(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/32 20060101AFI20230712BHJP
H01G 4/252 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
H01G4/32 530
H01G4/32 305B
H01G4/32 301Z
H01G4/252 C
(21)【出願番号】P 2021541997
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2020017756
(87)【国際公開番号】W WO2021038963
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019155996
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390022460
【氏名又は名称】株式会社指月電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】城岸 賢
(72)【発明者】
【氏名】菊池 公明
(72)【発明者】
【氏名】亀井 聡
(72)【発明者】
【氏名】市川 智道
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-183158(JP,A)
【文献】特開昭57-097610(JP,A)
【文献】特開昭57-049217(JP,A)
【文献】特開2012-222137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
H01G 4/252
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムの少なくとも一方の主面上に金属層が設けられた金属化フィルムを含むフィルムが積層方向に積層された積層体と、
前記積層方向と直交する幅方向における前記積層体の両端面上に設けられた第1の外部電極及び第2の外部電極と、
前記第1の外部電極に接続された金属部と、を備え、
前記第1の外部電極は、第1部分と、該第1部分に囲まれる第2部分とを有し、
前記積層方向に投影した場合、前記第1の外部電極の前記第1部分の表層は、前記第1の外部電極の前記第2部分の表層より前記第2の外部電極に近い位置にあ
り、
前記第1の外部電極側の前記積層体の端面では、前記積層体の最も外側に位置するフィルムの端部が前記第2の外部電極に向かって凹んでいることにより、前記第1の外部電極の外周端に段差が設けられており、
前記フィルム端部の凹みに沿って前記第1の外部電極の凹んだ部分に前記第1部分が存在し、前記第1の外部電極の凹んでいない部分に前記第2部分が存在し、
前記フィルム端部の凹みに沿った前記段差を覆うように前記金属部が設けられている、フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記金属部
によって、前記フィルム端部の凹みに沿った前記段差が解消されている、請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記金属部は、前記第1の外部電極に比べて密度が低い、請求項
1又は2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
前記積層体の最も外側に位置するフィルムは、前記金属化フィルムを保護するための保護巻フィルムである、請求項
1~3のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項5】
前記誘電体フィルムとして、第1の誘電体フィルム及び第2の誘電体フィルムが前記積層方向に積層され、
前記積層方向に投影した場合、前記第1の誘電体フィルムの端部と前記第2の誘電体フィルムの端部との間に、前記保護巻フィルムの端部が配置されている、請求項4に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項6】
前記第1の外部電極は、少なくとも前記金属層と接続される部分が亜鉛-アルミニウム合金から構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項7】
前記第2の外部電極は、第1部分と、該第1部分に囲まれる第2部分とを有し、
前記積層方向に投影した場合、前記第2の外部電極の前記第1部分の表層は、前記第2の外部電極の前記第2部分の表層より前記第1の外部電極に近い位置にある、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィルムコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコンデンサは、一般に、誘電体フィルムの表面に金属層が設けられた金属化フィルムを巻回又は積層し、その両端面に一対の外部電極を形成することによって作製される。外部電極は、通常、メタリコンと呼ばれる金属溶射により形成される。
【0003】
このようなフィルムコンデンサは、例えば、特許文献1等に記載されているように、外装ケース内に収容した後、エポキシ樹脂等の封止樹脂により封止した構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のフィルムコンデンサにおいては、周囲の温度変化によって封止樹脂の膨張又は収縮が発生した際の応力により、外部電極が破損するおそれがある。特に、応力が集中する外部電極の稜線部、すなわち、外部電極の外周端において、外部電極が破損しやすいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、外部電極が破損しにくいフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のフィルムコンデンサは、誘電体フィルムの少なくとも一方の主面上に金属層が設けられた金属化フィルムを含むフィルムが積層方向に積層された積層体と、上記積層方向と直交する幅方向における上記積層体の両端面上に設けられた第1の外部電極及び第2の外部電極と、を備え、上記第1の外部電極は、第1部分と、該第1部分に囲まれる第2部分とを有し、上記積層方向に投影した場合、上記第1の外部電極の上記第1部分の表層は、上記第1の外部電極の上記第2部分の表層より上記第2の外部電極に近い位置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、外部電極が破損しにくいフィルムコンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2Aは、
図1に示すフィルムコンデンサのIIa-IIa線に沿った断面図であり、
図2Bは、
図2AのIIb部分を拡大した断面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する積層体に含まれる金属化フィルムの積層状態の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する積層体の巻回状態の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、
図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、外部電極を形成する方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、第1の外部電極に段差を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1の外部電極11に接続される金属部を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のフィルムコンデンサについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0011】
[フィルムコンデンサ]
本発明のフィルムコンデンサの一例として、誘電体フィルム及び金属層が積層された状態で巻回されてなる、いわゆる巻回型のフィルムコンデンサを以下に説明する。本発明のフィルムコンデンサは、誘電体フィルム及び金属層が交互に積層されてなる、いわゆる積層型のフィルムコンデンサであってもよい。
【0012】
図1は、本発明のフィルムコンデンサの一例を模式的に示す斜視図である。
図2Aは、
図1に示すフィルムコンデンサのIIa-IIa線に沿った断面図であり、
図2Bは、
図2AのIIb部分を拡大した断面図である。
図3Aは、
図1及び
図2Aに示すフィルムコンデンサのIIIa-IIIa線に沿った断面図であり、
図3Bは、
図3AのIIIb部分を拡大した断面図である。
【0013】
本明細書中、フィルムコンデンサにおける積層方向及び幅方向を、
図1、
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bに示すように、各々、矢印T及び矢印Wで定められる方向とする。なお、巻回型のフィルムコンデンサでは、積層方向が複数存在するとも言えるが、本明細書中では矢印Tで定められる方向とする。ここで、積層方向Tと幅方向Wとは、互いに直交している。
【0014】
図1に示すフィルムコンデンサ1は、積層体10と、幅方向Wにおける積層体10の一方の端面上に設けられた第1の外部電極11と、幅方向Wにおける積層体10の他方の端面上に設けられた第2の外部電極12と、を備えている。
【0015】
図2A、
図2B、
図3A及び
図3Bに示すように、積層体10は、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22が積層方向Tに積層された状態で巻回されてなる、いわゆる巻回体である。フィルムコンデンサ1は、このような巻回体でもある積層体10を備える巻回型のフィルムコンデンサである。
【0016】
フィルムコンデンサ1においては、フィルムコンデンサ1の低背化の観点から、
図1及び
図2Aに示すように、積層体10の断面形状が楕円又は長円のような扁平形状にプレスされ、積層体10の断面形状が真円であるときよりも厚みが小さい形状とされることが好ましい。
【0017】
図4は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する積層体に含まれる金属化フィルムの積層状態の一例を模式的に示す斜視図である。
【0018】
第1の金属化フィルム21は、第1の誘電体フィルム31の一方の主面上に第1の金属層41が設けられたものである。
【0019】
第1の金属層41は、幅方向において、第1の金属化フィルム21の一方の側縁に届き、第1の金属化フィルム21の他方の側縁に届かないように設けられている。
【0020】
第2の金属化フィルム22は、第2の誘電体フィルム32の一方の主面上に第2の金属層42が設けられたものである。
【0021】
第2の金属層42は、幅方向において、第2の金属化フィルム22の一方の側縁に届かず、第2の金属化フィルム22の他方の側縁に届くように設けられている。
【0022】
図4に示すように、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22は、両矢印Y1及びY2で示すように、幅方向にずらした状態で積層される。このとき、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22は、第1の金属層41及び第2の金属層42が設けられている主面が同じ向き(
図4では上向き)となる状態で積層される。
【0023】
図5は、
図1に示すフィルムコンデンサを構成する積層体の巻回状態の一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示す状態で積層された第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22は、まず、
図5に示すように先巻フィルム23を中心としてその周囲にロール状に巻回される。
図5では、第2の金属化フィルム22が第1の金属化フィルム21の内側となり、第1の金属層41が第1の誘電体フィルム31の内側となり、第2の金属層42が第2の誘電体フィルム32の内側となるように、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22が積層された状態で巻回されている。
【0024】
第2の金属化フィルム22の巻き終わり部分には、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22を保護するための保護巻フィルム24が重ねて巻回されることで接続され、積層体10の巻き終わり部分の外周面に対して保護巻フィルム24が複数回巻回される。保護巻フィルム24は、例えば、ヒートシール等を用いた熱溶着によって固定される。
【0025】
図2A及び
図3Aに示すように、積層体10は、先巻フィルム23の周りに第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22を多重に巻回して構成されている。
図2Bに示すように、一対の第1の金属層41及び第2の金属層42によって第1の誘電体フィルム31又は第2の誘電体フィルム32を挟み込むことによりコンデンサが構成される。
【0026】
図4及び
図5に示す状態と異なり、第2の金属層42は、第2の誘電体フィルム32の一方の主面上ではなく、第1の誘電体フィルム31の他方の主面上に設けられていてもよい。この場合、積層体10においては、第1の誘電体フィルム31の一方の主面上に第1の金属層41が設けられ、かつ、他方の主面上に第2の金属層42が設けられた金属化フィルムと、第2の誘電体フィルム32とが積層された状態で巻回されることになる。
【0027】
第1の外部電極11は、積層体10の一方の端面上に設けられ、第1の金属層41の露出端部と接触することで第1の金属層41と接続されている。
【0028】
第2の外部電極12は、積層体10の他方の端面上に設けられ、第2の金属層42の露出端部と接触することで第2の金属層42と接続されている。
【0029】
第1の外部電極11及び第2の外部電極12の構成材料としては、各々、例えば、亜鉛、アルミニウム、スズ、亜鉛-アルミニウム合金等の金属が挙げられる。第1の外部電極11は、少なくとも第1の金属層41と接続される部分が亜鉛-アルミニウム合金から構成されることが好ましい。第2の外部電極12は、少なくとも第2の金属層42と接続される部分が亜鉛-アルミニウム合金から構成されることが好ましい。第1の外部電極11及び第2の外部電極12は、好ましくは、各々、積層体10の一方の端面上及び他方の端面上に、上記金属を溶射することにより形成される。
【0030】
第1の外部電極11は、
図1に示すように、第1部分11aと、第1部分11aに囲まれる第2部分11bとを有する。
図3A及び
図3Bに示すように、積層方向Tに投影した場合、第1の外部電極11の第1部分11aの表層は、第1の外部電極11の第2部分11bの表層より第2の外部電極12に近い位置にある。そのため、第1の外部電極11の外周端には、第2の外部電極12に向かって凹む段差13が設けられている。
【0031】
同様に、第2の外部電極12は、
図1に示すように、第1部分12aと、第1部分12aに囲まれる第2部分12bとを有する。
図3Aに示すように、積層方向Tに投影した場合、第2の外部電極12の第1部分12aの表層は、第2の外部電極12の第2部分12bの表層より第1の外部電極11に近い位置にある。そのため、第2の外部電極12の外周端には、第1の外部電極11に向かって凹む段差13が設けられている。
【0032】
第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端に段差13が設けられていると、周囲の温度変化によって封止樹脂の膨張又は収縮が発生した際に第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端に集中する応力が分散されるため、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端にかかる応力を緩和することができる。その結果、第1の外部電極11又は第2の外部電極12が破損しにくくなる。
【0033】
第1の外部電極11及び第2の外部電極12のうち、少なくとも一方の外部電極が第1部分11a、12a及び第2部分11b、12bを有していればよい。すなわち、第1の外部電極11及び第2の外部電極12のうち、少なくとも一方の外部電極の外周端に段差13が設けられていればよい。また、段差13は、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端の全周に設けられていることが好ましいが、外周端の一部に設けられていてもよい。
【0034】
段差13の形状は特に限定されず、
図3Bに示すように、段差13が丸みを有していてもよい。段差13の形状は、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端で一定であってもよいし、場所ごとに異なっていてもよい。また、段差13の段数も特に限定されない。
【0035】
図3A及び
図3Bに示すように、第1の外部電極11が第1部分11a及び第2部分11bを有する場合、第1の外部電極11側の積層体10の端面では、積層体10の最も外側に位置するフィルムの端部が、第2の外部電極12に向かって凹んでいることが好ましい。また、
図3Aに示すように、第2の外部電極12が第1部分12a及び第2部分12bを有する場合、第2の外部電極12側の積層体10の端面では、積層体10の最も外側に位置するフィルムの端部が、第1の外部電極11に向かって凹んでいることが好ましい。
【0036】
第1の外部電極11を溶射によって形成する場合、積層体10の最も外側に位置するフィルムの端部に凹みを設けることにより、第1部分11a及び第2部分11bを有する第1の外部電極11を形成することができるため、第1の外部電極11の外周端に段差13を形成することができる。同様に、第2の外部電極12を溶射によって形成する場合、積層体10の最も外側に位置するフィルムの端部に凹みを設けることにより、第1部分12a及び第2部分12bを有する第2の外部電極12を形成することができるため、第2の外部電極12の外周端に段差13を形成することができる。
【0037】
特に、積層体10の最も外側に位置するフィルムは、保護巻フィルム24であることが好ましい。保護巻フィルム24の幅は、第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の幅と同じであってもよいし、第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の幅より短くてもよい。保護巻フィルム24の幅が第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の幅と同じであっても、第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は幅方向にずらして積層されるため、保護巻フィルム24の端部には凹みが形成される。そのため、第1の外部電極11及び第2の外部電極12を溶射によって形成する場合、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端に段差13を形成することができる。
【0038】
積層体10の最も外側に位置するフィルムが保護巻フィルム24である場合、
図3A及び
図3Bに示すように、第1の誘電体フィルム31の端部と第2の誘電体フィルム32の端部との間に保護巻フィルム24の端部が配置されることが好ましい。
【0039】
図3A及び
図3Bに示すように、第1の外部電極11が第1部分11a及び第2部分11bを有する場合、第1の外部電極11に金属部14が接続されていてもよい。幅方向Wに投影した場合、金属部14は、第1の外部電極11の第1部分11aと重なる位置に設けられている。すなわち、金属部14は、段差13を覆うように設けられている。また、
図3Aに示すように、第2の外部電極12が第1部分12a及び第2部分12bを有する場合、第2の外部電極12に金属部14が接続されていてもよい。幅方向Wに投影した場合、金属部14は、第2の外部電極12の第1部分12aと重なる位置に設けられている。すなわち、金属部14は、段差13を覆うように設けられている。
【0040】
金属部14は、アンカー効果によって第1の外部電極11又は第2の外部電極12と弱く接続されている。金属部14は、第1の外部電極11又は第2の外部電極12に比べて密度が低いことが好ましい。
【0041】
段差13を覆うように第1の外部電極11又は第2の外部電極12に金属部14が接続されていると、フィルムコンデンサ1を外装ケース内に収容して、封止樹脂により封止した状態において、第1の金属化フィルム21と第1の外部電極11との接合部分、又は、第2の金属化フィルム22と第2の外部電極12との接合部分にかかる応力を緩和することができる。その理由について、以下の
図6A及び
図6Bを参照しながら説明する。
【0042】
図6A及び
図6Bは、
図1に示すフィルムコンデンサの使用方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図6Aに示すように、まず、フィルムコンデンサ1を外装ケース50に収容する。第1の外部電極11には第1のリード端子51が電気的に接続され、第2の外部電極12には第2のリード端子52が電気的に接続されている。次に、
図6Bに示すように、外装ケース50の内部に封止樹脂53を充填することにより、フィルムコンデンサ1の周囲を封止樹脂53で覆うとともに、外装ケース50の開口部を封止する。第1のリード端子51及び第2のリード端子52は、外装ケース50の内部から外部に向かって突出する。
【0043】
一般に、外装ケースに収納され封止樹脂によって封止されたフィルムコンデンサは、急な外部温度の変化に曝されると、内部の積層体及び外部電極と比較して外部の外装ケース及び封止樹脂の温度が先行して変化する。このため、外部温度が変化した場合、外装ケース及び封止樹脂が先行して膨張又は収縮する変化が生じる。その結果、外部電極は封止樹脂から圧縮応力又は引張応力を受け、金属化フィルムと外部電極との接合部分が剥離するおそれがある。これに対し、段差13を覆うように第1の外部電極11又は第2の外部電極12に金属部14が接続されていると、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の代わりに金属部14が封止樹脂53から圧縮応力又は引張応力を受けて破壊される。そのため、第1の金属化フィルム21と第1の外部電極11との接合部分、又は、第2の金属化フィルム22と第2の外部電極12との接合部分にかかる応力を緩和することができる。その結果、上記接合部分の剥離が生じにくくなる。
【0044】
フィルムコンデンサ1が扁平形状を有する場合、金属部14は、扁平面に存在することが好ましい。この場合、金属部14は、扁平面の全体に存在してもよいし、扁平面の一部に存在してもよい。
【0045】
金属部14の形状は特に限定されず、第1の外部電極11又は第2の外部電極12からはみ出さなくてもよいし、はみ出してもよい。金属部14の形状は、第1の外部電極11又は第2の外部電極12の外周端で一定であってもよいし、場所ごとに異なっていてもよい。
【0046】
後述するように、金属部14は、第1の外部電極11及び第2の外部電極12を構成する金属を溶射することにより形成することができる。その場合、金属部14は、第1の外部電極11及び第2の外部電極12と同一の金属から構成される。
【0047】
第1の金属化フィルム21を構成する第1の誘電体フィルム31、及び、第2の金属化フィルム22を構成する第2の誘電体フィルム32は、各々、硬化性樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで、主成分とは、重量百分率が最も大きい成分を意味し、好ましくは、重量百分率が50重量%よりも大きい成分を意味する。
【0048】
硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂であってもよいし、光硬化性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂とは、熱で硬化し得る樹脂を意味しており、硬化方法を限定するものではない。したがって、熱で硬化し得る樹脂である限り、熱以外の方法(例えば、光、電子ビーム等)で硬化した樹脂も熱硬化性樹脂に含まれる。また、材料によっては、材料自体が有する反応性によって反応が開始する場合があり、必ずしも外部から熱又は光等を与えずに硬化が進むものについても熱硬化性樹脂とする。光硬化性樹脂についても同様であり、光で硬化し得る樹脂である限り、硬化方法を限定するものではない。
【0049】
硬化性樹脂は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、ウレタン結合及びユリア結合の両方を有していなくてもよい。なお、ウレタン結合及び/又はユリア結合の存在については、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認できる。
【0050】
硬化性樹脂は、第1の有機材料と第2の有機材料との硬化物からなることが好ましい。このような硬化物としては、例えば、第1の有機材料が有する水酸基(OH基)と第2の有機材料が有するイソシアネート基(NCO基)とが反応して得られる硬化物等が挙げられる。このような反応によって硬化物を得る場合、出発材料の未硬化部分が誘電体フィルム中に残留する場合がある。例えば、第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、水酸基及びイソシアネート基の少なくとも一方を含有していてもよい。この場合、第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、水酸基及びイソシアネート基の一方を含有していてもよいし、水酸基及びイソシアネート基の両方を含有していてもよい。なお、水酸基及び/又はイソシアネート基の存在については、フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)を用いて確認できる。
【0051】
第1の有機材料は、分子内に複数の水酸基を有するポリオールであることが好ましい。ポリオールとしては、例えば、ポリビニルアセトアセタール等のポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂等のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等が挙げられる。第1の有機材料として、複数種類の有機材料を併用してもよい。
【0052】
第2の有機材料は、分子内に複数の官能基を有する、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂、又は、メラミン樹脂であることが好ましい。第2の有機材料として、複数種類の有機材料を併用してもよい。
【0053】
イソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)等の脂肪族ポリイソシアネート、等が挙げられる。イソシアネート化合物としては、これらのポリイソシアネートの変性体、例えば、カルボジイミド又はウレタン等を有する変性体であってもよい。
【0054】
エポキシ樹脂としては、エポキシ環を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格エポキシ樹脂、シクロペンタジエン骨格エポキシ樹脂、ナフタレン骨格エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0055】
メラミン樹脂としては、構造の中心にトリアジン環、その周辺に3つのアミノ基を有する有機窒素化合物であれば特に限定されず、例えば、アルキル化メラミン樹脂等が挙げられる。メラミン樹脂としては、メラミンの変性体であってもよい。
【0056】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、好ましくは、第1の有機材料及び第2の有機材料を含む樹脂溶液をフィルム状に成形した後、熱処理して硬化させることによって作製される。
【0057】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、蒸着重合膜を主成分として含有していてもよい。蒸着重合膜は、ウレタン結合及びユリア結合の少なくとも一方を有していてもよいし、ウレタン結合及びユリア結合の両方を有していなくてもよい。なお、蒸着重合膜は、蒸着重合法により成膜されたものを指し、基本的には硬化性樹脂に含まれる。
【0058】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、熱可塑性樹脂を主成分として含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート等が挙げられる。
【0059】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、主成分以外の成分として、例えば、シリコーン樹脂、第1の有機材料及び第2の有機材料等の出発材料の未硬化部分等を含有していてもよい。
【0060】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32は、各々、各種機能を付加するための添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、平滑性を付与するためのレベリング剤等が挙げられる。添加剤は、水酸基及び/又はイソシアネート基と反応する官能基を有し、硬化物の架橋構造の一部を形成するものであることが好ましい。このような添加剤としては、例えば、水酸基、エポキシ基、シラノール基、及び、カルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0061】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0062】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の厚みは、各々、好ましくは0.5μm以上、5μm以下である。第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の厚みは、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0063】
第1の誘電体フィルム31及び第2の誘電体フィルム32の厚みについては、光学式膜厚計を用いて測定できる。
【0064】
第1の金属化フィルム21を構成する第1の金属層41、及び、第2の金属化フィルム22を構成する第2の金属層42の構成材料としては、各々、例えば、アルミニウム、亜鉛、チタン、マグネシウム、スズ、ニッケル等の金属が挙げられる。
【0065】
第1の金属層41及び第2の金属層42の組成は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであることが好ましい。
【0066】
第1の金属層41及び第2の金属層42の厚みは、各々、好ましくは5nm以上、40nm以下である。
【0067】
第1の金属層41の厚みについては、第1の金属化フィルム21の厚み方向における切断面を、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより特定できる。第2の金属層42の厚みについても同様に特定できる。
【0068】
先巻フィルム23の構成材料としては、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22を巻き取りやすいものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0069】
先巻フィルム23は、第1の誘電体フィルム31又は第2の誘電体フィルム32とは別個の独立したフィルムで構成されてもよいし、連続する一連のフィルムで構成されてもよい。連続する一連のフィルムで構成される場合、先巻フィルム23に該当する部分に電極を設けなければよい。
【0070】
保護巻フィルム24の構成材料としては、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22を保護できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0071】
保護巻フィルム24は、第1の誘電体フィルム31又は第2の誘電体フィルム32とは別個の独立したフィルムで構成されてもよいし、連続する一連のフィルムで構成されてもよい。連続する一連のフィルムで構成される場合、保護巻フィルム24に該当する部分に電極を設けなければよい。
【0072】
積層体10の構成は、
図3A及び
図3Bに示すような構成と異なっていてもよい。例えば、第1の金属化フィルム21において第1の金属層41が幅方向で2つの金属層に分断され、一方の金属層が第1の金属化フィルム21の一方の側縁に届き、他方の金属層が第1の金属化フィルム21の他方の側縁に届くように設けられており、第2の金属化フィルム22において第2の金属層42が一方の側縁に届かず、他方の側縁にも届かないように設けられていてもよい。このように、第1の金属層41において、一方の金属層が第1の外部電極11と接続され、かつ、他方の金属層が第2の外部電極12と接続されつつ、第2の金属層42が第1の外部電極11及び第2の外部電極12の両方と接続されないように設けられる場合においても、第1の金属層41と第2の金属層42との間でコンデンサを構成できる。
【0073】
[フィルムコンデンサの製造方法]
本発明のフィルムコンデンサは、例えば、以下の方法で製造される。
【0074】
まず、
図4に示すように、第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22を作製する。次に、
図5に示すように、先巻フィルム23を中心にして、その周囲に第1の金属化フィルム21及び第2の金属化フィルム22をロール状に巻回する。その後、巻き終わり部分の外周面に対して保護巻フィルム24を複数回巻回する。
【0075】
このようにして得られた積層体10を上下方向から挟んで、
図2Aに示すように扁平形状にプレスすることが好ましい。
【0076】
積層体10の一方の端面上に、金属を溶射することにより、第1の金属層41と接続されるように第1の外部電極11を形成する。また、積層体10の他方の端面上に、金属を溶射することにより、第2の金属層42と接続されるように第2の外部電極12を形成する。
【0077】
図7は、外部電極を形成する方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示すように、積層体10の端面が開放するように、積層体10の扁平面を溶射治具61及び62で挟み込む。溶射治具61及び62は、積層体10のコーナー面には接していない。
図7に示す状態で、積層体10の端面に溶射ノズル63から溶融金属を噴射する。
【0078】
図8は、第1の外部電極に段差を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
図8に示す両矢印の向きに溶射ノズル63を移動させる場合、溶射治具61に近いフィルムの端部には溶融金属が付きにくく、また、積層体10の最も外側に位置する保護巻フィルム24の端部が凹んでいるため、第1部分11a及び第2部分11bを有する第1の外部電極11が形成される。その結果、第1の外部電極11の外周端には段差13が形成される。溶射治具62に近いフィルムの端部においても同様である。
【0079】
図9は、第1の外部電極11に接続される金属部を形成する方法の一例を模式的に示す断面図である。
必要に応じて、
図8に示す状態に比べて溶射ノズル63を積層体10から離した状態で、積層体の外側にのみ溶融金属を噴射してもよい。その場合、第1の外部電極11に比べて密度の低い金属部14を段差13の上に形成することができる。なお、金属部14を形成する方法は、
図9に示す方法に限定されるものではない。
【0080】
第2の外部電極12についても、上記と同様の方法により段差13及び金属部14を形成することができる。
【0081】
以上により、
図1に示すフィルムコンデンサ1が製造される。
【0082】
本発明のフィルムコンデンサは、上記実施形態に限定されるものではなく、フィルムコンデンサの構成、製造条件等に関し、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 フィルムコンデンサ
10 積層体
11 第1の外部電極
11a 第1の外部電極の第1部分
11b 第1の外部電極の第2部分
12 第2の外部電極
12a 第2の外部電極の第1部分
12b 第2の外部電極の第2部分
13 段差
14 金属部
21 第1の金属化フィルム
22 第2の金属化フィルム
23 先巻フィルム
24 保護巻フィルム
31 第1の誘電体フィルム
32 第2の誘電体フィルム
41 第1の金属層
42 第2の金属層
50 外装ケース
51 第1のリード端子
52 第2のリード端子
53 封止樹脂
61、62 溶射治具
63 溶射ノズル