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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】加圧式歪取装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 1/06 20060101AFI20230713BHJP
   B21D 43/00 20060101ALI20230713BHJP
   B30B 1/32 20060101ALI20230713BHJP
【FI】
B21D1/06 A
B21D43/00 W
B30B1/32 Z
B21D43/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019126253
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021010928
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年7月11日~平成30年7月12日に開催された展示会「“第6回ものづくり岡崎フェア2018”」において、発明品である加圧式歪取装置(商品名:「自動加圧式歪取装置『DAIMON』型式DMSHQ-C10」、以下「商品」と称する。)を、出展ブース内で公開した。また、この出展ブースの場で、この商品のカタログを配布した。さらに、自社のウェブサイトで、この商品を公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】515208234
【氏名又は名称】株式会社エスティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 俊一
(72)【発明者】
【氏名】迫田 邦裕
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-026885(JP,A)
【文献】特開昭59-120320(JP,A)
【文献】特開昭61-274806(JP,A)
【文献】登録実用新案第3207399(JP,U)
【文献】特開平10-296332(JP,A)
【文献】特開2019-081223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 1/06
B21D 43/00
B30B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を有し、
主軸ヘッドが、該フレームの梁部を摺動可能に垂下して懸架され、該油圧シリンダは、該フレームの梁部から下方側で、該主軸ヘッドと着脱可能に装着された加圧式歪取装置において、
前記フレームの移動に伴う動力源となる第1のサーボモータと、
前記主軸ヘッドの移動に伴う動力源となる第2のサーボモータと、
前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータの操作を行うモータ操作部と、前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータの駆動に数値制御を行うモータ制御部と、前記モータ制御部で制御された電気的な情報を保存可能な記憶部を有すること、
前記被加工物が前記定盤上に載置された状態の下、前記主軸ヘッドは、前記被加工物上に存在する相対原点を通る仮想垂線上の基準位置に配置可能であり、
前記記憶部は、前記主軸ヘッドを前記基準位置に配置するにあたり、前記フレームの移動に伴った前記第1のサーボモータの動きと、前記主軸ヘッドの移動に伴った前記第2のサーボモータの動きに関する前記電気的な情報を保存すること、
を特徴とする加圧式歪取装置。
【請求項2】
請求項1に記載する加圧式歪取装置において、
前記定盤に載置した前記被加工物のうち、前記油圧シリンダによる押圧力を加える1以上の加圧部位の真上に、前記フレームと前記主軸ヘッドとを移動させて配置させるプログラムが、前記制御手段の前記記憶部に格納されていること、
を特徴とする加圧式歪取装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する加圧式歪取装置において、
前記被加工物に有した歪みの状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段を備えていること、
を特徴とする加圧式歪取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧力を金属製板材の表面に加え、この金属製板材に生じている歪を、変形させて除去する加圧式歪取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
缶や、輸送用車両の床材等の製品は、プレス機により、金属製板材からなる被加工物(ワーク)への加工を経て形成されており、プレス時には、必然的に歪みがワークに生じてしまう。そのため、プレス後の後工程では、歪取装置を用いて、歪みが取り除かれている。その歪取装置の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、本出願人により特許出願された文献であり、被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を備えた加圧式歪取装置である。この加圧式歪取装置では、主軸ヘッドが、フレームの梁部を摺動可能なスライド部に垂下され、定盤の上面に対し、油圧シリンダは、そのロッドを、垂直方向下向きとする姿勢で、主軸ヘッドの支持板と着脱可能に懸架されている。加圧式歪取装置による歪取り作業では、歪部位を有したワーク(歪付きワーク)が、定盤上に載置してセットされると、作業者は、油圧シリンダのロッド先端に装着した押圧ヘッドを、この歪部位に対応した位置に配置するため、フレームを、定盤の前後方向に手動で移動させると共に、主軸ヘッドを、フレームの梁部の左右方向に手動で移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5930103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の加圧式歪取装置では、フレームの前後方向の移動と、主軸ヘッドの左右方向の移動が、何れも手動となっている。そのため、作業者は、1つずつ歪付きワークの歪取り作業を行う度に、主軸ヘッドを、歪付きワークの歪部位に対応した位置に配置させる主軸ヘッド位置決め作業を行わなければならない。特に、実際の歪取り作業では、同じ仕様の歪付きワークが、例えば、数~十数個と、ある程度まとまった数量のロット数で作業現場に供給されて歪取り作業を行う第1の場合や、特注品のような歪付きワークが僅かに1つ、継続的でありながらも、不定期に期間を空けて断続的に作業現場に持ち込まれて歪取り作業を行う第2の場合等がある。
【0006】
第1の場合、何れの歪付きワークとも、歪取り作業は、同じような要領で行われることが多い。その段取り作業では、定盤上において、歪付きワークを定盤内に搬入またはその搬出時に、歪付きワークの載置場所から主軸ヘッドを一時的に待避させる位置と、歪付きワークの歪部位を押圧ヘッドで加圧する位置との間で、主軸ヘッドを移動させている。このような主軸ヘッドの移動は、歪付きワーク毎に繰り返される。そのため、フレームの移動や主軸ヘッドの移動にあたり、作業者の負担は大きくなっていた。
【0007】
また、第2の場合には、作業者は、僅か1つの歪付きワーク向けの段取り作業を、頻繁に行わないことも一因にあって、段取り作業を、その都度、効率良く行うことができない虞があった。特に、産業界では近年、働き手の人材が不足しているという問題や、技術を伝承する後継者が不足しているという問題があり、歪取り作業を効率良く行うことができるよう、新たな加圧式歪取装置の開発が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、歪取り作業に係る作業性を向上させることより、被加工物に生じていた歪みを、効率良く取り除くことができる加圧式歪取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加圧式歪取装置は、上記目的を達成するために、以下の構成を有する。
(1)被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を有し、主軸ヘッドが、該フレームの梁部を摺動可能に垂下して懸架され、該油圧シリンダは、該フレームの梁部から下方側で、該主軸ヘッドと着脱可能に装着された加圧式歪取装置において、前記フレームの移動に伴う動力源となる第1のサーボモータと、前記主軸ヘッドの移動に伴う動力源となる第2のサーボモータと、前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータの操作を行うモータ操作部と、前記第1のサーボモータ及び前記第2のサーボモータの駆動に数値制御を行うモータ制御部と、前記モータ制御部で制御された電気的な情報を保存可能な記憶部を有すること、を特徴とする。
(2)(1)に記載する加圧式歪取装置において、前記定盤に載置した被加工物のうち、前記油圧シリンダによる押圧力を加える1以上の加圧部位の真上に、前記フレームと前記主軸ヘッドとを移動させて配置させるプログラムが、前記制御手段の前記記憶部に格納されていること、を特徴とする。
(3)(1)または(2)に記載する加圧式歪取装置において、被加工物に有した歪みの状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成を有する本発明の加圧式歪取装置の作用・効果について説明する。
(1)被加工物を載置する定盤の左右方向を跨ぐと共に、左右方向かつ上下方向と直交する前後方向に移動可能な門型形状のフレームと、押圧力を発生させる油圧シリンダと、を有し、主軸ヘッドが、該フレームの梁部を摺動可能に垂下して懸架され、該油圧シリンダは、該フレームの梁部から下方側で、該主軸ヘッドと着脱可能に装着された加圧式歪取装置において、フレームの移動に伴う動力源となる第1のサーボモータと、主軸ヘッドの移動に伴う動力源となる第2のサーボモータと、第1のサーボモータ及び第2のサーボモータを制御する制御手段と、を備え、制御手段は、第1のサーボモータ及び第2のサーボモータの操作を行うモータ操作部と、第1のサーボモータ及び第2のサーボモータの駆動に数値制御を行うモータ制御部と、モータ制御部で制御された電気的な情報を保存可能な記憶部を有すること、を特徴とする。
【0011】
この特徴により、作業者は、歪部位を有した被加工物を1つずつ、その歪取り作業を行う度に、主軸ヘッドを、その歪部位に配置させる段取り作業を行うにあたり、フレームと主軸ヘッドとを、被加工物の歪部位上に配置するまでの工程を、被加工物の数量に依らず、自動で、簡単に行うことができる。また、段取り作業を全て、被加工物を1つずつ、作業者の手で行っていた特許文献1の加圧式歪取装置に比べ、歪取り作業に掛かる作業者の負担が、大幅に削減できる。
【0012】
従って、本発明に係る加圧式歪取装置によれば、歪取り作業に係る作業性を向上させることより、被加工物に生じていた歪を、効率良く取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0013】
(2)に記載する加圧式歪取装置において、定盤に載置した被加工物のうち、油圧シリンダによる押圧力を加える1以上の加圧部位の真上に、フレームと主軸ヘッドとを移動させて配置させるプログラムが、制御手段の記憶部に格納されていること、を特徴とする。
【0014】
この特徴により、歪部位を有した被加工物が複数、同じ仕様である場合等には、段取り作業自体が効率良く行うことができるようになり、段取り作業に要する時間も、例えば、従来比の1/2以下等と、大幅に短縮できることから、歪取り作業の生産性は、飛躍的に向上する。
【0015】
(3)に記載する加圧式歪取装置において、被加工物に有した歪みの状態を、定量的に把握可能な歪量把握手段を備えていること、を特徴とする。
【0016】
この特徴により、油圧シリンダの押圧力で被加工物の歪みを取り除くのにあたり、被加工物の歪部位に押圧力を掛けるその位置で、歪量把握手段によりその歪みの大きさを簡単に把握することができることから、歪部位において、歪量の把握と、歪みの除去に必要な油圧シリンダの押圧力の付与を、合理的に効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る加圧式歪取装置を示す正面図である。
図2図1に示す加圧式歪取装置の定盤を、上方から見た平面図であり、定盤下面側に構成されたフレーム送り機構を示す説明図である。
図3図1に示す加圧式歪取装置で、フレーム送り機構と主軸ヘッド送り機構に用いているベルトの一部を示す側面図である。
図4図1に示す加圧式歪取装置のうち、主軸ヘッド及びそのスライド部を示す側面図と共に、門型フレームの梁部を、図1中、A-A矢視断面で示した図である。
図5図1に示す加圧式歪取装置のフレームの梁部を、上方から見た図であり、梁部後方側に構成された主軸ヘッド送り機構を示す説明図である。
図6】加圧式歪取装置の定盤に載置したワークの加圧部位を、例示的に示した説明図である。
図7】加圧式歪取装置の操作ユニットを示す説明図である。
図8図7に示す操作ユニットの表示画面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る加圧式歪取装置について、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の加圧式歪取装置は、例えば、缶や、輸送用車両の床材等の製品を、その材料である金属製板材を加工して製造するにあたり、金属製板材をプレスや溶接、熱処理等の加工を施した直後の状態にある被加工物(ワーク)に、その表面上に必然的に生じた歪部位を、押圧力をかけて加圧することにより、変形させて取り除く目的で用いられる。
【0019】
図1は、実施形態に係る加圧式歪取装置を示す正面図である。図2は、図1に示す加圧式歪取装置の定盤を、上方から見た平面図であり、定盤下面側に構成されたフレーム送り機構を示す説明図である。なお、図1に示す加圧式歪取装置1において、図1中、左右方向を「左右方向LR」とし、上下方向を「上下方向VT」(または垂直方向VT)とし、図2中、上下方向下側を「前後方向FB」の「前側F」とし、上側を「前後方向FB」の「後側B」として、加圧式歪取装置1の方向を定義し、図3以降についても、図1及び図2で定義した方向に準じる。また、図面を見易くするため、図1以降の各図は、電気配線、油圧配管、エア配管、配管機器、カバー等の図示を省略している。
【0020】
図1に示すように、加圧式歪取装置1は、大別して、装置本体部2と操作制御部3とからなり、装置本体部2は、本実施形態では、架台15上に設置されている。装置本体部2は、定盤10と、フレーム20と、主軸ヘッド40等を有している。操作制御部3は、操作ユニット80と、電気制御ユニット90(制御手段)とを一体化したユニットであり、本実施形態では、装置本体部2と別置で設けられている。定盤10は、鋼材(骨材)により、四角枠状に組み合わされた枠内に、リブを縦横にクロスして剛性と強度を高めた定盤フレームの上部に、上面11を有する板材を溶接で固着して構成されている。定盤10の上面11には、歪部位を有したワークWが載置される。
【0021】
フレーム20は、定盤10の左右方向LRを跨ぐと共に、左右方向LRかつ上下方向VTと直交する前後方向FBに移動可能な門型形状で構成されている。具体的には、フレーム20は、互いに平行な2本の柱部21の上部同士を、梁部23で繋ぎ合わせた門型形状になっている。柱部21は、下側に受け部22を有した略L字状に形成されており、柱部21の下部には、転動ローラ14が転動可能に軸支されている。転動ローラ14は、定盤10の側部12に設けたガイドレール13上を転動しながら走行する。受け部22は、定盤10の側部12下からその定盤10中央側に延設されて側部12と係合可能となっており、ガイドレール13と共に、後述する油圧シリンダ45による加圧時に、垂直方向VT下向きの押圧力に伴う反力を受けることができている。
【0022】
<フレーム20の送り機構>
図2に示すように、定盤10の上面11をなす板材の下側にある空間(四方向の側部12に囲まれた内部空間)には、フレーム送り機構30が配設されている。具体的には、フレーム送り機構30は、定盤10の上面11をなす板材の下側にある空間に、定盤10の左右方向LR中央を定盤10の前後方向FBに沿って配置されている。フレーム送り機構30は、動力源である第1サーボモータ31(第1のサーボモータ)の駆動に基づいて、フレーム20を、定盤10の前後方向FBに自在に移動させるための機構である。フレーム送り機構30は、第1サーボモータ31のほか、2つのプーリ32と、ベルト33と、連結部34と、駆動力伝達部材35等からなる。
【0023】
図3は、図1に示す加圧式歪取装置で、フレーム送り機構と主軸ヘッド送り機構に用いているベルトの一部を示す側面図である。第1サーボモータ31は、数値制御に基づき回転する電動モータであり、本実施形態では、エンコーダとブレーキを内蔵したステッピングモータである。第1サーボモータ31の出力軸は、前後方向FBの後側Bにある駆動側のプーリ32に、ダイレクトドライブで連結されている。従動側のプーリ32は、前後方向FBの前側Fに、定盤10の板材の下に配設され、2つのプーリ32には、ベルト33が掛け渡されている。
【0024】
図3に示すように、ベルト33は、複数の歯を断続的に有し、一定のピッチによる間隔を有して、歯先と歯底とを交互に連続して形成したタイミングベルトである。プーリ32は、複数の歯を断続的に有し、一定のピッチによる間隔を有して、歯先と歯底とを交互に連続して形成されたタイミングプーリであり、プーリ32の歯とベルト33の歯とは、互いに噛合い可能となっている。
【0025】
図2に示すように、連結部34が、ベルト33の一部分に固定して取付けられている。この連結部34は、フレーム20の2本の柱部21のうち、片側の柱部21の受け部22と、1つの駆動力伝達部材35によって連結されている。これにより、第1サーボモータ31が駆動すると、その回転が駆動側のプーリ32に伝達されて、第1サーボモータ31と連動するプーリ32の回転に伴って、ベルト33は、2つのプーリ32と相対的に走行する。連結部34は、ベルト33の走行により、対向するプーリ32,32同士の内側の範囲内を、前後方向FBに往来できる。第1サーボモータ31による駆動力は、連結部34の走行に連動した駆動力伝達部材35によって、柱部21に伝達される。
【0026】
かくして、フレーム20は、定盤10のガイドレール13上で転動ローラ14が転動しながら、定盤10に対し、前後方向FBに移動することができる。なお、図2に示すように、定盤10の前後方向FB両端には、4つのストッパ36が設けられており、定盤10に対し、フレーム20の移動範囲は、ストッパ36で規制されている。
【0027】
ところで、ベルト33の連結部34は、本実施形態では、1つの駆動力伝達部材35で、フレーム20の片側の柱部21の受け部22と連結されている。しかしながら、フレーム送り機構30は、定盤10の左右方向LR中央を定盤10の前後方向FBに沿って配置されているため、定盤10に対し、フレーム20の回転モーメントはほとんど作用しない。そのため、第1サーボモータ31の回転を、1つの駆動力伝達部材35を介して、ベルト33に伝達する構造となっていても、フレーム20の柱部21が、定盤10の側部12と局部的に接触することが抑制されている。従って、フレーム20は、定盤10の前後方向FBを滑らかに移動することができている。
【0028】
次に、主軸ヘッド40について、説明する。図4は、図1に示す加圧式歪取装置のうち、主軸ヘッド及びそのスライド部を示す側面図と共に、門型フレームの梁部を、図1中、A-A矢視断面で示した図である。図5は、図1に示す加圧式歪取装置のフレームの梁部を、上方から見た図であり、梁部後方側に構成された主軸ヘッド送り機構を示す説明図である。
【0029】
<主軸ヘッド40の送り機構>
図1及び図4に示すように、主軸ヘッド40は、油圧シリンダ45を支持すると共に、歪量計測ユニット60(歪量把握手段)を装着している。主軸ヘッド40は、フレーム20の梁部23全周を覆う略口字型形状に形成されたスライド部41に垂下して懸架されている。スライド部41は、図4及び図5に示すように、梁部23の転動ガイド25に保持された状態になっており、梁部23の転動面24に転動ローラ42が転動することで、主軸ヘッド40は、梁部23を左右方向LRに摺動可能となっている。
【0030】
図4及び図5に示すように、主軸ヘッド送り機構70が、フレーム20において、両方の柱部21上部同士の間を、梁部23に沿って繋ぐ位置に配設されている。主軸ヘッド送り機構70は、動力源である第2サーボモータ71(第2のサーボモータ)の駆動に基づいて、主軸ヘッド40を、梁部23の左右方向LRに自在に移動させるための機構である。主軸ヘッド送り機構70は、第2サーボモータ71のほか、2つのプーリ72と、ベルト73と、中間プーリ74と、テンショナー75等からなる。
【0031】
第2サーボモータ71は、数値制御に基づき回転する電動モータであり、本実施形態では、エンコーダとブレーキを内蔵したステッピングモータである。第2サーボモータ71の出力軸は、左右方向LRに左側L(図5中、左側)にある駆動側のプーリ72に、ダイレクトドライブで連結されている。従動側のプーリ72は、左右方向LRに右側R(図5中、右側)に配設され、2つのプーリ72には、フレーム送り機構30で用いるベルト33と同様のベルト73が掛け渡されている(図3参照)。
【0032】
また、プーリ32と同様、プーリ72も、複数の歯を断続的に有し、一定のピッチによる間隔を有して、歯先と歯底とを交互に連続して形成されたタイミングプーリであり、プーリ72の歯とベルト73の歯とは、互いに噛合い可能となっている。駆動側のプーリ72の近傍と従動側のプーリ72の近傍には、テンショナー75が設けられており、テンショナー75による調整により、ベルト73の張力が調節される。
【0033】
中間プーリ74は、プーリ72の歯と同じ諸元で形成された歯を有し、中間プーリ74の歯は、ベルト73の歯と互いに噛合い可能となっている。中間プーリ74は、スライド部41に軸支されており、ベルト73との噛合時に、ベルト73の走行に伴って、自転しながら従動するタイミングプーリである。スライド部41は、中間プーリ74による自転運動を、梁部23の左右方向LRへの直線運動に変換する機構を備えている。
【0034】
図5に示すように、ベルト73は、中間プーリ74に噛合った状態で、テンショナー75と共に、2つのプーリ72の間に掛け渡されている。これにより、第2サーボモータ71が駆動すると、その回転が駆動側のプーリ72に伝達されて、第2サーボモータ71と連動するプーリ72の回転に伴って、ベルト73は、中間プーリ74と噛合いながら、2つのプーリ72の間を、相対的に走行する。これにより、第2サーボモータ71による駆動力は、ベルト73の走行に伴う中間プーリ74の自転運動に基づいて、スライド部41に伝達される。そのため、このスライド部41は、ベルト73の走行により、対向するプーリ72,72同士の内側の範囲内を、左右方向LRに往来できる。
【0035】
かくして、主軸ヘッド40は、梁部23の転動面24上で転動ローラ42が転動しながら、梁部23に対し、左右方向LRに移動することができる。なお、図5に示すように、両方の柱部21上部には、ストッパ76が設けられており、フレーム20の梁部23に対し、主軸ヘッド40の移動範囲は、ストッパ76で規制されている。
【0036】
<油圧シリンダ45の機能>
前述したように、主軸ヘッド40は、油圧シリンダ45を支持すると共に、歪量計測ユニット60(図1参照)を装着している。図1及び図4に示すように、油圧シリンダ45は、主軸ヘッド40のスライド部41と第1支持板47との間に、ロッド46を下向きとした姿勢で配置され、スライド部41に固定された2本の支持板懸架部材48により、ロッド側(図1の下側)の端面を保持した状態で、着脱可能に固定して取付けられている。
【0037】
また、図4に示すように、主軸ヘッド40には、2本の連結部材51が、フレーム20の梁部23を挟む上下に延びており、円筒状の連結部材ガイド52内を摺動可能に挿通して保持されている。2本の連結部材51では、その下端同士が、第2支持板49で連結されていると共に、その上端同士も、ロッド連結部材65で連結されている。第2支持板49には、押圧ヘッド位置調整部材53が着脱可能に装着されており、ワークWに接触させる押圧ヘッド54が、この押圧ヘッド位置調整部材53の下端に着脱可能に装着されている。
【0038】
歪取り作業を行うときには、油圧シリンダ45のロッド46を下向きに伸長することにより、油圧シリンダ45の推進力が、第2支持板49を押圧して、押圧ヘッド位置調整部材53を介して、押圧ヘッド54に、ワークWへの押圧力として伝達される。これにより、ワークWに有する歪みは、この押圧力による加圧で変形されて取り除かれる。
【0039】
<歪量計測ユニット60の機能>
歪量計測ユニット60は、ワークWに有した歪みの状態を、定量的に計測可能なユニットである。歪量計測ユニット60は、図1及び図4に示すように、油圧シリンダ45のロッド46の動作方向に沿って動作可能に配設され、ワークWの上面Wa(表面)に接触可能な押圧ヘッド54と、動いた分の押圧ヘッド54の変位を検知する変位検出部(図示省略)と、変位検出部により検出された変位を表示する表示部66と、を有する。歪量計測ユニット60は、流体であるエアの流れを制御することにより、ロッド62を、エアシリンダ61と相対的に伸縮させる単動押出し式の空圧シリンダを備えている。エアシリンダ61は、その反ロッド側を、主軸ヘッド40のスライド部41に対向させ、ロッド62を上向きにした姿勢で、ロッド62先端位置より低い位置に、エアシリンダ懸架部材63を介して、エアシリンダ固定部材64に固定されている。このエアシリンダ61は、エア圧力調整弁67と連通して接続されている。
【0040】
歪量計測ユニット60では、エアシリンダ61のロッド62が短縮(図4中、下側に引いた状態)すると、連結部材51と連結した第2支持板49は下がるため、第2支持板49の降下に伴って、押圧ヘッド54は、定盤10上に載置されたワークWの上面Waに接触するようになる。このとき、押圧ヘッド54は、ワークWに接触する測定触子の役割を担う。歪量計測ユニット60でワークWの歪みを計測している最中では、油圧シリンダ45のロッド46の動きは一時的に中断されており、油圧シリンダ45の推進力は、油圧シリンダ45のロッド46から第2支持板49に作用しない。
【0041】
<操作制御部3の構成>
次に、加圧式歪取装置1の操作制御部3について、説明する。図7は、加圧式歪取装置の操作ユニットを示す説明図であり、図7に示す操作ユニットの表示画面を、図8に示す。図1図7、及び図8に示すように、操作制御部3は、操作ユニット80と電気制御ユニット90とを一体化したユニットである。電気制御ユニット90は、CPU、ROM、及びRAM等、公知の構成のマイクロコンピュータを備え、操作ユニット80に設けたモータ操作部82と、モータ制御部91と、記憶部92と、シーケンス制御を行うPLC(Programmable Logic Controller)等を有している。モータ操作部82は、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71の操作を担う。モータ制御部91は、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71への数値制御を行い、回転方向、回転速度、回転量等の駆動を制御している。記憶部92は、プログラムのほか、パルス数の設定値やX-Y座標値等のデータの記憶を行う。電気制御ユニット90は、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71への駆動の操作を行う操作ユニット80のモータ操作部82と電気的に接続されている。
【0042】
モータ制御部91は、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71と電気的に接続されている。モータ制御部91は、コントローラとサーボドライバを含み、セミクローズドループ方式により、第1サーボモータ31と第2サーボモータ71との駆動制御を行う。コントローラは、動作の指令(目標値)をサーボドライバに出力し、サーボドライバは、第1サーボモータ31と第2サーボモータ71に対し、コントローラの指令に追従した動力信号を出力してモータを駆動する。また、サーボドライバは、第1サーボモータ31のエンコーダや第2サーボモータ71のエンコーダからフィードバック信号を入力し、コントローラは、サーボドライバからフィードバック信号を入力する。
【0043】
PLCは、モータ制御部91のほか、油圧シリンダ45に作動油を供給する油圧ユニットの電磁弁、油圧ユニットの他で作動油の流量を制御する電磁弁、歪量計測ユニット60におけるエアシリンダ61のロッド62の動作を制御する電磁弁等、加圧式歪取装置1に装備された電装機器と電気的に接続されている。
【0044】
電気制御ユニット90は、定盤10の上面11を、左右方向LRを「X軸」とし、前後方向FBを「Y軸」とするX-Y座標系の平面とみなし、上面11に対する主軸ヘッド40の位置とフレーム20の位置とを、X-Y座標値で制御している。また、図7及び図8に示すように、操作ユニット80内のディスプレイ81には、フレーム20の梁部23の左右方向LRに対する主軸ヘッド40の位置情報は、「X標値」で、定盤10の前後方向FBに対するフレーム20の位置情報は、「Y標値」で、それぞれ表示される。
【0045】
図7に示すように、操作ユニット80のモータ操作部82では、ジョイスティックレバー83は、第1サーボモータ31により、主軸ヘッド40をX方向に移動させる操作と、第2サーボモータ71により、フレーム20をY方向に移動させる操作を行う機能である。送り速度変換スイッチ84は、第1サーボモータ31の駆動と第2サーボモータ71の駆動を制御することにより、主軸ヘッド40の送り速度や、フレーム20の送り速度を、高速・中速・低速の3段階に分けて切り替える。
【0046】
操作ユニット80の油圧シリンダ操作部85は、油圧シリンダ45のロッド46の昇降を操作する。すなわち、矯正下降は、ロッド46を伸長させ、押圧ヘッド54を、定盤10に載置したワークWの表面Waに接触させて加圧を行う。押圧ヘッド54による加圧時間は、電気制御ユニット90に設けたタイマ機能によって設定可能になっている。矯正上昇は、ロッド46を油圧シリンダ45内に収めて、定盤10に載置したワークWの表面Waから押圧ヘッド54を離間させて、加圧の解除を行う。操作ユニット80の計測機器操作部86は、歪量計測ユニット60において、エアシリンダ61のロッド62を短縮させ、押圧ヘッド54を、定盤10上に載置されたワークWの上面Waに接触させる。
【0047】
ところで、実際の歪取り作業には、同じ仕様の歪付きワークWが、例えば、数~十数個と、ある程度まとまった数量のロット数で作業現場に供給されて歪取り作業を行う場合がある。また、特注品のような歪付きワークWが僅かに1つ、継続的でありながらも、不定期に期間を空けて断続的に作業現場に持ち込まれて歪取り作業を行う場合等もある。このような場合に備えて、加圧式歪取装置1には、自動運転プログラムが、電気制御ユニット90の記憶部92に格納されている。図6は、加圧式歪取装置の定盤に載置したワークの加圧部位を、例示的に示した説明図である。
【0048】
自動運転プログラムは、定盤10に載置したワークWのうち、油圧シリンダ45による押圧力を加える1以上の加圧部位P(例えば、図6中、第1~第5計測対比位置P1~P5)と、歪量計測ユニット60により押圧ヘッド54をワークWの表面Waに接触させる計測基準位置(例えば、図6中、計測基準位置P0)の真上に、フレーム20と主軸ヘッド40とを移動させて配置させるプログラムである。自動運転プログラムでは、例えば、図6に示すワークWが、同一の仕様で複数あり、これらのワークWの歪取り作業を行うにあたり、歪部位を有した全ての加圧部位P(第1~第5計測対比位置P1~P5)と計測基準位置P0との位置情報を設定・登録することが可能になっている。
【0049】
また、フレーム20と主軸ヘッド40とを、最初に計測基準位置P0の真上に配置した後、第1計測対比位置P1、第2計測対比位置P2と続き、最後に第5計測対比位置P5に配置していく順序も、設定・登録することが可能になっている。また、計測基準位置P0と加圧部位Pは、ワークWの種類によって異なるため、複数種の自動運転プログラムが、ワークWの仕様に応じて、自在に計測基準位置P0と加圧部位Pとを設定でき、登録して保存可能となっている。
【0050】
さらに、電気制御ユニット90では、図1に示すように、上下方向VTに沿い、かつ定盤10の上面11にある特定点Qを通る仮想垂線M上に主軸ヘッド40を配置させるまでに、電気制御ユニット90は、フレーム20の移動に伴った第1サーボモータ31の動きと、主軸ヘッド40の移動に伴った第2サーボモータ71の動きに関する電気的な情報を、記憶部92に保存可能となっている。特定点Qは、主軸ヘッド40を加圧部位P上に配置し、押圧ヘッド54をワークWの加圧部位Pに接触させて加圧するときや、主軸ヘッド40を計測基準位置P0上に配置し、押圧ヘッド54をワークWの計測基準位置P0に接触させて、後述する基準距離を計測するときに、その主軸ヘッド40の位置関係を、定盤10の上面11を基準に、X-Y座標系の座標値(図8参照)で規定したポイントである。
【0051】
加圧式歪取装置1で歪取り作業を行う要領について、説明する。図6に示すように、作業者は、歪みを含んだワークWの上面Waに対し、計測時に正とする基準部位を、計測基準位置(例えば、図6に示すP0)として設定する。次に、作業者は、計測基準位置P0と異なる部位で、ワークWの表面Waに生じている歪部位の存在を視覚等で確認し、この歪部位を計測対比位置(本実施形態では、図6に、第1計測対比位置P1、第2計測対比位置P2、第3計測対比位置P3、第4計測対比位置P4、第5計測対比位置P5の5つを例示)として設定する。
【0052】
計測基準位置P0は、歪量ゼロ(または、許容範囲以内の歪量でゼロに近い大きさ)の部位であり、測定上、「正」の部位として、第1~第5計測対比位置P1~P5との相対原点となり得る基準位置である。押圧ヘッド54が、計測基準位置P0に向けて下降すると、その移動に伴ったエアシリンダ61のロッド62の相対変位(基準距離)が、歪量計測ユニット60の表示部66と、操作ユニット80のディスプレイ81に表示される。
【0053】
次に、作業者は、一旦エアシリンダ61のロッド62を原点位置に復帰させた後、フレーム20とスライド部41を必要に応じて移動させ、再びロッド62を下降させて、押圧ヘッド54を、第1の歪部位(第1計測対比位置P1)に接触させる。そして、押圧ヘッド54が、第1計測対比位置P1に向けて下降すると、その移動に伴ったエアシリンダ61のロッド62の相対変位(対比距離)が、表示部66とディスプレイ81に表示される。
【0054】
次に、作業者は、計測基準位置P0に対し、表示された基準距離と、第1計測対比位置P1に対し、表示された対比距離との高低差(距離差)を確認する。次に、作業者は、押圧ヘッド54を第1計測対比位置P1に接触したままの状態で、油圧シリンダ45のロッド46を下方に推進させ、この高低差が限りなく0に近づくよう、油圧シリンダ45の押圧力を、第2支持板49を介して押圧ヘッド54に伝達させる。
【0055】
第2~第5計測対比位置P2~P5のそれぞれについても、第1計測対比位置P1と同様の要領で、押圧ヘッド54を、第2計測対比位置P2等に接触させ、作業者は、第2計測対比位置P2等に向けた下降に伴うエアシリンダ61のロッド62の相対変位(対比距離)を、表示部66とディスプレイ81で確認する。そして、作業者は、押圧ヘッド54を、第2計測対比位置P2等に接触したままの状態で、油圧シリンダ45のロッド46を下方に推進させ、基準距離と対比距離との高低差(距離差)が限りなく0に近づくよう、油圧シリンダ45の押圧力を、第2支持板49を介して押圧ヘッド54に伝達させる。かくして、本実施形態の加圧式歪取装置1は、歪部位において、歪量の計測と歪みの除去を行う。
【0056】
次に、本実施形態に係る加圧式歪取装置1の作用・効果について説明する。本実施形態に係る加圧式歪取装置1は、ワークWを載置する定盤10の左右方向LRを跨ぐと共に、左右方向LRかつ上下方向VTと直交する前後方向FBに移動可能な門型形状のフレーム20と、押圧力を発生させる油圧シリンダ45と、を有し、主軸ヘッド40が、フレーム20の梁部23と摺動可能に垂下して懸架され、油圧シリンダ45は、フレーム20の梁部23から下方側で、主軸ヘッド40と着脱可能に装着された加圧式歪取装置において、フレーム20の移動に伴う動力源となる第1サーボモータ31と、主軸ヘッド40の移動に伴う動力源となる第2サーボモータ71と、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71を制御する電気制御ユニット90と、を備え、電気制御ユニット90は、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71の操作を行うモータ操作部82(操作ユニット80)と、第1サーボモータ31及び第2サーボモータ71の駆動に数値制御を行うモータ制御部91と、モータ制御部91で制御された電気的な情報を保存可能な記憶部92を有すること、を特徴とする。
【0057】
この特徴により、作業者は、歪付きワークWを1つずつ、その歪取り作業を行う度に、主軸ヘッド40を、その歪付きワークWの歪部位に配置させる段取り作業を行うにあたり、フレーム20と主軸ヘッド40とを、ワークWの加圧部位P上に配置するまでの工程を、歪付きワークWの数量に依らず、操作ユニット80を操作するだけで、自動で簡単に行うことができる。また、段取り作業を全て、歪付きワークWを1つずつ、作業者の手で行っていた特許文献1の加圧式歪取装置に比べ、歪取り作業に掛かる作業者の負担が、大幅に削減できる。
【0058】
さらに、先に歪取り作業を行った歪付きワークWの後、それに続いて、次に同じ仕様の歪付きワークWにも歪取り作業を行う場合や、先に歪取り作業を行った歪付きワークWの後、例えば、数日、数か月等のように、一定の期間を置いて、この歪付きワークWと同じ仕様の歪付きワークWの歪取り作業を行う場合もある。このような場合、歪取り作業を行った先の歪付きワークWの段取り作業で、フレーム20の移動に伴った第1サーボモータ31の動きと、主軸ヘッド40の移動に伴った第2サーボモータ71の動きに関する電気的な情報が、記憶部92に保存されていると、次の歪付きワークWの歪取り作業に向けて行う段取り作業は、記憶部92に保存されている第1サーボモータ31の動きと第2サーボモータ71の動きに基づいて行うことができる。そのため、歪付きワークWが複数、同じ仕様である場合には、歪取り作業の段取り作業を行う上で、作業者の手間を省くことができる。
【0059】
従って、本実施形態に係る加圧式歪取装置1によれば、歪取り作業に係る作業性を向上させることより、歪付きワークWに生じていた歪みを、効率良く取り除くことができる、という優れた効果を奏する。
【0060】
また、本実施形態に係る加圧式歪取装置1では、電気制御ユニット90は、定盤10に載置したワークWのうち、油圧シリンダ45による押圧力を加える1以上の加圧部位Pの真上に、フレーム20と主軸ヘッド40とを移動させて配置させる自動運転プログラムが、記憶部92に格納されていること、を特徴とする。この特徴により、歪付きワークWが複数、同じ仕様である場合等には、段取り作業自体が効率良く行うことができるようになり、段取り作業に要する時間も、例えば、従来比の1/2以下等と、大幅に短縮できることから、歪取り作業の生産性は、飛躍的に向上する。
【0061】
すなわち、前述したように、同じ仕様の歪付きワークWが、例えば、数~十数個と、ある程度まとまった数量のロット数で作業現場に供給されて歪取り作業を行う場合や、特注品のような歪付きワークWが僅かに1つ、継続的でありながらも、不定期に期間を空けて断続的に作業現場に持ち込まれて歪取り作業を行う場合等がある。このような場合、特に、作業者は、段取り作業を行う上で、フレーム20と主軸ヘッド40とを、ワークWの加圧部位P上に配置するのに、操作ユニット80を操作して行うことができるため、工程内容の簡素化が実現できている。また、たとえ段取り作業に不慣れな作業者であっても、このような段取り作業は、違和感なく簡単に行うことができる。さらに、産業界では近年、働き手の人材が不足しているという問題や、技術を伝承する後継者が不足しているという問題があるが、加圧式歪取装置1は、歪取り作業を効率良く行うことができるため、このような問題の解決策の一つとして貢献することができる。
【0062】
また、本実施形態に係る加圧式歪取装置1では、ワークWに有した歪の状態を、定量的に把握可能な歪量計測ユニット60を備えていること、を特徴とする。この特徴により、油圧シリンダ45の押圧力でワークWの歪みを取り除くのにあたり、ワークWに押圧力を掛けるその位置で、歪量計測ユニット60によりその歪みの大きさを簡単に把握することができることから、歪部位において、歪量の把握と、歪みの除去に必要な油圧シリンダ45の押圧力の付与を、合理的に効率良く行うことができる。それ故に、歪取り作業を行う上で、その段取り作業が、より一層簡素化できる。
【0063】
特に、定盤10の上面11に載置されたワークWに、歪部位が複数箇所に亘って分散している場合、複数の歪部位に対して、歪取り作業を、一箇所毎ずつ順番に行うとき、必要に応じてフレーム20や主軸ヘッド40を移動するだけで、それぞれの歪部位で、歪量の把握と加圧による歪の除去とを、合理的にかつ容易に行うことができる。そのため、歪取り作業に対し、作業者に掛かる作業負担を削減することができる。また、歪取り作業の生産性が向上するため、歪取りを行う加工コストの低減化に寄与することができる。
【0064】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できる。
【0065】
(1)例えば、実施形態では、主軸ヘッド40の駆動源(第1サーボモータ31)とフレーム20の駆動源(第2サーボモータ71)に、エンコーダとブレーキを内蔵したステッピングモータを、それぞれ用いたが、本発明の第1のサーボモータ及び第2のサーボモータは、コンピュータ数値制御(CNC:computerized numerical control)により、フルクローズドループ方式で制御可能なサーボモータであっても良い。
(2)実施形態では、フレーム20を、フレーム送り機構30の下で移動させ、主軸ヘッド40を、主軸ヘッド送り機構70の下で移動させた。しかしながら、フレーム送り機構30や主軸ヘッド送り機構70に代えて、フレームは、第1のサーボモータの駆動をボールネジに伝達して移動させ、主軸ヘッドは、第2のサーボモータの駆動をボールネジに伝達して移動させるものであっても良い。
【0066】
(3)実施形態では、油圧シリンダ45の押圧力を、垂直方向下向きに作用させてワークWの歪取りを行う加圧式歪取装置1について、説明した。しかしながら、本発明の加圧式歪取装置は、主軸ヘッドにアタッチメントを装着し、このアタッチメントに取付けた油圧シリンダのロッドによる押圧力を、水平方向に作用させて被加工物の歪取りを行う水平方向押圧機能を具備させた構成としても良い。
(4)実施形態では、ワークWにおいて、歪部位である計測対比位置と、計測基準位置との高低差を、歪量計測ユニット60で確認し、この高低差が限りなく0に近づくよう、手動で油圧シリンダ45の押圧力を計測対比位置に作用させて、歪取りを行った。しかしながら、本発明の加圧式歪取装置は、計測対比位置と計測基準位置との高低差について、歪量把握手段により得られた計測データと連動させた上で、油圧シリンダによる加圧量を自動で制御して、被加工物の歪取りを行っても良い。
【符号の説明】
【0067】
1 加圧式歪取装置
10 定盤
11 (定盤の)上面
20 フレーム
23 梁部
31 第1サーボモータ(第1のサーボモータ)
40 主軸ヘッド
45 油圧シリンダ
60 歪量計測ユニット(歪量把握手段)
71 第2サーボモータ(第2のサーボモータ)
80 操作ユニット
82 モータ操作部
90 電気制御ユニット(制御手段)
91 モータ制御部
92 記憶部
M 仮想垂線
P 加圧部位
Q 特定点
W ワーク(被加工物)
FB 前後方向
LR 左右方向
VT 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8