(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-11
(45)【発行日】2023-07-20
(54)【発明の名称】水田用水位調節装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/00 20060101AFI20230712BHJP
E02B 13/00 20060101ALI20230712BHJP
【FI】
A01G25/00 501A
E02B13/00 302
(21)【出願番号】P 2022036619
(22)【出願日】2022-03-09
(62)【分割の表示】P 2018118766の分割
【原出願日】2018-06-22
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000201582
【氏名又は名称】前澤化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(72)【発明者】
【氏名】矢島 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】川上 直里
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-323888(JP,A)
【文献】特開2012-121596(JP,A)
【文献】実開昭56-146463(JP,U)
【文献】特開平09-327244(JP,A)
【文献】特開2002-030641(JP,A)
【文献】特開2014-132851(JP,A)
【文献】特開2010-022324(JP,A)
【文献】登録実用新案第3023087(JP,U)
【文献】実開平02-029915(JP,U)
【文献】特開2007-269412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水田の水位を任意の高さ位置に調節する水田用水位調節装置であって、
水田の水が流入する流入口と、水田の水が流出する流出口とを有する可動部
と、前記可動部との接触面に弾性部材を有する本体部とを備え、
前記可動部は、
前記弾性部材に摺動させることにより上下方向に移動可能であり、
前記可動部を下方に移動させるとき
の摺動抵抗よりも、該可動部を上方に移動させるとき
の摺動抵抗のほうが、移動に要する
抵抗力が
小さくなるようにしたことを特徴とする水田用水位調節装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田における水位を調節するための水田用水位調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田の水位を調整する水位調節装置として、上部および周面に排水口を形成した筒体と、この筒体を支持する取付管とを有する水位調節装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。こうした水位調節装置によれば、筒体の高さ位置に応じて、所望の水位を超えた分の水田の水が筒体の排水口から下位の排水路などに排出されることで、水田を所望の水位に保つことができる。
【0003】
ところで、近年、地球温暖化などによる局地的な降水量の急増によって、水田より下位にある排水路の氾濫等を防止するために、例えば、特許文献2に示す水田の水位調整器が知られている。この特許文献2によれば、下部縦パイプと上部縦パイプとの接続部にパッキングを取り付け、このパッキングによって下部縦パイプと上部縦パイプとの間での止水性を担保しつつ、上部縦パイプを下部縦パイプに対して所定の高さ位置に固定できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-022324号公報
【文献】実用新案登録第3023087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に示す水田の水位調整器は、ゲリラ豪雨時等の高雨量においては上部縦パイプに対して想定以上の水圧がかかることにより、所定の高さに設定した上部縦パイプが不意に降下し、設定水位が下がりやすいという課題があった。
【0006】
一方、上部縦パイプの意図しない降下を防止するためにパッキングの係止力を強めると、水位を設定する際に上部縦パイプを上下動させるために大きな力が必要になり、水位の設定作業を行う際の作業性が低下するという懸念があった。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、水田の水位設定を行う際の作業性を向上させ、かつ、設定した水位の位置が予期せず変位することを抑制できる水田用水位調節装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明は、水田の水位を任意の高さ位置に調節する水田用水位調節装置であって、水田の水が流入する流入口と、水田の水が流出する流出口とを有する可動部と、前記可動部との接触面に弾性部材を有する本体部とを備え、前記可動部は、前記弾性部材に摺動させることにより上下方向に移動可能であり、前記可動部を下方に移動させるときの摺動抵抗よりも、該可動部を上方に移動させるときの摺動抵抗のほうが、移動に要する抵抗力が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、水田の水位を任意の高さ位置に調節する水田用水位調節装置であって、一端および他端が開放面を成し、内部を水田の用水が流出する円筒管状の可動管と、該可動管が中心軸方向に沿って移動可能に内部に挿通される筒状体と、前記筒状体の一端寄りの外周面を覆い、かつ前記筒状体の一端側の開口の周縁部分を覆う被覆領域を有するように形成され、前記可動管を挿通可能な第1開口を備えた蓋体と、前記蓋体の内側に配され、前記可動管を挿通可能な第2開口を備えた環状部材と、前記蓋体の内側において前記蓋体の前記被覆領域および前記環状部材の間に挟持され、前記可動管を摺動可能な第3開口を備えた環状の弾性部材と、を少なくとも備え、前記第3開口の開口径は前記可動管の外径と同じかそれよりも小さく、かつ、前記第3開口の開口径は前記第1開口の開口径および第2開口の開口径よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、前記第2開口の開口径は、前記第1開口の開口径よりも小さいことが好ましい。
【0011】
また、本発明では、前記環状部材の前記中心軸方向に沿った厚みは、2mm以上、3mm以下の範囲であることが好ましい。
【0012】
また、本発明では、前記第1開口の開口径は、170mm以上、190mm以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
また、本発明では、前記環状部材が前記弾性部材と接する面の反対面の周縁部は、前記筒状体の開口縁部に接することが好ましい。
【0014】
また、本発明では、前記環状部材は、前記弾性部材よりも硬度が高い材料から構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水田の水位設定を行う際の作業性を向上させ、かつ、設定した水位の位置が予期せず変位することを防止できる水田用水位調節装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の水田用水位調節装置の設置例を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態の水田用水位調節装置を示す外観斜視図である。
【
図3】
図2に示す水田用水位調節装置の断面図である。
【
図4】
図3に示す水田用水位調節装置の要部拡大断面図である。
【
図5】可動管の引き上げ時の様子を示す要部拡大断面図である。
【
図6】可動管の押し込み時の様子を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の水田用水位調節装置について説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0018】
図1は、水田用水位調節装置の設置例を示す説明図である。
本発明の水田用水位調節装置10は、例えば、貯水池1の下流側に設けられている水田2の排水部3に設置される。そして、水田用水位調節装置10は、例えば地中の排水管4を介して水田2よりも下流側の排水路(用水路)5に接続され、所定の水位を超えた分の水が排水路(用水路)5に排水される。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態の水田用水位調節装置を示す外観斜視図である。また、
図3は、
図2に示す水田用水位調節装置の断面図である。また、
図4は、
図3の要部拡大断面図である。
本実施形態の水田用水位調節装置10は、一端11aおよび他端11bが開放面を成し、内部を水田の用水が流出する円筒管状の可動管11と、この可動管11が中心軸C方向に沿って移動可能に内部に挿通される筒状体12とを備えている。
【0020】
また、水田用水位調節装置10は、筒状体12の一端12a寄りの外周面12sを覆い、かつこの筒状体12の一端12a側の開口12pの周縁部分を覆う被覆領域13fを有するように形成され、可動管11を挿通可能な第1開口13pを備えた蓋体13を備えている。
【0021】
また、水田用水位調節装置10は、蓋体13の内側に配され、可動管11を挿通可能な第2開口14pを備えた環状部材14と、蓋体13の内側において蓋体13の被覆領域13fおよび環状部材14の間に挟持され、可動管11を摺動可能な第3開口15pを備えた環状の弾性部材15とを備えている。
【0022】
さらに、水田用水位調節装置10は、筒状体12の他端12b寄りの外周面12sを覆い、可動管11の中心軸C方向に対して直角な2方向に屈曲して延びる接続体16を備えている。
【0023】
可動管11は、例えば、全体が樹脂によって形成された略円筒形のパイプ部材である。この可動管11は外径が例えば150mm~160mm程度になるように形成されている。この可動管11の内部には、一端11aから他端11bに向けて、開口径が漸減する漏斗状のオリフィス21が形成されている。このオリフィス21は、可動管11の内部を一端11aから他端11bに向かって通過する水田2(
図1参照)の排水の流量を規制する。なお、こうしたオリフィス21を可動管11の内部に特に設けない構成であってもよい。
また、可動管11の一端11a側には、この可動管11を中心軸C方向に沿って引上げる際の手掛かりとなる取っ手22が回動可能に取り付けられている。
【0024】
筒状体12は、例えば、全体が樹脂によって形成された略円筒形のパイプ部材である。この筒状体12の内部には可動管11が中心軸C方向に沿って移動可能に収容される。また、筒状体12の外周面12sには、蓋体13および接続体16が被せられる。
【0025】
蓋体13は、例えば、全体が樹脂によって形成され、円筒形の一方が直径方向に屈曲した蓋状の部材である。この蓋体13の円筒形の一方が直径方向に屈曲した部分が、被覆領域13fを成す。そして、蓋体13の被覆領域13f寄りの内部に、環状部材14と弾性部材15とが収容される。
【0026】
蓋体13の第1開口13pは、開口径が例えば170mm以上、190mm以下の範囲に形成されることが好ましい。そして、蓋体13の第1開口13pは、その開口径が環状部材14の第2開口14pの開口径、および弾性部材15の第3開口15pの開口径よりも大きくなるように形成されている。
こうした蓋体13の第1開口13pの開口縁と可動管11の外周面11sとの間のクリアランスΔ1は、例えば20~40mm程度である。
【0027】
環状部材14は、例えば、樹脂や金属からなる円板状の部材であり、この環状部材14の一面14a側で弾性部材15と接し、蓋体13の被覆領域13fの内側との間でこの弾性部材15を挟持する。環状部材14は、中心軸C方向に沿った厚みが例えば2mm以上、3mm以下の範囲になるように形成することが好ましい。また、環状部材14は、弾性部材15よりも硬度が高い材料を用いて形成することが好ましい。
【0028】
環状部材14の硬度としては、例えば、ロックウェル硬さ試験機のRスケールによる硬さ(HRR)を用いることができる。環状部材14の材質別の硬度例としては、ポリ塩化ビニルの場合、HRR=110~120、ポリプロピレンの場合、HRR=80~90、ポリエチレンの場合、HRR=60~70である。環状部材14の硬度としては、例えばHRR=110以上のものを用いることが好ましい。
【0029】
環状部材14の他面14bの周縁部は、筒状体12の一端12aの開口縁部12aeに接する。これにより、環状部材14は蓋体13の被覆領域13fの内側に向かって押し付けられ、環状部材14および弾性部材15が蓋体13の内側において被覆領域13f側に係止される。
【0030】
環状部材14の第2開口14pは、その開口径が蓋体13の第1開口13pの開口径よりも小さく、かつ、弾性部材15の第3開口15pの開口径よりも大きくなるように形成されている。こうした環状部材14の第2開口14pの開口縁と可動管11の外周面11sとの間のクリアランスΔ2は、例えば0~2mm程度である。
【0031】
弾性部材15は、例えば、ゴムや伸縮性樹脂などからなる円環状の部材である。この弾性部材15は、一面15a側で蓋体13の被覆領域13fの内側に接し、かつ他面15b側で環状部材14に接し、これにより、弾性部材15は、蓋体13の被覆領域13fと環状部材14との間で挟持される。
【0032】
弾性部材15の第3開口15pの開口径は、弾性部材15が伸縮していない状態において、可動管11の外径と同じかそれよりも小さくなるように形成されている。即ち、第3開口15pの開口径が可動管11の外径よりも小さい場合には、第3開口15pに可動管11が挿通された状態で、弾性部材15の一部が押し縮められているか、あるいは蓋体13または環状部材14に向けて第3開口15pの周縁部分が屈曲した状態にある。こうした弾性部材15の弾性変形を利用することによって、可動管11は、中心軸C方向に沿って移動可能であり、かつ任意の位置で係止させることができる。
【0033】
また、弾性部材15の第3開口15pの開口径は、蓋体13の第1開口13pの開口径、および環状部材14の第2開口14pの開口径よりも小さくなるように形成されている。
【0034】
接続体16は、断面視略T字状の形状を有し、その一端16a側が筒状体12の外周面12sの一部を覆うように、筒状体12に接続される。また、接続体の底部16eは、可動管11の中心軸C方向に対して直角な2方向に分岐し、そのうちの1方向は排水開口16e1とされ、また、もう一方は水抜き開口16e2とされている。
【0035】
このうち、排水開口16e1は、排水管4(
図1参照)に接続されて、水田2の水を下流側の排水路(用水路)5に排水を行う。また、水抜き開口16e2は、水田用水位調節装置10の設定水位よりも低い水田2の水を排水開口16e1に向けて排水させるものであり、水田2の水抜き時以外は、閉栓16vによって閉塞される。
【0036】
以上の様な構成の本実施形態の水田用水位調節装置10のそれぞれの部材の開口どうしの開口径の関係として、
第1開口13p(蓋体13)>第3開口15p(弾性部材15)
第2開口14p(環状部材14)>第3開口15p(弾性部材15)
可動管11の外径≧第3開口15p(弾性部材15)
を有するとともに、
第1開口13p(蓋体13)>第2開口14p(環状部材14)>可動管11の外径という、関係を有する。
【0037】
次に、以上の様な構成の本実施形態の水田用水位調節装置10の作用を説明する。
本発明の水田用水位調節装置10は、例えば、地中に排水管4が設置された水田2の排水部3(
図1参照)に、可動管11の中心軸C方向が鉛直方向(上下方向)に合致するように設置される。水田用水位調節装置10は、水田2に可動管11が突出するように水田2に埋設される。
【0038】
そして、例えば、水田2の水位が降雨などによって上昇し、可動管11の一方の開放端を成す一端11aを超えると、水田2の水がオーバーフローして可動管11の内部に流れ込み、接続体16の排水開口16e1から排水管4を介して水田2よりも下流側の排水路(用水路)5に排水される。これによって、水田2の水位は、水田用水位調節装置10の可動管11の一端11aの高さと同じか、これ以下に保たれる。
【0039】
こうした水田用水位調節装置10による排水時には、可動管11の内部を流れる排水は、可動管11の内部に形成されたオリフィス21によって最大流量が制限される。これにより、短時間に大量の排水が下流側の排水路(用水路)5に流れ込むことにより排水路(用水路)5が氾濫することを防止する。
【0040】
水田2の水位を設定する可動管11は、開口径が伸縮していない状態において可動管11の外径と同じかそれよりも小さい第3開口15pをもつ弾性部材15の弾性力によって、鉛直方向に沿って任意の位置に係止することができる。これにより、水田2の最高水位を任意の高さに設定することができる。
【0041】
そして、水田2に設置された本実施形態の水田用水位調節装置10を用いて、水田2の最高水位の設定を変更する際には、中心軸C方向、即ち鉛直方向に沿って可動管11を上下動させることにより行う。例えば、水田2の最大水位を上げる場合には、可動管11の取っ手22を把持して鉛直方向の上方に可動管11を引上げ、可動管11の一端11aを、所望する水田2の最高水位になる位置に合わせる。
【0042】
蓋体13の第1開口13pの開口径は、弾性部材15の第3開口15pの開口径よりも大きくなるように形成されているので、弾性部材15の第3開口15pの縁部が上方に湾曲することを許容している。
図5に示すように、こうした可動管11の引上げ時においては、可動管11の外周面11sに当接している弾性部材15の第3開口15pの縁部が、その弾性部材15の弾性力によって可動管11の上昇に伴って、上方に湾曲する。
【0043】
このように、可動管11の引上げ時に弾性部材15の第3開口15pの縁部が上方に湾曲可能にすることで、可動管11の引上げに必要な引っ張り力を低減できる。可動管11の引上げに必要な引っ張り力を低減することで、作業者が容易に可動管11を引上げて水田2の最高水位をより高く調節することができる。例えば、大雨などによって可動管11のオリフィス21に大きな水圧が加わっていた場合でも、調節が可能となる。
【0044】
一方、例えば、水田2の最大水位を下げる場合には、を鉛直方向の下方に可動管11を押し込むように下げ、可動管11の一端11aを、所望する水田2の最高水位になる位置に合わせる。
【0045】
環状部材14の第2開口14pの開口径は、弾性部材15の第3開口15pの開口径よりも大きくなるように形成されているので、弾性部材15の第3開口15pの縁部が下方に湾曲することを許容している。
図6に示すように、こうした可動管11の押し込み時においては、可動管11の外周面11sに当接している弾性部材15の第3開口15pの縁部が、その弾性部材15の弾性力によって可動管11の降下に伴って、下方に湾曲する。
【0046】
このように、可動管11の押し込み時に弾性部材15の第3開口15pの縁部が下方に湾曲可能にすることで、可動管11の押し込みに必要な押し込み力は、作業者が容易に可動管11を押し込んで水田2の最高水位をより低く調節することができる。
【0047】
そして、こうした可動管11を支持する弾性部材15を挟持する蓋体13の第1開口13pは、環状部材14の第2開口14pよりも開口径が大きくなるように形成されているので、可動管11の下方への押し込み時よりも上方への引上げ時の方が、弾性部材15の第3開口15pの縁部をより大きく湾曲させることができる。即ち、可動管11の下方への押し込み時よりも上方への引上げ時の方が、可動管11の移動に要する力が小さくて済む。
【0048】
これによって、例えば、大雨などによりオリフィス21に大きな水圧が加わっていても、少ない力で容易に可動管11を引上げることができ、その一方で可動管11が水圧によって下方に押し込まれて、最高水位が予期せず低く変化してしまうことを抑制することができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0050】
本発明の蓋体の第1開口、環状部材の第2開口、および環状部材の第3開口のそれぞれの開口径と、可動管の引っ張り力および押し込み力との関係を調べた。この結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1に示す結果によれば、蓋体の第1開口の開口径が環状部材の第2開口の開口径よりも大きくなるように形成した各試料は、第1開口と第2開口とを同一径に形成した各試料と比較して、可動管の引っ張り力と押し込み力との差がいずれも50N以上であり、可動管の引上げ時の応力を軽くするとともに、可動管が水圧によって予期せず押し込まれることを抑制できることが確認された。
【符号の説明】
【0053】
10…水田用水位調節装置
11…可動管
12…筒状体
13…蓋体
13p…第1開口
14…環状部材
14p…第2開口
15…弾性部材
15p…第3開口