(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-07-12
(45)【発行日】2023-07-21
(54)【発明の名称】スライドレールのストッパー装置
(51)【国際特許分類】
A47B 88/403 20170101AFI20230713BHJP
【FI】
A47B88/403
(21)【出願番号】P 2019151557
(22)【出願日】2019-08-21
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390002255
【氏名又は名称】日本アキュライド株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 正彦
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-110548(JP,U)
【文献】特開2000-342365(JP,A)
【文献】特開2004-113512(JP,A)
【文献】特開2003-047533(JP,A)
【文献】特開2003-144256(JP,A)
【文献】特開2009-261648(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0169199(US,A1)
【文献】独国実用新案第202012101928(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00-88/994
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一対の屈折縁を有し断面略C字形に形成されたアウターメンバーと、アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される一対の屈折縁を有し断面略コ字形に形成されたインナーメンバーと、該ボールを回転自在に保持するボールリテーナとを備え、アウターメンバーとインナーメンバーが一方側への長尺方向に相対移動可能であるとともに、他方側への長尺方向に相対移動可能とされる両方向引き出し型のスライドレールにおいて、スライドレールは、スライドレールを最収縮状態で保持するストッパー装置を備え、ストッパー装置は、インナーメンバーの両端部に設置される係合片を有する合成樹脂製の可動係合部材と、アウターメンバーの両端部に設置される前記係合片と係合する係合部を有する合成樹脂製の係合体からなり、係合部は、アウターメンバーの一方側の屈折縁
側から他方側の屈折縁側に向かっ
て突出しており、スライドレールの前記相対移動時に、係合片が係合部を乗り越えて係合片と係合部が係合することにより該相対移動を規制するものであって、可動係合部材の係合片は、アウターメンバーの一対の屈折縁
が対向する方向
すなわち上下方向に弾性変形可能な合成樹脂製の腕部で支持され、腕部の該弾性変形によって、係合片が係合部を乗り越えることが可能とされ、
さらに、係合片は、インナーメンバーの
摺動方向の一方側端面から
、他方側端面側への方向と反対側の摺動方向側に突出した位置に配置されるとともに、インナーメンバーの一方の屈折縁から、該屈折縁に近接するアウターメンバーの屈折縁側に向かって突出していることを特徴とする両方向引き出し型のスライドレールのストッパー装置。
【請求項2】
係合部は、アウターメンバーの長尺方向の端面側に向かって、かつ、係合片側に向かって傾斜した案内面と、アウターメンバーの端面側で鉛直状に形成された係合面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドレールのストッパー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウターメンバーと、アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される一対の屈折縁を有し断面略C字形に形成されたインナーメンバーと、該ボールを回転自在に保持するボールリテーナを備え、アウターメンバーとインナーメンバーが一方側への長尺方向に相対移動可能であるとともに、他方側への長尺方向に相対移動可能とされる両方向引き出し型のスライドレールのストッパー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記の両方向に引き出し(伸長・収縮)可能なスライドレールにおいて、スライドレールの最収縮時に最収縮状態を維持するストッパー装置が本願の出願人によって実施されている(特許文献1参照)。
このスライドレールのストッパー装置は、インナーメンバーの一対の屈折縁間の設けられた合成樹脂製のストッパー受け部材(5)とアウターメンバーに設けられた合成樹脂製のストッパー部材(4)で構成され、ストッパー受け部材(5)に上下に一対に設けられた保持片(61)、(61)の上下間にストッパー部材(4)のストッパー突起(42)が通過する際、ストッパー突起(42)が保持片(61)(傾斜接触片(62))を弾性変形させながら押し上げ(押し上げ)て、ストッパー突起(42)が保持片(61)を乗り越えると、ストッパー突起(42)と保持片(61)が係合しストッパーが効くものである。
【0003】
このようなストッパー装置の場合、傾斜接触片(62)(保持片(61))の弾性力によって、ストッパーが効くものであるが、インナーメンバーの一対の屈折縁間に傾斜接触片(62)が設置されたものであるから、傾斜接触片(62)が小さくなる。
傾斜接触片(62)が小さくなると、傾斜接触片(62)の弾性変形量を大きく設定することができないため、ストッパーの保持力を確保するためには、傾斜接触片(62)の弾性変形を抑えて傾斜接触片(62)を硬く設定しなければならず、そのためストッパー突起(42)が保持片(61)(傾斜接触片(62))を弾性変形させながら押し上げる力が大きくなるため、ストッパーを作動あるいは解除させる過程で大きな力が必要であったりや引っ掛かりがあるだけでなく、傾斜接触片(62)を硬く設定していることから、傾斜接触片(62)が破断することがあった。
【0004】
合成樹脂製の傾斜接触片(62)に十分な弾性力と保持力を持たせようとすると、傾斜接触片(62)は、長尺方向に長く設定し上下方向にも大きく変形するようにする必要があり、また傾斜接触片(62)の断面サイズを大きくし剛性を確保する必要があるが、特許文献1のストッパー装置では、インナーメンバーの一対の屈折縁間に傾斜接触片(62)が設置されたものであるから、傾斜接触片(62)のための十分なスペースを確保することができなかった。
さらに、単に傾斜接触片(62)の弾性力を弱く設定すると、スライドレールの保持力が弱く、両方向引き出し型のスライドレールの場合では、伸長状態から収縮させると、最収縮状態を通り越して簡単に反対側に伸長してしまう問題がある。
傾斜接触片(62)を合成樹脂製ではなく板バネで形成し、小さな傾斜接触片(62)でも十分な弾性力と保持力を持たせることはできるが、板バネは薄板鋼板の金属製であるため、金属の接触音が発生し好ましくない。接触音と低減させるため接触部に合成樹脂を使用すると金属で合成樹脂が磨耗しやすい。
また、合成樹脂を使用し、かつ傾斜接触片(62)に十分な弾性力と保持力を持たせるための技術の十分な開示がなかった。
【0005】
また、このようなストッパー装置の場合、上下に一対に設けられた保持片(61)、(61)の上下間にストッパー部材(4)が通過するものであるから、高さ方向の低い(屈折縁間の距離が短い)スライドレールに採用すると保持片(61)、(61)の上下間が狭くなるので、ストッパー部材(4)を極端に小さくする必要があり、ストッパー部材(4)が破損しやすくなる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、両方向引き出し型のスライドレールに適した合成樹脂製のストッパー装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために第1の手段として、一対の屈折縁を有し断面略C字形に形成されたアウターメンバーと、アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される一対の屈折縁を有し断面略コ字形に形成されたインナーメンバーと、該ボールを回転自在に保持するボールリテーナとを備え、アウターメンバーとインナーメンバーが一方側への長尺方向に相対移動可能であるとともに、他方側への長尺方向に相対移動可能とされる両方向引き出し型のスライドレールにおいて、スライドレールに、スライドレールを最収縮状態で保持するストッパー装置を装備し、ストッパー装置を、インナーメンバーの両端部に設置される係合片を有する合成樹脂製の可動係合部材と、アウターメンバーの両端部に設置される前記係合片と係合する係合部を有する合成樹脂製の係合体で構成し、係合部を、アウターメンバーの一方側の屈折縁から他方側の屈折縁側に向う方向に突出させ、スライドレールの前記相対移動時に、係合片が係合部を乗り越えて係合片と係合部が係合することにより該相対移動を規制する構成とし、可動係合部材の係合片を、アウターメンバーの一対の屈折縁が対向する方向すなわち上下方向に弾性変形可能な合成樹脂製の腕部で支持し、腕部の該弾性変形によって、係合片が係合部を乗り越えることを可能とし、係合片を、インナーメンバーの摺動方向の一方側端面から、他方側端面側への方向と反対側の摺動方向側に突出した位置に配置するとともに、インナーメンバーの一方の屈折縁から、該屈折縁に近接するアウターメンバーの屈折縁側に向かって突出する構成とした。
【0009】
第1の手段に加え、係合部を、アウターメンバーの長尺方向の端面側に向かって、かつ、係合片側に向かって傾斜した案内面と、アウターメンバーの端面側で鉛直状に形成された係合面が形成する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の手段として構成したところによると、係合片が、インナーメンバーの端面から摺動方向(長尺方向)に向かって突出した位置に配置されているから、インナーメンバーの一対の屈折縁の間を利用して腕部をスライドレールの長尺方向に向かって長くすることが可能であり、また、インナーメンバーの一対の屈折縁の間を利用しているから、インナーメンバーのボール摺動溝に影響がなく、インナーメンバーに複雑な加工が必要ない。さらに、係合片は、アウターレールの屈折縁側の係合部に係合するから、腕部の可動スペースを邪魔しないため、腕部の剛性を保持できる大きさの断面とすることが可能である。したがって、腕部は大きく弾性変形でき、かつ腕部の剛性を確保できるから、合成樹脂製であっても確実ストッパーの保持力を確保することができる。
また、腕部は大きく弾性変形できるから、スライドレールの最収縮時から伸長するときにストッパーの解除するときに急激な力の変化が少ない。
【0011】
本発明の第2の手段として構成したところによると、第1の手段として構成したところ、に加え、伸長状態のスライドレールが収縮側に移動する時、係合片が傾斜した案内面によってゆるやかに押圧されるので、ストッパーが効く過程において、急激な力の変化がなく、することが可能で、音の発生を少なくすることができる。そして、スライドレールの最収縮時には、収縮方向と反対側の係合片の側面が、鉛直状に形成された係合面に当接するので、係合片が容易に係合部を乗り越えずに、スライドレールの最収縮時にストッパーを効かすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図10】可動係合部材のその他の実施例を示すスライドレールの斜視図。
【
図11】可動係合部材のその他の実施例を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
一対の屈折縁を有し断面略C字形に形成されたアウターメンバーと、アウターメンバーにボールにて摺動自在に保持される一対の屈折縁を有し断面略コ字形に形成されたインナーメンバーと、該ボールを回転自在に保持するボールリテーナとを備え、アウターメンバーとインナーメンバーが一方側への長尺方向に相対移動可能であるとともに、他方側への長尺方向に相対移動可能とされる両方向引き出し型のスライドレールのストッパー装置に係り、ストッパーをスムーズに作動させるとともに、高さの低いスライドレールで使用可能なスライドレールのストッパー装置を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。 尚、便宜的に
図9における左右方向、すなわち摺動方向を前後方向あるいは長尺方向、
図3における上下方向を高さ方向とし、
図3における左右方向を水平方向として説明する。
図1、
図4において、符号100は、本発明のスライドレールを示し、スライドレール100は、主に、アウターメンバー1と、アウターメンバー1に嵌挿自在に設けられたインナーメンバー3と、アウターメンバー1とインナーメンバー3間に設けられたボールリテーナ5と、アウターメンバー1とインナーメンバー3間でボールリテーナ5に回転自在に保持されたボール5A・・・と、インナーメンバー3の前後端部に設けられた可動係合部材2、2、アウターメンバー1の前後端部に設けられた係合体4、4より構成されている。
【0015】
アウターメンバー1は、帯状金属板からなる基板11と、該基板11の短手側両端部を内向き円弧状に湾曲して形成された内面長手方向にボール摺動溝12、12を有する屈折縁13、13より断面略C字形に形成されている。そして、基板11の前後端部に、基板11の一部を内方に折り曲げた、ボールリテーナ5のストッパー14、14が設けられている。
【0016】
インナーメンバー3は、アウターメンバー1より後述する係合片23がスライドレール100の最収縮時に端部から突出しない程度に若干短い長さで、アウターメンバー1に挿入可能な大きさの帯状金属板よりなる基板31と、基板31の短手側の両端部を外向き円弧状に湾曲して形成された、外面長手方向にボール摺動溝32、32を有する屈折縁33、33より、断面コ字形に形成されている。
【0017】
ボールリテーナ5は、帯状金属板にて、上記アウターメンバー1、インナーメンバー3間に挿入可能な大きさで、かつ、インナーメンバー3の4分1程度の長さとされ、基板51と、屈折縁52、52より断面コ字状に形成され、屈折縁52、52の長手方向数箇所にそれぞれ複数個のボール5A・・・が回転自在に保持される。
【0018】
可動係合部材2は合成樹脂製で一体成型されるものであって、インナーメンバー3の屈折縁33、33間に保持される基部21と、基部21の前後方向の一方側面から前後方向に突出する上下一対の腕部22、22と、腕部22、22のそれぞれの先端で、上方、あるいは下方に向かってそれぞれが離間する方向に突出する係合片23、23で形成されている。
【0019】
基部21は、インナーメンバー3の屈折縁33、33に内包する高さでブロック状であって、上面と下面にそれぞれ上方と下方に向かって突出する嵌合片211・・・が設けられており、該嵌合片211は、
図3で示すように、屈折縁33、33の対向している内面側(ボール摺動溝32)それぞれに嵌合し、基部21が基板31の対向側の水平方向に抜け出すことを防止している。
より具体的には、屈折縁33、33の対向している内面は、基板31付近の屈折縁33、33の対向間隔の広さが広く上下方向に高く、水平方向で基板31の対向側に向かって高さ方向が低くなるように、屈折縁33、33の対向間隔が狭くなるように湾曲している。そのため、基板31付近の屈折縁33、33の対向面側に嵌合片211・・・が嵌合すると、嵌合片211・・・は、水平方向で基板31の対向側に向かって高さ方向が低くなるように、屈折縁33、33の対向間隔が狭くなっているので、屈折縁33、33に引っかかるから水平方向に抜け出すことができない。
【0020】
そして、基部21の基板31側の面にはズレ止め突起212が設けられ、ズレ止め突起212は、基板31に設けられたズレ止め孔311に挿入している。
このように、ズレ止め突起212が、ズレ止め孔311に挿入しているため、基部21は前後方向に移動せず、前記嵌合片211・・・が屈折縁33、33に嵌合しているため、基部21は上下方向、左右方向にも移動せずにインナーメンバー3に固定される。
尚、基部21が、ブロック状に形成されているのは、スライドレール100が最大伸長する際、伸長方向と反対側に設置された可動係合部材2の基部21の伸長側の端面に、ボールリテーナ5の基板51の伸長方向の反対側の端面が接触し、インナーメンバー3がボールリテーナ5から脱落しないようにするストッパーを兼ねているからである。
【0021】
そして、基部21はインナーメンバー3の前後の端部付近に設置されるが、基部21のインナーメンバー3の端面側の面から該端面側から突出するように腕部22、22が突出形成されている。
腕部22は、断面が略長方形で細長に延伸する角柱状であって、屈折縁33、33間を経てインナーメンバー3の端面側から突出する位置まで延伸しており、上下方向に間隔を空けて上下一対に形成されている。
そして、腕部22の該延伸端には、腕部22から、腕部22に近接する屈
折縁33側の上下方向に突出する係合片23が形成され、
図9に示すように、上側の腕部22は上方に向かって係合片23が突出しており、下側の腕部22は下方に向かって係合片23が突出している。
【0022】
係合片23は、腕部22の延伸端に連接し、上方(下方)に向かって突出し、上端部付近で段付き状に一旦屈曲している。これは、係合片23の腕部23の延伸端との連接付近を、スライドレール100を物品に固定するためのネジなどとの接触することを避けるため、スライドレール100の水平方向の中心軸より離れるように設定しているので、係合片23と後述する係合部43との接触部を、スライドレール100の水平方向の中心軸に近づけ、確実に係合するようにするためである。
さらに係合片23の上方(下方)突出端は、屈折縁33から屈折縁13の間であって屈折縁13には接触しない位置まで突出している。
【0023】
尚、
図10、11に示すのは、係合片23に、基板31に係合する外れ防止片23aを設けたものであって、基板31に係合させることにより腕部23を上下方向に安定して弾性変形させることが可能である。
また、22aは、腕部22、22と一体成型されるもので、上下一対の腕部22、22の弾性変形力を調節する弾性力調整部材であり、腕部22、22の弾性変形力が強い場合は、弾性力調整部材22aを切除して、腕部22、22の弾性変形力を弱くすることが可能である。弾性力調整部材22aと腕部22、22の連接部分には切除しやすいように、あらかじめV字状の溝を切除部分に成型時に形成してもよい。
【0024】
係合体4は合成樹脂製で一体成型されるものであって、アウターメンバー1の屈折縁13、13間に保持される連結基板41と、連結基板41の上下端のそれぞれに、屈折縁13、13の対向面である内側に沿うように形成される嵌合突片42、42と、嵌合突片42、42の対向面側に形成される係合部43、43で断面略コ字状に形成されている。
【0025】
連結基板41は、アウターメンバー1の屈折縁13、13に内包する高さで基板11に沿う板状であって、連結基板41の基板11側の面と対向する側が水平方向に膨出形成されるストッパー部411と、アウターメンバー1のストッパー14、14が挿通する係合孔412、412が形成されている。
【0026】
嵌合突片42は、連結基板41の上端と下端のそれぞれから水平方向に突出しており、上側の嵌合突片42の上面は、上側の屈折縁13の内面側(ボール摺動溝12)に沿うように、下側の嵌合突片42の下面は、下側の屈折縁13の内面側に沿うように断面アール状に形成されている。
そして、屈折縁13、13の対向している内面は、基板11付近の屈折縁33、33の対向間隔から、水平方向で基板11の対向側に向かって一旦間隔が広くなり、さらに水平方向で基板11の対向側に向かって間隔が狭くなるように、屈折縁13、13は断面アール状に形成されているから、屈折縁13、13の内面に嵌合突片42、42に外面が沿うと、屈折縁13、13に引っかかるから水平方向に抜け出すことができないため、係合体4は、屈折縁13、13間に嵌合固定される。
【0027】
また、連結基板41の基板11側の面にはズレ止め突起413が設けられ、ズレ止め突起413は、基板11に設けられたズレ止め孔111に挿入している。
このように、ズレ止め突起413が、ズレ止め孔111に挿入しているため、連結基板41は前後方向に移動せず、嵌合突片42、42がそれぞれ、屈折縁13、13に沿って嵌合しているため、連結基板41は上下方向、左右方向にも移動せずにアウターメンバー1に固定される。
また、アウターメンバー1の基板11の端部で、屈折縁13と同側に切り起こして形成されるストッパー14が、係合孔412に挿通しており、連結基板41の前後方向に移動をさらに防止している。
これは、連結基板41が、スライドレール100が最大伸長した際、連結基板41のストッパー部411のボールリテーナ5側の端面に、ボールリテーナ5の基板51の端面が接触し、ボールリテーナ5がアウターメンバー1から脱落しないようにするストッパーを兼ねているから、伸長時の衝撃によって係合体4が簡単にアウターメンバー1から外れないように補強するためである。
【0028】
そして、上側の嵌合突片42の下面と、下側の嵌合突片42の上面のそれぞれに係合部43、43が設けられている。
上側の係合部43は、嵌合突片42の、近接するアウターメンバー1の一方の長尺方向側の端面と対向する側面の端部から、近接するアウターメンバー1の一方の長尺方向側の端面に向かって、該長尺方向側の端面に向かいながら漸次下方側に膨出する傾斜面となる案内面431と、該長尺方向側の端面側で鉛直状に形成される係合面432で形成されるものである。
そして、下側の係合部43は、上側の係合部43と対向して対称に形成される。
【0029】
そして、このように形成された可動係合部材2と係合体4は、それぞれインナーメンバー3とアウターメンバー1の前後方向の両端部に、対向して対称となるように取り付けられ、可動係合部材2と係合体4でストッパー装置6が構成される。
【0030】
スライドレール100のストッパー装置6は次のように作動する。
まず、アウターレール1とインナーレール3の前後方向側の中心が略一致した状態がスライドレール100の最収縮状態である。
スライドレール100の最収縮状態で、係合片23は、アウターメンバー1の端部より前後方向側に突出しない状態で、かつ、腕部22に弾性変形していない状態となっている。
【0031】
そして、アウターメンバー1を固定側、インナーメンバー3を移動側とする場合、インナーメンバー3を前後方向に摺動させると、該摺動方向と反対方向側の係合片23の摺動方向側の側面が、係合部43の係合面432に接触する。
係合面432は、鉛直状の面であるから、係合片23の側面と係合部43の係合面432は面同士の当接となり、係合片23の側面と係合部43が係合した状態となるため、該当接がストッパーとなりインナーメンバー3の移動を防止する。
ストッパー装置6は、スライドレール100の前後端部それぞれに設置してあるから、該ストッパーは、インナーメンバー3の前後いずれの伸長方向にも作用する。
【0032】
さらに、ストッパー装置6のストッパーが作用した状態でインナーメンバー3を一方の伸長方向に摺動させると、当接している係合片23の側面と係合面432の係合片23の側面には、係合面432によって、該インナーメンバー3を一方の伸長させる方向と反対方向に押される力が加わる。
係合片23の側面に該反対方向に押される力が加わると、該力が係合片23を伝って可動係合部材2の腕部22に伝わり、腕部22が弾性変形しはじめる。
該力は係合片23の腕部22と反対側の先端部付近に伝わるから、上側の係合片23は下側に、下側の係合片23は上側に押されるように、上側の腕部22が、係合片23側先端が下側に移動するように弾性変形し、下側の腕部22が、係合片23側先端が上側に移動するように弾性変形していく。
そして、係合片23が係合面432を乗り越えると、ストッパーが外れ、インナーメンバー3が伸長していく。係合片23が係合面432を乗り越えると、腕部22は弾性力によって元の状態に復旧する。
【0033】
次に、スライドレール100の収縮過程を、
図9を用いて説明する。
図9は、
図9における右方向に向かってインナーメンバー3が収縮していく過程を示すもので、伸長状態のインナーメンバー3を収縮方向に摺動させると(
図9の(1)の状態)、インナーメンバー3が収縮方向に摺動していき、インナーメンバー3が最収縮状態に近づくと、収縮方向側の係合片23の先端が、係合部43の案内面431に接触する(
図9の(2)の状態)。
そして、そのままインナーメンバー3を収縮させると、案内面431は、アウターレール1の端面側に向かって傾斜しているから、上側の係合片23は下方に押され、下側の係合片23は上方に押されていく(
図9の(3)の状態)。このように係合片23が押されると、その力で腕部22は、上下の腕部22、22の係合片23、23側の間隔が狭くなるように弾性変形し、係合片23の上端面(下端面)の直線状に形成された面が、案内面431と面接触しながらスライドし(
図9の(4)の状態)、係合片23が案内面431を通過すると、係合片23は押す力から開放されるので、腕部22は弾性力によって元の状態に復旧する(
図9の(5)の状態)。
【0034】
そして、インナーメンバー3の該収縮方向側と反対側のストッパー装置6は、前述の、係合片23の側面と係合部43の係合面432が面同士の当接した状態(
図9の(5)の状態の左端部側)となるので、ストッパーが作動した状態となり、インナーメンバー3を最収縮状態で一旦停止させることが可能である。
案内面431は、前述の通り漸次膨出するように傾斜しているから、スライドレールの収縮過程において、係合片23と係合部43が衝撃を伴って接触することなくスムーズに収縮させることが可能となる。
特に、係合部43は摺動方向側に長く設定することが可能であるから案内面431を長く設定することが可能で傾斜角度を緩く設定することが可能である。また、係合部43は摺動方向側に長く設定することが可能であるから、案内面431と係合面431の連接部にスライドレールの摺動方向と平行な面として第2案内面を設けることが可能で、第2案内面では、係合片23を押圧しながら摺動するのでブレーキ効果を得ることが可能である。
係合片23側に傾斜面を設けても短い長さでしか設定できないばかりか、係合片23側に傾斜面を設けた場合、係合片23の係合部43との接触部が、該傾斜面と係合面とで直角三角形状となるため、係合片23の係合部43との接触部の頂部が磨耗しやすくなる。
本件実施例のように合成樹脂でストッパー装置を形成する場合、点接触ではなく線接触あるいは面接触をさせるほうが、磨耗を抑制することができる。
【0035】
このように、可動係合部材2の上下の腕部22、22間には腕部22の弾性変形を阻害する要因がないから、腕部22が合成樹脂製であっても、腕部22にストッパー力を持たすだけの剛性を確保するだけの断面寸法とすることが可能であり、腕部22が破断することなく柔軟に弾性変形する長さへの設定が可能である。
また、ストッパー作用は、インナーメンバー3の屈折縁33と、アウターメンバー1の屈折縁13との間部分で得られるから、インナーメンバー3の上下幅の低い細いスライドレールでも採用することが容易である。
【0036】
実施例において、腕部22、22、係合片23、23は上下一対に形成されているが、上部、もしくは下部の一箇所でもストッパー機能を作動させることが可能である。
また、スライドレールの前後方向の片側端部にのみストッパー装置6を設置して使用することも可能である。
また、スライドレールの屈折縁が上下方向に対向している縦使いの場合で説明しているが、スライドレールを屈折縁が水平方向に対向している横使いで使用しても同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明は、引き出し式の収納庫や、引き出し式の収納を備えた家具や、スライド移動可能な家具用天板や、上下方向を含めたスライド移動可能な掲示板や黒板や仕切り板やスライド移動可能な自動車用のアームレストなど様々の物品に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
100 スライドレール
1 アウターメンバー
11 基板
13 屈折縁
2 可動係合部材
21 基部
211 嵌合片
22 腕部
22a 弾性力調整部材
23 係合片
3 インナーメンバー
31 基板
33 屈折縁
4 係合体
41 連結基板
42 嵌合突片
43 係合部
431 案内面
432 係合面
5 ボールリテーナ
6 ストッパー装置