宛先としての複数のMACアドレスそれぞれとCAN-IDとを対応付けた情報であり、前記送信部は、前記判定部に選定された、第1種フレームの前記データの宛先が、同一であるところの複数の第1種フレームのそれぞれの前記データを第2種フレームの前記ペイロードに包含させ、当該第2種フレームのEthernet(登録商標)ヘッダにおける宛先MACアドレスとして、当該選定された宛先としてのMACアドレスを前記宛先情報として含ませて、当該第2種フレームの前記送信を行うこととしても良い。これにより、ヘッダで宛先を確認できるEフレームが第2ネットワークに送信される。このため、宛先となるE-ECUにEフレームが到達するまでの経路において、例えばネットワークハブ(例えばスイッチングハブ)等でヘッダを参照して転送経路を選定する等により、効率的な伝送が可能となる。
【0019】
また、前記判定部は更に、複数の宛先のそれぞれとCAN-IDとを対応付けた基準情報を参照して、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-IDに基づいて、前記複数の宛先のうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべき当該第1種フレームの前記データの宛先として選定し、前記送信部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データと、前記判定部により選定された当該データの宛先を表す宛先情報とを前記ペイロードに含ませた第2種フレームを送信することとしても良い。これにより、異なる宛先に送信されるべき複数のデータが宛先情報とともに1つのEフレームに包含されて第2ネットワークに送信されることになる。このため、例えば第2ネットワークにおいてEフレーム内の各データを宛先毎に分割して宛先に送信する中継装置等にそのEフレームが到達するまでの経路における伝送効率を高めることが可能となり得る。なお、そのEフレームは、例えば、ブロードキャストされて各E-ECUに伝達されても良く、この場合に、E-ECU側でEフレーム内から宛先情報に基づいて必要なデータを抽出して利用することとしても良い。
【0020】
また、前記ゲートウェイ装置は、第1ネットワークの複数のバスと接続され、前記基準情報は、前記複数の宛先のそれぞれと、前記複数のバス及びCAN-IDとを対応付けており、前記判定部は、前記基準情報を参照して、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-ID及び受信元のバスに基づいて、前記複数の宛先のうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべき当該第1種フレームの前記データの宛先として選定することとしても良い。これにより、基準情報として、バス(CANバス)毎にCANフレームのCAN-IDと宛先との対応を定めておけば、バスが複数存在する場合においてもCANフレームのデータを任意のE-ECUに適切に伝達させることが可能になる。
【0021】
また、前記ゲートウェイ装置は、複数のEthernet(登録商標)ケーブルと接続され、前記判定部は更に、前記複数のケーブルのそれぞれとCAN-IDとを対応付けた基準情報を参照して、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-IDに基づいて、前記複数のケーブルのうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべき当該第1種フレームの前記データの送出先として選定し、前記送信部は、前記判定部に第1種フレームの前記データの送出先として選定されたケーブルが同一であるところの複数の第1種フレームのそれぞれの前記データを包含する第2種フレームを、当該選定されたケーブルへ送出することで、前記送信を行うこととしても良い。これにより、同じEthernet(登録商標)ケーブルに送出されるべきと選定されたCANフレームのデータが、そのケーブルに送出されるEフレームに複数包含され得るので、効率的な伝送が可能となり得る。
【0022】
また、前記送信部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、当該第1種フレームのCAN-IDに基づく、予め定められたCAN-ID毎の優先順位に従った順序で、第2種フレーム内に配置して、第2種フレームの前記送信を行うこととしても良い。これにより、第2種フレーム(Eフレーム)を受信したE-ECUは、Eフレームに含まれる各データの優先順序を踏まえた処理を行うことが可能となる。
【0023】
また、前記送信部は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれの前記データを、当該第1種フレームが前記受信部で受信された順に第2種フレーム内に配置して、第2種フレームの前記送信を行うこととしても良い。これにより、第2種フレーム(Eフレーム)を受信したE-ECUは、Eフレームに含まれる各データがバス(CANバス)で送信された順序を踏まえた処理を行うことが可能となる。
【0024】
また、前記送信部は、複数の第1種フレームそれぞれの前記データを包含する第2種フレームの前記送信を、当該第2種フレームに前記データが包含される前記受信部により受信された第1種フレームについての受信数量に係る所定条件が成立した際に行うこととしても良い。これにより、第2種フレームの伝送効率を鑑みて所定条件を適切に定めることで、効率的なデータ伝送が実現され得る。
【0025】
また、前記送信部は、時刻の計時により時間に係る所定条件が成立した際に、第2種フレームの前記送信を行うこととしても良い。これにより、例えば伝送効率と伝送遅延とのバランスに鑑みて所定条件を適切に定めることで、適切なデータ伝送が実現され得る。
【0026】
また、前記送信部は、前記受信部により受信された第1種フレームのCAN-IDが特定IDである場合には、前記所定条件が成立していないときでも、前記特定IDを有する当該第1種フレームの前記データを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信することとしても良い。これにより、例えば重要なデータ(情報)を含むCANフレームのCAN-IDを特定IDと定めることで、重要な情報の優先的な転送(遅滞なき転送)が実現され得る。
【0027】
また、前記送信部は、前記特定IDを有する第1種フレームの前記データを包含する第2種フレームを送信する際に、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、前記特定IDを有さない第1種フレームの前記データを、当該第2種フレーム内に包含して送信する、又は、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、前記特定IDを有さない第1種フレームの前記データを包含する、別の第2種フレームを送信することとしても良い。これにより、特定IDであるCAN-IDを有する、ゲートウェイ装置に受信されたCANフレームに係るデータ(例えば重要なデータ)が優先的に転送(送信)される際に、その他のCAN-IDを有する、ゲートウェイ装置に受信されたCANフレームに係るデータが送信される。このため、第2ネットワークに接続されたE-ECUは、特定IDのCANフレームに係るデータ(例えば重要なデータ)を、他のCANフレームに係るデータとの関係を踏まえて処理することが可能になる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る車載ネットワークシステムは、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとを含む車載ネットワークシステムであって、前記バスに接続された複数の第1種電子制御ユニットと、第2ネットワークに接続された第2種電子制御ユニットと、前記バスと第2ネットワークに接続されたゲートウェイ装置とを備え、前記ゲートウェイ装置は、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信部と、前記受信部により受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定部と、前記判定部により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信部とを備える車載ネットワークシステムである。これにより、CAN等の第1ネットワークのバスに接続されたECU(例えばC-ECU)が、ゲートウェイ装置を介して、Ethernet(登録商標)等の第2ネットワークの接続されたECU(例えばE-ECU)に対しての情報の伝達を、効率的に行えるようになる。
【0029】
また、本発明の一態様に係る転送方法は、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されたゲートウェイ装置で用いられる転送方法であって、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含む転送方法である。これにより、第1ネットワークのバスに接続されたECUからのフレームの第2ネットワークへの転送を効率的に行うことが可能になる。
【0030】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークの当該バスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続される、マイクロプロセッサを含むゲートウェイ装置に所定転送処理を実行させるためのプログラムであって、前記所定転送処理は、前記バスから第1種フレームを逐次受信する受信ステップと、前記受信ステップで受信された第1種フレームについて当該第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップと、前記判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップとを含むプログラムである。第1ネットワークのバスと第2ネットワークとに接続されてマイクロプロセッサを有するゲートウェイ装置に、このプログラムがインストールされて実行されることで、そのゲートウェイ装置は、第1ネットワークのバスに接続されたECU(例えばC-ECU)からの情報の第2ネットワークへの中継(転送)を適切に行えるようになる。
【0031】
なお、これらの全般的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体で実現されても良く、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は記録媒体の任意な組み合わせで実現されても良い。
【0032】
以下、実施の形態に係るゲートウェイ装置(ゲートウェイ)及び電子制御ユニット(ECU)を含む車載ネットワークシステムについて、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。従って、以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置及び接続形態、並びに、ステップ(工程)及びステップの順序等は、一例であって本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意に付加可能な構成要素である。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0033】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態として、車載ネットワークでデータの授受を行う複数の電子制御ユニット(ECU)とゲートウェイとを含む車載ネットワークシステム10について、図面を用いて説明する。
【0034】
[1.1 車載ネットワークシステム10の全体構成]
図1は、実施の形態1に係る車載ネットワークシステム10の全体構成を示す。
【0035】
車載ネットワークシステム10は、制御装置、センサ、アクチュエータ、ユーザインタフェース装置等の各種機器が搭載された車両におけるネットワーク通信システムである。車載ネットワークシステム10は、車載ネットワークとして、CANプロトコルに従ってバスでデータフレーム(CANフレーム)等の伝送が行われる第1ネットワーク(CANのネットワーク)と、Ethernet(登録商標)プロトコルに従ってEthernet(登録商標)フレーム(Eフレーム)の伝送が行われる第2ネットワーク(Ethernet(登録商標)のネットワーク)とを含む。
【0036】
図1に示すように車載ネットワークシステム10は、ゲートウェイ100と、電子制御ユニット(E-ECU)200a~200cと、ネットワークハブ400(「E-HUB」とも称する。)と、電子制御ユニット(C-ECU)500a~500dと、各電子制御ユニット(E-ECU、C-ECU)に接続した各種機器(IVI(In-Vehicle Infotainment)300a、リアカメラ300b、レーダ300c、エンジン600a、ブレー
キ600b、ドア開閉センサ600c、及び、ウィンドウ開閉センサ600d)と、ケーブル(Ethernet(登録商標)ケーブル)20a~20dと、バス(CANバス)30a、30bとを含んで構成される。バス30a、30bは第1ネットワークの伝送路であり、Ethernet(登録商標)ケーブル20a~20dは第2ネットワークの伝送路である。
【0037】
なお、車載ネットワークシステム10には、E-ECU200a~200c及びC-ECU500a~500d以外にもいくつものECUが含まれ得る。例えば、バス30a、30bには、C-ECU500a~500d以外にも、図示しないC-ECUが接続され得る。
【0038】
ECU(E-ECU及びC-ECU)は、例えば、プロセッサ(マイクロプロセッサ)、メモリ等のデジタル回路、アナログ回路、通信回路等を含む装置である。メモリは、ROM、RAM等であり、プロセッサにより実行されるプログラム(ソフトウェアとしてのコンピュータプログラム)を記憶することができる。メモリとして、不揮発性メモリを含んでも良い。例えばプロセッサが、プログラム(コンピュータプログラム)に従って動作することにより、ECUは各種機能を実現することになる。なお、コンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、プロセッサに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0039】
C-ECU500a~500dは、CANプロトコルに従ってフレームの授受を行う。C-ECU500a~500dは、それぞれエンジン600a、ブレーキ600b、ドア開閉センサ600c、ウィンドウ開閉センサ600dといった機器に接続されており、その機器の状態を取得し、例えば周期的に、状態を表すデータフレームを、バス30a、バス30b等で構成される第1ネットワークに送信している。また、C-ECU500a~500dは、第1ネットワークを構成するバスからデータフレームを受信して、データフレームを解釈し、受信すべきCAN-IDを有するデータフレームか否かの判別を行い、必要に応じてデータフレーム内のデータ(データフィールドの内容)に従ってそのC-ECUに接続されている機器の制御を行い得るし、必要に応じてデータフレームを生成して送信し得る。
【0040】
ゲートウェイ100は、バス30a、30b及びケーブル20dと接続されたゲートウェイ(中継装置等)としての一種のECUである。ゲートウェイ100は、プロセッサ、メモリ等のデジタル回路、アナログ回路、通信回路等を含む。ゲートウェイ100は、一の伝送路(バス或いはケーブル)から受信したフレームを他の伝送路に転送(中継)する機能を有する。ゲートウェイ100によるフレームの転送は、フレームに係るデータ(情報)の中継(つまり受信及び送信)であり、転送先の伝送路で用いられる通信プロトコルに対応した、通信方式、フレームフォーマット等の変換を伴い得る。また、ゲートウェイ100は、伝送路間でのフレームの転送として、1つ又は複数の伝送路から受信した1つ又は複数のフレームに対応して、1つ又は複数のフレームの、1つ又は複数の伝送路への送信を行い得る。本実施の形態では、ゲートウェイ100における、第1ネットワークのCANバスから受信したCANフレームに係るデータを、第1ネットワークのCANバス又は第2ネットワークのケーブルに送信する転送機能に着目して説明する。
【0041】
E-ECU200a~200cは、Ethernet(登録商標)のインタフェースを有し、Ethernet(登録商標)ケーブルに接続する。E-ECU200a~200cは、Ethernet(登録商標)プロトコルに従ってEthernet(登録商標)フレーム(Eフレーム)の送信又は受信を行う。E-ECU200a~200cは、それぞれIVI300a、リアカメラ300b、レーダ300cといった機器に接続されており、その機器から取得した情報に基づく処理を行い、必要に応じてその機器を制御し、或いは必要に応じて他のECUへの情報の送信を行い得る。IVI300aは、ディスプレイを備え、映像、音声等の再生といったマルチメディア機能、及び、インターネット等の外部ネットワーク91を介して車両外のサーバ90と通信する通信機能を有する装置である。サーバ90は、例えば車両のECUに対して情報を提供する機能等を有するコンピュータである。
【0042】
E-HUB400は、ゲートウェイ100及びE-ECU200a~200cと接続されるEthernet(登録商標)スイッチ(スイッチングハブ)である。E-HUB400は、例えば、メモリ等のデジタル回路、アナログ回路、通信回路等を含む。
【0043】
[1.2 車載ネットワークの構成]
図2は、本実施の形態に係る車載ネットワークの概略構成を示す。
【0044】
車載ネットワークシステム10においてC-ECU500a~500dは互いに、バス30a、30b、ゲートウェイ100等で構成される第1ネットワークを介して、通信し得る。また、ゲートウェイ100及びE-ECU200a~200cはそれぞれ固有のMAC(Media Access Control)アドレスを有し、互いに、各ケーブルをE-HUB400で接続して構成される第2ネットワークを介して、通信し得る。E-HUB400は、例えばMACアドレステーブルを保持し、Eフレームを受信するとケーブルの接続端子(ポート)毎に対応するMACアドレスを学習する。また、E-HUB400は、MACアドレステーブルに従って、受信したEフレームのヘッダの宛先MACアドレスに基づいて転送先となるポートを選定し、そのポートに接続されたケーブルへとEフレームを送出することで、Eフレームの転送を行う。
【0045】
ゲートウェイ100は、第2ネットワークと接続するためのポート(つまりEthernet(登録商標)ケーブルを接続する端子)を備え、第1ネットワークのバス30a(「CANバス1」とも称する。)及びバス30b(「CANバス2」とも称する。)のそれぞれに接続するための複数のポート(接続端子)を備える。例えば、C-ECU500aが送出した情報は、バス30a、ゲートウェイ100、ケーブル20d、E-HUB400及びケーブル20aを介してE-ECU200aに一定条件下で伝送され得る。
【0046】
[1.3 車載ネットワークで送受信されるフレームの構成]
第1ネットワークでは、C-ECU500a~500d等がCANプロトコルに従ってフレームの授受を行う。CANプロトコルにおけるフレームには、データフレーム、リモートフレーム、オーバーロードフレーム及びエラーフレームがあるが、ここでは、主にデータフレームに注目して説明する。
図3は、第1ネットワークで送受信されるデータフレーム(CANフレーム)のフォーマットを示す。
図3の(a)は標準フォーマットである。標準フォーマットにおいては、データフレームは、SOF(Start Of Frame)、ID(CAN-ID)、RTR(Remote Transmission Request)、IDE(Identifier Extension)、予約ビット「r」、サイズ、データ、CRC(Cyclic Redundancy Check)シーケンス、CRCデリミタ「DEL」、ACK(Acknowledgement)スロット、ACKデリミ
タ「DEL」、及び、EOF(End Of Frame)で構成される。ここで、IDフィールドの内容としてのID(CAN-ID)は、データの種類を示す識別子であり、メッセージIDとも称される。なお、CANでは、複数のノードが同時に送信を開始した場合、このCAN-IDが小さい値を持つフレームを優先する通信調停がなされる。サイズは、後続するデータフィールド(データ)の長さを示すDLC(Data Length Code)である。データ(データフィールドの内容)の仕様については、CANプロトコルで規定されておらず、車載ネットワークシステム10において定められる。従って、車両の車種、製造者(製造メーカ)等に依存した仕様となり得る。
図3の(b)は拡張フォーマットである。本実施の形態では第1ネットワークで標準フォーマットが用いられることとして説明するが、第1ネットワークにおいて拡張フォーマットが用いられる場合には、11ビットのIDフィールドのベースID(CAN-IDの一部)と、18ビットの拡張ID(CAN-IDの残部)とを合わせた29ビットをCAN-IDと扱えば良い。
【0047】
図4は、第2ネットワークで送受信されるフレーム(Eフレーム)のフォーマットを示す。同図に示すように、Eフレームは、主たる伝送内容であるデータを格納するペイロードの前にヘッダ(Ethernet(登録商標)ヘッダ)を付加して構成される。ヘッダには、宛先MACアドレス、送信元MACアドレス、及び、タイプが含まれる。
【0048】
車載ネットワークシステム10におけるゲートウェイ100は、CANバスから受信したCANフレームをE-ECUに繋がる第2ネットワークへと転送する際に、複数のCANフレーム情報を含むEフレームを送信する。CANフレーム情報は、CANバスで伝送されたデータフレーム(CANフレーム)から抽出した情報であり、少なくともデータフィールドの内容(データ)を含み、例えばCAN-ID及びサイズを含み得る。
【0049】
図4に示すEフレームのペイロード内のデータ構成例を
図5に示す。
図5の例では、CANフレーム情報は、CAN-ID、サイズ及びデータで構成される。
図5のメッセージ数(MSG数)は、CANフレーム情報の個数を示す。なお、メッセージ数の代わりに、CANフレーム情報の全体のデータ量等を示す情報を用いても良い。また、CANフラグは、Eフレームが第1ネットワークから伝送される情報(つまりCANフレーム情報)を含むか否かを識別するための識別フラグであり、EフレームのペイロードにCANフレーム情報を含む場合においてONにされ、それ以外の場合にOFF(つまりONと相反する情報を示す値)にされるフラグである。
図5の例では、Eフレームのペイロードの先頭にCANフラグを配置する例を示しているがこれは一例に過ぎない。
図5の例のような複数のCANフレーム情報をEフレームのペイロードに含ませることで、例えば、伝送効率が高まり得る。
【0050】
[1.4 ゲートウェイ100の構成]
図6は、ゲートウェイ100の構成図である。ゲートウェイ100は、
図6に示すように、C通信部110aと、C通信部110bと、E通信部120と、転送ルール保持部130と、転送制御部140とを含んで構成される。これらの各構成要素は、ゲートウェイ100における通信回路、メモリ、デジタル回路、メモリに格納されたプログラムを実行するプロセッサ等により実現される。
【0051】
C通信部110aは、第1ネットワークを構成するバス30aに接続される通信回路等であり、バス30aからCANフレームを逐次受信する受信部111aと、バス30aにCANフレームを送信する送信部112aとを含む。
【0052】
C通信部110bは、第1ネットワークを構成するバス30bに接続される通信回路等であり、バス30bからCANフレームを逐次受信する受信部111bと、バス30bにCANフレームを送信する送信部112bとを含む。
【0053】
E通信部120は、第2ネットワークを構成するケーブル20d(E-HUB400と接続される有線伝送路)に接続される通信回路等であり、ケーブル20dからEフレームを受信する受信部121と、ケーブル20dにEフレームを送信する送信部122とを含む。
【0054】
転送ルール保持部130は、メモリ等の記憶媒体で実現され、フレームの転送の条件等を定める基準情報を保持する。基準情報は、例えば、転送対象のCAN-ID及び転送元のバスと宛先(MACアドレス等)とを対応付けた転送ルール情報、優先転送対象のCAN-ID及び転送元のバスと宛先とを対応付けた優先転送リスト等である。
【0055】
転送制御部140は、例えばプログラムを実行するプロセッサ等で実現され、受信したフレームを転送すべきか否か判定し判定結果に応じて転送に係る制御を行う。この転送に係る制御は、例えば、逐次受信した複数のCANフレームに基づいて、複数のCANフレーム情報をペイロードとして含ませたEフレームを、E通信部120にケーブル20dへと送信させる制御である。
図7は、ゲートウェイ100が受信した複数のCANフレーム(CANフレーム1~N)に基づいてEフレームを送信するイメージを示す。同図に示すように、ゲートウェイ100はフレームを転送する際に、フレームの構成を変更する。送信されるEフレームのペイロードには、例えば予め定められた数であるN個のCANフレーム情報が含まれる。そのN個のCANフレーム情報のデータは、受信されたN個のCANフレームのデータフィールドの内容(データ)等である。受信され転送待ちになっているCANフレームの内容は、例えば、ゲートウェイ100が備えるメモリ等の記憶媒体(バッファ)に格納される。
図7のN個のCANフレーム情報を含むEフレームは、例えばE-HUB400を経由して、宛先のE-ECU(例えばE-ECU200a)に受信されることになる。Eフレームのヘッダの送信元MACアドレスとして、ゲートウェイ100のMACアドレスが設定され、Eフレームのペイロードには、CANフレーム情報が含まれることを示す、ONにしたCANフラグが設定される。Eフレームの宛先MACアドレスとしては、転送ルール保持部130が保持する転送ルール情報等に従って、宛先となるE-ECUのMACアドレスが設定される。
【0056】
転送制御部140は、判定部141とフレーム構築部142とを含み、判定部141による判定等の結果に応じて一定条件下で送信部(送信部122、送信部112a或いは送信部112b)を制御して、フレームの送信を行わせる。
【0057】
判定部141は、受信部111a或いは受信部111bにより受信されたCANフレームについて、CAN-IDに基づいてそのCANフレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する。この判定は、例えば、予め定められた、CAN-IDに関する基準情報に従って行われる。また、判定部141は、CANフレームのデータの宛先を、基準情報に従って選定する。CANフレームが第2ネットワークに送信されるべきか否かの判定及びCANフレームのデータを含むフレーム(Eフレーム或いはCANフレーム)の宛先の選定は、例えば、データが第2ネットワークに送信されるべき1つ以上のCANフレームのCAN-ID等を示す転送ルール情報を用いて行われる。
【0058】
転送ルール保持部130が保持し、転送制御部140の判定部141が参照する基準情報の1つとしての転送ルール情報の一例を
図8に示す。同図に示すように、転送ルール情報は、例えば、転送元と、転送対象CAN-IDと、転送先ネットワーク種別と、転送先識別情報とを対応付けた情報である。転送先ネットワーク種別は、Eで第2ネットワーク(Eネットワーク)を示し、CANで第1ネットワークを示す。Eネットワークは、Ethernet(登録商標)プロトコルで伝送が行われる第2ネットワークである。転送先識別情報は、転送先ネットワーク種別がEネットワークであれば、MACアドレスであり、転送先ネットワーク種別がCANであればバスを識別する情報である。
図8の例の転送ルール情報は、転送元のCANバス1から受信したCAN-IDが0x400、0x500及び0x600のいずれかのCANフレームを転送する際は、転送先ネットワーク種別がCANで、複数接続されているCANバスのうち、CANバス2へ送信すべきことを示している。また、転送元のCANバス2から受信した全てのCANフレームは、CANバス1へ送信すべきことを示している。また、転送元のCANバス1から受信したCAN-IDが0x100、0x101及び0x102のいずれかのCANフレームを転送する際は、転送先ネットワーク種別がEネットワークであるのでEフレームにCANフレーム情報を格納して、Eフレームの宛先MACアドレスを00:11:22:33:44:55(例えばE-ECU200aのMACアドレス)として送信すべきことを示している。
【0059】
判定部141は、CANフレームを受信したバスがCANバス1(バス30a)かCANバス2(バス30b)かを区別して転送ルール情報の転送元と照合し、そのCANフレームのCAN-IDを転送ルール情報の転送対象CAN-IDと照合する。判定部141は、その照合に該当する転送元と転送対象CAN-IDとの組があれば、対応する転送先ネットワーク種別及び転送先識別情報を特定することで、受信したそのCANフレームに基づくフレームの宛先の選定を行う。判定部141は、その照合に該当する転送元と転送対象CAN-IDとの組がなければ、その受信されたCANフレームについて、第1ネットワークに送信されるべきではなく、また、第2ネットワークに送信されるべきではないと判定する。また、宛先の選定において、転送先ネットワーク種別がEネットワークを示すこととなった場合には、判定部141は、その受信されたCANフレームについて、第2ネットワークに送信されるべきであると判定する。この場合には、判定部141は、転送ルール情報における転送先識別情報としての複数のMACアドレスのうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべき、CANフレームのデータ等(CANフレーム情報)を含むEフレームの宛先として選定する。なお、判定部141が参照する基準情報は、例えば、転送すべきCAN-IDか否かを示す受信IDリストと、転送すべきCAN-IDと転送先とを対応付けた転送ルール情報との組み合わせでも良いし、基準情報の様式は、いかなるものでも良い。即ち、基準情報は、転送されるべきでないCAN-IDのリスト等であっても良いし、転送されるべきCAN-IDか否かを区別する関数等であっても良い。また、基準情報における宛先(例えば転送ルール情報で示される転送先識別情報)は、MACアドレスであっても良いし、その他のE-ECUの識別情報(例えばIP(Internet Protocol)アドレス等)であっても良いし、同種の複数のE-ECUが接続された
サブネットワークを表すアドレスであっても良い。
【0060】
フレーム構築部142は、逐次受信された複数のCANフレームについて第2ネットワークに送信されるべきと判定部141で判定された場合に、判定部141で選定された宛先が同一(例えば宛先が同じE-ECUのMACアドレス)の複数(例えば予め定められた数であるN個)のCANフレーム同士のデータ等(CANフレーム情報)を連結して、CANフラグをONにして、Eフレームを構築する(
図7参照)。この場合に、フレーム構築部142は、宛先のE-ECUのMACアドレス(転送ルール情報の転送先識別情報で示されるMACアドレス)を、Eフレームのヘッダの宛先MACアドレスとして設定する。そして、この場合に、転送制御部140では、フレーム構築部142で構築されたEフレームを、E通信部120の送信部122に、ケーブル20dへと送出させる。なお、基準情報において宛先をE-ECUのIPアドレスで表すこととした場合においては、フレーム構築部142は、EフレームのペイロードにIPヘッダを設けて(例えば
図7のCANフラグの前にIPヘッダを挿入し)、そのIPヘッダに宛先IPアドレスとしてその宛先のE-ECUのIPアドレスを含ませることとし、宛先のE-ECUのIPアドレスに基づいて検索したMACアドレスを、Eフレームの宛先MACアドレスとして設定しても良い。
【0061】
フレーム構築部142が、複数のCANフレーム情報を連結してEフレームのペイロードに配置する場合のCANフレーム情報の配置順序については、いかなる順序であっても良いが、例えば次の方式が有用である。その1つの方式は、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数のCANフレームそれぞれに係るCANフレーム情報(データ等)を、そのCANフレームが受信部111a或いは受信部111bで受信された順に、Eフレーム内に配置する方式である。この方式によれば、ゲートウェイ100に送信されたEフレームをE-HUB400を介して受信したE-ECUは、Eフレームに含まれる各データがCANバスで送信された順序を踏まえて処理することができる。また別の1つの方式は、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数のCANフレームそれぞれに係るCANフレーム情報(データ等)を、そのCANフレームのCAN-IDに基づく、予め定められたCAN-ID毎の優先順位に従った順序で、Eフレーム内に配置する方式である。予め定められたCAN-ID毎の優先順位は、例えば、CANバスでの通信調停と同様に、CAN-IDの値の小さい順である。この方式によれば、ゲートウェイ100に送信されたEフレームをE-HUB400を介して受信したE-ECUは、Eフレームに含まれる各データの優先順序(例えば重要性の順序等)を踏まえた処理を行うことが可能となる。
【0062】
転送制御部140は、CANバス1及びCANバス2のうち一方のCANバスから受信されたCANフレームの宛先として、判定部141により他方のCANバスが選定された場合には、その受信されたCANフレームを例えばそのまま他方のCANバスに送信するように、送信部(送信部112a或いは送信部112b)を制御する。
【0063】
転送制御部140は、いずれかのCANバスから受信されたCANフレームに対応する宛先として、判定部141によりE-ECU(つまりそのE-ECUのMACアドレス)が選定された場合には、同一の宛先が選定されたCANフレームについて受信部(受信部111a或いは受信部111b)により受信されたCANフレームについての受信数量に係る所定条件が成立した際に、フレーム構築部142にEフレームを構築させて、送信部122にそのEフレームを送信させる。この受信数量に係る所定条件は、例えば同一の宛先に対応するCANフレームがN個受信されたこと(例えばその宛先に前回Eフレームが送信されてから、その宛先に対する次のEフレームにCANフレーム情報が含まれるべきCANフレームがN回受信されたこと)である。なお、受信数量に係る所定条件は、その宛先に前回Eフレームが送信されてから、その宛先に対する次のEフレームにCANフレーム情報が含まれるべきCANフレームが合計で一定数Mバイト受信されたこと等であっても良い。
【0064】
また、転送制御部140は、いずれかのCANバスから受信されたCANフレームのCAN-IDが特定IDである場合には、上述の受信数量に係る所定条件が成立していないときでも、その特定IDを有するCANフレームのCANフレーム情報(データ等)を包含するEフレームをフレーム構築部142に構築させて、送信部122にそのEフレームを即座に第2ネットワークに送信させる。特定IDは、例えば転送ルール保持部130に保持される基準情報の1つとしての優先転送リストに記載された優先転送対象CAN-IDである。
【0065】
図9は、転送制御部140で用いられる基準情報の1つとしての優先転送リストの一例を示す。同図に示すように、優先転送リストは、例えば、転送元と、優先転送対象CAN-IDと、転送先ネットワーク種別と、転送先識別情報とを対応付けた情報である。
図9の例の優先転送リストは、例えば、CANバス1から受信したCAN-IDが0x100のCANフレームは、MACアドレス00:11:22:33:44:55のE-ECU(例えばE-ECU200a)に遅滞なく転送されるべきであることを示す。このため、転送制御部140は、CAN-IDが0x100のCANフレームをCANバス1から受信した場合には、即座にそのCANフレームのデータ等であるCANフレーム情報をペイロードに含ませたEフレームを、送信部122に送信させる。
【0066】
詳細には、転送制御部140では、CANフレームを受信したバスがCANバス1(バス30a)かCANバス2(バス30b)かを区別して優先転送リストの転送元と照合し、そのCANフレームのCAN-IDを優先転送リストの優先転送対象CAN-IDと照合する。そして、転送制御部140は、その照合に該当する転送元と転送対象CAN-IDとの組があれば、対応する転送先識別情報を特定することで、受信したそのCANフレームに基づくEフレームの宛先の選定を行う。優先転送リストにおける優先転送対象CAN-ID(つまり特定ID)は、例えば、車両の走行制御における異常を通知するためのCANフレームについて予め定められたCAN-ID(エラー通知用ID)である。例えば、C-ECUが送信したエラー通知用IDを有するCANフレームがゲートウェイ100により迅速にE-ECU200a等に伝達されることは、E-ECU200aに接続されたIVI300aのディスプレイに、エラー通知に係る情報に基づく警告画面を迅速に表示すること等を可能にする。このため、事故の未然防止等に有用となる。また、エラー通知用IDの他に、走る・曲がる・止まるといった車両の走行制御に関するCANフレームのCAN-IDを特定IDとして定めておくことも、E-ECUにおいて走行制御に関連した情報を迅速に表示すること等を可能にする点で、車両の安全な走行のために有用となり得る。なお、転送制御部140は、特定IDを、優先転送リストで定める他に、いかなる方法で定めても良く、例えば予め定められた閾値以下の値を有する全てのCAN-IDを特定IDとして定めても良い。
【0067】
また、転送制御部140は、特定IDを有するCANフレームのCANフレーム情報を包含するEフレームを送信部122に送信させる際に、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、特定IDを有さない1つ又は複数のCANフレームのCANフレーム情報(データ等)を包含する別のEフレームをフレーム構築部142に生成させて、そのEフレームを送信部122に送信させても良い。また、転送制御部140は、フレーム構築部142に、特定IDを有するCANフレームのCANフレーム情報を包含するEフレームに、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、特定IDを有さないCANフレームのCANフレーム情報を更に包含させて、Eフレームの構築を行わせて、そのEフレームを送信部122に送信させても良い。具体的には、
図9の例のように優先転送対象CAN-ID(つまり特定ID)が0x100である場合において、転送制御部140は、CAN-IDが0x100のCANフレームが受信されると、同じ宛先(MACアドレス00:11:22:33:44:55)のCANフレームが受信数量に係る所定条件の成立待ち(つまりN個の蓄積待ち)で蓄積されていれば、蓄積されているCANフレームに係るCANフレーム情報とその特定ID(0x100)のCANフレームに係るCANフレーム情報と連結してペイロードに含ませたEフレームを送信するようにしても良い。
【0068】
なお、転送制御部140は、E通信部120の受信部121で受信したEフレームの内容に基づいてCANフレームを生成して送信部112a或いは送信部112bにCANバスへと送信させる送信制御機能を有しても良い。
【0069】
送信部122は、転送制御部140の制御下で、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数のCANフレームそれぞれのデータを包含するEフレームを、第2ネットワークに送信(つまりケーブル20dへ送出)することになる。具体的には、送信部122は、判定部141により同じ宛先が選定された複数のCANフレームそれぞれのCANフレーム情報を包含するEフレームのその宛先への送信を、そのEフレームにCANフレーム情報が包含される、受信されたCANについての受信数量に係る所定条件が成立した際に行う。また、その所定条件が成立しない間であっても、送信部122は、特定IDを有するCANフレームが受信された際には、そのCANフレームに係るCANフレーム情報を包含するEフレームの送信を行う。送信部122は、特定IDを有するCANフレームに係るCANフレーム情報を包含するEフレームを送信する際には、判定部141により第2ネットワークに送信されるべきと判定されて未だ送信されていない、特定IDを有さないCANフレームのCANフレーム情報を、そのEフレーム内に包含して送信する、又は、別のEフレームに包含して送信する。
【0070】
[1.5 ゲートウェイ100の動作]
図10及び
図11は、ゲートウェイ100におけるCANフレームの転送に係る転送処理シーケンスの具体例を示す。この
図10及び
図11の転送処理シーケンスは、ゲートウェイ100のC通信部110a、転送制御部140、C通信部110b、及び、E通信部120の連携による転送処理を表している。ここで、CANフレームの転送は、受信したCANフレームと同一のCANフレームのCANバスへの送信、或いは、受信した1つ又は複数のCANフレームのCANフレーム情報を包含したEフレームの送信である。以下、第1ネットワークのCANバス1(バス30a)から受信したCANフレームをCANバス2(バス30b)又は第2ネットワーク(Eネットワーク)へ転送する場合のゲートウェイ100における転送処理について、
図10及び
図11に即して説明する。この転送処理は、ゲートウェイ100が、CANバスからCANフレームを受信した場合に開始される。
【0071】
CANバス1に接続されたC通信部110aは受信部111aで、CANバス1からCAN-IDを受信し、受信すべきCAN-IDか否かを判定する(ステップS1)。この判定は、例えば、受信すべきCAN-IDを予め列挙した受信IDリスト等を参照して行われる。なお、受信部111aで受信IDリストに基づいて判定する処理を、転送制御部140の判定部141に分担させても良い。この場合には、判定部141で受信IDリスト或いは転送ルール情報に基づいて、受信すべきCAN-IDか否か(或いは転送すべきCAN-IDか否か)を判定することになる。
【0072】
C通信部110aの受信部111aは、ステップS1で受信すべきCAN-IDと判定した場合に、そのCANフレームを受信し(ステップS2)、そのCANフレームを転送制御部140へ通知する(ステップS3)。
【0073】
転送制御部140は、通知されたCANフレームの転送先の確認のために転送ルール保持部130が保持する転送ルール情報を取得して参照する(ステップS4)。
【0074】
次に転送制御部140は、転送ルール情報に基づいて、そのCANフレームのCAN-IDがCANバス2へ転送すべきCAN-IDであるか否かを判定し(ステップS5)、CANバス2へ転送すべきCAN-IDである場合に限って、C通信部110bにそのCANフレームを通知する(ステップS6)。
【0075】
CANフレームを通知されたC通信部110bは送信部112bによりそのCANフレームをCANバス2に送信する(ステップS7)。
【0076】
ステップS5で、そのCANフレームのCAN-IDがCANバス2へ転送すべきCAN-IDでないと判定した場合、及び、ステップS6でそのCANフレームを通知した場合には、転送制御部140は、転送ルール情報に基づいて、そのCANフレームのCAN-IDが第2ネットワーク(Eネットワーク)へ転送すべきCAN-IDであるか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8でEネットワークへ転送すべきCAN-IDでないと判定された場合には、ゲートウェイ100は転送処理を終了する。
【0077】
転送制御部140は、ステップS8で、そのCANフレーム(ステップS2で受信されたCANフレーム)のCAN-IDがEネットワークへ転送すべきCAN-IDであると判定した場合には、そのCANフレームが優先的(迅速)に転送されるべきものであるか否かの確認のために転送ルール保持部130が保持する優先転送リストを取得して参照する(ステップS9)。そして、転送制御部140は、そのCANフレームのCAN-IDが優先転送リストに記載されているCAN-ID(優先転送対象CAN-ID)であるか否かを判定する(ステップS10)。
【0078】
ステップS10でそのCANフレームのCAN-IDが優先転送対象CAN-IDであると判定した場合には、転送制御部140は、そのCANフレームに係るCANフレーム情報及びONにしたCANフラグをペイロードに含むEフレームを生成する(ステップS11)。そのEフレームのヘッダの宛先MACアドレスには、優先転送リストにおける該当の転送先識別情報で示されるMACアドレス(宛先となるE-ECUのMACアドレス)が設定される。そのEフレームのヘッダの送信元MACアドレスには、例えばゲートウェイ100のMACアドレスが設定される。
【0079】
次に、転送制御部140はステップS11で生成したEフレームを宛先に送信させるべくE通信部120に優先通知(即座に通知)する(ステップS12)。この通知を受けてE通信部120の送信部122はそのEフレームを送信する(ステップS13)。
【0080】
また、ステップS10でそのCANフレームのCAN-IDが優先転送対象CAN-IDでないと判定した場合には、転送制御部140は、そのCANフレームのCAN-ID、サイズ及びデータを含むCANフレーム情報を、転送ルール情報に基づいて選定した宛先(MACアドレス)と対応付けて、バッファ(ゲートウェイ100が備える記憶媒体)に格納する(ステップS14)。
【0081】
ステップS12或いはステップS14の後に、転送制御部140は、CANフレームの受信数量に係る所定条件が成立したか否か、つまり、バッファに、宛先の同じCANフレーム情報がN個蓄積されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0082】
ステップS15で、所定条件が成立した(つまり同じ宛先のCANフレーム情報がN個蓄積された)と判定した場合には、転送制御部140は、ONにしたCANフラグと、同じ宛先のN個のCANフレーム情報とをペイロードに含ませたEフレームを生成する(ステップS16)。このEフレームのヘッダの宛先MACアドレスには、転送ルール情報に基づくその宛先のMACアドレスが設定され、ヘッダの送信元アドレスには、例えばゲートウェイ100のMACアドレスが設定される。
【0083】
次に、転送制御部140はステップS16で生成したEフレームを宛先に送信させるべくE通信部120に通知する(ステップS17)。この通知を受けてE通信部120の送信部122はそのEフレームを送信する(ステップS18)。
【0084】
ステップS15で、転送制御部140が、所定条件が成立していないと判定した場合には、ゲートウェイ100は、転送処理を終了して、次のCANフレームの受信を待つ。
【0085】
[1.6 実施の形態1の効果]
実施の形態1に係る車載ネットワークシステム10では、互いに通信プロトコルの異なる第1ネットワークと第2ネットワークとを含む車載ネットワークにおいて、ゲートウェイ100が、C-ECUがCANバスに送信したCANフレームを受信した場合に、一定条件下でE-ECUを宛先としてそのCANフレームのデータ等の情報(CANフレーム情報)を送信することで、フレームの転送を行う。そしてゲートウェイ100は、転送に際して、同じE-ECUを宛先とする、受信した複数のCANフレームに係るCANフレーム情報を包含し、ONにしたCANフラグを含むEフレームを、そのE-ECUに送信する。これにより、伝送効率が高まり得る。また、ゲートウェイ100は、特定IDを有するCANフレームを受信した場合はそのCANフレームに係るCANフレーム情報を含むEフレームを即座に特定のE-ECUへと送信することで、フレームの転送を行う。これにより特定IDを有するCANフレーム等の内容を迅速にE-ECUに伝達することが可能となる。即ち、車載ネットワークシステム10では、情報の伝送効率を高めるためにフレームの情報の伝達に遅延が生じ得る転送方式を用いるが、例えば重要なCANフレームのCAN-IDを特定IDとして定めておくことにより、重要な情報はC-ECUからE-ECUへ迅速に伝達されるようになる。
【0086】
(実施の形態2)
以下、実施の形態1で示した車載ネットワークシステム10(
図1参照)におけるゲートウェイ100を一部変形した例について説明する。
【0087】
[2.1 ゲートウェイ100a]
本実施の形態に係る車載ネットワークシステムは、実施の形態1で示した車載ネットワークシステム10におけるゲートウェイ100(
図6参照)と同様の構成を有するゲートウェイ100aを備える。但し、ゲートウェイ100aにおける転送制御部140の機能は、ゲートウェイ100における転送制御部140の機能と部分的に異なる。なお、本実施の形態に係る車載ネットワークシステムにおいて、実施の形態1で示したものと同様の構成要素については、実施の形態1と同じ符号を用い、説明を適宜省略する。また、本実施の形態に係る車載ネットワークシステムは、ここで特に説明しない点については、実施の形態1で示した車載ネットワークシステム10と同様である。
【0088】
実施の形態1で示したゲートウェイ100の転送制御部140は、逐次受信された複数のCANフレームについて第2ネットワークに送信されるべきと判定した場合に、基準情報(転送ルール情報等)に基づいて選定された宛先が同一(例えば宛先が同じE-ECUのMACアドレス)の複数(例えば予め定められた数であるN個)のCANフレーム同士のCANフレーム情報を連結してペイロードに含めたEフレームを構築する(
図7参照)。
【0089】
これに対して、ゲートウェイ100aの転送制御部140は、逐次受信された複数のCANフレームについて第2ネットワークに送信されるべきと判定した場合に、基準情報(転送ルール情報等)に基づいて選定された宛先に拘わらず複数(例えば予め定められた数であるN個)のCANフレーム同士のCANフレーム情報を連結してペイロードに含めたEフレームを構築して、そのEフレームを送信部122に第2ネットワークに送信させる。この場合のEフレームの構成は、例えば
図12に示すようになる。
【0090】
図12は、ゲートウェイ100aが受信した複数のCANフレーム(CANフレーム1~N)に基づいてEフレームを送信するイメージを示す。送信されるEフレームのペイロードには、例えば予め定められた数であるN個のCANフレーム情報(CAN-ID、サイズ及びデータ)に、宛先を示す転送先MACアドレス(つまり宛先のE-ECUのMACアドレス)が付加されたものが、含まれる。そのN個のCANフレーム情報のデータは、受信されたN個のCANフレームのデータフィールドの内容(データ)等である。Eフレームのヘッダの宛先MACアドレスとして例えばブロードキャストアドレスが設定され、Eフレームのヘッダの送信元MACアドレスとして、ゲートウェイ100のMACアドレスが設定され、Eフレームのペイロードには、CANフレーム情報が含まれることを示す、ONにしたCANフラグが設定される。
図12の、転送先MACアドレスがそれぞれに付加されたN個のCANフレーム情報を含むEフレームは、例えばE-HUB400を経由して、各E-ECU(E-ECU200a~200c等)に受信されることになる。E-HUB400では、宛先MACアドレスがブロードキャストアドレスであるEフレームを受信すると受信したポート(つまりケーブルの接続端子)以外の全てのポートからEフレームを送出する。なお、各E-ECUは、Eフレームのペイロード内の転送先MACアドレスを自装置のMACアドレスと照合することで、そのEフレームにおける自装置宛てのCANフレーム情報を抽出し得る。
【0091】
なお、
図12に示すような複数の宛先それぞれに対応するCANフレーム情報を含むEフレームを受信したE-HUB400は、Eフレームのペイロード内の複数のCANフレーム情報それぞれを宛先(転送先MACアドレス)毎に分割して、宛先毎に、その宛先が示すE-ECUに向かうポートから、その宛先に対応するCANフレーム情報をペイロードに含ませてヘッダの宛先MACアドレスにその転送先MACアドレスを設定したEフレームを送出する分割転送機能を有しても良い。このような分割転送機能を有するE-HUBは、例えばEフレームのペイロードにおけるCANフラグがONであるか否かにより、分割転送機能を実行するか、一般的なEフレームの転送機能を行うかを区別しても良い。第2ネットワークに分割転送機能を有しMACアドレスを有するE-HUBが接続されている場合においては、ゲートウェイ100aはEフレームを送信する場合にEフレームのヘッダの宛先MACアドレスとして、ブロードキャストアドレスではなく、そのE-HUBのMACアドレスを設定することが有用である。また、転送ルール情報(
図8参照)における転送先識別情報で示される宛先が、同種の複数のE-ECUが接続されたサブネットワークを表すアドレスであるような場合においては、ゲートウェイ100aは、
図12に示す構成で、同種のE-ECUを宛先とする複数のCANフレーム情報を複数包含させたEフレームを構築して第2ネットワークに送信することとしても良い。
【0092】
[2.2 実施の形態2の効果]
実施の形態2に係る車載ネットワークシステムでは、ゲートウェイ100aが、第1ネットワークのバスから受信したCANフレームに基づいて宛先に拘わらず複数のCANフレームに係るCANフレーム情報を包含したEフレームを第2ネットワークに送信する。これにより、ある程度伝送効率が高まり得る。
【0093】
(他の実施の形態)
以上のように、本発明に係る技術の例示として実施の形態1、2を説明した。しかしながら、本発明に係る技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行った実施の形態にも適用可能である。例えば、以下のような変形例も本発明の一実施態様に含まれる。
【0094】
(1)上記実施の形態で示した車載ネットワークシステムは、分割転送機能を有さないE-HUB400の他に、第2ネットワークに接続された、分割転送機能を含むE-HUBを含むものであっても良い。例えば、実施の形態2で示したゲートウェイ100aがCANフレームを逐次受信して
図12に示すようなEフレームをE-HUB400へと送信し、E-HUB400は、そのEフレームを、分割転送機能を含むE-HUBを宛先として転送し、分割転送機能を含むE-HUBでそのEフレームにおける複数のCANフレーム情報を分割して、宛先毎のE-ECU毎にその宛先に対応するCANフレーム情報を含むEフレームを送信することとしても良い。
【0095】
(2)上記実施の形態では、車載ネットワークシステムを示したが、上述したゲートウェイ、ECU(E-ECU及びC-ECU)、E-HUB等といった各装置は、ロボット、産業機器等の各種ネットワーク通信システムに利用され得る。
【0096】
(3)上記実施の形態では、車載ネットワークが第1ネットワーク及び第2ネットワークを含み、第1ネットワークは、CANプロトコルに従ってCANバスでCANフレーム(データフレーム)の伝送が行われるものとし、第2ネットワークは、Ethenet(登録商標)プロトコルに従ってEフレーム(Ethernet(登録商標)フレーム)の伝送が行われるものとした。このCANプロトコルは、オートメーションシステム内の組み込みシステム等に用いられるCANOpen、或いは、TTCAN(Time-Triggered CAN)、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)等の派生的なプロトコルを包含する
広義の意味のものと扱われることとしても良い。また、CANプロトコルにおけるデータフレームは、標準IDフォーマットの他、拡張IDフォーマットであっても良い。また、Ethernet(登録商標)フレームは、例えばEthernet(登録商標)バージョン2のフレームであっても良いし、IEEE802.3で規定されたフレームであっても良い。また、Ethernet(登録商標)プロトコルは、IEEE802.1に係るEthernet(登録商標)AVB(Audio Video Bridging)、或いは、IEEE802.1に係るEthernet(登録商標)TSN(Time Sensitive Networking)、E
thernet(登録商標)/IP(Industrial Protocol)、EtherCAT(登録
商標)(Ethernet(登録商標) for Control Automation Technology)等の派生的なプロトコルを包含する広義の意味のものと扱われることとしても良い。また、第1ネットワークは、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレーム(例えばCANフレーム等)の伝送が行われるものであり、第2ネットワークは、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレーム(例えばEフレーム等)の伝送が行われるものであることとしても良い。この場合において、第1通信プロトコルは、例えばCANプロトコルであるが、CANプロトコルに限られず、例えばLIN(Local Interconnect Network)、MOST(登録商標)(Media Oriented Systems Transport)、FlexRay(登録商標)等であっても良い。また、第2通信プロトコルは、例えばEthernet(登録商標)プロトコルであるが、Ethernet(登録商標)プロトコルに限られず、例えばブローダーリーチプロトコルであっても良い。この第1ネットワークと第2ネットワークとを含む車載ネットワークにより、第1ネットワークに接続された第1種電子制御ユニット(例えばC-ECU)が送信した情報が、第2ネットワークに接続された第2種電子制御ユニット(例えばE-ECU)に伝達され得る。なお、上記実施の形態で示したEthernet(登録商標)は、CANに対して通信速度が速い。この点で、第2通信プロトコルは、第1通信プロトコルに対して通信速度が速い各種プロトコルであることとしても良い。また、上記実施の形態では、第2種フレーム(例えばEフレーム)が、その第2種フレームのペイロードに、第2ネットワークに伝送されるべき第1種フレーム(例えばCANフレーム)のデータ等(例えばCANフレーム情報)を含むか否かを判別するための識別フラグ(例えばCANフラグ)を有することとしたが、その識別フラグは、第2種フレームのヘッダに含まれることとしても良い。例えば、ゲートウェイ100は、CANフラグを、Eフレームのヘッダ内に含ませることとしても良い。これにより、Eフレームのヘッダの参照だけで、ペイロードにCANフレーム情報を含んでいるか否かが判別でき、例えば、Eフレームのペイロードを暗号化しているような場合においては、処理の簡略化(復号の省略等)が可能となり得る。例えば、Eフレームのヘッダ内の宛先MACアドレスにおけるグローバルMACアドレスか否かを識別するビットをCANフラグとして用いること(例えばローカルMACアドレスを示す値をCANフラグがONであると扱うこと)としても良い。また、例えば、Eフレームのヘッダ内のタイプのフィールドにCANフラグを設けることとしても良い。また、例えば、ゲートウェイ100は、CANフラグを、Eフレームのヘッダ内とペイロード内との両方に含ませることとしても良い。
【0097】
(4)上記実施の形態では、ゲートウェイ100が、第2ネットワークとの関係では1つのEthernet(登録商標)ケーブル20dと接続されている例を示したが、複数のEthernet(登録商標)ケーブルと接続される各ポートを有するものであっても良い。即ち、ゲートウェイ100は、E-HUB400と一体化されたものであっても良い。この場合にゲートウェイ100は、転送ルール情報等の基準情報に基づいて、CANフレームの宛先を選定して、宛先に対応するケーブルに接続されるポートを例えばMACアドレステーブルによって特定し、そのポートにEフレームを送信し得る。具体的には、ゲートウェイ100の転送制御部140における判定部141は、複数のケーブルのそれぞれとCAN-IDとを対応付けた基準情報(例えば転送ルール情報及びMACアドレステーブル等)を参照して、受信部111a或いは受信部111bにより受信されたCANフレームのCAN-IDに基づいて、その複数のケーブルのうちいずれかを、第2ネットワークに送信されるべきそのCANフレームのデータ等であるCANフレーム情報の送出先として選定する。そして、転送制御部140はフレーム構築部142で、判定部141にCANフレーム情報の送出先として選定されたケーブルが同一であるところの複数のCANフレームのそれぞれのデータ等であるCANフレーム情報を包含するEフレームを構築し、送信部122を制御して、そのEフレームをその選定されたケーブルへ送出させることで、第2ネットワークへのEフレームの送信を実現し得る。なお、ゲートウェイ100は、複数のケーブルを選定し、1つ又は複数のCANフレーム情報を包含する同一のペイロードを有するEフレームを複数のケーブルに送出することとしても良い。この場合に、ゲートウェイ100がスイッチ(スイッチングハブ)としての機能を有さないこととし、Eフレームの宛先MACアドレスを区別せずに、Eフレームを全てのケーブルに送出することとしても良い。
【0098】
(5)上記実施の形態では、ゲートウェイ100は、逐次受信したCANフレームの受信数量に係る所定条件が成立した場合(例えば同じ宛先のCANフレーム情報がN個バッファに蓄積された場合等)に、それらのCANフレームに係るCANフレーム情報を包含するEフレームを第2ネットワークに送信することとした。この所定条件に加えて或いはこの所定条件の代わりに、時間に係る所定条件を用いても良い。即ち、ゲートウェイ100が時刻を計時し、時間に係る所定条件が成立した際に、それまでにバッファに蓄積されている同じ宛先の未送信のCANフレーム情報を包含するEフレームを生成して、送信部122でそのEフレームを第2ネットワークに送信することとしても良い。時間に係る所定条件は、例えば、前回Eフレームを送出してから予め定められた時間が経過した時に成立するような条件である。
【0099】
(6)上記実施の形態では、ゲートウェイ100は、第1ネットワークとの関係においては複数のCANバスと接続されている例を示したが、1つのCANバスと接続されていても良く、この場合には、例えば転送ルール情報及び優先転送リストにおいて転送元の情報を省略しても良い。
【0100】
(7)上記実施の形態では、ゲートウェイ100により送信されるEフレームに含まれるCANフレーム情報が、CAN-ID、サイズ及びデータで構成される例を示したが、CANフレーム情報は、データのみを含むものであっても良い。
【0101】
(8)上記実施の形態で示した各種処理の手順(例えば
図10及び
図11に示した所定手順等)の実行順序は、必ずしも、上述した通りの順序に制限されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、実行順序を入れ替えたり、複数の手順を並列に行ったり、その手順の一部を省略したりすることができる。
【0102】
(9)上記実施の形態におけるゲートウェイ、ECU、E-HUB等の装置は、ハードディスク装置、ディスプレイ、キーボード、マウス等の他のハードウェア構成要素を含んでいても良い。また、メモリに記憶されたプログラムがプロセッサにより実行されてソフトウェア的にその装置の機能を実現するものであっても良いし、専用のハードウェア(デジタル回路等)によりその機能を実現するものであっても良い。また、その装置内の各構成要素の機能分担は変更可能である。
【0103】
(10)上記実施の形態における各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとし
ても良い。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等を含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記録されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。また、上記各装置を構成する構成要素の各部は、個別に1チップ化されていても良いし、一部又は全部を含むように1チップ化されても良い。また、ここでは、システムLSIとしたが、集積度の違いにより、IC、LSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現しても良い。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)
や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行っても良い。バイオ技術の適用等が可能性としてあり得る。
【0104】
(11)上記各装置を構成する構成要素の一部又は全部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしても良い。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしても良い。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしても良い。
【0105】
(12)本発明の一態様としては、例えば
図10、
図11等に示す処理手順の全部又は一部を含む転送方法であるとしても良い。例えば、転送方法は、第1通信プロトコルに従ってバスで第1種フレームの伝送が行われる第1ネットワークのそのバスと、第1通信プロトコルとは異なる第2通信プロトコルに従って第2種フレームの伝送が行われる第2ネットワークとに接続されたゲートウェイで用いられる転送方法であって、バスから第1種フレームを逐次受信する受信ステップ(例えばステップS2)と、受信ステップで受信された第1種フレームについてその第1種フレームのデータが第2ネットワークに送信されるべきか否かを判定する判定ステップ(例えばステップS8)と、判定ステップで第2ネットワークに送信されるべきと判定された複数の第1種フレームそれぞれのデータを包含する第2種フレームを第2ネットワークに送信する送信ステップ(例えばステップS16~S18)とを含む方法である。また、この方法をコンピュータにより実現するプログラム(コンピュータプログラム)であるとしても良いし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしても良い。例えば、転送方法に係る受信ステップと、判定ステップと、送信ステップとを含む所定転送処理を実行するためのプログラムであることとしても良い。また、本発明の一態様としては、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしても良い。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしても良い。また、本発明の一態様としては、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしても良い。また、本発明の一態様としては、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記録しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムに従って動作するとしても良い。また、前記プログラム若しくは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は、前記プログラム若しくは前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしても良い。
【0106】
(13)上記実施の形態及び上記変形例で示した各構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、CAN等の第1ネットワークのバスに接続されたECUが送信した情報を、Ethernet(登録商標)等の第2ネットワークを介して他のECUに伝達するために利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
10 車載ネットワークシステム
20a~20d ケーブル
30a、30b バス(CANバス)
90 サーバ
91 外部ネットワーク
100、100a ゲートウェイ
110a、110b C通信部
111a、111b、121 受信部
112a、112b、122 送信部
120 E通信部
130 転送ルール保持部
140 転送制御部
141 判定部
142 フレーム構築部
200a~200c 電子制御ユニット(E-ECU)
300a IVI
300b リアカメラ
300c レーダ
400 ネットワークハブ(E-HUB)
500a~500d 電子制御ユニット(C-ECU)
600a エンジン
600b ブレーキ
600c ドア開閉センサ
600d ウィンドウ開閉センサ