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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】走行装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/84 20060101AFI20230713BHJP
   G01N 21/954 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20230713BHJP
   G01N 27/90 20210101ALI20230713BHJP
【FI】
G01N21/84 B
G01N21/954 A
G01N29/265
G01N27/90
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019112821
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204560
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000211226
【氏名又は名称】株式会社シーエックスアール
(73)【特許権者】
【識別番号】000157005
【氏名又は名称】関電プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】白石 時宜
(72)【発明者】
【氏名】水谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】三ッ田 和彦
【審査官】柳澤 朱香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-049778(JP,A)
【文献】特開平07-218394(JP,A)
【文献】特開2000-121611(JP,A)
【文献】特開2012-201260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01N 29/00-G01N 29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体により形成された検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、
車体と、
前記車体に搭載された検査ユニットと、
前記車体に回転可能に設けられた車輪と、
前記車輪を駆動するモータと、
前記検査対象物との間に間隔を隔てて前記車体の底面部に配置され、磁石を含む磁石ユニットと、
を備え、
前記磁石ユニットは、前記検査対象物の形状に応じて異なるサイズのものに交換可能である
ことを特徴とする走行装置。
【請求項2】
前記車体に固定されると共に前記磁石ユニットが着脱可能に接続され、圧力流体の供給時に前記磁石ユニットを上昇させて前記検査対象物から離間させる流体圧シリンダをさらに備える
請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記流体圧シリンダは、シリンダボディから突出するピストンロッドを下向きにした状態で配置され、
前記磁石ユニットは、前記ピストンロッドに同軸にかつ着脱可能に接続される
請求項2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記磁石ユニットは、前記ピストンロッドと同軸のネジにより前記ピストンロッドに接続される
請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記車輪は、前記検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能である
請求項1~4のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記車輪は、その外側面部にテーパ状の接地面を有する
請求項1~5のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記車輪は、前記車体の前後に設けられ、
前記走行装置は、前側の車輪と後側の車輪を連結するタイミングベルトを備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の走行装置。
【請求項8】
前記タイミングベルトの下側部分を上方から支持する支持部材を備える
請求項7に記載の走行装置。
【請求項9】
前記タイミングベルトは、内周歯と外周歯を有する
請求項7または8に記載の走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は走行装置に係り、特に、検査対象物の非破壊検査のために検査対象物の表面上を走行する走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材で作られた配管、橋梁、炉壁、煙突等の構造物において、その表面および内部の少なくとも一方にできた傷、腐食等の欠陥を、構造物を破壊することなく検出する非破壊検査が広く知られている。この非破壊検査では、検査対象物の表面上で走行装置を走行させると共に、走行装置に搭載した検査ユニットで欠陥を検出する。
【0003】
走行装置としては、車体に設けられた車輪をモータで駆動する自走式走行装置が知られている。そしてこの走行装置を検査対象物に吸着させるため、走行装置に磁石を設けることも知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭59-35139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした磁石を有する走行装置の場合、走行中に磁石が検査対象物に接触すると、磁石の引き摺りにより検査対象物の表面が傷付いたり、走行抵抗が必要以上に増加したり、最悪、磁石が検査対象物にくっついてしまって走行不能に陥ったりする虞がある。この点で磁石が検査対象物に接触している特許文献1の構造は不利で、検査対象物と磁石の間には適度な大きさの間隔もしくは隙間が設けられているのが好ましい。
【0006】
一方、検査対象物が変わってその形状が変化すると、検査対象物と磁石の間の間隔が変化することがある。この場合、磁石の吸引力により走行装置を検査対象物に押し付ける吸着力が変化し、吸着力が不足すると車輪のスリップや走行装置の脱落が生じる虞があり、吸着力が過剰となると前述の磁石接触時と同様に走行抵抗増加や走行不能を招く虞がある。
【0007】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、検査対象物の形状が変わっても走行装置の吸着力を最適な大きさに維持することができる走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一の態様によれば、
検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、
車体と、
前記車体に搭載された検査ユニットと、
前記車体に回転可能に設けられた車輪と、
前記車輪を駆動するモータと、
前記検査対象物との間に間隔を隔てて前記車体の底面部に配置され、磁石を含む磁石ユニットと、
を備え、
前記磁石ユニットは、前記検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能である
ことを特徴とする走行装置が提供される。
【0009】
好ましくは、前記走行装置は、前記車体に固定されると共に前記磁石ユニットが着脱可能に接続され、圧力流体の供給時に前記磁石ユニットを上昇させて前記検査対象物から離間させる流体圧シリンダをさらに備える。
【0010】
好ましくは、前記流体圧シリンダは、シリンダボディから突出するピストンロッドを下向きにした状態で配置され、
前記磁石ユニットは、前記ピストンロッドに同軸にかつ着脱可能に接続される。
【0011】
好ましくは、前記磁石ユニットは、前記ピストンロッドと同軸のネジにより前記ピストンロッドに接続される。
【0012】
好ましくは、前記車輪は、前記検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能である。
【0013】
好ましくは、前記車輪は、その外側面部にテーパ状の接地面を有する。
【0014】
好ましくは、前記車輪は、前記車体の前後に設けられ、
前記走行装置は、前側の車輪と後側の車輪を連結するタイミングベルトを備える。
【0015】
好ましくは、前記走行装置は、前記タイミングベルトの下側部分を上方から支持する支持部材を備える。
【0016】
好ましくは、前記タイミングベルトは、内周歯と外周歯を有する。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、検査対象物の形状が変わっても走行装置の吸着力を最適な大きさに維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】検査装置の全体を示す概略図である。
図2】走行装置を示す斜視図である。
図3】走行装置を示す底面図である。
図4】走行装置を示す正面図である。
図5】最小径配管内の走行装置を示す正面図である。
図6】走行装置の左縦断側面図であり、圧力流体の非供給時の状態を示す。
図7】走行装置の左縦断側面図であり、圧力流体の供給時の状態を示す。
図8】左前輪のタイミングプーリと左側タイミングベルトを拡大して示す左側面図である。
図9】走行装置の部分縦断正面図である。
図10】中間径配管内の走行装置を示す正面図である。
図11】最大径配管内の走行装置を示す正面図である。
図12】中間径配管に適合された磁石ユニットを示す左縦断側面図である。
図13】最大径配管に適合された磁石ユニットを示す左縦断側面図である。
図14】比較例に係る走行装置がエルボの内側コーナー部を走行する場合の概略左側面図である。
図15】本実施形態に係る走行装置がエルボの内側コーナー部を走行する場合の概略左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0020】
図1は、検査対象物の非破壊検査を行う検査装置の全体を示す概略図である。検査対象物は磁性体である鋼製構造物、具体的には配管Pである。図示例の配管Pはクランク状に折曲されている。配管Pは、外部に開放された一端P11を有し水平に配置された直管P1と、直管P1の他端P12に接続され上方に向かって直角に曲がる曲がり管としてのエルボP2と、エルボP2の上端に接続され上方に向かって延びる直管P3と、直管P3の上端に接続され直角に曲がるエルボP4と、エルボP4に接続され水平方向に延びる直管P5とを有する。各管およびエルボの接続はフランジFと図示しないボルト・ナットとによって行われる。
【0021】
配管Pの内面5では、素材である鉄が剥き出しの状態で露出されている。なお、必要に応じて配管Pの内面5に錆止め用樹脂等のコーティング材が被覆されてもよい。
【0022】
検査装置は、配管Pの表面上を走行する走行装置1と、走行装置1に搭載された検査ユニットからデータが送られてくると共に走行装置1に電力および制御信号を出力する制御装置2と、制御装置2に送られてきたデータに基づいて画像を表示するディスプレイ3と、制御装置2に接続され、走行装置1を操縦するために作業者Sによって操作されるコントローラ4と、走行装置1に圧力流体を選択的に供給する流体圧供給装置(図示せず)とを備える。本実施形態の圧力流体は圧縮エアであり、流体圧供給装置はエア圧供給装置として構成される。なお、必要に応じて圧力流体は変更可能であり、例えば圧油等の加圧液体を用いてもよい。
【0023】
本実施形態の場合、検査装置は目視試験を行うよう構成され、検査ユニットは、走行装置1の前方および後方の景色をそれぞれ撮影するフロントカメラおよびリアカメラを含む。これらカメラはCCDカメラにより構成される。これらカメラで撮影された画像もしくは映像のデータは制御装置2に送られ、制御装置2は、一方または両方のカメラで撮影された画像をディスプレイ3に表示する。作業者Sはこの画像を見ながら配管Pの表面の状態を目視で検査すると共に、コントローラ4を操作し、走行装置1を配管Pの長手方向に沿って走行させる。
【0024】
図示例の場合、走行装置1は、直管P1の一端P11から配管P内に挿入され、直管P5側に向かって図中左側へと走行させられる。そして配管Pの内面5の画像がディスプレイ3に表示され、配管Pの内面5を検査するようになっている。
【0025】
詳しくは後述するが、走行装置1は自走式であり、その車輪がモータで駆動されることにより走行する。また走行装置1は磁石により配管Pの表面、具体的には内面5に吸着されている。従って走行装置1は、エルボP2,P4の湾曲した内面5に沿って上ることができ、また直管P3の縦の内面5に沿って上ることもできる。必要であれば、水平な直管P1,P5の天井面である内面5に沿って、上下反転した状態で走行することもできる。
【0026】
代替的に、検査装置は他の種類の試験を行うよう構成されてもよく、例えば周知の超音波探傷試験や渦電流探傷試験を行うよう構成されてもよい。そして検査ユニットも他の種類の試験に適したもの、例えば超音波探傷試験に適した超音波発信機や、渦電流探傷試験に適した探傷コイルに変更されてもよい。検査は配管Pの内面5に限らず、外面6に対して行ってもよい。
【0027】
次に、走行装置1の構成を説明する。
【0028】
図2図4に示すように、走行装置1は、車体11と、車体11に搭載された検査ユニット12と、車体11に回転可能に設けられた車輪13と、車輪13を駆動するモータ14と、走行装置1を検査対象物の表面(具体的には配管Pの内面5)に吸着させるための磁石を含む磁石ユニット15とを備える。以下便宜上、走行装置1が走行する検査対象物の表面のことを走行面または路面ともいう。また走行面に接触する車輪13の表面のことを接地面という。走行装置1の前後左右上下の各方向は図示する通りである。
【0029】
車体11は、できるだけ小型・軽量となるよう樹脂製のモノコック構造とされている。車体11は、複数の樹脂板を組み立てて構成される。但し車体11は金属製とされてもよいし、フレーム構造とされてもよい。
【0030】
検査ユニット12は、走行装置1の前方および後方の景色をそれぞれ撮影するフロントカメラ18およびリアカメラ(図示せず)を含む。これらカメラはCCDカメラにより構成される。これらカメラは、水平な回動軸(図6のCc参照)回りに回動可能となっており、コントローラ4からの制御信号に基づいて上下方向の角度を変えることができる。
【0031】
車輪13は、車体11の前後左右に設けられる。すなわち車輪13として、同一サイズの左前輪FL、右前輪FR、左後輪RLおよび右後輪RRの計四つが設けられる。但し必要に応じて車輪の数を増減してもよい。
【0032】
車輪13のうち、少なくともその接地面はゴムで形成されている。本実施形態の場合、車輪13は、全体がゴムで形成された略円盤状の部材とされている。但し周知のように、金属製または樹脂製のホイールにゴム製タイヤを装着して車輪を構成してもよい。このように接地面をゴムで形成すると、走行面が傷付くのを抑制でき、またたとえ走行面が濡れていたり汚れていたりしても、車輪13を走行面に良好にグリップさせることができる。
【0033】
車輪13は、その外周部に、前車軸Cfおよび後車軸Crに平行な基準接地面16を有する。一方、車輪13は、その外側面部(車幅方向外側の側面部)に、テーパ状の接地面すなわちテーパ接地面17を有する。テーパ接地面17は、車輪13の外側面部の外周側に、基準接地面16に隣接して設けられる。テーパ接地面17は、車幅方向外側に向かうほど外径が小さくなるようなテーパ面とされ、基準接地面16に対する角度θが好ましくは45°以上90°未満、より好ましくは60°以上90°未満(図示例では約70°)となるように傾斜されている。
【0034】
このようにテーパ接地面17を設けると、図5に示すように、配管Pの内径dが比較的小さく基準接地面16が接地し難い場合にも、テーパ接地面17を配管Pの内面5に接地させて確実に走行を行うことができる。
【0035】
モータ14は、DCモータ等の電気モータにより形成され、車体11の内部に配置されている。本実施形態の場合、右車輪用モータMRと左車輪用モータMLの二つのモータ14がそれぞれ横置きされ、前後に並べて配置される。右車輪用モータMRは右前輪FRに、左車輪用モータMLは左後輪RLにそれぞれ直結される。こうしたレイアウトにより、二つのモータ14を小さな車体11の中にコンパクトに配置できる。
【0036】
磁石ユニット15は、図5に示すように、検査対象物の表面(配管Pの内面5)との間に間隔もしくは隙間を隔てて車体11の底面部に配置される。特に磁石ユニット15は、検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能である。
【0037】
図6は、走行装置1の左縦断側面図である。走行装置1は、車体11に固定された流体圧シリンダとしてのエアシリンダ19を備える。エアシリンダ19は、後に詳述するが、走行装置1を路面から強制的に引き剥がすためのものである。エアシリンダ19には磁石ユニット15が直接的にかつ着脱可能に接続されている。
【0038】
磁石ユニット15は、横置き円盤状の磁石20と、磁石20を保持する保持具21と、これら磁石20および保持具21を収容するケース22とを備える。これら磁石20、保持具21およびケース22は、上下方向に延びる垂直基準軸C1に同軸に配置されている。
【0039】
保持具21は、下端が開放され上端が閉止された円筒状の保持容器23と、保持容器23の上面中心位置に設けられ上方に向かって延びる延長軸部24と、延長軸部24の先端部(上端部)に設けられた雄ネジ軸25とを有する。保持容器23は、磁石20に上方から嵌合され、接着剤等により磁石20に固定される。保持具21は金属製とされているが、他の材料で形成されてもよい。
【0040】
ケース22は、上端が開放され下端が閉止された円筒状の容器とされ、検査対象物の表面に当たってもそれを傷付けないよう、比較的柔らかい素材、本実施形態ではプラスチックにより形成されている。ケース22は、保持容器23および磁石20に下方から嵌合されてそれらを覆う。ケース22は平坦な下端面22Aを有する。ケース22の内周面に設けられたリング溝にスナップリング26が装着され、ケース22が保持容器23および磁石20に着脱可能に取り付けられる。このケース22により、硬い磁石20が検査対象物の表面に接触して表面を傷付けるのを防止できる。
【0041】
エアシリンダ19は、両端が閉止された円筒状のシリンダボディ30と、シリンダボディ30内に往復動可能に配置されたピストン31と、ピストン31に一端が接続され他端がシリンダボディ30から突出されたピストンロッド32とを有する。このエアシリンダ19は、シリンダボディ30から突出されたピストンロッド32の突出部(ロッド突出部という)33を下向きにした状態で、下向きに配置される。エアシリンダ19は、垂直基準軸C1と同軸に配置される。
【0042】
磁石ユニット15は、ロッド突出部33の下端部に同軸かつ着脱可能に接続される。具体的には磁石ユニット15は、ピストンロッド32と同軸のネジによりピストンロッド32に接続される。
【0043】
より詳細には、ロッド突出部33の下端面に雌ネジ穴34が同軸に設けられる。この雌ネジ穴34に、磁石ユニット15の雄ネジ軸25が締め付けられることで、磁石ユニット15はピストンロッド32に同軸かつ着脱可能に、直接的に接続される。
【0044】
こうして磁石ユニット15がエアシリンダ19に取り付けられると、磁石ユニット15は、車体11の底面部35に設けられた円形のユニット穴36を最小隙間で通過してその下方に突出される。図示例の場合、磁石ユニット15は、小径の配管Pに合わせて車輪13よりも下方に突出されている。そして磁石ユニット15は、エアシリンダ19の作動状態に応じて昇降可能である。
【0045】
図6に示すように、ピストン31の外周面にはシリンダボディ30の内周面に摺接するOリング等のシールリング37が装着され、シリンダボディ30の内部空間はシールリング37により、ピストンロッド32側の空間すなわちロッド側室38と、その反対側の空間すなわち反ロッド側室39とに仕切られる。反ロッド側室39は図示しない開放ポートを通じて大気開放される一方、ロッド側室38にはエア配管40の一端が接続される。このエア配管40の他端は、前述のエア圧供給装置に接続される。従ってロッド側室38に、エア圧供給装置からの圧縮エアを選択的に供給することが可能である。
【0046】
図6は、エア圧供給装置の非作動時であって、ロッド側室38すなわちエアシリンダ19に圧縮エアが供給されてないときの状態を示す。このとき、ピストン31は基本的にフリーに昇降可能であるが、図示例では磁石ユニット15が配管Pに吸引されることにより、ピストン31が下方に引っ張られ、最も下方の下降位置に位置されている。そして磁石ユニット15も、ピストン31の下降位置に対応した下降位置に位置されている。
【0047】
他方、図7は、エア圧供給装置の作動時であって、ロッド側室38すなわちエアシリンダ19に圧縮エアが供給されたときの状態を示す。このとき、ロッド側室38に供給された圧縮エアによりピストン31が最も上方の上昇位置まで上昇され、これにより磁石ユニット15も、ピストン31の上昇位置に対応した上昇位置まで上昇される。そして磁石ユニット15は配管Pの内面5から強制的に離間させられる。
【0048】
図2図4に示すように、走行装置1は、前側の車輪13と後側の車輪13を連結するタイミングベルト100を備え、具体的には、右側の前後輪FR,RRを連結する右側タイミングベルトBRと、左側の前後輪FL,RLを連結する左側タイミングベルトBLとを備える。そして車輪13は、検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能となっている。車輪13およびタイミングベルト100は車体11の車幅方向外側に、外部に露出して設けられる。
【0049】
各車輪13の車幅方向内側の側面すなわち内側面に、タイミングプーリ41が着脱可能にかつ隣接して取り付けられる。そして右側の前後輪FR,RRに取り付けられたタイミングプーリ41間に、環状の右側タイミングベルトBRが巻き掛けられる。右側タイミングベルトBRはゴム製である。右車輪用モータMRから右前輪FRに加えられた駆動力が、右側タイミングベルトBRを通じて右後輪RRにも伝達される。これにより一つの右車輪用モータMRで、二つの右側車輪FR,RRを同時に駆動できる。
【0050】
同様の構造が左側にも採用される。すなわち、左側の前後輪FL,RLに取り付けられたタイミングプーリ41間に、環状の左側タイミングベルトBLが巻き掛けられる。左側タイミングベルトBLは右側タイミングベルトBRと同一品である。左車輪用モータMLから左後輪RLに加えられた駆動力が、左側タイミングベルトBLを通じて左前輪FLにも伝達される。これにより一つの左車輪用モータMLで二つの左側車輪FL,RLを同時に駆動できる。そして走行装置1は四輪駆動車として構成される。
【0051】
図8は、左前輪FLのタイミングプーリ41と左側タイミングベルトBLを示す拡大図である。タイミングプーリ41の外周面には複数の歯42が設けられ、これら歯42には、左側タイミングベルトBLの内周面に設けられた複数の内周歯43が係合されている。一方、左側タイミングベルトBLの外周面には複数の外周歯44も設けられている。つまり左側タイミングベルトBLは両面歯を有するベルトとされる。後に詳述するが、この外周歯44は左側タイミングベルトBLを用いて走行駆動を行う際に役立つ。他の車輪13のタイミングプーリ41と右側タイミングベルトBRも同様に構成される。
【0052】
図9は、前車軸Cfの位置における縦断正面図であり、左右の前輪付近の構造を示す。まず右側について、車体11の内部に固定された右車輪用モータMRの回転軸45に、タイミングプーリ41が着脱可能にかつ同軸に固定される。そしてこのタイミングプーリ41に右前輪FRが着脱可能にかつ同軸に固定される。タイミングプーリ41は樹脂製であり、その外側面に形成された円形の突起46に右前輪FRが嵌合されて右前輪FRが同軸に位置決めされる。右前輪FRは他の車輪13と共通である。右前輪FRには軸方向に貫通するボルト穴47が周方向等間隔で複数(本実施形態では4つ)設けられる。そしてこれらボルト穴47に符合する複数の雌ネジ穴49がタイミングプーリ41に軸方向に貫通して設けられる。例えば六角穴付きボルトからなるボルト48が、ボルト穴47に車幅方向外側から挿入され、雌ネジ穴49に締め付けられることで、右前輪FRはタイミングプーリ41に着脱可能かつ同軸に固定される。ボルト穴47の車幅方向外側の端部50は、ボルト48の頭部51を完全に収容するように拡径されている。
【0053】
他方、左側については、車体11に固定された軸受ボス52に、軸受としてのボールベアリング53を介してタイミングプーリ41が着脱可能、同軸かつ回転可能に取り付けられている。なおタイミングプーリ41は適宜な手段により軸受ボス52に対し抜け止めされる。そしてこのタイミングプーリ41に左前輪FLが右側同様の方法で着脱可能かつ同軸に固定される。
【0054】
右前輪FRが右車輪用モータMRにより直接駆動される駆動輪であるのに対し、左前輪FLは、左側タイミングベルトBLを通じて伝達された左車輪用モータMLの駆動力により間接的に駆動される従動輪とされる。
【0055】
タイミングプーリ41の外径(歯42の外径をいう)Dpは、車輪13の外径Dwより若干小さい所定の外径とされ、また、タイミングプーリ41に巻き付けられたタイミングベルトBR,BLが車輪13の半径方向外側にはみ出さないような外径とされる。
【0056】
左右逆となるが、後輪側でも図9に示したのと同様の構造が採用される。
【0057】
本実施形態ではサスペンションを省略し、車体11に対する一定位置で車輪13を回転させる構造としているが、代替的にサスペンションを設けてもよい。
【0058】
図2に示すように、タイミングベルト100は、前後のタイミングプーリ41の上端同士を連絡する上側部分54と、下端同士を連絡する下側部分55とを有する。そして車体11の左右の側面部には、上側部分54を押し上げてタイミングベルト100に張力を付加するテンショナー56が設けられる。テンショナー56は、車体11に固定された前後一対のボルト57と、ボルト57に取り付けられたナット58とにより、上下位置調節可能に車体11に固定される。
【0059】
また図3にも示すように、車体11の底面部35には、タイミングベルト100の下側部分55を上方から支持する支持部材60が設けられる。具体的には、右側タイミングベルトBRの下側部分55を上方から支持する右側支持部材SRと、左側タイミングベルトBLの下側部分55を上方から支持する左側支持部材SLとが設けられる。
【0060】
これら右側支持部材SRと左側支持部材SLは、共通の支持板61に一体に設けられ、板状の部材とされている。支持板61は、前述のユニット穴36の周囲に位置されるリング部62を有し、リング部62は複数のネジ63によって底面部35に固定されている。このリング部62の右端部および左端部から突出して、右側支持部材SRおよび左側支持部材SLが一体に設けられている。右側支持部材SRおよび左側支持部材SLは、前輪後端と後輪前端の間の距離に略等しい前後長Lを有し、かつ、下側部分55の車幅方向外側の端縁と略同一位置にて前後方向に直線状に延びる外側端縁64を有する。
【0061】
以上の他、走行装置1には、図2に示すように、前方を照らす左右一対のフロントライト65と、後方を照らす左右一対のバックライト66と、走行装置1に電力と制御信号を送るための電気ケーブル67とが設けられる。
【0062】
ところで、本実施形態の走行装置1では、磁石ユニット15が、検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能となっている。また車輪13も検査対象物に応じて異なるサイズのものに交換可能となっている。以下、これらの点について説明する。
【0063】
本実施形態の場合、内径dが異なる3種類の配管Pが検査対象物として用いられる。そしてこれら配管Pに対応して、異なるサイズの3種類の磁石ユニット15と、2種類の車輪13とが用意されている。なおこれら種類の数は任意に増減可能であり、本実施形態ではそのうちの一例を述べるに過ぎない。
【0064】
図5に示した配管Pは、内径dが最も小さい配管である(d=d1)。これに対し、図10に示す配管Pはより大きい中間径の内径dを有し(d=d2>d1)、図11に示す配管Pはさらに大きい最大の内径dを有する(d=d3>d2)。以下、図5の配管Pを最小径配管P01、図10の配管Pを中間径配管P02、図11の配管Pを最大径配管P03と称す。
【0065】
図2図9を用いて説明した前述の走行装置1の磁石ユニット15は、最小径配管P01に適合され、底面部35から下方への突出量Zが最も大きいZ1となるようなサイズとされている。この磁石ユニット15を符号U1で表す。なお突出量Zは、図6に示すように、圧縮エアの非供給時で磁石ユニット15が下降位置に位置されているときの突出量として定義される。
【0066】
これに対し図10に示すように、中間径配管P02に適合された磁石ユニット15(符号U2で表す)は、底面部35からの突出量Zが中間の大きさZ2となるようなサイズとされている。さらに図11に示すように、最大径配管P03に適合された磁石ユニット15(符号U3で表す)は、底面部35からの突出量Zが最も小さい大きさZ3となるようなサイズとされている。
【0067】
図6図12および図13には、それぞれ、最小径配管P01、中間径配管P02および最大径配管P03に適合された磁石ユニットU1,U2,U3を示す。これら図から理解されるように、各磁石ユニットU1,U2,U3においては、磁石20、保持具21およびケース22の少なくとも一つの寸法が異なる。
【0068】
図6および図12を参照して磁石ユニットU1,U2を比較すると、磁石20は同一サイズであり、すなわち、磁石20の上下方向の厚さtは同一である。但し保持具21の形状と高さ寸法が異なり、磁石ユニットU2では延長軸部24が省略され、保持容器23に雄ネジ軸25が直接設けられている。この結果、ロッド突出部33の下端面に当接する保持具21の位置から磁石ユニットU2の下端面(すなわちケース22の下端面22A)までの上下方向の高さ寸法Hは、磁石ユニットU1の場合より小さくなり、その結果、突出量Zは磁石ユニットU1の場合より減少される。また、この保持具21の高さ寸法の減少に合わせて、ケース22の高さ寸法hも減少される。
【0069】
なお、垂直基準軸C1を基準とした磁石20の外径D、保持容器23の内外径、およびケース22の内外径は、全ユニットで同一である。またケース22の肉厚も全ユニットで同一である。従って磁石ユニットの突出量は、代替的に、前記突出量Zからケース22の肉厚を減じて得られる上下方向の距離、すなわち、車体底面部35から磁石20の下端までの上下方向の距離として定義してもよい。
【0070】
次に、図12および図13を参照して磁石ユニットU2,U3を比較すると、磁石ユニットU3の磁石20は、磁石ユニットU2の磁石20よりも厚さtが小さくされ、薄肉化される。この磁石20の薄肉化に合わせて、磁石ユニットU3の保持具21の保持容器23の高さ寸法と、ケース22の高さ寸法hも、磁石ユニットU2より小さくされる。磁石ユニットU3の保持具21においても、磁石ユニットU2と同様、延長軸部24が省略され、保持容器23に雄ネジ軸25が直接設けられている。
【0071】
この結果、ロッド突出部33の下端面に当接する保持具21の位置から磁石ユニットU3の下端面までの上下方向の高さ寸法Hは、磁石ユニットU2の場合より小さくなり、その結果、突出量Zは磁石ユニットU2の場合より減少される。
【0072】
次に、車輪13のサイズ違いについて説明する。図5図10および図11を見比べると分かるように、最小径配管P01と中間径配管P02の場合は、外径Dwが同一の大きさDw1の車輪13が用いられる。しかしながら最大径配管P03の場合だと、より大きい外径Dw2の車輪13が用いられる。
【0073】
次に、本実施形態の作動を説明する。
【0074】
図1に示すように、配管Pの内面5の目視試験を行う際、走行装置1が配管P内に挿入される。そして作業者Sは、コントローラ4を操作して走行装置1を操縦し、走行装置1を配管Pの長手方向に沿って図中左側の終点側へと走行させる。これと同時に作業者Sは、ディスプレイ3に表示された画像を見て内面5の状態を目視で検査する。
【0075】
図2および図3に示すように、走行装置1においては、右側車輪FR,RRおよび左側車輪FL,RLを右車輪用モータMRおよび左車輪用モータMLでそれぞれ個別に駆動可能である。そして右側車輪FR,RRおよび左側車輪FL,RLの回転速度を個別に制御することで、走行装置1を前進、後退、直進、右旋回および左旋回させることができる。
【0076】
例えば、走行装置1を前進かつ直進させるときには右側車輪FR,RRと左側車輪FL,RLを同速で正転駆動する。また、走行装置1を前進かつ右旋回させるときには左側車輪FL,RLを右側車輪FR,RRより高速で正転駆動する。
【0077】
本実施形態ではコントローラ4として、右車輪用モータMRおよび左車輪用モータMLを個別に制御する2本のスティックを備えたスティック式コントローラが使用される。しかしながらこれに限らず、例えばガングリップとステアリングホイールを備えたホイラー式コントローラを使用してもよい。
【0078】
図5に示すように、配管Pが最小径配管P01の場合、これに適合した突出量Zが最大(Z1)の磁石ユニット15(U1)と、小径(Dw1)の車輪13とが走行装置1に装着される。また走行時、フロントライト65とバックライト66が点灯され、暗い配管P内でも鮮明な画像をディスプレイ3に映し出せるようになっている。
【0079】
走行装置1への圧縮エア供給は行われていないため、磁石ユニット15は図6に示したように、配管内面5に最も接近する下降位置に位置される。そして磁石ユニット15は、これに対向する配管内面5を吸引し、その反力で走行装置1を配管内面5に押し付け、吸着させる。
【0080】
磁石ユニット15のサイズ(磁石20の大きさ等)および突出量Zが最小径配管P01に適合されているため、磁石ユニット15(より具体的には磁石20)と配管内面5の間の間隔は最適な大きさとなる。従って、走行装置1を配管内面5に押し付ける吸着力(もしくはダウンフォース)を最適な大きさとすることができる。吸着力不足により車輪13のスリップや走行装置1の脱落(例えば直管P3の上昇時)が生じたり、吸着力過剰により走行抵抗(もしくはドラッグ)増加や走行不能が生じたりするのを抑制できる。
【0081】
なお、被検査面である配管内面5は、車幅方向において垂直基準軸C1に近づくほど磁石ユニット15から離れる断面円弧状の凹面とされる。よって磁石ユニット15と配管内面5の間の間隔は車幅方向の位置に応じて変化するが、例えば代表して、垂直基準軸C1の位置の間隔を当該間隔とすることができる。
【0082】
図5に示すように、最小径配管P01の内径d1は走行装置1がぎりぎり入る程の大きさである。よって車輪13の基準接地面16が配管内面5に接地しづらいが、その代わりに外側のテーパ接地面17を十分に接地できるので、必要なトラクションを確実に得ることができる。
【0083】
図1に示すように、走行装置1は基本的に、配管内面5に吸着しながら4つの車輪13を全て接地させ、全輪で推進力を得て前進走行を行う。そして直管P1の内底面に沿って走行した後、エルボP2の外側コーナー部に沿って走行し、次いで直管P3に沿って上向きに走行する。その後、エルボP4の内側コーナー部に沿って走行し、次いで直管P5内を終点側に向かって走行する。
【0084】
このとき特に、エルボP4の内側コーナー部を走行する際(図中仮想線で示す)、曲がりがきついため、4輪全てを接地させるのが困難な場合がある。しかし本実施形態ではこうした場合でも、タイミングベルト100を接地させることにより推進力を得て確実に走行を継続することが可能である。
【0085】
しかも本実施形態では、タイミングベルト100の下側部分55を上方から支持する支持部材60を設けたので、タイミングベルト100の接地時における撓みを抑制し、タイミングベルト100による推進力を確実に得ることが可能である。
【0086】
図14は、仮に支持部材60が無いとした場合の比較例に係る走行装置がエルボP4の内側コーナー部を走行する場合を示す。また図15は、支持部材60がある本実施形態の走行装置1がエルボP4の内側コーナー部を走行する場合を示す。
【0087】
両図において、線aは、車幅方向における車輪13の位置の配管内面5を示す。また線bは、車幅方向における垂直基準軸C1の位置の配管内面5を示す。O4は、エルボP4の曲がりの中心である。線aおよび線bはO4を中心とした円弧で表される。配管内面5が凹面であるので、線bは線aより半径方向内側に位置される。
【0088】
図14に示す比較例では、前後の車輪13(左側の前輪FLおよび後輪RLのみ示す)が線aに接している。そしてタイミングベルト100(左側タイミングベルトBLのみ示す)の下側部分55が線aに接触し、かつ線aに沿って撓んでいる。従ってこれらの点だけに限って言えば、前後の車輪13だけでなく、タイミングベルト100も用いて、配管内面5を蹴り、前向きの推進力を得ることができる。
【0089】
しかしながらこれだと、磁石ユニット15が線bより半径方向内側に食い込んでしまう。これはすなわち、磁石ユニット15が配管内面5に接触し、完全に吸着してしまい、走行装置を前進させられないことを意味する。そして図のような状態はあり得ず、前後の両輪が接地する前に磁石ユニット15が接地してしまうので、前後の両輪の一方または両方は路面から浮いてしまう。
【0090】
このように比較例では、タイミングベルト100の下側部分55が線aに沿って自由に撓んでしまうので、磁石ユニット15が配管内面5に当たって所謂亀の子状態となり、走行不能となってしまう。
【0091】
これに対し、図15に示す本実施形態の場合だとこうした事態を防止もしくは抑制できる。すなわち、タイミングベルト100の下側部分55が線aに当たって撓もうとしても、支持部材60(左側支持部材SLのみ示す)がその撓みを防止もしくは抑制する。従ってタイミングベルト100の下側部分55は略直線状に維持される。この結果、前側の車輪13とタイミングベルト100の下側部分55とが線aに接し、後側の車輪13は線aから浮いた状態となる。このように走行装置1を後上がりの姿勢とする結果、磁石ユニット15が線bより半径方向内側に食い込むのを防止すると共に、磁石ユニット15を線bより半径方向外側に離間させ、磁石ユニット15が配管内面5に完全に吸着するのを防止できる。そのため、前側の車輪13とタイミングベルト100の下側部分55とにより路面を蹴り、走行装置1を前方に向かって確実に推進させることができる。
【0092】
しかも、タイミングベルト100は外周歯44を有するため、タイミングベルト100のギザギザの外周面を路面に接触させ、外周歯44により路面を積極的に蹴って、推進力を増すことができる。
【0093】
また、路面上に突起(段差等を含む)がある場合でも、その突起にタイミングベルト100の下側部分55を載せ、かつその撓みを支持部材60で防止することで、突起への磁石ユニット15の完全吸着を抑制ないし防止し、突起の通過を容易にすることができる。
【0094】
また、仮に磁石ユニット15が路面に接触して完全吸着し、走行不能に陥ってしまった場合でも、エアシリンダ19を作動させることにより磁石ユニット15を路面から離間させ、走行装置1を路面から強制的に引き剥がすことができる。
【0095】
すなわち、図7に示すように、エア圧供給装置を作動させると、エアシリンダ19のロッド側室38に圧縮エアが供給され、ピストン31が上昇位置まで上昇される。そしてこれにより磁石ユニット15も上昇位置まで上昇され、磁石ユニット15が強制的に配管内面5から離間されると共に車体11側に引き込まれる。すると、走行装置1の路面への吸着力が著しく低減するので、走行装置1を路面から容易に引き剥がすことができる。このように、走行装置1が不意に走行不能に陥った場合でも、走行装置1を即座かつ容易に回収することができる。
【0096】
ところで本実施形態では、検査対象の配管Pの種類が変わった場合、走行装置1の吸着力を最適に維持するため、磁石ユニット15が交換され、また必要に応じて車輪13も交換される。
【0097】
例えば、配管Pが最小径配管P01から図10に示すような中間径配管P02に変更された場合、磁石ユニット15も最小径配管用磁石ユニットU1から中間径配管用磁石ユニットU2に交換される。このとき、車体底面部35から突出した磁石ユニットU1のケース22の部分を把持し、雄ネジ軸25を緩める方向に磁石ユニットU1を回転させるだけで、磁石ユニットU1を容易に取り外すことができる。またその後、磁石ユニットU2のケース22の部分を把持し、雄ネジ軸25を雌ネジ穴34に締め付けるよう磁石ユニットU2を回転させるだけで、磁石ユニットU2を容易に取り付けることができる。
【0098】
このように、ピストンロッド32と同軸のネジ25,34により磁石ユニット15をピストンロッド32に接続するので、磁石ユニット15の交換作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0099】
磁石ユニットU2を取り付ける際、雄ネジ軸25の周りに一乃至複数枚のワッシャを嵌合させてから雄ネジ軸25を雌ネジ穴34に締め付け、保持具21とピストンロッド32の間にワッシャを介在させてもよい。こうすると、磁石ユニットU2の突出量Z、磁石ユニットU2と配管内面5の間隔、さらには走行装置1の吸着力を微調節することができる。
【0100】
同様に、配管Pが最小径配管P01から図11に示すような最大径配管P03に変更された場合にも、磁石ユニット15が最小径配管用磁石ユニットU1から最大径配管用磁石ユニットU3に交換される。このときにも、前記同様に非常に簡単に磁石ユニット15を交換することができる。
【0101】
またこのときには、車輪13も、小径(Dw1)の車輪13から大径(Dw2)の車輪13に交換される。この際、図9に示すように、小径車輪13を固定しているボルト48が取り外され、小径車輪13がタイミングプーリ41から取り外される。その後、ボルト48を用いて大径車輪13がタイミングプーリ41に取り付けられる。このように車輪13の交換作業も非常に容易である。
【0102】
なお、車輪13の取付方法は上記に限られない。例えば車輪交換作業をより迅速に行うため、センターロック式等を採用してもよい。
【0103】
このように、本実施形態の走行装置1では、配管Pの種類に応じて磁石ユニット15を異なるサイズのものに交換できるので、検査対象の配管Pが変更され、その形状が変わっても、図5図10および図11に示すように、磁石ユニット15と配管内面5の間の間隔を最適な大きさに保ち、路面に対する走行装置1の吸着力を最適な大きさに維持することができる。
【0104】
また本実施形態の走行装置1では、配管Pの種類に応じて車輪13も異なるサイズのものに交換できるので、磁石ユニット15の交換と相俟って、磁石ユニット15と配管内面5の間の間隔を最適な大きさに保つことができる。そして走行装置1の吸着力を最適な大きさに維持することができる。
【0105】
ちなみに本実施形態では、図5図10および図11に示すように、配管Pの内径dが大きくなるほど、左右の車輪13間の配管内面5すなわち凹面の曲がりが緩くなり、凹面は磁石ユニット15に近づく傾向がある。従ってこの傾向に合わせ、配管Pの内径dが大きくなるほど、磁石ユニット15の突出量Zは小さくされる。
【0106】
また、図11に示すような最大径配管P03で小径車輪13を使用すると、たとえ最大径配管用磁石ユニットU3を使用したとしても、磁石ユニットU3が凹面に近づきすぎる虞がある。従って磁石ユニットU3を凹面から遠ざけるべく、大径車輪13が使用される。このように配管Pの内径dが大きくなるほど、車輪13の外径Dwは大きくなる傾向がある。
【0107】
図示しないが、走行装置1は配管Pの外面6(図1参照)の検査に使用されてもよい。この場合、左右の車輪13間の配管外面6の形状は前記と逆の凸面となり、傾向は前記と逆となる。配管Pの外径が大きくなるほど磁石ユニット15の突出量Zは大きくなり、車輪13の外径Dwは小さくなる傾向がある。
【0108】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0109】
(1)例えば、磁石ユニット15をリンク機構等を介してエアシリンダ19に間接的に接続してもよい。こうするとエアシリンダ19のレイアウト自由度を高めることができる。
【0110】
(2)磁石ユニット15とピストンロッド32を接続するネジは逆の関係でもよく、例えば磁石ユニット15に雌ネジを設け、ピストンロッド32に雄ネジを設けてもよい。
【0111】
(3)磁石ユニット15とピストンロッド32はネジ接続以外の方法で接続されてもよい。例えば、一方に設けられた軸を、他方に設けられた穴にスライド挿入し、ストッパネジにより軸を穴内に固定してもよい。
【0112】
(4)可能であれば、右側前後輪FR,RRのみをタイミングベルト100で連結してもよく、あるいは左側前後輪FL,RLのみをタイミングベルト100で連結してもよい。支持部材60も、タイミングベルト100がある方の一方側のみに設けることができる。また、前述した左右の前後輪以外に別の前後輪を設け、この別の前後輪をタイミングベルトで連結してもよい。そしてこのタイミングベルトに対応した支持部材を設けてもよい。
【0113】
(5)前記実施形態ではタイミングベルト100の内周歯43と外周歯44の歯数を等しくしたが、これに限らず、例えば外周歯44の歯数を内周歯43の歯数より少なくしてもよい。
【0114】
(6)ところで本開示によれば、磁石ユニット15が交換可能である点を必須の構成要素としない走行装置も把握可能である。従って本開示の他の態様によれば、例えば、次の走行装置が提供される。
【0115】
(i)検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、車体と、前記車体に搭載された検査ユニットと、前記車体に回転可能に設けられた車輪と、前記車輪を駆動するモータと、前記検査対象物との間に間隔を隔てて前記車体の底面部に配置され、磁石を含む磁石ユニットと、前記車体に固定されると共に前記磁石ユニットが接続され、圧力流体の供給時に前記磁石ユニットを上昇させて前記検査対象物から離間させる流体圧シリンダと、を備えることを特徴とする走行装置。
【0116】
(ii)検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、車体と、前記車体に搭載された検査ユニットと、前記車体に回転可能に設けられた車輪と、前記車輪を駆動するモータと、前記検査対象物との間に間隔を隔てて前記車体の底面部に配置され、磁石を含む磁石ユニットとを備え、前記車輪は、その外側面部にテーパ状の接地面を有することを特徴とする走行装置。
【0117】
(iii)検査対象物の非破壊検査のために前記検査対象物の表面上を走行する走行装置であって、車体と、前記車体に搭載された検査ユニットと、前記車体に回転可能に設けられた車輪と、前記車輪を駆動するモータと、前記検査対象物との間に間隔を隔てて前記車体の底面部に配置され、磁石を含む磁石ユニットと、を備え、前記車輪は、前記車体の前後に設けられ、前記走行装置は、前側の車輪と後側の車輪を連結するタイミングベルトを備えることを特徴とする走行装置。
【0118】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 走行装置
5 内面
6 外面
11 車体
12 検査ユニット
13 車輪
14 モータ
15 磁石ユニット
17 テーパ接地面
20 磁石
25 雄ネジ軸
30 シリンダボディ
32 ピストンロッド
34 雌ネジ穴
35 底面部
43 内周歯
44 外周歯
60 支持部材
100 タイミングベルト
P 配管
BR 右側タイミングベルト
BL 左側タイミングベルト
SR 右側支持部材
SL 左側支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15