(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】GIPアゴニスト化合物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/575 20060101AFI20230712BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20230712BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230712BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230712BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230712BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20230712BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230712BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230712BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
C07K14/575 ZNA
A61K38/22
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P7/02
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P19/10
(21)【出願番号】P 2021096014
(22)【出願日】2021-06-08
(62)【分割の表示】P 2017522910の分割
【原出願日】2015-10-29
【審査請求日】2021-07-08
(32)【優先日】2014-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2015-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】502453045
【氏名又は名称】ジーランド ファーマ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100196977
【氏名又は名称】上原 路子
(72)【発明者】
【氏名】ペアニレ トフテング シェルトン
(72)【発明者】
【氏名】ピーア ナアアゴー
(72)【発明者】
【氏名】マリーア アレクサンドロブナ デルヤビナ
(72)【発明者】
【氏名】ビャーネ ドゥーウ ラースン
(72)【発明者】
【氏名】ヤコプ ウルレク フォウ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516994(JP,A)
【文献】国際公開第2013/164483(WO,A1)
【文献】特表2013-518115(JP,A)
【文献】特表2005-529862(JP,A)
【文献】特許第6898231(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式II:
R
1-Tyr-X2-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-X12-Glu-Leu-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-Phe-X23-X24-X25-Leu-X27-X28-X29-Y1-R
2 (II)
により表されるGIP類似体
(式中、
R
1は、H-、Ac又はpGluであり;
X2は、Aib
又はD-Ala
であり;
X12は、Ψ又はIleであり;
X15は、Aspであり;
X16は、
Lysであり;
X17は、Ile又はΨであり;
X18は、
Alaであり;
X19は、Gln又はAlaであり;
X20は、Gln
又はArgであり;
X21は、Ala
又はAsp
であり;
X23は、Ile又はValであり;
X24は、Gluであり;
X25は、
Trpであり;
X27は、Leu
であり;
X28は、Ala
であり;
X29は、
Gln
又は非存在であり;
Y1は、
Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser
であり;
R
2は、-NH
2又は-OHであり;
ここで、ΨはLys残基であり、そして、前記Lys残基の側鎖は、
式:-Z
1
又は-Z
2
-Z
1
を有する置換基に結合しており;
Z
1
は、式:A-B-C
16-20
アルキレン-(CO)-(式中、AはH又は-COOHであり、Bは結合である)であり;
Z
2
は、窒素、酸素、又は硫黄原子であるYと一方の末端で結合し、かつ、結合又はアシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、スルホニル(-SO
2
-)又は不存在であるXと他方の末端で結合するスペーサであり;
前記GIP類似体は、1つ又は唯一の残基Ψを含
み;かつ、
前記GIP類似体は、GIP受容体においてGIPアゴニスト活性を有する)、
あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物
、
但し、前記GIP類似体は以下の配列を含まない
Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-ELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;又は
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS。
【請求項2】
Aib2、Arg20;
Aib2、Ile12、Arg20;
Ile12、Ile23;
Ile12;
Ile12、Ala21;
DAla2、Ala28;
の残基又は残基の組み合わせのうちの1つを含む、請求項1に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項3】
Z
1は、
17-カルボキシ-ヘプタデカノイル HOOC-(CH
2)
16-(CO)-;
19-カルボキシ-ノナデカノイル HOOC-(CH
2)
18-(CO)-;
オクタデカノイル H
3C-(CH
2)
16-(CO)-;又は、
エイコサノイル H
3C-(CH
2)
18-(CO)-;
である、請求項1
又は2に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項4】
-Z
1-Z
2は、
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
である、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項5】
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSΨELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDKΨAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQDFIEWLLAQGPSSGAPPPS;又は、
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
の配列を有する、請求項1に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を、担体と混合して含む医薬組成物。
【請求項7】
注射又は注入による投与に適した液体として製剤化された、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
制御された、例えば前記GIP類似体の徐放を引き起こすように製剤化された、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
代謝障害の治療および/又は予防の方法における使用のための、請求項1~
5のいずれか1項に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物
を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記GIP類似体は、抗糖尿病薬との併用療法の一部として投与される、請求項
9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記GIP類似体は、GLP-1アゴニストとの併用療法の一部として投与される、請求項
9に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記代謝障害は、糖尿病又は糖尿病関連障害、又は肥満又は肥満関連障害である、請求項
9に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
前記糖尿病関連障害は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時グルコースの増加、低血糖(例えば、インスリン治療により誘発される)、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病高血圧、脂質異常症、又はそれらの組み合わせである、請求項
12に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
前記糖尿病関連障害は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、又は脳卒中であるか、あるいは、アテローム性脂質異常症、血中脂質障害、血圧上昇、高血圧,血栓形成亢進状態、又は炎症亢進状態に関連する状態である、請求項
12に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
前記糖尿病関連障害は、骨折のリスクの増加を含む骨粗鬆症である、請求項
12に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
前記血中脂質障害は、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、高LDLコレステロール、動脈壁におけるプラーク蓄積、又はそれらの組み合わせである、請求項
14に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記血栓形成亢進状態は、高レベルの血中フィブリノーゲン又は高レベルの血中プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1を含む、請求項
14に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記炎症亢進状態は、血中C反応性蛋白レベルの上昇を含む、請求項
14に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
前記肥満関連障害は、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、又は肥満誘発性睡眠時無呼吸であるか、あるいは、アテローム性脂質異常症、血中脂質障害、血圧上昇、高血圧、血栓形成亢進状態,及び炎症亢進状態から選択される状態に関連しうるか、あるいはそれらの組み合わせである、請求項
12に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GIP受容体にアゴニスト活性を有する化合物、及び代謝障害の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病及び肥満症は世界的に増加している健康問題であり、様々な他の疾患、特に心血管疾患(CVD)、閉塞型睡眠時無呼吸、脳卒中、末梢動脈疾患、微小血管合併症及び変形性関節症に関連する。世界中には2億4600万人が糖尿病を患い、2025年までに3億8000万人が糖尿病を患うであろうと推定されている。また、多くの人は、高/異常LDL及びトリグリセリド及び低HDLを含むさらなる心血管危険因子を有する。心血管疾患は、糖尿病を患う人の死亡率の約50%を占め、肥満症及び糖尿病に関するその罹患率及び死亡率から、効果的な治療の選択肢が医学的に強く必要とされる。
【0003】
グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(「GIP」、「胃抑制ポリペプチド」としても知られる)は、経口栄養摂取に応答して小腸の腸内分泌K細胞によって血流に分泌される42残基のペプチドである。GIPは、胃酸の分泌を阻害し、経口グルコース摂取後の膵臓β細胞からのインスリン分泌の強力な刺激因子であることが示されている(「インクレチン効果」)(Creutzfeldt, W., et al, 1979, Diabetologia, 16:75-85)。
【0004】
グルコースやその他の栄養素の摂取によって誘発されるインスリンの放出は、ホルモンおよび神経因子の両方によるものである(Creutzfeldt, W., et al, 1985, Diabetologia, 28:565-573)。いくつかの胃腸調節ペプチドがインクレチンとして提案されており、これらの候補の中では、GIPおよびグルカゴン様ペプチド1(「GLP-1」)のみが、食後インスリン放出の生理学的刺激因子とされる要件を満たすようである(Nauck, et al, 1989, J. Clin. Endocrinol Metab., 69:654- 662)。GIPとGLP-1の併用効果は、腸・膵島軸の完全なインクレチン効果を説明するのに十分であることが示されている(Fehmann, H. C, et al, 1989, FEBS Lett, 252: 109-112)。
【0005】
当業者には周知のように、GIPについて知られている可能性のある用途は多様で多岐に渡る。したがって、アゴニスト効果を惹起する目的のために本発明の化合物を投与することは、GIPそのものを投与するのと同じ効果や用途を有し得る。GIPのこれらの様々な用途は、以下にまとめることができる、つまり、1型糖尿病、2型糖尿病(Visboll, T., 2004, Dan. Med. Bull, 51 :364-70)、インスリン抵抗性(WO2005/082928)、肥満(Green, B. D., et al, 2004, Current Pharmaceutical Design, 10:3651-3662)、代謝障害(Gault, V. A., et al, 2003, Biochem. Biophys. Res. Commun., 308:207-213)、中枢神経系疾患、神経変性疾患、うっ血性心不全、低血糖、及び食物摂取量の減少および体重減少が望まれる障害;から成る群から選択される疾患の治療である。膵島では、GIPはインスリン分泌を急激に増強するだけでなく、プロインスリンの転写および翻訳の増強を介してインスリン産生を刺激し(Wang, et al, 1996, MoI Cell. Endocrinol, 116:81-87)、膵臓β細胞の増殖や生存を増強する(Trumper, et al, 2003, Diabetes, 52:741-750)。インスリン分泌を増強するという膵臓への影響に加えて、GIPはまた、インスリン標的組織に対し直接に血漿グルコースを低下させる効果:脂肪(Eckel, et al, 1979, Diabetes, 28: 1141-1142)および筋肉(O’Harte, et al, 1998, J. Endocrinol, 156:237-243)におけるグルコース取り込みの増強効果;ならびに肝臓のグルコース生産の阻害効果(Elahi, D., et al, 1986, Can. J. Physiol. Pharmacol, 65:A18):を有する。
【0006】
近年、GLP-1およびGIPを共投与すると、GLP-1アゴニスト処置に伴う体重減少が増強されることが報告されている(Finan, Sci Transl Med. 2013; 5(209):209ra151. Irwin N et al, 2009, Regul Pept; 153: 70-76. Gault et al, 2011, Clin Sci (Lond); 121:107-117)。例えば、Finanらは、アシル化GIPアゴニストとアシル化GLP-1アゴニストとを亜長期(sub-chronic)にわたり共投与すると食餌誘発性肥満(DIO)マウスにおいて有意な体重減少があることを示した。共投与により、いずれかのアゴニスト単独よりも体重および脂肪量を大幅に減少させた。GLP-1およびGIPは、血糖コントロールに相加的な効果を有することを示唆する証拠もある(Gault et al, 2011, Clin Sci (Lond); 121:107-117)。Gaultらの研究により、ob/obマウスにおける腹腔内グルコース耐性試験において、GLP-1類似体とアシル化GIP類似体との亜長期共投与が、GLP-1アゴニスト又はGIPアゴニスト単独よりも優れたグルコース低下作用およびインスリン分泌促進作用を奏することが示された。したがって、GIPアゴニストは、GLP-1受容体アゴニストと組み合わせて(同じ医薬製剤の一部として、又は別個の製剤として)投与すると、血糖コントロールを改善し、体重を減少させるのに特に効果的である可能性がある。
【0007】
しかしながら、未修飾GIPは、生体内半減期が約2分間と短いので、治療剤としての使用が制限される(Said and Mutt, 1970, Science, 169:1217-1218)。血清中、GIPおよびGLP-1の両方のインクレチンは、ジペプチジルペプチダーゼIV(「DPPIV」)によって分解される。タンパク質分解に対するGIPの安定性を改善することは、その受容体におけるGIPの活性を維持するだけでなく、より重要なことに、いくつかはGIP受容体アンタゴニストとして作用するGIP断片の産生を妨げることになる(Gault, et al. , 2002, J. Endocrinol, 175:525-533)。報告された修飾として、N末端チロシンの修飾によりDPPIVによるタンパク質分解からGIPのN末端を保護すること(O’Harte, et al, 2002, Diabetologia, 45: 1281-1291)、2位のアラニンの突然変異(Hinke, et al, 2002, Diabetes, 51:656-661)、3位のグルタミン酸の突然変異(Gault, et al, 2003, Biochem. Biophys. Res. Commun., 308:207-213)、13位のアラニンの突然変異(Gault, et al, 2003, Cell Biol. International, 27:41-46)が挙げられる。
【0008】
様々な標的器官の機能に対するGIP類似体の効果および治療薬としてのGIP類似体の使用可能性に関連する以下の特許出願が出願されている:PCT公報WO00/58360号は、インスリンの放出を刺激するGIPのペプチジル類似体を開示する。特に、この出願は、GIPのN末端から少なくとも15個のアミノ酸残基を含む特定のペプチジル類似体を開示する(I-42)。
【0009】
PCT公報WO03/082898号は、GIPのC末端切断断片およびN末端修飾類似体、ならびにペプチド結合が低減した又はDPPFV特異的切断部位に近いアミノ酸が変化した種々なGIP類似体を開示する。この出願は、GIPの可能性のある受容体結合部位の間に異なるリンカーを有する類似体をさらに開示する。この出願の化合物は、インスリン非依存性糖尿病および肥満などのGIP受容体が介在する状態の治療に有用であると主張されている。さらに、本明細書中に例示される本発明の化合物のその他の治療効果のなかでも、血漿グルコースレベルをより厳密にコントロールすることは、長期的な糖尿病合併症を予防し得て、それによって患者の生活の質を改善し得る。GIPはまた、血糖コントロールを改善することに加えて、GLP-1が介在する体重減少を増強し得る。
【0010】
GIP類似体を、例えばPEG(ポリエチレングリコール)に結合すると生体内半減期が延長されることが示されるが、インターフェロンβやリバビリンといったペグ化医薬品の副作用の可能性が報告されている(J Clin Gastroenterol. 2004 Sep;38(8):717-22, Gut 2006;55:1350-1359 doi:10.1136/gut.2005.076646)。
【0011】
したがって、GIP受容体への結合親和性を維持しアゴニスト効果を誘発しつつ、製剤内において安定であり、タンパク質分解に対する感受性が減少しクリアランスが減少することにより、長い生体内半減期を有する、改善された安全なGIP類似体の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、インビトロでの有効性アッセイにおける評価によりおいてGIP活性が変化する、好ましくはマウスにおけるインビボ研究での評価において最終消失半減期(T1/2)が増大するという特性を有し得るGIP類似体に関する。
【0013】
本発明のGIP受容体アゴニストは、消失半減期が長いので、既存のGIP類似体より優れていることが発見された。したがって、GIP類似体は、2型糖尿病、肥満および関連障害を含むが、これらに限定されない代謝障害の治療薬として使用することができる。
【0014】
本発明は、第1の態様において、一般式I:
R1-Tyr-X2-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-X10-X11-X12-Glu-Leu-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-Phe-X23-X24-X25-Leu-X27-X28-X29-Y1-Y2-R2 (I)
により表されるGIP類似体
(式中、
R1は、H-、Ac又はpGluピログルタミン酸(pGlu;(S)-(-)-2-ピロリドン-5-カルボン酸)、C1-4アルキル、アセチル、ホルミル、ベンゾイル、およびトリフルオロアセチルであり,
X2は、Aib、Ala、D-Ala、Gly、Ser、N-Me-Ser、Ac3c、Ac4c又はAc5cであり;
X10は、Tyr、Leu又はSerであり;
X11は、Ser又はLeuであり;
X12は、Lys、Ψ又はIleであり;
X15は、Asp又はGluであり;
X16は、Ser、Glu、Lys又はΨであり;
X17は、Ile、Lys、Gln、Arg又はΨであり;
X18は、His、Arg又はAlaであり;
X19は、Gln、Lys、Ala又はGluであり;
X20は、Gln、Lys、Ala、His又はArgであり;
X21は、Ala、Leu、Asp又はGluであり;
X23は、Val又はIleであり;
X24は、Asn又はGluであり;
X25は、Tyr又はTrpであり;
X27は、Leu、Glu、Ser、Lys又はValであり;
X28は、Ala、Ser又はArgであり;
X29は、Aib、Gly、Ala、Gln、Thr、Ser又はLys又は非存在であり;
Y1は、Lys-Gly、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Gly-Lys-Lys-Asn-Asp-Trp-Lys-His-Asn-Ile-Thr-Gln、又は非存在であり;
Y2は、Ψ又は非存在であり;
R2は、-NH2又は-OHであり;
ここで、Ψは、独立にLys、Arg、Orn、およびCysから選択される残基であり、かつ、前記残基の側鎖は、親油性置換基に結合しており;
前記GIP類似体は、1つ又は唯一の残基Ψを含む)、
あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0015】
一の態様では、R1は、H-、Ac又はpGluである。
【0016】
式Iの可変位置(variable positions)のいくつかに存在してもよい残基の組み合わせとして以下のものが挙げられる:
Aib2、Asp15、Lys20;
Aib2、Asp15、Arg20;
Aib2、Asp15、Arg20、Ile23;
Aib2、Ile12、Asp15、Arg20、Ile23、Glu24;
Ile12、Asp15、Ile23;
Ile12、Asp15、Ile23、Glu24;
Ile12、Asp15、Ala21、Ile23;
Aib2、Ala21、Ile23、Glu24;
Aib2、Asp15、Ile23;
Aib2、Asp15、Arg20、Ile23、Gln29;
Aib2、Asp15、Arg20、Gly29;
Aib2、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Aib2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
DAla2、Asp15、Ile23;
DAla2、Asp15、Ile23、Ala28;
Aib2、Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;
Asp15、Ile23、Glu24;
N-Me-Ser2、Asp15、Lys20;
N-Me-Ser2、Asp15、Arg20;
N-Me-Ser2、Asp15、Arg20、Ile23;
N-Me-Ser2、Ile12、Asp15、Arg20、Ile23、Glu24;
N-Me-Ser2、Ala21、Ile23、Glu24;
N-Me-Ser2、Asp15、Ile23;
N-Me-Ser2、Asp15、Arg20、Ile23、Gln29;
N-Me-Ser2、Asp15、Arg20、Gly29;
N-Me-Ser2、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
N-Me-Ser2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
N-Me-Ser2、Asp15、Ile23;
N-Me-Ser2、Asp15、Ile23、Ala28;
Ac3c2、Asp15、Lys20;
Ac3c2、Asp15、Arg20;
Ac3c2、Asp15、Arg20、Ile23;
Ac3c2、Ile12、Asp15、Arg20、Ile23、Glu24;
Ac3c2、Ala21、Ile23、Glu24;
Ac3c2、Asp15、Ile23;
Ac3c2、Asp15、Arg20、Ile23、Gln29;
Ac3c2、Asp15、Arg20、Gly29;
Ac3c2、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Ac3c2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Ac3c2、Asp15、Ile23;
Ac3c2、Asp15、Ile23、Ala28;
Ac4c2、Asp15、Lys20;
Ac4c2、Asp15、Arg20;
Ac4c2、Asp15、Arg20、Ile23;
Ac4c2、Ile12、Asp15、Arg20、Ile23、Glu24;
Ac4c2、Ala21、Ile23、Glu24;
Ac4c2、Asp15、Ile23;
Ac4c2、Asp15、Arg20、Ile23、Gln29;
Ac4c2、Asp15、Arg20、Gly29;
Ac4c2、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Ac4c2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Ac4c2、Asp15、Ile23;
Ac4c2、Asp15、Ile23、Ala28;
Ac5c2、Asp15、Lys20;
Ac5c2、Asp15、Arg20;
Ac5c2、Asp15、Arg20、Ile23;
Ac5c2、Ile12、Asp15、Arg20、Ile23、Glu24;
Ac5c2、Ala21、Ile23、Glu24;
Ac5c2、Asp15、Ile23;
Ac5c2、Asp15、Arg20、Ile23、Gln29;
Ac5c2、Asp15、Arg20、Gly29;
Ac5c2、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Ac5c2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Ac5c2、Asp15、Ile23;又は、
Ac5c2、Asp15、Ile23、Ala28。
【0017】
本発明は、更なる態様において、一般式II:
R1-Tyr-X2-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-X12-Glu-Leu-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-Phe-X23-X24-X25-Leu-X27-X28-X29-Y1-Y2-R2 (II)
により表されるGIP類似体
(式中、
R1は、H-、Ac又はpGluであり;
X2は、Aib、Ala、D-Ala又はGlyであり;
X12は、Lys、Ψ又はIleであり;
X15は、Asp又はGluであり;
X16は、Ser、Glu、Lys又はΨであり;
X17は、Ile、Lys、Gln、Arg又はΨであり;
X18は、His、Arg又はAlaであり;
X19は、Gln又はAlaであり;
X20は、Gln、Lys、Ala、His又はArgであり;
X21は、Ala、Asp又はGluであり;
X23は、Ile又はValであり;
X24は、Asn又はGluであり;
X25は、Tyr又はTrpであり;
X27は、Leu、Glu、Ser、Lys又はValであり;
X28は、Ala、Ser又はArgであり;
X29は、Aib、Gly、Ala、Gln、Thr、Ser又はLys又は非存在であり;
Y1は、Lys-Gly、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Gly-Lys-Lys-Asn-Asp-Trp-Lys-His-Asn-Ile-Thr-Gln、又は非存在であり;
Y2は、Ψ又は非存在であり;
R2は、-NH2又は-OHであり;
ここで、ΨはLys残基であり、かつ、前記Lys残基の側鎖は、親油性置換基に結合しており;
前記GIP類似体は、1つ又は唯一の残基Ψを含む)、
あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0018】
式IIの可変位置(variable positions)のいくつかに存在してもよい残基の組み合わせとして以下のものが挙げられる:
Aib2、Lys12、Asp15、Lys20;
Aib2、Lys12、Asp15、Arg20;
Aib2、Asp15、Arg20;
Aib2、Ile12、Asp15、Arg20、Glu24;
Ile12、Asp15、Ile23;
Ile12、Asp15、Glu24;
Ile12、Asp15、Ala21;
Aib2、Lys12、Ala21、Glu24;
Aib2、Lys12、Asp15;
Aib2、Lys12、Asp15、Arg20、Gln29;
Aib2、Lys12、Asp15、Arg20、Gly29;
Aib2、Lys12、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Aib2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
DAla2、Asp15;
DAla2、Asp15、Ala28;
Aib2、Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;
Asp15、Glu24;
Ala2、Lys12、Asp15、Lys20;
Ala2、Lys12、Asp15、Arg20;
Ala2、Asp15、Arg20;
Ala2、Ile12、Asp15、Arg20、Glu24;
Ala2、Ile12、Asp15、Ile23;
Ala2、Ile12、Asp15、Glu24;
Ala2、Ile12、Asp15、Ala21;
Ala2、Lys12、Ala21、Glu24;
Ala2、Lys12、Asp15;
Ala2、Lys12、Asp15、Arg20、Gln29;
Ala2、Lys12、Asp15、Arg20、Gly29;
Ala2、Lys12、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Ala2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Ala2、Asp15;
Ala2、Asp15、Ala28;
Ala2、Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;
Gly2、Lys12、Asp15、Lys20;
Gly2、Lys12、Asp15、Arg20;
Gly2、Asp15、Arg20;
Gly2、Ile12、Asp15、Arg20、Glu24;
Gly2、Ile12、Asp15、Ile23;
Gly2、Ile12、Asp15、Glu24;
Gly2、Ile12、Asp15、Ala21;
Gly2、Lys12、Ala21、Glu24;
Gly2、Lys12、Asp15;
Gly2、Lys12、Asp15、Arg20、Gln29;
Gly2、Lys12、Asp15、Arg20、Gly29;
Gly2、Lys12、Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Gly2、Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Gly2、Asp15;
Gly2、Asp15、Ala28;
Gly2、Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;又は、
Gly2、Asp15、Glu24。
【0019】
本発明は、更なる態様において、一般式III:
R1-Tyr-Aib-Glu-Gly-Thr-Phe-Ile-Ser-Asp-Tyr-Ser-Ile-Glu-Leu-X15-X16-X17-X18-X19-X20-X21-Phe-Val-X24-X25-Leu-Leu-Ala-X29-Y1-Y2-R2 (III)
により表されるGIP類似体
(式中、
R1は、H-、Ac又はpGluであり;
X15は、Asp又はGluであり;
X16は、Lys又はΨであり;
X17は、Ile又はΨであり;
X18は、His又はAlaであり;
X19は、Gln又はAlaであり;
X20は、Gln、Lys又はArgであり;
X21は、Ala、Asp又はGluであり;
X24は、Asn又はGluであり;
X25は、Tyr又はTrpであり;
X28は、Ala、Ser又はArgであり;
X29は、Gln又は非存在であり;
Y1は、Lys-Gly、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser、Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Ser、Gly-Lys-Lys-Asn-Asp-Trp-Lys-His-Asn-Ile-Thr-Gln、又は非存在であり;
Y2は、Ψ又は非存在であり;
R2は、-NH2又は-OHであり;
ここで、Ψは、独立にLys、Arg、Orn、およびCysから選択される残基であり、かつ、前記残基の側鎖は、親油性置換基に結合しており;
前記GIP類似体は、1つ又は唯一の残基Ψを含む)、
あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0020】
式IIIの可変位置(variable positions)のいくつかに存在してもよい残基の組み合わせとして以下のものが挙げられる:
Asp15、Lys20;
Asp15、Arg20;
Asp15、Arg20、Glu24;
Asp15、Lys16;
Asp15、Lys16、Glu24;
Asp15、Ψ16、Ala21;
Ala21、Glu24;
Asp15、Arg20、Gln29;
Asp15、Arg20、Gly29;
Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Asp15、Ala28;
Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;
Asp15、Ile23、Glu24;
Asp15、Ψ17、Lys20;
Asp15、Ψ17、Arg20;
Asp15、Ψ17、Arg20
Asp15、Ψ17、Arg20、Glu24;
Asp15、Lys16、Ψ17;
Asp15、Lys16、Ψ17、Glu24;
Asp15、Ψ17、Ala21;
Ala21、Ψ17、Glu24;
Asp15、Asp15、Ψ17、Arg20、Gln29;
Asp15、Ψ17、Arg20、Gly29;
Asp15、Ile17、Arg20、Gly29;
Asp15、Ile17、Lys20、Gly29;
Asp15;Ψ17;
Asp15、Ψ17、Ala28;
Asp15、Ile17、Lys20、Ala28;又は、
Asp15、Ψ17、Ile23、Glu24。
【0021】
GIP類似体は、式R1-Z-R2
(式中、R1およびR2は上で定義した通りであり、Zは以下の配列を有する:
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDΨIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKΨHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPSΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPSΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQKGΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨHQQDFVNYLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKΨAAKEFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKΨAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPSΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨAAQDFVNWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVNWLLAGPSSGAPPPSΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQKEFIEWLLAGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVEWLLAGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQAFVNWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFVNWLLAAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFINWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKΨIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSKΨELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDKKΨAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPSKΨ;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQDFINWLLAQGPSSGAPPPS;又は、
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKKΨAAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS)
を有してもよい。
【0022】
GIP類似体は、式R1-Z-R2
(式中、R1およびR2は上で定義した通りであり、Zは以下の配列を有する:
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELD-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-IHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-K(ヘキサデカノイル-isoGlu);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQ-K(ヘキサデカノイル-isoGlu);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQKG-K(ヘキサデカノイル-isoGlu);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-HQQDFVNYLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAKEFVNWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQ-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVNWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQKEFVEWLLAAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQKEFVEWLLAAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQKEFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQAFVNWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFINWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELD-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-IAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-;
Y-Aib-EGTFISDYS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-ELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-DAla-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3);
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFINWLLAQGPSSGAPPPS;
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS;又は、
Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS)
を有してもよい。
【0023】
GIP類似体は、以下のものであってもよい:
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物1);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELD-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-IHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物2);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物3);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物4);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-NH2(化合物5);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQ-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-NH2(化合物6);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIHQQDFVNWLLAQKG-K(ヘキサデカノイル-isoGlu)-NH2(化合物7);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-HQQDFVNYLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物8);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-HQQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物9);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物10);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAKEFVNWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物11);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELEK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物12);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物13);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELEKIAQRAFVEWLLAQ-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物14);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAGPSSGAPPPS-NH2(化合物15);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVNWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物16);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物17);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物18);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物19);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQRAFVEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物20);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AQKEFVEWLLAAGPSSGAPPPS-NH2(化合物21);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQKEFVEWLLAAGPSSGAPPPS-NH2(化合物22);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物23);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQKEFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物24);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物25);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-NH2(化合物26);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAAQDFVEWLLAGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物27);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-NH2(化合物28);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQAFVNWLLAGPSSGAPPPS-NH2(化合物29);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFVNWLLAAGPSSGAPPPS-NH2(化合物30);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFINWLLAGPSSGAPPPS-NH2(化合物31);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-NH2(化合物32);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-NH2(化合物33);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELD-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-IAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物34);
H-Y-Aib-EGTFISDYS-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-ELDKIAQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物35);
H-Y-DAla-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AQRAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物36);
H-Y-DAla-EGTFISDYSIELDKIAAQDFIEWLLAGPSSGAPPPS-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-NH2(化合物37);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物38);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQDFINWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物39);
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K([19-カルボキシ-ノナデカノイル]-isoGlu-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物40);又は
H-Y-Aib-EGTFISDYSIELDK-K((19-カルボキシ-ノナデカノイル)-[(ピペラジン-1-イル)-アセチル]-Peg3-Peg3)-AAQAFIEWLLAQGPSSGAPPPS-NH2(化合物41)。
【0024】
本発明はさらに、本明細書に記載のGIP類似体体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を、担体、好ましくは医薬的に許容し得る担体と混合して含む医薬組成物を提供する。GIP類似体は、例えば、医薬的に許容し得る酸付加塩であってもよい。
【0025】
医薬組成物は、注射又は注入による投与に適した液体として製剤化してもよい。医薬組成物は、制御された、例えば前記GIP類似体の徐放を引き起こすように製剤化してもよい。
【0026】
本発明はさらに、本明細書に記載のGIP類似体を含む治療キット、並びに本明細書に記載のGIP類似体を含むデバイスを提供する。
【0027】
本発明はさらに、医学的な処置の方法における使用、例えば、代謝障害の治療および/又は予防における使用のための、本明細書に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を提供する。
【0028】
本発明はさらに、代謝障害の治療および/又は予防のための医薬の製造における、本明細書に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物の使用を提供する。
【0029】
本発明はさらに、本明細書に記載のGIP類似体あるいはその医薬的に許容し得る塩又は溶媒和物を対象に投与することを含む、対象における代謝障害の予防および/又は治療方法を提供する。
【0030】
代謝障害は、糖尿病又は糖尿病関連障害、又は肥満又は肥満関連障害であってもよい。肥満と糖尿病との関連はよく知られているので、これらの状態は必ずしも単独又は互いに排他的でなくてもよい。
【0031】
糖尿病関連障害は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時グルコースの増加、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病高血圧、脂質異常症、およびそれらの組み合わせを含む。
【0032】
糖尿病関連障害は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、および脳卒中;あるいは、アテローム性脂質異常症、血中脂質障害、血圧上昇、高血圧,血栓形成亢進状態,炎症亢進状態に関連する状態、及び骨粗鬆症といった骨関連障害も含む。
【0033】
血中脂質障害は、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、高LDLコレステロール、及び動脈壁におけるプラーク蓄積から選択されてもよい。
【0034】
血栓形成亢進状態は、高レベルの血中フィブリノーゲン又は高レベルの血中プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1から選択されてもよい。
【0035】
炎症亢進状態は、血中C反応性蛋白レベルの上昇であってもよい。
【0036】
肥満関連障害は、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、及び肥満誘発性睡眠時無呼吸を含む、あるいは、アテローム性脂質異常症、血中脂質障害、血圧上昇、高血圧、血栓形成亢進状態,及び炎症亢進状態、から選択される状態に関連しうるか、あるいはそれらの組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A-B】
図1A-Bは、5時間絶食マウスを用いたOGTTにおける血中グルコースレベルを示す。マウスは、グルコースを経口強制投与する4時間前に、ビヒクル、GLP-1類似体リラグルチド(10nmol/kg)、及びGIP受容体アゴニスト(化合物12、13、17、および21を3-300nmol/kg)を皮下注射した(t=0)。データは、平均±SEM;n=6。ビヒクルとの統計的な差:
*p<0.05,
**p<0.01,
***p<0.001。
【
図1C-D】
図1C-Dは、5時間絶食マウスを用いたOGTTにおける血中グルコースレベル(C)及び血中グルコース曲線下面積(AUC)(D)を示す。マウスは、グルコースを経口強制投与する4時間前に、ビヒクル、GLP-1類似体リラグルチド(10nmol/kg)、及びGIP受容体アゴニスト(化合物12、13、17、および21を3-300nmol/kg)を皮下注射した(t=0)。データは、平均±SEM;n=6。ビヒクルとの統計的な差:
*p<0.05,
**p<0.01,
***p<0.001。
【0038】
【
図2A-B】
図2A-Bは、5時間絶食マウスを用いたOGTTにおける血中グルコースレベルを示す。マウスは、グルコースを経口強制投与する4時間前に、ビヒクル、及びGIP受容体アゴニスト(化合物12、18、41、33、及び35を3-300nmol/kg)を皮下注射した(t=0)。データは、平均±SEM;n=6。ビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。
【
図2C-D】
図2C-Dは、5時間絶食マウスを用いたOGTTにおける血中グルコースレベルを示す。マウスは、グルコースを経口強制投与する4時間前に、ビヒクル、及びGIP受容体アゴニスト(化合物12、18、41、33、及び35を3-300nmol/kg)を皮下注射した(t=0)。データは、平均±SEM;n=6。ビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。
【
図2E】
図2Eは、5時間絶食マウスにおける血中グルコース曲線下面積(AUC)を示す。マウスは、グルコースを経口強制投与する4時間前に、ビヒクル、及びGIP受容体アゴニスト(化合物12、18、41、33、及び35を3-300nmol/kg)を皮下注射した(t=0)。データは、平均±SEM;n=6。ビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。
【0039】
【
図3】
図3は、治療3週間にわたるDIOマウスにおける相対的な体重変化を示す(デルタΔ体重=各試験日の体重-1日目の体重。データは平均±SEM。)。1日1回、2種類の注射を別個に動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1又はGLP-1類似体リラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2又は化合物12(3および30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(1日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。データは、平均±SEM;n=8-9。22日目のビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。リラグルチドとGIPアゴニストを共投与したリラグルチドとの統計的差異(p<0.05)を横線で示す。
【0040】
【
図4A-B】
図4A-Bは、ビヒクル、GLP-1類似体リラグルチド、リラグルチド+化合物10又は12(A)、リラグルチド+化合物17(B)による治療4週間にわたるDIOマウスにおける相対的な体重変化を示す(デルタΔ体重=各試験日の体重-0日目の体重)。1日1回、2種類の注射を別個に動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1又はリラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2又はGIPアゴニスト(3および/又は30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(0日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。データは、平均±SEM;n=9。27日目のビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。リラグルチドとGIPアゴニストを共投与したリラグルチドとの統計的差異(p<0.05)を横線で示す。
【
図4C-D】
図4C-Dは、ビヒクル、GLP-1類似体リラグルチド、リラグルチド+化合物18(C)、リラグルチド+化合物35(D)による治療4週間にわたるDIOマウスにおける相対的な体重変化を示す(デルタΔ体重=各試験日の体重-0日目の体重)。1日1回、2種類の注射を別個に動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1又はリラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2又はGIPアゴニスト(3および/又は30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(0日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。データは、平均±SEM;n=9。27日目のビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。リラグルチドとGIPアゴニストを共投与したリラグルチドとの統計的差異(p<0.05)を横線で示す。
【
図4E】
図4Eは、ビヒクル、GLP-1類似体リラグルチド、リラグルチド+化合物41(E)による治療4週間にわたるDIOマウスにおける相対的な体重変化を示す(デルタΔ体重=各試験日の体重-0日目の体重)。1日1回、2種類の注射を別個に動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1又はリラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2又はGIPアゴニスト(3および/又は30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(0日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。データは、平均±SEM;n=9。27日目のビヒクルとの統計的な差:
***p<0.001。リラグルチドとGIPアゴニストを共投与したリラグルチドとの統計的差異(p<0.05)を横線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書で他に定義しない限り、本願において用いられる科学的及び技術的用語は、当業者に一般的に理解される意味を有する。一般的に、本明細書に記載される化学、分子生物学、細胞及び癌生物学、免疫学、微生物学、薬学、並びにタンパク質及び核酸化学の技術に関連して用いられる命名法は、当該技術分野においてよく知られており、一般的に用いられるものである。
【0042】
定義
特段の指定のない限り、以下の定義は、特定の用語について設けられ、上述の説明においても用いられる。
【0043】
本明細書を通して、用語「含む(comprise)」、又は例えば「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変形は、記載された整数(若しくは構成要素)又は一群の整数(若しくは構成要素)を包含するという意味であり、他の整数(若しくは構成要素)又は一群の整数(若しくは構成要素)を排除するという意味ではないことを理解されたい。
【0044】
単数形である「a」「an」及び「the」は、特段の明記のない限り、複数形を含む。
【0045】
用語「含む(including)」は、「限定せずに含む」ことを意味する。「含む(including)」と「限定することなく含む(including but not limited to)」は、互換的に用いられる。
【0046】
用語「患者」と「対象」と「個人」は、互換的に用いられ、ヒト又はヒト以外の動物のいずれかを意味する。これらの用語は、哺乳動物、例えばヒト、霊長動物、家畜動物(例えば、ウシ、ブタ)、愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)、及び齧歯動物(例えばマウス及びラット)を含む。
【0047】
本発明の文脈において、用語「溶媒和物」とは溶質(この場合、本発明に係るペプチド複合体又は医薬的に許容し得るその塩)と溶媒の間で形成される、規定された化学量論的な複合体を指す。これに関して、溶媒は、例えば、水、エタノール又は別の医薬的に許容し得る典型的に小分子の有機種、例えば、限定されないが、酢酸又は乳酸でもよい。問題の溶媒が水である場合、かかる溶媒和物は、通常水和物を意味する。
【0048】
本発明の文脈において用いられる用語「アゴニスト」とは、問題の受容体タイプによるシグナル伝達を活性化する物質(リガンド)を指す。本発明の文脈において用いられる用語「アンタゴニスト」とは、問題の受容体タイプによるシグナル伝達を減少させる物質(リガンド)を指す。
【0049】
本明細書及び特許請求の範囲を通して、天然(又は「タンパク質原性」)のアミノ酸についての従来の1文字及び3文字コード、並びに他の(非天然又は「非タンパク質原性」の)α-アミノ酸について一般的に許容される3文字コード、例えばAib(α-アミノイソ酪酸)、Orn(オルニチン)、およびD-Ala(D-アラニン)が用いられる。本発明のペプチド中の全てのアミノ酸残基は、特段の明示のない限り、好ましくは、L体である。
【0050】
本明細書に開示される配列には、配列のアミノ末端(N末端)における「H-」部分、及び配列のカルボキシ末端(C末端)における「-OH」部分又は「-NH2」部分を有する配列も含まれる。この場合、別段の記載のない限り、それぞれ、問題の配列のN末端における「H-」部分は、水素原子を意味し(つまり、R1=H)、N末端における遊離の第一級又は第二級アミノ基の存在に対応する、一方、問題の配列のC末端における「-OH」又は「-NH2」部分(つまり、R2=OH又はNH2)は、C末端におけるカルボキシ(COOH)基又はアミド(CONH2)基の存在にそれぞれ対応する。
【0051】
本発明の化合物は、特に、代謝疾患、例えば糖尿病や肥満の治療において、GIP生物学的活性を有する。これは、試験動物をGIP類似体で処置又は曝露後に、血中グルコースレベル又は他の生物学的活性を決定する、例えばインビボアッセイにおいて評価されてもよい。特に、本発明の化合物は、GLP-1受容体アゴニストと共に糖尿病の患者及び/又は過体重又は肥満の対象に投与される場合、血糖コントロールを改善することおよび体重を減少ことに効果的なことがある。この併用療法で得られる効果は、GLP-1受容体アゴニスト単独を比較可能な投薬レジメンに従って投与した場合に比較対象で得られる効果よりも優れていることがある。本発明の化合物は、単独で投与する場合でも、血糖コントロールを改善し、体重を減少させることができることがある。Y1およびY2基は、GIP類似体に対して安定化効果を有する。いずれの理論にも拘束されるものではないが、エキセンディン-4およびGIP化合物のC末端部分を含む基はペプチドの折りたたみに影響を及ぼすと考えられている。
【0052】
糖尿病の対象又は過体重の対象の治療いずれの場合においても、本発明のGIP類似体を用いる治療の効果は、比較可能な投与計画により与えられる場合、単独、又は他の抗糖尿病剤又は抗肥満剤との組み合わせにおいて、比較可能な対象における同じ量の(質量又はモル比による)野生型ヒトGIPで得られるものよりも優れていることがある。
【0053】
また、インビトロアッセイにおける活性も、化合物の活性の測定値として用いてもよい。典型的に、前記化合物は、GIP受容体(指定されたGIP-R)において活性(つまり、アゴニスト活性)を有する。EC50値を、所与の受容体におけるアゴニスト効力の数値的な測定値として用いられてもよい。EC50値は、特定のアッセイにおいてその化合物の最大の活性の半分を達成するために要求される化合物の濃度の測定値である。例えば、特定のアッセイにおける化合物のEC50値は、ヒトGIPのEC50値に対して評価される。従って、ヒトGIP受容体における試験化合物のEC50値対野生型ヒトGIPのEC50値の比(EC50[試験化合物]/EC50[GIP])は、10未満、5未満、1未満、0.1未満、0.05未満、0.01未満でもよい。EC50値は、実施例に記載のヒトGIP受容体アッセイを用いて測定し得る。かかるアッセイでは、化合物は、例えば、0.001-0.050nM、0.001-0.030nM、0.001-0.020nM、又は0.001-0.010nMのEC50値を有してもよい。
【0054】
本化合物は、典型的には、GLP-1受容体においてアゴニスト活性を最小限有するか又は全く有しない。例えば、ヒトGIP受容体におけるGLP-1アゴニストであるエキセンディン-4のEC50値に対する試験化合物のEC50値の比(EC50[test化合物]/EC50[Ex4])は、少なくとも約100、少なくとも約250、少なくとも約500、少なくとも約750、少なくとも約1000、少なくとも約5000、又は少なくとも約10,000であってもよい(ここで、「約」は±10%を表すのに使用される)。EC50値は、以下の実施例に記載のヒトGLP-1受容体アッセイを用いて決定してもよい。そのようなアッセイにおいて、化合物は、例えば、少なくとも1nM、少なくとも3nM、少なくとも5nM、又は少なくとも10nMのEC50値を有してもよい。
【0055】
親油基
本発明の化合物は、残基Ψ、つまり、側鎖が親油性置換基に結合したLys、Arg、OrnおよびCysから選択される残基を含む。
【0056】
特定の理論に拘束されるものではないが、この置換基は血流中の血漿タンパク質(例えば、アルブミン)に結合することで本発明の化合物を酵素分解から遮断し、これにより化合物の半減期を上昇させると考えられる。また、例えばGLP受容体に対する、化合物の効力を調節することもできる。
【0057】
この置換基は、α炭素から遠位にある側鎖の端部の官能基に結合している。よって、その官能基が介在する相互作用(例えば、分子内や分子間の相互作用)に関与するLys、Arg、Orn又はCys側鎖の通常の能力は、置換基の存在によって減少したり又は完全に排除され得る。よって、化合物の全体的な特性は、残基Ψとして存在する実際のアミノ酸の違いに比較的影響されないこともある。したがって、Ψが存在できる任意の位置に、任意の残基Lys、Arg、Orn、およびCysが存在し得ると考えられる。しかしながら、特定の実施形態では、Ψのアミノ酸成分がLysであることが有利なことがある。
【0058】
よって、Ψは、Lys、Arg、Orn又はCysの残基であり、ここで該残基の側鎖は式-Z1又は-Z2-Z1を有する置換基に結合している。
【0059】
-Z1は、末端にΨ又はZ2に対する-X-の連結(connection)を有する脂肪鎖である
(式中、
-X-は、結合(bond)、-CO-、-SO-、又は-SO2-であり;
場合により、Z1は、連結-X-から遠位の鎖の末端において極性基を有し;
前記極性基は、カルボン酸、又はカルボン酸生物同配体、ホスホン酸、又はスルホン酸基を含み;
存在する場合、-Z2-は、Z1をΨに連結する下記式のスペーサである:
【0060】
【0061】
(式中、
各Yは、独立に、-NH、-NR、-S、又は-Oであり(式中、Rは、アルキルもしくは保護基であるか又はスペーサZ2の別の部分へのリンケージを形成する);
各Xは、独立に、結合(bond)、CO-、SO-、又はSO2-であり;
但し、Yが-Sのとき、Xは結合であることを条件とする;
各Vは、独立に、YとXとをつなぐ二価の有機部分であり;
そして、nは1~10である))。
【0062】
Z1基
Z1は、本明細書では、-X-と記載されるΨ又はZ2に対する連結を有する脂肪鎖である。-X-は、例えば、結合、アシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)である。Z1がΨに直接結合している場合、つまり、Z2が存在しない場合、好ましくは-X-は、アシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)である。最も好ましくは、-X-は、アシル(-CO-)である。
【0063】
Z1は、連結-X-から遠位にある鎖の端部に極性基を更に有してもよい。換言すれば、連結は、極性基に対してω位にある。極性基は、脂肪鎖の末端に直接結合していてもよく、又はリンカーを介して結合していてもよい。
【0064】
好ましくは、極性基は、酸性又は弱酸性基、例えば、カルボン酸又はカルボン酸生物同配体、ホスホン酸、又はスルホン酸である。極性基は、水中において、-2~12、より好ましくは1~7、より好ましくは3~6のpKaを有し得る。特定の好ましい極性基は、4~5のpKaを有する。例えば、限定されるものではないが、極性基は、カルボン酸(-COOH)又はカルボン酸生物同配体、ホスホン酸(-P(O)(OH)2)、又はスルホン酸(-SO2OH)基を含んでもよい。
【0065】
好ましくは、極性基は、存在する場合、カルボン酸又はカルボン酸生物同配体を含む。適切なカルボン酸生物同配体は、当技術分野で公知である。好ましくは、生物同配体は、対応するカルボン酸と同様のpKaを有するプロトンを有する。適切な生物同配体の例として、以下に示すようなテトラゾール、アシルスルフォミド、アシルヒドロキシルアミン、およびスクアリン酸誘導体が挙げられるが、これらに限定されない(---は、結合点を示す)。
【0066】
【0067】
本明細書中で使用される脂肪鎖は、炭素原子、主として水素又は水素様の原子で置換された炭素原子の鎖、例えば炭化水素鎖を含む部分を指す。このような脂肪鎖は、多くの場合、親油性とされるが、分子全体の親油性の性質は置換基によって変わり得ることが理解される。
【0068】
脂肪鎖は、脂肪族であってもよい。完全に飽和されていてもよく、又は1つ以上の二重又は三重結合を含んでいてもよい。各二重結合は、存在する場合、E又はZ配置であり得る。脂肪鎖は、その長さ内に1つ又は複数のシクロアルキレン又はヘテロシクロアルキレン部分を有していてもよく、追加的又は代替的に1つ又は複数のアリーレン又はヘテロアリーレン部分を有していてもよい。例えば、以下に示すように、脂肪鎖は、その長さ内にフェニレン又はピペラジニレン部分が組み込まれていてもよい(式中、---は、鎖内の結合点を表す)。
【0069】
【0070】
脂肪鎖は、脂肪酸、例えば、6~12個の炭素原子の脂肪族末端を有する中鎖脂肪酸(MCFA)、13~21個の炭素原子の脂肪族末端を有する長鎖脂肪酸(LCFA)、又は22個以上の炭素原子の脂肪族末端を有する超長鎖脂肪酸(LCFA)から誘導してもよい。適切な脂肪鎖を誘導し得る直鎖飽和脂肪酸の例としては、トリデシル(トリデカン)、ミリスチン(テトラデカン)酸、ペンタデシル(ペンタデカン)、パルミチン(ヘキサデカン)酸、およびマルガリン(ヘプタデカン)酸が挙げられる。適切な脂肪鎖を誘導し得る直鎖不飽和脂肪酸の例としては、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、およびオレイン酸が挙げられる。
【0071】
脂肪鎖は、アミド結合、スルフィンアミド結合、スルホンアミド結合によって、又はエステル結合によって、又はエーテル、チオエーテル、又はアミン結合によって、Ψ又はZ2に接続されていてもよい。したがって、脂肪鎖は、Ψ又はZ2への結合又はアシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)基を有し得る。好ましくは、脂肪鎖は、極性基から遠位の位置にアシル(-CO-)基を有し、アミド又はエステル結合によってΨ又はZ2に連結される。
【0072】
いくつかの実施形態では、Z1は、
式:A-B-Alk-X-の基である
(式中、
Aは、水素、又はカルボン酸、カルボン酸生物同配体、ホスホン酸、又はスルホン酸基であり;
Bは、結合又はリンカーであり;
Xは、結合、アシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)であり;かつ、
Alkは、場合により1つ又は複数の置換基により置換されてもよい脂肪鎖である。脂肪鎖は、好ましくは長さが6~28個の炭素原子(例えば、C6-28アルキレン)、より好ましくは長さが12~26個の炭素原子(例えば、C12-26アルキレン)、より好ましくは長さが16~22個の炭素原子(例えば、C16-22アルキレン)であり、飽和されていても飽和されていなくてもよい。好ましくは、Alkは飽和されている、つまり、好ましくはAlkはアルキレンである)。
【0073】
脂肪鎖における任意の置換基は、フルオロ、C1-4アルキル、好ましくはメチル;トリフルオロメチル、ヒドロキシメチル、アミノ、ヒドロキシル、C1-4アルコキシ、好ましくはメトキシ;オキソおよびカルボキシルから独立に選択されてもよく、鎖沿いの任意の点に独立に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、任意の置換基は、それぞれフルオロ、メチル、およびヒドロキシルから選択される。2個以上の置換基が存在する場合、置換基は同一でも異なっていてもよい。好ましくは、置換基の数は0~3であり;より好ましくは、脂肪鎖は非置換である。
【0074】
Bは、結合又はリンカーであってもよい。Bがリンカーの場合、シクロアルキレン、ヘテロシクロアルキレン、C6アリーレン、又はC5-6ヘテロアリーレン、又はC6アリーレン-O-、又はC5-6ヘテロアリーレン-O-であり得る。
【0075】
Bがフェニレンの場合、例えば、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンから選択され得て、好ましくは、(A-B-が4-安息香酸置換基又は4-安息香酸生物同配体となるように)1,4-フェニレンである。Bがフェニレン-O-の場合、例えば、1,2-フェニレン-O-、1,3-フェニレン-O-、1,4-フェニレン-O-から選択され得て、好ましくは、1,4-フェニレン-O-である。Bの各フェニレンは、場合により、フルオロ、メチル、トリフルオロメチル、アミノ、ヒドロキシル、およびC1-4アルコキシ、好ましくは、メトキシから選択される1つ又は複数の置換基で置換され得る。極性基のpKaをわずかに変更するために、置換基の同一性および位置を選択し得ることが理解される。適切な誘導的又はメソメリー的な電子吸引又は電子供与基およびそれらの位置的効果は、当該分野で公知である。いくつかの実施形態では、Bは、C5-6ヘテロアリーレン、例えば、ピリジニレン又はチオフラニレンであり得て、場合により上述のように置換され得る。
【0076】
例えば、いくつかの実施形態では、A-B-は、以下から選択され得る。
【0077】
【0078】
好ましくは、AはH-又はHOOC-であり、Bは結合であり、Alkは非置換のアルキレンであり、A-B-Alk-は式H3C-(CH2)n-のアルキル鎖である。
【0079】
いくつかの実施形態では、Z1は、式:A-B-Alk-(CO)-のアシル基、又は式:A-B-Alk-(SO2)-のスルホニル基である。好ましくは、Z1は式:A-B-アルキレン-(CO)-のアシル基(式中、A及びBは上記で定義した通りである)である。
【0080】
いくつかの実施形態では、Aは-COOHであり、Bは結合である。従って、特定の好ましいZ1は、式HOOC-(CH2)12-22-COOHの長鎖飽和α,ω-diカルボン酸、好ましくは、脂肪族鎖において偶数の炭素原子を有する長鎖飽和α,ω-diカルボン酸、から誘導される。いくつかの別の実施形態では、AはHであり、Bは結合である。従って、特定の好ましいZ1は、式HOOC-(CH2)12-22-CH3の長鎖飽和カルボン酸、好ましくは、脂肪族鎖において偶数の炭素原子を有する長鎖飽和カルボン酸、から誘導される。
【0081】
例えば、限定されるものではないが、Z1は、A-B-C16-20アルキレン-(CO)-(式中、AはH又は-COOHであり、Bは結合である)、例えば:
17-カルボキシ-ヘプタデカノイル HOOC-(CH2)16-(CO)-;
19-カルボキシ-ノナデカノイル HOOC-(CH2)18-(CO)-;
オクタデカノイル H3C-(CH2)16-(CO)-;
エイコサノイル H3C-(CH2)18-(CO)-;であってもよい。
【0082】
カルボン酸基は、存在する場合、本明細書に詳述する生物同配体によって置換されてもよい。
【0083】
Z2基
Z2は、Z1をΨのアミノ酸成分の側鎖に結合する任意のスペーサである。最も一般的には、Z2は、窒素、酸素、又は硫黄原子であってもよいYと一方の末端で結合し、かつ、結合(bond)、又はアシル(-CO-)、スルフィニル(-SO-)、又はスルホニル(-SO2-)であってもよいXと他方の末端で結合するスペーサである。従って、Z2は、以下の式のスペーサであり得る(---は、結合点を示す)。
【0084】
【0085】
(式中、
Yは、-NH、-NR、-S、又は-O(式中、Rは、アルキルもしくは保護基であってもよく、あるいはスペーサの別の部分へのリンケージを形成し得る)であってもよく、残りの原子価によりZ1に対する結合を形成し;
Xは、結合、CO-、SO-、又はSO2-であってもよく、残りの原子価によりΨのアミノ酸成分の側鎖に対するリンケージを形成し;
Vは、YとXとをつなぐ二価の有機部分であり;
そして、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10でありうる。nが2以上のとき、各Y、V、およびXは、Y、V、およびXのいずれとも独立している。)
【0086】
従って、Z2は、YとXの性質およびZ1および側鎖上の対応する結合基に応じて、それぞれの端部において、アミド、スルフィンアミド、スルホンアミド、又はエステル結合によって、又はアミノ、エーテル、又はチオエーテル結合によって、結合されていてもよい。nが2以上のとき、各Vは、リンケージにより各隣接するVにも、結合してもよい。好ましくは、リンケージは、アミド、エーテル、又はスルホンアミドであり、最も好ましくはアミドである。従って、いくつかの実施形態では、各Yは-NH又は-NRであり、各XはCO-又はSO2-である。最も好ましくは、-X-は、アシル(-CO-)である。
【0087】
いくつかの実施形態では、Z2は、式-SA-、-SB-、-SA-SB-、又は-SB-SA-のスペーサである(式中、SAおよびSBは、以下のように定義される)。
【0088】
いくつかの実施形態では、Z2は、-SA-又は-SB-SA-から選択される、つまり、[側鎖]-Z2Z1は[側鎖]-SA-Z1又は[側鎖]-SB-SA-Z1である。
【0089】
SA基
SAは、単一のアミノ酸残基又はアミノ酸誘導体の残基、特に、C末端でカルボキシ部分の代わりにスルフィニル又はスルホニルを有するアミノ酸誘導体残基であり得る。追加的又は代替的に、単一のアミノ酸残基は、N末端で窒素原子の代わりに酸素又は硫黄原子を有してもよい。
【0090】
SAは、結合を介して一端に親油性基が結合し、環の窒素原子を介して他端にカルボキシ、スルフィニル又はスルホニル基が結合している含窒素複素環を含んでいてもよい。例えば、SAは、ピペラジン環を含んでもよい。
【0091】
好適には、SAは、1又は2個の窒素原子を有し、X基によって置換された5~8員の複素環である(式中、Xは、結合、CO-、SO-、又はSO2-であり、存在する場合、LはC1-4アルキレン(-は、親油性基内の結合点を指す)である)。
【0092】
好ましくは、SAは、1又は2個、好ましくは2個の窒素原子を有し、-CH2CO-、-CH2SO-、又は-CH2SO2-基によって置換された6員の複素環である。
【0093】
例えば、SAは、
【0094】
【0095】
例えば、SAは、
【0096】
【化7】
(本明細書では、ピペラジン-1-イル-アセチルと呼ぶ)であってもよい。
【0097】
好ましくは、SAは単一のアミノ酸残基、又はピペラジン-1-イル-アセチルである。より好ましくはSAは単一のアミノ酸残基である。
【0098】
いくつかの実施形態では、アミノ酸は、γ-Glu、α-Glu、α-Asp、β-Asp、Ala、β-Ala(3-アミノプロパン酸)、Dapa(2,3-ジアミノプパン酸)、Dab(2,4-ジアミノブタン酸)、およびGaba(4-アミノブタン酸)から選択され得る。2つ以上のカルボン酸又はアミノ部分が存在する場合、結合は任意の部分に適切であることが理解される。残基内に結合していないカルボン酸又はアミノ残基は遊離であってもよく、すなわち遊離カルボン酸又は第一級アミンとして存在してもよく、又は誘導体化されていてもよい。適切な誘導体化は当該分野で公知である。例えば、カルボン酸部分は、エステルとして、例えばメチルエステルとして、SAアミノ酸残基に存在してもよい。アミノ部分は、アルキル化アミンとして存在してもよく、例えばメチル化されていてもよく、又はアミドもしくはカルバメート部分として保護されていてもよい。他の適切なアミノ酸として、β-Ala(3-アミノプロパン酸)およびGaba(4-アミノブタン酸)および類似のωアミノ酸が挙げられる。
【0099】
アミノ酸は、D型又はL型、又はラセミ体(racemic)であっても、エナンチオマ純度が高められた(enantioenriched)ものであってもあってもよいことが理解される。いくつかの実施形態では、アミノ酸はL-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、アミノ酸はD-アミノ酸である。
【0100】
いくつかの好ましい実施形態では、SAは、γ-Glu、α-Glu、α-Asp、およびβ-Aspを有するカルボン酸置換基、およびそれらのスルフィニルおよびスルホニル誘導体を有することが好ましい。従って、いくつかの実施形態では、アミノ酸残基は、以下の式である。
【0101】
【0102】
(式中、-X-は、-CO-、-SO-、-SO2-、好ましくは、-CO-であり、aは1又は2、好ましくは、2である。)いくつかの実施形態では、カルボン酸はエステルであり、アミノ酸残基は、以下の式である。
【0103】
【0104】
(式中、-X-は、-CO-、-SO-、-SO2-、好ましくは-CO-であり、aは1又は2、好ましくは2であり、Rは、C1-4アルキル又はC6アリールである。好ましくは、Rは、C1-4アルキル、好ましくは、メチル又はエチル、より好ましくはエチルである。)
【0105】
好ましくは、カルボン酸を有するSA基はγ-Gluである。
【0106】
好ましくは、SAは、Dapa又はγ-Gluから選択される。最も好ましくは、SAはγ-Gluである。
【0107】
SB基
SBは、以下の一般式のリンカーであり得る。
【0108】
【0109】
(式中、PUはポリマー単位であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10である。)リンカーSBの一方の末端は、-NH、-NR、-S、又は-Oであり(式中、Rは、アルキルもしくは保護基であってもよく、あるいはポリマー単位の別の部分へのリンケージを形成し得る)、一方、他方の末端は、結合、又はCO-、SO-、又はSO2-である。従って、各ポリマー単位PUは、YとXの性質およびZ1、SA、およびLys上の対応する結合基に応じて、それぞれの端部において、アミド、スルフィンアミド、スルホンアミド、又はエステル結合によって、又はアミノ、エーテル、又はチオエーテル結合によって、結合されていてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、各PUは、独立に、以下の式の単位であってもよい。
【0111】
【0112】
(式中、Yは、-NH、-NR、-S、又は-O(式中、Rは、アルキルもしくは保護基であってもよく、あるいはスペーサの別の部分へのリンケージを形成し得る)であってもよく、残りの原子価によりZ1に対する結合を形成し;
Xは、結合、CO-、SO-、又はSO2-であってもよく、残りの原子価によりΨ側鎖に対する結合を形成し;
Vは、YとXとをつなぐ二価の有機部分である。)
【0113】
いくつかの実施形態では、Vは天然又は非天然のアミノ酸のα-炭素、つまり、Vは-CHRAA-である(式中、RAAはアミノ酸側鎖である)、あるいは、Vは場合により置換されたC1-6アルキレンである、あるいは、Vは直列に1つ又は複数のエチレングリコールの単位を含む鎖である。この鎖は、PEG鎖としても知られ、例えば、-CH2CH2-(OCH2CH2)m-O-(CH2)p-である(式中、mは0、1、2、3、4、又は5であり、pは1、2、3、4、又は5であり、XがCO-のとき、pは好ましくは、1、3、4、又は5である)。任意のアルキレン置換基として、フルオロ、メチル、ヒドロキシ、ヒドロキシメチル、およびアミノが挙げられる。
【0114】
好ましいPU単位として、以下の(i)~(iii)が挙げられる。
(i)単一のアミノ酸残基:PU
i
(ii)ジペプチド残基:PU
ii
(iii)アミノ-(PEG)m-カルボン酸残基:PU
iii
これらは、いかなる組み合わせ又は順番で存在してもよい。例えば、SBは、1つ又は複数のPU
i、PU
ii、およびPU
iiiのそれぞれを任意の順番で含んでもよく、あるいは1つ又は複数のPU
i、PU
ii、およびPU
iiiの単位のみを含んでもよく、あるいはPU
iおよびPU
ii、PU
i、およびPU
iii、又はPU
iiおよびPU
iiiから選択される1つ又は複数の単位を含んでもよい。
【0115】
(i)PU
i単一のアミノ酸残基
各PU
iは、独立に、天然又は非天然のアミノ酸残基、例えば、Gly、Pro、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Cys、Phe、Tyr、Trp、His、Lys、Arg、Gln、Asn、α-Glu、γ-Glu、Asp、Ser、Thr、Dapa、Gaba、Aib、β-Ala、5-アミノペンタノイル、6-アミノヘキサノイル、7-アミノヘプタノイル、8-アミノオクタノイル、9-アミノノナノイル、および10-アミノデカノイルから選択され得る。好ましくは、PU
iアミノ酸残基は、Gly、Ser、Ala、Thr、およびCys、より好ましくは、GlyおよびSerから選択される。
【0116】
いくつかの実施形態では、SBは、-(PU
i)n-(式中、nは1~8、より好ましくは5~7、最も好ましくは6)である。いくつかの好ましい実施形態では、SBは-(PU
i)n-(式中、nは6であり、各PU
iは独立にGly又はSerから選択される)であり、好ましい配列は-Gly-Ser-Gly-Ser-Gly-Gly-である。
【0117】
(ii)PU
iiジペプチド残基
各PU
iiは、独立に、アミド結合により結合した2個の天然又は非天然のアミノ酸残基を含む任意のジペプチド残基から選択され得る。好ましいPU
iiジペプチド残基として、Gly-Gly、Gly-Ser、Ser-Gly、Gly-Ala、Ala-Gly、およびAla-Ala、より好ましくは、Gly-SerおよびGly-Glyが挙げられる。
【0118】
いくつかの実施形態では、SBは-(PU
ii)n-(式中、nは2~4、より好ましくは3、そして各PU
iiは、独立に、Gly-SerおよびGly-Glyから選択される)である。いくつかの好ましい実施形態では、SBは-(PU
ii)n-であり、nは3であり、そして各PU
iiは、独立に、Gly-SerおよびGly-Glyから選択され、好ましい配列は-(Gly-Ser)-(Gly-Ser)-(Gly-Gly)である。
【0119】
PU
iおよびPuii内に立体中心を有するアミノ酸は、ラセミ体(racemic)であっても、エナンチオマ純度が高められた(enantioenriched)ものであっても、又はエナンチオが純粋(enantiopure)であってもよい。いくつかの実施形態では、各アミノ酸は、独立にL-アミノ酸である。いくつかの実施形態では、各アミノ酸は、独立にD-アミノ酸である。
【0120】
(iii)PU
iiiアミノ-(PEG)m-カルボン酸残基
各PU
iiiは、独立に、以下の一般式の残基であり得る。
【0121】
【0122】
(式中、mは0、1、2、3、4、又は5、好ましくは1又は2であり、そしてpは1、3、4、又は5、好ましくは1である。)
【0123】
いくつかの実施形態では、mは1でありpは1である、つまり、PU
iiiは、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸({2-[2-アミノエトキシ]エトキシ}酢酸や、H2N-PEG3-COOH)としても知られる)の残基である。この残基は、本明細書で-PEG3-とも呼ばれる。
【0124】
他のより長いPEG鎖も当該分野で公知である。例えば、11-アミノ-3,6,9-トリオキソウンデカン酸(H2N-PEG4-COOH又は-PEG4-としても知られる)があげられる。
【0125】
いくつかの実施形態では、SBは-(PU
iii)n-(式中、nは1~3、より好ましくは2である)である。
【0126】
最も好ましくは、SBは-PEG3-PEG3-である。
【0127】
好ましい組み合わせ
上述の好ましい場合をそれぞれ組み合わせて、好ましい-Z1および-Z2-Z1部分としてもよいことが理解されるであろう。
【0128】
いくつかの好ましい-Z1および-Z2-Z1部分を以下に示す(各場合において、---はΨのアミノ酸成分の側鎖への結合点を示す)。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
当業者は、本発明の文脈で使用される化合物を調製するための適切な技術をよく知っているであろう。適切な化学の例として、WO98/08871、WO00/55184、WO00/55119、Madsen et al. (J. Med. Chem. 2007, 50, 6126-32)、及びKnudsen et al. 2000 (J. Med Chem. 43, 1664-1669)を参照のこと。
【0138】
臨床的有用性
本発明の文脈で使用されるGIP類似体化合物は、肥満、真性糖尿病(糖尿病)、肥満関連障害、および糖尿病関連障害を含む代謝疾患に対し魅力的な治療の選択肢を与え得る。本発明のGIP類似体化合物は、GLP-1受容体アゴニストと組み合わせて(同じ医薬製剤の一部として又は別個の製剤として)投与される場合、血糖コントロールの改善および体重の減少に特に有効であり得る。GLP-1受容体アゴニスト又はインクレチン模倣薬としても知られているグルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストは、GLP-1受容体のアゴニストである。スルホニルウレア又はメグリチニドといった従来のインスリン分泌促進薬に対するそれらの利点の1つは、低血糖を引き起こす危険性が低いことである。
【0139】
GLP-1アゴニストの例として、エクセナチド(Byetta(登録商標)/Bydureon(登録商標))、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、アルビグルテイド(Tanzeum(登録商標))およびTaspoglutideが挙げられるがこれらに限定されない。
【0140】
糖尿病は、インスリン分泌、インスリン作用、又はその両方の欠陥に起因する高血糖により特徴付けられる代謝疾患の群が含まれる。糖尿病は、病因的特徴に基づいて、1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病に分類される。1型糖尿病は、すべての糖尿病症例の5~10%を占め、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞の自己免疫破壊によって引き起こされる。糖尿病の急性兆候は、過度の尿産生、結果として起きる代償渇きと水分摂取の増加、視力障害、原因不明の体重減少、倦怠感、エネルギー代謝の変化が含まれる。しかし、2型糖尿病の症状は重篤でないことが多く、又は存在しないこともある。糖尿病の慢性高血糖は、種々の器官、特に眼、腎臓、神経、心臓および血管の長期損傷、機能障害、および機能不全に関連する。
【0141】
2型糖尿病は、糖尿病症例の90%~95%を占め、代謝障害が複雑に組み合わさった結果として起こる。しかし、2型糖尿病の症状はでないことが多く、又は存在しないこともある。2型糖尿病は、内因性インスリン産生が不十分となり、血漿グルコースレベルが診断閾値以下に維持できなくなった結果起こる。
【0142】
妊娠糖尿病は、妊娠中に見られるあらゆる程度の耐糖能異常を指す。
【0143】
糖尿病前症は、空腹時血糖障害および耐糖能障害を含み、血糖レベルが上昇しているものの、糖尿病の臨床診断レベルよりは低いときの状態を指す。
【0144】
2型糖尿病および糖尿病前症を持つ人の大部分は、腹部肥満(腹部内臓の周りの過剰な脂肪組織)、アテローム性脂質異常症(動脈壁におけるプラーク蓄積を促進する、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、および/又は高LDLコレステロールを含む血中脂質障害)、血圧上昇(高血圧)、前血栓状態(例えば、高血中フィブリノーゲン又は高血中プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1)、および/又は炎症亢進状態(例えば、血中C反応性蛋白レベルの上昇)を含む、追加的な代謝危険因子が高頻度に存在するために、罹患率と死亡率のリスクが高くなっている。
【0145】
逆に肥満は、糖尿病前症、2型糖尿病、並びに、例えばある種の癌、閉塞性睡眠時無呼吸、および胆嚢疾患を発症するリスクを増加させる。脂質異常症は、心血管疾患のリスク上昇と関連している。血漿高密度リポタンパク質(HDL)濃度とアテローム性動脈硬化症のリスクとの間には逆相関が存在するため、HDLは臨床的に重要である。アテローム性動脈硬化プラークに貯蔵されているコレステロールの大部分は低密度リポタンパク質(LDL)に由来するため、高濃度のLDLは、アテローム性動脈硬化症と密接に関連している。HDL/LDL比は、アテローム性動脈硬化症、特に冠動脈アテローム性動脈硬化症の臨床的リスクの指標である。
【0146】
本発明のGIP類似体は、体重増加を防止し、体重減少を促進し、過剰な体重を減少させるか、又は肥満(病的肥満を含む)並びに関連する疾患および健康状態(限定されるものではないが、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、および肥満誘発性睡眠時無呼吸を含む)を(例えば、食欲、摂食、食物摂取、カロリー摂取、および/又はエネルギー消費の制御により)治療するための薬剤として使用し得る。本発明の文脈において使用するGIP類似体はまた、インスリン抵抗性、耐糖能異常、糖尿病前症、空腹時グルコースの増加、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症(又はこれらの代謝危険因子の組み合わせ)、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、および脳卒中の治療に使用することもできる。これらはすべて、肥満に関連する可能性のある状態である。しかし、これらの状態に対する本発明の文脈において使用する化合物の効果は、体重に対する効果が、全体的に又は部分的に介在していてもよく、又は独立していてもよい。
【0147】
したがって、本発明のGIP類似体は、インスリン抵抗性、耐糖能異常、空腹時グルコースの増加、糖尿病前症、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病高血圧、脂質異常症,又はそれらの組み合わせを含む任意の本明細書に記載の疾患、障害、及び状態、の治療および/又は予防のために使用してもよい。特定の実施形態では、糖尿病関連障害は、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、及び脳卒中;あるいは、アテローム性脂質異常症、血中脂質障害、血圧上昇、高血圧、血栓形成亢進状態、及び炎症亢進状態、又はそれらの組み合わせから選択される状態に関連する疾患から選択される。特定の実施形態では、血脂障害は、高トリグリセリド、低HDLコレステロール、高LDLコレステロール、動脈壁のプラーク蓄積、又はそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、血栓形成亢進状態は、高レベルの血中フィブリノーゲンおよび高レベルの血中プラスミノーゲン活性化因子インヒビター1から選択される。特定の実施形態では、炎症亢進状態は、血液中のC反応性タンパク質レベルの上昇である。特定の実施形態では、肥満関連障害は、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、及び肥満誘発性睡眠時無呼吸から選択される。
【0148】
本発明のGIP類似体はまた、骨折のリスクの増加を含む糖尿病関連骨粗鬆症に関連する疾患、障害、及び状態、の治療および/又は予防のために使用してもよい(Khazai N.B. et al, 2009, Current Opinion in Endocrinology, Diabetes and Obesity, vol. 16, no. 6, 435-445)。骨折のリスクの増加は、骨のミネラル密度よりむしろ骨の品質の低下に関連している可能性が高い。高血糖症、神経障害、および低ビタミンD症の高発生に少なくとも部分的に関連するメカニズムは、まだ完全には理解されていない(Takiishi T et al, 2010, Endocrinology and Metabolism Clinics of North America, vol. 39, no. 2, 419-446)。
【0149】
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明のGIP類似体(例えば、GIPアゴニスト化合物)を、場合により医薬的に許容し得る担体と組み合わせて含む治療キットを提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、対象にGIP類似体を送達するための、本発明のGIP類似体を含むデバイスを提供する。
【0150】
医薬組成物
本発明のGIP類似体(例えば、GIPアゴニスト化合物)、あるいはその塩又は溶媒和物は、保存又は投与用に調製される医薬組成物として製剤化することができる。このような組成物は、典型的には、本発明の文脈で使用される化合物あるいはそれらの塩又は溶媒和物の治療有効量を、適切な形態で、医薬的に許容し得る担体中に含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、注射又は注入による投与に適した液体として、又はGIP類似体の徐放を引き起こすような液体として製剤化される。
【0151】
本発明の化合物の治療有効量は、例えば、投与経路、治療される哺乳動物の種類、および検討下にある特定の哺乳動物の身体的特徴に依存するであろう。これらの因子および量の決定におけるこれらの関係は、医学分野の当業者にとって良く理解される。この量および投与方法は、最適の効力を達成するために調整することができ、体重、食事、併用薬剤、および他の因子(医学分野の当業者は熟知している)に依存し得る。ヒトへの使用のために最も適切な投与サイズおよび投与計画は、本発明によって得られた結果から導かれてもよく、適切に計画された臨床試験で確認してもよい。
【0152】
効果的な投与量および治療プロトコルは、実験動物において低用量から開始し、効果を追跡しながら投与量を増加させ、そして、同様に全体的な投与計画を変化させる従来の方法によって決定することができる。ある対象について最適な用量を決定する際、臨床医は多くの要因を考慮し得る。このような考慮事項は、当業者には公知である。用語「医薬的に許容し得る担体」は、任意の標準的な医薬担体を含む。治療用途の医薬的に許容し得る担体は医薬分野で公知であり、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。例えば、酸性pH又は生理学的pHの無菌食塩水およびリン酸緩衝化食塩水を使用することができる。適切なpH緩衝剤は、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、重炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、ヒスチジン(これは特定の実施形態において好適な緩衝剤である)、アルギニン、リジン、もしくは酢酸塩、又はそれらの混合物でもよい。この用語はさらに、ヒトを含む動物での使用のための、米国薬局方に記載されている任意の薬剤を包含する。
【0153】
用語「医薬的に許容し得る塩」は、該当の化合物のいずれかの塩を指す。塩は、酸付加塩および塩基性塩のような医薬的に許容し得る塩を含む。酸付加塩の例としては、塩酸塩、クエン酸塩、および酢酸塩が挙げられる。塩基性塩の例としては、陽イオンが、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウムおよびアンモニウムイオン+N(R3)3(R4)(式中、R3およびR4は、場合により置換されたC1-6アルキル、場合により置換されたC2-6アルケニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリールを独立して示す)などのアルカリ土類金属から選択される塩が挙げられる。医薬的に許容し得る塩の他の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences” ,17th edition. Ed. Alfonso R. Gennaro (Ed.), Mark Publishing Company, Easton, PA, U.S.A., 1985、およびより最近の版、並びにEncyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0154】
「治療」は、有益な又は所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のために、有益な又は所望の臨床結果としては、限定されるものではないが、症状の緩和、疾患の程度の低減、疾患状態の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患進行の遅延又は減速、疾患状態の改善又は緩和、および寛解(部分的又は全体的)を含み、これらは検出可能又は検出不可能であってもよい。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することを意味することもある。「治療」は、障害の発症を予防するか、又は障害の病状を変化させる意図で行われる介入である。したがって、「治療」は、ある実施態様において、治療的処置および予後的又は予防的手段の両方を指す。治療を必要とする者は、すでに障害を有する者、並びに障害が予防されるべき者を含む。治療は、治療が存在しない時と比較して、病状又は症状の拡大(例えば、体重増加、高血糖)を阻害又は低減することを意味し、必ずしも関連する症状の完全な停止を意味するものではない。
【0155】
医薬組成物は、単位剤型であってもよい。かかる剤型において組成物は、適切量の活性成分を含む単位用量に分割される。単位剤型は、個別量の調製物を含むパッケージ化された調製物、例えば、パケット化錠剤、カプセル剤、およびバイアル又はアンプル中の粉末でもよい。単位剤型はまた、それ自体がカプセル剤、カシェ剤、又は錠剤でもよく、又は適切な数のこれらの剤をパッケージにした形態のいずれかでもよい。これは、単回投与用の注射形態で、例えば注射ペンの形態で提供してもよい。組成物は、任意の適切な投与経路および投与手段用に製剤化することができる。医薬的に許容し得る担体又は希釈剤は、経口、直腸、経鼻、局所的(口腔および舌下を含む)、経膣、又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、および経皮を含む)投与に適した調製物で使用されるものを含む。この調製物は、単位剤型で提供されると便利であり、薬剤学の分野で公知の任意の方法により調製することができる。本明細書に記載の化合物について、皮下又は経皮的投与が特に適している場合もあり得る。
【0156】
併用療法
幾つかの実施形態では、本発明の文脈において使用されるGIP類似体は、糖尿病、肥満、脂質異常症、又は高血圧の治療のための少なくとも1種の別の薬剤との併用療法の一部として投与してもよい。
【0157】
このような場合には、これらの少なくとも2つの活性物質は、一緒に又は別々に投与してもよく、同じ医薬製剤の一部として又は別個の製剤として投与してもよい。すなわち本発明の文脈において使用されるGIP類似体(あるいはそれらの塩又は溶媒和物)は、限定されるものではないが、グルカゴン様ペプチド受容体1アゴニスト、メトホルミン、スルホニル尿素、グリニド、DPP-IV阻害剤、グリタゾン、又はインスリンを含む抗糖尿病薬と組み合わせて使用することができる。特定の実施形態では、化合物あるいはそれらの塩又は溶媒和物は、適切な血糖コントロールを達成するために、インスリン、DPP-IV阻害剤、スルホニル尿素又はメトホルミン、特にスルホニル尿素又はメトホルミンと組み合わせて使用される。特定の好ましい実施形態では、化合物あるいはそれらの塩又は溶媒和物は、適切な血糖コントロールを達成するために、インスリン又はインスリン類似体と組み合わせて使用される。インスリン類似体の例は、限定されるものではないが、ランタス(Lantus(登録商標))、ノボラピッド(NovoRapid(登録商標))、ヒューマログ(Humalog(登録商標))、ノボミックス(NovoMix(登録商標))、およびアクトラファンHM(Actraphane HM(登録商標))、レベミル(Levemir(登録商標))、およびアピドラ(Apidra(登録商標))を含む。
【0158】
特定の実施形態では、GIP類似体あるいはそれらの塩又は溶媒和物は、グルカゴン様ペプチド受容体1アゴニスト、ペプチドYY又はその類似体、カンナビノイド受容体1アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤、メラノコルチン受容体4アゴニスト、メラニン凝集ホルモン受容体1アンタゴニストを含む1種又は複数種の抗肥満薬と組み合わせて使用することもできる。
【0159】
特定の実施形態では、GIP類似体あるいはそれらの塩又は溶媒和物は、限定されるものではないが、アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンII受容体遮断薬、利尿薬、ベータ遮断薬、又はカルシウムチャネル遮断薬を含む抗高血圧薬と組み合わせて使用することもできる。
【0160】
特定の実施形態では、GIP類似体又はそれらの塩は、限定されるものではないが、スタチン、フィブラート、ナイアシン、および/又はコレステロール吸収阻害剤を含む脂質異常症薬と組み合わせて使用することもできる。
【0161】
本発明の化合物の合成
核酸分子が、式I~IIIのいずれかのアミノ酸配列又はその前駆体をコードしうる。コードされるアミノ酸配列は、本発明の化合物の前駆体とみなすことができる。
【0162】
典型的には、そのような核酸配列は、コード核酸がその発現を指示するための適切な制御配列と機能的に結合している発現構築物として提供される。発現構築物は、アミノ酸前駆体を発現(および場合により分泌)できる宿主細胞、又は無細胞発現系において提供され得る。
【0163】
本発明は、本発明のGIP類似体を製造する方法であって、GIP類似体のアミノ酸前駆体を発現させ、前駆体を修飾してGIP類似体を提供することを含む方法を提供する。修飾は、親油性部分を導入するための17位に存在するLys、Arg又はCys残基の化学修飾、N又はC末端の修飾、および/又は分子内への他のアミノ酸側鎖の修飾(例えば、天然に存在しないアミノ酸残基を導入する)を含みうる。
【0164】
また、本発明の化合物は、標準的なペプチド合成法、例えば、段階的又は断片的組立のいずれかの標準的な固相又は液相方法論、および最終ペプチド化合物産物の単離および精製、あるいは組換えや合成方法の任意の組み合わせによって調製してもよい。
【0165】
本発明のペプチド化合物を固相又は液相プチド合成により合成することが好ましい場合がある。この文脈において、WO 98/11125、又は、とりわけFields, G.B. et al., “Principles and Practice of Solid-Phase Peptide Synthesis”; in: Synthetic Peptides, Gregory A. Grant (ed.), Oxford University Press (2nd edition, 2002)及び本明細書に記載の合成実施例を参照できる。
【0166】
実施例
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の条件および範囲を完全に決定すると主張するものではなく、又はかかる意図でもないことを理解されたい。本実施例は、特段詳細に記載されていない限り、当業者には周知であり日常的である標準的な技術を用いて実施した。以下の実施例は、例示目的のみで記載するものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0167】
シグナル伝達選択性を示すGIP類似体、およびこれらの化合物をスクリーニングする方法を開示する。シグナル選択性は、例えば、優先的な経路活性化又は優先的な経路阻害、又はその両方であり得る。単独で、又はGLP-1アゴニストと組み合わせて投与される類似体は、肥満、病的肥満、肥満関連炎症、肥満関連胆嚢疾患、肥満誘発性睡眠時無呼吸、メタボリックシンドローム、糖尿病前症、インスリン抵抗性、耐糖能異常、2型糖尿病、1型糖尿病、高血圧、アテローム性脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、冠動脈性心疾患、末梢動脈疾患、および脳卒中又は微小血管疾患を含むがこれらに限定されない過体重から引き起こされる又はそれらを特徴とする疾患又は状態の治療及び/又は予防に有用であり得る。
【0168】
本発明のいくつかの実施形態を例示として説明してきたが、本発明は、当業者であれば、本発明の精神から逸脱することなく、又は特許請求の範囲を超えることなく、多くの様々な改変、変形、および適合、ならびに多数の均等物又は代替物の使用によって実施することができることが明らかである。
【0169】
本明細書で援用される全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許又は特許出願が、それぞれ個別具体的に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に援用される。本発明において使用する方法を、別段の明示がある場合を除き、以下に記載する。
【0170】
実施例1
アシル化GIP類似体の一般的な合成
標準Fmoc法を用いて、CEM Libertyペプチド合成機にて固相ペプチド合成を行った。使用前にTentaGel S Ram樹脂(1g;0.25mmol/g)をNMP(10ml)で膨潤させ、DCMとNMPを用いて管と反応容器との間で移した。
【0171】
カップリング
Fmoc-アミノ酸を含むDMF/DCM(2:1;0.2M;5ml)を、HATU/DMF又はCOMU/DMF(0.5M;2ml)およびDIPEA-DMF/DCM(2:1)(2.0M;1ml)と共にCEM Discoverマイクロ波装置中の樹脂に添加した。混合物に窒素を吹き込みながら、カップリング混合物を75℃で5分間加熱した。次いで、樹脂をDMF(4×10ml)で洗浄した。
【0172】
脱保護
最初の脱保護のためにピペリジン/DMF(20%;10ml)を樹脂に加え、混合物をマイクロ波(30秒;40℃)で加熱した。反応容器を排水し、ピペリジン/NMP(20%;10ml)の第2部分を加え、再び加熱した(75℃;3分)。次いで樹脂をDMF(6×10ml)で洗浄した。
【0173】
側鎖アシル化
Fmoc-Lys(ivDde)-OH又は代わりに直交側鎖保護基を有する別のアミノ酸をアシル化の位置に導入した。次いで最終のカップリングにて、ペプチド骨格のN末端をBoc 2Oを用いてBoc保護、あるいはBoc保護アミノ酸を用いて保護した。ペプチドが依然として樹脂に結合している間に、直交側鎖保護基を、新たに調製したヒドラジン水和物のNMP溶液(2~4%)を用いて2x15分間選択的に切断した。保護されていないリジン側鎖をまずFmoc-Glu-OtBu又は別のスペーサーアミノ酸とカップリングさせ、それをピペリジンで脱保護し、上記のペプチドカップリング方法を用いて親油性部分でアシル化した。
【0174】
以下の略語を使用した。
COMU: 1-[(1-(シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)-ジメチルアミノ-モルホリノメチレン)]メタンアミニウムヘキサフルオロホスフェート
ivDde: 1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)3-メチル-ブチル
Dde: 1-(4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデン)-エチル
DCM: ジクロロメタン
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
DIPEA: ジイソプロピルエチルアミン
EtOH: エタノール
Et2O: ジエチルエーテル
HATU: N-[(ジメチルアミノ)-1H-1,2,3-トリアゾール[4,5-b]ピリジン-1-イルメチレン]-N-メチルメタナミニウムヘキサフルオロホスフェートN-オキシド
MeCN: アセトニトリル
NMP: N-メチルピロリドン
TFA: トリフルオロ酢酸
TIS: トリイソプロピルシラン
【0175】
切断:
樹脂をEtOH(3×10ml)およびEt2O(3×10ml)で洗浄し、室温(r.t.)で一定重量まで乾燥させた。95/2.5/2.5%(v/v)のTFA/TIS/水(40 ml)を用いて室温(r.t.)で2時間処理することにより、粗ペプチドを樹脂から切断した。TFAの大部分を減圧下で除去し、粗ペプチドを沈殿させ、ジエチルエーテルで3回洗浄し、室温で一定重量になるまで乾燥させた。
【0176】
粗ペプチドのHPLC精製
粗ペプチドを、C-18カラム(5cm;10μm)およびフラクションコレクターを備えたPerSeptive Biosystems VISIONワークステーションを用いて分取逆相HPLCにより90%超に精製し、緩衝液A(0.1%TFA、水溶液)および緩衝液B(0.1%TFA、90%MeCN、水溶液)の勾配にて35ml/分で流した。画分を分析用HPLCとMSで分析し、関連画分をプールし、凍結乾燥した。最終生成物をHPLCとMSによって特徴付けした。
【0177】
表1に示す化合物が合成された。
【0178】
【0179】
化合物No.9の合成
標準Fmoc法を用いて、CEM Libertyペプチド合成機にて固相ペプチド合成を行った。使用前にTentaGel S Ram樹脂(1,05g;0.23mmol/g)をDMF(10ml)で膨潤させ、DCMとDMFを用いて管と反応容器との間で移した。
【0180】
カップリング
Fmoc-アミノ酸を含むDMF/DCM(2:1;0.2M; 5ml)を、COMU/DMF(0.5M; 2ml)およびDIPEA-DMF/DCM(2:1)(2.0M; 1ml)と共にCEM Discoverマイクロ波装置中の樹脂に添加した。混合物に窒素を吹き込みながら、カップリング混合物を75℃で5分間加熱した。次いで、樹脂をDMF(4×10ml)で洗浄した。C末端から数えて29番目と30番目のアミノ酸にはFmoc-Tyr(OtBu)-Ser(Psi Me,Me)-OH擬似プロリンを用いた。Lys17は、Fmoc-Lys(Dde)-OHとして直交結合で組み込まれた。最初の9個のアミノ酸と24番目のアミノ酸(C末端から数えて)は二重結合であり、これはビルディングブロックが脱保護の前に二度結合されたことを意味する。Boc-Tyr(tBu)-OHは、N末端の最終ビルディングブロックとして組み込まれた。
【0181】
脱保護
最初の脱保護のためにピペリジン/DMF(20%;10ml)を樹脂に加え、混合物をマイクロ波(30秒;40℃)で加熱した。反応容器を排水し、ピペリジン/NMP(20%;10ml)の第2部分を加え、再び加熱した(75℃;3分)。次いで樹脂をDMF(6×10ml)で洗浄した。
【0182】
側鎖アシル化
ペプチドが依然として樹脂に結合している間に、直交側鎖保護基を、新たに調製したヒドラジン水和物のNMP溶液(2~4%)を用いて2x15分間選択的に切断した。保護されていないリジン側鎖をまず、上述のような標準的なカップリングおよび脱保護条件を用いてFmoc-Glu-OtBuおよび2つのPeg3構築ブロックとカップリングさせた。最後に、標準的なカップリング条件を用いて、親油性部分を19-カルボキシ-ノナデカン酸モノtertブチルエステルとして再び組み込んだ。
【0183】
切断:
樹脂をEtOH(3×10ml)およびEt2O(3×10ml)で洗浄し、室温(r.t.)で一定重量まで乾燥させた。95/2.5/2.5%(v/v)のTFA/TIS/水(60ml)を用いて室温(r.t.)で2時間処理することにより、粗ペプチドを樹脂から切断した。TFAの大部分を減圧下で除去し、粗ペプチドを沈殿させ、ジエチルエーテルで3回洗浄し、室温で一定重量になるまで乾燥させた。
【0184】
粗ペプチドのHPLC精製
粗ペプチドを、Gemini NX 5μ C-18 110A、10x250 mmカラムおよびGilson GX281フラクションコレクターを備えたGilson 331ポンプを用いて分取逆相HPLCにより30%から精製し、緩衝液A(0.1%TFA、水溶液)および緩衝液B(0.1%TFA、90%MeCN、水溶液)の勾配にて47ml/分で流した。画分を分析用HPLCとMSで分析し、関連画分をプールし、凍結乾燥した。同じ方法を用いて第2の精製を行い、HPLCとMSの特徴付けによると96%の純度の生成物(53mg)を得た。計算によるとモノアイソトピック質量は5025,54であり、実際には5025,72であった。
【0185】
実施例2
ヒトGIP受容体(GIP R)活性アッセイ
本発明のペプチド複合体のインビトロでの効果は、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)のAlphaSceen(登録商標)cAMPキットを使用しその説明書に従って、GIP又はこれらの類似体による各受容体の刺激後のcAMPの誘導を測定することによって本発明で概説したように評価した。簡潔には、ヒトGIP R(ヒトGIP RのcDNAのトランスフェクションおよび安定したクローンの選択により産生された安定細胞株)を発現するHEK293細胞を、0.01%ポリ-L-リジンでコーティングした96ウェルマイクロタイタープレートに30,000細胞/ウェルで播種し、200μlの増殖培地(DMEM、10%FCS、ペニシリン(100 IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml))中で培養して1日間増殖させた。分析当日に、増殖培地を除去し、細胞を150μlのTyrode緩衝液(Tyrode’s Salt(9.6g/l)、10mM HEPES、pH 7.4)で1回洗浄した。次いで、細胞を、100μlのアッセイ緩衝液(0.1%W/Vアルカリ処理カゼインおよび100μMのIBMXを含むTyrode緩衝液)中で、対照および試験化合物の濃度を増加させて、37℃で15分間インキュベートした。アッセイ緩衝液を除去し、細胞をウェル当たり80μlの溶解緩衝液(0.1%w/v BSA、5mM HEPES、0.3%v/v Tween-20)中で溶解した。各ウェルから10μlの溶解細胞を384ウェルプレートに移し、15μlのビーズミックス(1ユニット/15μl抗cAMPアクセプタービーズ、1ユニット/15μlドナービーズ、および1ユニット/15μlビオチン化cAMPを含むアッセイ緩衝液)と混合した。プレートを混合し、暗所で室温で1時間インキュベートしてから、Envision(商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer)を用いて測定した。
【0186】
結果は、0.1%(v/v)のDMSOを含有するKRBH緩衝液中で調製したcAMP標準曲線を用いてcAMP濃度に変換した。得られたcAMP曲線をlog(試験化合物濃度)に対する絶対cAMP濃度(nM)としてプロットし、曲線適合プログラムXLfitを用いて分析した。
【0187】
受容体に対する各試験化合物の効力およびアゴニスト活性の両方を表記するために計算したパラメーターは以下の通りであった:
EC50は、cAMP量の最大値の50%を示す濃度であり、試験化合物の効力を反映する。結果を表2に要約する。
【0188】
【0189】
実施例3
ヒトGIP受容体(GIP R)とヒトGLP-1受容体(GLP-1R)における活性アッセイ
ペプチド複合体のインビトロでの効果は、パーキンエルマー(Perkin-Elmer)のAlphaSceen(登録商標)cAMPキットを使用しその説明書に従って、GIP又はこれらの類似体による各受容体の刺激後のcAMPの誘導を測定することによって評価した。簡潔には、ヒトGIP R又はGLP-1R(問題の受容体のcDNAを含む発現ベクターのトランスフェクションおよび安定したクローンの選択により産生された安定細胞株)を発現するHEK293細胞を、0.01%ポリ-L-リジンでコーティングした96ウェルマイクロタイタープレートに30,000細胞/ウェルで播種し、200μlの増殖培地(DMEM、10%FCS、ペニシリン(100 IU/ml)、ストレプトマイシン(100μg/ml))中で培養して1日間増殖させた。分析当日に、増殖培地を除去し、細胞を150μlのTyrode緩衝液(Tyrode’s Salt(9.6g/l)、10mM HEPES、pH 7.4)で1回洗浄した。次いで、細胞を、100μlのアッセイ緩衝液(0.05% W/Vアルカリ処理カゼインおよび100μMのIBMXを含むTyrode緩衝液)中で、対照および試験化合物の濃度を増加させて、37℃で15分間インキュベートした。アッセイ緩衝液を除去し、細胞をウェル当たり80μlの溶解緩衝液(0.1%w/v BSA、5mM HEPES、0.3%v/v Tween-20)中で溶解した。各ウェルから10μlの溶解細胞を384ウェルプレートに移し、15μlのビーズミックス(1ユニット/15μl抗cAMPアクセプタービーズ、1ユニット/15μlドナービーズ、および1ユニット/15μlビオチン化cAMPを含むアッセイ緩衝液)と混合した。プレートを混合し、暗所で室温にて1時間インキュベートしてから、Envision(商標)プレートリーダー(Perkin-Elmer)を用いて測定した。
【0190】
cAMP応答を、陽性対照および陰性対照(それぞれ、参照アゴニスト(0.1nMヒトGIP又は1nM エキセンディン-4)およびアッセイ緩衝液)に対して正規化して、曲線フィッティングの4パラメーターロジスティック(4PL)非線形回帰モデルを用いた濃度応答曲線からEC50および最大応答を計算した。
【0191】
EC50は、cAMP量の最大値の50%を示す濃度であり、試験アゴニスト化合物の効力を反映する。結果を表3に要約する。
【0192】
【0193】
実施例4
マウスにおける選択化合物の薬物動態
方法
C57BL/6Jマウス(体重約25gの雄)に、試験対象の各ペプチドを単回皮下(s.c.)ボーラス又は単回静脈(i.v.)ボーラスのいずれかで与えた。
【0194】
選択化合物の皮下投与(50、100、又は200nmol/kg)後、投与から96時間まで8つの時点で血液サンプルを採取した。選択化合物の静脈投与(50、100、又は200nmol/kg)後、投与から72時間まで8つの時点で血液サンプルを採取した。血液サンプルは舌下出血により採取した。投与ビヒクルは、マンニトールを含むリン酸緩衝液(pH 7.5)であった。
【0195】
各サンプリング時点で、2匹のマウスからサンプルを採取した。すなわち、各化合物および各投与経路につき16匹のマウスが含まれていた。頚部脱臼による採血直後にマウスを安楽死させた。血漿サンプルは、固相抽出(SPE)又はタンパク質沈殿の後、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)で解析した。平均血漿濃度を用いて、Phoenix WinNonlin 6.3での非コンパートメントアプローチを用いた薬物動態パラメーターを計算した。血漿終末消失半減期(T1/2)は、ln(2)/λzとして決定した。ここで、λzは終末期における対数濃度対時間プロファイルの対数直線回帰の傾きの大きさである。生物学的利用能は、AUCinf(s.c.)/AUCinf(i.v.)x100として決定した。ここで、
AUCinfは無限に外挿された血漿濃度-時間曲線下面積である(AUCinf=AUClast+Clast/λz、式中、Clastは、最後に観察された血漿濃度である)。Tmaxは、投与後の時間であり、ここで最大血漿濃度が観察された。結果を表4に要約する。
【0196】
【0197】
実施例5
正常マウスにおけるOGTT(経口グルコース耐性試験:Oral Glucose Tolerance Test)
雄C57BL/6Jマウス(Charles River、Germany)を、通常飼料(Altromin 1324、Brogaarden A/S、Gentofte、Denmark)およびクエン酸を添加してpHを約3.6に調整した現地の高品質の水で飼育した。動物は、3匹ずつに群分けし、光、温度および湿度制御された部屋(12:12時間の明暗サイクル、06:18~18:00に点灯、21±1℃、50~80%の相対湿度)にて飼育した。10-12週齢のマウスをOGTTの5時間前に絶食させた。GIP受容体アゴニスト(3-300nmol/kg)、GLP-1類似体リラグルチド(10nmol/kg)、およびビヒクルを、グルコースを経口強制投与する4時間前に皮下(s.c.)投与した(t=0min;2g/kg;5mL/kg)。尾静脈血は、t=0(グルコース投与前)、15,30,60および120分の時点で血中グルコース測定用にサンプリングした。2回の実験より得られた結果(血中グルコースレベル及び血中グルコース曲線下面積(AUC)、データは平均±SEM;n=6)を
図1(A-D)及び
図2(A-E)に示す。
【0198】
Graph Pad Prism version 5を用いて統計解析を行った。血中グルコースAUCは、一方向ANOVAの後、ダネットの多重比較検定を行いビヒクル群と比較した。差は、p<0.05で統計的に有意であると考えられた。ビヒクルとの統計的な差:*p<0.05,**p<0.01,***p<0.001。
【0199】
実施例6
食餌誘発性肥満(diet-induced obese:DIO)C57BL/6Jマウスにおける体重に対するGIP受容体アゴニストおよびGLP-1受容体アゴニストの共治療の亜長期的な効果
高脂肪食(全エネルギーの45%は脂肪由来、D12451 Research Diet Inc.)を約4ヶ月間与えた雄C57BL/6J(JAX)マウス(Charles River、UK)を使用した。動物は、3匹ずつに群分けし、光、温度および湿度制御された部屋(12:12時間の明暗サイクル、07.00-19.00に点灯、21±2℃、55±20%の相対湿度)にて飼育した。マウスは、模擬フェーズの開始前の2週間は1匹ずつ収容した。すべてのマウスは、1週間模擬処置し(ビヒクルを1日1回皮下注射)、これらの動物を処置と注射に順応させた。続いて、マウスを体重によって各処置群(n=8~9)に層別化した。開始時の平均体重は39~40グラムであった。その後、1日目から22日目に1日1回、2種類の注射を別個に(各注射3mL/kg)動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1(25mMリン酸塩、125mM塩化ナトリウム緩衝液、pH7.4)又はGLP-1類似体リラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2(25mMリン酸塩、205mM D-マンニトール、pH7.5)又はGIPアゴニスト(3および30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(1日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。毎日の注射は朝(9.00-10.00)に行った。体重は試験中毎日測定した。試験中の体重の変化を
図3に示す(デルタΔ=各試験日の体重-1日目の体重。データは平均±SEM。)。
【0200】
統計分析は、Graph Pad Prismバージョン5を用いて行った。リグラグルチド処置マウスの体重の変化を、二方向ANOVAの後、ボンフェローニのポストテストによってリラグルチドとGIPアゴニストを共投与したマウスと比較した。P<0.05を統計的に有意であるとした。ビヒクル処理対照マウスの体重の変化を、二方向ANOVAの後、ボンフェローニのポストテストによって化合物処置マウスと比較した:
***p<0.001対ビヒクル。22日目までのビヒクルとの統計的差異を示す(
図3)。
【0201】
実施例7
食餌誘発性肥満(diet-induced obese:DIO)C57BL/6Jマウスにおける体重に対するGIP受容体アゴニストおよびGLP-1受容体アゴニストの共治療の亜長期的な効果
高脂肪食(全エネルギーの60%は脂肪由来、TestDiet社のDIO Rodent Purified 58Y1-58126)を約5ヶ月間与えた雄C57BL/6Jマウス(Charles River、Germany)を使用した。動物を、光、温度および湿度制御された部屋(12:12時間の明暗サイクル、06:00~18:00に点灯、21±1℃、65±15%の相対湿度)にて飼育した。すべてのマウスは、1週間模擬処置し(ビヒクルを1日1回皮下注射)、これらの動物を処置と注射に順応させた。続いて、マウスを体重によって各処置群(n=9)に層別化した。開始時の平均体重は40~41グラムであった。その後、0日目から27日目に1日1回、2種類の注射を別個に(各注射5mL/kg)動物に皮下注射した。1つ目の注射はビヒクル1(25mMリン酸塩、125mM塩化ナトリウム緩衝液、pH7.4)又はGLP-1類似体リラグルチド(20nmol/kg)で行った。2つ目の注射はビヒクル2(25mMリン酸塩、205mM D-マンニトール、pH7.5)又はGIPアゴニスト(3および/又は30nmol/kg)で行った。GIPアゴニストは、試験中(0日目から開始して)3日毎のみ投与した。他の日は、GIPアゴニストをビヒクル2に置き換えた。毎日の注射は朝(9.00-10.00)に行った。体重は試験中毎日測定した。試験中の体重の変化を
図4A(化合物10および12)、
図4B(化合物17)、
図4C(化合物18)、
図4D(化合物35)、及び
図4E(化合物41)に示す(デルタΔ体重=各試験日の体重-0日目の体重。データは平均±SEM。)。
【0202】
統計分析は、Graph Pad Prismバージョン5を用いて行った。リグラグルチド処置マウスの体重の変化を、二方向ANOVAの後、ボンフェローニのポストテストによってリラグルチドとGIPアゴニストを共投与したマウスと比較した。P<0.05を統計的に有意であるとした(体重曲線下の線で示す)。ビヒクル処理対照マウスの体重の変化を、二方向ANOVAの後、ボンフェローニのポストテストによって化合物処置マウスと比較した:
***p<0.001対ビヒクル。27日目までのビヒクルとの統計的差異を示す(
図4A~E)。
【配列表】