(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】モールド金型、樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法並びに搬送具
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20230713BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20230713BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20230713BHJP
B29C 45/37 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C33/14
B29C45/02
B29C45/37
(21)【出願番号】P 2018077760
(22)【出願日】2018-04-13
【審査請求日】2021-01-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 英雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿
【合議体】
【審判長】瀧内 健夫
【審判官】河本 充雄
【審判官】小田 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159743(WO,A1)
【文献】特開2012-16883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56
B29C33/00
B29C39/00
B29C43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドするモールド金型であって、
前記ワークを支持する上型と、
下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれて形成された凹部にモールド樹脂が収容される下型と、を備え、
前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒を前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とするモールド金型。
【請求項2】
前記下型を構成する前記クランパと前記チップ押さえ駒が同じ高さに支持されている請求項1記載のモールド金型。
【請求項3】
前記チップ押さえ駒と前記クランパに囲まれたキャビティエリアに配置された前記加圧駒は、型閉じ状態において前記ワークに対してアンダーフィルモールドを行う隙間を形成する高さ位置へ相対移動する請求項2記載のモールド金型。
【請求項4】
前記凹部はワークエリアのチップ搭載面以外のキャビティエリア内に複数設けられている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のモールド金型。
【請求項5】
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドするモールド金型であって、
チップ搭載面を上向きにして前記基板を吸着保持する下型と、
上型ベースに対して第一弾性部材により吊り下げ支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間して吊り下げ支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板に支持された貫通孔を有するポットブロックと、前記上型ベースに支持され前記貫通孔内に挿入されたプランジャと、前記ポットブロックの外周側で前記上型ベースに前記第一弾性部材により吊り下げ支持され前記ワークをクランプするクランパと、を有し、前記ワーク上に供給されたモールド樹脂が対向する前記ポットブロックの前記貫通孔内に収容される上型と、を備え、
前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒により前記チップを押さえたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し上げてポットの容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記プランジャの相対位置が変位して前記ポットブロックに収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とするモールド金型。
【請求項6】
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドする樹脂モールド装置であって、
チップ搭載面を下向きにして前記基板を吸着保持する上型と、
下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれて形成された凹部にモールド樹脂が収容される下型と、
搬送具本体に前記凹部に対応して樹脂投入用の貫通孔が穿孔され、前記搬送具本体の下面にフィルムを保持し前記貫通孔の下端開口が塞がれた樹脂収容部を有する搬送具と、を備え、
前記搬送具に保持されたフィルム上にモールド樹脂が収容されたまま下型クランプ面と重ね合わせて前記チップ押さえ駒及び前
記クランパに前記フィルムを受け渡すと共に前記凹部に前記モールド樹脂が供給され、前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒を前記フィルムを介して前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とする樹脂モールド装置。
【請求項7】
搬送具本体にチップ搭載エリア外に樹脂投入用の貫通孔が穿孔され、前記搬送具本体の一面にフィルムを保持し前記貫通孔の下端開口が塞がれた樹脂収容部を有する搬送具を用意する工程と、
前記樹脂収容部にモールド樹脂を収容した前記搬送具を
上型と下型が型開きしたモールド金型の
前記下型に搬入する工程と、
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを前記モールド金型の上型クランプ面にチップ搭載面を下向きにして前記基板を吸着保持させる工程と、
下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれてモールド樹脂を収容する凹部が形成された下型クランプ面に、前記搬送具を前記樹脂収容部と前記凹部を位置合わせし、前記フィルムを前記チップ押さえ駒及び
前記クランパに挟み込まれるように重ね合わせる工程と、
前記搬送具本体のフィルム保持を解除し前記チップ押さえ駒及び前
記クランパによる前記フィルムの吸着を開始することで当該フィルムを
前記下型
クランプ面に受け渡し、前記樹脂収容部を前記凹部に投下する工程と、
前記搬送具を除去して前記上型と前記下型を型閉じして
前記モールド金型内に減圧空間を形成する工程と、
型閉じ動作を進行させて前記チップ押さえ駒を、前記フィルムを介して前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記フィルムを介して前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記ワークに押し当てられたまま型閉じ動作を更に進行させて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填する工程と、を含むことを特徴とする樹脂モールド方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板上に複数のチップが搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドするモールド金型、樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法並びにこれらの装置及び方法に用いられる搬送具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年AI技術の普及にともなって、TSV配線されたシリコン基板上にGPU(Graphics Processing Unit)のようなプロセッサユニットやその周囲にHBM(High Bandwidth Memory)を近接して配置し、チップ間を高密度配線で接続するSIP(System In Package)構造製品や同様な構成のFPGA(Field-Programmable Gate Array)に関する製品が開発されている。例えば、GPUやFPGAやHBMなどの半導体チップは、φ300mmのインターポーザとしてのウエハ上に多数搭載されており、これらの高さが異なる半導体チップを、回路の保護や外部の周辺回路との接続を容易にするために、パッケージモールドして提供したいというニーズがある。
【0003】
この場合、GPUは、例えば20×30mmのように実装面積が大きく極めて多数の素子が含まれ、HBMは多層に積層されていることで極めて多数の記憶素子が配置されており、これらが高周波信号で動作するため各々大量の発熱が発生する。このため、樹脂モールドにあたっては、各半導体チップの表面を露出させて熱放散性を確保した状態で樹脂モールドする必要がある。また、各半導体チップの高さが異なることから機械的なストレスに弱く歪みやすいという課題もある。
【0004】
このため、GPUやHBMなどの半導体チップが多数搭載されたワークを樹脂モールドする場合、半導体チップの高発熱を解消させるためにチップ表面を一旦モールド樹脂で覆った後、チップ表面の樹脂を切削等(化学的に除去する場合も含む)で削ってチップ表面を露出させたり、個片化の後、放熱板を取り付けたりすることが行われている。
また、下型キャビティが形成された圧縮成形用金型を用いて圧縮成形する方法がある(特許文献1:特開2017-87453号公報;
図16,
図17参照)。
また、アンダーフィルモールドを行う装置として半導体チップ(以下単に「チップ」という)用のクランプ用駒と樹脂加圧用の加圧用駒を併用して下型キャビティ内に供給されたモールド樹脂を圧縮成形する方法も提案されている。(特許文献2:WO2015/159743号公報;
図1乃至
図6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-87453号公報
【文献】WO2015/159743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チップ表面を一旦モールド樹脂で覆った後、チップ表面を切削等(化学的に除去する場合も含む)で露出させる場合、モールド樹脂に混入したフィラーなどによりチップとモールド樹脂の境が破損するおそれがある。また、切削時のチップ欠けや応力による反りが発生し易くなっていた。近年のようにより薄い製品が望まれてきている為、この製造方法による不具合がより注目されるようになってきた。
また、チップを露出させて樹脂成形する例として、上記特許文献1のように、チップをバネによりクランプした後で下型のキャビティ外よりモールド樹脂が溶融され、キャビティ内に送られ、加圧するため、ワーク端を樹脂が跨ぐことによるワーク側面に樹脂バリが発生する。また、キャビティ外に不要樹脂が残る為、成形後当該不要樹脂を取り除かなければならない。また、チップの高さが異なる場合に追従できていないため、チップ上に樹脂フラッシュが発生していた。
また、特許文献2のように下型キャビティ内でチップの周囲にモールド樹脂を配置して加圧駒で加圧する場合、チップ同士を極めて近接して配置するため、加圧駒の設置スペースが確保できない場合もあり、かつフィルムを下型キャビティ内に多数存在する凹凸面に追従して吸着保持できるか否かは不透明である。仮にフィルムの伸びが大きくなる場合には、破損するおそれもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に述べるいくつかの実施形態に適用される開示は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、チップ表面を確実に露出させて樹脂モールドすることができるモールド金型、樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法並びにこれらの装置及び方法に最適な搬送具を提供することにある。
【0008】
以下に述べるいくつかの実施形態に関する開示は、少なくとも次の構成を備える。即ち、基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドするモールド金型であって、前記ワークを支持する上型と、下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれて形成された凹部にモールド樹脂が収容される下型と、を備え、前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒を前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とする。
【0009】
このように、第一金型と第二金型を型閉じしながらチップ押さえ駒をチップに押し当てたまま凹部の容積を相対的に縮小させ、当該凹部に収容されたモールド樹脂をチップの隙間に加圧しながら充填することで、チップの表面を露出させてチップ間の隙間やチップと基板との隙間にモールド樹脂を充填することができる。
このとき、チップ押さえ駒により個々のチップを押さえながら弾性部材によって過度のクランプ圧を逃がしながらモールド樹脂に樹脂圧を加えながら充填するので、チップに過度の機械的ストレスをかけずにチップ表面への樹脂の浸入を防いで、かつチップ周囲の隙間、スタックされたチップ間及びチップと基板との隙間にモールド樹脂を加圧充填することができる。
特に、チップの高さのばらつきを、チップ押さえ駒を付勢する第二弾性部材で吸収し、型閉じに伴いワークに作用する機械的なストレスを第一弾性部材及び第二弾性部材により吸収するので、チップに過度の機械的なストレスが作用することは無くなる。
【0010】
前記下型を構成する前記クランパと前記チップ押さえ駒が同じ高さに支持されていてもよい。
このように、チップ押さえ駒とクランパは同じ高さに支持されこれらに囲まれて凹部が形成されているため、モールド樹脂をこぼすこと無く凹部に確実に受け渡される。また、クランパ及びチップ押さえ駒が同じ高さに支持された状態からこれらに囲まれた加圧駒が、チップ押さえ駒によりチップ表面を押さえながら、型閉じ動作により凹部容積を縮小するように相対的に移動させてチップの隙間にモールド樹脂を加圧充填することができる。よって、チップに作用する機械的ストレスが少なくチップ表面を露出させて樹脂モールドすることができる。
【0011】
前記キャビティエリアに配置された前記加圧駒は、型閉じ状態において前記ワークに対してアンダーフィルモールドを行う隙間を形成する高さ位置へ相対移動するようにしてもよい。
これにより、型閉じ状態において加圧駒はワークに対してアンダーフィルモールドを行う隙間を形成する高さ位置に相対移動させたままアンダーフィルモールドを優先して行うことができる。
【0013】
前記凹部はワークエリアのチップ搭載面以外のキャビティエリア内に複数設けられていてもよい。
これにより、ワークの形態(円形状、矩形状等)、更には基板上に搭載されるチップのレイアウトに応じて、チップ搭載面以外の領域にモールド樹脂を供給してチップの隙間に加圧充填することができる。
【0014】
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドするモールド金型であって、チップ搭載面を上向きにして前記基板を吸着保持する下型と、上型ベースに対して第一弾性部材により吊り下げ支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間して吊り下げ支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板に支持された貫通孔を有するポットブロックと、前記上型ベースに支持され前記貫通孔内に挿入されたプランジャと、前記ポットブロックの外周側で前記上型ベースに前記第一弾性部材により吊り下げ支持され前記ワークをクランプするクランパと、を有し、前記ワーク上に供給されたモールド樹脂が対向する前記ポットブロックの前記貫通孔内に収容される上型と、を備え、前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒により前記チップを押さえたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し上げてポットの容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記プランジャの相対位置が変位して前記ポットブロックに収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とする。
これにより、下型クランプ面に対してモールド樹脂とワークの受け渡しを同時に搬入して効率よく受け渡すことができる。また、上型と下型を型閉じしながら下型クランプ面に保持されたワークに搭載された高さの異なるチップを上型に設けたチップ押さえ駒により押さえた状態で凹部の容積を相対的に縮小させ、当該凹部に収容されたモールド樹脂をチップの隙間に加圧しながら充填するので、チップ表面を一様に押さえたまま露出成形することができる。
特に、チップを押さえるチップ押さえ駒の押圧力のばらつきを第二弾性部材で吸収し、型閉じする際にワークに作用する機械的なストレスを第一弾性部材及び第二弾性部材により吸収するので、チップに過度の機械的なストレスが作用することは無くなる。
【0016】
基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを、各チップ表面を露出させて樹脂モールドする樹脂モールド装置であって、チップ搭載面を下向きにして前記基板を吸着保持する上型と、下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれて形成された凹部にモールド樹脂が収容される下型と、搬送具本体に前記凹部に対応して樹脂投入用の貫通孔が穿孔され、前記搬送具本体の下面にフィルムを保持し前記貫通孔の下端開口が塞がれた樹脂収容部を有する搬送具と、を備え、前記搬送具に保持されたフィルム上にモールド樹脂が収容されたまま下型クランプ面と重ね合わせて前記チップ押さえ駒及び前記クランパに前記フィルムを受け渡すと共に前記凹部に前記モールド樹脂が供給され、前記上型と前記下型を型閉じしながら前記チップ押さえ駒を前記フィルムを介して前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填することを特徴とする。
【0017】
これにより、下型クランプ面にワークが保持され基板上にモールド樹脂が供された下型と、上型クランプ面にフィルムが吸着保持されたまま上型とを型閉じし、ワークに搭載されたチップをチップ押さえ駒によりフィルムを介して押さえた状態で凹部の容積を相対的に縮小させ、当該凹部に収容されたモールド樹脂をチップの隙間に加圧しながら充填することができる。よって、チップ表面を一様に押さえたまま露出成形することができる。また、チップ表面をフィルムで覆うことで高さのばらつきを吸収すると共にモールド樹脂の浸入を防いでモールドすることができる。
更にはワークの形態に応じて最適なモールド金型を選択してチップ表面を露出させたまま樹脂モールドすることができる。例えば、GPUのようなプロセッサユニットやその周囲にHBMなどの高さが異なる半導体チップが近接して配置され、チップ間を高密度配線で接続するSIP(System In Package)構造のFPGA(Field-Programmable Gate Array)を高品質なパッケージ成形を実現することができる。
尚、フィルムは離型フィルム若しくは多孔質フィルムが用いられることが好ましい。また多孔質フィルムの場合には、モールド樹脂の浸入を許さずに空気を逃がすことができるので、減圧環境下でモールド樹脂に混入したエアや発生したガスを逃がすことで成形品質を高めることができる。
【0018】
また、モールド金型のキャビティエリア内にフィルムと共にモールド樹脂を搬送する搬送具であって、搬送具本体に前記キャビティエリア内のチップ搭載エリア外に対応して樹脂投入用の貫通孔が穿孔され、前記搬送具本体の下面にフィルムを保持し前記貫通孔の下端開口が塞がれた樹脂収容部を有することを特徴とする。
上記搬送具を用いることで、フィルムを下型クランプ面に受け渡すと共に樹脂収容部に収容されたモールド樹脂をチップ押さえ駒の周囲である凹部に投下することで、モールド樹脂及びフィルムを効率よく供給することができる。
【0019】
樹脂モールド方法においては、搬送具本体にチップ搭載エリア外に樹脂投入用の貫通孔が穿孔され、前記搬送具本体の一面にフィルムを保持し前記貫通孔の下端開口が塞がれた樹脂収容部を有する搬送具を用意する工程と、前記樹脂収容部にモールド樹脂を収容した前記搬送具を上型と下型が型開きしたモールド金型の前記下型に搬入する工程と、基板上に複数のチップ同士が近接して搭載されたワークを前記モールド金型の上型クランプ面にチップ搭載面を下向きにして前記基板を吸着保持させる工程と、下型ベースに対して第一弾性部材によりフローティング支持される連結板と、前記連結板に前記ワークのチップ搭載エリアのチップ配置に応じて対向配置された第二弾性部材によりチップ押さえ支持部より離間してフローティング支持されたチップ押さえ駒と、前記チップ押さえ駒の外周側で前記連結板をよけて前記下型ベースに立設された加圧駒と、前記加圧駒より外周側で前記連結板に支持されたクランパと、を有し、前記チップ押さえ駒と前記クランパとの間に設けられた前記加圧駒に囲まれてモールド樹脂を収容する凹部が形成された下型クランプ面に、前記搬送具を前記樹脂収容部と前記凹部を位置合わせし、前記フィルムを前記チップ押さえ駒及び前記クランパに挟み込まれるように重ね合わせる工程と、前記搬送具本体のフィルム保持を解除し前記チップ押さえ駒及び前記クランパによる前記フィルムの吸着を開始することで当該フィルムを前記下型クランプ面に受け渡し、前記樹脂収容部を前記凹部に投下する工程と、前記搬送具を除去して前記上型と前記下型を型閉じして前記モールド金型内に減圧空間を形成する工程と、型閉じ動作を進行させて前記チップ押さえ駒を、前記フィルムを介して前記チップに押し当てたまま前記第二弾性部材を撓ませて前記チップ押さえ支持部に向かってチップ厚さ分押し下げて前記凹部の容積を相対的に縮小させ、前記クランパが前記フィルムを介して前記ワークに押し当てられると前記第一弾性部材を撓ませて前記ワークに押し当てられたまま型閉じ動作を更に進行させて前記加圧駒の相対位置が変位して前記凹部に収容された前記モールド樹脂を前記チップ搭載エリアの前記チップの隙間に加圧しながら充填する工程と、を含むことを特徴とする。
【0020】
これにより、搬送具によりフィルムを下型クランプ面に受け渡すと共に樹脂収容部に収容されたモールド樹脂をチップ押さえ駒の周囲である凹部に投下することで、モールド樹脂及びフィルムを効率よく供給することができるうえに、チップの搭載エリア以外にモールド樹脂を供給し、しかもチップ搭載エリアをチップ押さえ駒によりフィルムを介して押さえながらモールド樹脂をチップの隙間に加圧充填するので、高さが異なるチップに過度のストレスをかけることなくチップ表面を露出させてモールドすることができる。このとき、モールド樹脂を加圧しながら成形できるので、チップ周囲の狭い隙間、スタックされたチップ間の隙間のみならずフリップチップ実装されたチップをアンダーフィルモールドすることができる。
【発明の効果】
【0021】
チップの表面を確実に露出させて樹脂モールドすることができるモールド金型、樹脂モールド装置及び樹脂モールド方法を提供することができる。また、これらの装置及び方法に用いられ、モールド樹脂及びフィルムを効率よく供給する搬送具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一実施例に係るモールド金型の断面説明図である。
【
図2】
図1に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図3】
図2に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図4】
図3に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図5】
図4に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図6】
図5に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図7】
図6に続くモールド金型の断面説明図である。
【
図10】チップ押さえ駒の他例を示す金型断面説明図である。
【
図13】第二実施例に係るモールド金型の断面説明図である。
【
図16】第三実施例に係るモールド金型の断面説明図である。
【
図18】第四実施例に係るモールド金型の断面説明図である。
【
図21】他例に係る搬送具及び下型クランプ面の平面図である。
【
図22】他例に係る搬送具及び下型クランプ面の平面図である。
【
図23】他例に係る搬送具及び下型クランプ面の平面図である。
【
図24】第五実施例に係るモールド金型の断面説明図である。
【
図26】第六実施例に係るモールド金型の断面図及び上型クランプ面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための一実施形態について添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、モールド金型というときは、モールドベースに各々支持された上型及び下型を指し示すものとし、型開閉機構を除いたものを指し示すものとする。また、樹脂モールド装置をいうときは、モールド金型とこれを開閉する型開閉機構(電動モータ及びねじ軸、トグルリンク機構等;図示せず)を備え、さらに樹脂搬送装置またはワーク搬送装置、成形後のワーク搬出装置の少なくとも1つ以上を備える装置である。後述するワークローダ4、搬送具5を搬送する樹脂搬送トランスファ成形の場合ポットに挿入されたプランジャを作動させるトランスファ機構、更には型閉じした際に金型内に減圧空間を形成する減圧機構等を備えているものとする。以下、モールド金型の構成を中心に説明するものとする。また、ワークWは、プロセッサやHBMなどの半導体チップが多数搭載されたインターポーザ基板(半導体ウエハ、樹脂基板等)の他、MEMSチップ等が搭載されたインターポーザ基板(半導体ウエハ、樹脂基板等)を樹脂モールドする場合を想定している。モールド金型は、一例として下型が可動型で上型が固定型として説明するが、上型が可動型で下型が固定型であっても良く、双方が可動型であってもよい。
【0024】
ワークWは、基板KとチップTより構成され、チップTは基板Kに電気的に接続(フリップチップ接続等)されている。チップTは半導体チップの他、MEMSチップ等の機能部品も含まれる。露出が必要なチップTとして上述した半導体チップやMEMSチップ等を例示したが、これらに限定されるわけではなく例えば放熱板や撮像素子の表面を露出させる場合であっても適応可能である。チップTは露出が必要な基板Kの搭載部品全体を指し示すものとする。
尚、以下ではフィルムFを用いてチップTを挟み込んで成形する場合について説明をするが、フィルムFは必ずしも必要な部材ではなく、省略しても良い。
【0025】
[第一実施例]
図1はモールド金型1の断面説明図である。ワークWはφ300mmのTSVなどの配線パターンが形成されたシリコンウェハ基板K上にGPUのようなプロセッサチップとその周囲にHBMチップが配置されることで複数のチップTが搭載されることになる。モールド金型1は上型2(第一金型)と下型3(第二金型)を備え、上記ワークWを、各チップTの表面を露出させて樹脂モールドする。
【0026】
図1において、上型2は上型クランプ面2aにワーク吸着部2bを備える。ワーク吸着部2bには吸着孔2m(
図10参照)が空いていて、吸引機構に繋がっている。ワークWは、ワークローダ4によって型開きしたモールド金型1に搬入され、ワークWの基板上側面を吸着される。下型3は、ワークWのチップ搭載エリアに対向配置されたチップ押さえ駒3dと、その周囲に形成されたモールド樹脂Rを収容する凹部3iが形成されている。
【0027】
以下、モールド金型1の構成例について具体的に説明する。
上型2は、上型ベース2Aに上型ブロック2Bが重ねて設けられている。上型ブロック2Bの上型クランプ面2aにはワーク吸着部2bが設けられている。ワーク吸着部2bには吸着孔2m(
図10参照)が複数箇所に設けられている。各吸着孔2mは、図示しない吸引機構に接続されている。ワークWはチップT搭載面を下向きにしてワークローダ4より基板Kが上型2に受け渡されワーク吸着部2bに吸着保持される(
図2参照)。なお、ワークWはモールド金型1に吸引により吸着されるが、吸引に限定すること無く、クランプ機構で固定しても良い。
【0028】
下型3は、下型ベース3Aに複数設けられた第一コイルばね3a(第一弾性部材)により連結板3Bがフローティング支持されている。下型ベース3A上には、第一コイルばね3aの撓みにより連結板3Bが相対移動する際にモールド樹脂Rを加圧する第一加圧駒3bが立設されている。連結板3B上にはチップ搭載エリアEに対向してチップ押さえ支持部3cが設けられている。チップ押さえ支持部3cにはチップ押さえ駒3dの下面に連結された吊り下げピン3eが挿入されている。各吊り下げピン3eの下端部は第二コイルばね3f(第二弾性部材)により付勢されておりチップ押さえ駒3dがチップ押さえ支持部3cに対してフローティング支持されている。このため、チップ押さえ駒3dの上面は、凹部3iの底面部より上方となるように支持されている。
【0029】
図8に示すように、チップ押さえ駒3dは対向するチップTの配置に応じて分割して形成されており、各小片ブロック状に分割されたチップ押さえ駒3dが
図1に示す第二コイルばね3fに各々付勢されてチップ押さえ支持部3cより離間して支持されている。チップ押さえ駒3dは、チップごとに可動であるようにしても良いが、機能する製品毎に群ごとに可動であるようにしても良い。また、チップ押さえ駒3dは、マトリクス配置された通常のICチップの場合は、ワークに応じてマトリクスに配置されている。チップ押さえ駒3dの上面の高さは、下型クランパ3hの上面の高さと同程度かそれより若干高くてもよい。若干高い場合は、チップ押さえ駒3dの第二コイルバネ3fの総推力が第一コイルバネ3aの総推力より弱く設定されている必要がある。また、
図1に示すように、チップ押さえ支持部3cの外周側で第一加圧駒3bに重ねて第二加圧駒3gが連結板3Bを貫通して支持固定されている(連結板3Bが棒状である場合には、第一加圧駒3bか第二加圧駒3gが棒状の連結板3Bを跨いで重ねられても良い。いずれにしても、連結板3Bをよけて下型ベース3Aに立設されていれば良い)。第一加圧駒3bと第二加圧駒3gの合計高さ寸法を変更することで、モールド樹脂Rの供給量を調節することができる。尚、第一加圧駒3bと第二加圧駒3gは、一体に形成されていてもよい。第二加圧駒3gの外周側で連結板3B上には下型クランパ3hが支持されている。このチップ押さえ駒3dと下型クランパ3hとの間に設けられた第二加圧駒3gに囲まれて形成された凹部3iに、後述するようにモールド樹脂Rが収容される。下型クランパ3hのクランプ面には、後述するようにフィルムFを吸着保持する吸着孔3n(
図10参照)が設けられ、図示しない吸引機構に接続されている。また、
図8においては、下型クランパ3hの外周側を囲む下外壁3k(
図5参照)を図示している。下外壁3kの端面にはシール材8が設けられていてもよい。
尚、チップ押さえ駒3dは、
図8に示すように小片ブロックに分割されていたが、
図10に示すように一枚ブロックで形成されていてもよい。この場合、チップ押さえ駒3dにはフィルムFを吸着保持する複数の吸着孔3nが穿孔されていることが必要になる。
【0030】
モールド樹脂Rは、
図1に示すように搬送具5により搬送される。
図9に示すように、搬送具5は、板状の搬送具本体5aと、凹部3iに対応する貫通孔5bが設けられている。
図1に示すように搬送具本体5aには吸着孔5d(
図10参照)が設けられており図示しない吸引機構に接続されている。吸引孔5dは吸引溝であっても良い。搬送具本体5aの下面側にワークWを覆う大きさより少し外形サイズの大きい大きさのフィルムFが吸着保持されている。尚、フィルムFは必ずしも吸引により搬送具5の下面に吸着される必要は無く、フィルムFを機械的に把持して張設することにより搬送具5の下面を覆うことで貫通孔5bを塞いでも良い。よって、搬送具5の貫通孔5bの下端開口がフィルムFに覆われて、樹脂収容部5cが形成されている。
【0031】
尚、搬送具5に設けられる貫通孔5bは、必ずしも下型3に設けられる凹部3iの外径に沿った形状をしている必要はない。例えば、
図11A,Bに示すように、チップ搭載エリアE(
図11B参照)以外で任意形状(例えば丸穴)の貫通孔5bが設けられていてもよい。この場合は、第二加圧駒3gも同様に丸形状であっても良い。このように、キャビティエリア形状からチップ押さえ駒3dを除いたすべての平面空間を第二加圧駒3gとする必要は無い。また逆にキャビティエリア形状からチップ押さえ駒3dを除いたすべての平面空間に第二加圧駒3gを配置してもよい。この場合、搬送具5から第二加圧駒3g上に選択的にモールド樹脂Rを供給するようにしても良い。なお、搬送具5よりモールド樹脂Rを第二加圧駒3g上に投入し易くするためには、貫通孔5bより第二加圧駒3gの形状(凹部3i)が大きい方が好ましい。また、搬送具5の外形は
図11Aに示すように矩形状であってもよく、
図11Bに示すように円形状であってもよい。
【0032】
図1に示すように型開きしたモールド金型1に、樹脂収容部5cにモールド樹脂R(顆粒状樹脂、粉末状樹脂、液状樹脂、固形樹脂)を収容した搬送具5が図示しない樹脂ローダにより搬入される。
図2に示すように搬送具5は貫通孔5bと下型3の凹部3iを位置合わせして下型クランプ面に重ね合わせる。そして、搬送具5側のフィルム吸着(保持)を解除し、下型クランプ面の吸着を開始することでフィルムFが受け渡され、凹部3iにモールド樹脂Rが供給される(
図3参照)。尚、チップ押さえ駒3dと下型クランパ3hは同程度の高さに支持されこれらに囲まれて凹部3iが形成されているため、樹脂収容部5cに収容されたモールド樹脂Rをこぼすこと無く凹部3iに確実に受け渡される。また、少なくともチップ押さえ駒3d上にモールド樹脂Rを載せることが無いため、チップ表面に溶融したモールド樹脂Rが浸入することはない。
【0033】
フィルムFは例えば厚さ50μm程度で耐熱性を有する離型フィルム(枚葉フィルム)が用いられる。離型フィルムは、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層又は複層膜が好適に用いられる。これにより、チップTの表面を覆って高さのばらつきを吸収すると共にチップ表面ヘのモールド樹脂Rの浸入を防いで露出成形することができる。
【0034】
また、フィルムFは、水分等を通さず湿気や空気を逃がす濾過膜状の多孔質フィルム、例えばポアフロン(商標名)、マイクロポーラスフィルム等であってもよい。また、多孔質フィルムの場合には、モールド樹脂Rの浸入を許さずに空気を逃がすことができるので、減圧環境下でモールド樹脂Rに混入したエアや発生したガスを逃がすことで成形品質を高めることができる。
【0035】
ここで、モールド金型1のモールド動作について
図1乃至
図7を参照して説明する。
図1に示すように、板状の搬送具本体5aにチップ搭載エリア外に樹脂投入用の貫通孔5bが穿孔され、貫通孔5bの下端開口を塞ぐフィルムFを吸着保持した搬送具5を用意する。
搬送具5の樹脂収容部5cに1回のモールドに必要な量のモールド樹脂Rを計量して収容しておく。尚、モールド樹脂Rが顆粒状樹脂若しくは粉末状樹脂の場合には、プリヒートにより樹脂表面を溶融させて搬送中に粉塵が舞い上がらないようにしておくことが望ましい。
【0036】
図1に示すように、基板K上に複数のチップTが搭載されたワークWをワークローダ4に保持して型開きしたモールド金型1に搬入する。ワークローダ4はワークWを上型クランプ面2aにチップ搭載面を下向きにして基板Kをワーク吸着部2bに吸着保持させる。また、図示しない樹脂ローダにより樹脂収容部5cにモールド樹脂Rを収容した搬送具5を型開きしたモールド金型1の下型3に搬入する。
ワークWとモールド樹脂R及びフィルムFの搬入動作は、いずれが先でも後でもよく、同時に行ってもよい。
【0037】
図2に示すように、下型3のチップ押さえ駒3dとその周囲に凹部3iが形成された下型クランプ面に、樹脂収容部5cと凹部3iを位置合わせし、搬送具5をフィルムFを介して下型クランプ面に重ね合わせる。このとき、チップ押さえ駒3dは下型クランパ3hと同じか僅かに高く設定されている為、フィルムFを挟んで、樹脂収容部5cの平面形状と凹部3iの平面形状とが重なり合う。
【0038】
図3に示すように、搬送具本体5aのフィルム吸着を解除(保持を解除)し、チップ押さえ駒3d及び下型クランパ3hによるフィルムFの吸着を開始することで当該フィルムFを下型クランプ面に受け渡す。このとき、チップ押さえ駒3dは下型クランパ3hと同じか僅かに高く設定されている為、モールド樹脂Rは確実に受け渡される。下型クランパ3hと第二加圧駒3g及び/又はチップ押さえ駒3dとの凹部3iの各隙間には吸引孔(不図示)があり、下型クランプ面のフィルム吸着と共にフィルムFが凹部3iの形状に倣ってモールド樹脂Rと共に下型3に供給される。このとき、樹脂収容部5cが凹部3iに投下されてフィルムFが吸着保持される。これにより、搬送具5によりフィルムFを下型クランプ面に受け渡すと共に樹脂収容部5cに収容されたモールド樹脂Rをチップ押さえ駒3dの周囲である凹部3iに投下することで、モールド樹脂R及びフィルムFを効率よく確実に供給することができる。
【0039】
図4に示すように、ワークローダ4をモールド金型1より退避させ、図示しない樹脂ローダにより搬送具5を保持して下型3より除去する。搬送具5は、樹脂ローダにより除去しなくても専用の搬送手段により搬送してもよい。
【0040】
次いで、
図5に示すように、上型2と下型3を型閉じして金型内に減圧空間を形成する。例えば、上型ベース2Aに設けられた上外壁2cと下型ベース3Aに設けられた下外壁3kとが重なり合ってシール材8により金型空間がシールされ、下外壁3kに設けられた吸引孔3mよりエア吸引することで減圧空間が形成される。尚、上外壁2cと下外壁3kの端面どうしにシール材を介して挟み込むようにしてもよい。
【0041】
図6に示すように型閉じ動作が進行すると、チップTとチップ押さえ駒3dがフィルムFを介して押し当てられたまま、下型クランパ3hがフィルムFを介してワークW(基板K外周部)をクランプする。このとき、複数のチップTの高さにばらつきがあっても、フィルムFやチップ押さえ駒3dを付勢する第二コイルばね3fが撓むため、チップTに過度なストレスが作用することなくチップ厚さ分押し下げられる。第二コイルばね3fは、チップ押さえ駒3dがチップTに押し当てられた状態から撓み始める。また、第一コイルばね3aは、下型クランパ3hがフィルムFを介してワークWに押し当てられた状態から撓み始め、最終クランプ位置まで撓み続けることで、型閉じ動作におけるチップTに作用する過度なストレスを逃がすようになっている。また、第一コイルばね3aが撓むことで、連結板3Bに対する第二加圧駒3gの高さ位置が相対的に高くなり、第二加圧駒3gによって凹部3i内で加熱溶融されたモールド樹脂Rがチップ搭載エリアE(
図11B参照)に浸入し始める。なお、金型には図示しないヒータが搭載されているので、モールド樹脂Rは加熱され、溶融される。
【0042】
図7に示すように、型閉じが進行すると、ワークWとチップ押さえ駒3dがフィルムFを介して押し当てられたまま、下型3が上動することで第二加圧駒3gの相対位置が更に上昇して凹部3iの容積を相対的に縮小する。このとき、凹部3iに収容されたモールド樹脂RがワークWのチップ間の隙間やチップ下のアンダーフィル部に相当する隙間(以下総称して「隙間」という)に加圧しながら充填される。また、連結板3Bは型閉じにより押圧力が強まると、第一コイルばね3aの付勢に抗して最終クランプ位置まで押し下げられる。このように上型2と下型3が最終クランプ位置でワークWをクランプしたまま溶融したモールド樹脂Rを加熱硬化させる。
【0043】
よって、チップ搭載エリアをチップ押さえ駒3dによりフィルムFを介して押さえながらモールド樹脂RをワークWの隙間に加圧充填する際に、高さが異なるチップTに過度のストレスをかけることなくチップ表面を露出させてモールドすることができる。また、モールド樹脂Rを加圧しながら成形できるので、チップ周囲の狭い隙間のみならずフリップチップ実装されたチップTをアンダーフィルモールドすることができる。
【0044】
成形後のワークWを
図12に示す。
図12Aは成形されたワークWを示している。ワークWは各チップTの表面を露出させたまま、チップTどうしの隙間並びに基板KとチップTとの隙間もモールド樹脂Rに覆われてモールドされる。モールドされたワークWは、露出する複数のチップTを機能ユニット単位でダイシングされて個片状の半導体装置が製造される。
図12Bは複数のチップTを機能ユニット単位でダイシングされたものを示す。
【0045】
このように、上型2と下型3を型閉じしながらチップ押さえ駒3dをフィルムFを介してワークW(チップT)に押し当てたまま凹部3iの容積を相対的に縮小させ、当該凹部3iに収容されたモールド樹脂RをワークWの隙間に加圧しながら充填することで、チップWの表面を露出させてチップ間の隙間やチップと基板Kとの隙間にモールド樹脂Rを充填することができる。
このとき、チップ押さえ駒3dによりフィルムFを介してチップTを押さえながら弾性部材(第二コイルばね3f及び第一コイルばね3a)によって過度のクランプ圧を逃がしながらモールド樹脂Rに樹脂圧を加えながら隙間に充填するので、チップTに過度の機械的ストレスをかけずにチップ表面への樹脂の浸入を防いで、かつチップTの隙間にモールド樹脂Rを加圧充填することができる。
【0046】
[第二実施例]
次に、モールド金型1の第二実施例について
図13乃至
図15を参照して説明する。第一実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用し、以下異なる構成を中心に説明する。
第一実施例は、モールド樹脂Rとして顆粒樹脂を用いていたが、
図13に示すように固形樹脂(タブレット状樹脂)であってもよい。搬送具5の樹脂収容部5cに1回のモールドに必要な量のモールド樹脂Rを収容しておく。図示しない樹脂ローダにより樹脂収容部5cにモールド樹脂Rを収容した搬送具5を型開きしたモールド金型1の下型3に搬入する。
【0047】
図13に示すように、下型3のチップ押さえ駒3dとその周囲に凹部3iが形成された下型クランプ面に、樹脂収容部5cと凹部3iを位置合わせし、搬送具5のフィルムFを介して下型クランプ面に重ね合わせて搬送具本体5aのフィルムFの吸着を解除し、チップ押さえ駒3d及び下型クランパ3hによるフィルムFの吸着を開始することで、当該フィルムFを下型クランプ面に受け渡す。このとき、凹部3i内の吸引を行うことでフィルムFが凹部3iに倣って吸着保持される。これにより、搬送具5によりフィルムFを下型クランプ面に受け渡すと共に樹脂収容部5cに収容されたモールド樹脂Rが凹部3iに投下され効率よく確実に受け渡しすることができる。下型3に設けられた凹部3iにモールド樹脂R(タブレット状樹脂)を投下した状態を
図15に示す。尚、タブレット投下位置は例示であって、
図15の形態に限定されるものではない。
図15ではウエハ形状の円形キャビティエリア内にチップ押さえ駒3dがあり、キャビティエリア内のチップ押さえ駒3dを除いたすべてが第二加圧駒3gとなり、部分的にタブレット状樹脂Rが置かれた図であるが、すべてが第二加圧駒3gにする必要は無く、例えば
図15に括弧付き符号で示すようにタブレット状樹脂Rの投入箇所のみを第二加圧駒(3g)としても良い(即ち、タブレット状樹脂Rと第二加圧駒3g(凹部3i)が入れ替わった配置であってもよい)。この場合、第二加圧駒(3g)の他の部分は凹部(3s)となり支持部3cの底部より高く支持され、金型が閉じたときにアンダーフィル高さと同じ隙間が形成される高さ(深さ)とすることが望ましい。尚、凹部(3s)の高さは必ずしもアンダーフィルモールド用の高さにする必要は無く、チップ高さと同じでも良い。
【0048】
図14は、上型2と下型3の型閉じが完了し、ワークWを最終位置でクランプしたまま溶融した樹脂を加熱硬化させた状態を示す。このとき、チップ押さえ駒3dによりフィルムFを介してチップFを押さえながら弾性部材(第二コイルばね3f及び第一コイルばね3a)によって過度のクランプ圧を逃がししながらモールド樹脂Rに樹脂圧を加えながら隙間に充填するので、チップTに過度の機械的ストレスをかけずにチップ表面への樹脂の浸入を防いで、かつチップT周囲の隙間にモールド樹脂Rを加圧充填することができる。
【0049】
[第三実施例]
次に、モールド金型1の第三実施例について
図16及び
図17を参照して説明する。第一実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用し、以下異なる構成を中心に説明する。第一及び第二実施例は、ワークWを上型2に支持し、フィルムF及びモール樹脂Rを下型3に支持させていたが、本実施例は上下反転させた構成を採用している。
【0050】
図16において、下型3は、下型ベース3Aに下型ブロック3Cが重ねて設けられている。下型ブロック3Cの下型クランプ面3pにはワーク吸着部3qが設けられている。ワーク吸着部3qにはワークWを吸着する複数の吸着孔(図示せず)が設けられており、これらは図示しない吸引機構に接続されている。ワークWはチップT搭載面を上向きにして基板Kがワーク吸着部3qに吸着保持される。また、基板Kのチップ搭載エリアE(
図11B参照)外にはモールド樹脂R(固形樹脂;タブレット樹脂)が供給される。
【0051】
上型2は、上型ベース2Aに複数設けられた第一コイルばね2d(第一弾性部材)により連結板2Cが吊り下げ支持されている。上型ベース2A上には、基板K上に供給されるモールド樹脂R(固形樹脂)に対向してプランジャ2Dが吊り下げ支持されている。連結板2C上にはチップ搭載エリアE(
図11B参照)に対向してチップ押さえ支持部2eが設けられている。チップ押さえ支持部2eには吊り下げピン2fが挿入されており、吊り下げピン2fの下端にはチップ押さえ駒2gが連結されている。連結板2Cと吊り下げピン2fの上端部との間には第二コイルばね2h(第二弾性部材)が設けられている。チップ押さえ駒2gは、第二コイルばね2hによりチップ押さえ支持部2eにより離間して吊り下げ支持されている。
図8の下型3と同様に、チップ押さえ駒2gは対向するチップTに応じて分割して形成されており、各小片ブロック状に分割されたチップ押さえ駒2gが第二コイルばね2hに各々付勢されてチップ押さえ支持部2eより離間して支持されている。
【0052】
また、チップ押さえ支持部2eの外周側で連結板2C上にはポットブロック2iがコイルばね2jにより吊り下げ支持されている。ポットブロック2iの筒孔内にはプランジャ2Dの下端部が摺動可能に挿入されている。モールド金型1を型閉じすると、ポットブロック2iの筒孔内には、基板Kに供給されたモールド樹脂R(固形樹脂)が収容されるようになっている。ポットブロック2iの外周側で連結板2C上には上型クランパ2kが支持されている。上型クランプ面(ポットブロック2i、上型クランパ2k)には、フィルムFを吸着保持する吸着孔が設けられ、図示しない吸引機構に接続されている。ポットブロック2iはチップ押さえ支持部2eより高さ方向に高く支持され、キャビティ凹部の一部となっていても良い。
尚、チップ押さえ駒2gは、
図8に示すように小片ブロックに分割されているが、
図10に示すように一枚ブロックで形成されていてもよい。また、その中間の大きさで、複数のチップごとにまたは機能チップごとに群としたブロックであっても良い。この場合、チップ押さえ駒2gにはフィルムFを吸着保持する複数の吸着孔(
図10参照)が穿孔されていることが必要になる。
【0053】
図16に示すように、上型2のチップ押さえ駒2g、ポットブロック2iとその周囲に設けられた上型クランパ2kを備えた上型クランプ面にフィルムFを吸着保持させ、モールド樹脂Rを下型3のワーク吸着部3qに吸着保持されたワークWの基板K上にモールド樹脂R(固形樹脂)が供給される。フィルムF及びモールド樹脂Rは個別に供給してもよいが樹脂ローダで一括して供給するようにしてもよい。
【0054】
図17は、上型2と下型3の型閉じが完了し、ワークWを最終位置でクランプしたまま溶融した樹脂を加熱硬化させた状態を示す。ポットブロック2iに挿入されたプランジャ2Dが相対移動してモールド樹脂Rを加圧することによりワークWの隙間に充填する。ポットブロック2iは、最下面全体がチップTに樹脂が流れる高さ(チップTと基板Kとの隙間高さが理想)となっていても良いが、ランナーとなる凹部を部分的に形成しても良い。このとき、チップ押さえ駒2gによりフィルムFを介してチップTを押さえながら弾性部材(第二コイルばね2h及び第一コイルばね2d)によって過度のクランプ圧を逃がししながらモールド樹脂Rに樹脂圧を加えながら隙間に充填するので、チップTに過度の機械的ストレスをかけずにチップ表面への樹脂の浸入を防いで、かつチップTの隙間にモールド樹脂Rを加圧充填することができる。
【0055】
[第四実施例]
次に、モールド金型1の第四実施例について
図18乃至
図23を参照して説明する。第一実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用し、以下異なる構成を中心に説明する。第一実施例は、ワークWとして、チップTを搭載する基板Kは円形のシリコンウェハを想定していたが、矩形状の樹脂基板等であってもよい。また、第一実施例から第三実施例まではキャビティエリア内にモールド樹脂Rを収容する凹部を設けたが、凹部は必ずしもキャビティ内に設ける必要はなく、キャビティ外でかつワークWの外側に設けた場合を例示している。ウエハの場合は、特に端面に面取りがあるため、キャビティ内に凹部を設ける必要があったが、基板の場合はウエハに比べて端面の面取りが無い為キャビティ外に凹部を設けることが可能である。
【0056】
図18にモールド金型1の断面構成を示す。
図19に示すように上型6は上型クランプ面6aにワークWの外形に対応したワーク吸着部6bが彫り込まれて設けられている。
図19に示すように、ワーク吸着部6bには外周部に沿って複数の吸着孔6cが設けられ、図示しない吸引機構に接続されている。ワークWは、
図18に示すようにチップ搭載面を下向きにしてワーク吸着部6bに吸着保持される。
【0057】
図18において、下型7は下型ベース7Aには、チップ搭載エリアE(
図11B参照)に対向してチップ押さえ駒7bがコイルばね7a(弾性部材)を介してフローティング支持されている。またチップ押さえ駒7bの周囲には、環状の下型クランパ7cがコイルばね7dによりフローティング支持されている。この下型クランパ7cにはポット孔(貫通孔)7eが設けられている。ポット孔7e内には下型ベース7Aに起立して支持されたプランジャ7Bが挿入されている。
図20Aに示すように、ポット孔7e及びプランジャ7Bは、矩形ワークエリアL(ワークWが搭載される範囲)の対向辺(短辺)に沿って各々複数箇所(例えば3箇所)に設けられている。
【0058】
図20Aに示すように、下型クランパ7cのクランプ面側にはポット孔7eの周囲に環状の下型カル7fが彫り込まれ、下型カル7fに接続する下型ランナゲート7gがチップ押さえ駒7bに向かって彫り込まれている。また、下型クランプ面を形成するチップ押さえ駒7bの外周部、下型クランパ7cのワークエリア外周部、並びに下型カル7f及び下型ランナゲート7gの周囲には、フィルムFを吸着する吸着孔7hが複数設けられ、図示しない吸引機構に接続されている。
【0059】
フィルムF及びモールド樹脂Rは、
図18に示すように搬送具5により搬送される。
図20Bに示すように、搬送具5は、板状の搬送具本体5aと、ポット孔7eに対応する貫通孔5bが設けられている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔5dが設けられ、これらは図示しない吸引機構に接続されている。なお、吸着孔5dは必要に応じて吸引溝であっても良いし、その両方を備えても良い。搬送具本体5aの下面側にワークWを覆う大きさのフィルムFが吸着保持される。これにより、
図18に示すように、搬送具5の貫通孔5bの下端開口がフィルムFに覆われて、樹脂収容部5cが形成される。
【0060】
ここで、下型3と搬送具5の他例について
図21乃至
図23を参照して説明する。
図21は下型クランパ7cに設けられるポット孔7eと搬送具5の貫通孔5bのレイアウト配置の他例を示す。
図21Aにおいて、下型クランパ7cの矩形ワークエリアLの一対の対角部にポット孔7eが各々設けられていてもよい。一対の対角部から樹脂が流れて他の対角部にエアと初期の不純物が多い樹脂が流れていく点で有利である。ポット孔7eの周囲には、環状の下型カル7fが彫り込まれ、下型カル7fに接続する下型ランナゲート7gがチップ押さえ駒7bに向かって各々彫り込まれている。下型クランパ7cのワークエリアLの外周部、並びに下型カル7f及び下型ランナゲート7gの周囲には、フィルムFを吸着する吸着孔7hが複数設けられている。尚、ポット孔7eは他の一対の対角部に更に設けられていてもよいし、一つにしてもよい。
図21Bに示すように、搬送具5の搬送具本体5aには、
図21Aに示すポット孔7dに対応する貫通孔5bが設けられている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔5dが設けられている。
【0061】
下型7と搬送具5の他例について
図22を参照して説明する。
図22は下型クランパ7cに設けられるポット孔7eと搬送具5の貫通孔5bのレイアウト配置の他例を示す。
図22Aにおいて、下型クランパ7cの矩形ワークエリアLの隣り合う辺(長辺と短辺)に沿って複数(例えば3箇所)にポット孔7dが各々設けられていてもよい。これは隣り合う辺の角より対角となる角にモールド樹脂Rが流れてエアと初期の不純物が多い樹脂が流れていく点で有利である。ポット孔7eの周囲には、環状の下型カル7fが彫り込まれ、下型カル7fに接続する下型ランナゲート7gがチップ押さえ駒7bに向かって各々彫り込まれている。下型クランパ7cの矩形ワークエリアLの外周部、並びに下型カル7f及び下型ランナゲート7gの周囲には、フィルムFを吸着する吸着孔7hが複数設けられている。尚、ポット孔7eは他の隣り合う辺(長辺と短辺)に沿って更に設けられていてもよい。
図22Bに示すように、搬送具5の搬送具本体5aには、
図22Aに示すポット孔7dに対応する貫通孔5bが設けられている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔5dが設けられている。
【0062】
下型7と搬送具5の他例について
図23を参照して説明する。
図23は下型クランパ7cに設けられるポット孔7eと搬送具5の貫通孔5bのレイアウト配置の他例を示す。
図23Aにおいて、下型クランパ7cの矩形ワークエリアLの各辺(長辺と短辺)に平行にポット孔7eが各々設けられていてもよい。この場合は、樹脂タブレット以外の粉末、顆粒樹脂を使用することが容易にできる。各辺すべてにポット孔7eを設けたが、いずれかを選択的に設けても良い。各ポット孔7eには複数の下型ランナゲート7gがチップ押さえ駒7bに向かって各々彫り込まれている。下型クランパ7cの矩形ワークエリアLの外周部及び下型ランナゲート7gの周囲には、フィルムFを吸着する吸着孔7hが複数設けられている。
図23Bに示すように、搬送具5の搬送具本体5aには、
図23Aに示すポット孔7dに対応する貫通孔5bが設けられている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔5dが設けられている。
【0063】
[第五実施例]
次に、
図18に示すモールド金型1(第四実施例)の変形例である第五実施例について
図24及び
図25を参照して説明する。第四実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用し、以下異なる構成を中心に説明する。第四実施例と異なる点は、下型7及び搬送具5の形態である。
図24において、上型6は上型クランプ面6aにワークWの外形に対応したワーク吸着部6bが形成されている。このワーク吸着部6bにワークWがチップ搭載面を下向きにして吸着保持されている。
【0064】
図24に示すように、下型7は下型ベース7Aにチップ押さえ駒7bがコイルばね7aによりフローティング支持されている。チップ押さえ駒7bより外側の下型ベース7A上に接触してプランジャ7Bが起立して支持されている。下型ベース7Aには、チップ押さえ駒7b及びプランジャ7Bを囲む環状の下型クランパ7cがコイルばね7dによりフローティング支持されている。下型クランパ7cとチップ押さえ駒7bとの間には対向する二辺(短辺)にポット孔7e(貫通孔)が形成されている。このポット孔7e内に矩形状のプランジャ7Bが挿入配置されている。
【0065】
図25Aに示すように、ポット孔7eはチップ押さえ駒7bの短辺に沿って矩形状に形成されており、プランジャ7Bはポット孔7eに沿って摺動するように矩形状に形成されている。
また、
図25Bに示すように、搬送具5の搬送具本体5aには、
図25Aに示すポット孔7dに対応する矩形状の貫通孔5bが設けられている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔(図示せず)が設けられている。
図24に示すように、搬送具5の貫通孔5bの下端開口がフィルムFに覆われて、樹脂収容部5cが形成される。
【0066】
[第六実施例]
次に、
図18に示すモールド金型1(第四実施例)の変形例である第六実施例について
図26及び
図27を参照して説明する。第四実施例と同一部材には同一番号を付して説明を援用し、以下異なる構成を中心に説明する。第四実施例と異なる点は、下型7及び搬送具5の形態である。
図26Aにおいて、上型6は上型クランプ面6aにワークWの外形に対応したワーク吸着部6bが形成され、このワーク吸着部6bにワークWがチップ搭載面を下向きにして吸着保持されている。
図26Bに示すように、ワークWは、矩形基板K上にチップTがマトリクス配置(例えば3行6列等)で搭載されている。
【0067】
図26Aに示すように、下型7は下型ベース7Aにチップ押さえ駒7bがチップTに対向してマトリクス配置でコイルばね7aにより各々フローティング支持されている。チップ押さえ駒7bの周囲には加圧駒7iが下型ベース7A上に支持固定されている。下型ベース7Aには、チップ押さえ駒7b及び加圧駒7iを囲む環状の下型クランパ7cがコイルばね7dによりフローティング支持されている(
図27A参照)。
【0068】
図27Aに示すように、モールド樹脂Rが投入されるポットに相当するのはチップ押さえ駒7bどうしの隙間に相当する加圧駒7iの上面となる。加圧駒7iの高さを変更することでモールド樹脂Rの供給量を調節することができる。
また、
図27Bに示すように、搬送具5の搬送具本体5aには、
図27Aに示す加圧駒7iに対応する部位に貫通孔5bが設けられ、チップ押さえ駒7bに対応する部位に島(板材)が存在するようになっている。搬送具本体5aには、ワーク外形に対応する部位と貫通孔5bの周囲に沿って複数の吸着孔(図示せず)が設けられている。
図26Aに示すように、搬送具5の貫通孔5bの下端開口がフィルムFに覆われて、樹脂収容部5cが形成される。
【0069】
上述したワークWは上型クランプ面若しくは下型クランプ面に吸着保持されていたが、爪等により機械的に保持することや吸着と爪保持を併用することも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 モールド金型 K 基板 T チップ R モールド樹脂 E チップ搭載エリア F フィルム L ワークエリア 2,6 上型 2A 上型ベース 2B 上型ブロック 2D,7B プランジャ 2a,6a 上型クランプ面 2b,3q,6b ワーク吸着部 2c 上外壁 2d,3a 第一コイルばね 2e,3c チップ押さえ支持部 2f,3e 吊り下げピン 2g,3d チップ押さえ駒 2h,3f 第二コイルばね 2i ポットブロック 2j,7a,7d コイルばね 2k 上型クランパ 2m,3j,3n,5d,6c,7h 吸着孔 3,7 下型 3A,7A 下型ベース 2C,3B 連結板 3C 下型ブロック 3b 第一加圧駒 3g 第二加圧駒 7i 加圧駒 3h,7c 下型クランパ 3i 凹部 3k 下外壁 3m 吸引孔 3p 下型クランプ面 4 ワークローダ 5 搬送具 5a 搬送具本体 5b 貫通孔 5c 樹脂収容部 7b チップ押さえ駒 7e ポット孔 7f 下型カル 7g 下型ランナゲート 8 シール材