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  • 特許-方向性電磁鋼板およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20230712BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20230712BHJP
   C22C 38/04 20060101ALI20230712BHJP
   C22C 38/14 20060101ALN20230712BHJP
   C21D 8/12 20060101ALN20230712BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
H01F1/147 175
C22C38/04
C22C38/14
C21D8/12 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021531053
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2019016382
(87)【国際公開番号】W WO2020111738
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153116
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コ,ヒョン-ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジン-ウク
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183313(JP,A)
【文献】特開2011-208188(JP,A)
【文献】特開平09-143560(JP,A)
【文献】特表2011-517732(JP,A)
【文献】特表2018-502222(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0074350(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1719232(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.005%以下(0%を除く。)、Mn:0.1重量%以下(0%を除く。)、S:0.005重量%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、
全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~70%であり、
{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率が40%以上であることを特徴とする方向性電磁鋼板。
【請求項2】
外接円の直径(D1)と内接円の直径(D2)との比(D2/D1)が0.5以上であるゴス結晶粒が全体ゴス結晶粒中の95面積%以上であることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは複数の冷間圧延および脱炭焼鈍工程を含むことによって、磁性を向上させた方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
方向性電磁鋼板は、鋼板の結晶方位が{110}<001>である、別名ゴス(Goss)方位を有する結晶粒からなる圧延方向の磁気的特性に優れた軟磁性材料である。
このような方向性電磁鋼板は、スラブ加熱後に熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延を通じて最終厚さに圧延された後、1次再結晶焼鈍と2次再結晶形成のために高温焼鈍を経て製造される。
通常、方向性電磁鋼板の2次再結晶焼鈍工程は、低い昇温率および高温での長時間純化焼鈍が必要であるため、エネルギー消耗が激しい工程といえる。このような極限の工程を経ながら2次再結晶を形成して優れた磁気的特性を有する方向性電磁鋼板を製造するため、次のような工程上の困難が発生する。
【0003】
第一に、コイル状態での熱処理によるコイルの外巻部と内巻部との温度偏差が発生して各部分で同一の熱処理パターンを適用することができないため、外巻部と内巻部との磁性偏差が発生する。第二に、脱炭焼鈍後にMgOを表面にコーティングし、高温焼鈍中にベースコーティング(Base coating)を形成する過程で多様な表面欠陥が発生するため、実収率を低下させる。第三に、脱炭焼鈍が終わった脱炭板をコイル形態で巻いた後に高温焼鈍後、再び平坦化焼鈍を経て絶縁コーティングをするため、生産工程が3段階に分けられることによって実収率が低下するという問題点が発生する。
このような工程上の制約を克服するために、脱炭焼鈍および冷間圧下率を調節して2次再結晶現象を利用せずに、正常結晶成長を利用する技術が提案されている。しかし、連続焼鈍では水分の短い熱処理時間によって最終結晶粒の結晶粒成長に限界があり、最適の粒径を有する結晶粒として成長することができず、鉄損改善に限界が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が目的とするところは、複数の冷間圧延および脱炭焼鈍工程を含むことによって、磁性を向上させた方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを加熱する段階、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階、熱延板焼鈍された熱延鋼板を1次冷間圧延する段階、1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階、2次冷間圧延が完了した鋼板を連続焼鈍する段階、および連続焼鈍された鋼板をバッチ焼鈍する段階を含むことを特徴とする。
【0006】
前記スラブは、重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.1%~0.4%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、
Mn:0.1重量%以下およびS:0.005重量%以下をさらに含むことをとくちょうとする。
【0007】
前記スラブを熱延板焼鈍する段階で、脱炭過程を含み、
熱延板焼鈍する段階は、850℃~1000℃の温度および露点温度50℃~70℃で焼鈍し、
1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階は、850℃~1000℃の温度および露点温度50℃~70℃で焼鈍することを特徴とする。
【0008】
1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階は、オーステナイト単相領域またはフェライトおよびオーステナイトの複合相が存在する領域で焼鈍し、
1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階の後、結晶粒の平均直径は150~250μmとなり、
1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階および前記脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階は、2回以上繰り返されることを特徴とする。
【0009】
連続焼鈍する段階は、850℃~1000℃の温度および露点温度50℃~70℃で
1~5分間焼鈍し、
バッチ焼鈍する段階は、1000℃~1200℃の温度および露点温度-20℃以下で
1~8時間焼鈍し、
バッチ焼鈍する段階の後、{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率が40%以上であり、
全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~70%であることを特徴とする。
【0010】
本発明による方向性電磁鋼板は、全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~70%であることを特徴とする。
【0011】
電磁鋼板は、重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなり、
Mn:0.1重量%以下およびS:0.005重量%以下をさらに含み、
{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率が40%以上であり、
外接円の直径(D1)と内接円の直径(D2)との比(D2/D1)が0.5以上であるゴス結晶粒が全体ゴス結晶粒中の95面積%以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明による方向性電磁鋼板は、正常結晶成長を利用しながら、直径が大きいゴス結晶粒を安定的に形成させることによって磁気的特性に優れており、
また、結晶粒成長抑制剤としてAlNおよびMnSを使用しないため、1300℃以上の高温でスラブを加熱する必要がない。
また、析出物であるN、Sを除去することが不要となり、純化焼鈍時間が相対的に短くなり得るため、生産性が向上することができ、
また、幅方向に亀裂した磁気的特性を有する方向性電磁鋼板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】発明材2で製造した方向性電磁鋼板の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
図2】比較材2で製造した方向性電磁鋼板の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは他の部分の「直上に」にあるか、またはその間にまた他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「直上に」あると言及する場合、その間にまた他の部分が介されない。
異なって定義しなかったが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施形態で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
【0015】
以下、本発明の実施形態について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
本発明による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを加熱する段階、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する段階、熱延鋼板を熱延板焼鈍する段階、熱延板焼鈍された熱延鋼板を1次冷間圧延する段階、1次冷間圧延された鋼板を脱炭焼鈍する段階、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階、2次冷間圧延が完了した鋼板を連続焼鈍する段階、および連続焼鈍された鋼板をバッチ焼鈍する段階を含む。
【0016】
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、スラブを加熱する。
スラブは、重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.1%~0.4%を含み、残部がFeおよび不可避な不純物からなる。
組成を限定した理由は、下記のとおりである。
シリコン(Si)は、電磁鋼板の磁気異方性を低め、比抵抗を増加させて鉄損を改善する。Si含有量が1.0重量%未満である場合には鉄損が劣位になり、4.0重量%超過である場合、脆性が増加する。したがって、スラブおよび最終焼鈍段階の後に方向性電磁鋼板でのSiの含有量は、1.0~4.0重量%であり得る。より具体的にSiの含有量は1.5~3.5重量%である。
【0017】
炭素(C)は、中間脱炭焼鈍および最終脱炭焼鈍中に表層部のGoss結晶粒が中心部に拡散するために中心部のCが表層部に抜け出る過程が必要であるため、スラブ中のCの含有量は0.1~0.4重量%である。より具体的にスラブ中のCの含有量は0.15~0.3重量%である。また、脱炭が完了した最終焼鈍段階の後に最終方向性電磁鋼板での炭素量は0.0050重量%以下であり、より具体的に0.002重量%以下である。
スラブは、Mn:0.1重量%以下およびS:0.005重量%以下をさらに含む。
【0018】
MnおよびSは、MnS析出物を形成して脱炭過程中に中心部に拡散するGoss結晶粒の成長を妨害する。したがって、Mn、Sは添加されないことが好ましい。しかし、製鋼工程中に不可避に混入される量を考慮してスラブおよび最終焼鈍段階の後に方向性電磁鋼板でのMn、Sは、Mn:0.1重量%以下、S:0.005重量%以下にそれぞれ制御する。
残部は、Feおよび不可避な不純物からなる。不可避な不純物については、製鋼段階および方向性電磁鋼板の製造工程過程で混入される不純物であり、これは当該分野で広く知られているため、具体的な説明は省略する。具体的に、Al、N、Ti、Mg、Caのような成分は、鋼中で酸素と反応して酸化物を形成するようになり、強力抑制することが必要であるため、それぞれの成分別に0.005重量%以下で管理することができる。本発明の一実施形態で前述した合金成分以外に元素の追加を排除するのではなく、本発明の技術思想を害しない範囲内で多様に含まれる。追加元素をさらに含む場合、残部であるFeを代替して含む。
【0019】
より具体的に、スラブは、重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.1%~0.4%含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなる。
スラブ加熱温度は、通常の加熱温度より高い1100℃~1350℃である。スラブ加熱時に温度が高い場合、熱延組織が粗大化して磁性に悪影響を与えるようになる問題点がある。しかし、本発明による方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブの炭素含有量が比較的に多いため、スラブ再加熱温度が高くても熱延組織が粗大化せず、通常の場合より高い温度で再加熱することによって、熱間圧延時にはさらに有利である。
【0020】
次に、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。
熱間圧延は、最終冷間圧延段階で適正な圧延率を適用して最終の製品厚さに製造できるように熱間圧延によって厚さ1.5~4.0mmの熱延板として製造する。
熱延温度や冷却温度は、特に制限されないが、磁性が優れた一例として熱延終了温度を950℃以下にし、冷却を水によって急冷して600℃以下で巻き取る。
次に、熱延鋼板を熱延板焼鈍する。この時、熱延板焼鈍は、脱炭過程を含む。具体的に熱延板焼鈍は、850℃~1000℃の温度および露点温度50℃~70℃で焼鈍する。前述した焼鈍後、1000~1200℃の温度および露点温度0℃以下で追加焼鈍する。熱延板焼鈍を実施した後、酸洗する。
【0021】
次に、1次冷間圧延を実施して冷延鋼板を製造する。
通常の方向性電磁鋼板の製造工程において冷間圧延は、90%に近い高圧下率で1回実施することが効果的であるされている。これが1次再結晶粒中のGoss結晶粒だけが粒子成長するのに有利な環境を作るためである。しかし、本発明による方向性電磁鋼板の製造方法は、Goss方位結晶粒の異常な粒子成長を利用せず、脱炭焼鈍および冷間圧延によって発生した表層部のGoss結晶粒を内部拡散させるものであるため、表層部でGoss方位結晶粒を多数分布するように形成することが有利である。
したがって、冷間圧延時に圧下率50%~70%で冷間圧延を実施する場合、Goss集合組織が表層部で多数形成される。より具体的に55%~65%である。
次に、冷延鋼板を脱炭焼鈍する。この時、脱炭焼鈍する段階は、オーステナイト単相領域またはフェライトおよびオーステナイトの複合相が存在する領域で実施する。具体的に850℃~1000℃温度および露点温度50℃~70℃で焼鈍する。また、雰囲気は、水素および窒素の混合ガス雰囲気である。また、脱炭焼鈍時に脱炭量は、0.0300重量%~0.0600重量%でありる。前述した焼鈍後、1000~1200℃の温度および露点温度0℃以下で追加焼鈍する。
このような脱炭焼鈍過程で電磁鋼板の表面の結晶粒の大きさは、粗大に成長するが、電磁鋼板の内部の結晶粒は微細な組織として残る。このような脱炭焼鈍後、結晶粒の平均直径は150μm~250μmである。この時、結晶粒は表面フェライト結晶粒である。また結晶粒の直径とは、結晶粒と同一の面積を有する仮想の円を想定して、その円の直径を意味する。
【0022】
次に、脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する。2次冷間圧延は、1次冷間圧延と同一であるため、具体的な説明は省略する。
前述した冷延鋼板を脱炭焼鈍する段階および脱炭焼鈍が完了した鋼板を2次冷間圧延する段階は、2回以上繰り返して実施することができる。2回以上繰り返して実施することによって、Goss集合組織が表層部で多数形成される。
次に、2次冷間圧延が完了した鋼板を連続焼鈍する。
連続焼鈍する段階は、850℃~1000℃の温度および露点温度50℃~70℃で焼鈍する。連続焼鈍前の冷延板は、脱炭焼鈍が行われて炭素量がスラブの炭素重量に対して40%~60%残っている状態である。したがって、連続焼鈍する段階では、炭素が抜け出ながら表層部に形成された結晶粒が内部に拡散する。連続焼鈍する段階では、鋼板中の炭素量を0.005重量%以下になるように脱炭を実施することができる。
【0023】
連続焼鈍する段階では、1~5分間焼鈍する。連続焼鈍する段階の目的は、鋼中の炭素(Carbon)を脱炭後、結晶粒を一定の大きさ以上に成長させることにある。その理由は、脱炭およびその直後の結晶粒成長の過程を通じて持続的にGoss結晶粒の分率が増えるためである。これはGoss結晶粒が周辺のNon-Goss結晶粒を蚕食しながら成長するためである。しかし、連続焼鈍の生産性を考慮して焼鈍時間が数分内に制限されるため、結晶成長が制約的であるといえる。本発明では、追加的なバッチ焼鈍を通じて結晶成長を誘発して鉄損減少に効果があることを主張する。この時、Goss分率の増加は起こらないが、結晶粒の大きさの増加による効果によって鉄損の減少が起こる。
連続焼鈍する段階の後、焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤は、当該技術分野に広く知られているため、具体的な説明は省略する。例えば、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を使用することができる。
【0024】
次に、連続焼鈍された鋼板をバッチ焼鈍する。バッチ(batch)焼鈍とは、鋼板をコイル状で巻き取って焼鈍することを意味する。
バッチ焼鈍する段階では、連続焼鈍段階で拡散したゴス方位を有する集合組織が成長する。本発明による方向性電磁鋼板の製造方法では、ゴス集合組織は従来の異常な粒子成長によって結晶粒が成長した場合とは異なり、結晶粒の直径が5mm以下である。具体的に1000um~5000umの直径を有する結晶粒分率が増加する。したがって、従来の異常な結晶成長によって製造される方向性電磁鋼板に比べて結晶粒の大きさが小さいゴス結晶粒が多数個存在するが、その結晶粒の大きさは鉄損を最大限に下げることができるように適切な大きさで調節される。より具体的に全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~70%である。この時、結晶粒の面積分率は、鋼板の圧延面(ND面)と平行な面で測定したものである。より具体的に全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~60%である。さらに具体的に全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~50%である。
バッチ焼鈍する段階は、1000℃~1200℃温度および露点温度-20℃以下で焼鈍することができる。
またバッチ焼鈍は、1~8時間焼鈍する。より具体的に2~5時間焼鈍する。
また、本発明による方向性電磁鋼板の製造方法では、ゴス分率が高いため、磁性が向上する。具体的に{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率が40%以上であり、より具体的に40%~75%、さらに具体的に45~60%である。
【0025】
本発明による方向性電磁鋼板は、全体結晶粒中の直径が1000μm~5000μmである結晶粒の面積分率が20~70%である。
結晶粒の面積分布については、方向性電磁鋼板の製造方法と関連して詳細に説明したため、重複する説明は省略する。
電磁鋼板は、重量%で、Si:1.0%~4.0%、C:0.005%以下(0%を除く。)を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなる。
電磁鋼板は、Mn:0.1重量%以下およびS:0.005重量%以下をさらに含む。
Cを除き、スラブの成分限定内容と同一であるため、重複する説明は省略する。
{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率が40%以上である。
外接円の直径(D1)と内接円の直径(D2)との比(D2/D1)が0.5以上であるゴス結晶粒が全体ゴス結晶粒中の95面積%以上である。本発明特有の製造工程によって前述した形態の結晶粒が形成される。
【0026】
本発明による方向性電磁鋼板は、ゴス分率が高いため、磁性が向上する。具体的に鉄損(W17/50)が1.3W/kg以下であり、より具体的に鉄損(W17/50)が1~1.3W/kgであり、さらに具体的に1.1~1.25W/kgである。鉄損W17/50は1.7Teslaおよび50Hz条件で誘導される鉄損の大きさ(W/kg)である。
以下、本発明の具体的な実施例を記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の具体的な一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0027】
実施例1
重量%で、Si:2.32%、C:0.195%を含有し、残部がFeおよび不可避な不純物からなるスラブを1250℃の温度で加熱した後に熱間圧延し、次いで、焼鈍温度950℃、露点温度60℃で熱延板焼鈍した。その後、鋼板を冷却した後に酸洗を施し、65%の圧下率で冷間圧延して厚さ0.8mmの冷延板を製作した。
冷間圧延された板は、再び950℃の温度で水素および窒素の湿潤混合ガス雰囲気(露点温度60℃)で80秒間脱炭焼鈍を経て再び65%の圧下率で冷間圧延して厚さ0.28mmの冷延板を製作した。
その後、最終焼鈍時には950℃の温度で水素および窒素の湿潤混合ガス雰囲気(露点温度60℃)で2分間脱炭焼鈍を実施した後、表1のように、連続的に1100℃の水素および窒素の混合ガス雰囲気(露点温度60℃)で熱処理を実施し、またはコイル状態で1200℃の水素および窒素の混合ガス雰囲気で下記表1の時間の間に熱処理を実施した。
表1は、実施例による高温焼鈍後の方向性電磁鋼板の結晶粒のGoss分率、1mm以上5mm以下である結晶粒の面積分率および鉄損を示す表である。Goss分率は、{110}<001>から15゜以下の角度をなす結晶粒の体積分率を測定した。最終的に得られた鋼板を表面洗浄後、単板磁気(Single sheet)測定法を利用して1.7Tesla、50Hz条件で鉄損を測定した。
【0028】
【表1】
表1に示すように、バッチ焼鈍を適切な時間の間に行った発明材1~発明材4は、直径が1~5mmである結晶粒の面積分率が高いことを確認できる。ゴス分率が比較材に比べて比較的低くても鉄損がむしろ優れていることを確認できる。
図1および図2では、発明材2および比較材2で製造した方向性電磁鋼板の表面を走査電子顕微鏡で観察した写真を示す。
図1および図2で確認できるように、発明材2で製造した方向性電磁鋼板の結晶粒が比較的大きく形成されたことを確認できる。
【0029】
本発明は、前記実施形態および/または実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態および/または実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
図1
図2