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7312228緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法
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  • -緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法 図1
  • -緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/20 20060101AFI20230712BHJP
   E04H 7/18 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
E04H7/20
E04H7/18 301Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021178126
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023067128
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591121111
【氏名又は名称】株式会社安部日鋼工業
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】小田部 貴憲
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 朋紀
(72)【発明者】
【氏名】宮島 朗
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-068373(JP,A)
【文献】特開2010-077725(JP,A)
【文献】特開2016-023518(JP,A)
【文献】特開2002-308377(JP,A)
【文献】実開昭59-089899(JP,U)
【文献】特開2009-097196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/18-7/20
E04H 7/26-7/28
B65D 88/00-90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に立ち、側壁のコンクリートにプレストレスが導入されているプレストレストコンクリートタンクであって、
コンクリート製の底版と、その底版から起立するコンクリート製の前記側壁とを備え、かつ、前記側壁のコンクリートにプレストレスを導入する緊張材として、第1緊張材と第2緊張材とを備え、
前記第1緊張材は、前記側壁から前記底版に渡って設けられた第1収容孔内に収容されて、前記側壁内において、左上がりまたは右上がりに傾斜して螺旋状に配置されており、また、前記第2緊張材は、前記側壁から前記底版に渡って設けられた第2収容孔内に収容されて、前記側壁内において、前記第1緊張材とは反対の、右上がりまたは左上がりに傾斜して螺旋状に配置されており、
これら、前記第1収容孔内に収容されて螺旋状に配置される前記第1緊張材と前記第2収容孔内に収容されて螺旋状に配置される前記第2緊張材とは、それぞれが、複数設けられて、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるようにして、前記側壁の周方向に並ぶとともに、前記複数の第1および第2緊張材の上端が、前記側壁に定着され、前記複数の第1および第2緊張材の下端が、前記底版の側部に定着され、かつ、前記第1収容孔と前記第2収容孔とが、グラウトで埋められている、緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク。
【請求項2】
前記緊張材は、上端が、前記側壁の上端部に定着される、請求項1に記載の緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク。
【請求項3】
前記緊張材の下端の定着部は、上下に複数段となるように配置される、請求項1または2に記載の緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク。
【請求項4】
前記緊張材の下端の定着部は、前記第1緊張材の定着部と前記第2緊張材の定着部とが、別々の段となるように配置される、請求項に記載の緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプレストレストコンクリートタンクを製造する、プレストレストコンクリートタンクの製造方法であって、
前記側壁のコンクリートを3Dプリンターを用いて構築することで、その構築と同時に前記側壁における前記第1収容孔および前記第2収容孔を形成する、緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれか1項に記載のプレストレストコンクリートタンクを製造する、プレストレストコンクリートタンクの製造方法であって、
前記第1収容孔に収容された前記第1緊張材と前記第2収容孔に収容された前記第2緊張材の、上端側を前記側壁に定着し、下端側を片引きして前記底版の側部に定着することで、それら第1緊張材と第2緊張材とを緊張して、前記側壁のコンクリートにプレストレスを導入する、緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレストレストコンクリートタンク、およびプレストレストコンクリートタンクの製造方法、詳しくは、プレストレストコンクリートタンクにおける緊張材の配設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プレストレストコンクリートタンクにおいては、プレストレスを導入するためのPC鋼材が、鉛直方向および円周方向に配置されていた。そこで、このタンクのプレストレスの導入作業、つまり、PC鋼材の緊張作業は、鉛直方向では、側壁コンクリートの上端部、そして、円周方向では、PC鋼材が配置された各々の高さに応じた足場上で行うのが一般的だった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記従来のプレストレストコンクリートタンクにあっては、PC鋼材の緊張作業は、重量物である緊張用ジャッキや油圧ポンプを巻上げ機械等で吊り下げて高所で行う必要があり、厄介であった。
【0004】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、緊張材の緊張作業を容易に行うことができる、緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクは、設置面上に立ち、側壁のコンクリートにプレストレスが導入されているプレストレストコンクリートタンクであって、コンクリート製の底版と、その底版から起立するコンクリート製の前記側壁とを備え、かつ、前記側壁のコンクリートにプレストレスを導入する緊張材として、第1緊張材と第2緊張材とを備える。ここで、前記第1緊張材は、前記側壁から前記底版に渡って設けられた第1収容孔内に収容されて、前記側壁内において、左上がりまたは右上がりに傾斜して螺旋状に配置されており、また、前記第2緊張材は、前記側壁から前記底版に渡って設けられた第2収容孔内に収容されて、前記側壁において、前記第1緊張材とは反対の、右上がりまたは左上がりに傾斜して螺旋状に配置されている。そして、これら、前記第1収容孔内に収容されて螺旋状に配置される前記第1緊張材と前記第2収容孔内に収容されて螺旋状に配置される前記第2緊張材とは、それぞれが、複数設けられて、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるようにして、前記側壁の周方向に並ぶとともに、前記複数の第1および第2緊張材の上端が、前記側壁に定着され、前記複数の第1および第2緊張材の下端が、前記底版の側部に定着され、かつ、前記第1収容孔と前記第2収容孔とが、グラウトで埋められている。
【0006】
このプレストレストコンクリートタンクによると、側壁のコンクリートにプレストレスを導入する緊張材は、左上がりまたは右上がりに傾斜して螺旋状に配置される第1緊張材と、それとは反対の、右上がりまたは左上がりに傾斜して螺旋状に配置される第2緊張材とを有する。そして、第1緊張材と第2緊張材とは、上端が、側壁に定着され、下端が、底版の側部に定着される。そこで、これら第1緊張材と第2緊張材との緊張力が合わさり、側壁のコンクリートには、周方向と縦方向の双方向にプレストレスが導入される。そして、緊張材を緊張するにあたっては、緊張材の、上端側を定着し、下端側を片引きすることができ、この緊張作業を、プレストレストコンクリートタンクの設置面上で行うことができる。また、第1緊張材と第2緊張材とは、それぞれが、複数設けられて、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるようにして、側壁の周方向に並ぶ。これにより、側壁のコンクリートに導入される周方向のプレストレスは、上側に比して下側が大となり、プレストレストコンクリートタンク内に貯留・貯蔵される貯留・貯蔵物の圧力に、効果的に耐えることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクは、請求項1に記載のプレストレストコンクリートタンクにおいて、前記緊張材は、上端が、前記側壁の上端部に定着される。
【0008】
【0009】
また、請求項に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクは、請求項1または2に記載のプレストレストコンクリートタンクにおいて、前記緊張材の下端の定着部は、上下に複数段となるように配置される。
【0010】
また、請求項に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクは、請求項に記載のプレストレストコンクリートタンクにおいて、前記緊張材の下端の定着部は、前記第1緊張材の定着部と前記第2緊張材の定着部とが、別々の段となるように配置される。
また、請求項5に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプレストレストコンクリートタンクを製造する、プレストレストコンクリートタンクの製造方法であって、前記側壁のコンクリートを3Dプリンターを用いて構築することで、その構築と同時に前記側壁における前記第1収容孔および前記第2収容孔を形成する。
【0011】
また、請求項6に記載の発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法は、請求項1ないしのいずれか1項に記載のプレストレストコンクリートタンクを製造する、プレストレストコンクリートタンクの製造方法であって、前記第1収容孔に収容された前記第1緊張材と前記第2収容孔に収容された前記第2緊張材の、上端側を前記側壁に定着し、下端側を片引して前記底版の側部に定着することで、それら第1緊張材と第2緊張材とを緊張して、前記側壁のコンクリートにプレストレスを導入する。
【0012】
このプレストレストコンクリートタンクの製造方法によると、緊張材を緊張するにあたって、緊張材の、上端側を定着し、下端側を片引きすることで、この緊張作業を、プレストレストコンクリートタンクの設置面上で行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク、および緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンクの製造方法によれば、緊張材の緊張作業を、高所ではなく、プレストレストコンクリートタンクの設置面上で行うことができることから、その緊張作業を容易に行うことができる。しかも、第1緊張材と第2緊張材とは、それぞれが、複数設けられて、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるようにして、側壁の周方向に並ぶことから、側壁のコンクリートに導入される周方向のプレストレスは、上側に比して下側が大となり、プレストレストコンクリートタンク内に貯留・貯蔵される貯留・貯蔵物の圧力に、効果的に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の一実施の形態の、プレストレストコンクリートタンクの斜視図である。
図2】同じく、正面図である。
図3】同じく、一部を破断した斜視図である。
図4】同じく、シースの配置を示す斜視図である。
図5】同じく、緊張材の上端の定着部を示す要部拡大斜視図である。
図6】同じく、緊張材の下端の定着部を示す要部拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1図6は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、設置面である。2は、前記設置面1上に立つ、緊張材が螺旋状に配置されるプレストレストコンクリートタンク(以下、PCタンクと称す)である。
【0017】
PCタンク2は、コンクリート製の底版3と、その底版3から起立するコンクリート製の側壁4とを備え、その側壁4のコンクリートにプレストレスが導入されている。このPCタンク2は、側壁4のコンクリートにプレストレスを導入する緊張材5として、第1緊張材501と第2緊張材502とを備える。そして、緊張材5を収容する収容孔6として、第1収容孔601と第2収容孔602とを備える。ここで、第1緊張材501は、側壁4から底版3に渡って設けられた第1収容孔601に収容されて、側壁4内において、左上がりまたは右上がり(図示実施の形態においては、左上がり)に傾斜して螺旋状に配置されている。同様に、第2緊張材502は、側壁4から底版3に渡って設けられた第2収容孔602内に収容されて、側壁4内において、第1緊張材501とは反対の、右上がりまたは左上がり(図示実施の形態においては、右上がり)に傾斜して螺旋状に配置されている。そこで、これら第1緊張材501と第2緊張材502とは、それぞれが、複数設けられて、側壁4の周方向に並ぶ(詳しくは、それぞれが、所定間隔をあけて周方向に並ぶ)とともに、上端5aが、側壁4(図示実施の形態においては、側壁4の上端部)に定着され、下端5bが、底版3の側部に定着されている。そして、第1収容孔601と第2収容孔602とが、グラウトで埋められている。グラウトは、底版3側である下側からの加圧により、第1収容孔601および第2収容孔602に注入・充填される。
【0018】
また、このPCタンク2を製造する、PCタンク2の製造方法は、緊張材5の、上端5a側を定着し、下端5b側を片引きすることで(詳しくは、ジャッキ13(図6参照)で片引きすることで)、その緊張材5を緊張して、側壁4のコンクリートにプレストレスを導入する。なお、図6において、緊張材5の下端5bは、後述する定着具9から外に向かって長く延びているが、定着後には、短く切断される。
【0019】
具体的には、PCタンク2は、例えば、配水池、浄水池、調整池等の上水その他の水の貯留・貯蔵とか、水以外のものの貯留・貯蔵とかに用いることができる容器構造物であって、円形の筒形状(円筒形状)をしている。
【0020】
このPCタンク2の側壁4のコンクリートへのプレストレスの導入は、いわゆるポストテンション方式によるものであり、コンクリートの打設および養生後に(つまり、コンクリート構造の形成後に)、収容孔6(第1収容孔601、第2収容孔602)に収容された緊張材5(第1緊張材501、第2緊張材502)を引っ張って緊張することで行われる。そして、収容孔6は、シース7によって形成され、そのシース7の内側が、収容孔6となる。すなわち、シース7として、第1シース701と第2シース702とが設けられ、第1シース701が、左上がりまたは右上がり(図示実施の形態においては、左上がり)に傾斜して螺旋状に配置され、その第1シース701内(つまり、第1収容孔601内)に、第1緊張材501が配置される。そして、第2シース702が、第1シース701とは反対の、右上がりまたは左上がり(図示実施の形態においては、右上がり)に傾斜して螺旋状に配置され、その第2シース702内(つまり、第2収容孔602内)に、第2緊張材502が配置される。
【0021】
緊張材5は、例えば、PC鋼材からなる。この緊張材5は、側壁4のコンクリートの応力状態に合わせてその傾斜角度が調整される。すなわち、緊張材5は、PCタンク2内に貯留・貯蔵される貯留・貯蔵物の圧力が大きく、側壁4のコンクリートに生じる周方向の応力が大きな箇所では、その傾斜角度が小さくなるように配置(つまり、傾斜が緩やかとなるように配置)される。図示実施の形態においては、緊張材5は、側壁4において、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるように配置される。そして、図示実施の形態においては、その傾斜は、三段階で変化している。緊張材5の定着においては、その緊張材5の上端5aの定着部10は、側壁4の上端部に設けられる。詳細には、側壁4の上端部に、凹部4aが形成されており、その凹部4aに、緊張材5の上端5aを定着するための定着具8が配置される。また、底版3の側面は、鋸刃状にジグザグに形成されて、その横を向く端面3aに、緊張材5の下端5bを定着するための定着具9が配置される。そして、これら定着具8、9は、緊張材5を定着した後には、コンクリートとかモルタル等(図示せず)で埋められる。
【0022】
また、緊張材5の下端5bの定着部11は、上下に複数段となるように配置される。詳細には、緊張材5の下端5bの定着部11は、第1緊張材501の定着部と第2緊張材502の定着部とが、別々の段となるように配置される。より詳細には、第1緊張材501の定着部と第2緊張材502の定着部とのそれぞれが、一段となるように、つまり、第1緊張材501の定着部と第2緊張材502の定着部とのいずれか一方(図示実施の形態においては、第1緊張材501の定着部)が上側に、他方(図示実施の形態においては、第2緊張材502の定着部)が下側となるよう、二段に配置される。
【0023】
また、このPCタンク2は、屋根12を備える。この屋根12は、コンクリート製であって、ドーム状に形成されている。そして、ドーム裾部には、必要に応じてドームリングが配置される。
【0024】
次に、以上の構成からなるPCタンク2、およびPCタンク2の製造方法の作用効果について説明する。このPCタンク2によると、側壁4のコンクリートにプレストレスを導入する緊張材5は、左上がりまたは右上がり(図示実施の形態においては、左上がり)に傾斜して螺旋状に配置される第1緊張材501と、それとは反対の、右上がりまたは左上がり(図示実施の形態においては、右上がり)に傾斜して螺旋状に配置される第2緊張材502とを有する。そして、第1緊張材501と第2緊張材502とは、上端5aが、側壁4に定着され、下端5bが、底版3の側部に定着される。そこで、これら第1緊張材501と第2緊張材502との緊張力が合わさり、側壁4のコンクリートには、周方向と縦方向の双方向にプレストレスが導入される。そして、緊張材5を緊張するにあたっては、緊張材5の、上端5a側を定着し、下端5b側を片引き(詳しくは、横に片引き)することができ、この緊張作業を、PCタンク2の設置面1上で行うことができる。すなわち、緊張材5の緊張作業を、高所ではなく、PCタンク2の設置面1上で行うことができることから、その緊張作業を容易に行うことができ、また、足場仮設等の設置作業が不要となり、人員削減、工程短縮が期待される。
【0025】
また、緊張材5を、上側に比して下側が、傾斜が緩やかとなるように配置することで、側壁4のコンクリートに導入される周方向のプレストレスは、上側に比して下側が大となり、PCタンク2内に貯留・貯蔵される貯留・貯蔵物の圧力に、効果的に耐えることができる。
【0026】
また、緊張材5の下端5bの定着部11を、上下に複数段(図示実施の形態においては、二段)となるように配置することで、各段での、定着部11の間隔を大きくすることができ、ジャッキ13で、緊張材5を横に容易に引っ張ることができる。
【0027】
また、このPCタンク2の製造方法によると、緊張材5を緊張するにあたって、緊張材5の、上端5a側を定着し、下端5b側を片引き(詳しくは、横に片引き)することで、この緊張作業を、PCタンク2の設置面1上で行うことができる。すなわち、緊張材5の緊張作業を、高所ではなく、PCタンク2の設置面1で行うことができることから、その緊張作業を容易に行うことができ、また、足場仮設等の設置作業が不要となり、人員削減、工程短縮が期待される。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、PCタンク2の構築場所については、そのPCタンク2を地上に構築する場合以外に、掘削した底面(設置面1)にPCタンク2を構築し、その後に埋め戻すことで、そのPCタンク2を地下に埋設してもよい。
【0029】
また、PCタンク2は、水以外に、LNGとか燃料(オイル)等の液体を貯留・貯蔵する液体用の容器構造物であったり、堆肥、穀物などの液体以外のものを貯留・貯蔵する容器構造物であってもよく、その用途は、特に限定されない。また、PCタンク2の形状は、例えば、楕円形であったり、四角形の端部を丸くしたような形状など、円形以外の形状であってもよい。
【0030】
また、屋根12は、コンクリート製に限らず、アルミニウム合金製等の金属製であってもよい。
【0031】
また、収容孔6は、シース7によって形成される以外に、例えば、側壁4とか底版3のコンクリートを3Dプリンターを用いて構築することで、その構築と同時に収容孔6が形成されるようにしてもよい。
【0032】
また、緊張材5は、上端5aが、側壁4の上端部に定着されるが、複数ある緊張材5、5の一部が、その上端5aが側壁4の上端部に定着され、他の一部が、長さが短く形成されて、その上端5aが側壁4の中間高さ位置に定着されてもよい。
【0033】
また、緊張材5は、その傾斜が、上下方向において三段階となるように配置されているが、二段階であったり、四段階以上となるように配置されてもよく、また、この傾斜は、コンクリート打設の段階に合わせて変化してもよく、それとは無関係に変化してもよい。また、緊張材5は、その傾斜が連続的に変化するように配置されてもよい。また、緊張材5は、その傾斜が変化することなく一定となって配置されてもよい。
【0034】
また、緊張材5の下端5bの定着部11は、上下に二段となるように配置されているが、三段以上となるように(特に、第1緊張材501の定着部と第2緊張材502の定着部とのそれぞれが、複数段となるように)配置されてもよく、また、一段のみであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 設置面
2 PCタンク(プレストレストコンクリートタンク)
3 底版
4 側壁
5 緊張材
501 第1緊張材
502 第2緊張材
5a 上端
5b 下端
6 収容孔
601 第1収容孔
602 第2収容孔
11 下端の定着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6